JP4585765B2 - 壊死性腸炎の治療方法 - Google Patents

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Description

連邦政府出資研究である旨の記載
本発明は、政府の助成のもとに行われた(米国立保健研究所助成金番号HL55330、同HL60234、および同AI42365)。米国政府は、本発明に関して、ある一定の権利を有するものである。
技術分野
本発明は、胃腸疾患の治療に関するものである。
背景
一酸化炭素(CO)は、重要なシグナル伝達分子であることが認められている(Vermaら, Science 259: 381-384,1993)。COは、脳においては神経細胞伝達分子として作用し(同上文献)、視床下部においては神経内分泌系修飾物質として作用すること(Pozzoliら, Endocrinology 735: 2314-2317,1994)も示唆されている。一酸化窒素(NO)同様、COは、平滑筋弛緩薬であり(Utzら, Biochem Pharmacol. 47: 195- 201, 1991; Christodoulidesら, Circulation 97: 2306-9,1995)、血小板の凝集を阻害する(Mansouriら, Thromb Haemost. 48: 286-8, 1982)。いくつかのモデル動物では、低レベルのCOの吸入が抗炎症効果を有することも示されている。
壊死性腸炎(Necrotizing enterocolitis、NEC)は、腸のバリア機能不全、腸の壊死、敗血症、および多系統臓器不全を特徴とする新生児の疾患である。(たとえば、MorrisおよびMalt編、Oxford Textbook of Surgery、Oxford大学出版局(1994)を参照されたい)。
概要
本発明は、部分的には、COの投与によって、壊死性腸炎の発症を防ぎうることを見いだしたことに基づくものである。
したがって、本発明では、患者において、壊死性腸炎の治療、予防、または危険性の軽減を行う方法を特徴とするものである。この方法は、壊死性腸炎の患者または壊死性腸炎の危険性のある患者を特定し、かつ患者の壊死性腸炎を治療するうえで有効な量のCOを含む薬学的組成物を患者に投与する過程を含むものである。この方法は、さらに、患者の壊死性腸炎の状態を監視し、および/または、患者の状態が改善したかどうか、または、壊死性腸炎の危険性が軽減したかどうかを判断する過程を含むこともできる。
薬学的組成物を患者に投与するにあたっては、気体、液体、および/または固形物を患者に投与するうえで当技術分野において周知の任意の方法、たとえば、吸入、ガス注入、輸注、注射、および/または経口摂取を用いることができる。本発明の一態様では、薬学的組成物を、吸入によって患者に投与する。別の態様では、薬学的組成物を、経口的に患者に投与する。また別の態様では、薬学的組成物を、患者の複腔に直接投与する。さらに別の態様では、薬学的組成物を、体外の膜型ガス交換装置または人工肺によって投与する。
患者は、乳児、たとえば、満期産児、早産児、および/または低出生体重児であってもよい。乳児は、新生児、または、たとえば1歳まで(たとえば、6ヶ月まで、4ヶ月まで、3ヶ月まで、または2ヶ月まで)の乳児である可能性がある。乳児は、6週間まで、たとえば、4週間未満の乳児であってよい。壊死性腸炎は、任意の数の要因、たとえば、低酸素状態、低体温状態、低血圧状態、血液の過粘稠度状態、および/またはアシドーシス、および/または患者が交換輸血、少なくとも1種の高浸透圧性の輸液、濃縮赤血球の輸血、および/またはカルシウム拮抗薬の過剰投与を受けたことの結果であってもよい。また、壊死性腸炎は、患者が腸間膜の虚血および/または腸壁の細菌感染を生じるような状況の結果として生じることもある(たとえば、MorrisおよびMalt編、Oxford Textbook of Surgery、Oxford大学出版局(1994)を参照されたい)。または、壊死性腸炎は、手術、たとえば、患者が過去に手術を受けたか、まもなく受けようとしているか、または今現在受けている場合の結果として生じることもある。薬学的組成物は、任意の形態、たとえば、ガス状または液状とすることができる。
本発明は、患者の壊死性腸炎を治療または予防する方法も特徴とするものであり、この方法は、壊死性腸炎の患者または壊死性腸炎の危険性のある患者を特定し、COガスを含む加圧ガスの入った容器を用意し、加圧ガスを容器から放出してCOガスを含む雰囲気を形成し、かつ患者を上記雰囲気と接触させ、その際には、雰囲気中のCOの量が、患者の壊死性腸炎を治療するうえで十分であるようにする過程を含むものである。
別の局面では、本発明は、患者(たとえば乳児)の腹部の手術を実施する方法を特徴とするものであり、この方法は、腹部の手術を必要としており、その腹部手術には、それに伴って壊死性腸炎を生じる有意な危険性があるような患者を特定し、患者の腹部手術を実施し、かつ、施術過程の前、最中、または後に、患者に、その患者の壊死性腸炎の危険性を低減するうえで十分な量のCOガスを吸入させる過程を含むものである。
本発明は、患者の壊死性腸炎を治療する方法であって、(a)壊死性腸炎の患者を特定し、(b)患者に手術を行って、患者の腸の患部を切除し、かつ(c)過程(a)の後かつ、過程(b)の前、最中、または後に、患者の壊死性腸炎を治療するうえで有効な量の一酸化炭素を含む薬学的組成物を患者に投与する過程を含む方法も含まれるものである。
また別の局面では、本発明は、医薬品等級の圧縮COガスの入った容器を提供するものである。この容器は、ガスを患者、たとえば乳児の壊死性腸炎の治療に使用しうることを表示したラベルを有することができる。このCOガスは、窒素ガス、一酸化窒素および窒素ガス、または酸素含有ガスとの混合物とすることができる。この混合物中のCOガスの濃度は、少なくとも約0.025%、たとえば、少なくとも約0.05%、0.10%、0.50%、1.0%、2.0%、10%、50%、または90%とすることができる。
さらに別の局面では、本発明は、患者の壊死性腸炎を治療する方法であって、壊死性腸炎の患者または壊死性腸炎の危険性のある患者を特定し、患者に対して、COを用いた治療とともに、以下の治療、すなわち、患者の体内でのHO-1またはフェリチンの誘導、患者の体内での組換えHO-1またはフェリチンの発現、およびHO-1、ビリルビン、ビリベルジン、フェリチン、またはアポフェリチン、鉄、デスフェロキサミン、またはデキストラン鉄を含む薬学的組成物の患者への投与のうちの少なくとも1種を投与することを含む方法を提供するものである。本発明では、COおよび上述の薬剤の任意のものを、壊死性腸炎の治療または予防薬の製造に際して使用することも意図している。
本発明はさらに、患者の壊死性腸炎を治療する方法であって、壊死性腸炎の患者または壊死性腸炎の危険性のある患者を特定し、患者に対して、COを用いた治療とともに、以下の治療、すなわち、経静脈栄養補給、経静脈水分補給、抗菌剤、患者に対する経鼻胃管による減圧術、患者に対する手術、および患者の腹膜腔の排液のうちの少なくとも1種を投与することを含む方法を提供するものである。
本発明には、壊死性腸炎の治療または予防薬の製造に際してのCOの使用も含まれる。薬剤は、壊死性腸炎の患者または壊死性腸炎の危険性のある患者で、壊死性腸炎を本明細書に記載された方法にしたがって治療する方法で使用することができる。薬剤は、本明細書に記載した任意の形態、たとえば、液状またはガス状のCO組成物とすることができる。
本明細書で使用する技術的、科学的な用語は、いずれも、特記しない限り、本発明の属する分野の当業者が通常理解するところの意味と同じ意味を持つものである。以下では、適当な方法および材料を記載するが、本明細書に記載したものと類似した、または同等の方法および材料も、本発明を実施または試行する際に使用が可能である。本明細書において言及した刊行物、特許出願、特許、およびその他の参照対象は、いずれも、参照として、その全体を本明細書に組み込むものである。係争が生じた場合には、各種定義を含む本明細書が規制する。材料、方法、および例は、本発明を例示するために示すものであり、本発明を限定するものではないと理解されたい。
本発明の一つまたは複数の態様の詳細を、以下に記載する。本発明のそれ以外の特徴、目的、および、利点は、記載および特許請求の範囲から理解されると思われる。
詳細な説明
本明細書で使用する「一酸化炭素」(または「CO」)という用語は、気体状態にあるCO分子、液体状態に圧縮されたCO分子、または、水溶液に溶解したCO分子にを表すものである。「一酸化炭素組成物」および「一酸化炭素を含む薬学的組成物」という用語は、本明細書の全体を通じて、患者および/または器官、たとえば、壊死性腸炎を生じた器官に投与が可能なCOを含む気体状または液状の組成物を表すものである。当業者であれば、所定の用途に関して、薬学的組成物をどの形態、たとえば気体状、液状、または気体状および液状の両方のどの形態とするのが好適であるかがわかると思われる。
