JP4589692B2 - 鋳型模型製作用2液アクリル系接着剤、および該接着剤を用いた接着工法 - Google Patents
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Description
また本発明は、該接着剤を用いて鋳造用消失模型を製造する方法に関する。
1)目的とする鋳造用消失模型を構成する複数の模型部品をそれぞれ作製し、
2)作製した消失模型部品同士を接着剤で接合する、ことにより製造される。
従って、特に自動車や船のエンジンおよび精密工作機械等の高い精度が要求される鋳物を製造する場合に、この燃焼残渣の発生が問題となっていた。
鋳造用消失模型を構成する模型部品を接合させるために用いられる接着剤の燃焼残渣について検討された先行技術としては、アセタール樹脂粉末を添加したEVA(ethylene−vinylacetate−copolymer)系のホットメルト接着剤が提案されているに過ぎない(特許文献1参照)。
そのために、鋳造用消失模型の製造において、それを構成する模型部品を接合するための接着剤としては、あくまでも使用しやすい接着剤、例えば二液エポキシ系、一液ウレタン系、尿素系などの接着剤が用いられてきた。
また、二液エポキシ系接着剤は、硬化反応が付加重合反応により進行するため、二液をよく混合することが必須であり、該混合が十分でない場合には接着強度が向上しないという問題があった。一液ウレタン系接着剤及び尿素系接着剤は、エポキシ系接着剤よりもさらに硬化速度が遅い上に、接着強度も若干弱いという問題があった。
これに対して、近年、鋳造用消失模型の基材として好適なメタクリル系樹脂発泡体(特開2001−233986号公報)が報告された。該メタクリル系樹脂発泡体の燃焼残渣は、ポリスチレン発泡体の燃焼残渣1.0に対して約0.01であり、顕著に低減されていることがわかった。その原因としては、メタクリル系重合体がその分子中に酸素原子を多く有するためであると推察される。
その結果、ポリスチレン発泡体の燃焼残渣を1.0とした場合に、二液エポキシ系接着剤の燃焼残渣は9.0、一液ウレタン系接着剤の燃焼残渣は5.2、尿素系接着剤の燃焼残渣は17.9であり、ポリスチレン発泡体の燃焼残渣に対して、いずれの接着剤の燃焼残渣も、非常に多いことがわかった。
23℃、50%RHの恒温恒湿室内で、各接着剤の硬化物(二液接着剤の場合は、二液それぞれを等質量混合して得られた硬化物)について、JIS K7120に準拠して、以下の条件にて示差熱分析を行い、燃焼残渣の重量を測定した。
測定機器 :セイコー電子工業(株)製 TG/DTA220
試料 :5φ白金製オープン型試料容器に10mgにて測定
測定温度 :20〜800℃、昇温スピード=10℃/min、800℃到達時点で測定終了
アルゴン気流:300ml/min
子や水素原子と比較して燃焼しにくい窒素原子を有していることが推定された。そこで本発明者らは、エステル基に基づく酸素原子を分子中に多く有する重合性(メタ)アクリレートを主成分とする二液アクリル系接着剤に着目し、この二液アクリル系接着剤について、前記と同様にして燃焼残渣の量を測定した。その結果、ポリスチレン発泡体の燃焼残渣を1.0とした場合に、該二液アクリル系接着剤の燃焼残渣は1.3〜3.5であり、前述の従来用いられてきた接着剤と比較して、顕著に燃焼残渣が少ないことを見出した。
しかしながら、従来の二液アクリル系接着剤に含まれる重合性(メタ)アクリレートは、メタクリル系樹脂発泡体を溶解させる性質(以下、この性質を「メタクリル系樹脂発泡体に対する溶解性」とも称する)が強い。よって、従来のアクリル系接着剤は、メタクリル系樹脂発泡体製の鋳造用消失模型を構成する模型部品に塗布された場合に、硬化する前に模型部品を溶解させてしまい、製造された鋳造用消失模型に隙間を生じさせたり、模型寸法を変化させやすい。さらには、十分な接着力が得られないという問題もある。
1)その硬化物の燃焼残渣の発生が低減されており、
2)メタクリル系樹脂発泡体を溶解する性質が弱く、
3)模型部品を強力に接合することができ、かつ
4)模型部品を短時間で接合することができることを特徴とする、アクリル系接着剤を提供することを課題とする。
また、このアクリル系接着剤を用いて、容易にかつ短時間で鋳造用消失模型を製造する方法を提供することを課題とする。
前記(A)の80質量%以上が、下記(イ)〜(リ)からなる群から選ばれる一種または二種以上の(メタ)アクリレートであるメタクリル系樹脂発泡体製の鋳造用消失模型を製造するための二液アクリル系接着剤。
(ロ)分子量が140以上のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート
