JP4590001B2 - 焼結鉱の製造方法および焼結機 - Google Patents
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Description
まず、主原料の鉄含有原料である鉄鉱石は鉄鉱石ホッパー、副原料である石灰石は石灰石ホッパー、固体燃料であるコークスはコークスホッパー、返鉱(焼結プロセスで発生した高炉用の所定粒径より小さい細粒焼結鉱)は返鉱ホッパー等からなる原料配合ポッパー1からそれぞれ原料を所定量切り出して焼結原料3を形成し、これを1台もしくは複数台を直列配置したミキサー2に装入し、必要に応じて水分添加により水分5.5%〜8.5%程度に調湿しつつ造粒する。
次に、焼結原料3の造粒物をサージホッパー4に一旦装入し、焼結原料3をドラムフィーダー5から切り出し、シュート等を介して焼結機を構成する各パレット内に装入して充填層7を形成する。この充填層7の表層部分のコークスに点火炉8で点火した後、焼結原料層の上方から下方に空気吸引しながら焼結原料中のコークスを燃焼させ、この燃焼熱で上層から下層にかけて順次焼結原料を焼結する。得られた焼結ケーキ9は、排鉱部で排出され、1次クラッシャー10にて粗破砕した後、クーラー11で冷却される。冷却された焼結鉱は、1次篩12、2次クラッシャー13、2次篩14、3次篩15などにより構成される破砕・整粒処理を経て、約5mm以上の塊成化物が成品焼結鉱として高炉へ供給される。約5mm未満の焼結鉱は返鉱として焼結原料に配合し再度焼結機に装入される。
また、焼結表面への点火不良などによって、部分的に焼結層の表面温度が低下した場合には、散布した重油が未燃焼のまま焼結鉱とともに排出される。通常の焼結機においては、このような可燃物が焼結鉱へ混入することは想定されていないため、これらの漏洩・蓄積の可能性を考えた防災上のリスク対策の検討が必要である。
特許文献2〜4のいずれにおいても、可燃性ガスは爆発下限濃度以下での使用が前提となるため、ガスの供給量に制約が生じる。可粘性ガス濃度の制御の遅れや計器の異常などによって、爆発下限濃度を超えた場合には、焼結原料層よりも上方のフードや気体燃料供給機にまで火炎が伝播し、大規模な爆発事故や災害に至る可能性がある。特許文献3では、爆発防止のためのガス濃度調整技術が開示されている。しかしながら、この安全な供給方法を採用したとしても、可燃性ガスを補助燃料として供給する焼結法においては、爆発下限濃度を超えた量の可燃性ガスの供給は困難であり、焼結原料層への供給熱量には原理的な限界がある。
高炉ガス(BFG)やコークス炉ガス(COG)などには、一酸化炭素などの有毒成分が含まれているため、慎重な取り扱いが必要となる。焼結パレットと焼結原料層表面は常に焼結機機長方向に移動しているため、固定で設置した可燃性ガスの供給フードと移動中の焼結パレット上面の間を完全にシールすることは困難である。したがって、吸引ブロアーの負圧が低下した場合や、突発的な事故によって吸引ブロアーが停止したような場合には、フードと焼結原料層表面の隙間や、フードと焼結機パレットの隙間から、これらの有毒ガスや可燃性ガスが周囲へ吹き出す可能性が避けられない。一般的には、焼結機は建屋内に設置されているため、これらのガスの流出時には、作業者の安全性のみならず、安全建屋内に可燃性ガスが滞留する防災上の危険性も懸念される。
定期的な焼結機の修理においては、使用後の焼結パレットを天井クレーンで吊り上げ、焼結機外へ複数台搬出し、整備済み焼結パレットを逆手順で搬入する交換作業が日常的に行われている。焼結機の機長方向における焼結原料層上方に可燃性ガス供給用のフードや供給装置を設置した場合には、これらが焼結パレット交換作業の支障となり、大幅に修理時間が延長するなどの弊害が生じる。
さらに、本発明は、焼結鉱生産量あたりの吸引風量の原単位を低減させ、排風機の電力消費量を低減することが可能であり、なおかつ、排ガス量自体の低減とNOx排出量の低下により、これらの大気環境規制物質の排出負荷を低減できる新しい焼結方法及びそのための焼結機を提供することを目的とする。
(1)ドワイトロイド式焼結機の焼結パレットに、鉄含有原料、副原料および固体燃料を配合した焼結原料を装入し、点火炉によって該焼結原料表層部の固体燃料に着火させたのち、焼結原料層の上方から下方へ空気を吸引して焼結反応を連続的に進行させる焼結鉱製造プロセスにおいて、前記焼結パレットが点火炉出側から焼結完了位置に至るまでの焼結機機長方向の全範囲もしくは任意の範囲に設定された液体燃料散布範囲について、焼結原料層表面の上部より沸点が60℃以上175℃以下の範囲にある液体燃料を散布することを特徴とする焼結鉱の製造方法。
(2)前記液体燃料散布範囲において、点火炉出側から焼結完了位置に向かう焼結機機長方向の下流側ほど液体燃料の単位面積当たりの散布量が少なくなるように、段階的に液体燃料の散布量を調整することを特徴とする前記(1)に記載の焼結鉱の製造方法。
(3)前記液体燃料散布範囲において、点火炉出側から機長の前半30%位置に至るまでの範囲に、前記液体燃料の全散布量の80%以上を散布することを特徴とする前記(2)に記載の焼結鉱の製造方法。
(4)前記固体燃料および前記液体燃料により投入される全熱量の1%以上50%未満に相当する熱量を液体燃料で供給することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の焼結鉱の製造方法。
(5)前記焼結パレット下部に配置した風箱もしくは排風支管における排ガス中の酸素濃度の測定値が2%以上となるように、前記液体燃料散布範囲における液体燃料の散布量を制御することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の焼結鉱の製造方法。
