JP4588141B2 - 医療用放射性ヨウ素125小型放射線源およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、微細な孔中に不溶性無機ヨウ素125 を含有する構造的に安定な多孔質無機材料で構成される担体マトリックスを含み、該担体マトリックスが耐蝕性の生体適合性材料で作られたカプセル内に封入されているか、またはこうした材料でコーティングされている、新規な放射性ヨウ素125 小型放射線源(シード(seed))に関する。本発明によるこのヨウ素シードにさらに(1または複数の)慣用のX線マーカーを含ませることもできる。本発明の別の目的はこの新規なヨウ素125 シードの製造方法である。
【0002】
【従来の技術】
腫瘍の治療において、患者に対する外科的な介入を最少にするため、放射性インプラント(埋込み物)が使用される。これらはさらに転移の出現の予防のために、または手術後の組織照射のために使用することもできる。
照射療法には基本的な3つのタイプがある。すなわち、
1.治療すべき組織内に放射線源を埋め込む、組織内療法;
2.周囲の組織が照射を受けるように、アプリケーターによって人体の体腔内に放射線源を挿入する、体腔内療法;
3.血管の内壁または周囲の組織が照射を受けるように、カテーテルによって血管内に放射線源を挿入する、内腔療法。
【0003】
長い間、組織内インプラントを使用することによる腫瘍の局所照射が実用上の通例であった。こうした治療方法では非常に正確な線量および治療の小領域への限定が可能になり、したがって健康な組織への照射の影響が最少化される。
ヨウ素125 アイソトープの放射線エネルギーは組織内近距離照射療法に適切である。ヨウ素125 の低ガンマ線エネルギーレベルおよび短い半減期によって、これをドープしたシードは、健康な組織を損傷することなく、永続的なインプラントとして組織内に留まることができる。また、その患者と接触している医療スタッフやその他の人間への危険もない。
【0004】
シードは治療すべき組織内にインプラントを迅速かつ簡単に挿入することができるように設計しなければならない。一般的な挿入技術では中空針を使用して組織内に所望の数のシードを入れ、その後針を引き抜く。
体内のシードを確認し、そしてその位置を指示するために、X線および超音波技術が使用される。この理由のため、いわゆる「マーカー」をシード中に組み込むか、または超音波表示を可能にする設計を選択する。これらのマーカーは例えば金、銀、プラチナ、鉛またはイリジウムなどの高密度の材料で製造される。これらは放射性担体の形状およびサイズに応じて、そして画像化の要件に応じて、各種の形状およびサイズにすることができ、例えば球状、チューブ、ワイアなどに形作ることができる。さらに、よりよい反射のために、表面、特に金属表面を粗面化(エッチング)することによって、超音波可視化を改善することができる。
【0005】
従来技術では、近距離照射療法における放射線源として使用することができる多数のシードが記述されている。例えば、米国特許第5,405,165 号(Carden)、米国特許第5,354,257 号(Roubin)、米国特許第5,342,283 号(Good)、米国特許第4,891,165 号(Suthanthiryan)、米国特許第4,702,228 号(Russelら)、米国特許第4,323,055 号(Kubiatowicz)、米国特許第3,351,049 号(Lawrence)および国際公開WO 97/19706 号(Coninglione)である。ヨウ素125 シードはLawrence、Kubiatowicz およびSuthanthiryan の上記特許中に開示されている。
【0006】
米国特許第4,323,055 号(Kubiatowicz)に記載されたヨウ素125 シードは、好ましい実施形態において、活性支持体とX線マーカーの両方として機能する銀ロッド(rod)からなるマトリックスの表面に放射性ヨウ素層を含有している。こうしたシードは、例えば化学的反応を使用して、この銀ロッドの銀表面を塩化銀に変換することによって製造される。気体雰囲気中で塩化物イオンの交換を実施することによって、ヨウ化銀を表面に化学的に結合させる。この方法で製造したシードは非対称の放射線場を形成する傾向がある。さらに、銀ロッドによって放射線が高度に自己吸収される結果となる。この場合、治療に必要な量の放射線を確保するために、より多くのアイソトープを添加しなければならない。すなわち、アイソトープの利用性の点から、発生源の生産があまり効率的でなくなり、より高価となる。さらに、放射性核種としての銀ロッドの耐磨耗性は満足すべきものでない。