(ハ)分子量が145以上の水酸基含有(メタ)アクリレート
(ニ)分子量が230以上のポリエステル(メタ)アクリレート
(ホ)分子量が210以上のフェノキシアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート
(へ)分子量が450以上のアルコキシアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート
(ト)分子量が460以上のビスフェノールAまたはビスフェノールFのアルキレ
ンオキサイド変性(メタ)アクリレート
(チ)分子量が305以上のポリアルキレングリコール変性(メタ)アクリレート
(リ)その他分子量が600以上の(メタ)アクリレート
[2] [1]に記載のアクリル系接着剤であって、前記二剤のうちの一方を、23℃;50%RHの恒温恒湿室内で、メタクリル系樹脂発泡体の平滑面に0.1g/cm2塗布し、塗布された剤を10分後に拭き取ったときのメタクリル系樹脂発泡体に形成された窪みの深さが、0.2mm以下であることを特徴とする接着剤。
[3] [1]に記載のアクリル系接着剤であって、23℃;50%RHの恒温恒湿室内で硬化させた硬化物の燃焼残渣(燃焼条件:アルゴン雰囲気下、800℃)の質量が、燃焼前の硬化物の質量の4%以下であることを特徴とする接着剤。
[4] メタクリル系樹脂発泡体製の鋳造用消失模型を構成する模型部品1及び模型部品2の、それぞれの接合面を互いに貼り合わせるステップを含む、メタクリル系樹脂発泡体製の鋳造用消失模型を製造する方法であって、
前記貼り合わせるステップが、
(a)[1]に記載のアクリル系接着剤の二剤のうちの一方を、模型部品1の接合面に塗布する工程、
(b)[1]に記載のアクリル系接着剤の二剤のうちのもう一方を、模型部品2の接合面に塗布する工程、および
(c)前記模型部品1の接合面と、前記模型部品2の接合面とを貼り合わせる工程を含む方法。
[5] メタクリル系樹脂発泡体製の鋳造用消失模型を構成する模型部品1及び模型部品2の、それぞれの接合面を互いに貼り合わせるステップを含む、メタクリル系樹脂発泡体製の鋳造用消失模型を製造する方法であって、
前記接合面を貼り合わせるステップが、
(a)[1]に記載の接着剤の二剤の両方を模型部品1の接合面に塗布する工程、および
(b)前記模型部品1の接合面と、前記模型部品2の接合面を貼り合わせる工程を含む方法。
また本発明によって提供される方法を用いることにより、鋳造用消失模型を短時間かつ容易に製造することもできる。
本発明のアクリル系接着剤は、重合性単量体からなる(A)成分、有機過酸化物からなる(B)成分、バナジウム化合物からなる(C)成分、及び酸性リン酸化合物からなる(D)成分を必須成分として含むことを特徴とするが、これら以外の任意の成分、例えば硬化促進剤や重合禁止剤などを含むこともできる。
A)成分に含まれる重合性(メタ)アクリレートは一種類でもよいが、二種以上の組み合わせでもよい。
上記含有率が80質量%未満であると、(A)成分を含む本発明の接着剤がメタクリル系樹脂発泡体を溶解させることがあるため、本発明の効果が損なわれることがある。
すなわち、例えば、フェノキシアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートであって、かつポリアルキレングリコール変性(メタ)アクリレートでもある、分子量300の(メタ)アクリレートは、(チ)には該当しないが(ホ)には該当するので、(イ)〜(リ)から選ばれる(メタ)アクリレートに含まれる。
「(イ)〜(リ)に記載の(メタ)アクリレートから選ばれる1又は2以上の組み合わせ」としては、好ましくは、(ト)単独;(チ)単独;(ト)及び/又は(チ)ならびに(ロ)、(ハ)及び(ニ)のうちの1種以上の組み合わせが挙げられる。
脂肪族(メタ)アクリレートとは、CH2=C(−R)COOX(R=HまたはMe)で表される(メタ)アクリル酸エステルであって、Xが脂肪族基であるものをいう。ここで脂肪族基Xは、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、飽和及び不飽和のいずれでもよいが好ましくは飽和である(従って、Xはアルキル基であることがより好ましい)。また、脂肪族基Xは、鎖状(直鎖状及び分岐鎖状でもよい)及び環状のいずれでもよい。