本明細書で使用する「有効量」および「治療するうえで有効な」という用語は、ある期間にわたって使用される(急性または慢性の投与、ならびに一時的または連続的な投与を含む)CO量またはCO濃度であって、その投与の文脈において患者に意図した効果または生理学的結果を生じるうえで有効であるようなCO量またはCO濃度について称するものである。本発明で使用するCOの有効量は、たとえば、患者において壊死性腸炎の徴候の低減、または結果の改善をもたらすような量を含むものである。
気体については、COの有効量は、一般に、約0.0000001重量%〜約0.3重量%の範囲、たとえば、0.0001重量%〜約0.25重量%、好ましくは、少なくとも約0.001重量%、たとえば、少なくとも0.005重量%、0.010重量%、0.02重量%、0.025重量%、0.03重量%、0.04重量%、0.05重量%、0.06重量%、0.08重量%、0.10重量%、0.15重量%、0.20重量%、0.22重量%、または0.24重量%のCOの範囲に納まるものである。COの液状溶液については、有効量は、一般に、約0.0001〜約0.0044 gのCO/100 gの液体の範囲、たとえば、少なくとも0.0001 g、0.0002 g、0.0004 g、0.0006 g、0.0008 g、0.0010 g、0.0013 g、0.0014 g、0.0015 g、0.0016 g、0.0018 g、0.0020 g、0.0021 g、0.0022 g、0.0024 g、0.0026 g、0.0028 g、0.0030 g、0.0032 g、0.0035 g、0.0037 g、0.0040 g、または0.0042 gのCO/100 gの水性溶液の範囲に収まるものである。好適な範囲は、たとえば、約0.0010〜約0.0030 gのCO/100 gの液体、約0.0015〜約0.0026 gのCO/100 gの液体、または約0.0018〜約0.0024 gのCO/100 gの液体である。当業者であれば、用途によっては、これらの範囲外の量であっても使用が可能なことが理解できると思われる。
本明細書の全体を通して、「患者」という用語は、本発明の方法による治療が提供されるヒトまたは非ヒトであるような動物を記載するために使用されている。本発明は、獣医学的用途についても明確にに意図している。この用語は、哺乳動物、たとえばヒトをはじめとする霊長類動物、ブタ、齧歯類(たとえば、マウスおよびラット)、ウサギ、モルモット、ハムスター、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ヒツジ、およびヤギを含むものであるが、これらに限定されるものではない。「治療」、「治療する」という用語は、本明細書では、患者の特定の状態、たとえば壊死性腸炎の発症の遅延、阻害、影響の軽減を記載する目的で使用するものである。
「壊死性腸炎(necrotizing enterocolitis)」すなわち「NEC」という用語は、当技術分野で認められた用語であり、本明細書では、腸のバリア機能不全、腸の壊死、敗血症、および多系統臓器不全を特徴とする患者、特に早産児および満期新生児の疾患に言及するために使用する(MorrisおよびMalt編、Oxford Textbook of Surgery、Oxford大学出版局(1994))。壊死性腸炎は、腸の任意の部分、たとえば、小腸下部(回腸)、結腸、および/または小腸上部に発症する可能性がある。壊死性腸炎を発症する危険性は、出生時低体重、低酸素状態、低体温状態、低血圧状態、過粘稠度状態、アシドーシス、酸素のフリーラジカルの存在といった多くの要因と関連している(同上文献)。それ以外の危険因子としては、臍帯動脈カニューレ、交換輸血、高浸透圧性の輸液、濃縮赤血球の輸血、またはカルシウム拮抗薬の過剰投与が含まれる(同上文献)。こうした要因によって、腸間膜の虚血が生じ、結果的に腸壁の細菌感染が生じ、その結果、感染組織の壊死および/または腸壁穿孔および敗血症が生じうるものである(同上文献)。壊死性腸炎は、新生児では、胃腸をはじめとする各種状態の手術後に生じることもある(同上文献)。
熟練した臨床医であれば、患者が壊死性腸炎に罹患していることを、当技術分野において周知の任意の方法によって、たとえば、医師の診断(たとえば、超音波診断、X線撮影のような画像診断法、および/または血液検査を使用した診断)によって診断できる。
壊死性腸炎を発症する危険性があると考えられる個人は、本発明から特に利益をえられる可能性があり、これは、主に、壊死性腸炎の何らかの証拠が示されるより前から、予防的治療を開始することができるという理由によるものである。「危険性がある」個人としては、たとえば、早産児および新生児、または上述の危険因子のいずれかに罹患しているか、上述の危険因子を持っている個人が挙げられる。熟練した臨床医であれば、患者が壊死性腸炎の危険を有していることを、当技術分野において周知の任意の方法によって、たとえば、医師の診断(たとえば、医師による患者の危険因子の評価)によって診断しうることを理解できると思われる。
気体状組成物の調製
CO組成物は、気体状のCO組成物とすることができる。本発明の方法で有用な圧縮または加圧ガスは、任意の市販の供給源から、圧縮ガスの貯蔵に適した任意のタイプの容器に入ったものを入手することができる。たとえば、圧縮または加圧ガスは、医用の圧縮ガス、たとえば、圧縮酸素を供給する任意の供給源から入手することができる。本明細書で使用する場合には、「医薬品等級の」ガスという用語は、本明細書に定義した患者に対して投与するのに適したガスを称するものである。本発明の方法で使用するCOを含む加圧ガスは、NOとO2は一緒に貯蔵できない以外は、所望の最終組成物中のすべての気体(たとえば、CO、He、NO、CO2、O2、N2)が同じ容器に入っているようなかたちで提供することができる。本発明の方法は、任意で、個々のガスの入った複数の容器を使用することによっても実施することができる。たとえば、COが他の気体とともに、または他の気体なしで入った単一の容器を用意し、この容器の内容物を、任意で、室内の雰囲気と混合したり、または、他の容器、たとえば、酸素、窒素、二酸化炭素、圧縮空気、または他の適当な気体、もしくはこれらの混合物の入った容器の内容物と混合することができる。
本発明で患者に投与する気体状組成物は、通常、0重量%〜約79重量%の窒素、約21重量%〜約100重量%の酸素、および約0.0000001重量%〜約0.3重量%(〜約1 ppbまたは0.001 ppm〜約3,000 ppm対応量の)のCOを含有している。気体状組成物の窒素の量を約79重量%、酸素の量を約21重量%、COの量を約0.0001重量%〜約0.25重量%とするのが好ましい。COの量は、少なくとも約0.001重量%、たとえば、少なくとも約0.005重量%、0.010重量%、0.02重量%、0.025重量%、0.03重量%、0.04重量%、0.05重量%、0.06重量%、0.08重量%、0.10重量%、0.15重量%、0.20重量%、0.22重量%、または0.24重量%とするのが好ましい。好適な範囲としては、約0.005重量%〜約0.24重量%、約0.01重量%〜約0.22重量%、約0.015重量%〜約0.20重量%、約0.08重量%〜約0.20重量%、および約0.025重量%〜約0.1重量%が挙げられる。なお、CO濃度が0.3%超(たとえば1%またはそれ以上)のガス状のCO組成物も、用途によっては、短時間(たとえば、1呼吸または数呼吸)であれば使用が可能である。
ガス状のCO組成物は、COガスを含む雰囲気を形成する際に使用することができる。適当なレベルのCOガスを含む雰囲気は、たとえば、COガスを含む加圧ガスの入った容器を用意し、加圧ガスを容器からチャンバまたは空間に放出して、チャンバまたは空間の内部にCOガスを含む雰囲気を形成することによって生成することができる。または、ガスを、呼吸マスクまたは呼吸チューブに至る装置内に放出することにより、呼吸マスクまたは呼吸チューブ中にCOガスを含む雰囲気を生成することもでき、その際には、室内で有意なレベルのCOに曝されるのが患者だけとなるよう確実にする。
雰囲気中のCOのレベルは、当技術分野において周知の任意の方法を使用して測定または監視することができる。そうした方法としては、電気化学的検出、ガスクロマトグラフィー、放射性同位体を用いた計数、赤外吸収、比色分析、および選択性の膜を用いた電気化学的な方法が挙げられる(たとえば、Sundermanら, Clin. Chem. 28: 2026-2032,1982; Ingiら, Neuron 16: 835-842,1996を参照されたい)。1 ppm未満のCOレベルは、たとえば、ガスクロマトグラフィーおよび放射性同位体を用いた計数によって検出することができる。また、当技術分野においては、1 ppm未満の範囲のCOレベルは、中間赤外線ガスセンサー によって、生体組織で測定できることも周知である(たとえば、Morimotoら, Am. J. Physiol. Heart. Circ. Physiol 280: H482-H488, 2001を参照されたい)。COセンサーおよび気体検出装置は、多くの市販の供給源から広く入手することができる。