【0007】
Lawrence(米国特許第3,351,049 号)は有機ポリマー、例えばナイロンフィラメント中に分散させた放射性ヨウ素125 を有するシードについて記載している。この設計で使用される元素状ヨウ素の高揮発性のため、このシードの大量生産は不可能であると見られる。
米国特許第5,163,896 号においてSuthanthiranによって記載されているシードには、ポリ(アミノ酸)を含む放射性吸収材料でコーティングされた金属基体が含まれる。米国特許第4,994,013 号においても、シードはやはり炭素または活性炭でコーティングされた金属基体を含んでいる。両設計ともにコーティングされた金属製ロッド基体を基礎としており、これは米国特許第4,323,055 号(Kubiatowicz )によって報告された銀製ロッドについて上に記載したのと同様の欠点を有する。放射線がその金属基体によって高度に自己吸収される結果となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、組織内療法のすべての要件に合致し、上記の欠点のない新規なヨウ素125 小型放射線源を提供することである。そのマトリックスが良好な耐磨耗性および均一な放射線量分布を有し、超音波および蛍光測定において良好な画像を提供する大量のヨウ素125 シードを容易にかつ自動的に製造することが本発明の課題である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のこの課題は、微細な孔中に不溶性無機ヨウ素125 を含有する構造的に安定な多孔質無機材料で構成される放射性担体マトリックスを含み、該担体マトリックスが、発生した放射線を透過しかつ該放射線に耐性のある耐蝕性生体適合性材料中に密閉されている、放射性ヨウ素125 シードによって達成される。無機担体マトリックスは耐蝕性生体適合性材料でカプセル化するか、またはこの材料でコーティングすることができる。
【0010】
放射性マトリックスのカプセル化またはコーティングに好適な生理学的に許容される材料は当業界で周知である。それらは、耐性があって、ヒト組織適合性で、しかもX線遮蔽を最少化するために低原子量である金属、例えばチタンまたはその他の耐蝕性金属合金、例えばステンレス鋼などで構成することができる。さらに、それらを(コーティング中に反応性の窒素、酸素、メタン、または一酸化炭素ガスを使用して、遷移金属またはその他の金属の炭化物、窒化物または炭化窒化物を形成させて)炭化チタン、窒化チタン、炭化窒化チタン、窒化チタンアルミニウム、窒化ジルコニウムおよび窒化ハフニウムなどの、耐性のあるヒト組織適合性金属化合物で構成してもよい。
本発明の好ましい実施形態においては、放射性マトリックスをチタンカプセル内に封入する。
【0011】
別の実施形態において、マトリックスのカプセル化またはコーティングのための材料をプラスチック材料で構成することができるが、これは放射線耐性であり、発生した放射線を透過し、そして例えば2〜15μm程度の非常に薄い層でも安定でなければならない。こうした材料は当業界で周知であり、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリウレタン、ポリフェニレンオキサイドブレンド、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、フェニルエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミドおよび液晶ポリマーが含まれる。
本発明の好ましい実施形態において、カプセル化材料またはコーティング材料として、Parylene(登録商標)(ポリ-p-キシリレン)を使用することができる。
【0012】
