JP4588604B2 - 流速計及び流量計 - Google Patents

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本発明は、ガス等の流体の流速乃至流量をその流路上において測定する流速計及び流量計に関するものである。
例えばガス等の流体の流量を流路上において測定する際に、既知の流路断面積に乗じて流量を求めるのに必要な、流路を流れる流体の速度を検出する技術として、流路上に配置したヒータを交流信号により通電駆動し、このヒータから流路における流体の流れ方向に間隔をおいて配置した温度センサが、ヒータから放出される熱の伝搬速度に応じて出力する交流信号と、ヒータの通電駆動に用いる交流信号との位相差を求める方法が知られている(例えば特許文献1)。
特開平5−264567号公報
上記した、温度センサの出力信号とヒータの通電駆動に用いる交流信号との位相差から流体の流速を求める方法は、流路を流れる流体の流速が変化すると、温度センサから出力される交流信号の位相が、流速に応じた量だけ変化することを利用して、流体の流速を求めるものであるが、交流信号には一周期毎に同じ位相箇所が一箇所ずつ存在するので、流量が異なっても位相が同じ交流信号を温度センサが出力する可能性がある場合には、温度センサが出力する交流信号と駆動信号との同じ周期目における位相差を検出しなければ、駆動信号と温度センサが出力する交流信号との位相差から流路を流れる流体の流速を正確に求めることができない。
そのため、温度センサの出力信号とヒータの通電駆動に用いる交流信号との位相差から流体の流速を求める方法を、低速から高速まで流速レンジの広い流体が流れる流路における流体の流速検出に用いるには、駆動信号と温度センサが出力する交流信号との位相差を同じ周期目で確実に検出できるようにするための、何らかの対策が必要であるという課題があった。
そして、上記した課題は、交流信号により通電駆動するのが、通電量によって放出する熱の量が変化するヒータである場合に限らず、例えば、ペルチェ素子のような、通電方向によって熱の放出と吸収とが切り換わり、かつ、通電量によって放出又は吸収する熱の量が変化するものを熱源として用いる場合にも、総じて当てはまるものである。
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、流路における流体の流れ方向に間隔をおいて配置した熱源と温度センサを用い、上記した交流信号やこれを直線シフトした信号のような、一定の周期で電圧が変化する周期電圧波形の信号により通電駆動された熱源から伝搬される熱を検出した温度センサが出力する流速信号の、駆動信号との位相差に基づいて、流路を流れる流体の流速乃至流量を測定する際に、低速から高速まで流速レンジの広い流体が流れる流路における流体の流速を検出する場合であっても、流路を流れる流体の流速やこれに基づいて求められる流量を、高精度に測定できる流速計及び流量計を提供することにある。
上記目的を達成する請求項1乃至請求項3記載の本発明は流速計に関するものであり、請求項4記載の本発明は流量計に関するものである。
そして、請求項1に記載した本発明の流速計は、被測定対象の流体の流路上に配置した熱源を通電駆動する駆動手段が該熱源に出力する、一定の周期で電圧が変化する周期電圧波形の駆動信号と、前記流路における流体の流れ方向に前記熱源から間隔をおいて配置した温度センサが前記熱源により放出又は吸収される熱を検出しその温度に応じて出力する流速信号との位相差に応じて、位相差信号出力手段が出力する位相差信号に基づいて、前記流路を流れる流体の流速を測定する流速計において、前記熱源及び前記温度センサが、シリコンベース等の上にマイクロマシニング加工により形成されており、前記熱源と前記温度センサとが、前記流路における流体の流れ方向に、該流路における流体の流速がゼロである際に前記温度センサが出力する前記流速信号の一波長以下の間隔をおいて配置されていることを特徴とする。
また、請求項2に記載した本発明の流速計は、請求項1に記載した本発明の流速計において、前記駆動手段が、前記位相差信号をフィードバック信号として用い、前記駆動信号と前記流速信号とが時間の経過に対して一定の位相差を保つように前記駆動信号の周波数を前記位相差信号のレベルに応じて調整する駆動信号周波数調整手段を有しており、該駆動信号周波数調整手段により調整された前記駆動信号の周波数から、前記流路を流れる流体の流速を測定するものとした。
さらに、請求項3に記載した本発明の流速計は、請求項1又は2記載の流速計において、前記駆動信号が方形波であり、前記位相差信号出力手段が、前記駆動信号の周波数だけを選択的に通過させるバンドパスフィルタを用いて前記流速信号を前記駆動信号と同じ周波数の正弦波に波形整形した波形整形後流速信号と前記駆動信号との位相差に応じて、前記位相差信号を出力するものとした。
また、請求項4に記載した本発明の流量計は、被測定対象の流体の流路上に配置した熱源を通電駆動する駆動手段が該熱源に出力する正弦波の駆動信号と、前記流路における流体の流れ方向に前記熱源から間隔をおいて配置した温度センサが前記熱源により放出又は吸収される熱を検出しその温度に応じて出力する流速信号との位相差に応じて、位相差信号出力手段が出力する位相差信号に基づいて、前記流路を流れる流体の流量を測定する流量計であって、請求項1、2又は3記載の流速計を備え、前記流速計により測定された前記流路を流れる流体の流速、及び、前記流路の既知の断面積を用いて、前記流路を流れる流体の流量を測定することを特徴とする。
請求項1に記載した本発明の流速計によれば、駆動手段が周期電圧波形の信号の駆動信号により熱源を通電駆動させると、熱源の通電量乃至放出(又は吸収)熱量が連続的に増減され、これに追従して温度センサが出力する流速信号のレベルが増減するので、流速信号は、駆動信号と同じ周波数の信号成分、又は、駆動信号の周波数の倍の周波数成分を含む周期電圧波形となる。