液状組成物の製造
CO組成物は、液状CO組成物とすることもできる。液体は、気体を液体に溶解するようにする当技術分野において周知の任意の方法によって、CO組成物とすることができる。たとえば、液体を、いわゆる「CO2インキュベータ」に入れて、液体が所望のCO濃度に達するまで、好ましくは二酸化炭素と平衡にさせたCOの連続流と接触させることができる。別の例としては、COガスを、直接、液体が所望のCO濃度に達するまで「バブリングさせる」こともできる。所定の水溶液に溶解しうるCOの量は、温度の低下とともに増大する。さらに別の例では、適当な液体を、(たとえば、体外膜型酸素付加装置のような装置によって、)気体拡散性のチューブに通過させ、このチューブを、COを含む雰囲気を通るように配管しておくことができる。こうすると、COが液中に拡散して、液状のCO組成物が形成される。
生きた動物に導入されるこうした液状組成物は、動物への導入時には、37℃前後の温度とする可能性が高い。
液体は、患者への投与に適していることが当業者に周知の任意の液体を用いることができる(たとえば、MorrisおよびMalt編、Oxford Textbook of Surgery、Oxford大学出版局(1994)を参照されたい)。液体は、水溶液とするのが一般的である。溶液の例としては、リン酸緩衝液(PBS)、セルシオ(Cersior)(商標)、パーファデックス(Perfadex)(商標)、コリンズ液、クエン酸溶液、およびウィスコンシン大学(UW)溶液が挙げられる(MorrisおよびMalt編、Oxford Textbook of Surgery、Oxford大学出版局(1994))。本発明の一態様では、液体を、リンゲル液、たとえば、乳酸加リンゲル液をはじめとする、他の患者に輸液として使用可能な液体とする。別の態様では、液体を、血液、たとえば全血を含むものとする。
任意の適当な液体を用いて、気体拡散装置により、COを所定濃度で飽和させることができる。または、所定レベルのCOを含有するよう品質管理された既製の溶液を使用することもできる。投与量は、CO分析装置に連結した気体透過性で、液体不透過性の膜を使用して測定を行うことによって、正確に制御することができる。溶液は、所望の有効濃度で飽和させて、そのレベルで維持することができる。
一酸化炭素組成物を用いた患者の治療
患者は、当技術分野において気体および/または液体を患者に投与する方法として周知の任意の方法を用いて、CO組成物によって治療することができる。CO組成物 は、壊死性腸炎であると診断された患者、または壊死性腸炎の危険性があると判断された患者、たとえば、新生児または早産児に投与することができる。本発明は、液状またはガス状のCO組成物の患者への(たとえば、吸入、および/または経口摂取による)全身投与、ならびに組成物の患者の胃腸管への(たとえば、経口摂取、ガス注入、および/または複腔への導入による)局所投与を意図している。
一酸化炭素の全身的送達
ガス状CO組成物は、患者、たとえば壊死性腸炎であると診断された患者、または壊死性腸炎の危険性があると判断された患者に全身的に送達することができる。ガス状CO組成物は、通常、口または鼻経由で肺まで吸入させることによって投与され、COは、肺で、患者の血流に容易に吸収される。治療用気体状組成物で使用される活性化合物(CO)の濃度は、COの吸収、分配、非活性化、および排出(通常は、呼吸による)の速度、ならびに当業者に周知の他の要因に応じて決まる。また、任意の特定の対象に関しても、具体的な投与計画については、個別の必要性、および組成物の投与を管理または監督している人物による専門的な判定にしたがって経時的に調整していく必要があるものであり、かつ、本明細書に記載する濃度範囲は一例を示したにすぎず、それらによって、特許請求の範囲に記載した組成物の範囲や実施が限定されることはないものと理解すべきである。COの急性、亜急性、および慢性の投与については、本発明では、たとえば、患者の壊死性腸炎の重篤さまたは持続性に応じて考慮する。COは、症状を治療し、意図した薬学的または生物学的な効果を発揮するのに十分な期間(永続的期間を含む)にわたって、患者に送達することができる。
以下は、ガス状のCO組成物を患者に投与する際に使用することのできるいくつかの方法および装置の例である。
人工呼吸器
医薬品等級のCO(各種濃度)は、空気または圧縮ガス用の標準的なタンク入りの他の酸素含有ガス(たとえば、21%のO2、79%のN2)と混合したものを購入することができる。COは非反応性であり、本発明の方法で必要とされる濃度は、可燃性の範囲(空気中で10%)より、はるかに低い。病院の場で使用する場合には、ガスは、ベッドサイドまで供給され、その場で、混合装置中で酸素または室内の空気と所望のppm(百万分率)濃度まで混合されることになる。患者は、人口呼吸器を通してガス混合物を吸入することになり、人工呼吸器の流速は、患者の快適さと必要性にもとづいて設定した値に設定されることになる。この流速は、肺のグラフィクス(すなわち、呼吸数、一回呼吸気量など)によって決定される。送達システムには、患者が、所望量を越える量のCOを不必要に受け入れることを防止するフェイルセーフ機構を設計段階で組み込んでおくことができる。患者のCOレベルは、(1)静脈血で測定が可能なカルボキシヘモグロビン(COHb)、および(2)人工呼吸器の側面開口部から取り出した吐出COを調べることによって監視することができる。COへの曝露の度合いは、患者の健康状態および、マーカーにもとづいて調節することができる。COは、必要に応じて、100%のO2吸入に切り替えることによって、患者から排出させることができる。COは代謝されないので、吸入された分は、CO2に転化されるごく低率の部分を除いては、最終的には排出されることになる。また、COは、任意のレベルのO2と混合して、低酸素状態を招くことなく治療目的でCOの送達しうるようにすることもできる。
フェースマスクとテント
CO含有ガス混合物を上述のようにして製造して、フェースマスクまたはテント使用して、患者が受動的に吸入できるようにする。吸入濃度は、単に100%のO2に切り替えるだけで、変更、かつ全面的に排出させることができる。COレベルの監視は、高すぎる濃度のCOが吸入されることを防止するフェイルセーフ機構を備えたマスクまたはテントの近傍で行うことになる。
携帯型の吸入器
圧縮COを携帯型の吸入装置に梱包して計量された用量を吸入するようにして、たとえば、入院していない患者でも、断続的に治療を受けられるようにすることもできる。容器には、各種濃度のCOを梱包することができる。装置は、適度に希釈したCOの入った小型タンク(たとえば、5 kg未満)のような簡単なものとすることができ、この小型タンクには、オン・オフバルブと、患者が標準的な投与計画にしたがって、または必要時にCOを吸入するチューブが装着されている。
静脈内人工肺
O2の送達およびCO2の除去のために設計された人工肺(血中ガス交換のためのカテーテル装置)を、COの送達のために使用することもできる。カテーテルは、移植時には、大静脈の一方にはめ込まれ、所定濃度のCOを全身または局所部位に送達しうるものである。送達は、高濃度のCOを短時間、処置部位、たとえば小腸近傍に局所的に送達するものとすることも(この場合の高濃度は、血流中で、急速に希釈されることになる)、または相対的に低い濃度のCOへの相対的に長時間の曝露とすることもできる(たとえば、Hattlerら, Artif. Organs 18 (11): 806-812 (1994);およびGolobら, ASAIO J., 47 (5): 432-437 (2001)を参照されたい)。
基準気圧のチャンバー
場合によっては、患者の全身をCOと接触させることが望ましいこともある。患者を、気密チャンバー内に入れ、このチャンバー内を(患者に危険を生じることのないレベル、または、立会人が曝露される危険性のない許容範囲内のレベルのCO)で満たす。曝露が完了したら、チャンバーの大気を空気(たとえば、21%のO2、79%のN2)を流し、試料をCO分析装置で分析して、患者を曝露装置から出す前にCOが残存していないことを確実にする。
液状CO組成物の全身への送達