本発明において、放射性ヨウ素125 を担持するために選定される担体マトリックスとして、ヨウ素125 の低エネルギーガンマ放射線を吸収しないものならば、どんな構造的に安定な多孔質無機材料も使用することができる。好ましくは約15〜40%の多孔度を有する無機材料が使用され、特に好ましいのは約20〜30%の多孔度である。
【0013】
本発明においては、担体マトリックスの多孔質無機材料をセラミック材料、不溶性鉱物、不溶性塩および無機ポリマーからなる群から選択する。本発明に従うセラミック材料、不溶性鉱物、不溶性塩および無機ポリマーとは、そのカチオンがアルカリ土類金属若しくはそれらの組合せ物から(グループ1)、Al、Si、Ga、Sn若しくはそれらの組合せ物から(グループ2)、またはTi、Zr、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn若しくはそれらの組合せ物(グループ3)から選択され、そしてそのアニオンが酸化物、窒化物、炭化物、リン酸塩、フッ化物、硫化物若しくはそれらの組合せ物を形成するような材料である。グループ1と2、1と3、2と3の、またはグループ1と2と3のカチオンを含む材料を使用することも可能である。
【0014】
使用するのに好ましいものは、例えばクレー、磁器、ケイ酸塩、またはゼオライト(Al/Si 酸化物)、ペロブスカイト、スピネルなどの混成金属酸化物である。
本発明において、特に好ましいものはセラミック材料、特にTiO2、Al2O3 、SiO2、ZrO2、Y2O3、これらの混合物、ガラスまたは合成ガラスで構成されるセラミック材料である。使用するのに特に好ましいのはAl2O3またはこれと前記のその他のセラミック材料との混合物である。
【0015】
本発明において、担体マトリックスの微細な孔は不溶性無機ヨウ素125 としてヨウ化銀、ヨウ化ビスマス、ヨウ化鉛、ヨウ化タリウムまたはヨウ化銅を含有する。特に好ましくはヨウ素125 化銀を使用する。
本発明の無機担体マトリックスの多孔性およびそこに含まれる空気によって、本発明のシードは超音波による良好な可視性を備えている。もし、それに加えて、シードに(当業界で周知の)X線マーカーを備えるのであれば、超音波および蛍光測定のきわめて良好な画像化が達成される。本発明においては、X線マーカーの材料は、この目的のために常用される材料である。好ましい実施形態においては、金が使用される。
【0016】
本発明の無機マトリックスは放射性担体について先行技術において記述されているどんな形状のものでもよい。それらとして、例えばロッド、中空チューブ、フィルム、シート、微小球粒子またはペレットの形状が使用される。本発明においては、チューブ状の無機マトリックスが好適である。もちろん、X線マーカーの形状は無機マトリックスの形状およびその無機マトリックスのカプセル内の所在位置によって左右されるだろう。X線マーカーは無機マトリックスの側面または周囲に置くか、またはそれらを無機材料内の中心部に置くことができる。例えば、X線マーカーをロッド、チューブ、ビーズ、半球形などの回転対称素子とするか、または素子の一端若しくは両端が大きめの直径で中間部(両端の間)が小さめの直径を有する回転対称素子としてもよい。X線マーカーは1個またはそれ以上の小片で構成することができる。マーカーはシード内部の全長を占めてもよくまたは一部を占めてもよい。本発明において、マーカーはシードの位置および配向の両方を指示する。
【0017】
チューブ状無機担体用のX線マーカーとしては、特に好ましい様式において、ワイアまたはチューブの形状でチューブ状の無機担体の中心に配置されたマーカーが考えられる。典型的な長さが3.5 mmおよび想定上の外径が0.6 mmのチューブ状担体用のX線マーカーとして、例えば長さが0.3〜4 mmおよび直径が0.1〜0.7 mmの切断ワイアまたは切断チューブ、ならびに直径が0.1〜0.7 mmのビーズを使用することができる。この目的のための可能なマーカーの形状として、全長が0.3〜4 mmおよび直径が0.1〜0.7 mmのその他の回転対称部品も含まれる。
本発明の特に好ましい実施形態において、無機マトリックス内の中心部に配置されたワイアの形状のX線マーカーが使用される。
【0018】
好ましくは、本発明の好ましい実施形態においてはチューブ状である放射性無機マトリックスとX線マーカーとを、一端が閉じられたチューブ内に挿入し、その後そのチューブの他方の、当初は開いていた末端部を閉じる。金属チューブの場合、そのチューブの第2末端を、レーザー溶接または例えば電子ビームやタングステン不活性ガス溶接などのその他の任意の好適な技術によって密閉する。
