JP4589347B2 - ヒンジ装置 - Google Patents

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Description

この発明は、ロック機構を有するヒンジ装置に関する。
一般に、この種のヒンジ装置は、ヒンジ本体と、このヒンジ本体に回動軸線を中心として回動可能に、かつ回動軸線方向へ移動不能に連結された取付部材と、ヒンジ本体にロック位置と解除位置との間を移動可能に設けられたロック部材と、このロック部材を解除位置側からロック位置側へ向かって付勢するコイルばねと、ロック部材をコイルばねの付勢力に抗してロック位置からロック解除位置まで移動させる操作部材とを有している。ロック部材は、ロック位置に位置すると、取付部材のヒンジ本体に対する回動を阻止する。その一方、ロック部材が操作部材によってロック位置から解除位置に移動させられると、取付部材のヒンジ本体に対する回動を許容する。
上記構成のヒンジ装置を例えば携帯電話機に用いる場合には、例えばヒンジ本体が送話側筐体に取り付けられ、取付部材が受話側筐体に取り付けられる。これにより、受話側筐体が送話側筐体にヒンジ装置を介して回動可能に連結される。しかも、受話側筐体は、ロック部材がロック位置に位置しているときにはヒンジ本体に対して回動不能になり、ひいては送話側筐体に対して回動不能になる。また、ロック部材がロック解除位置に位置しているときには送話側筐体に対して回動可能になる。
ロック部材によってロックされた受話側筐体に過大の回動トルクを誤って作用させると、送話側筐体、受話側筐体又はヒンジ装置が破損してしまう。このような事故を未然に防止するために、下記特許文献1に記載のヒンジ装置においては、ヒューズ機構がさらに設けられている。このヒューズ機構は、ロック部材の一端部外周面に形成されたテーパ面と、取付部材に形成された当接部とによって構成されており、当接部にはテーパ面がコイルばねの付勢力によって突き当てられている。したがって、受話側筐体を無理に回動させようとすると、当接部がテーパ面を押し、ロック部材をコイルばねの付勢力に抗してロック解除位置まで移動させる。この結果、ロック部材によるロック状態が解除され、取付部材がヒンジ本体に対して回動可能になる。よって、受話側筐体が送話側筐体に対して折畳位置から通話位置側へ回動することができるようになり、送話側筐体、受話側筐体又はヒンジ装置が破損するような事故が未然に防止される。
国際公開第W02006/087912号公報
上記ヒューズ機構を有するヒンジ装置においては、ロック部材を操作部材によってロック位置からロック解除位置まで移動させる場合には、小さな力で移動させることができるものであることが要望される。その一方、ロック時には取付部材(受話側筐体)が不用意に回動することを防止するために、取付部材(受話側筐体)に所定の大きさを越える回動トルクが作用するまでは、ロック状態が維持されていることが要望される。この二つの要望を同時に成立させるために、ロック部材を付勢するコイルばねの付勢力を小さくするとともに、テーパ部のテーパ角度を小さい角度に設定している。
ところが、テーパ部のテーパ角度を小さくすると、取付部材に作用する回動トルクの大きさをTとし、この回動トルクTがテーパ面に作用するときに発生する分力のうちの、付勢手段の付勢方向と逆方向を向く分力の大きさPとすると、分力Pは回動トルクTに対して非常に小さい値になる。換言すれば、分力Pに対して回動トルクTが大幅に大きくなる。このため、テーパ角に誤差があると、たとえその誤差が製作誤差内の僅かなものであったとしても、取付部材をロック状態から解除状態にするために必要な回動トルクTが大きく変化する。この結果、ヒューズ機構が動作する際の回動トルクTが各ヒンジ装置毎に大きくばらついてしまうという問題があった。
この発明は、上記の問題を解決するために、ヒンジ本体と取付部材とを備え、上記ヒンジ本体と上記取付部材とが、回動軸線上に並んで配置されるとともに、上記回動軸線を中心として回動可能に連結されたヒンジ装置において、上記ヒンジ本体と上記取付部材との間に係合部材が上記ヒンジ本体及び上記取付部材に対し上記回動軸線方向へ移動可能に、かつ上記回動軸線を中心として回動可能に設けられ、上記ヒンジ本体と上記係合部材との間に、上記係合部材の上記ヒンジ本体に対する回動を阻止するロック状態と、上記係合部材の上記ヒンジ本体に対する回動を許容するロック解除状態とに切換可能なロック機構が設けられ、上記取付部材と上記係合部材との間には、上記ロック機構がロック状態である場合において、上記取付部材に作用する回動トルクの大きさが所定の大きさ以下であるときには、上記取付部材の上記係合部材に対する回動を阻止し、上記回動トルクの大きさが所定の大きさを越えるときには、上記取付部材の上記係合部材に対する回動を許容するヒューズ機構が設けられ、上記ロック機構がロック解除状態になっているときには、上記取付部材及び上記係合部材が上記ヒンジ本体に対して回動し、上記ロック機構がロック状態になっているときには、上記取付部材が上記ヒンジ本体及び上記係合部材に対して回動することを特徴としている。
この場合、上記ヒューズ機構が、上記取付部材と上記係合部材との対向面の一方に設けられ、上記回動軸線を中心とする周方向に向かって上り勾配をなす傾斜面と、他方の対向面に設けられた当接部と、上記係合部材を上記取付部材側に付勢して上記傾斜面と上記当接部とを互いに当接させる付勢手段とを有し、上記取付部材に作用する上記回動トルクが所定の大きさ以下であるときには、上記付勢手段の付勢力によって互いに当接させられた上記傾斜面と上記当接部とが上記取付部材の回動を阻止し、上記取付部材に作用する上記回動トルクが所定の大きさを越えるときには、上記当接部が上記傾斜面を相対的に押し上がって上記係合部材を上記付勢手段の付勢力に抗して移動させることにより、上記取付部材の回動を許容することが望ましい。
上記一方の対向面には、上記傾斜面の上端縁から周方向に続いて延び、上記係合部材に対する上記取付部材の回動角度が所定の大きさを越えると上記当接部が当接する平坦面が形成されており、上記平坦面と上記当接部との間に発生する摩擦抵抗によって上記係合部材が停止させられるように、上記平坦面の上記回動軸線に対する傾斜角度が設定されていることが望ましい。
上記一方の対向面には、上記平坦面に続いて形成された下り勾配をなす第2傾斜面が形成され、この第2傾斜面の傾斜角度が上記傾斜面の傾斜角度より小さく設定され、上記取付部材の上記係合部材に対する回動角度が所定の大きさを越えると上記当接部が上記第2傾斜面に当接することが望ましい。
上記ヒンジ本体の上記係合部材側の端部には、可動部材が上記回動軸線方向へ移動可能に、かつ回動不能に設けられ、この可動部材が上記付勢手段によって上記係合部材に当接させられ、それによって上記係合部材が上記付勢手段によって付勢されており、上記係合部材と上記可動部材との当接面間には、上記付勢手段の付勢力を、上記当接部が上記傾斜面に突き当たるように、上記係合部材を上記回動軸線を中心として周方向へ付勢する回動付勢力に変換する変換機構が設けられていることが望ましい。