ところで、温度センサが出力する周期電圧波形の流速信号に含まれる、駆動信号と同じ周波数の信号成分、又は、駆動信号の周波数の倍の周波数成分は、駆動手段が熱源の通電駆動に用いる駆動信号との位相差が、流路を流れる流体の流速に応じて変化するので、温度センサが出力する周期電圧波形の流速信号の、駆動手段が熱源の通電駆動に用いる駆動信号との位相差の変動を監視すれば、流路を流れる流体の流速が測定されることになる。
但し、温度センサが出力する流速信号には一周期毎に同じ位相箇所が一箇所ずつ存在するので、流路を流れる流体の流速を、駆動手段が熱源の通電駆動に用いる駆動信号と温度センサが出力する流速信号との位相差から求める場合は、駆動信号と流速信号との同周期、同位相箇所の間で位相差を検出する必要がある。
しかし、駆動信号の特定の位相箇所と流速信号の同位相箇所とが、相前後して立て続けに検出されたとしても、両信号の検出された位相箇所が必ずしも同じ周期目の位相箇所どうしであるとは限らず、仮に、駆動信号と流速信号との同位相箇所を検出しても、駆動信号の検出した位相箇所と流速信号の検出した同位相箇所とが異なる周期目の位相箇所であると、それら検出した両信号の位相差から流路を流れる流体の流速を正しく求めることはできない。
ところで、温度センサが出力する流速信号の波長は、流路における流体の流速がゼロである際に温度センサが出力する流速信号の波長よりも短くなることはなく、流路における流体の流速が高くなればなるほど、温度センサが出力する流速信号の波長は長くなる。
そのため、請求項1に記載した本発明の流速計のように、熱源と温度センサとの、流路における流体の流れ方向の間隔を、流路における流体の流速がゼロである際に温度センサが出力する流速信号の一波長以下の長さとしておけば、温度センサが出力する流速信号の波長が、流路を流れる流体の流速の高低に拘わらず、熱源と温度センサとの、流路における流体の流れ方向の間隔よりも常に長くなることから、流速信号の出力する流速信号の位相は、流路を流れる流体の流速が如何なる値となっても、流速信号の一周期の範囲内でしか変動せず、換言すれば、流速信号の位相は流路を流れる流体の流速と一対一に対応することになる。
そして、流路における流体の流速がゼロである際に温度センサが出力する流速信号の一波長の長さは、現実的に極めて小さい寸法となるところ、マイクロマシニング加工によりシリコンベース等のベース上に熱源及び温度センサを形成すれば、そのような極めて小さい寸法であっても、熱源と温度センサとの、流路における流体の流れ方向の間隔を、流路における流体の流速がゼロである際に温度センサが出力する流速信号の一波長以下の長さとなるように形成することが可能となる。
よって、マイクロマシニング加工によりシリコンベース等のベース上に熱源及び温度センサを形成することで、温度センサが出力する流速信号が、流路を流れる流体の流速の高低に拘わらず、流速信号の一周期の範囲内で、流路を流れる流体の流速と一対一に対応する位相を持つ信号となるように、熱源と温度センサとを、流路における流体の流れ方向の間隔が、流路における流体の流速がゼロである際に温度センサが出力する流速信号の一波長以下の長さとなるように配置して、流速の範囲に制約なく流路を流れる流体の流速を高精度で測定することができる。
尚、請求項1に記載した本発明の流速計において、駆動手段の有する駆動信号周波数調整手段が、位相差信号をフィードバック信号として用いて、駆動信号と流速信号とが時間の経過に対して一定の位相差を保つように駆動信号の周波数を位相差信号のレベルに応じて調整する場合、位相差信号出力手段が出力する位相差信号に基づいた、流路を流れる流体の流速は、請求項2に記載した本発明の流速計のように、駆動信号周波数調整手段により調整された駆動信号の周波数を用いて測定することができる。
また、請求項1又は2に記載した本発明の流速計において、駆動信号が方形波である場合、位相差信号出力手段が出力する位相差信号は、駆動信号に追従して周期電圧波形状に増減する熱源の放出熱量に応じて温度センサが出力する、立ち上がり及び立ち下がりに若干の遅延による変形が生じた周期電圧波形の流速信号を、駆動信号の周波数だけを選択的に通過させるバンドパスフィルタを用いて駆動信号と同じ周波数の正弦波に波形整形した波形整形後流速信号と、駆動信号との位相差に応じたものとすることができる。
そして、請求項4に記載した本発明の流量計によれば、請求項1、2又は3に記載した本発明の流速計によって高精度で測定された、流路を流れる流体の流速を用いて、流路を流れる流体の流量を高精度で計測することができる。
以下、本発明による流量計の実施形態を、流速計の実施形態と共に、図面を参照して説明する。
まず、本発明による流速計を適用した本発明の第1及び第2実施形態に係るガス流量計と、後に説明する本発明の第5及び第6実施形態に係るガス流量計とにおいて使用されるフローセンサの概略構成について、図1の説明図を参照して説明する。
図1中引用符号3で示すフローセンサは、例えば特開平9−257821号公報において図1を参照して説明されているような、Si基板31(請求項中のベースに相当)上に、マイクロマシニング加工によって、マイクロヒータ33(請求項中の熱源に相当)及びサーモパイル35(請求項中の温度センサに相当)を形成して構成されたものであり、ガス(請求項中の被測定対象の流体に相当)の流路S上に、マイクロヒータ33が流体の流れ方向における上流側に、サーモパイル35が下流側に位置するように配置されている。
このフローセンサ3では、マイクロヒータ33を駆動信号により通電駆動することでマイクロヒータ33が熱を放出し、マイクロヒータ33から伝達された熱の温度に応じた起電力がサーモパイル35に発生し、この起電力がサーモパイル35から、流路Sを流れるガスの流量に応じた流速信号として出力されるように構成されている。
次に、上述したフローセンサ3を用いて流路Sを流れるガスの流量を測定する、本発明の第1実施形態に係るガス流量計の概略構成について、図2のブロック図を参照して説明する。