プラスチックチューブの場合には、チューブの第2末端を、接着、熱シール、超音波溶接または溶媒溶接によって、密閉する。
放射性無機マトリックスをプラスチック材料でコーティングしてもよい。この場合、無機マトリックス上でプラスチック材料を成形または収縮(shrink)させるか、あるいは溶媒蒸発若しくは重合によってコーティングを形成させる。
【0019】
本発明に従う一実施形態において、シードを製造するには、上記の市販されている無機マトリックスを塩化銀、塩化鉛、塩化タリウム、水酸化銅または水酸化ビスマスでドープし、次にヨウ素125 とアニオンを置換する交換プロセスをおこなう。その後、この放射性無機マトリックスにX線マーカーの1つを装着し、上記のような材料の1つでカプセル化するかまたはコーティングすることができる。
場合によっては、最初からあらかじめ無機マトリックス内にX線マーカーを包埋することもできる。マトリックスの内部のX線マーカーの存在は放射能の負荷プロセスに影響しない。
【0020】
本発明に従って、無機マトリックスを対応する塩化物または水酸化物でドープするために、さまざまな実施形態を適用することができる。
第1の実施形態において、総計が最大で 5,000単位に達する、例えばチューブ状またはロッド状の多数の無機マトリックスをプラチナ織布またはその他の好適な不活性材料製の微細メッシュバスケット中に入れ、撹拌下の硝酸銀、硝酸鉛、硝酸タリウム、硝酸銅または硝酸ビスマス溶液中に浸漬して、浸潤させる。それぞれの溶液の濃度は将来の線量容量しだいであり、利用したい放射能範囲がこの不活性処理によってあらかじめ確定される。例えば、シードに0.28 mCiと0.64 mCiの間の範囲の放射能を与えるためには、60μg/mlから300μg/mlの間の濃度の硝酸銀溶液を使用する。光分解を防止するため、全ドーピングプロセスを薄暗い環境中で実施する。その後、無機マトリックスを室温(RT)または最高温度120℃で乾燥し、次に希釈した、好ましくは0.1 N の塩酸中に移し、短時間撹拌する。銅またはビスマスを含浸させたマトリックスの場合は、塩酸に代えて0.1 N 水酸化ナトリウムとする。その後、対応する塩化物または水酸化物でドープした無機マトリックスを蒸留水で洗い流す。
【0021】
第2の実施形態において、総計が最大で 5,000単位の、例えばチューブ状またはロッド状の多数の無機マトリックスをプラチナ織布またはその他の好適な不活性材料製の微細メッシュバスケット中に入れ、銀ジアミン錯体溶液([Ag(NH3)2]Cl)中に浸漬して、浸潤させる。その後、無機マトリックスの外表面に付着している液体をガス流によって除去し、そしてこの無機マトリックスをおよそ80〜250℃、好ましくは100〜150℃で乾燥する。銀ジアミン錯体を塩化銀に変換するために、無機マトリックスを希塩酸またはNaCl溶液に浸漬し、その後蒸留水で洗い流す。ヨウ素シードとして一般的であり、かつ必要な約0.28〜0.64 mCiの放射能範囲を得るために、無機マトリックスを塩化銀 20〜40 ngでドープする程度に、銀ジアミン錯体溶液の濃度を選定しなければならない。
【0022】
前記の実施形態の1つによって得られる塩化物または水酸化物含有無機支持体をその後の処理の前に80〜250℃、好ましくは100〜150℃で乾燥する。次のステップはアルカリ性Na125 I溶液、好ましくは10-4〜10-5 M NaOHまたはKOH溶液中にマトリックスを浸漬することによる125 I交換である。一般的に、ヨウ素シードの放射能範囲は0.28〜0.64 mCiであり、これは1シード当たりのヨウ化ナトリウム量が25 ngから52 ngに相当する。少なくとも100から5,000個の放射性無機マトリックスを同時に製造しようとする場合、少なくとも 2 mlから最大で10 mlの交換溶液が必要である。これは最低Na125 I濃度が1.25μg/ml(8×10-6 mol/l)および最高Na125 I濃度が26μg/ml(1.7×10-4 mol/l)の結果となる。
【0023】