例えばn−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートのような脂環式(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なかでも、分子量が240以上である、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等は、本発明の接着剤により良好な硬化性および接着性を付与することができるので好ましい。
カルボキシル基含有(メタ)アクリレートとは、CH2=C(−R)COOX(R=HまたはMe)で表される(メタ)アクリル酸エステルであって、Xがカルボキシル基(−COOH)を有する基であるものをいう。さらに好ましくは、下記式で表される化合物が挙げられる。
水酸基含有(メタ)アクリレートとは、CH2=C(−R)COOX(R=HまたはMe)で表される(メタ)アクリル酸エステルであって、Xが水酸基(−OH)を有する基であるものをいう。
例えばヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、および2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどのエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なかでも分子量が200以上である、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、および2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどのエポキシ(メタ)アクリレート等は、本発明の接着剤により良好な硬化性および接着性を付与することができるので好ましい。
ポリエステル(メタ)アクリレートとは、ポリエステルの末端ヒドロキシ基の一方または両方を、(メタ)アクリル酸と縮合反応させたものである。該ポリエステルとしては、ポリカプロラクトン(HO−[CO(CH2)5O]n−H)、ビスポリエチレングリコールフタレート等が好ましく例示される。
具体的にはω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、ビスポリエチレングリコールフタレートジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも分子量が300以上である、ω−カルボキシポリカプロラクトン(n=2以上)モノ(メタ)アクリレート、ビスポリエチレングリコールフタレートジ(メタ)アクリレート等は、本発明の接着剤に、より良好な硬化性および接着性を付与することができるので好ましい。
フェノキシアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートとは、フェノキシアルキレンオキサイドまたはフェノキシ(ポリ)アルキレンオキサイドの末端ヒドロキシ基を(メタ)アクリル酸と縮合反応させたものである。フェノキシアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートのフェノキシ基のフェニル環上には任意の置換基(好ましくはアルキル基、例えばノニル基やクミル基)が存在しうる。また、フェノキシアルキレンオキサイドの例としてはフェノキシポリエチレンオキサイドが挙げられる。
(ホ)としては、具体的には下記式で表される、置換もしくは無置換のフェノキシポリエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレートが例示される。置換フェノキシポリエチレ
ンオキサイド変性(メタ)アクリレートとしては、ノニルフェノキシポリエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、クミル(好ましくはp−クミル)フェノキシエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なかでも、分子量が325以上であるフェノキシポリエチレンオキサイド(n=4以上)変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールポリエチレンオキサイド(n=4以上)変性(メタ)アクリレート等は、本発明の接着剤に、より良好な硬化性および接着性を付与することができるので好ましい。
アルコキシアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートとは、アルコキシアルキレンオキサイドまたはアルコキシポリアルキレンオキサイドの末端ヒドロキシ基を(メタ)アクリル酸と縮合反応させたものである。アルコキシとしては、メトキシまたはエトキシが好ましく例示される。