上記ロック機構が、上記ヒンジ本体に上記回動軸線方向へ移動可能に、かつ上記回動軸線を中心とする周方向へ移動不能に設けられたロック部材と、このロック部材を上記取付部材に向かって付勢する第2付勢手段と、上記係合部材に設けられた係合部とを有し、上記ロック部材は、所定のロック位置に位置しているときには、上記係合部に係合することによって上記係合部材の上記ヒンジ本体に対する回動を阻止し、上記取付部材から上記ヒンジ本体に向かう方向へ上記ロック位置から所定距離以上移動すると、上記係合部から離間して上記係合部材の上記ヒンジ本体に対する回動を許容することが望ましい。
上記特徴構成を有するこの発明によれば、ロック機構がヒンジ本体と係合部材との間に設けられる一方、ヒューズ機構が取付部材と係合部材との間に設けられており、ロック機構とヒューズ機構との関連性が断たれている。したがって、ロック部材をコイルばね等の付勢手段によって付勢する場合には、付勢手段の付勢力を弱く設定することができ、ロック機構の解除操作を小さい力で行うことができる。しかも、ヒューズ機構がロック機構と無関係であるから、ヒューズ機構が動作するときの回動トルクを自由にかつ精度よく定めることができる。
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図3は、この発明に係るヒンジ装置1(図4〜図13参照)が用いられた携帯電話機Aを示す。この携帯電話機Aは、送話側筐体Bと受話側筐体Cとを有している。送話側筐体Bの長手方向の一端部には、送話側筐体Bの幅方向に延びる凹部Baが形成されている。受話側筐体Cの長手方向の一端部には、受話側筐体Cの幅方向に延びる突出部Caが形成されている。この突出部Caは、凹部Baに送話側筐体Bの幅方向に延びる回動軸線Lを中心として回動可能に挿入されている。
突出部Caには、回動軸線L上を一端面から他端面まで貫通する貫通孔(図示せず)が形成されている。この貫通孔には、ヒンジ装置1が装着されている。このヒンジ装置1により、送話側筐体Bと受話側筐体Cとが回動軸線Lを中心として回動可能に連結されている。いま、送話側筐体Bが位置固定され、受話側筐体Cが送話側筐体Bに対して回動するものとすると、受話側筐体Cは、図1に示す折畳位置と、図2及び図3に示す通話位置との間を回動可能になっている。折畳位置は、受話側筐体Cの前面Cbが送話側筐体Bの前面Bbに突き当たることによって定められている。通話位置は、図3に示すように、突出部Caが凹部Baの底面に突き当たることによって定められている。
次に、送話側筐体Bと受話側筐体Cとを回動軸線Lを中心として回動可能に連結するヒンジ装置1について説明する。図4〜図13に示すように、ヒンジ装置1は、ヒンジ本体2を有している。このヒンジ本体2は、突出部Caに形成された貫通孔に回動不能に嵌合されている。したがって、ヒンジ本体2は、受話側筐体Cと一体に回動する。そこで、ヒンジ本体2の回動軸線Lを中心とする各回動位置については、受話側筐体Cの回動位置と同一名称を付すものとする。
ヒンジ本体2には、その長手方向の一端面(図7〜図11において左端面)から他端側に向かって延びる収容孔2aと、他端面から一端側に向かって延びる嵌合孔2bとが形成されている。収容孔2a及び嵌合孔2bは、それぞれの軸線を回動軸線Lと一致させて配置されている。収容孔2aと嵌合孔2bとの間には、隔壁2cが形成されている。
収容孔2aには、ヒンジ軸3が回動可能に挿通されている。ヒンジ軸3は、その軸線を回動軸線Lと一致させて配置されており、隔壁2cを回動可能に貫通している。これにより、ヒンジ軸3がヒンジ本体2に回動可能に支持されている。ヒンジ軸3の嵌合孔2b内に位置する一端部には、頭部3aが形成されている。この頭部3aがワッシャ4を介して隔壁2cに突き当たることにより、ヒンジ軸3が嵌合孔2bから収容孔2aに向かう方向においてヒンジ本体2から抜け止めされている。ヒンジ本体2の他端部は、収容孔2aから突出しており、その突出した端部には、第1アーム(取付部材)5の一端部が固定されている。この第1アーム5の他端部は、送話側筐体Bに固定されている。嵌合孔2bには、第2アーム6の一端部が回動可能に嵌合されている。この第2アーム6の他端部は、送話側筐体Bに固定されている。第1、第2アーム5,6が送話側筐体Bに固定される一方、ヒンジ本体2が受話側筐体Cに固定されることにより、送話側筐体Bと受話側筐体Cとが回動軸線Lを中心として回動可能に連結されている。なお、ここでは、送話側筐体Bが位置固定されているものと仮定しているので、第1、第2アーム5,6も回動することがない。
ヒンジ本体2と第1アーム5との間には、ヒンジ本体2及び受話側筐体Cを折畳位置及び通話位置において所定の大きさの力で位置固定するためのクリック機構10が設けられている。図7〜図11に示すように、クリック機構10は、可動部材11、係合部材12、コイルばね(付勢手段)13及び変換機構20を有している。
可動部材11は、収容孔2aの開口側端部に回動不能に、かつ回動軸線L方向へ移動可能に嵌合されている。可動部材11と隔壁2cとの間の収容孔2a内には、コイルばね13が収容されている。このコイルばね13により、可動部材11が第1アーム5に向かって付勢されている。可動部材11及びコイルばね13の各中央部は、ヒンジ軸3によって回動可能に、かつ移動可能に貫通されている。
可動部材11と第1アーム5との間には、係合部材12が設けられている。係合部材12は、可動部材11及び第1アーム5に対し回動軸線Lを中心として回動可能、かつ回動軸線方向へ移動可能である。係合部材12は、図8及び図11に示す回動阻止位置と図10に示す回動許容位置との間を回動軸線L方向へ移動可能である。係合部材12には、可動部材11がコイルばね13の付勢力によって押し当てられている。その結果、係合部材12がコイルばね13により可動部材11を介して付勢され、第1アーム5に押し当てられている。後述するように、係合部材12は、それと第1アーム5との間に設けられたヒューズ機構50により、第1アーム5と係合部材12との間に所定の大きさを越える回動トルクが作用しない限り第1アーム5に対する折畳位置から通話位置に向かう方向(以下、開方向という。)への相対回動が阻止されている。したがって、後述するロック機構30のロックが解除された状態においては、受話側筐体C(ヒンジ本体2)が折畳位置から通話位置に向かって回動すると、係合部材12が送話側筐体B及び第1アーム5と共に停止状態を維持し、可動部材11が係合部材12に対して回動する。なお、係合部材12の中央部は、ヒンジ軸3によって回動可能に、かつ移動可能に貫通されている。