本発明は、また、液状CO組成物を、たとえば、輸液として患者に投与することによる患者への全身的送達用に調製することも想定している。たとえば、COで飽和させたリンゲル液のような液状CO組成物を、壊死性腸炎の患者または壊死性腸炎の危険性のある患者に注入することができる。その代わりに、またはさらに、COで部分的に、または完全的に飽和させた全血(または部分血)を患者に注入することもできる。本発明ではまた、ある投与量のガス状または液状のCOを送達しうる媒体(たとえば、CO放出性のガム、クリーム、軟膏、またはパッチ)の使用も想定している。
一酸化炭素による胃腸管の局所的治療
その代わりに、またはさらに、CO組成物は、胃腸管に、たとえば胃腸管全体の内部および/または外部に、またはその任意の一部に直接適用することもできる。気体状組成物は、ガスを患者に注入する方法として当技術分野で周知の任意の方法によって、患者、たとえば早産児または新生児の胃腸管に直接適用することができる。たとえば、二酸化炭素のような気体は、内視鏡および腹腔鏡を用いた処置の間に、検査を行いやすいように、患者の胃腸管および複腔にそれぞれ注入することも多い(たとえば、MorrisおよびMalt編、Oxford Textbook of Surgery、Oxford大学出版局(1994)を参照されたい)。熟練した医師であれば、患者の胃腸管にCO組成物を直接投与する際に、同様の手順を使用しうることがわかると思われる。本発明では、腹腔鏡検査および内視鏡検査、たとえば、結腸鏡検査および食道胃十二指腸鏡検査の結果として生じる壊死性腸炎を予防することを促進する目的で、本発明を使用することも考慮している。
CO組成物の水溶液も、患者の胃腸管に局所的に投与することができる。水溶液状の組成物は、液体を患者に投与する方法として当技術分野において周知の任意の方法によって投与することができる。気体状組成物の場合と同様、水溶液状の組成物も、胃腸管の内部および/または外部に、直接適用することができる。たとえば、水溶液状のものは、経口的に、たとえば、水溶液状のCO組成物のある量をカプセルに封入して、または封入せずに患者に経口摂取させることによって投与することができる。別の例としては、COが溶解した液体、たとえば、塩類溶液を、内視鏡および複腔鏡での処置中に、患者の胃腸管および複腔に注入することができる。さらに、インサイチューでの曝露は、胃腸管またはその一部を液状CO組成物を流すことによって行うことができる(MorrisおよびMalt編、Oxford Textbook of Surgery、Oxford大学出版局(1994)を参照されたい)。
壊死性腸炎へのヘムオキシゲナーゼ-1、他の化合物、および他の処置の使用
本発明では、COの投与と組み合わせて、ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)を誘導または発現させることも想定している。たとえば、HO-1を、壊死性腸炎の患者または壊死性腸炎の危険性のある患者で誘導することができる。本明細書で使用する場合には、「誘導」という用語は、単離された細胞、または組織、器官、もしくは動物の細胞で、タンパク質、たとえばHO-1の生産を、タンパク質をコードする細胞自体の内在的(たとえば非組換え)遺伝子を使用して増大させることを意味する。
患者でのHO-1の誘導は、当技術分野において周知の任意の方法によって行うことができる。たとえば、HO-1の生産は、ヘミン、鉄プロトポルフィリン、またはコバルトプロトポルフィリンによって誘導することができる。各種の非ヘム物質、たとえば重金属、サイトカイン、ホルモン、NO、COC12、内毒素、および熱ショックも、HO-1の発現の強力な誘導要因である(Choiら, Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 15: 9-19,1996; Maines, Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 37: 517-554,1997;およびTenhunenら, J. Lab. Clin. Med. 75: 410-421,1970)。HO-1は、酸化ストレスを生じる各種要因、たとえば、過酸化水素、グルタチオン欠乏剤、紫外線照射、内毒素、および高酸素状態によっても高度に誘導される(Choiら, Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 15: 9-19,1996; Maines, Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 37: 517-554,1997; およびKeyseら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 99-103, 1989)。「HO-1の誘導物質を含む薬学的組成物」とは、患者でHO-1を誘導しうる任意の物質、たとえば、ヘミン、鉄プロトポルフィリン、および/またはコバルトプロトポルフィリンをはじめとする上述の物質の任意のものを含む薬学的組成物を意味するものである。
HO-1の細胞での発現は、遺伝子導入によって増大させることができる。本明細書で使用する場合には、「発現する(させる)(express(ed)」という用語は、単離された細胞、または組織、器官、もしくは動物の細胞において、タンパク質、たとえば、HO-1またはフェリチンの生産を、外部から投与した遺伝子(たとえば組換え遺伝子)を使用することによって増大させることを意味する。HO-1またはフェリチンは、免疫反応を低減するうえでは、レシピエントと同じ種(たとえば、ヒト、マウス、ラットなど)由来のものとするのが好ましい。構成的プローモーター(たとえば、サイトメガロウイルスプロモーター)または組織特異的プロモーター(たとえば、哺乳動物細胞の乳清プロモーター、または肝細胞のアルブミンプロモーター)によって発現させることができる。HO-1またはフェリチンをコードする適当な遺伝子治療用ベクター(たとえば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、ポックス(たとえばワクシニア)ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、マウス微小ウイルス、B型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、単純ヘルペス1型ウイルス、およびレンチウイルス)を、経口投与、吸入、または、腸壁、腸内腔、もしくは複腔への注入によって、壊死性腸炎の患者または壊死性腸炎の危険性のある患者に投与することができる。同様に、HO-1またはアポフェリチンをコードするプラスミドベクターを、たとえば、DNAそのものとして、また、リポソームまたは微粒子中に含有させて、投与することもできる。
また、外因性のHO-1タンパク質を、当技術分野において周知の任意の方法によって、患者に直接投与することもできる。こうした外因性のHO-1の直接的投与は、上述したような患者でのHO-1の発現または誘導に加えて、または、そうした患者でのHO-1の発現または誘導に代わるものとしてで実施することができる。HO-1タンパク質は、たとえば、リポソーム中に封入して、および/または融合タンパク質、たとえばTAT融合タンパク質として、患者に送達することができる(たとえば、Becker- Hapakら, Methods 24: 247-256, 2001を参照されたい)。
また、上記にかえて、または上記に加えて、HO-1による代謝産物、たとえば、ビリルビン、ビリベルジン、鉄、および/またはフェリチンの任意のものを、COとともに患者に投与することによって、壊死性腸炎を予防または治療することもできる。さらに、本発明では、フェリチン以外の鉄結合性分子、たとえばデスフェロキサミン(DFO)、デキストラン鉄、および/またはアポフェリチンを患者に投与することも想定している。さらにまた、本発明では、こうした産物の任意のものの分解を触媒する酵素(たとえばビリベルジン還元酵素)を阻害して、所望の効果を創出/増強することも想定している。上記のうちの任意のものを、たとえば、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、または腸の内部または外部への直接的投与によって投与することができる。
本発明では、本発明の方法では、カルボキシヘモグロビンおよびCO供与性代用ヘモグロビンと同様に、投与後に体内にCOを放出するような化合物(たとえば、光活性化が可能なCO放出性化合物などのCO放出化合物)、たとえば、デカカルボニル二マンガン、トリカルボニルジクロロルテニウム(II)二量体、および塩化メチレン(たとえば、400〜600 mg/kgの範囲、たとえば約500mg/kgの用量で)も使用しうるものと想定している。
上記化合物の患者への投与は、任意の方法、たとえば、経口投与、腹腔内投与、静脈内投与、または動脈内投与で実施することができる。上記化合物は、いずれも、局所的および/または全身的に、ならびに、任意の組み合わせで投与することができる。