例えば、下記式で表されるアルコキシ(好ましくはメトキシ)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートは、ビスフェノールAのヒドロキシル基の一方または両方(好ましくは両方)がアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートにより修飾されたものである。
また、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートは、ビスフェノールFのヒドロキシル基の一方または両方(好ましくは両方)がアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートにより修飾されたものである。
例えば下記式で表されるビスフェノールAのポリエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、分子量が800以上であるビスフェノールAのポリエチレンオキサイド変性(n=10)ジ(メタ)アクリレートが好ましく例示される。
例えば、下記式で表されるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、なかでも、分子量が500以上であるポリエチレン(n=9以上)グリコールジ(メタ)アクリレート等は、本発明の接着剤に、より良好な硬化性および接着性を付与することができるので好ましい。
例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハ
イドロパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシデカノエート等のパーオキシエステル類;1,5−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類;アセト酢酸エチルパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;過酸化ベンゾイル等のジアシルパーオキサイド類が挙げられる。
これらのうち、ハイドロパーオキサイド類は、本発明の接着剤の接着性を高めることができるので好ましく例示される。
重合性単量体からなる(A)成分と、ラジカル開始剤として作用する有機過酸化物からなる(B)成分とを含む接着剤は、ラジカル重合により硬化する場合に空気と接触すると、空気中の酸素によりラジカル重合反応が阻害されるために硬化しにくい。特に、本発明の接着剤の被着材であり得るメタクリル系樹脂発泡体の接着面にも多量の空気が存在する(該接着面は、通常、発泡体の切断面であるため、多量の空気が存在する)ため、該発泡体に接着剤を塗布した場合にラジカル重合反応が阻害されやすく、硬化性が悪化しやすい。従って、本発明の接着剤は、バナジウム化合物からなる(C)成分を含むことが好ましい。
(C)成分としては、バナジルアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネート、ナフテン酸バナジル等が用いられる。
本発明の接着剤における(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.02〜3質量部であることが好ましく、0.05〜1質量部であることがより好ましい。
(D)成分としては、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、フェニルホスフェート、ジフェニルホスフェート、モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等の酸性リン酸エステル類;フェニルホスホン酸、ジフェニルホスホン酸等のホスホン酸類;フェニル亜ホスホン酸、ジフェニル亜ホスホン酸等の亜ホスホン酸類;エチルピロホスフェート、ブチルピロホスフェート等の酸性ピロリン酸エステル類;リン酸、亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸等のリンのオキシ酸等が用いられる。
本発明の接着剤における(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.05〜5質量部であることが好ましく、0.2〜3質量部であることがより好ましい。
α−ヒドロキシカルボニル化合物としては、カルボニル基のα炭素にヒドロキシル基を有する、カルボン酸、カルボン酸エステル、ケトン、アルデヒドなどが挙げられる。