図2中引用符号1で示す第1実施形態のガス流量計は、前記フローセンサ3と、前記マイクロヒータ33を正弦波状の駆動信号により通電駆動させる駆動回路5(請求項中の駆動手段に相当)と、前記サーモパイル35から出力される流速信号を増幅するアンプ7と、アンプ7によって増幅された流速信号から駆動回路5の駆動信号と同じ周波数成分のみを通過させるバンドパスフィルタ9と、駆動回路5の駆動信号の位相に対するバンドパスフィルタ9を通過した流速信号の位相の差を検出し位相差検出信号(請求項中の位相差信号に相当)を出力する位相差検出回路11(請求項中の位相差信号出力手段に相当)とを備えている。
また、第1実施形態のガス流量計1は、位相差検出回路11からの位相差検出信号から流路Sを流れるガスの流速乃至流量を演算するマイクロコンピュータ等の演算装置13を備えている。
尚、前記駆動回路5は、図3に回路図で示すように、水晶発振器51の発振周波数に応じた正弦波の信号を、その振幅の全幅に亘って正電位又は負電位となるように、後段のアンプ53により直流シフトさせて、この正電位又は負電位の正弦波による信号を、前記駆動信号として前記フローセンサ3のマイクロヒータ33に出力するように構成されている。
また、前記位相差検出回路11は、図4に回路図で示すように、駆動回路5の駆動信号をコンデンサC1でカップリングし、電源Vcc(本実施形態ではDC5V)とプルアップ抵抗R1により、抵抗R2とプルアップ抵抗R1との分圧比により定まる電位にプルアップした後、抵抗R3,R4の中点に生成される駆動信号の振幅の中間電位(本実施形態では2.5V)のDC電圧とコンパレータA1で比較し、コンパレータA1の比較出力をRSフリップフロップF/Fの入力Sに入力すると共に、バンドパスフィルタ9を通過した流速信号をコンデンサC2でカップリングし、電源Vccとプルアップ抵抗R5により、抵抗R6とプルアップ抵抗R5との分圧比により定まる電位にプルアップした後、抵抗R3,R4の中点に生成される駆動信号の振幅の中間電位のDC電圧とコンパレータA2で比較し、コンパレータA2の比較出力をRSフリップフロップF/Fの入力Rに入力して、駆動回路5の駆動信号の位相に対してバンドパスフィルタ9を通過した流速信号の位相がずれている期間、Hレベルの位相差検出信号をRSフリップフロップF/Fから出力するように構成されている。
尚、本実施形態では、抵抗R1,R2,R3,R4,R5,R6に全て同じ抵抗値のものが使用されている。
さらに、前記演算装置13は、位相差検出回路11から出力された位相差検出信号を、流路Sを流れるガスの流速に換算するための換算式に関するデータや、換算したガスの流速から流路Sを流れるガスの流量を演算するために必要な、流路Sの断面積のデータ等を、内部のメモリに記憶している。
以上の構成による第1実施形態のガス流量計1では、駆動回路5がマイクロヒータ33を通電駆動させるのに用いる、正弦波を直流シフトさせた正電位又は負電位の駆動信号は、極性が正負の相互間で反転せず単にその電位が正弦波状に変化するだけであり、マイクロヒータ33の通電量も正弦波状に増減されるので、マイクロヒータ33から放出される熱を検出したサーモパイル35が出力する流速信号の波形は、駆動信号と同じ周波数の波形となる。
駆動信号と同じ周波数の波形であるとはいえ、サーモパイル35が出力する流速信号には、駆動信号と同じ基本周波数成分に加えて他の周波数成分が重畳されているのに対し、流速の変化に対する流速信号の位相差の変化は流速信号の周波数に依存して定まるため、基本周波数以外の周波数成分を含んでいるサーモパイル35からの流速信号をそのままの波形で使用したのでは、位相差検出回路11における駆動信号との位相差検出を正確に行うことができない。
しかし、この流速信号に含まれる基本周波数以外の周波数成分はバンドパスフィルタ9において除去されるので、位相差検出回路11に入力されるのは、駆動信号の基本周波数による正弦波となる。
そして、サーモパイル35が出力する流速信号の波形は、流路Sを流れるガスの流速が速ければ速いほど、位相が進んで駆動信号に対する位相の遅れが縮小し、かつ、振幅が増加するように変形するので、駆動回路5の駆動信号の位相に対するバンドパスフィルタ9を通過した流速信号の位相の差に応じたHレベルの期間を有する位相差検出回路11からの位相差検出信号のディーティー比は、流路Sを流れるガスの流速を反映した値となる。
このため、位相差検出回路11からの位相差検出信号を取り込んだ演算装置13において、内部のメモリに記憶されたデータに基づいて、流路Sを流れるガスの流速乃至流量が高精度で測定されることになる。
ところで、例えば、流路Sの上流側に接続されているガスヒートポンプのような消費源が頻繁に燃焼と燃焼停止を繰り返す等の原因で、流路Sを流れるガスに脈動が生じていると、サーモパイル35が出力する流速信号中に、本来のガスの流速に応じた周波数成分とは異なる、脈動の周波数に応じた周波数成分が重畳されてしまうことになる。
しかし、第1実施形態のガス流量計1では、アンプ7によって増幅された流速信号から駆動回路5の駆動信号と同じ周波数成分のみを通過させるバンドパスフィルタ9が、位相差検出回路11の前段に設けられていることから、脈動の周波数に応じた周波数成分がバンドパスフィルタ9の通過の際に流速信号から除去されて、駆動信号と同じ周波数成分のみの流速信号が位相差検出回路11に供給される。
よって、流路Sを流れるガスの流速のみに依存した駆動回路5の駆動信号に対する位相差に応じた位相差検出信号を位相差検出回路11から出力させて、その位相差検出信号を取り込んだ演算装置13において、内部のメモリに記憶されたデータに基づいて、ガス中に脈動が生じていてもその影響を受けずに、流路Sを流れるガスの流速乃至流量を高精度で測定することができる。
尚、図1を参照して説明したフローセンサ3においては、マイクロマシニング加工によりシリコンベース31上にマイクロヒータ33とサーモパイル35と形成するという特長を生かして、マイクロヒータ33とサーモパイル35との間隔が、流路Sにおけるガスの流速がゼロである際にサーモパイル35が出力する流速信号の一波長以下の長さとなるように配置している。