可動部材11と係合部材12との対向面間には、コイルばね13の付勢力を回動付勢力に変換する変換機構20が設けられている。すなわち、可動部材11の係合部材12との対向面には、一対の球体21,22が設けられている。球体21,22は、回動軸線Lを中心とする円周上に周方向へ180°離れて配置されている。一方、係合部材12の可動部材11との対向面には、一対の係合凹部23,24が形成されている。一対の係合凹部23,24は、回動軸線Lを中心とし、かつ球体21,22が配置された円周と同一の直径を有する円周上に周方向へ180°離れて配置されている。球体21,22を係合部材12に設け、係合凹部23,24を可動部材11に設けてもよい。また、球体及び係合凹部をそれぞれ一つ又は3つ以上設けてもよい。
球体21,22及び係合凹部23,24は、受話側筐体Cが折畳位置とそこから通話位置側へ所定角度(例えば、10°)だけ離れた位置(以下、第1位置という。)との間に位置すると、球体21,22が係合凹部23,24の回動軸線Lを中心とする周方向の一端部にそれぞれ入り込むように配置されている。係合凹部23,24の一端部に入り込んだ球体21,22は、コイルばね13により係合凹部23,24の各底面の傾斜した一端部にそれぞれ押し付けられる。この結果、コイルばね13の付勢力が、可動部材11を係合部材12に対して回動させようとする回動付勢力に変換される。この回動付勢力によってヒンジ本体2及び受話側筐体Cが通話位置から折畳位置へ向かう方向(以下、閉方向という。)に回動付勢される。したがって、受話側筐体Cは、折畳位置と第1位置との間に位置すると、コイルばね13による回動付勢力によって折畳位置まで回動させられるとともに、折畳位置に維持される。
球体21,22は、受話側筐体Cが通話位置とそこから折畳位置側へ所定角度(例えば10°)だけ離れた位置(以下、第2位置という。)との間に位置すると、係合凹部24,23の回動軸線Lを中心とする周方向の他端部にそれぞれ入り込む。そして、コイルばね13の付勢力によって係合凹部24,23の各底面の傾斜した他端部にそれぞれ押し付けられる。この結果、コイルばね13の付勢力が、可動部材11を係合部材12に対して回動させようとする回動付勢力に変換される。この回動付勢力によってヒンジ本体2及び受話側筐体Cが開方向に回動付勢される。したがって、受話側筐体Cは、通話位置と第2位置との間に位置すると、コイルばね13による回動付勢力によって通話位置まで回動させられるとともに、通話位置に維持される。
ヒンジ本体2と係合部材12との間には、係合部材12のヒンジ本体2に対する相対回動を阻止するためのロック機構30が設けられている。図8〜図11に示すように、ヒンジ本体2の収容孔2aが開口する端面には、収容孔2aに沿って延びる第2収容孔2dが形成されている。この第2収容部2dの内側の側部は、収容孔2aに連通している。第2収容孔2dの開口側端部には、棒状をなすロック部材31がその長手方向へ移動可能に、かつ回動軸線Lを中心とする周方向へは移動不能に挿入されている。このロック部材31の内側の側部は、第2収容孔2dの連通部を通って収容孔2a内に突出している。ロック部材31と第2収容孔2dの底面との間の第2収容孔2d内には、コイルばね(第2付勢手段)32が収容されている。このコイルばね32によりロック部材31が第1アーム5側に向かって付勢されている。ロック部材31は、図8に示すロック位置と、図9に示すロック解除位置及び図10に示す強制移動位置のうちのロック位置から離れた方の位置との間を移動可能である。この実施の形態では、強制移動位置がロック解除位置よりロック位置から離れているので、ロック部材31は強制移動位置まで移動可能である。ロック解除位置を強制移動位置よりロック位置から離してもよい。
係合部材12の外周面には、係合凹部(係合部)33が形成されている。この係合凹部33には、ロック部材31が挿脱可能に挿入されている。すなわち、ロック部材31の先端部は、可動部材11を越えて係合部材12まで達しており、ロック部材31の先端部のうちの、第2収容孔2dから内側に突出した側部が係合凹部33に回動軸線L方向へ挿脱可能に、かつ回動軸線Lを中心とする周方向へは移動不能に挿入されている。図8に示すように、係合部材12が回動阻止位置に位置している状態において、ロック部材31がロック位置に移動すると、ロック部材31が係合凹部33に入り込む。この結果、係合部材12がヒンジ本体2にロック部材31を介して回動不能に連結される。つまり、係合部材12がヒンジ本体2と一体に回動するようになる。係合部材12がヒンジ本体2と一体に回動する場合には、係合部材12の各回動位置にヒンジ本体2及び受話側筐体Cの各回動位置と同一の名称を付すものとする。係合部材12には、係合凹部33の図10において左側の端部に臨むように突出する突出部34が形成されており、ロック部材31がロック位置に移動するとロック部材31の先端面(図10において左端面)が突出部34に突き当たる。換言すれば、ロック部材31の先端面が突出部34に突き当たることにより、ロック部材31のロック位置が定められている。一方、係合部材12が回動阻止位置に位置している状態において、ロック部材31が解除位置に移動すると、ロック部材31が係合凹部33から脱出する。この結果、係合部材12がヒンジ本体2に対して回動可能になる。
図8及び図9に示すように、第1アーム5には、解除機構40が設けられている。解除機構40は、ロック部材31による係合部材12に対するロック状態を解除するためのものであり、操作部材41を有している。操作部材41は、第1アーム5に図8に示す初期位置と図9に示す操作完了位置との間を回動軸線L方向へ移動可能に設けられている。しかも、操作部材41は、図1及び図2に示すように、送話側筐体Bの側部を回動軸線L方向へ移動可能に貫通しており、操作部材41が初期位置に位置しているときには、操作部材41の外側の一部が送話側筐体Bの側面から外部に突出している。操作部材41が操作完了位置に位置しているときには、操作部材41の外側の端面が送話側筐体Bの側面とほぼ同一平面上に位置しているか、僅かに突出している。したがって、操作部材41は、初期位置から操作完了位置まで移動するように携帯電話機Aの外部から操作可能である。
ロック部材31の先端面と対向する操作部材41の端面には、回動軸線Lと平行に延びる押しロッド42の基端部(図8及び図9において左端部)が埋設固定されている。押しロッド42の先端面は、操作部材41が初期位置に位置し、かつロック部材31がロック位置に位置しているときには、ロック部材31の先端面にほぼ接触している。したがって、操作部材41を初期位置から操作完了位置に向かって移動させると、ロック部材31がコイルばね32の付勢力に抗してロック解除位置側へ移動する。操作部材41を操作完了位置まで移動させると、ロック部材31がロック解除位置に移動する。操作完了位置に位置している操作部材41を自由に移動することができる状態にすると、ロック部材31がコイルばね32の付勢力によりロック解除位置からロック位置まで戻されるとともに、操作部材41が操作完了位置から初期位置まで戻される。