具体的には、例えば1)乳酸、酒石酸、リンゴ酸、グリコール酸、クエン酸等のα−ヒドロキシカルボン酸、2)乳酸メチル、乳酸エチル、グリコール酸エチル等のα−ヒドロキシカルボン酸エステル、3)ヒドロキシアセトン、ジヒドロキシアセトン、アセトイン
、ベンゾイン等のα−ケトール類、4)α−ヒドロキシカルボン酸と、エポキシ化合物あるいはオキサゾリン化合物との付加反応物などが挙げられる。これらが単独で、あるいは、2種以上を組み合わされて含有され得る。
本発明の接着剤におけるα−ヒドロキシカルボニル化合物の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.02〜3質量部であることがより好ましい。
ラジカル重合禁止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェール、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ベンゾキノン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム、シュウ酸、N−メチル−N−ニトロソアニリン、N−ニトロソジフェニルアミン等が挙げられる。
さらに、本発明の接着剤は染料や顔料等を含むこともできる。
また、(D)成分は二剤のいずれか又は両方に含有され得るが、好ましくは(C)バナジウム化合物と同一の剤に含有される。保存安定化剤として作用しうるためである。
X剤に含まれる(A)成分の重合性単量体の組成と、Y剤に含まれる(A)成分の重合性単量体の組成は、同一でも異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
二剤に分けることにより、調製してから使用されるまでの間の保存が可能となるとともに、一且使用した後の残分の再保存も可能となり便利である。
X剤またはY剤の粘度が50mPa・s未満であると、それを被着材に塗布した場合に被着材へ染み込みやすくなり、接着強度が不十分となる傾向がある。一方、X剤またはY剤の粘度が20000mPa・sを超えると、被着剤の塗布面に均一に塗布しにくくなり、貼り合わせ後の強い圧締が必要となり、硬化速度も遅くなる傾向がある。
g/cm2塗布し、塗布された剤を塗布10分後に拭き取ったときのメタクリル系樹脂発泡体に形成された窪みの深さが、0.2mm以下であることをいう。
ここで、メタクリル系樹脂発泡体としてはカネパールAX(株式会社カネカ;商品名)を用いることができる。「平滑面」とは、表面粗さ形状測定機を用いて、測定速度=0.3mm/sec、測定長さ=10mmの条件で測定したときの表面の高低差の最大値が50μm以下である面をいう。表面粗さ形状測定機としては、サーフコム570A((株)東京精密製)を用いることができる。「拭き取る」とは、剤を吸収できる清潔なウェス等を用い、発泡体を傷つけないように手で軽く拭き取ることをいう。
前記硬化時間は、−10℃〜35℃程度において本発明の接着剤を、2.5mlのポリエチレン製容器中でX剤、Y剤を各0.5gずつ混合し、混合開始から混合物が硬化するまでの時間を計測することにより測定することができる。
23℃、50%RHの恒温恒湿室内で、本発明の接着剤のX剤とY剤を等質量混合して得られた硬化物について、JIS K7120に準拠して、以下の条件にて示差熱分析を行い、燃焼残渣の重量を測定する。得られた結果を残存率(%)で示す。
測定機器 :セイコー電子工業(株)製 TG/DTA220
試料 :5φ白金製オープン型試料容器に10mgにて測定
測定温度 :20〜800℃、昇温スピード=10℃/min、800℃到達時点で測定終了
アルゴン気流:300ml/min
硬度の調整は、重合性(メタ)アクリレートや有機充填剤の種類および含有量を適宜変更するにより調整することができる。
ショアー硬度Dが60を超えると、貼り合わせ後接着面からはみ出した接着剤の硬化物が硬すぎ、取り除く際に被着材を傷つけることがある。
(A)および(D)成分をステンレス製容器に仕込み、撹拌しながら必要に応じて安定
剤、粘度調整剤等の添加剤を加え均一な状態になるまで撹拌する。添加剤の溶解または均一な分散が困難である場合は、事前に溶解しやすい成分に添加剤を溶解又は分散させたものを加えるか、系を80℃以下の温度に加熱する。その後、(加熱した場合には、35℃以下に冷却して)、(B)成分を添加・撹拌してX剤を得る。
同様に(A)および(D)成分をステンレス製容器に仕込み、撹拌しながら(C)成分および必要に応じて安定剤、粘度調整剤等の添加剤を加え均一な状態になるまで撹拌してY剤を得る。添加剤の溶解または均一な分散が困難である場合は、事前に溶解しやすい成分に添加剤を溶解又は分散させたものを加えるか、系を80℃以下の温度に加熱する。
