JP4583756B2 - 医療器具 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は一般的に、ヒト及び獣医用の医療器具に関する。更に詳細には、本発明は、薬物、生物学的に活性な薬剤、治療用薬剤又は診断用薬剤を組込んだ医療器具に関する。
【０００２】
【従来の技術】
ヒトあるいは獣類患者の体内の食道、気管、結腸、胆管、尿管、脈管系又はその他の位置に、埋込可能な医療器具を部分的に又は全て埋め込むことにより様々な医学的状態を治療することは一般的になりつつある。例えば、脈管又はその他の系の多くの治療では、ステント、カテーテル、バルーン、ワイヤガイド、カニューレなどのような器具の挿入を必要とする。このため、ステントは最も簡単には、体内通路又は管腔を開通するか若しくは体内通路又は管腔を開通状態に維持する比較的短い長さのシリンダー（筒）と見做すことができる。
【０００３】
このような医療器具は概ねこれらの意図された目的には全く申し分無く使用することができる。しかし、これらの使用中には幾つかの欠点が生じる。例えば、このような器具が患者の脈管系内に挿入され、この脈管系を介して操作される場合、血管壁が攪乱され、そして、傷付けられる。この負傷部位にはしばしば、凝血形成又は血栓症が生じ、その結果、血管の狭窄又は閉塞が起こる。更に、このような医療器具が長期間にわたって患者の体内に残置されると、血栓症はしばしば医療器具自体にも生じ、結果的に狭窄又は閉塞を起こす。その結果、患者は様々な合併症（例えば、心臓発作、肺気腫及び卒中など）の危険に曝される。従って、このような医療器具の使用は、改善するためにその使用が企図された諸問題の様々な危険性を必然的に伴う。
【０００４】
血管が狭窄を被る別の形態は病気によるものである。おそらく、血管の狭窄を起こす最も普遍的な病気はアテローム性動脈硬化症である。アテローム性動脈硬化症の処置のために、多数の医療器具類及び治療方法が知られている。ある種のアテローム性動脈硬化症病変の特に有用な治療法の一例は、経皮経管腔血管形成術（ＰＴＡ）である。ＰＴＡ手術中に、先端にバルーンが取付けられたカテーテルを患者の動脈内に挿入する。この場合、バルーンは収縮されている。カテーテルの先端を、膨張させるべき、アテローム性動脈硬化症プラークの箇所にまで前進させる。バルーンを動脈の狭窄区域内に配置するか又は該区域と交差して配置させ、その後、膨張させる。バルーンの膨張により、アテローム性動脈硬化症プラークが“砕かれ”、血管が拡大され、これにより、少なくとも部分的に、狭窄が緩和される。
【０００５】
ＰＴＡは現在広く使用されているが、これには２つの大きな問題が存在する。第１に、血管は、拡張処置後の最初の数時間内又は数時間直後に、急性の閉塞を被る。このような閉塞は“突発性閉鎖”と呼ばれる。突発性閉鎖は、ＰＴＡが使用される症例の約５％程度に起こり、血流が即座に回復されない場合、心筋梗塞を起こし、死に至る。突発性閉鎖の主たる機構は、弾性反動、動脈の解体及び／又は血栓症であると思われる。血管形成術を行う時に、動脈壁へ適当な薬剤（例えば、抗血栓剤）を直接投与すると、血栓性急性閉鎖の発病率を低下させることができると思われているが、このような直接投与の試みの結果は混乱し、判然としない。
【０００６】
ＰＴＡにおいて遭遇される第２の主要な問題は、最初に成功した血管形成の後に、動脈が再び狭くなることである。この再び狭まくなることは、“再狭窄”と呼ばれており、一般的に、血管形成後の最初の六ヶ月以内に起こる。再狭窄は、動脈壁からの細胞成分の増殖及び移行による他、“リモデリング（ｒｅｍｏｄｅｌｉｎｇ）”と呼ばれる動脈壁内における幾何学的変化により発生するものと思われる。同様に、動脈壁へ適当な薬剤を直接投与すると、再狭窄を引き起こす細胞及び／又は改造事象が阻害されるものと思われている。しかし、血栓による急性閉鎖を予防する試みと同様に、この方法により再狭窄を予防する試みの結果も混乱し、判然としない。
【０００７】