(6)前記焼結パレット下部に配置した各風箱を通して排出された焼結機排ガス中のNOx濃度の測定値が基準値以下となるように、前記液体燃料散布範囲における液体燃料の散布量を制御することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の焼結鉱の製造方法。
(7)前記焼結パレットの幅方向において、両側のサイドウォールからそれぞれ500mmの範囲における液体燃料の散布量がその他の範囲よりも多くなるように液体燃料を散布することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の焼結鉱の製造方法。
(8)前記液体燃料として、20℃の常温状態における蒸気圧が0.1kPa以上となる有機化合物を用いることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかにに記載の焼結鉱の製造方法。
(9)前記液体燃料は、鎖式脂肪族炭化水素、脂環式ならびに芳香族炭化水素のうちの1種または2種以上からなる有機化合物であることを特徴とする前記(8)に記載の焼結鉱の製造方法。
(10)前記液体燃料は、水酸基を有するアルコール類または化学構造式中に酸素原子を含有する炭化水素の1種類もしくは2種類以上からなる有機化合物であることを特徴とする前記(9)に記載の焼結鉱の製造方法。
(11)複数の焼結パレットが無端連結された焼結パレット群と、焼結パレット内に焼結原料を供給するための原料供給装置と、焼結原料表層部の固体燃料に着火するための点火炉と、焼結原料層の上方から下方へ空気を吸引するために各焼結パレット直下に設置された風箱とを備える焼結機において、前記点火炉出側の壁より3m以降から機長の80%地点にいたるまでの範囲に、前記焼結原料層の上部から沸点が60℃以上175℃以下の範囲にある液体燃料を該焼結原料層表面へ散布するための液体燃料供給装置を設置していることを特徴とする焼結機。
(12)前記液体燃料供給装置が、前記焼結パレットの幅方向に複数の散布ノズルを備えている散布ノズル配管を、機長方向の下流側ほど液体燃料の単位面積当たりの散布量が少なくなるようにそれぞれの設置間隔を変えて複数配置していることを特徴とする前記(11)に記載の焼結機。
この液相焼結反応を促進あるいは任意に制御する手段として、液体燃料の燃焼反応を活用することが本発明の第一の特長である。
液体燃料の散布方法としては、液体燃料を完全なミスト状態とする必要はなく、散布範囲にほぼ均等に液体燃料が行き渡る程度のノズル構造とすればよい。すなわち、シャワーノズルや上呂の口先のような大粒の液滴状態を形成するノズルでも良いし、農薬散布ノズル程度の細かい液滴状態を形成するノズルでも良い。流量が小さい場合には、必ずしも連続的な散布である必要はなく、数秒から20秒程度の周期の間欠的な散布であっても、本発明の効果は享受できる。ただし、液体に空気を強制的に混合して噴霧するタイプのノズルでは、液体燃料の種類や噴霧の条件によっては、逆火が起こる可能性があるので、使用に際しては注意が必要である。
焼結原料層に散布された液体燃料は、一旦は液体状態のまま焼結原料層へ浸透する。その後、焼結原料層の顕熱を奪いながら平衡蒸気圧に見合った量だけ気化し、空気に搬送されて焼結原料層内を下方へ移動して固体燃料の燃焼帯近傍に到達する。焼結原料層内の固体燃料の燃焼帯は1400℃付近に達する高温域であるため、気化した燃料は燃焼帯到着手前の高温域で、発火点に達して自然に燃焼発熱し、焼結原料層内の温度を上昇させる。
本発明で規定したような一般的な液体燃料に関しては、常温での発火温度が高いため、自然発火する心配がない。気化して爆発下限を超える濃度になれば火災・爆発の危険が生じるが、本発明では、液体燃料が気化するのは焼結原料層内に限られているため、焼結原料層内で燃焼するのみであれば防災管理上の危険は生じない。また、液体燃料の散布処理は、打ち水と同様の効果を有しており、気化の際に蒸発潜熱を奪うため、焼結原料層表面の温度を5〜10℃下げる作用がある。この冷却効果は、結果的に、散布中の液体燃料への着火危険を低減する作用をもたらす。
可燃性ガスを燃料とする場合は、焼結原料に供給した燃料の全量が容易に空気中に漏洩拡散する危険性があるため、供給フードと焼結機間のシール性が安全管理上および防災管理上の重要な課題となる。本発明における液体燃料の供給においては、常温における液体燃料の平衡蒸気圧がそもそも低いため、毒性が問題となる濃度あるいは爆発濃度に達する危険性は格段に小さい。もちろん、液体燃料も引火延焼の危険性をもつ可燃性物質であり、毒性を有する物質もあるが、一般的には車両燃料や家庭用燃料として広く使われているものであり、危険物取り扱い基準に則った管理を行うことで、確実な安全防災管理は可能である。
液体燃料の供給設備は、可燃性ガス供給の設備に比べて格段に小さくすることが可能である。可燃性ガスを燃料とする場合は、周囲への可燃性ガスの漏洩拡散を防止する必要があるため、特許文献1〜3で例示されているような供給フードを焼結機機長方向の焼結原料層上方に固定設置する設備構成とせざるを得ない。
本発明では、燃料を液体状態のまま焼結原料層表面へ散布する方式であるため、焼結機機長方向の焼結原料層上方に散布ノズルだけを設置すればよく、フード等の固定式大型設備は設置する必要がない。液体燃料の配管や散布ノズルについても、供給燃料が液体であるため、可燃性ガスの供給装置に比べれば格段に小さな設備構造で構成することができ、定期修理の際には、容易に取り外すなどの対応が行いやすい特長がある。また、貯蔵方法についても、可燃性ガスであれば大きなガスホルダーが必要となるが、液体燃料であれば小規模なタンクで対応することができる。