これは、先に説明したように、サーモパイル35が出力する正弦波状の流速信号が、流路Sを流れるガスの流速が速ければ速いほど、位相が進んで駆動信号に対する位相の遅れが縮小し、かつ、振幅が増加するように変形することに起因する。
即ち、マイクロヒータ33とサーモパイル35との間隔が、流路Sにおけるガスの流速がゼロである際にサーモパイル35が出力する流速信号の一波長以下の長さであれば、サーモパイル35が出力する流速信号のレベルは、流路Sを流れるガスの流速の高低に拘わらず、流速信号の一波長のうち、流路Sを流れるガスの流速に応じた位相箇所のレベルとなる。
よって、第1実施形態のガス流量計1によれば、サーモパイル35が出力する流速信号のレベルが、流路Sを流れるガスの流速の高低に拘わらず、流速信号の一波長のうち、流路Sを流れるガスの流速と一対一に対応する位相箇所のレベルとなるようにして、流速の範囲に制約なく流路Sを流れる流体の流速乃至流量を高精度で測定することができる。
次に、本発明の第2実施形態に係るガス流量計の概略構成について、図5のブロック図を参照して説明する。
図5中引用符号1Aで示す第2実施形態のガス流量計は、位相差検出回路11の後段に、位相差検出信号をそのデューティー比に応じた電圧の位相差平滑化信号に変換する平滑化回路21と、平滑化回路21からの位相差平滑化信号をオフセット調整するアンプ23と、このアンプ23によるオフセット調整後の位相差平滑化信号の値が一定になるように、これを制御信号としてマイクロヒータ33の通電駆動用の駆動信号の周波数を調整する電圧制御発振回路(VCO)25(請求項中の駆動信号周波数調整手段、駆動手段に相当)と、駆動回路5に代えて使用される電圧制御発振回路25がマイクロヒータ33に出力する、正弦波を直流シフトさせた正電位又は負電位の駆動信号を方形波に波形成形するインバータ27とを、第1実施形態のガス流量計1に追加して設け、位相差検出回路11の出力に代えてインバータ27の出力を演算装置13に入力するようにした点を除くと、その他は第1実施形態のガス流量計1と同様に構成されている。
そして、この第2実施形態のガス流量計1Aでは、インバータ27で方形波に波形成形された電圧制御発振回路25からの駆動信号を取り込んだ演算装置13が、流路Sを流れるガスの流速乃至流量を演算することになる。
このため、第2実施形態のガス流量計1Aでは、当然、前記演算装置13が内部のメモリに記憶している、流路Sを流れるガスの流速に換算するための換算式に関するデータは、電圧制御発振回路25から出力されてインバータ27により方形波に波形成形された駆動信号のデューティー比から、駆動信号の周波数を割り出すための換算式や、割り出した駆動信号の周波数を、流路Sを流れるガスの流速に換算するための換算式、あるいは、電圧制御発振回路25から出力されてインバータ27により方形波に波形成形された駆動信号のデューティー比から、流路Sを流れるガスの流速を直接割り出すための換算式に関するデータとなる。
以上の構成による第2実施形態のガス流量計1Aでは、位相差検出回路11からの位相差検出信号を平滑化回路21で平滑化した位相差平滑化信号の、アンプ23によるオフセット調整後の値は、流路Sを流れるガスの流速を反映した値となるので、これが一定の値になるように、マイクロヒータ33を通電駆動する駆動信号の周波数を電圧制御発振回路25において調整すると、今度は、電圧制御発振回路25において調整された駆動信号の周波数が、流路Sを流れるガスの流速を反映した値となる。
このため、インバータ27により方形波に波形成形された駆動信号を取り込んだ演算装置13において、内部のメモリに記憶されたデータに基づいて、流路Sを流れるガスの流速乃至流量を高精度で測定することができる。
そして、上述した第2実施形態のガス流量計1Aにおいても、フローセンサ3のマイクロヒータ33とサーモパイル35との間隔が、流路Sにおけるガスの流速がゼロである際にサーモパイル35が出力する流速信号の一波長以下の長さに設定されたフローセンサ3を用いることから、サーモパイル35が出力する流速信号のレベルが、流路Sを流れるガスの流速の高低に拘わらず、流速信号の一波長のうち、流路Sを流れるガスの流速と一対一に対応する位相箇所のレベルとなるようにして、流速の範囲に制約なく流路Sを流れる流体の流速乃至流量を高精度で測定することができる。
次に、本発明による流速計を適用した本発明の第3及び第4実施形態に係るガス流量計と、後に説明する本発明の第7及び第8実施形態に係るガス流量計とにおいて使用されるフローセンサの概略構成について、図6の説明図を参照して説明する。
図6中引用符号3Aで示すフローセンサは、図1を参照して説明したフローセンサ3のマイクロヒータ33に代えて、ペルチェ素子37を用いて構成されたものであり、ガスの流路S上に、ペルチェ素子37が流体の流れ方向における上流側に、サーモパイル35が下流側に位置するように配置されている。
このフローセンサ3Aでは、ペルチェ素子37を駆動信号により通電駆動することで、電流の流れる方向に応じてペルチェ素子37が熱を放出又は吸収し、ペルチェ素子37から伝達された熱の温度に応じた起電力がサーモパイル35に発生し、この起電力がサーモパイル35から、流路Sを流れるガスの流量に応じた流速信号として出力されるように構成されている。
次に、上述したフローセンサ3Aを用いて流路Sを流れるガスの流量を測定する、本発明の第3実施形態に係るガス流量計の概略構成について、図7のブロック図を参照して説明する。
図7中引用符号1Bで示す第3実施形態のガス流量計は、フローセンサ3をフローセンサ3Aに替えた他、駆動回路5から直流シフト用のアンプ53を省略して正電位と負電位とに跨った電位の正弦波による交流信号を、前記駆動信号として前記フローセンサ3Aのペルチェ素子37に出力する駆動回路5Aを用いた点の他は、第1実施形態のガス流量計1と同様に構成されている。