X剤またはY剤を塗布する方法としては、刷毛塗り法、ロールコーター法、スプレー法等公知の塗布方法を用いることができる。
また、さらに必要に応じて、貼り合わされた被着材1および2を圧締および/または仮固定する。具体的にはクランプにより挟み込んだり、加重をかけたり、コールドプレスで加圧する等の方法をとることができる。
被着材1に塗布された接着剤は、被着材1の塗布面全体に薄く塗布されていることが好ましい。接着剤を塗布面全体に薄く塗布するために、塗布された接着剤を刷毛やバーコーター等を用いて引き延ばすことができる。また、スタティックミキサーにX剤とY剤を加圧して供給して混合し、この混合液をスプレーすることにより被着材1に塗布することもできる。このようにすれば、X剤とY剤を混合する工程、混合物を被着材1に塗布する工程、およびこれを薄く引き延ばす工程を一度に済ますことができ、最も効率的である。
接着剤を塗布された被着材1は、被着材2と貼り合わせられる。
さらに、貼り合わされた被着材1と2を圧締および/または仮固定することもできる。具体的にはクランプにより挟み込んだり、加重をかけたり、コールドプレスで加圧する等の方法をとることができる。
前記の通り、本発明の接着剤は任意のものを接着させることができるが、特にメタクリル系樹脂発泡体同士を接着するのに適している。すなわち、本発明の接着剤の好ましい被着材はメタクリル系樹脂発泡体である(但し、これに限定されない)。以下、被着材として好ましいメタクリル系樹脂発泡体について説明する。
としては、水蒸気等の熱媒体を用いて型内発泡させる方法、または押出発泡させる方法など、任意の方法を採用することができる。
前記発泡剤としては、通常の易揮発性発泡剤を用いることができる。易揮発性発泡剤としては、プロパン、ブタン、ペンタンなどの脂肪族炭化水素、シクロブタン、シクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ジフルオロエタン、テトラフルオロエタンなどのオゾン破壊係数がゼロであるフッ化炭化水素、および二酸化炭素などが挙げられる。これらを単独で、もしくは2種以上を併せて用いることができる。発泡性メタクリル系樹脂における発泡剤の含有量は、3質量%〜12質量%であることが好ましい。
なお、発泡性メタクリル系樹脂は、粒子状で製造および使用されることが多いので発泡性メタクリル系樹脂粒子又は発泡性メタクリル系樹脂ビーズと称されることもある。
好ましいメタクリル系樹脂としては、特開2001−233986号公報に記載されているメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。すなわち、1)メタクリル酸メチル70〜100質量%、2)これと共重合可能な単官能不飽和単量体0〜30質量%、3)これらと共重合可能な多官能性単量体0.2ビニル基mol%以下、からなる単量体組成物を重合して得られるメタクリル酸メチル系樹脂が好ましく例示される。なお、ビニル基mol%とは、官能基の当量を%で表した単位である。
より好ましい単官能不飽和単量体としては、1)メタクリル酸エステル、または2)アクリル酸エステルが挙げられる。
ら得られる樹脂の発泡体は、燃焼残渣の発生が十分に抑制され得るからである。
単官能連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類、チオグリコール酸エステル類等が挙げられる。
多官能性連鎖移動剤としては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール水酸基をチオグリコール酸または3−メルカプトプロピオン酸でエステル化したものが挙げられる。
本発明は、メタクリル系樹脂発泡体製の鋳造用消失模型を製造する方法(以下、「本発明の方法」とも称する)に関する。本発明の方法は、前記した本発明の接着剤を用いることを特徴とするが、それ以外は、通常の手段を適宜適用することができる。ここで、「メタクリル系樹脂発泡体製の鋳造用消失模型」とは、メタクリル系樹脂発泡体を基材とする鋳造用消失模型を意図する。
ただし本発明の方法は、1)または2)のステップが適宜変更されてもよいし、これら以外の任意のステップを含んでいてもよく、そのような方法はすべて本発明の範囲に含まれる。
前記a)工程、又はb)工程における塗布は、刷毛塗り法、ロールコーター法、スプレー法等の公知の塗布方法を用いて行うことができる。
X剤及びY剤を別々に塗布してから混合する場合は、混合用コテや刷毛を用いて塗布および混合することが好ましい。また、予めX剤及びY剤を混合する場合は、公知のミキサー、混合用コテ、または刷毛を用いて混合することができる。