まず、焼結機の点火炉出側から焼結完了位置に至るまでの焼結機機長方向の焼結原料上に液体燃料散布範囲を設定し、その範囲内に複数の散布ノズル付きの配管(以下、散布ノズル配管という)を配置し、液体燃料貯蔵タンクから液体燃料供給管(ヘッダー管)を通して散布ノズル配管に液体燃料が供給される。焼結機の機長方向と直角方向(幅方向)に延びた散布ノズル配管を機長方向に複数配置する方法が最も簡便である。この散布ノズル配管には、焼結機のパレットの幅に応じて、例えば10〜20箇所程度の広角散布ノズルを設置し、幅方向全域に万遍なく散布できる構造としておく。なお、本発明は、このような散布ノズルの配置方法や散布ノズル配管の構造に制限されるものではなく、幅方向に満遍なく液体燃料を散布できる装置であれば、どのような構造を採用してもよい。
さらに、液体燃料を散布する範囲に対して、このような散布ノズル配管を焼結機の機長方向に複数本平行に配置する。散布ノズル配管間の設置ピッチについては、焼結原料層表面に極力均等に液体燃料を散布することが望ましいが、必ずしも焼結機機長方向に切れ目なく散布する必要はなく、配管と配管の間に液体燃料が散布されない領域が生じても実用上は問題ない。この理由は、通常の液体燃料の供給では、液体燃料の供給速度が蒸発速度よりも速いため、焼結原料層内に液体燃料が液体として残存しているためである。このバッファー時間は、液体燃料の種類や散布条件にもよるが、通常、10〜40秒程度はあると考えられるので、各配管の間の設置間隔は2m程度のピッチであっても問題なく使用できる。この配管間隔については、液体燃料の種類、供給速度および焼結機パレットの移動速度などを勘案して、以上のような考え方に基づいて最適条件を選定する必要がある。
可燃性ガスを用いる従来技術においては、供給フード内での可燃性ガス濃度や空気比を部分的に細かく変更することが困難である。しかし、補助的燃料として液体燃料を使用する本発明では、焼結機の機長方向ならびに焼結パレットの幅方向における液体燃料の散布量をノズル単位で自由に調整することが可能である。
まず、焼結パレット幅方向における液体燃料の散布量調整方法について説明する。
焼結ケーキの焼結パレット幅方向の位置毎の焼結鉱の歩留分布については、例えば、図4(a)、(b)に測定結果の一例を示したとおり、焼結パレットの幅方向における両側のサイドウォールよりそれぞれ500mmの範囲で低下する傾向がある。この傾向は大型焼結機Bで顕著となる。この原因は、サイドウォール自体の昇温やサイドウォールから外気への放熱などによってサイドウォール近傍の焼結原料層は熱不足となりやすいためである。
特許文献4においては、このサイドウォール近傍の焼成不足を補う手段として気体燃料を供給する技術が開示されているが、この方法では、可燃性ガスの供給技術に関する第二の問題として説明したシールの不完全さの課題が残る。すなわち、気体燃料を供給する固定フードと移動体である焼結原料層表面の完全シールが技術的に難しく、サイドウォール近傍の気体燃料供給部分とパレットの幅方向中央部の空気が焼結原料層の上方もしくは、焼結原料層内で混合し効果が低減するために十分な効果が得られにくい。同様の理由により、焼結パレットの幅方向において異なる濃度の気体燃料を供給するような複雑な供給量調整も実質的には困難である。
液体燃料を用いる本発明においては、液体燃料をサイドウォール近傍の焼結原料層表面に集中的に供給することが可能である。したがって、焼結パレットの幅方向における両側のサイドウォールからそれぞれ500mmの範囲の成品歩留は低い領域に選択的に補助的な熱量を供給し、成品歩留を改善させることができる。
また、焼結パレットやそのサイドウォールの老朽度は焼結機ごとに異なるため、成品歩留が低くなるサイドウォールからの範囲も焼結機ごとに幾分異なるが、都度、焼結パレットの幅方向の液体燃料のノズル設置間隔を変更することによって、散布の範囲や散布量は容易に微調整することができる。例えば、サイドウォールから500mmの範囲だけは幅方向の散布ノズルの間隔を100mmピッチと小さくして、サイドウォールに近い側のノズルほど散布量が大きくなるように設定するなど、細やかな散布量の幅方向分布の調整・制御が可能である。
本発明者は、室温で液体状態の液体燃料として数種類の有機化合物を用いて焼結試験を行い、焼結原料層内の温度分布曲線ならびに排ガス中の成分濃度の変化を調査した。その典型例として、エタノール(テスト1)およびn−オクタン(テスト2)を使用した場合の試験結果を図5(b)、(c)に示す。なお、図5(b)、(c)において、T1:粉コークス燃焼帯位置が450mm高さ(上層位置)にある場合の温度分布曲線、T2:粉コークス燃焼帯位置が300mm高さ(中層位置)にある場合の温度分布曲線、T3:粉コークス燃焼帯位置が110mm高さ(下層位置)にある場合の温度分布曲線を示す。
この試験では、内径300mmφ×高さ600mmの焼結試験装置を用いて、表1に示す配合条件での焼結原料を装入し、焼結試験を行った。エタノールもしくはn−オクタンは、焼結原料層表面への着火開始後3分から8分までの5分間に520ml散布した。なお、焼結原料層表面への着火開始から着火完了までの所要時間は1.5分であった。上記液体燃料の散布量は配合原料1トン当たり約7kgに相当し、供給熱量としては、配合原料1トン当たりそれぞれ206MJおよび332MJに相当する。
なお、比較のためベースとして、液体燃料を使用せずに焼結試験を行ったが、その結果は、図5(a)に示す。