なお、操作部材41は、第1アーム5に回動軸線Lと直交する方向に移動可能に設けてもよい。その場合には、例えば押しロッド42を操作部材41から分離するとともに第1アーム5に回動軸線L方向へ移動可能に設ける。そして、操作部材41と押しロッド42との間に、操作部材41の回動軸線Lと直交する方向への移動によって押しロッド42を回動軸線L方向へ移動させる伝達機構を設ければよい。
第1アーム5と係合部材12との間には、ヒューズ機構50が設けられている。このヒューズ機構50は、第1アーム5と係合部材12との間に作用する回動トルクが所定の大きさ以下であるときには、第1アーム5に対する係合部材12の相対回動を阻止し、回動トルクが所定の大きさを越えるときには、第1アーム5に対する係合部材12の相対回動を許容する。すなわち、受話側筐体Cに折畳位置から通話位置に向かって回動させようとする回動トルクが作用すると、その回動トルクは、ヒンジ本体2及びロック部材31を介して係合部材12に伝達され、係合部材12を第1アーム5に対して折畳位置から通話位置に向かう方向(開方向)へ回動させようとする。このとき、受話側筐体Cに作用する回動トルクが所定の大きさ以下であるときには、第1アーム5に対する係合部材12の相対回動がヒューズ機構50によって阻止され、ひいては受話側筐体Cの通話位置側への回動が阻止される。その一方、受話側筐体Cに作用する回動トルクが所定の大きさを越えるときには、第1アーム5に対する係合部材12の相対回動が許容され、受話側筐体Cの通話位置側への回動が許容される。ヒューズ機構50は、次のように構成されている。
図12に示すように、係合部材12の第1アーム5との対向面には、第1アーム5側に向かって突出する一対のカム突起51,51が回動軸線Lを中心とする円周上に周方向へ180°離れて配置されている。図14〜図16に示すように、カム突起51には、急斜面(傾斜面)51a、平坦面51b及び緩斜面51cが矢印A方向(開方向)に向かって順次形成されている。
急斜面51aは、カム突起51の折畳位置側の端部に配置されており、矢印A方向に向かって上り勾配をなすように傾斜させられている。つまり、急斜面51aは、折畳位置側から通話位置側へ向かうにしたがって第1アーム5に接近するように傾斜させられている。急斜面51aの傾斜角度、つまり回動軸線Lと直交する平面と急斜面51aとのなす角度は、例えば60°〜70°程度に設定されている。
平坦面51bは、回動軸線Lとのなす角度が直角である平面によって構成されている。平坦面51bは、急斜面51aの上端から回動軸線Lを中心として矢印A方向に延びている。
緩斜面51cは、回動軸線Lを中心とする周方向におけるカム突起51の他端部に配置されており、平坦面51bの矢印A方向における端部に続いて形成されている。緩斜面51cは、矢印A方向に向かって下り勾配をなすように傾斜させられている。緩斜面51cの傾斜角度は、例えば30°程度に設定されている。
図13に示すように、第1アーム5の係合部材12との対向面には、係合部材12側に向かって突出する一対の当接突起(当接部)52,52が形成されている。一対の当接突起52は、回動軸線Lを中心とする円周上に周方向へ180°離れて配置されている。しかも、当接突起52は、受話側筐体Cが折畳位置に位置し、かつ係合部材51が回動軸線L方向において回動阻止位置に位置しているときには、図14に示すように、当接突起52の先端部の回動軸線Lを中心とする周方向における一端部と他端部とが一方のカム突起51の急斜面51aと他方のカム突起51の緩斜面51cとに同時に接触するように配置されている。
係合部材12がコイルばね13によって第1アーム5に向かって付勢されているから、受話側筐体Cが折畳位置に位置しているときには、急斜面51a及び緩斜面51cがコイルばね13の付勢力によって当接突起52に押し付けられている。これにより、係合部材12の折畳位置から通話位置側への回動が阻止されている。ただし、急斜面51aが回動軸線Lと平行でなく、回動軸線Lに対して傾斜しているから、係合部材12に所定の大きさを越える回動トルクが作用すると、当接突起52は、急斜面51aをコイルばね13の付勢力に抗して回動阻止位置から回動許容位置に向かって移動させるとともに、急斜面51a上を矢印A方向に向かって乗り上がる。勿論、このときには受話側筐体Cが折畳位置から通話位置側へ回動する。当接突起52が急斜面51aに突き当たるとともに、緩斜面51cから離間した状態において、係合部材12を自由に回動することができる状態にすると、係合部材12がコイルばね13の付勢力によって回動阻止位置まで移動させられるとともに、急斜面51aと当接突起52とによって回動付勢力に変換されるコイルばね13の付勢力によって折畳位置まで回動させられる。
当接突起52は、係合部材12が折畳位置から所定の角度(この実施の形態ではほぼ25°)だけ回動すると、急斜面51aを乗り越えて平坦面51bに乗り上がる。当接突起52が平坦面51bに乗り上がっているとき、係合部材12が回動軸線L方向において回動許容位置に位置している。平坦面51bが回動軸線Lと直交する平面であるから、当接突起52が平坦面51bに乗り上がった状態では、係合部材12は当接突起52と平坦面51bとの間に作用する摩擦抵抗に抗して回動することになる。換言すれば、当接突起52が平坦面51bに乗り上がった状態では、当接突起52と平坦面51bとの間に作用する摩擦抵抗によって受話側筐体Cを任意の位置で停止させることができる。受話側筐体Cを任意の位置で停止させることができる限り、平坦面51bと回動軸線Lとのなす角度を90°にすることなく、例えば88°〜92°程度にしてもよい。
係合部材12が折畳位置から所定の角度(この実施の形態では、140°)だけ回動すると、当接突起52は、平坦面51bを越えて緩斜面51cに突き当たる。すると、緩斜面51cと当接突起52とによってコイルばね13の付勢力が回動付勢力に変換され、この回動付勢力によって係合部材12及び受話側筐体Cが通話位置まで回動させられる。しかも、係合部材12及び受話側筐体Cが通話位置に位置しているときには、図16に示すように、当接突起52が緩斜面51cだけに突き当たり、急斜面51aに対しては離間している。したがって、係合部材12及び受話側筐体Cは、コイルばね13の付勢力によって通話位置に維持される。係合部材12及び受話側筐体Cを通話位置から折畳位置に向かって回動させる場合には、それらをコイルばね13の付勢力に抗して回動させる。
上記構成のヒンジ装置1が用いられた携帯電話機Aにおいて、いま受話側筐体Cが折畳位置に位置しているものとする。このときには、係合部材12が回動阻止位置に位置し、ロック部材31がロック位置に位置し、操作部材41が初期位置に位置している。したがって、係合部材12は、ヒンジ本体2に回動不能に連結されている。