そのほかに、交換溶液には還元剤を含有させる。還元剤:Na125Jのモル比は約1:5となる。本発明においては、好ましい還元剤はピロ亜硫酸ナトリウム(Na2S2O2)、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)、またはリン酸水素ナトリウム(Na2HPO3)である。好ましくは、交換反応中、溶液を緩やかに撹拌する。交換反応の完結後、無機マトリックスを洗浄して、交換されなかったヨウ素を無機マトリックスから除去する。その後、無機マトリックスを270〜400℃、好ましくは300〜370℃で乾燥する。
【0024】
本発明の別の実施形態において、放射性ヨウ化物を無機マトリックスと混合し、射出成形または押出し工程でシードを製造することもできるが、このヨウ化物を同一の容器内で実施する上述のような交換反応によって生じさせてもよい。
射出成形工程においては、あらかじめ放射性核種を含有させた流動性の無機素材を加圧して強制的に型の中に入れ、そこで固化させ、型から取り出し、次に焼き入れ(temper)をする。焼き入れは炭化水素を含有する可塑剤を蒸発させるかまたは焼失させるために使用する。射出成形工程を使用することによって、選択したマトリックスに応じて、どんな形状の放射能担体でも得ることができる。
【0025】
射出成形法のほかに、押出し工程もまた使用することができる。これは、あらかじめ放射性核種を含有させた無機素材を強制的にダイに通し、ストランド(strand)を回収し、射出成形工程と同様に焼き入れをおこない、最後に所望の長さに切断するものである。押出し工程を使用して、チューブまたはロッド状放射能担体を製造することができる。
【0026】
本発明においては、射出成形および押出し工程で、上述の無機材料、特にTiO2、Al2O3、SiO2、Y2O3、ZrO2またはこれらの混合物などの金属酸化物粉末を使用し、これに市販の可塑剤を添加して、必要とする粘度を調節し、また滑り特性を改善する。本発明においては、可塑剤として、例えばセルロースまたはセルロース誘導体と多糖およびパラフィンとの混合物を使用する。セルロースとして微結晶セルロースを使用するのが好ましい。好ましくは、重量で多糖1部とセルロース2部とパラフィン3.3部を使用する。無機材料の量は製造する担体のサイズによって決まるが、本発明にとって好ましいチューブ状放射能担体については200〜250 mgであり、この場合の最終サイズは長さが約3.5 mm、外径が約0.6 mm、そして内径が0.22〜0.25 mmである。この特定された成分を水を添加しながら混合して、均一な素材を生成させる。その後、例えば水酸化アンモニウム中のAgCl溶液をサンプルチャンバー内にピペットで入れて、次にNaI125溶液と還元剤を添加することによって、放射性核種を添加する。
一般的に、不溶性無機ヨウ化物125 の形成はサンプルチャンバー内での沈殿によって実施される。
【0027】
十分に混合した後、その素材を用意した型の中に射出または押し出すが、そのためには射出成形機または押出し機として、微小化サンプル容積を有する装置を使用すべきである。射出成形工程用の型は結果的にチューブ、ロッド、ペレット、フィルム、ビーズまたはその他の成形体の形をした放射能担体が得られるような設計とする。
射出成形は好ましくは低圧高温射出成形として約70℃で実施される。その後、冷却した無機担体を型から取り出して焼き入れのためにオーブン内に置く。押出しの場合は、押出し生成物をセラミック製支持板(backing)上に置く。上記のように可塑剤を追い出すため、温度を段階的に300℃以上まで、好ましくは300〜500℃に上昇させる温度プログラムにおいて、射出成形または押出しによって得られた部品をアニーリングする。
X線マーカーは射出成形若しくは押出しの前にまたはその後に無機材料中に入れることができる。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、X線マーカーは可能な限り細く、好ましくはワイアの形状とし、ロッドまたはチューブまたはペレットの内部の一端から他端まで確実に到達させる。好ましくはこれを製造工程の最後に挿入する。これによって、直径および長さの変更が可能になる。本発明の実施形態において、無機支持体の多孔性によって超音波の可視化が強化される。蛍光測定を使用した場合は、スクリーン上に何の人為的産物(arte-facts)も出現しない。