したがって、前記液体燃料散布範囲における液体燃料の供給形態としては、点火炉出側から焼結完了位置に向かう焼結機機長方向の下流側に向かうほど液体燃料の散布量が少なくなるように、段階的に液体燃料の散布量を調整することが望ましい。さらに具体的には、前記液体燃料散布範囲において、焼結機の機長方向の点火炉出側から機長の前半30%位置に至るまでの範囲に、前記液体燃料の全散布量の80%以上を散布することが最も好ましい。このように構成することで、熱不足となる焼結原料の上層に、十分な熱量を供給し、液相焼結反応を行わせるのに十分な液相量を生成することができる。さらに、焼結原料の上層の焼結反応が円滑に進行することによって、上層の焼結ケーキはより通気抵抗の低い多孔構造体へと変化する。そのため、焼結原料の上層の焼結反応が完了し、フレームフロントが中層以降へ通過したあとも、焼結原料層全体の通気度は液体燃料を散布しない場合に対して改善する。ただし、液体燃料の散布ノズルを点火炉に近づけすぎると、点火炉の火が液体燃料に引火する危険性があるため、点火炉と散布ノズルの間隔を3m程度あける方法や防火壁を設置するなどの引火対策を講じておく必要がある。
本発明のもう1つの重要な特長は、液体燃料の全散布量は、粉コークスおよび無煙炭などの固体燃料、および、液体燃料により投入される全熱量の1%以上50%未満の熱量を液体燃料で供給するだけの散布量とすることにある。これは、通常、焼結原料に含有する粉コークス等の固体燃料により供給される熱量の一部を液体燃料へ置換することが可能であることを意味している。
液体燃料の全散布量の下限は、全燃料の熱量に対する液体燃料熱量の構成比で1%以上とした。液体燃料の熱量構成比が1%未満となる条件では、焼結鉱製造の操業における上記の本質的な効果が確認できないためである。また、液体燃料の全散布量の上限は、全燃料の熱量に対する液体燃料熱量の構成比で50%未満とした。この理由は、液体燃料の熱量構成比が50%以上の条件では、逆に固体燃料の配合率が少なくなりすぎて、燃焼帯における固体燃料の燃焼反応が下層へと伝播されず、失火する危険性が増大するためである。あくまでも、焼結反応におけるフレームフロントの下降伝播は、焼結原料中に配合された固体燃料の燃焼によって継続されているものであり、液体燃料は層内の温度分布曲線を調整する手段に過ぎない。その燃焼帯の伝播に必要な固体燃料量の下限が、焼結に必要な全熱量の50%に相当するものであるため、本発明においては液体燃料の熱量構成比を50%未満とした。
液体燃料の散布量に関しては、供給速度に制限があり、蒸発速度の速いエタノールなどで散布量を多くし過ぎると、燃料供給に対する酸素不足が生じ、燃焼帯における不完全燃焼が発生する場合がある。本発明者は、前述した焼結試験装置を用いて、520mlのエタノールを着火完了後1.5分から1分間で集中的に散布する試験を行い、焼結原料層内の温度分布曲線ならびに排ガス濃度の変化を調査した。その結果、この条件では、エタノールの添加直後より急激に排ガス中の酸素濃度が低下しCO2濃度が増加した。酸素濃度は最低値ではほぼゼロとなっており、この時間帯では不完全燃焼が起こり、粉コークスの燃焼も一時停滞したと考えられる。この不完全燃焼を避ける方法として、本発明においては、焼結パレットの下部に配置した風箱もしくは排風支管における排ガス中の酸素濃度を測定して、この酸素濃度測定値が2%以上となるように、前記液体燃料散布範囲における液体燃料の散布量を制御する。
本発明者の試験結果によれば、焼結パレットの下部に配置した各風箱もしくは排風支管における排ガス中の酸素濃度の測定値が2%未満となる場合には、焼結原料中の粉コークス等の固体燃料の燃焼が停滞する。これは、気化した液体燃料の燃焼は固体燃料の燃焼に比べて反応速度が速いので、空気中の酸素が選択的に液体燃料の燃焼に消費される。そのため、反応速度の遅い固体燃料の燃焼が取り残され、極端な条件では失火に至ると考えられる。この失火現象を回避するためには、排ガス分析値を常時監視し、酸素不足の状況を検知して、液体燃料の散布量の調整アクションを実施する対策が効果的である。
排ガス中の酸素濃度の測定は、焼結パレット下部に設置した各風箱もしくは排風支管に酸素濃度計のプローブを設置することで行うのが望ましい。酸素濃度計については、ガスクロマトグラフィー型酸素濃度計、固体電解質酸素濃度計、あるいはレーザー式酸素濃度計などがあるが、定期的な校正がなされているものであれば、いずれの酸素濃度計を用いてもよい。
焼結パレット下部に設置した風箱もしくは排風支管における排ガスの酸素濃度が2%未満と検知されたときには、焼結機機長方向に配置された液体燃料の散布ノズルのうち、当該風箱もしくは排風支管の直上に位置する散布ノズルの液体燃料の散布量を低減するように調整するアクションを行う。液体燃料の種類、蒸発温度、および散布量などによっては散布から液体燃料の燃焼までに時間遅れがあるので、当該の風箱直上の散布ノズルだけでなく、それよりも点火炉側に配置した散布ノズルについて散布量の調整アクションを行うことが好ましい場合もある。
液体燃料を散布することで、焼結機排ガス中のNOx濃度のレベル管理が行えることも本発明の1つの特長である。焼結原料の焼結反応において生成するNOxは、固体燃料中の窒素分がNOxへ転換する、いわゆるFuel NOxであり、燃焼温度を高くすることで、生成量を削減できることが一般的に知られている。本発明では、固体燃料の燃焼時に液体燃料の燃焼によって補助的な熱量が供給されるため、固体燃料の燃焼温度を1400℃以上に高温化することができ、固体燃料の燃焼によるNOx発生を低減することができる。さらに、本発明では、液体燃料の燃焼によって空気中の酸素の利用率が上がり、排ガス中の酸素濃度を低く維持することができるため、実質の排ガス量を低減する効果も得られる。したがって、液体燃料を適切に供給することで、高温燃焼によるNOx発生量自体の低減効果と、排ガス量の削減効果を同時に享受することが可能であり、即効性のある効果的なNOx削減対策を提供することができる。