受話側筐体Cを折畳位置から通話位置まで回動させる場合には、まず操作部材41を押して初期位置から操作完了位置まで移動させる。すると、ロック部材31がコイルばね32の付勢力に抗してロック位置からロック解除位置まで移動させられ、係合凹部33から脱出する。この結果、係合部材12がヒンジ本体2に対して回動可能になり、受話側筐体Cが折畳位置から通話位置に向かって回動することができるようになる。受話側筐体Cが折畳位置と第1位置との間に位置しているときには、球体21,22及び係合凹部23,24とによって回動付勢力に変換されるコイルばね32の付勢力によって受話側筐体Cが折畳位置に向かって回動付勢されている。したがって、折畳位置から第1位置までの間は、受話側筐体Cをコイルばね32による回動付勢力に抗して回動させることになる。折畳位置と第1位置との間においては受話側筐体Cを自由に回動することができる状態にすると、受話側筐体Cがコイルばね32の付勢力によって折畳位置まで戻されるとともに、折畳位置に維持される。
受話側筐体Cが折畳位置から僅かな角度(例えば2°)でも回動すると、ロック部材31の先端面の一部が係合凹部33から回動軸線Lを中心とする周方向に離間し、係合部材12の可動部材11との対向面と対向する。したがって、操作部材41の押圧動作を止めたとしても、ロック部材31は、コイルばね13の付勢力によって係合部材12に突き当てられるだけであり、係合凹部33に入り込むことがない。よって、受話側筐体Cが折畳位置から離間した後は、操作部材41の押圧動作をやめてもよい。
受話側筐体Cを第2位置まで回動させると、球体21,22が係合凹部24,23にそれぞれ入り込む。この結果、受話側筐体Cが球体21,22及び係合凹部24,23によって変換されるコイルばね13の回動付勢力により通話位置まで回動させられるとともに、通話位置に維持される。
受話側筐体Cを通話位置から折畳位置まで回動させる場合において、通話位置から第2位置までの間は受話側筐体Cをコイルばね13の付勢力に抗して回動させる。受話側筐体Cが第1位置に達すると、球体21,22及び係合凹部23,24によって変換されるコイルばね13の付勢力によって受話側筐体Cが折畳位置まで回動させられるとともに、折畳位置に維持される。受話側筐体Cが折畳位置に達すると、ロック部材31がコイルばね32によってロック位置まで移動させられ、自動的に係合凹部33に入り込む。この結果、係合部材12がヒンジ本体2に回動不能にロックされ、ひいては受話側筐体Cが送話側筐体Bに回動不能にロックされる。
係合部材12がロック部材31によってヒンジ本体2に回動不能にロックされた状態において、折畳位置に位置している受話側筐体Cに所定の大きさ以上の回動トルクが作用すると、急斜面51aと当接突起52とによって係合部材12が回動阻止位置からコイルばね13の付勢力に抗して回動許容位置側へ移動させられるとともに、受話側筐体Cが折畳位置から通話位置に向かって回動させられる。受話側筐体Cが通話位置から20°以上回動すると、当接突起52が平坦面51b上に乗り上がる。その状態では、平坦面51bと当接突起52との間に作用する摩擦抵抗に抗して受話側筐体Cを通話位置側へ回動させることになる。受話側筐体Cが折畳位置から140°以上回動すると、当接突起52が緩斜面51cに突き当たる。すると、緩斜面51cと当接突起52とによって回動付勢力に変換されるコイルばね13による回動付勢力によって受話側筐体Cが通話位置まで回動させられる。
係合部材12がロック部材31によってヒンジ本体2に回動不能にロックされた状態において、受話側筐体Cを通話位置から折畳位置まで回動させる場合には、当初、当接突起52と緩斜面51cとによって変換されるコイルばね13の回動付勢力に抗して受話側筐体Cを回動させる。その後、平坦面51bと当接突起52との間に作用する摩擦抵抗に抗して受話側筐体Cを折畳位置側へ回動させる。当接突起52が急斜面51aに突き当たると、急斜面51aと当接突起52とによって回動付勢力に変換されるコイルばね13の付勢力によって受話側筐体Cが折畳位置まで回動させられる。
上記構成のヒンジ装置1においては、ロック機構30を有しているので、ヒンジ本体2と第1アーム5とが不用意に回動してしまうような事態を未然に防止することができる。しかも、ヒンジ本体2と第1アーム5との間に所定の大きさを越える回動トルクが作用した場合には、ヒューズ機構50が動作してヒンジ本体2と第1アーム5との間の相対回動が許容される。したがって、ヒンジ装置1を携帯電話機Aに用いた場合には、送話側筐体B、受話側筐体C又はヒンジ装置1が破損することを防止することができる。
また、ロック機構30とヒューズ機構50とが全く関係の無い状態で設けられており、ロック機構30に用いられるコイルばね32と、ヒューズ機構50に用いられるコイルばね13とが互いに独立した異なるものであるから、ロック機構30に用いられるコイルばね32についてはその付勢力を弱く設定することができる。したがって、解除機構40の操作部材41を小さい力で軽く操作することができる。その一方、ヒューズ機構50に用いられるコイルばね13については、ロック解除操作と関係がないからその付勢力を大きくすることができる。したがって、急斜面51aの傾斜角度を従来のヒンジ装置におけるテーパ角度に比して小さくすることができる。よって、ヒューズ機構50が動作する際の回動トルクが急斜面51aの傾斜角度の誤差によって大きく変化するような事態を防止することができる。また、この実施の形態では、ヒューズ機構50用のコイルばね13として、クリック機構10に用いられるコイルばね13を兼用しているので、ヒューズ機構50専用のコイルばねが不用である。したがって、その分だけヒンジ装置1の製造費を低減することができる。
次に、この発明の第2実施の形態について説明する。図17〜図22は、この発明に係るヒンジ装置1′(図23〜図29参照)が用いられた携帯電話機Dを示す。この携帯電話機Dの送話側筺体E及び受話側筺体Fの長手方向の各一端部には、凹部Ea,Faがそれぞれ形成されている。凹部Ea,Faには、ヒンジ装置1′のヒンジ本体2Aの一側部と他側部とがそれぞれ挿入されている。ヒンジ本体2Aの一側部は、送話側筐体Fの幅方向に延びる第1回動軸線(回動軸線)L1を中心として送話側筺体Eに回動可能に連結されている。ヒンジ本体2Aの他側部は第1回動軸線L1と平行な第2回動軸線L2を中心として受話側筺体Fに回動可能に連結されている。この結果、受話側筺体Fが送話側筺体Eにヒンジ本体2Aを介して回動可能に連結されている。
ヒンジ本体2Aは、送話側筺体Eに対し第1回動軸線L1を中心として図18及び図20に示す第1回動位置と図22に示す第2回動位置との間を回動可能である。ヒンジ本体2Aの第1回動位置は、ヒンジ本体2Aの一側面2eが凹部Eaの第一当接面Ebに突き当たることによって定められている。ヒンジ本体2Aの第2回動位置は、ヒンジ本体2Aの他側面2fが凹部Eaの第2当接面Ecに突き当たることによって定められている。第1回動位置と第2回動位置との間の角度は、この実施の形態では200°に設定されている。