本発明は、また、患者へのCOの投与を、壊死性腸炎を治療するための他の任意の方法または化合物と組み合わせて実施することによって壊死性腸炎を治療することを想定している。組み合わせる方法または化合物としては、たとえば、少なくとも1日間(たとえば少なくとも2日間、3日間、5日間、または10日間、またはそれ以上)の口からの食餌の停止または量の減少、患者への経静脈的な水分および/または栄養の補給、経鼻胃管による減圧術、または抗菌剤の適用、外科的介入、ならびに/または患者の腹膜腔の排出などが挙げられる。外科的介入としては、たとえば、腸の患部の切除が挙げられる。本発明はまた、壊死性腸炎の危険のある患者への予防的処置を、患者へのCOの投与を、壊死性腸炎を予防するための他の任意の周知の方法、たとえば、患者の食餌の変更と組み合わせて実施することによって行うことも想定している。
本発明を、以下の実施例によって一部例示する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1: COによる、壊死性腸炎発症の遅延
ヒトの腸の試料の採取
ヒトの腸の試料を採取し、手術時に瞬時に凍結させた。
壊死性腸炎の動物モデル
妊娠時期が推定されるの妊娠したSDラットの出産を、ピトシン(1 U)の皮下注射を使用して、出産予定日に誘発した。出生直後(0日目)に、新生ラットを秤量し、2つの主要な群にランダムに振り分けた。ラットは、母ラットとともに残して母乳栄養とするか、または母ラットから分離してインキュベータ(Ohio Medical Products、ワイオミング州マディソン(Madison))に収容して、1日2回齧歯類用の特殊な人工栄養を胃管栄養で与え、各給餌の前に、10分間の低酸素状態(5%のO2、95%のN2(PraxAir)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh))においた。この人工栄養は、15gのシミラック(Similac)(登録商標) 60/40 (Ross Pediatrics)、オハイオ州コロンバス(Colombus))を、75 mLのエスビラック(Esbilac)(登録商標)ネコ用代用乳(Pet-Ag Inc.、イリノイ州ハンプシャー(Hampshire))に溶かしたものであった。各グループのラットは、さらに、それ以上の処置を行わないものと、1日あたり1時間のCOによる処置(250百万分率(ppm)、1〜3日目)を行うものとに、ランダムに振り分けた。COは、後述するようにして送達した。新生ラットは、4日目に屠殺した。腸を、全体的な壊死的変化および腸壁気腫について調べた。回腸終端部の最後の2 cmを形態学的研究用に採取し、粘膜掻爬物を、タンパク質の検出用に採取した。
COへの曝露
ラットを、濃度250 ppmのCOに曝露した。略述すると、空気中に1%としたCOを、ステンレス鋼製の混合用シリンダー中で空気(酸素21%)と混合し、3.70 ft3のガラス製曝露用チャンバに、流速12 L/minで導入した。CO分析装置(Interscan、カリフォルニア州Chatsworth)を使用して、チャンバ中のCOのレベルを連続的に測定した。CO濃度は、常時250 ppmに保った。必要に応じて、曝露用チャンバ内にラットを入れた。
形態学的研究
腸の試料を、上述したようにして採取した。ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色したスライド標本を、標準的なプロトコールにしたがって調製し、光学顕微鏡で観察した。腸上皮の形態学的変化、たとえば、絨毛芯部の分離、粘膜下の浮腫、および上皮の脱落の有無について、病理の専門家が盲検のかたちで判定を行った。
血清中のサイトカインの測定
血清を、採取し、ラットのTNF-αおよびIL-1βのレベルを、クォンティキン(Quantikine)(登録商標) ELISA (R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis))を製造業者の指示にしたがって使用することによって測定した。
細胞培養
ラットの小腸上皮の株化細胞であるIEC-6を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection) (Manassas、VA)から入手した。細胞を、5%ウシ胎児血清、0.02 mMグルタミン(Gibco、ニューヨーク州グランドアイランド(Grand Island))、0.1 U/mLのインスリン、および100 U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシンを加えた、4.5 g/Lグルコース含有ダルベッコ改変イーグル培地(Bio-Whittaker、メリーランド州ウォーカーズビル(Walkersville))中で、37℃にて、10%のCO2で培養した。3〜20代目の細胞を実験に使用した。
生存率
細胞の生存率を、ATPのレベル(セルタイター-グロ(CellTiter-Glo)(商標)、Promega)を製造業者のプロトコールにしたがって測定することによって判定した。
ウェスタンブロット分析
IEC-6細胞または回腸粘膜の掻爬物を、20 mmol/L トリスを、100μmol/Lのフッ化フェニルメチルスルホニル(Sigma)、lμmol/Lのロイペプチン(Sigma)、および1μmol/Lのオルトバナジン酸ナトリウム(Sigma)とともに含有する溶解用バッファーに採取した。タンパク質を、ビシンコニン酸(BCA)タンパク質検定法(Pierce、イリノイ州Rockford)で定量した。溶解物(30μg)を、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動にかけた。
レポーター検定法
Beckら、FEBS Lett 435: 35-38 (1998)の記載にしたがって、pGL3/2ラットのiNOSプロモーター-ルシフェラーゼ・レポーターを構築した。35 mmのウェルで培養したIEC-6細胞を、4μLのリポフェクタミン2000(登録商標)(Invitrogen)、0.15μgのpGL3/2 DNA、および0.5μgのpIEP-LacZ DNA(トラスフェクション効率の対照用に使用)でトランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後に、細胞を6時間処理し、次に溶解物を採取し、ルミノメーター(ドイツ、ベルトルド(Berthold))を使用してルシフェラーゼ検定法(Promega)を行った。
亜硝酸イオンの測定
亜硝酸イオン(NO2-)を、培養液中で、グリース法を使用して測定した。
統計的解析
結果を、平均±平均値の標準誤差で示す。群間の差は、すべての対ごとの比較について、スチュデント-ニューマン-コイルス多重比較(post-doc)検定で一元配置分散分析を行って(SigmaStat、SPSS、イリノイ州シカゴ(Chicago))解析した。Pが0.05未満の場合に、統計的有意性を想定した。
腸のHO-1タンパク質の、壊死性腸炎における増大
壊死性腸炎の患者から得たヒトの腸の試料と、非炎症状態の患者から得た腸の対照標本を、HO-1の発現に関して分析した。壊死性腸炎の試料から得た全細胞溶解物は、対照と比較して、HO-1の発現が増大していた(図1A)。
腸のHO-1タンパク質のレベルが、実験的な壊死性腸炎のモデルで上昇するかどうかを判定するために、新生ラットを、母乳栄養で自由に母乳を飲める群と、上述したような断続的な低酸素状態と人工栄養を行う群(H/F)とに、ランダムに振り分けた。ラットは、いずれも、生後4日目に屠殺し、回腸終端部の粘膜を採取し、ウェスタンブロッティングで分析した。HO-1タンパク質の発現は、母乳栄養の対照動物と比較して、H/F群で上昇していた(図1B)。この知見は、腸をはじめとする各種の器官で、各種侵襲の後にHO-1の上方制御が生じること示す従来の知見と一致している。
COの、壊死性腸炎発症に対する保護
母乳栄養群とH/F群の新生ラットをランダムに振り分けて、一方には、1日目、2日目、および3日目に1日あたり1時間のCO(250 ppm)を与え、もう一方には、それ以上の治療を行わなかった。ラットは、いずれも、生後4日目に屠殺した。H/F群では、母乳栄養の対照と比較して、実験的な壊死性腸炎と一致する、腸壁気腫、および壊死をはじめとする全体的な病的特徴(下記表1を参照のこと)ならびに組織的な変化が特定された(図2A、2B、2C、および2D)。COによる治療は、母乳栄養のラットでは、全体的または微視的な評価に影響することはなく、H/F群のラットでは、実験的な壊死性腸炎の発症に対して有意に保護した。細胞死に関するTUNEL法による染色は、H/F群では増大していたが、COによる処置を行うと低減した(図3A、3B、3C、および3D).