本発明では、焼結パレットの各風箱を通して排出された焼結機排ガスのNOx濃度の測定値が基準値以下となるように、前記液体燃料散布範囲における液体燃料の散布量を制御することが好ましい。具体的には、環境上定められる基準値を超えない範囲のNOx管理値を設定しておき、焼結機排ガスのNOx濃度が高くなりその管理値に近づいた場合には、液体燃料の散布量を増加させるアクションを実施するものである。一般的な焼結機においては、焼結機排ガスのNOx濃度は排ガス煙突もしくは煙突手前のダクトで測定されているが、本発明で取り扱うNOx調整アクションについては、焼結機の焼結下部の各風箱から排出される排ガスの平均的なNOx濃度および排出量に対して行われる。NOxの低減を目的とした液体燃料の散布については、散布方法などに特段の留意すべき事項はないが、これまでに述べた通常の液体燃料散布と同じく、焼結鉱の製造を阻害しないように、散布量や散布方法を調整する必要があることは言うまでもない。
本発明は、焼結原料層内における固体燃料の燃焼温度を上昇させることで焼結機排ガス中のNOx濃度の低減効果が発現させるのであるから、焼結鉱の成品歩留や生産性などの改善を目的とした液体燃料の散布技術と矛盾するものではなく、同時に両者を実現させることが可能な制御技術である。
第一の条件は、一般的な焼結機建屋内の雰囲気温度20〜40℃において、液体状態となることである。
したがって、液体燃料の融点は20℃未満であることが望ましく、さらに好ましくは、0℃未満とすべきである。その理由は、この条件を満たす液体燃料であれば、気温が低下する冬期においても、保温設備などの特別な対策を行わずとも配管凍結などのトラブルを回避することができるためである。
また、液体燃料の沸点は60℃以上であることが望ましい。これは、貯蔵タンク内での沸騰や気化などに起因するトラブルを防止し、配管内でのキャビテーション発生などを抑制するために必要な条件である。
常温における蒸気圧が低い液体燃料の場合には、焼結原料層に散布した液体燃料が、全て蒸発せずに排鉱されるケースが発生する。この場合は、残留した液体燃料は焼結機の後段工程に設置されたクーラーで赤熱状態の焼結鉱と接触して燃焼することになる。残留した液体燃料がクーラーで燃焼したとしても、焼結機の操業上、特段の問題が発生するわけではないが、供給した液体燃料が有効に焼結反応に活用されないことは本質的な問題である。このような液体燃料の焼結原料層内での残留を防ぐためには、常温における平衡蒸気圧が高い液体燃料を使用することが望ましく、具体的には20℃の蒸気圧が0.1kPa以上であることが望ましい。この蒸気圧は、一般的に物質の沸点と対応した物性であり、沸点での適用範囲としては175℃以下であることが望ましい。
本発明においては、これらの有機化合物のいずれか1種類を液体燃料として使用することで、十分な効果を発現させることができる。さらには、2種類以上の異なる有機化合物を混合した有機化合物や、精製度が低いために混合物として生産される中間製品などであっても、本発明に規定した融点、沸点および蒸気圧などの性状を満たす有機化合物であれば、同等の効果を享受することが可能である。
本発明における追加的な構成要素は、使用する液体燃料として、水酸基を有するアルコール化合物または化学構造式中に酸素原子を含有する有機化合物の1種類もしくは2種類以上からなる有機化合物であることが好ましい。
特許文献3に記載されているとおり、可燃性ガスを補助的な燃料として供給する場合には、同伴する空気に酸素を予混合して酸素濃度を高く調整することが燃焼性の改善に有効である。しかしながら、酸素製造に関しては、製造設備の建設コストと酸素の製造コストが極めて高いため、焼結機での多量使用は困難であり、実用化のための課題が多く残っているのが現状である。
本発明においては、支燃性の酸素を含有する液体燃料に着目して、通常、吸引空気から供給される酸素の一部を酸素含有液体燃料で置換することに大きな特長がある。
一般的な焼結原料層内での固体燃料燃焼反応においては、燃焼に必要な空気比が5を超えており、燃焼用の酸素を吸引空気で供給する場合には、理論空気量を大きく超えた過剰空気を吸引する必要があり、これが吸引ブロアーの電力消費量の増加や実質的な生産能力を制限する律速要因となっている。燃焼に必要な酸素の一部を、液体燃料で供給すれば、これらが直接燃焼に消費されるため、必要酸素量に見合った吸引空気量と過剰空気量の両方を削減することができる。
化学構造式中に酸素原子を含有する液体燃料としては、水酸基を含有するアルコール化合物、または、化学構造式中に酸素原子を含有する炭化水素、具体的には、カルボキシル基を含有する有機化合物、アルデヒド基を含有する有機化合物、あるいはエーテル結合を含有する有機化合物がある。これらの酸素含有有機化合物は、いずれも燃焼熱量相当の液体燃料効果を示すとともに、酸素供給源としての空気比低減効果が確認されている。しかしながら、これらの酸素含有有機化合物の中には、強い毒性を示す物質もあるため、実際上の取り扱いにあたっては、衛生管理の面で細心の注意を払う必要がある。毒性が比較的低く、酸素含有量の高い物質はアルコール類であり、メタノール49.9質量%、エタノール34.7質量%、ブタノールで21.6質量%の酸素含有量を持っており、これらを活用することが好ましい。