以上の構成による第3実施形態のガス流量計1Bでは、駆動回路5Aがペルチェ素子37を、正電位と負電位とに跨った電位の正弦波による交流の駆動信号で通電駆動させても、極性が正負の相互間で反転した際にペルチェ素子37を流れる電流の向きが反転し、反転前にペルチェ素子37で生じていたペルチェ効果とは逆のペルチェ効果(暖→冷、又は、冷→暖)が発生し、ペルチェ素子37の通電量の増減に対するペルチェ素子37の放出乃至吸収熱量の増減傾向には、ペルチェ素子37を流れる電流の向きの反転の前後に亘って逆転現象が発生しないので、ペルチェ素子37により放出又は吸収される熱を検出したサーモパイル35が出力する流速信号の波形は、駆動信号が、その極性が正負の相互間で反転する交流信号であるか、それとも、その極性が正負の相互間で反転しない直流(シフト)信号であるかに拘わらず、駆動信号と同じ周波数の正弦波状となる。
そして、サーモパイル35が出力する正弦波状の流速信号の波形は、流路Sを流れるガスの流速が速ければ速いほど、位相が進んで駆動信号に対する位相の遅れが縮小し、かつ、振幅が増加するように変形するので、駆動回路5の駆動信号の位相に対するバンドパスフィルタ9を通過した流速信号の位相の差に応じたHレベルの期間を有する位相差検出回路11からの位相差検出信号のディーティー比は、流路Sを流れるガスの流速を反映した値となる。
このため、位相差検出回路11からの位相差検出信号を取り込んだ演算装置13において、内部のメモリに記憶されたデータに基づいて、流路Sを流れるガスの流速乃至流量が高精度で測定されることになる。
そして、図6を参照して説明したフローセンサ3Aにおいても、第1及び第2実施形態のガス流量計1,1Aに用いるフローセンサ3と同様に、マイクロマシニング加工によりシリコンベース31上にペルチェ素子37とサーモパイル35と形成するという特長を生かして、ペルチェ素子37とサーモパイル35との間隔が、流路Sにおけるガスの流速がゼロである際にサーモパイル35が出力する流速信号の一波長以下の長さとなるように配置している。
よって、第3実施形態のガス流量計1Bによれば、サーモパイル35が出力する流速信号のレベルが、流路Sを流れるガスの流速の高低に拘わらず、流速信号の一波長のうち、流路Sを流れるガスの流速と一対一に対応する位相箇所のレベルとなるようにして、流速の範囲に制約なく流路Sを流れる流体の流速乃至流量を高精度で測定することができる。
尚、マイクロヒータ33に代えてペルチェ素子37を用いたフローセンサ3Aは、上記のような作用をサーモパイル35の出力にもたらすので、第2実施形態のガス流量計1Aにおいて、フローセンサ3をフローセンサ3Aに替え、かつ、正電位又は負電位の正弦波による駆動信号をマイクロヒータ33に出力する電圧制御発振回路25に代えて、第3実施形態のガス流量計1Bの駆動回路5Aと同様に、正電位と負電位とに跨った電位の正弦波による交流信号を駆動信号としてフローセンサ3Aのペルチェ素子37に出力する電圧制御発振回路25Aを用いて、図8のブロック図に示すような第4実施形態のガス流量計1Cを構成しても、第2実施形態のガス流量計1Aによって発揮されたのと同様の効果を得ることができる。
以上の第1及び第2実施形態のガス流量計1,1Aでは、正弦波を直流シフトさせた正電位又は負電位の駆動信号によりマイクロヒータ33を駆動するものとしたが、本発明は、方形波のように一定の周期で電圧が変化する周期電圧波形の信号を直流シフトさせた正電位又は負電位の駆動信号でマイクロヒータ33を駆動する場合にも適用可能である。
そこで、上述した第1実施形態のガス流量計1の変形例に相当し、方形波を直流シフトさせた正電位又は負電位の駆動信号でマイクロヒータ33を駆動する、本発明の第5実施形態に係るガス流量計の概略構成について、図9のブロック図を参照して説明する。
図9中引用符号1Dで示す第5実施形態のガス流量計は、第1実施形態のガス流量計1の駆動回路5に代えて、方形波を直流シフトさせた正電位又は負電位の駆動信号によりマイクロヒータ33を駆動する駆動回路5D(請求項中の駆動手段に相当)を用いた点を除くと、その他は第1実施形態のガス流量計1と同様に構成されている。
そして、駆動回路5Dとしては、改めて図示しての説明は省略するものの、例えば周知の無安定マルチバイブレータを用いることができる。
以上の構成による第5実施形態のガス流量計1Dでは、駆動回路5Dがマイクロヒータ33を通電駆動させるのに用いる、方形波を直流シフトさせた正電位又は負電位の駆動信号は、極性が正負の相互間で反転せず単にその電位が方形波状に変化するだけであり、したがって、マイクロヒータ33の通電量も方形波状に増減されるので、マイクロヒータ33からの放出熱量は、立ち上がり及び立ち下がりに若干の遅延による変形が生じた方形波状となり、マイクロヒータ33から放出される熱を検出したサーモパイル35が出力する流速信号の波形も、駆動信号と同じ周波数の立ち上がり及び立ち下がりに若干の遅延による変形が生じた方形波状となる。
ところで、方形波を直流シフトさせた正電位又は負電位のマイクロヒータ33の駆動信号は、基本周波数成分に加えて高調波成分を含んでいるので、サーモパイル35が出力する方形波状の流速信号にも、駆動回路5Bがマイクロヒータ33を通電駆動させるのに用いる駆動信号と同様に、基本周波数以外の高調波成分が含まれているが、流速の変化に対する流速信号の位相差の変化量は流速信号の周波数に依存して定まるため、基本周波数以外の高調波成分を含んでいるサーモパイル35からの流速信号をそのままの波形で使用したのでは、位相差検出回路11における駆動信号との位相差検出を正確に行うことができない。
しかし、この流速信号に含まれる高調波成分はバンドパスフィルタ9において除去されるので、位相差検出回路11に入力されるのは、駆動信号の基本周波数による正弦波となる。
そして、サーモパイル35が出力してバンドバスフィルタ9を通過した正弦波の流速信号は、流路Sを流れるガスの流速が速ければ速いほど、位相が進んで駆動信号に対する位相の遅れが縮小し、かつ、振幅が増加するように変形するので、駆動回路5Dの駆動信号の位相に対するバンドパスフィルタ9を通過した流速信号の位相の差に応じたHレベルの期間を有する位相差検出回路11からの位相差検出信号のディーティー比は、流路Sを流れるガスの流速を反映した値となる。