(表1)生後4ヶ月目の新生ラットの病理的変化
Figure 0004585765
COによる、炎症についての全身的マーカーの低減
屠殺時に、組織の炎症についての全身的マーカーであるTNF-αおよびIL-1βのレベルを測定するために、血清を採取した。H/F群では、母乳栄養の対照と比較して、TNF-αとIL-1βの双方のレベルとも、33.2倍と18.5倍の上昇を示した(図4Aおよび4B、P < 0.05)。COは、こうした上昇を有意に弱め、その結果、TNF-αとIL-1βの上昇が、3倍および2.5倍のみとなった(それぞれP < 0.05)。これらの知見から、この動物モデルでは、外因性のCOが全身的な結果の一部を取り消すことがわかる。
COによる、炎症についての局所的マーカーの低減
双方ともに腸の炎症のマーカーであり、壊死性腸炎と関連性を有することが示されているシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)とインターロイキン1β(IL-1β)について、検定を行った。回腸粘膜のタンパク質の溶解物を、ウェスタンブロット分析で、COX-2とIL-1βについて評価した。この検定法では、H/Fは、ほぼ半分の動物で、回腸でのCOX-2とIL-1βのタンパク質レベルでの増大と関連していた(図5)。組織学的性質および血清サイトカインに対する保護的な効果と同じく、COによる処置は、これらのタンパク質の双方の発現を低減させた。COは、このモデルにおいて、回腸でのHO-1の発現も低減させ(データ示さず)、このことは、腸の侵襲が少なくなり、この侵襲に対して補償的な変化が生じていることを表している可能性が高い。
COによる、回腸での誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)生成の阻害
iNOSは、壊死性腸炎の新生児から得たヒトの腸の試料でも、壊死性腸炎の実験モデルのラットの腸でも上昇している。iNOSの誘導とNOの生成は、反応性の窒素種の生成を介して、組織の侵襲に直接寄与するものと考えられる。この研究における回腸の粘膜の試料をウェスタンブロット分析により、H/Fの結果、iNOSのレベルとタンパク質のニトロ化が増大することが示される(図6)。ニトロ化またはニトロチロシンの形成は、NOとスーパーオキシドの相互作用によって生じた毒性の産物である過酸化亜硝酸によって生じるものと考えられる。iNOSタンパク質とニトロソチロシンの双方とも、COでの治療を行った動物では著しく低減しており、COが、腸では、NOの生成を低減/防止することにより保護的に作用していることが示唆された。
HO-1/COによる、IEC-6細胞死の阻害
HO-1またはCOがインビトロでの細胞死を阻害するかどうかを判定するために、ラットの腸の上皮の株化細胞であるIEC-6を使用した。細胞死は、これらの細胞を、TNF-α(10 ng/ml)とアクチノマイシンD(ActD、200 ng/ml)で処置することによって誘導した。細胞の生存率を、付着細胞をクリスタルバイオレットで染色し、細胞のATP含量を検定することによって分析した。TNF-α/ActDは、IEC-6 細胞の生存率を、未処置の対照と比べて、24±2.1%まで低減させた(図7、P < 0.05)。COは、TNF-α/ActDで誘導した細胞死を有意に阻害し、その結果、未処理の対照と比較して、生存率が、54±5.6%となった(P < 0.05)。CO単独では、インビトロでのIEC-6細胞の生存率に測定可能な効果が生じることはなかった。CoPPによるHO-1の誘導も、同様の保護効果を有していた。
COによる、iNOSの上方制御/NOの生成の防止
COが、iNOSの上方制御を阻害できるかどうかを調べるために、腸の上皮細胞をインビトロで調べた。LPSおよび/または1%の酸素(低酸素状態)のiNOSタンパク質に対する作用を、ウェスタンブロッティングによって調べた。その結果、LPS/低酸素状態によって、iNOSタンパク質が増大し、かつ、こうした作用が、COによって阻害されることが示された(図8A)。COが、ラットのiNOSプロモーターの転写活性化能に対して及ぼす作用を、LPSおよび低酸素状態で刺激したIEC-6細胞で調べた(図8B)。LPSと低酸素状態の組み合わせでは、ルシフェラーゼアッセイ法を用いると、iNOSプロモーターの転写活性化能が、4.9±0.3倍増大していた(P < 0.05)。COは、この転写活性化能を、わずか1.7±0.2倍の増大まで抑制した(P < 0.05)。さらに、IEC-6細胞によるNOの生成に対するCOの影響を、亜硝酸を測定することによって調べた。IEC-6細胞を、iNOSを上方制御することが周知のサイトカイン混合物(TNF-α、IL-1β、インターフェロン-γ)によって、刺激した。サイトカインによる刺激は、iNOSタンパク質を増大させるばかりでなく(図8C)、亜硝酸も、非刺激の対照での1.4±0.3μMと比較して、17.2±0.9μMまで増大させた(P < 0.01、図8D)。COとCoPPは、サイトカインの効果を有意に阻害し、その結果、亜硝酸のレベルは、それぞれ、9.8±0.7と10.4±1.0になった(P < 0.05)。
上記のデータからは、壊死性腸炎に罹患したヒト新生児の腸の試料ならびに実験的な壊死性腸炎モデルの新生ラットの回腸粘膜では、HO-1が上方制御されていることが示唆される。外因性のCOを1日あたり1時間送達することで、壊死性腸炎の発症が防止され、その際には、血清中のTNF-αおよびIL-1βによって調べた場合の全身的炎症、および、回腸粘膜でのIL-1βおよびCOX-2の発現によって調べた場合の局所的炎症の低減が伴っていた。また、壊死性腸炎の発症は、回腸粘膜でのiNOSの発現およびタンパク質のニトロ化の増大も伴っていた。COによる治療は、iNOSおよびニトロ化ストレスの増大を弱めた。インビトロでは、HO-1の誘導またはCOは、IEC-6細胞でのTNF-α/ActDによって誘導される細胞死に対して保護的に作用する。さらに、インビトロでは、COは、iNOSの誘導およびNOの生成を防止した。
HO-1、およびCOをはじめとするHO-1の触媒作用による副産物は、腸に侵襲が生じた後には、防御的な役割を果たすようである。上記のデータには、壊死性腸炎に罹患した動物の回腸粘膜では、HO-1タンパク質のレベルが上昇していることが示されており、このことは、虚血/再灌流および出血性ショックのモデルでは、腸のHO-1が上昇していることを示す従来の研究と一致している。あらかじめの条件づけまたは薬理学的なHO-1の誘導は、腸の移植および虚血/再灌流後は細胞保護的である。壊死性腸炎の発症に対して保護効果のあるCOによる処置は、HO-1の上方制御も防止した。このHO-1の発現の阻害は、直接的な負のフィードバック・ループのためである可能性がある。しかし、このHO-1の発現の阻害は、その後のHO-1の上方制御を伴う腸の侵襲に対する保護作用に対しては、二次的である可能性が高い。
1日に1時間のCO吸入を行う治療(250 ppm)で、壊死性腸炎の発症を十分防止することができた。COの、この壊死性腸炎の動物モデルでの保護効果は、複数の要因が組合わさって生じている可能性が高い。上記のデータは、COの投与によって、インビボで腸のアポトーシスが低減し(この点は、TUNEL法による染色によって評価される)、インビトロで、TNF-α/ActDによって誘導されるIEC-6の細胞死が改善していることを示している。COによる治療では、全身的および局所的な炎症伝達物質の生成も低減していた。