室温で液体状態の有機化合物は容易に混合する性質があるため、本発明に使用する液体燃料は必ずしも単体の物質である必要はなく、酸素含有有機化合物を任意の割合で混合した混合物であっても問題なく、割合に比例した吸引空気量の低減効果を享受できる。また、これらの混合は必ずしも散布前に実施する必要性はなく、異なる系統の散布ノズル配管を交互に配置して、異なる有機化合物を同一焼結原料層表面に散布し、焼結原料層内で混合使用する方法でも同等の効果を得ることができる。
まず、液体燃料の散布範囲は、点火炉出側から焼結完了位置に至るまでの焼結機機長方向の全範囲もしくは任意の範囲に設定する。ここで、焼結完了位置とは、焼結原料層内の全層厚範囲の焼結反応が完了した機長方向の位置を意味し、具体的には風箱における排ガス温度が250℃となる機長方向の位置と定義される。
液体燃料の散布範囲は、好ましくは、焼結機の点火炉8出側の壁より3m以降から、機長の80%地点にいたるまでの範囲とする。散布範囲の開始点を点火炉8出側の壁より3m以降とするのは、点火炉の異常燃焼時に点火炉外へ放出される火炎や火の粉によって、液体燃料が引火する危険性を避けるためである。本発明法のように高揮発性の液体燃料を使用する場合においては、特許文献1のように点火直後の表面に燃料を散布する方法では、防災リスクが大きく、十分な改善効果も得られない。散布範囲の終了点を焼結機長の80%地点とするのは、一般的な焼結機操業では、焼結原料層内での固体燃料の燃焼を焼結機長の80〜85%地点で終わるように制御するためである。
以上のように定めた液体燃料の散布範囲をさらにAゾーン,BゾーンおよびCゾーンの3つ(図示せず)に分割して、それぞれ異なる間隔で散布ノズル配管26を敷設する。Aゾーンについては、機長先頭より6m地点(第一風箱から6mの位置)から機長先頭より36m(機長の30%)地点までの範囲とし、1m間隔で散布ノズル配管26を設置する。Bゾーンについては、機長先頭より36m地点から60m(機長の50%)地点までの範囲とし、2m間隔で散布ノズル配管26を設置する。Cゾーンについては、機長先頭より60m地点から96m(機長の80%)地点までの範囲とし、3m間隔で散布ノズル配管26を設置する。したがって、この例においては合計55本の散布ノズル配管26を設置することになる。このようにゾーン毎に配管設置間隔を変えるのは、下流ほど散布流量を低くする流量制御に適合させる狙いであるとともに、定期修理に於けるパレット入れ替え作業の作業性を考えたものでもある。一般的には焼結パレット22の機長方向の長さは大きくとも1.5m程度であり、BゾーンおよびCゾーンの散布ノズル配管26の間隔であれば、配管を取り外すことなく焼結パレット22を天井クレーン(図示せず)で吊り出すことが可能である。
散布ノズル配管26については、5.5mの焼結パレット22の幅方向に均等に切れ目なく液体燃料28は散布できるように広角ノズルを配置する。散布ノズルの具体的な配置については、ノズルの構造によって多様な拡がり角を選定可能であるので、本発明で特に限定するものではないが、ノズル数を削減するために極端に大きな拡がり角をもつ広角ノズルを使うと、幅方向の散布量にバラツキが生じるのであまり好ましくない。代表的な散布ノズルの配置例としては、焼結パレット22のサイドウォール23上端高さより0.5m上方に散布ノズル配管26を設置し、0.5m間隔で配置した広角ノズルから40〜100°程度の拡がり角でなるべく広範囲に散布できるようにレイアウトすることが望ましい。
さらに好ましくは、サイドウォール23近傍の熱不足部分への液体燃料28の散布量を細かく制御するために、サイドウォール23近傍のパレット両端0.5m範囲については、拡がり角10°以内のノズルを0.1mピッチで配置することが効果的である。
Aゾーンにおいては、焼結原料層上部の熱不足部分に効果的に熱を与える必要があるため、単位質量当たりの発熱量が多く、焼結原料層内で遅燃性の有機化合物を多く供給することが望ましい。これに該当する有機化合物としては、n−オクタンや1−ブタノールなどが該当する。これらの液体燃料を、全燃料の合計発熱量の約15%に相当する熱量分だけ供給する。本発明者の検討によれば、約15%熱量相当の液体燃料の散布によって、焼結原料層上部の温度上昇曲線の最高温度を中下層並の1400℃にまで引き上げることが可能である。この量は焼結鉱1t当たりn−オクタンであれば4.5kg、1−ブタノールの場合には6kg程度の原単位に相当する。これらの液体燃料添加量の最適値は、焼結機毎の固体燃料の分布状態や使用燃料の種類などによって異なるものであるが、一般的には熱量相当で5〜25%の範囲に存在する。
Bゾーンでは、中層の燃焼帯への液体供給であり、熱量相当で3〜5%の範囲で、比較的高い蒸気圧を持つn−ヘプタンやエタノールなど、あるいはさらに蒸気圧の高いn−ヘキサンやメタノールなどを散布することが望ましい。中層ならびに下層での燃料燃焼においては、酸素含有量が多いアルコール類を使用する方が、空気比の低減や風量原単位の低減などの効果を増大させる傾向があり、さらに好ましい。
Cゾーンでは、下層の燃焼帯への燃料供給であり、熱量相当で0〜5%の範囲で、蒸気圧の高いn−ヘキサンやメタノールなどを散布することが望ましい。蒸気圧の低い液体燃料をこのゾーンに散布すると、気化しないまま排鉱される無駄な燃料の比率が増えることになるため、5kPa以上の蒸気圧をもつ有機化合物とすることが好ましい。また熱量相当5%を超える量を散布した場合にも、気化しないまま排鉱される可能性が高くなるとともに、下層の燃焼溶融帯が厚くなりすぎて、通気性の悪化などの悪影響を招く危険性が生じる。