【0029】
本発明によれば、上記の方法において、組織内近距離照射療法に必要なサイズおよび放射能レベルのヨウ素シードを製造することが可能である。この場合、外径、すなわち放射性支持体をカプセル化する外側のチューブの直径は0.8 mmを超えてはならない。
【0030】
本発明の特に好ましい実施形態において、外側のカプセル化用チューブの長さは1〜5 mmの間で変更することができるが、最適値は約4.5 mmである。壁の厚さはカプセル化のためにチタンを使用する場合は0.010 mm〜0.150 mm、プラスチック材料を使用する場合は0.002 mm〜0.150 mmの間で変更することができる。チタンについて最適の厚さは約0.050 mm、parylene(登録商標)コーティングの場合 10〜20μmである。
担体マトリックスの外径はカプセル化用チューブの内径に対応する。安定した製造工程(外側のチューブへのマトリックスの挿入)のためには、担体マトリックスの最適外径はカプセル化用チューブの内径よりも0.100 mm小さくする。
【0031】
X線マーカーの長さは0.1 mmからチューブの内部全長までの間で変更することができる。その直径は0.1 mm〜0.5 mmの範囲であるが、最適直径は0.15 mm〜0.25 mmである。最適長さは約3.5 mmである。
担体マトリックスの内径はX線マーカーの直径および形状に対応する。マーカーがチューブ状の放射能担体中に機械的に挿入される場合は、その直径に0.05 mmの差が必要である。
【0032】
本発明のヨウ素125 無機担体マトリックスでは、放射性ヨウ素がこの無機マトリックスの滑らかな表面上に層として存在するのではなく、微細な孔中に存在するので、良好な耐磨耗性という特性があることが見出された。本発明の無機マトリックスは構造的に安定であり、したがって、負荷および取付け中の良好な操作性が得られる。先行技術に記載されているマトリックスの銀ロッドに比較して、本発明による放射性無機マトリックスは顕著により均質な線量率分布を示し、また無機マトリックスの周囲に比較的均一な放射線場が形成される。本発明のシードの放射能範囲は約0.05〜5 mCi、好ましくは約0.1〜3 mCiである。シードは迅速にかつより安価に製造することができる。本発明で開示された交換方法に従えば、放射性材料が制御された様相で使用される。なぜならば、当初の不活性塩化物または水酸化物ドーピングによって、将来の線量容量を具体的に決定することができるからである。また、不活性塩化物または水酸化物ドーピングによって、スタッフの汚染の危険が減少し、そして本方法の結果をより正確に予測することができる。
以下に、具体例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0033】
【発明の実施の形態】
実施例1
0.422 〜 0.457 mCi の放射能を有するヨウ素 125 シード 500 個の製造
外径が0.60±0.02 mm、長さが3.5±0.05 mmおよび内径が0.22±0.01 mmのAl2O3セラミックチューブを使用した。
ドーピングのため、濃アンモニア溶液100μl中にAgCl 839.5μgを溶解し、次に容積が10 mlになるまで蒸留水を添加した。その後セラミックチューブをプラチナ製バスケットに入れて、撹拌しながら前記の溶液中に浸漬し、約5分間そのままにした。次に、バスケットを溶液から取り出した。最高純度の窒素流によって、セラミックチューブから過剰の液体を除去し、125℃で約10分乾燥した。室温まで冷却した後、チューブを再びプラチナ製バスケットに入れて、ジアミン錯体を分解することによってAgClを完全に沈殿させるため、0.05 M HCl中に浸漬した。撹拌溶液中にチューブを30分放置した。次に、セラミックチューブを蒸留水で洗浄し、125℃のオーブン中で約15分乾燥した。
【0034】