iNOS/NOは、炎症性の腸疾患、実験的な回腸炎、内毒素ショックおよび壊死性腸炎での粘膜の損傷および腸のバリア機能不全に関連するものである。上記のデータでは、COが、インビボでニトロソチロシンの形成を減少することに加えて、インビトロおよびインビボでiNOSの上方制御を低減することが示されている。腸細胞に対する毒性およびアポトーシスの原因であると考えられている反応性の窒素種である過酸化亜硝酸は、タンパク質と反応して、チロシン残基のニトロ化を生じる。この窒素種は、NOとスーパーオキシドの相互作用によって形成されるものと考えられる。COによる腸細胞の保護は、iNOSタンパク質の上方制御が阻害されることにより、その後のNOおよび過酸化亜硝酸の生成が低減することによるものである可能性がある。
壊死性腸炎の発症をCOによって予防するには、胃腸の運動性の維持と不適切な細菌によるコロニー形成を防止することを挙げることができる。腸のコロニー形成の変化が壊死性腸炎の発症の一因となっていることが周知である。
結論として、本発明の実施例は、1日あたり1時間のCOによる治療によって、人工栄養/低酸素状態の新生ラットが、実験的な壊死性腸炎を発症することを防止できたことを示している。この機構には、iNOSの発現とタンパク質のニトロ化の阻害を含んでいるようである。
実施例2: 壊死性腸炎の治療プロトコール
以下の実施例は、壊死性腸炎の患者または壊死性腸炎の危険性のある患者を治療する際に使用するプロトコールを示すものである。実施例はまた、外科的処置、たとえば、手術中に腸の一部が切除されるような手術の前、最中、および/または後に、患者を治療するためのプロトコールも示すものである。熟練した医師であれば、本明細書に記載したプロトコールは、いずれも、患者の個々の必要性にもとづいて適応させたり、壊死性腸炎の他の任意の治療とともに使用するべく適応させたりしうるものであることがわかると思われる。
COによる患者の治療は、患者が壊死性腸炎または壊死性腸炎と関連した何らかの状態であるか、または患者が壊死性腸炎を発症する可能性が高まるような危険因子を有すると診断された当日から開始することができる。患者は、10 ppm〜1000 ppmの範囲、たとえば、約100 ppm〜約800 ppm、約150 ppm〜約600 ppm、または約200 ppm〜約500 ppmの範囲の濃度のCOを吸入することができる。好適な濃度としては、たとえば、約30 ppm、50 ppm、75 ppm、100 ppm、125 ppm、200 ppm、250 ppm、500 ppm、750 ppm、または約1000 ppmを挙げられる。COは、断続的または連続的に患者に投与することができる。COは、約1日、2日間、4日間、6日間、8日間、10日間、12日間、14日間、18日間、20日間、または20日間を越える期間にわたって、たとえば1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、5ヶ月、6ヶ月にわたって、または患者が壊死性腸炎の症状を示さなくなるまで、または患者が壊死性腸炎に罹患する危険性がないと診断されるまで、投与することができる。所定の一日をとってみると、COは、連続的に全日投与することも、断続的に、たとえば、1日あたり1回の吸入で(この場合は、高濃度を使用)を投与することも、1日23時間まで、たとえば、1日20時間、15時間、12時間、10時間、6時間、3時間、または2時間まで、または1日1時間まで投与することもできる。
壊死性腸炎を治療する外科的処置とともにCOを投与することについては、COは、外科的処置を実施する前、最中、および/または後に患者に全身的または局所的に投与することができる。患者は、10 ppm〜1000 ppmの範囲、たとえば、約100 ppm〜約800 ppm、約150 ppm〜約600 ppm、または約200 ppm〜約500 ppmの範囲の濃度のCOを吸入することができる。好適な濃度としては、たとえば、約30 ppm、50 ppm、75 ppm、100 ppm、125 ppm、200 ppm、250 ppm、500 ppm、750 ppm、または約1000 ppmを挙げることができる。COは、患者に、処置の前の約1日、2日間、4日間、6日間、8日間、10日間、12日間、14日間、18日間、20日間、または20日間を越える期間にわたって、断続的または連続的に投与することができる。COは、代わりに、または、それに加えて、処置の最中に、たとえば、吸入および/または局所的投与によって患者に投与することもできる。また、COは、代わりに、または、それに加えて、処置の後に、たとえば、処置完了の直後に投与を開始して、処置完了後約1時間、2時間、3時間、5時間、7時間、または10時間、または約1日、2日間、5日間、8日間、10日間、20日間、30日間、50日間、または60日間、永遠に、または処置完了後に患者が壊死性腸炎に罹患または壊死性腸炎の危険性を有している状態でなくなるまで投与を継続することにより、患者に投与することもできる。
以上では、本発明のいくつかの態様について記載してきたが、これらの態様については、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、各種の変更を加えうるものである。したがって、他の態様も、以下の特許請求の範囲の範囲内である。
図1Aは、壊死性腸炎(NEC)に罹患したヒト新生児由来の腸の試料では、非壊死性腸炎患者(対象)と比較して、HO-1の発現が増大していることを示すウエスタンブロットの写真である(n = 3)。図1Bは、断続的に低酸素状態においた人工栄養の新生ラットでは、母乳栄養の対照ラット(対照)と比較して、回腸のHO-1タンパク質が生後4日目の時点で増大していることを示すウエスタンブロットの写真である(n=4)。 図2Aは、新生ラットに対する母乳栄養の効果を示すヘマトキシリンおよびエオシンで染色した回腸の全組織標本の顕微鏡写真(倍率40倍)である。試料は、生後4日目に得たものである。図2Bは、新生ラットに対する母乳栄養とCOへの曝露の効果を示すヘマトキシリンおよびエオシンで染色した回腸の全組織標本の顕微鏡写真(倍率40倍)である。試料は、生後4日目に得たものである。図2Cは、新生ラットに対する人工栄養と低酸素状態への曝露の効果を示すヘマトキシリンおよびエオシンで染色した回腸の全組織標本の顕微鏡写真(倍率40倍)である。試料は、生後4日目に得たものである。絨毛の萎縮、および細胞の液胞化をはじめとする構造的変化が観察される。図2Dは、新生ラットに対する、人工栄養ならびに低酸素状態への曝露およびCOへの曝露の効果を示すヘマトキシリンおよびエオシンで染色した回腸の全組織標本の顕微鏡写真(倍率40倍)である。図2Cに示した試料と比較して、生じている構造的変化が少ないことがわかる。試料は、生後4日目に得たものである。 図3Aは、TUNEL法(末端デオキシヌクレオチド転移酵素を用いたdUTPニックエンド標識(terminal deoxynucleotidyl transferase mediated dUTP nick end labeling))で染色した回腸の全組織標本の顕微鏡写真(倍率60倍)であり、新生ラットに対する母乳栄養の影響を示す。試料は、生後4日目に得たものである。図3Bは、TUNEL法で染色した回腸の全組織標本の顕微鏡写真(倍率60倍)であり、新生ラットに対する母乳栄養とCOへの曝露の影響を示す。試料は、生後4日目に得たものである。図3Cは、TUNEL法で染色した回腸の全組織標本の顕微鏡写真(倍率60倍)であり、新生ラットに対する人工栄養と低酸素状態への曝露の影響を示す。試料は、生後4日目に得たものである。低酸素状態/人工栄養で処置したラットから得た回腸は、母乳栄養のラットの回腸と比較して、TUNEL法での染色が増大していることを示す。図3Dは、TUNEL法で染色した回腸の全組織標本の顕微鏡写真(倍率60倍)であり、新生ラットに対する人工栄養および低酸素状態への曝露ならびにCOへの曝露の影響を示す。