受話側筺体Fは、ヒンジ本体2Aに対し第2回動軸線L2を中心として図18に示す第3回動位置と図20に示す第4回動位置との間を回動可能である。受話側筺体Fの第3回動位置は、受話側筺体Fの前面Fbが送話側筺体Eの前面Edに突き当たることによって定められている。受話側筺体Fの第4回動位置は、凹部Faの底面Fcがヒンジ本体2Aの他側面2fに突き当たることによって定められている。第3回動位置と第4回動位置との間の角度は、この実施の形態では、160°に設定されている。
ヒンジ本体2Aが第1回動位置に位置するとともに、受話側筺体Fが第3回動位置に位置すると、受話側筺体Fが送話側筺体Eに対して図17及び図18に示す折畳位置に位置する。折畳位置では、受話側筐体Fの前面Fbが送話側筐体Eの前面Edに突き当たる。ヒンジ本体2Aが第1回動位置に位置するとともに、受話側筺体Fが第4回動位置に位置すると、受話側筺体Fが送話側筺体Eに対して図19及び図20に示す通話位置に位置する。ヒンジ本体2Aが第2回動位置に位置するとともに、受話側筺体Fが第4回動位置に位置すると、受話側筺体Fが送話側筺体Eに対して図21及び図22に示す逆折畳位置に位置する。ここで、ヒンジ本体2Aが送話側筺体Eに対して200°回動可能であり、受話側筺体Fがヒンジ本体2Aに対して160°回動可能であるから、受話側筺体Fは、送話側筺体Eに対し折畳位置と逆折畳位置との間の360°の範囲を回動可能であり、受話側筺体Fが逆折畳位置に位置すると、受話側筺体Fの背面Fdが送話側筺体Eの背面Eeに突き当たる。
次に、ヒンジ装置1′について説明すると、ヒンジ装置1′は、第1ヒンジ部1Aと第2ヒンジ部1Bとを有している。第1ヒンジ部1Aと第2ヒンジ部1Bとは、上記ヒンジ本体2Aを共有している。第1ヒンジ部1Aは、ヒンジ本体2Aと送話側筺体Eとを第1回動軸線L1を中心として回動可能に連結するためのものであり、ヒンジ本体2Aの凹部Eaに挿入された一側部に設けられている。第2ヒンジ部1Bは、ヒンジ本体2Aと受話側筺体Fとを第2回動軸線L2を中心として回動可能に連結するためのものであり、ヒンジ本体2Aの凹部Faに挿入された他側部に設けられている。
第1ヒンジ部1Aは、上記のように、ヒンジ本体2Aが受話側筐体Fに対して回動可能である点、ヒンジ本体2Aを第2ヒンジ部1Bと共用している点、及び次の点を除き上記実施の形態のヒンジ装置1と同様に構成されている。そこで、上記実施の形態と同様な構成部分には同一符号を付してその説明を省略し、上記実施の形態と異なる構成についてのみ説明する。勿論、第1ヒンジ部1Aの第1及び第2アーム5,6は、送話側筺体Eに取り付けられており、それによってヒンジ本体2Aが送話側筐体Eに第1回動軸線L1を中心として回動可能に連結されている。
第1ヒンジ部1Aにおいては、ヒンジ本体2Aが第1回動位置とそこから第2回動位置に向かって所定角度(この実施の形態では10°)だけ離れた位置との間に位置しているときには、コイルばね13の付勢力がヒンジ本体2Aを第1回動位置に向かって回動付勢する回動付勢力に変換される。その一方、ヒンジ本体2Aが第2回動位置とそこから第1回動位置に向かって所定角度(この実施の形態では10°)だけ離れた位置との間に位置しているときには、コイルばね13の付勢力がヒンジ本体2Aを第2回動位置に向かって回動付勢する回動付勢力に変換される。
コイルばね13の付勢力が回動付勢力に変換される二つの範囲は、ヒンジ本体2Aの回動範囲が200°であるから、第1回動軸線L1を中心とする周方向へ180°離れている。周方向に180°離れた二つの範囲において、コイルばね13の付勢力を回動付勢力に変換する構造は、公知である。例えば、次のような構造がある。
第1の公知構造は、球体21,22を可動部材11にその径方向へ移動可能に配置する方法である。その方法の場合には、一対の係合凹部23,24に加えて別の一対の係合凹部(図示せず)が係合部材12に設けられる。この別の一対の係合凹部は、ヒンジ本体2Aが第1回動位置から190°回動したとき、球体21,22が別の一対の係合凹部にそれぞれ入り込むよう、係合凹部23,24に対して径方向内側に離れ、かつ周方向に例えば220°離れて配置される。しかも、係合凹部23と別の一対の係合凹部のうちの一方との間には、それらの間を渦巻き状に延びるガイド溝が形成され、係合凹部24と別の一対の係合凹部のうちの他方との間には、それらの間を渦巻き状に延びるガイド溝が形成される。これにより、球体21が係合凹部23と一方との間を円滑に移動することができ、球体22が係合凹部24と他方との間を円滑に移動することができる。
第2の公知構造は、球体21,22を可動部材11の径方向において互いに異なる位置に配置する方法である。この場合には、係合部材12の可動部材11との対向面に、球体21が第1、第2回動位置において係合する二つの係合凹部が形成されるとともに、球体22が第1、第2回動位置において係合する二つの係合凹部が形成される。勿論、球体21が係合する二つの凹部は、球体21が配置された円周と同一直径を有する円周上に配置され、球体22が係合する二つの凹部は、球体22が配置された円周と同一直径を有する円周上に配置される。
ヒンジ本体2Aの凹部Faに挿入された側部の一端部(図28において左端部)と他端部とには、孔2g,2hがそれぞれ形成されている。孔2gには、第3アーム7の基端部が回動可能に嵌合されている。第3アーム7の他端部は、受話側筐体Fに取り付けられている。孔2hには、ヒンジユニット60が着脱可能に装着されている。このヒンジユニット60の第4アーム66は、受話側筐体Fに取り付けられている。第3、第4アーム7,66が受話側筐体Fに取り付けられることにより、受話側筐体Fがヒンジ本体2Aに第2回動軸線L2を中心として回動可能に連結されている。
ヒンジユニット60は、筒状をなすケーシング61を有している。このケーシング61は、孔2hに挿脱可能に、かつ回動不能に挿入されている。ケーシング61の一端開口部(孔2hの奥側に位置する開口部)には、蓋体62が嵌合固定されている。この蓋体62には、軸線を第2回動軸線L2と一致させたヒンジ軸63が回動可能に、かつ移動可能に挿通されている。ヒンジ軸63は、その頭部63aが蓋体62に突き当たることにより、孔2hの奥側から開口部側へ向かう方向への抜けが防止されている。
ケーシング61の他端部には、可動部材64が第2回動軸線L方向へ移動可能に、かつ回動不能に挿入されている。この可動部材64と蓋体62との間には、コイルばね65が設けられている。このコイルばね65により、可動部材64がケーシング64の一端部から他端部に向かう方向へ付勢されている。可動部材64及びコイルばね65は、それらの中央部かヒンジ軸63によって回動可能に、かつ第2回動軸線L2方向へ移動可能に挿通されている。