このため、位相差検出回路11からの位相差検出信号を取り込んだ演算装置13において、内部のメモリに記憶されたデータに基づいて、流路Sを流れるガスの流速乃至流量を高精度で測定することができる。
次に、上述した第2実施形態のガス流量計1Aの変形例に相当し、方形波を直流シフトさせた正電位又は負電位の駆動信号でマイクロヒータ33を駆動する、本発明の第6実施形態に係るガス流量計の概略構成について、図10のブロック図を参照して説明する。
図10中引用符号1Eで示す第6実施形態のガス流量計は、第2実施形態のガス流量計1Aのアンプ23によるオフセット調整後の位相差平滑化信号の値が一定になるように、これを制御信号としてマイクロヒータ33の通電駆動用の駆動信号の周波数を調整するものとして、第2実施形態のガス流量計1Aの電圧制御発振回路25に代えて電圧制御発振回路25E(請求項中の駆動信号周波数調整手段、駆動手段に相当)を用い、第5実施形態の駆動回路5Dに代えて使用される電圧制御発振回路25Eがマイクロヒータ33を駆動する、方形波を直流シフトさせた正電位又は負電位の駆動信号を、インバータ27を省略してそのまま演算装置13に入力するようにした点を除くと、その他は第2実施形態のガス流量計1Aと同様に構成されている。
尚、電圧制御発振回路25Eとしては、改めて図示しての説明は省略するものの、例えば、外部から直流電圧を制御することで発振周波数を調整できる、例えば周知のエミッタ結合無安定マルチバイブレータを用いることができる。
この第6実施形態のガス流量計1Eでは、電圧制御発振回路25Cからの駆動信号を取り込んだ演算装置13が、流路Sを流れるガスの流速乃至流量を演算することになる。
このため、第6実施形態のガス流量計1Eでは、当然、前記演算装置13が内部のメモリに記憶している、流路Sを流れるガスの流速に換算するための換算式に関するデータは、電圧制御発振回路25Eから出力された駆動信号のデューティー比から、駆動信号の周波数を割り出すための換算式や、割り出した駆動信号の周波数を、流路Sを流れるガスの流速に換算するための換算式、あるいは、電圧制御発振回路25Eから出力された駆動信号のデューティー比から、流路Sを流れるガスの流速を直接割り出すための換算式に関するデータとなる。
以上の構成による第6実施形態のガス流量計1Eでは、位相差検出回路11からの位相差検出信号を平滑化回路21で平滑化した位相差平滑化信号の、アンプ23によるオフセット調整後の値は、流路Sを流れるガスの流速を反映した値となるので、これが一定の値になるように、マイクロヒータ33を通電駆動する駆動信号の周波数を電圧制御発振回路25Eにおいて調整すると、今度は、電圧制御発振回路25Eにおいて調整された駆動信号の周波数が、流路Sを流れるガスの流速を反映した値となる。
このため、電圧制御発振回路25Eから出力された駆動信号を取り込んだ演算装置13において、内部のメモリに記憶されたデータに基づいて、流路Sを流れるガスの流速乃至流量を高精度で測定することができる。
同様に、以上の第3及び第4実施形態のガス流量計1B,1Cでは、正電位と負電位とに跨った電位の正弦波による交流の駆動信号によりマイクロヒータ33を駆動するものとしたが、本発明は、方形波のように一定の周期で電圧が変化する周期電圧波形の、正電位と負電位とに跨った電位の交流の駆動信号でペルチェ素子37を駆動する場合にも適用可能である。
そこで、上述した第3実施形態のガス流量計1Bの変形例に相当し、正電位と負電位とに跨った電位の方形波による交流の駆動信号でペルチェ素子37を駆動する、本発明の第7実施形態に係るガス流量計の概略構成について、図11のブロック図を参照して説明する。
図11中引用符号1Fで示す第7実施形態のガス流量計は、第3実施形態のガス流量計1Bの駆動回路5Aに代えて、第5実施形態のガス流量計1Dの駆動回路5Dから直流シフト用の構成を省略して正電位と負電位とに跨った電位の方形波による交流信号を、前記駆動信号として前記フローセンサ3Aのペルチェ素子37に出力する駆動回路5F(請求項中の駆動手段に相当)を用いた点を除くと、その他は第3実施形態のガス流量計1Bと同様に構成されている。
そして、駆動回路5Fとしては、改めて図示しての説明は省略するものの、例えば周知の無安定マルチバイブレータを用いることができる。
以上の構成による第7実施形態のガス流量計1Fでは、駆動回路5Fがペルチェ素子37を、正電位と負電位とに跨った電位の方形波による交流の駆動信号で通電駆動させても、極性が正負の相互間で反転した際にペルチェ素子37を流れる電流の向きが反転し、反転前にペルチェ素子37で生じていたペルチェ効果とは逆のペルチェ効果(暖→冷、又は、冷→暖)が発生し、ペルチェ素子37の通電量の増減に対するペルチェ素子37の放出乃至吸収熱量の増減傾向には、ペルチェ素子37を流れる電流の向きの反転の前後に亘って逆転現象が発生しないので、ペルチェ素子37により放出又は吸収される熱を検出したサーモパイル35が出力する流速信号の波形は、駆動信号が、その極性が正負の相互間で反転する交流信号であるか、それとも、その極性が正負の相互間で反転しない直流(シフト)信号であるかに拘わらず、駆動信号と同じ周波数の立ち上がり及び立ち下がりに若干の遅延による変形が生じた方形波状となる。
ところで、正電位と負電位とに跨った電位の方形波によるペルチェ素子37の駆動信号は、基本周波数成分に加えて高調波成分を含んでいるので、サーモパイル35が出力する方形波状の流速信号にも、駆動回路5Fがペルチェ素子37を通電駆動させるのに用いる駆動信号と同様に、基本周波数以外の高調波成分が含まれているが、流速の変化に対する流速信号の位相差の変化量は流速信号の周波数に依存して定まるため、基本周波数以外の高調波成分を含んでいるサーモパイル35からの流速信号をそのままの波形で使用したのでは、位相差検出回路11における駆動信号との位相差検出を正確に行うことができない。
しかし、この流速信号に含まれる高調波成分はバンドパスフィルタ9において除去されるので、位相差検出回路11に入力されるのは、駆動信号の基本周波数による正弦波となる。