非アテローム硬化症による血管狭窄もＰＴＡにより治療できる。例えば、タカヤス動脈炎又は神経線維腫症は、動脈壁の線維症性肥厚による狭窄を引き起こす。しかし、これらの病変の再狭窄は、疾患の線維症的特性により、血管形成術後に高い割合で発生する。これらを治療又は未然に防ぐ医学療法も同様に、実効性が無い。
【０００８】
脈管内ステントのような器具は、ＰＴＡに対する有用な付属物である。特に、血管形成術後の急性又は将来的に起こり得る閉鎖の場合に有用な付属物である。突発的閉鎖及び再狭窄を機械的に防止するために、動脈の拡大区域内にステントを配置する。生憎、攻撃的で正確な抗血小板物質及び抗凝血療法（例えば、全身的投与）にステント移植を併用しても、血栓症性血管閉鎖又はその他の血栓症性合併症の発病率は高いままであり、再狭窄の防止は期待されるほど成功しない。更に、全身的抗血小板物質療法及び全身的抗凝血療法の望ましからざる副作用は、大抵の場合、経脈管進入部位における出血合併症の高い発病率である。
【０００９】
その他の状態及び疾患は、食道、気管、結腸、胆管、尿管及び体内のその他の箇所に挿入される、ステント、カテーテル、カニューレ及びその他の医療器具類により治療できる。患者の体内に様々な種類の生物学的活性物質類（例えば、薬物、治療薬、診断薬又は患者の体内で生物学的活性又は薬理学的活性を有するその他の物質類など）を挿入するために、これらの生物学的活性物質類は前記のような医療器具類に塗布される。運悪く、生物学的活性物質類の体内への挿入を申し分無く起こさせるためのステントなどへの生物学的活性物質類の二重塗布はしばしば問題を多発させる。このような医療器具から生物学的活性物質類を徐々に放出させるために、又は生物学的活性物質類をこのような医療器具に本当に塗布できるようにするために、或る範囲の閉じ込め又は積層材料がこのような医療器具に塗布される。運悪く、このような閉じ込め材料の使用は、適当な埋込式医療器具の作製時間及びコストを著しく増大させる。更に、幾つかの生物学的活性物質類は、公知の閉じ込め材料の添合に耐えられない。更に、或る閉じ込め材料は生体適合性が無く、その結果、軽減するべきことが望ましいタイプの諸問題を生起する。
【００１０】
【発明が解決しようとする課題】
前記のような状態及び疾患を治療又は予防するために、例えば、通路、脈管又は血管などのような身体部位の突発性閉鎖及び／又は再狭窄を予防するために、医療処置中に又は処置に続いて、適当な治療及び診断薬、薬物及びその他の生物学的活性物質類を身体部位に直接に、確実に送達するための器具及び方法を開発することが望ましい。また、このような生物学的活性物質類への患者の全身曝露を制限することが望ましい。これは、カテーテルに沿った及びカテーテル先端における、双方の狭窄を防止することにより、静脈内カテーテル（これ自体が申し分のない治療に必要な薬剤量を軽減する利点がある）により化学療法剤を特定の器官又は部位へ投与することを含む治療法において特に有用である。その他の様々な治療法も同様に改善することができる。言うまでもなく、このような器具類への組込み中に、又はこのような器具類内の薬剤、薬物又は生物学的活性物質の分解を避けることも望ましい。更に、最小の工程数しか有せず、それにより患者の最大治療コストを軽減するために、埋込式治療器具を薬物、治療薬、診断薬又はその他の生物学的活性物質で被覆する方法の開発が強く望まれている。低生体適合性キャリア又は閉じ込め材料に伴う追加的問題を生起する事無く生物学的活性物質を送達することが望ましい。最後に、このような医療器具の製造に伴う全ての環境的又は個人的リスク或いは不都合を最小にするような方法で実施できる、埋込式医療器具を薬物、治療薬、診断薬又はその他の生物学的活性物質により被覆する方法の開発が強く望まれている。