ヒンジ軸63の他端部は、ケーシング61から外部に突出しており、そこには上記第4アーム66が固定されている。この第4アーム66の可動部材64との対向面には、一対の係合凹部66A,66Bが形成されている。可動部材64の第4アーム66との対向面には、一対の球体(図示せず)が設けられている。一対の係合凹部66A,66Bと一対の球体とは、受話側筐体F(第4アーム66)が第3回動位置とそこから第4回動位置に向かって所定角度(この実施の形態では10°)だけ離れた位置との間に位置しているときには一方の球体が係合凹部66Aに入り込むとともに、他方の球体が係合凹部66Bに入り込み、受話側筐体Fが第4回動位置とそこから第3回動位置に向かって所定角度(この実施の形態では10°)だけ離れた位置との間に位置しているときには、一方の球体が係合凹部66Bに入り込むとともに、他方の球体が係合凹部66Aに入り込むように配置されている。
受話側筐体Fが第3回動位置とそこから10°だけ離れた位置との間に位置しているときには、一対の球体及び一対の係合凹部66A,66Bにより、コイルばね65の付勢力が第4アーム66(受話側筐体F)を第4位置から第3位置へ向かう方向に付勢する回動付勢力に変換される。この回動付勢力によって第4アーム66が第3回動位置まで回動させられるとともに、第3回動位置に維持される。このときの回動付勢力は、コイルばね13の付勢力が当接突起52と急斜面51aとによって変換される回動付勢力、及び当接突起52と緩斜面51cとによって変換される回動付勢力より弱く設定されている。受話側筐体Fが第4回動位置とそこから10°だけ離れた位置との間に位置しているときには、一対の球体及び一対の係合凹部66A,66Bにより、コイルばね65の付勢力が第4アーム66を第3位置から第4位置へ向かう方向に付勢する回動付勢力に変換される。この回動付勢力によって第4アーム66が第4回動位置まで回動させられるとともに、第4回動位置に維持される。このときの回動付勢力も、コイルばね13の付勢力が当接突起52と急斜面51aとによって変換される回動付勢力、及び当接突起52と緩斜面51cとによって変換される回動付勢力より弱く設定されている。
上記構成のヒンジ装置1′が用いられた携帯電話機Dにおいて、いま、受話側筐体Fが折畳位置に位置しているものとする。受話側筐体Fを逆折畳位置に向かって回動させようとすると、ヒンジ本体2Aがロック機構30によって送話側筐体Eに回動不能にロックされているから、まず受話側筐体Fだけが第2回動軸線L2を中心として第3回動位置から第4回動位置(通話位置)まで回動する。受話側筐体Fを折畳位置から回動させる場合において、仮にロック機構によるロック状態を解除機構によって解除したとしても、一対の球体及び一対の係合凹部66A,66Bによって変換されるコイルばね65の回動付勢力が当接突起52及び急斜面51aによって変換されるコイルばね13の回動付勢力より弱いので、ヒンジ本体2が第1回動位置において停止状態を維持し、受話側筐体Fだけが回動する。受話側筐体Fが通話位置に達した後、ロック機構30によるロック状態を解除機構40によって解除すると、ヒンジ本体2Aが送話側筐体Eに対して回動可能になる。そして、ヒンジ本体2Aが第1回動軸線L2を中心として第1回動位置から第2回動位置まで回動することにより、受話側筐体Fが逆折畳位置に達する。
逆折畳位置に位置している受話側筐体Fを折畳位置側へ回動させようとすると、一対の球体及び一対の係合凹部66A,66Bによって変換されるコイルばね65の回動付勢力が緩斜面51c及び係合突起52によって変換されるコイルばね13の回動付勢力より弱いので、ヒンジ本体2Aは第2回動位置において停止状態を維持し、受話側筐体Fがヒンジ本体2Aに対し第2回動軸線L2を中心として第4回動位置から第3回動位置まで回動する。受話側筐体Fは、第3回動位置に達するとそれ以上同方向へ回動することができなくなる。したがって、その後はヒンジ本体2Aが第1回動軸線L1を中心として第2回動位置から第1回動位置まで回動する。それによって、受話側筐体Fが逆折畳位置から折畳位置まで回動する。受話側筐体Fが折畳位置に達すると、ロック機構30が解除状態からロック状態になり、ヒンジ本体2Aが送話側筐体Eに回動不能にロックされる。
受話側筐体Fが通話位置に位置し、かつロック機構30によって係合部材51がヒンジ本体2Aにロックされた状態において、受話側筐体Fを逆折畳位置に向かって回動させるために、受話側筐体Fに所定の大きさを越える回動トルクを作用させると、ヒンジ本体2Aが送話側筐体Eに対して第1回動位置から第2回動位置に向かって回動する。それに伴って、当接突起52,52が一方及び他方のカム突起51,51の各急斜面51a、各平坦面51b及び各緩斜面51c上をそれぞれ摺動する。そして、受話側筐体Fが通話位置から180°回動すると、当接突起52,52が他方及び一方のカム突起51,51の各急斜面51aにそれぞれ突き当たる。受話側筐体Fには、所定の大きさを越える回動トルクが作用しているので、受話側筐体Fがさらに回動するとともに、当接突起52が急斜面51a上を摺動する。ヒンジ本体2Aが第3回動位置から200°回動して第2回動位置に達すると、ヒンジ本体2Aが送話側筐体Eに対してそれ以上回動することができなくなる。勿論、このときには受話側筐体Fが逆折畳位置に位置している。その状態で受話側筐体Fに作用させていた回動トルクを解除すると、急斜面51aと当接突起52とによって変換されるコイルばね13の回動付勢力により、ヒンジ本体2Aが第1回動位置から第2回動位置へ向かって180°だけ離れた位置まで戻されるとともに、当該位置に維持される。つまり、受話側筐体Fが逆折畳位置から折畳位置に向かって20°だけ離れた位置に維持される。
受話側筐体Fを逆折畳位置から折畳位置に向かって20°だけ離れた位置から折畳位置側へ回動させる場合には、緩斜面51cと当接突起52とによって変換されるコイルばね13の回動付勢力が一対の球体及び一対の係合凹部66A,66Bによって変換されるコイルばね65の回動付勢力より強いので、まず受話側筐体Fが第2回動軸線L2を中心として第4回動位置から第3回動位置まで回動する。その後、ヒンジ本体2Aが第1回動軸線L1を中心として第2回動位置から第1回動位置まで回動し、受話側筐体Fが折畳位置に達する。
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、係合部材12を回動軸線L方向へ移動させることによって急斜面51aを同方向へ移動させているが、係合部材12を回動軸線L方向へ位置固定する一方、係合部材12の第1アーム5との対向面に急斜面51aを有する移動部材を出没可能に設けるとともに、係合部材12に当該移動部材を第1アーム5に向かって付勢するばねを設けてもよい。
また、上記の先の実施の形態においては、受話側筐体Fが折畳位置に位置しているときに球体21,22及び係合凹部23,24によって変換されるコイルばね13の回動付勢力の作用方向を、急斜面51aと当接突起52とによって変換されるコイルばね13の回動付勢力の作用方向と同一方向にしているが、逆方向にしてもよい。