びY剤を加圧して供給して混合し、この混合液を模型部品1の接合面の前面にスプレーして塗布する。このようにすれば、X剤とY剤の混合、得られた混合液の塗布、および塗布された接着剤を薄く引き延ばすことが一工程で実施されるので効率的である。
以下の実施例および比較例における接着剤はX剤及びY剤からなり、X剤に(B)成分(有機過酸化物)が含まれ、Y剤に(C)成分(バナジウム化合物)が含まれる。
(1) 各接着剤を構成するX剤およびY剤ぞれぞれの、メタクリル系樹脂発泡体に対する溶解性
(2) 各接着剤を用いてメタクリル系樹脂発泡体を接着した場合のセットタイム
(3) 各接着剤を用いてメタクリル系樹脂発泡体を接着した場合の接着強度
(4) 各接着剤の硬化物の燃焼残渣値
(1) X剤およびY剤それぞれの、被着材に対する溶解性
23℃、50%RHの恒温恒湿室内で、X剤またはY剤0.1gを、メタクリル系樹脂発泡体の平滑(表面粗さ形状測定機(サーフコム570A((株)東京精密製))を用いて、測定速度=0.3mm/sec、測定長さ=10mmの条件で測定したときの表面の高低差の最大値が50μm以下)な表面1cm2の正方形の範囲に塗布した。10分後、塗布したX剤またはY剤を、剤を吸収できる清潔なウェス等を用い、発泡体を傷つけないように手で軽く拭き取り、塗布した表面を観察した。表面が溶解されて窪んだ深さを計測した。
23℃、50%RHの恒温恒湿室内で、寸法20×40×50mmのメタクリル系樹脂発泡体からなる被着材1及び被着材2を用意した。被着剤1の20×40mmの面にX剤(0.1g)を、および被着剤2の20×40mmの面にY剤(0.1g)を、ハンドローラーを使用して塗布した。オープンタイム1分後に、それぞれ塗布面同士を貼り合わせた(ハネムーン接着)。圧力:49N/m2にて3分間圧締し、長さ100mm、幅40mm、厚さ20mmの接着体を作製した。
圧締開始から、所定時間毎(1分毎)に曲げ強度を測定し、9.8N/cm2以上の強度が得られた時間をセットタイムとした。
曲げ強度の測定は、JIS K7171に準拠して、支点間距離=70mm、試験速度=20mm/分にて行った。
23℃、50%RHの恒温恒湿室内で、寸法20×40×100mmのメタクリル系樹脂発泡体からなる被着材1及び被着材2を用意した。被着剤1の20×40mmの面にX剤(0.1g)を、被着剤1の20×40mmの面にY剤(0.1g)を、ハンドローラーを使用して塗布した。オープンタイム1分後に、それぞれ塗布面同士を貼り合わせた(ハネムーン接着)。圧力:49N/cm2にて3分間圧締し、長さ100mm、幅40mm、厚さ20mmの接着体を作製した。
圧締開始から24時間後に曲げ強度を測定した。曲げ強度の測定は、JIS K7171に準拠して、支点間距離=70mm、試験速度=20mm/分にて行った。
23℃、50%RHの恒温恒湿室内で、各接着剤を構成するX剤及びY剤を等質量ずつ混合して硬化させた。得られた硬化物の10mgについて、JIS K7120に準拠して、以下の条件に従い示差熱分析を行い、燃焼残渣の質量を測定した。得られた結果を残存率(%)で示した。
測定機器 :セイコー電子工業(株)製 TG/DTA220
試料 :5φ白金製オープン型試料容器に10mgにて測定
測定温度 :20〜800℃、昇温スピード=10℃/min、800℃到達時点で測定終了
アルゴン気流:300ml/min
[実施例1〜4、比較例1]
表1に示したX剤、Y剤からなる接着剤を調製した。各接着剤について、前記に従って性能を評価した。それらの結果を表1に示す。
1)M−600Aとは、共栄社化学(株)製の2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートであり、
2)M―5300とは、東亞合成(株)製のω−カルボキシポリカプロラクトン(n=2)アクリレートであり、
3)M−102とは、東亞合成(株)製のフェノキシエチレンオキサイド変性(n=4)アクリレートであり、
4)M−90Gとは、新中村化学工業(株)製のメトキシポリエチレングリコール(n=9)メタクリレートであり、
5)BPE−500とは、新中村化学工業(株)製のビスフェノールAのエチレンオキサイド変性(n=10)ジメタクリレートであり、
6)14Gとは、新中村化学工業(株)製のポリエチレングリコール(n=14)ジメタクリレートである。
一方、比較例1の接着剤は、(A)重合性単量体の70質量%が、(イ)〜(リ)から選ばれた重合性(メタ)アクリレートであり、残りの30質量%が、メタクリル酸(分子量:86)である二液アクリル系接着剤である。