【００１１】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、薬物、治療薬、診断薬又はその他の生物学的活性物質若しくは薬理学的活性物質で（少なくとも一部分が）被覆された本発明の例証的実施態様の医療器具により解決される。（以下、これらの何れか又は全てを集合的に「生物学的活性物質」又は「生物学的活性物質類」と呼ぶ。）本発明の特別な改良は、医療器具の表面を処理して所望の粗さ又は梨地状にすることにより、更なる上塗り層又は閉じ込め層又は被覆層を必要とすること無く、該粗面化又は梨地状表面に生物学的活性物質を直接塗布することを必然的に伴う。予期すること無く、この簡単な手段により被覆付埋込式医療器具が得られ、この被覆付埋込式医療器具は、医療器具から生物学的活性物質が大量に喪失（もしあれば）されること無く、所望の埋め込みに十分に耐えることができる。本発明の或る側面では、医療器具の表面の少なくとも一部分（例えば、ステントの外面）を処理し、粗面状、非平坦状又は非平滑面を形成し、そして、生物学的活性物質を該表面の少なくとも一部分に形成又は配置させる。表面処理の度合いは、医療器具へ生物学的活性物質を十分に付着させることができるように制御される。
【００１２】
本発明の医療器具の好ましい実施態様では、器具は先ず、ヒトあるいは獣類患者の体内の食道、気管、結腸、胆管、尿管、脈管系又はその他の位置に一時的又は恒久的に挿入できるような構造体からなる。この構造体は、粗面化又は梨地状表面を有する支持材料（好ましくは、非孔質材料）からなる。支持材料の表面はエッチングにより粗面化又は梨地状にすることができるが、好ましくは、研磨粗粒で粗面化することにより粗面化又は梨地状にするか、最も好ましくは、重炭酸ナトリウム（ＵＳＰ）により粗面化又は梨地状にする。
【００１３】
また、本発明の医療器具は、構造体の支持材料の粗面化又は梨地状表面に直接配置された生物学的活性物質層を包含する。更に、本発明の医療器具は好都合なことに、生物学的活性物質層の頂上に追加被覆又は層を全く必要としない。
【００１４】
下記で詳細に説明するように、医療器具の支持材料及びこの支持材料の表面に配置された生物学的活性物質は広範な種類の好適な材料のうちの任意の材料で構成することができる。支持材料、生物学的活性物質及び表面粗さ又は梨地の特定の組合せの選択は医療器具の企図された用途に応じて変化する。梨地は反復性パターンも意味することができるが、これは明らかに意図的なものではない。ステントの表面は、反復性であろうと無かろうと、任意の形状の表面であることができ、これにより、支持材料又はこの変形材料上に生物学的活性物質を効果的に付着させることができる。以下、梨地状表面は、粗面状、非平坦状又は非平滑状表面を含むものとする。選択された組合せの好適性は、患者の体内への器具の挿入及び展開中に生物学的活性物質の実際の送達を模擬する付着試験により容易に決定することができる。このような試験は簡単であり、特に、このタイプの製品を米国内で市販できるようにする前に求められる試験の量及び技術的レベルに比べて、極僅かな実験量しか必要としないであろう。
【００１５】
本発明の医療器具及びその製造方法は、従来技術のステント又はその他の医療器具並びにその製造方法を凌駕する幾つかの利点を有する。本発明の医療器具の製造時間及びコストは、生物学的活性物質を閉じ込め層内に添合する工程又は生物学的活性物質上に閉じ込め層又は徐放性層を塗布する工程の不在により最小化される。構造体の表面を処理して、粗面化又は梨地状にするための研磨剤として、重炭酸ナトリウムが特に好ましい使用は、製造労働者への重炭酸ナトリウムの低毒性、製品及び廃棄物の浄化の容易性及び残留重炭酸ナトリウムの生物学的適合性などにより得られる幾つかの間接的なコスト節減を享受するからである。言うまでもなく、労働者安全性及び製品と廃棄物の浄化容易性はそれ自身が重要な利点である。
【００１６】
次に、第１の側面において、本発明は医療器具に関する。この医療器具は患者の体内へ挿入することができる構造体からなる。この構造体は、粗面化、非平坦平坦状、非平坦状、非平滑状又は梨地状表面のうちの少なくとも一つの表面を有する支持材料（好ましくは非孔質材料）と該構造体の支持材料の表面上に直接配置された生物学的活性物質層とからなる。更に、本発明の医療器具は、生物学的活性物質を送達するために生物学的活性物質層の頂部に追加的な被覆又は層が不要であるか、又は有しない。構造体は好ましくは脈管用ステント又はその他のステントとして形成される。