10-5M NaOH (pH値 8)中、17 Ci/mgの比活性を有するNaI 125 17.56μgおよびNa2S2O3 4.45μgを含有するように、活性交換溶液 5 mlを調製した。固く閉じることができるガラス容器中に、この交換溶液とともに冷却したセラミックチューブを満たした。この容器をローテーターで約1時間回転させた。その後、蒸留水を使用して、セラミック支持体から溶液の残部および交換されなかったヨウ素125を洗い落とした。次に、このセラミックチューブを300℃で約15分乾燥した。冷却後、各チューブにマーカーとして金製ワイア1個を装着し、一端を閉じたチタンチューブ(外径 0.8 mm±0.04、壁厚 0.05±0.004 mm)中に挿入し、最後のステップとして、これを溶接して密封した。
【0035】
実施例2
射出成形法を使用した、それぞれ 0.422 〜 0.457 ml の活性を有する、
本発明による I-125 シード 500 個の製造
射出成形工程のために必要な流動性素材を以下のように調製した。すなわち、平均粒径が1〜5μmの酸化アルミニウム 1100 mgを、約70℃に加熱した小型撹拌容器に入れて、セルロース粉末(微結晶セルロース)60 mgと混合し、デンプン 30 mgを添加し、撹拌しながら混合し、その後パラフィン100 mgを添加した。最後に、水を添加することによって、同様に加熱した小型射出成形機のサンプルチャンバー中に残留物を残さずに移すことができる程度の粗流動性のパラフィン−水エマルジョンを調製した。
ここで、そのサンプルチャンバーに、AgCl 840μgの質量当量を有する銀ジアミン塩化物溶液を合計 1 ml分注して、各添加後に撹拌をおこなった。次に、10-5M NaOH中、17 Ci/mgの比活性を有するNaI125 17.6μgおよびNa2S2O3 4.45μgを含有するように、活性交換溶液 1 mlを調製した。この溶液をサンプルチャンバーに分注した。アリコートの全部を添加した後、素材が十分に柔軟性となるまで残量の水を添加した。
【0036】
十分にホモジナイズした後、最後に低圧高温射出成形を実施した。ここでは、素材を強制的に低温の型の中に送り込み、そこで固化させ、型から取り出し、オーブン中に移した。炭化水素を含有する可塑剤とともにアンモニアを蒸発させるため、焼き入れを使用し、セラミックマトリックス内に均一に分布しているヨウ素125 化銀を形成させた。生成される反応ガスを追い出すために、オーブンを不活性ガス流中で操作した。以下の温度プログラムで実施した:室温から300℃まで 5 K/minで、その後最終温度に60分維持し、そして冷却する。
最後に、この放射性セラミック担体の中心にX線マーカーを装着し、チタンまたはステンレス鋼などの生体適合性物質のカプセル内に封入した。そのためには、X線マーカーを含有する放射性セラミック担体を好ましくは一端を密封したチューブ中に導入し、レーザーを使用して残りの開放末端を溶接する。
【0037】
本発明の特徴は、以下の添付図面を参照しながら、最も好ましい実施形態の下記説明からさらによく理解されるであろう。
図1には、微細な孔部が放射性ヨウ素を含有している多孔質無機チューブ2を有するシードの横断面図を示す。この無機チューブ2はカプセル1に取り囲まれている。カプセル1の外径は 1 mm未満である。チューブ2の空隙内の中心部にX線マーカー3が配置されている。
図2はシードの縦断面図を示す。X線マーカー3はワイアであり、無機チューブ2の一端から他端まで延びている。
カプセル1はチタン製である。カプセル1の2つの端部はX線マーカー3を含有する無機チューブ2をカプセル1内に挿入した後、レーザー溶接される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるチューブ型シードの横断面図である。
【図2】図1に示したシードの縦断面図である。
【符号の説明】
1:カプセル
2:チューブ
3:X線マーカー
Claims (18)
- 微細な孔中に不溶性無機ヨウ素125 を含有する構造的に安定な多孔質無機材料で構成された放射性担体マトリックスを含み、該担体マトリックスが、発生した放射線を透過しかつ該放射線に耐性のある耐蝕性生体適合性材料中に密閉されている、医療用放射性ヨウ素125 小型放射線源(ただし、前記不溶性無機ヨウ素125がストロンチウムおよび/またはイットリウムと組み合わされ、70〜90%のβ-放射線と30〜10%のγ-放射線との組み合せβ/γ放射線を有する核種を形成している場合を除く)。
- 担体マトリックスの無機材料の多孔度が15〜40%である、請求項1に記載のヨウ素125 小型放射線源。