そして、サーモパイル35が出力してバンドバスフィルタ9を通過した正弦波の流速信号は、流路Sを流れるガスの流速が速ければ速いほど、位相が進んで駆動信号に対する位相の遅れが縮小し、かつ、振幅が増加するように変形するので、駆動回路5Fの駆動信号の位相に対するバンドパスフィルタ9を通過した流速信号の位相の差に応じたHレベルの期間を有する位相差検出回路11からの位相差検出信号のディーティー比は、流路Sを流れるガスの流速を反映した値となる。
このため、位相差検出回路11からの位相差検出信号を取り込んだ演算装置13において、内部のメモリに記憶されたデータに基づいて、流路Sを流れるガスの流速乃至流量が高精度で測定されることになる。
そして、図6を参照して説明したフローセンサ3Aにおいても、第1、第2、第5、及び、第6実施形態のガス流量計1,1A,1D,1Eに用いるフローセンサ3と同様に、マイクロマシニング加工によりシリコンベース31上にペルチェ素子37とサーモパイル35と形成するという特長を生かして、ペルチェ素子37とサーモパイル35との間隔が、流路Sにおけるガスの流速がゼロである際にサーモパイル35が出力する流速信号の一波長以下の長さとなるように配置している。
よって、第7実施形態のガス流量計1Fによれば、サーモパイル35が出力する流速信号のレベルが、流路Sを流れるガスの流速の高低に拘わらず、流速信号の一波長のうち、流路Sを流れるガスの流速と一対一に対応する位相箇所のレベルとなるようにして、流速の範囲に制約なく流路Sを流れる流体の流速乃至流量を高精度で測定することができる。
尚、マイクロヒータ33に代えてペルチェ素子37を用いたフローセンサ3Aは、上記のような作用をサーモパイル35の出力にもたらすので、第6実施形態のガス流量計1Eにおいて、フローセンサ3をフローセンサ3Aに替え、かつ、電圧制御発振回路25Eがマイクロヒータ33を駆動する、方形波を直流シフトさせた正電位又は負電位の駆動信号を、正電位又は負電位の方形波による駆動信号をマイクロヒータ33に出力する電圧制御発振回路25Eに代えて、第7実施形態のガス流量計1Fの駆動回路5Fと同様に、正電位と負電位とに跨った電位の方形波による交流信号を駆動信号としてフローセンサ3Aのペルチェ素子37に出力する電圧制御発振回路25G(請求項中の駆動信号周波数調整手段、駆動手段に相当)を用いて、図12のブロック図に示すような第8実施形態のガス流量計1Gを構成しても、第6実施形態のガス流量計1Eによって発揮されたのと同様の効果を得ることができる。
ちなみに、第1実施形態のガス流量計1で用いた駆動回路5は、第3実施形態のガス流量計1Bで用いた、駆動回路5から直流シフト用のアンプ53を省略して正電位と負電位とに跨った電位の正弦波による交流信号を駆動信号として出力する駆動回路5Aに替えてもよく、また、第2実施形態のガス流量計1Aで用いた電圧制御発振回路25は、第4実施形態のガス流量計1Bで用いた、正電位と負電位とに跨った電位の正弦波による信号を駆動信号として出力する電圧制御発振回路25Aに替えてもよい。
その場合には、駆動回路5Aや電圧制御発振回路25Aがマイクロヒータ33を通電駆動させるのに用いる正弦波の駆動信号は、極性が正負の相互間で反転し、マイクロヒータ33の通電量が所謂半波整流波形状になり、電流と電圧の積である電力に比例するマイクロヒータ33の放熱量は、マイクロヒータ33の通電駆動に用いる駆動信号の2倍の周波数を持つ正弦波となるので、マイクロヒータ33から放出される熱を検出したサーモパイル35が出力する流速信号の波形は、マイクロヒータ33の放出熱量に追従して、駆動信号の倍の周波数の正弦波となる。
このため、位相差検出回路11では、駆動信号と、駆動信号の倍の周波数の正弦波となるサーモパイル35からの流速信号との位相差が検出されることになる。
また、第3実施形態のガス流量計1Bで用いた駆動回路5Aや、第7実施形態のガス流量計1Fで用いた駆動回路5Fは、第1実施形態のガス流量計1で用いた駆動回路5や、第5実施形態のガス流量計1Dで用いた駆動回路5Dに替えてもよく、また、第4実施形態のガス流量計1Bで用いた電圧制御発振回路25Aや、第8実施形態のガス流量計1Gで用いた電圧制御発振回路25Gは、第2実施形態のガス流量計1Aで用いた電圧制御発振回路25や、第6実施形態のガス流量計1Eで用いた電圧制御発振回路25Eに替えてもよい。
その場合には、駆動回路5や電圧制御発振回路25がペルチェ素子37を通電駆動させるのに用いる、正弦波や方形波を直流シフトさせた正電位又は負電位の駆動信号は、極性が正負の相互間で反転せず単にその電位が正弦波状や方形波状に変化するだけであり、ペルチェ素子37に流れる電流の向きが同じ方向となるので、ペルチェ素子37は熱を常に放出又は吸収し、その放出熱量又は吸収熱量が正弦波状や、立ち上がり及び立ち下がりに若干の遅延による変形が生じた方形波状に増減されることになる。
よって、駆動回路5,5Dや電圧制御発振回路25,25Eによりペルチェ素子37を通電駆動する場合に、ペルチェ素子37により放出又は吸収される熱を検出したサーモパイル35が出力する流速信号の波形は、駆動回路5A,5Fや電圧制御発振回路25A,25Gによりペルチェ素子37を通電駆動する場合と同様に、駆動信号と同じ周波数の正弦波状や方形波状となり、そのため、第3及び第4実施形態のガス流量計1B,1Cにおいて、駆動回路5や電圧制御発振回路25によりペルチェ素子37を通電駆動するように構成したり、第7及び第8実施形態のガス流量計1F,1Gにおいて、駆動回路5Dや電圧制御発振回路25Eによりペルチェ素子37を通電駆動するように構成しても、第3及び第4実施形態のガス流量計1B,1Cや第7及び第8実施形態のガス流量計1F,1Gと同様の効果を得ることができる。
尚、上記の各実施形態では、サーモパイル35がマイクロヒータ33やペルチェ素子37よりも流体の流れ方向における下流側に位置する場合について説明したが、本発明は、サーモパイル35がマイクロヒータ33やペルチェ素子37よりも流体の流れ方向における上流側に位置する場合についても、適用可能である。