【００１７】
構造体の支持材料は、ステンレス鋼、タンタル、チタン、ニチノール、金、白金、インコネル、イリジウム、銀、タングステン又はその他の生体適合性金属若しくはこれらの何れかの金属類の合金類；カーボン又は炭素繊維；酢酸セルロース、硝酸セルロース、シリコン、テレフタル酸ポリエチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオルソエステル、ポリ酸無水物、スルホン酸ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、高分子量ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン又は別の生体適合性高分子物質若しくはこれらの混合物あるいは共重合体；ポリ乳酸、ポリグリコール酸又はこれらの共重合体、ポリ酸無水物、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸エステル、吉草酸エステル又は別の生分解性ポリマー、これらの混合物又は共重合体；タンパク質、細胞外間質成分、コラーゲン、フィブリン又は別の生物学的薬剤；又はこれらの何れかの適当な混合物のうちの少なくとも一種類からなる。
【００１８】
支持材料の粗面化、非平坦化、非平滑化又は梨地状表面上の生物学的活性物質層は、パクリタクセル；エステロゲン又はエステロゲン誘導体類；ヘパリン又は別のトロンビン阻害剤、ヒルジン、ヒルログ、アルガトロンバン、Ｄ−フェニルアラニル−Ｌ−ポリ−Ｌ−アルギニルクロロメチルケトン、または別の抗トロンボゲン剤、またはその混合物；ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、または別の血栓溶解剤、またはその混合物；線維素溶解素、血管痙攣阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬、硝酸塩、窒素酸化物、窒素酸化物促進剤または別の血管拡張剤；抗菌剤または抗生物質、アスピリン、チクロピジン又は別の抗血小板剤；コルヒチンまたは他の細胞分裂抑制薬、または別の微小管阻害剤、サイトカラシンまたは別のアクチン阻害剤；リモデリング阻害剤；デオキシリボ核酸、アンチセンスヌクレオチドまたは別の分子遺伝介入の作用物質；糖蛋白（ＧＰ）ＩＩｂ／ＩＩＩａ、糖蛋白（ＧＰ）Ｉｂ−ＩＸ又は別の阻害剤または表面糖蛋白受容体；メトトレキセートまたは別の代謝拮抗剤若しくは抗増殖剤；抗癌化学療法作用物質；デキサメタゾン、デキサメタゾン燐酸ナトリウム、酢酸デキサメタゾンまたは別のデキサメタゾン誘導体、または別の抗炎症ステロイド；ドーパミン、メシル酸ブロモクリプチン、パーゴライドメシレートまたは別のドーパミン作動薬；^６０Ｃｏ（半減期５．３年）、^１９２Ｉｒ（半減期７３．８日）、^３２Ｐ（半減期１半減期４．３日）、^１１１Ｉｎ（半減期６８時間）、^９０Ｙ（半減期６４時間）、^９９ｍＴｃ（半減期６時間）または別の放射線療法薬；沃素含有化合物、バリウム含有化合物、金、タンタル、プラチナ、タングステン又は放射線不透過剤として機能する別の重金属；ペプチド、タンパク質、酵素、細胞外間質成分、細胞成分または別の生物学的作用物質；カプトプリル、エナラプリルまたは別のアンギオテンシン転換酵素（ＡＣＥ）阻害剤；アスコルビン酸、α‐トコフェロール、スーパーオキシドジスムターゼ、デフェロキアミン、２１−アミノステロイド（ラサロイド）または別のフリーラジカル捕獲剤、鉄キレート剤または酸化防止剤；アンギオペプチン；^１４Ｃ−、^３Ｈ−、^１３１Ｉ−、^３２Ｐ−または^３６Ｓ−の放射性同位元素を使って識別する形態または以上のいずれかの他の放射性同位元素を使って識別する形態；又はこれらの何れかの混合物のうちの少なくとも一つから構成することが好ましい。
【００１９】