- 担体マトリックスの多孔質無機材料がセラミック材料、不溶性鉱物、不溶性塩および無機ポリマーを含む群から選択される、請求項1または2に記載のヨウ素125 小型放射線源。
- セラミック材料がTiO2、Al2O3、SiO2、ZrO2、Y2O3、これらの混合物、ガラスまたは合成ガラスで構成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のヨウ素125 小型放射線源。
- 担体マトリックスの微細な孔が不溶性無機ヨウ素125 としてヨウ化銀、ヨウ化ビスマス、ヨウ化鉛、ヨウ化タリウムまたはヨウ化銅を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のヨウ素125 小型放射線源。
- 担体マトリックスを密閉する材料が金属若しくは金属合金、またはプラスチック材料である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のヨウ素125 小型放射線源。
- 小型放射線源は高密度金属製のX線マーカーを含んでいる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のヨウ素125 小型放射線源。
- 担体マトリックスの形状がチューブ、ロッド、フィルム、シートまたは球形である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のヨウ素125 小型放射線源。
- X線マーカーが担体マトリックス中に配置されているか、または担体マトリックスに隣接しているか、あるいは担体マトリックスを包囲している、請求項1〜8のいずれか1項に記載のヨウ素125 小型放射線源。
- X線マーカーが担体マトリックスの中心部に配置されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載のヨウ素125 小型放射線源。
- X線マーカーがワイアまたはチューブである、請求項1〜10のいずれか1項に記載のヨウ素125 小型放射線源。
- X線マーカーのワイアまたはチューブがチューブ状の担体マトリックスの中心部に配置されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載のヨウ素125 小型放射線源。
- 無機担体マトリックスを塩化銀、水酸化ビスマス、塩化鉛、塩化タリウムまたは水酸化銅から選択される無機塩でドープし、次に還元剤の存在下でアルカリ性Na125I溶液中のヨウ素125 とアニオン交換し、得られる放射性無機担体マトリックスを耐蝕性生体適合性材料中に密閉することを特徴とする、医療用放射性ヨウ素125 小型放射線源の製造方法。
- 無機担体マトリックスの無機塩によるドーピングを、硝酸銀、硝酸鉛または硝酸タリウムから選択される硝酸塩溶液で浸潤するまでマトリックスを浸潤し、次に希塩酸で該マトリックスを処理することによって実施することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
- 無機担体マトリックスの無機塩によるドーピングを、硝酸銅または硝酸ビスマスから選択される硝酸塩溶液で浸潤するまでマトリックスを浸潤し、次に希水酸化ナトリウムで該マトリックスを処理することによって実施することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
- 無機担体マトリックスの塩化銀によるドーピングを、銀ジアミン錯体溶液で浸潤するまでマトリックスを浸潤し、次に希塩酸またはNaCl溶液で該マトリックスを処理することによって実施することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
- 還元剤として、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムまたはリン酸水素ナトリウムを使用することを特徴とする、請求項13〜16のいずれか1項に記載の方法。
- 耐蝕性生体適合性材料中に密閉する前に、放射性担体マトリックスの中心部にX線マーカーを組み入れることを特徴とする、請求項13〜17のいずれか1項に記載の方法。
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