実施例1〜4の接着剤のうち、セットタイムの点から、実施例1、3、4の接着剤が良好な結果を与えた。これは、実施例2の接着剤よりも、分子量の大きい重合性(メタ)アクリレートの比率が高いためであると推察される。
表2に示したX剤およびY剤からなる接着剤を調製した。調製された各種接着剤を、市販の二液エポキシ系接着剤(比較例4)とともに、その性能を評価した。比較例4のエポキシ系接着剤は、主剤と硬化剤を1:1(質量比)で混合して試験した。これらの結果を表2に示す。
7)HO−MSは、共栄社化学(株)製のコハク酸2−メタクリロイルオキシエチルであり、
8)GMRは、日本油脂(株)製のグリセリンジメタクリレートであり、
9)BPE−1300は、新中村化学工業(株)製のビスフェノールAのエチレンオキサイド(n=30)変性メタクリレートであり、
10)二液エポキシ系接着剤は、Vantico A&T US Inc.製の速硬化型2液エポキシ系接着剤 エピボンド 1217−A/Bである。
比較例2または3の接着剤は、還元剤として一般的なラジカル発生促進剤であるエチレンチオ尿素、あるいはベンゾイルチオ尿素を用いた以外は、実施例5の接着剤と同様の接着剤である。
比較例4の接着剤は、市販の二液エポキシ系接着剤である。
実施例5の接着剤を用いて、片面塗布接着工法でのセットタイムと接着強度を測定した。X剤及びY剤を被着材1に各0.1gずつ塗布して混合コテで混合し、接着面全体に塗り広げて直ちに被着材2を貼り合わせた。被着材寸法、圧締、接着強度の測定方法は、実施例1〜5と同様に行った。セットタイムは混合開始から所定時間毎(1分毎)に曲げ強度を測定し、9.8N/cm2以上の強度が得られた時間とした。
セットタイムは4分と短く、接着強度は26.2N/cm2と良好であった。
Claims (3)
- (A)重合性単量体、(B)有機過酸化物、(C)バナジウム化合物、及び(D)酸性リン酸化合物を含み、前記(B)および(C)が共存しないように二剤に分かたれて保存されるアクリル系接着剤であって、
前記(A)100質量部に対して、前記(B)の含有量が0.5〜5質量部、前記(C)の含有量が0.02〜3質量部、前記(D)の含有量が0.05〜5質量部であって、
前記(A)の80質量%以上が、下記(イ)〜(リ)からなる群から選ばれる一種または二種以上の(メタ)アクリレートであるメタクリル系樹脂発泡体製の鋳造用消失模型を製造するための二液アクリル系接着剤。
(イ)分子量が125以上の脂肪族(メタ)アクリレート
(ロ)分子量が140以上のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート
(ハ)分子量が145以上の水酸基含有(メタ)アクリレート
(ニ)分子量が230以上のポリエステル(メタ)アクリレート
(ホ)分子量が210以上のフェノキシアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート
(へ)分子量が450以上のアルコキシアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート
(ト)分子量が460以上のビスフェノールAまたはビスフェノールFのアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート
(チ)分子量が305以上のポリアルキレングリコール変性(メタ)アクリレート
(リ)その他の、分子量が600以上の(メタ)アクリレート - メタクリル系樹脂発泡体製の鋳造用消失模型を構成する模型部品1及び模型部品2の、それぞれの接合面を互いに貼り合わせるステップを含む、メタクリル系樹脂発泡体製の鋳造用消失模型を製造する方法であって、前記貼り合わせるステップが、
(a)請求項1に記載のアクリル系接着剤の二剤のうちの一方を、模型部品1の接合面に塗布する工程、
(b)請求項1に記載のアクリル系接着剤の二剤のうちのもう一方を、模型部品2の接合面に塗布する工程、および
(c)前記模型部品1の接合面と、前記模型部品2の接合面とを貼り合わせる工程を含む方法。 - メタクリル系樹脂発泡体製の鋳造用消失模型を構成する模型部品1及び模型部品2の、それぞれの接合面を互いに貼り合わせるステップを含む、メタクリル系樹脂発泡体製の鋳造用消失模型を製造する方法であって、前記貼り合わせるステップが、
(a)請求項1に記載の接着剤の二剤の両方を模型部品1の接合面に塗布する工程、および
(b)前記模型部品1の接合面と、前記模型部品2の接合面を貼り合わせる工程を含む方法。
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