また、各ゾーンにおける散布量は必ずしも均一にする必要はなく、むしろ、散布ノズル配管の1本毎に細かな流量調整を行い、ゾーン間の境目においてもなだらかで連続的な散布量分布となるように調整することが望ましい。
以上の説明においては、焼結原料中の固体燃料の配合率を一定としたままで液体燃料を散布する方法について説明したが、本発明においては、A、BおよびCの各ゾーンにおける液体燃料供給量をさらに高めることにより、焼結原料中の固体燃料の配合率を削減することも可能である。その場合には、固体燃料の削減による減熱量と液体燃料の増加による増熱量がバランスするように配合調整を行うことが望ましい。
酸素濃度の測定法としては、図1に例示したような焼結パレット直下の全風箱16に酸素濃度計20を設置して、燃焼の状態を常時監視することが最も好ましい。しかし、酸素濃度計は高価な計測器であるため、全ての風箱16への設置が困難である場合には、最も液体燃料の散布量が多いノズル位置の直下における風箱内の酸素濃度を測定することが望ましい。酸素濃度の測定装置としては、非接触型のレーザー式酸素濃度計などが信頼性も高く望ましいが、固体電解質プローブによる酸素濃度計などでも充分適用可能である。
風箱16内の酸素濃度を定期的に監視して、酸素濃度が失火限界の2%未満の場合には、図2に例示した液体燃料散布装置の流量調整バルブ27を絞る調整を行う。この流量制御は、シーケンサーなどで自動的に行うことが望ましいが、通常操業の範囲ではあまり大きな変動要因がないため、作業標準に基づいた作業者の手動調整でも対応可能である。
多くの一般的な焼結機においては、図1に例示したように煙突もしくは煙突入り口のダクトに酸素濃度計ならびにNOx計21が既に設置されており、地方自治体毎の環境基準に応じたNOx排出量および排出濃度の管理が実施されている。本発明では、焼結機排ガスのNOx排出濃度が管理値を超えた場合には、液体燃料の散布量を増加させることによって、固体燃料の燃焼温度を上昇させ、Fuel NOxの生成量を低減させる。通常NOx排出量は1時間値で管理されており、迅速な対応が必要となるため、一連の制御アクションについては自動シーケンス化することが望ましい。
内径300mmφ×高さ600mmの焼結試験装置を用いて、表1に示す配合原料を装入し、焼結試験を行った。焼結原料層表面への着火開始後3分から8分までの5分間に、表3に示す各種の液体燃料を配合原料1トン当たり7kg散布する焼結試験を実施し、焼結鉱の生産率、成品歩留まり、品質および排ガス酸素濃度の変化を測定した。試験結果のまとめを表4に示す。なお、比較例5に示した重油の散布試験については、点火開始3分後に散布開始する本試験条件では重油が未燃焼のまま残ったため、低下開始1.5分から3.0分までの1.5分間に散布するよう試験条件を変更した。
一方、液体燃料としてフェノールを用いた比較例2については、融点の高いフェノールの一部が焼結原料層内で固化したために、焼結原料層の通気性が低下し、比較例1よりもFFS(フレームフロントスピード)や焼結鉱の生産性が悪化した。
液体燃料としてアセトンを用いた比較例3については、焼結鉱の成品歩留や強度の改善効果が実施例1〜9の液体燃料に比べて相対的に小さく、FFSはむしろ低下する傾向が見られた。結果としての焼結鉱の生産率の改善効果も限定的であった。これは、アセトンが低沸点かつ高蒸気圧であるために、散布したアセトンが焼結原料層の上方空間で火炎燃焼し、焼結原料層内の温度分布における高温部分の温度を上昇させる本来効果が充分に得られなかったためと考えられる。
液体燃料としてエチレングリコールを用いた比較例4については、比較例1に対する明確な差異が確認できなかった。エチレングリコールは蒸気圧が低いため、焼結原料層内で充分に蒸発できず、焼結ケーキ内に残留したままクーラーへと排鉱されたものと思われる。
液体燃料として重油を用いた比較例5については、散布直後より焼結鉱表面での火炎と発煙が見られたものの、生産性ならびに焼結鉱品質は改善した。しかしながら、排ガスのSOx濃度については、比較例1あるいは実施例1〜9のいずれに比べても、大幅に悪化することが確認された。
焼結面積600m2、パレット幅5m、機長120mの焼結機に対して、図2に示すような液体燃料散布ノズルを設置し、液体燃料の散布量ならびに散布位置を変えた操業試験を行った。本試験で用いた原料の配合を表5に示す。本試験中は、原料配合は変えないものとし、焼結機の層厚を580mm、負圧を1600mmAqで固定した安定条件において操業試験を行った。
液体燃料散布の試験水準を表6に示す。エタノールを液体燃料として、配合原料1トン当たり3.5kgもしくは7.0kgに相当する量を散布し、液体燃料を散布しない操業との比較試験を行った。散布位置はAゾーン(機長の5〜30%の範囲)、Bゾーン(機長の30〜50%の範囲)およびCゾーン(機長の50〜80%の範囲)の3つに区分し、表6に示す複数のパターンに調整して操業試験を行った。
エタノールの散布パターンを変更した実施例11〜実施例15の結果比較では、実施例11〜13の水準、すなわちAゾーンでの散布比率を60%以上とした条件において、焼結鉱の生産率や強度などの改善効果が確認された。
Aゾーンでの散布比率を40%とした実施例14においては、焼結鉱の生産率や強度の改善効果はやや小さくなったが、排ガス中の酸素濃度とNOxの低減に関しては、比較例5や最大の生産率を示した実施例12よりも大きな改善が見られた。
Aゾーンの散布比率を20%とし、BゾーンおよびCゾーンでの散布比率を40%とした実施例15については、焼結鉱の成品歩留と強度は改善したものの、FFSが大きく悪化したために、生産率は比較例5に対して改善は見られなかった。しかしながら、排ガス濃度については、実施例13あるいは14とほぼ同等のNOx低減効果が確認できた。