試料は、生後4日目に得たものである。TUNEL法で陽性の細胞が低減していることが観察できる。 図4Aは、低酸素状態に曝露された人工栄養の新生ラットでは、対照と比較して、COによる治療によって、血清のIL-1βのレベルの上昇が防止されている(P < 0.05)ことを示す棒グラフである。データは、ELISA検定法を使用して生成した。黒の棒は、空気に曝露したラットを、灰色の棒は、COに曝露したラットを示す。図4Bは、低酸素状態に曝露された人工栄養の新生ラットでは、対照と比較して、COによる治療によって、血清のTNF-αのレベルの上昇が妨げられている(P < 0.05)ことを示す棒グラフである。データは、ELISA検定法を使用して生成した。黒の棒は、空気に曝露したラットであり、灰色の棒は、COに曝露したラットを示す。 低酸素状態に曝露された人工栄養の新生ラットでは、対照と比較して、COによる処置によって、COX-2およびIL-1βの回腸での発現が低減していることを示すウェスタンブロットの写真である。各処置(母乳栄養(BF)、人工栄養と低酸素状態への曝露(FF/低酸素状態)、およびCOへの曝露(CO))の有無((+)または(-))を、ウェスタンブロットの各レーンの下側に示す。ブロットは、1群あたり3〜4匹のラットを示しており、これらの、3〜4匹のラットは、研究に使用した全動物を代表している。 新生ラットでは、COに対する曝露が、実験的な壊死性腸炎によって誘導した回腸でのiNOSの発現と、タンパク質のニトロ化とを抑制することを示すウェスタンブロットの写真である。各処置(母乳栄養(BF)、人工栄養と低酸素状態への曝露(FF/低酸素状態)、およびCOへの曝露(CO))の有無((+)または(-))を、ウェスタンブロットの各レーンの下側に示す。 TNF-α/アクチノマイシンD(TNF/ActD)で誘導したIEC-6の細胞死が、COへの曝露と、HO-1の誘導によって低減することを示す棒グラフである。TNF-α(TNF、10ng/ml)/アクチノマイシンD(ActD、200ng/ml)で処置したIEC-6細胞の生存率を、細胞のATP含量を測定することによって、18時間後に調べた。COによる処置(CO、灰色の棒、250 ppm)は、TNF-α/ActDの投与の1時間前から開始し、実験期間中ずっと維持した。斜線の棒 = TNF-α/ActDに対する曝露の16時間前にコバルトプロトポルフィリン(CoPP)に曝露した細胞。黒の棒 = 空気に曝露した細胞。COおよびCoPPの双方とも、TNF-α/ActDで誘導したIEC-6の細胞死を有意に低減させた(P < 0.05)。結果は、3回ずつ行った3つの独立した測定での、平均±標準偏差を示す。 図8Aは、(24時間の時点で、)リポ多糖(LPS)および/または低酸素状態(1%酸素)で処置したIEC-6細胞では、iNOSタンパク質の発現が阻害されていることを示すウェスタンブロットの写真である。COによる処置(250ppm)は、LPS/低酸素状態による処置のl時間前に開始し、実験の期間を通じて維持した。LPS(10または100 ng/ml)と低酸素状態とを組み合わせて行うと、iNOSタンパク質の発現が上昇し、この効果は、COによって阻害された。各処置(リポ多糖(lps)、低酸素状態への曝露(低酸素状態)、およびCOへの曝露(CO))の有無((+)または(-))を、ウェスタンブロットの各レーンの下側に示す。図8Bは、LPS(100 ng/ml)/低酸素状態(1%酸素)(lps/低酸素状態)で処置したIEC-6細胞でのラットのiNOSプロモーター活性は、COへの曝露によって抑制されることを示す棒グラフである。細胞を、ルシフェラーゼ活性について調べた。LPSと低酸素状態とを組み合わせて行うと、iNOSプロモーターの転写活性が、4.9±0.3倍上昇した(P < 0.05)。COは、この転写活性を1.7±0.2倍の上昇にまで抑制した(P < 0.05)。結果は、3回ずつ行った3つの独立した測定での、平均±標準偏差を示す。図8Cは、IEC-6細胞では、HO-1の誘導またはCOでの処置によって、サイトカインによって誘導されるiNOSタンパク質の発現が阻害されていることを示すウェスタンブロットの写真である。IEC-6細胞は、TNF-α(lOng/ml)、IL-1β(500 U/ml)、およびIFN-γ(1000 U/ml)を含むサイトカイン混合物(CM)で、24時間処置した。COでの処置(250ppm)は、CMの投与のl時間前に開始し、実験の期間を通じて維持した。CMによる処置の16時間前に、コバルトプロトポルフィリンCoPP)を投与した。CMは、IEC-6細胞のiNOSタンパク質を増大させた。COおよびCoPPの双方とも、サイトカインによって誘導されるiNOSタンパク質の増大を阻害した。各処置(リサイトカイン混合物(CM)、COへの曝露(CO)、およびコバルトプロトポルフィリンへの曝露(CoPP))の有無((+)または(-))を、ウェスタンブロットの各レーンの下側に示す。図8Dは、CMと、COまたはCoPPとに曝露したIEC-6細胞の上清のニトリルレベルは、CMと空気に曝露したIEC-6細胞のニトリルレベルより低いことを示す棒グラフである(グリース検定法で測定)。サイトカインによる刺激によって、ニトリルは、刺激を加えていない対照の場合の1.4±0.3μMと比較して、17.2±0.9μMまで上昇した(P < 0.01)。COおよびCoPPは、このサイトカインの効果を有意に阻害し、その効果の結果として、ニトリルのレベルが、それぞれ、9.8±0.7および10.4±1.0となった(CMで刺激した細胞と比較して、P < 0.05)。黒の棒 = 空気にに曝露した細胞、灰色の棒 = COに曝露した細胞、斜線の棒 = CoPPに曝露した細胞。

Claims (10)

  1. 有効成分として一酸化炭素を含む、患者の壊死性腸炎治療または予防用の薬学的組成物
  2. 経口投与、吸入による投与、または患者の腹腔への直接投与に適した、請求項1記載の薬学的組成物
  3. 患者が乳児もしくは早産児であるか、または患者が、低出生体重、低酸素状態、低体温状態、低血圧状態、血液の過粘稠度状態もしくはアシドーシスを示すか、または患者が、交換輸血、少なくとも1種の高浸透圧の輸液、濃縮赤血球の輸血もしくはカルシウム拮抗薬の過剰投与を受けているか、または患者が、腸間膜の虚血もしくは腸壁の細菌感染を生じているか、または患者が、外科手術を経験している、外科手術を受けようとしている、もしくは外科手術を受けている、請求項1または2記載の薬学的組成物。
  4. 壊死性腸炎を治療する過程が、経静脈栄養補給、経静脈水分補給、少なくとも1つの抗菌剤、患者に対する経鼻胃管による減圧術、患者に対する外科手術、および患者の腹膜腔の排液からなる群より選択される治療を患者に対して適用する過程をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の薬学的組成物
  5. 人工肺または体外の膜型ガス交換装置によって投与される、請求項1〜4のいずれか一項記載の薬学的組成物
  6. 腸の患部の切除を受けている最中か、受けた後か、または受ける前に患者に投与するための、請求項1記載の薬学的組成物
  7. 気体状である、請求項1〜6のいずれか一項記載の薬学的組成物
  8. 液状である、請求項1〜6のいずれか一項記載の薬学的組成物
  9. 前記薬学的組成物が、患者が吸入するのに適した、一酸化炭素ガスを含む雰囲気である、請求項1記載の薬学的組成物
  10. 患者がヒトである、請求項1〜9のいずれか一項記載の薬学的組成物
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