構造体の支持材料の粗面化、非平坦化、非平滑又は梨地状表面の平均表面粗さは約１０マイクロインチ（μｉｎ）（約２５０ｎｍ）であり、表面粗さは約１μｉｎ〜約１００μｉｎ（約２５ｎｍ〜約２．５μｍ）の範囲内であることが好ましい。
【００２０】
第２の側面において、本発明は患者の体内へ挿入することができる構造体からなる医療器具に関する。この構造体は、粗面化、非平坦状、非平滑状又は梨地状表面を有する支持材料と、該構造体の支持材料の粗面化又は梨地状表面上に直接配置された生物学的活性物質層とからなる。前記構造体は脈管用ステントとして形成される。前記支持材料はステンレス鋼、ニチノール又はニッケルとチタンとの合金のうちの少なくとも一つから構成されている。前記生物学的活性物質類はパクリタクセルからなる。前記医療器具は、生物学的活性物質層の頂部に追加的な被覆又は層が不要であるか、又は有しない。構造体の支持材料の粗面化又は梨地状表面の平均表面粗さは約１０マイクロインチ（μｉｎ）（約２５０ｎｍ）であり、表面粗さは約１μｉｎ〜約１００μｉｎ（約２５ｎｍ〜約２．５μｍ）の範囲内である。
【００２１】
第３の側面において、本発明は医療器具の製造方法に関し、該製造方法は（ａ）患者の体内に挿入することができる構造体（該構造体は表面を有する支持材料（好ましくは非孔質材料）からなる）を準備するステップと、（ｂ）前記構造体の支持材料の表面を粗面化又は梨地状にするステップと、（ｃ）前記構造体の支持材料の粗面化又は梨地状表面上に生物学的活性物質層を直接配置するステップとからなり、本発明の方法の特徴は、生物学的活性物質層の頂部に追加的な被覆又は層が不要であるか、又は有しないことである。
【００２２】
本発明の方法は、脈管用ステントのようなステントとして形成された構造体について実施する事が好ましい。本発明の方法は、本発明の第１の側面で述べたような支持材料及び生物学的活性物質について実施する事が好ましい。
【００２３】
本発明の配置ステップは、生物学的活性物質の溶液を構造体の支持材料の粗面化又は梨地状表面に噴霧することにより実施する事が好ましい。生物学的活性物質の溶液内に支持材料を浸漬する方法も本発明で採用できる。
【００２４】
本発明の粗面化又は梨地状化ステップは構造体の支持材料の表面を粗面化することにより実施する事が好ましい。表面のエッチング方法も本発明を実施するために採用できる。
【００２５】
支持材料の表面の粗面化は、重炭酸ナトリウム（ＵＳＰ）、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、コルマナイト（硼酸カルシウム）、破砕ガラス又は破砕クルミ殻のうちの少なくとも一つからなる砥粗粒で実施する事が好ましい。粗面化は約５ミクロン（５μｍ）〜約５００ミクロン（５００μｍ）の粒径を有する砥粗粒で実施する事が一層好ましい。粗面化は約５０ミクロン（５０）μｍの公称粒径を有する重炭酸ナトリウム（ＵＳＰ）で実施することが更に一層好ましい。
【００２６】
支持材料の表面の粗面化は約５ＰＳＩ〜約２００ＰＳＩ（約３４ＫＰａ〜約１３８０ＫＰａ）の流動圧力及び約１ｇ／分〜約１０００ｇ／分の粗粒供給速度で吐出される砥粗粒で実施する事が好ましい。表面の粗面化は、支持材料上の梨地状表面の平均表面粗さが約１０μｉｎ（約２５０ｎｍ）及び表面粗さが約１μｉｎ〜約１００μｉｎ（約２５ｎｍ〜約２．５μｍ）となるように実施することが好ましい。
【００２７】
別の側面において、本発明は前記の本発明の第３の側面において述べた方法の生成物に関する。更に別の側面において、本発明は、本発明の医療器具又は本発明の方法の生成物をヒト又は獣類患者の体内に挿入することからなる医療処置又は診断方法に関する。
【００２８】