その場合にも、サーモパイル35がマイクロヒータ33やペルチェ素子37よりも流体の流れ方向における下流側に位置する場合と同じく、サーモパイル35が出力する流速信号の波形は、流路Sを流れるガスの流速が速ければ速いほど、位相が進んで駆動信号に対する位相の遅れが縮小するように変形するので、駆動回路5,5A,5D,5Fの駆動信号の位相に対するバンドパスフィルタ9を通過した流速信号の位相の差に応じたHレベルの期間を有する位相差検出回路11からの位相差検出信号のディーティー比や、位相差検出回路11からの位相差検出信号を平滑化回路21で平滑化した位相差平滑化信号の、アンプ23によるオフセット調整後の値は、流路Sを流れるガスの流速を反映した値となる。
このため、サーモパイル35がマイクロヒータ33よりも流体の流れ方向における上流側に位置する場合でも、第1、第3、第5、及び、第7実施形態のガス流量計1,1B,1D,1Fにおける位相差検出回路11からの位相差検出信号や、第2及び第4実施形態のガス流量計1A,1Cにおけるインバータ27により方形波に波形成形された駆動信号、あるいは、第6及び第8実施形態のガス流量計1E,1Gにおける電流制御発振回路25E,25Gから出力される方形波の駆動信号を取り込んだ演算装置13において、内部のメモリに記憶されたデータに基づいて、流路Sを流れるガスの流速乃至流量を高精度で測定することができる。
また、上記の各実施形態ではガスの流量を測定するガス流量計を例に取って説明したが、本発明は、ガス以外の気体や液体等、様々な流体の流速乃至流量測定について適用可能であり、また、流量を測定せずその前段階の流速のみ測定する場合についても、広く適用可能であることは言うまでもない。
本発明の第1及び第2実施形態に係るガス流量計において使用されるフローセンサの概略構成を示す説明図である。 本発明による流速計を適用した本発明の第1実施形態に係るガス流量計の概略構成を示すブロック図である。 図2の駆動回路の内部構成を示す回路図である。 図2の位相差検出回路の内部構成を示す回路図である。 本発明による流速計を適用した本発明の第2実施形態に係るガス流量計の概略構成を示すブロック図である。 本発明の第3及び第4実施形態に係るガス流量計において使用されるフローセンサの概略構成を示す説明図である。 本発明による流速計を適用した本発明の第3実施形態に係るガス流量計の概略構成を示すブロック図である。 本発明による流速計を適用した本発明の第4実施形態に係るガス流量計の概略構成を示すブロック図である。 本発明による流速計を適用した本発明の第5実施形態に係るガス流量計の概略構成を示すブロック図である。 本発明による流速計を適用した本発明の第6実施形態に係るガス流量計の概略構成を示すブロック図である。 本発明による流速計を適用した本発明の第7実施形態に係るガス流量計の概略構成を示すブロック図である。 本発明による流速計を適用した本発明の第8実施形態に係るガス流量計の概略構成を示すブロック図である。
符号の説明
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G ガス流量計
5,5A,5D,5F 駆動回路(駆動手段)
11 位相差検出回路(位相差信号出力手段)
25,25A,25E,25G 電圧制御発振回路(駆動信号周波数調整手段、駆動手段)
31 Si基板(ベース)
33 マイクロヒータ(熱源)
35 サーモパイル(温度センサ)
37 ペルチェ素子(熱源)
S 流路

Claims (4)

  1. 被測定対象の流体の流路上に配置した熱源を通電駆動する駆動手段が該熱源に出力する、一定の周期で電圧が変化する周期電圧波形の駆動信号と、前記流路における流体の流れ方向に前記熱源から間隔をおいて配置した温度センサが前記熱源により放出又は吸収される熱を検出しその温度に応じて出力する流速信号との位相差に応じて、位相差信号出力手段が出力する位相差信号に基づいて、前記流路を流れる流体の流速を測定する流速計において、
    前記熱源及び前記温度センサは、ベース上にマイクロマシニング加工により形成されており、
    前記熱源と前記温度センサとは、前記流路における流体の流れ方向に、該流路における流体の流速がゼロである際に前記温度センサが出力する前記流速信号の一波長以下の間隔をおいて配置されている、
    ことを特徴とする流速計。
  2. 前記駆動手段は、前記位相差信号をフィードバック信号として用い、前記駆動信号と前記流速信号とが時間の経過に対して一定の位相差を保つように前記駆動信号の周波数を前記位相差信号のレベルに応じて調整する駆動信号周波数調整手段を有しており、該駆動信号周波数調整手段により調整された前記駆動信号の周波数から、前記流路を流れる流体の流速を測定する請求項1記載の流速計。
  3. 前記駆動信号は方形波であり、前記位相差信号出力手段は、前記駆動信号の周波数だけを選択的に通過させるバンドパスフィルタを用いて前記流速信号を前記駆動信号と同じ周波数の正弦波に波形整形した波形整形後流速信号と前記駆動信号との位相差に応じて、前記位相差信号を出力する請求項1又は2記載の流速計。
  4. 被測定対象の流体の流路上に配置した熱源を通電駆動する駆動手段が該熱源に出力する、一定の周期で電圧が変化する周期電圧波形の駆動信号と、前記流路における流体の流れ方向に前記熱源から間隔をおいて配置した温度センサが前記熱源により放出又は吸収される熱を検出しその温度に応じて出力する流速信号との位相差に応じて、位相差信号出力手段が出力する位相差信号に基づいて、前記流路を流れる流体の流量を測定する流量計であって、
    請求項1、2又は3記載の流速計を備え、
    前記流速計により測定された前記流路を流れる流体の流速、及び、前記流路の既知の断面積を用いて、前記流路を流れる流体の流量を測定する、
    ことを特徴とする流量計。
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