表7の実施例11と同一の焼結機、原料配合、操業条件ならびに液体燃料散布条件において、液体燃料散布ノズルの幅方向散布量を調整した試験を行った。この試験においては、焼結パレットの両側のサイドウォールより500mm範囲の部分に対して、中央部よりも50%多く液体燃料を散布した。ただし、液体燃料の散布総量は実施例と同じく配合原料1トン当たり7.0kgに合わせた。
本試験で得られた焼結ケーキの歩留分布の調査結果を図7に示す。幅方向に均一にエタノールを散布した条件(図7(a))では、サイドウォール近傍の歩留低下が見られたが、サイドウォール近傍の散布量を増加させた条件(図7(b))では、サイドウォールの間際まで高い歩留を有する焼結ケーキが製造された。この結果、焼結操業に於ける焼結鉱の成品歩留が実施例11に比べて2.0%向上し、生産率についても0.8t/d/m2の改善効果が確認された。
2 ミキサー
3 焼結原料
4 サージホッパー
5 ドラムフィーダー
6 床敷ホッパー
7 充填層
8 点火炉
9 焼結ケーキ
10 1次クラッシャー
11 クーラー
12 1次篩
13 2次クラッシャー
14 2次篩
15 3次篩
16 風箱
17 電気集塵機
18 メインブロアー
19 煙突
20 酸素濃度計
21 酸素濃度計およびNOx計
22 焼結パレット
23 サイドウォール
24 液体燃料貯蔵タンク
25 液体燃料供給管(ヘッダー管)
26 散布ノズル配管
27 流量調整バルブ
28 液体燃料
Claims (12)
- ドワイトロイド式焼結機の焼結パレットに、鉄含有原料、副原料および固体燃料を配合した焼結原料を装入し、点火炉によって該焼結原料表層部の固体燃料に着火させたのち、焼結原料層の上方から下方へ空気を吸引して焼結反応を連続的に進行させる焼結鉱製造プロセスにおいて、前記焼結パレットが点火炉出側から焼結完了位置に至るまでの焼結機機長方向の全範囲もしくは任意の範囲に設定された液体燃料散布範囲について、焼結原料層表面の上部より沸点が60℃以上175℃以下の範囲にある液体燃料を散布することを特徴とする焼結鉱の製造方法。
- 前記液体燃料散布範囲において、点火炉出側から焼結完了位置に向かう焼結機機長方向の下流側ほど液体燃料の単位面積当たりの散布量が少なくなるように、段階的に液体燃料の散布量を調整することを特徴とする請求項1に記載の焼結鉱の製造方法。
- 前記液体燃料散布範囲において、点火炉出側から機長の前半30%位置に至るまでの範囲に、前記液体燃料の全散布量の80%以上を散布することを特徴とする請求項2に記載の焼結鉱の製造方法。
- 前記固体燃料および前記液体燃料により投入される全熱量の1%以上50%未満に相当する熱量を液体燃料で供給することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼結鉱の製造方法。
- 前記焼結パレット下部に配置した風箱もしくは排風支管における排ガス中の酸素濃度の測定値が2%以上となるように、前記液体燃料散布範囲における液体燃料の散布量を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の焼結鉱の製造方法。
- 前記焼結パレット下部に配置した各風箱を通して排出された焼結機排ガス中のNOx濃度の測定値が基準値以下となるように、前記液体燃料散布範囲における液体燃料の散布量を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の焼結鉱の製造方法。
- 前記焼結パレットの幅方向において、両側のサイドウォールからそれぞれ500mmの範囲における液体燃料の散布量がその他の範囲よりも多くなるように液体燃料を散布することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の焼結鉱の製造方法。
- 前記液体燃料として、20℃の常温状態における蒸気圧が0.1kPa以上となる有機化合物を用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の焼結鉱の製造方法。
- 前記液体燃料は、鎖式脂肪族炭化水素、脂環式ならびに芳香族炭化水素のうちの1種または2種以上からなる有機化合物であることを特徴とする請求項8に記載の焼結鉱の製造方法。
- 前記液体燃料は、水酸基を有するアルコール類または化学構造式中に酸素原子を含有する炭化水素の1種類もしくは2種類以上からなる有機化合物であることを特徴とする請求項9に記載の焼結鉱の製造方法。
- 複数の焼結パレットが無端連結された焼結パレット群と、焼結パレット内に焼結原料を供給するための原料供給装置と、焼結原料表層部の固体燃料に着火するための点火炉と、焼結原料層の上方から下方へ空気を吸引するために各焼結パレット直下に設置された風箱とを備える焼結機において、前記点火炉出側の壁より3m以降から機長の80%地点にいたるまでの範囲に、前記焼結原料層の上部から沸点が60℃以上175℃以下の範囲にある液体燃料を該焼結原料層表面へ散布するための液体燃料供給装置を設置していることを特徴とする焼結機。
- 前記液体燃料供給装置が、前記焼結パレットの幅方向に複数の散布ノズルを備えている散布ノズル配管を、機長方向の下流側ほど液体燃料の単位面積当たりの散布量が少なくなるようにそれぞれの設置間隔を変えて複数配置していることを特徴とする請求項11に記載の焼結機。
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