この発明に係るヒンジ装置が用いられた携帯電話機の一例を、受話側筐体を折畳位置に位置させた状態で示す斜視図である。 同携帯電話機の一例を、受話側筐体を通話位置に位置させた状態で示す斜視図である。 同携帯電話機の一例を、受話側筐体を通話位置に位置させた状態で示す側断面図である。 この発明に係るヒンジ装置の第1実施の形態を示す平面図である。 同実施の形態の側面図である。 同実施の形態の斜視図である。 図5のX−X線に沿う断面図である。 第1アームをロックした状態で示す図5のY−Y線に沿う断面図である。 第1アームのロックを解除した状態で示す図8と同様の断面図である。 第1アームを折畳位置と通話位置との間の所定の位置に回動させた状態で示す図8と同様の断面図である。 第1アームを通話位置に位置させた状態で示す図8と同様の断面図である。 同実施の形態を一方向から見た分解斜視図である。 同実施の形態を他の方向から見た分解斜視図である。 同実施の形態の当接突起とカム突起との関係を、第1アームが折畳位置に位置したときの状態で示す展開図である。 同関係を、第1アームが折畳位置と通話位置との間の所定の位置に位置したときの状態で示す展開図である。 同関係を、第1アームが通話位置に位置したときの状態で示す展開図である。 この発明に係るヒンジ装置が用いられた携帯電話機の他の例を、受話側筐体を折畳位置に位置させた状態で示す斜視図である。 同状態での側断面図である。 同携帯電話機の他の例を、受話側筐体を通話位置に位置させた状態で示す斜視図である。 同状態での側断面図である。 同携帯電話機の他の例を、受話側筐体を逆折畳位置に位置させた状態で示す斜視図である。 同状態での側断面図である。 この発明に係るヒンジ装置の第2実施の形態を示す正面図である。 同実施の形態の側面図である 同実施の形態を一方向から見た斜視図である。 同実施の形態を他の方向から見た斜視図である。 同実施の形態をさらに他の方向から見た斜視図である。 図24のX−X線に沿う拡大断面図である。 同実施の形態の分解斜視図である。
符号の説明
L 回動軸線
L1 第1回動軸線(回動軸線)
1 ヒンジ装置
1′ヒンジ装置
2 ヒンジ本体
2A ヒンジ本体
5 第1アーム
11 可動部材
12 係合部材
13 コイルばね(付勢手段)
20 変換機構
30 ロック機構
31 ロック部材
32 コイルばね(第2付勢手段)
33 係合凹部(係合部)
50 ヒューズ機構
51a 急斜面(傾斜面)
51b 平坦面
51c 緩斜面(第2傾斜面)
52 当接突起(当接部)

Claims (6)

  1. ヒンジ本体と取付部材とを備え、上記ヒンジ本体と上記取付部材とが、回動軸線上に並んで配置されるとともに、上記回動軸線を中心として回動可能に連結されたヒンジ装置において、
    上記ヒンジ本体と上記取付部材との間に係合部材が上記ヒンジ本体及び上記取付部材に対し上記回動軸線方向へ移動可能に、かつ上記回動軸線を中心として回動可能に設けられ、
    上記ヒンジ本体と上記係合部材との間に、上記係合部材の上記ヒンジ本体に対する回動を阻止するロック状態と、上記係合部材の上記ヒンジ本体に対する回動を許容するロック解除状態とに切換可能なロック機構が設けられ、
    上記取付部材と上記係合部材との間には、上記ロック機構がロック状態である場合において、上記取付部材に作用する回動トルクの大きさが所定の大きさ以下であるときには、上記取付部材の上記係合部材に対する回動を阻止し、上記回動トルクの大きさが所定の大きさを越えるときには、上記取付部材の上記係合部材に対する回動を許容するヒューズ機構が設けられ
    上記ロック機構がロック解除状態になっているときには、上記取付部材及び上記係合部材が上記ヒンジ本体に対して回動し、上記ロック機構がロック状態になっているときには、上記取付部材が上記ヒンジ本体及び上記係合部材に対して回動することを特徴とするヒンジ装置。
  2. 上記ヒューズ機構が、上記取付部材と上記係合部材との対向面の一方に設けられ、上記回動軸線を中心とする周方向に向かって上り勾配をなす傾斜面と、他方の対向面に設けられた当接部と、上記係合部材を上記取付部材側に付勢して上記傾斜面と上記当接部とを互いに当接させる付勢手段とを有し、上記取付部材に作用する上記回動トルクが所定の大きさ以下であるときには、上記付勢手段の付勢力によって互いに当接させられた上記傾斜面と上記当接部とが上記取付部材の回動を阻止し、上記取付部材に作用する上記回動トルクが所定の大きさを越えるときには、上記当接部が上記傾斜面を相対的に押し上がって上記係合部材を上記付勢手段の付勢力に抗して移動させることにより、上記取付部材の回動を許容することを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
  3. 上記一方の対向面には、上記傾斜面の上端縁から周方向に続いて延び、上記係合部材に対する上記取付部材の回動角度が所定の大きさを越えると上記当接部が当接する平坦面が形成されており、上記平坦面と上記当接部との間に発生する摩擦抵抗によって上記係合部材が停止させられるように、上記平坦面の上記回動軸線に対する傾斜角度が設定されていることを特徴とする請求項2に記載のヒンジ装置。
  4. 上記一方の対向面には、上記平坦面に続いて形成された下り勾配をなす第2傾斜面が形成され、この第2傾斜面の傾斜角度が上記傾斜面の傾斜角度より小さく設定され、上記取付部材の上記係合部材に対する回動角度が所定の大きさを越えると上記当接部が上記第2傾斜面に当接することを特徴とする請求項3に記載のヒンジ装置。
  5. 上記ヒンジ本体の上記係合部材側の端部には、可動部材が上記回動軸線方向へ移動可能に、かつ回動不能に設けられ、この可動部材が上記付勢手段によって上記係合部材に当接させられ、それによって上記係合部材が上記付勢手段によって付勢されており、上記係合部材と上記可動部材との当接面間には、上記付勢手段の付勢力を、上記当接部が上記傾斜面に突き当たるように、上記係合部材を上記回動軸線を中心として周方向へ付勢する回動付勢力に変換する変換機構が設けられていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のヒンジ装置。
  6. 上記ロック機構が、上記ヒンジ本体に上記回動軸線方向へ移動可能に、かつ上記回動軸線を中心とする周方向へ移動不能に設けられたロック部材と、このロック部材を上記取付部材に向かって付勢する第2付勢手段と、上記係合部材に設けられた係合部とを有し、上記ロック部材は、所定のロック位置に位置しているときには、上記係合部に係合することによって上記係合部材の上記ヒンジ本体に対する回動を阻止し、上記取付部材から上記ヒンジ本体に向かう方向へ上記ロック位置から所定距離以上移動すると、上記係合部から離間して上記係合部材の上記ヒンジ本体に対する回動を許容することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のヒンジ装置。
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