前記のように、本発明の医療器具及びその製造方法は従来技術のステント及び他の医療器具並びにそれらの製造方法を凌駕する幾つかの利点を有する。本発明の医療器具の製造時間及びコストは、生物学的活性物質を閉じ込め層内に添合する工程又は生物学的活性物質上に閉じ込め層又は徐放性層を塗布する工程の不在により最小化される。構造体の表面を処理、粗面化又は梨地状化するための研磨剤としての重炭酸ナトリウムが特に好ましい使用は、製造労働者への重炭酸ナトリウムの低毒性、製品及び廃棄物の浄化の容易性及び残留重炭酸ナトリウムの生物学的適合性などにより得られる幾つかのコスト節減を享受するためである。言うまでもなく、本発明の方法により享受される労働者安全性及び製品と廃棄物の浄化容易性は、コスト節減が有ろうと無かろうと、非常に望ましい利点である。
【００２９】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明により埋込式医療器具１０について更に具体的に説明する。本発明の医療器具１０は基本的に、ヒト又は獣類患者の体内に一時的に又は恒久的に挿入することができる構造体１２からなる。「挿入することができる」とは、構造体１２がこのような挿入に適合した形状及びサイズに特別に形成されていることを意味する。例えば、構造体１２は患者の脈管系に挿入するように適合された脈管ステントとして形成することが最も好ましい。
【００３０】
言うまでもなく、構造体１２は特に、食道、気管、結腸、胆管、尿道、尿管などのようなその他の系及び部位で使用するように形成することもできる。実際、構造体１２は二者択一的に、常用の脈管系医療器具又はその他の同等な医療器具として形成することもできる。従って、構造体１２は、様々な常用ステント又は螺旋状に捲回されたストランド、有孔シリンダなどのようなその他の付属物などを包含することもできる。更に、本発明が解決しようとする課題が基本的に、患者の体内に実際に配置される医療器具のこれらの部分に関連して生じるので、挿入される構造体１２は医療器具全体である必要は無く、脈管又は患者内に挿入しようと意図されるその他の器具の該当部分だけであることができる。従って、構造体１２は、カテーテル、ワイヤガイド、カニューレ、ステント、脈管又はその他の移植片、心臓ペースメーカーリード線又はリードチップ、心臓除細動器リード線又はリードチップ、心臓弁、縫合糸、針、血管形成術用器具又はペースメーカーなどのうちの少なくとも一つ又はこれらの任意の部分として形成することができる。また、構造体１２はこれらの何れかの部分の組合せとして形成することもできる。
【００３１】
本発明の理解を助けるために、図１及び図２はステント、更に具体的には脈管用ステントとして形成された構造体１２だけを示す。更に詳細には、構造体１２は、“ＬＯＧＩＣ”ステント、“Ｖ−ＦＬＥＸＰＬＵＳ”ステント又は“ＡＣＨＩＥＶＥ”ステントなどのような脈管用ステントとして形成される。これらのステントは何れもアメリカ合衆国、インディアナ州のブルーミントンに所在するクック社（Ｃｏｏｋ
Ｉｎｃｏｒｐｏｒａｔｅｄ）から市販されている。このようなステントは、適当な材料のカニュレから切り出され、また、ステントが帯有するバルーンが膨張されたときにステントを拡張させることができる複数の相互接続支柱を有する。これらのステントは平坦な外面を有する。実際問題として、この平坦外面は、複数の丸ワイヤから形成されるステントよりも、本発明による処理を一層容易にする。複数の丸ワイヤは表面を粗面化するのが一層難しい。これらのステントは平滑な内面を有し、トロンボゲン形成可能性を低下させる。
【００３２】
言うまでもなく、構造体１２の特定の形状及び寸法は、その特定の目的及び該構造体１２が使用される患者内の特定部位（例えば、冠動脈、動脈、食道、気管、結腸、胆管、尿道、尿管など）について必要とされるような形状及び寸法を選択しなければならない。各部位について企図される構造体１２はこのような用途に特に適合するような異なる寸法を有する。例えば、動脈、食道、気管及び結腸用ステントは、約２５ｍｍ以下の直径と、約１００ｍｍ又はこれ以上の長さを有する。脈管用ステントは一般的に短く、例えば、長さは約１０ｍｍ〜６０ｍｍであり、大抵は約１２ｍｍ〜約２５ｍｍの長さであることが好ましい。このような脈管用ステントは一般的に、患者の脈管系内に挿入されたときに約２ｍｍ〜６ｍｍの直径に、大抵の場合は、好ましくは約２ｍｍ〜４ｍｍの直径にまで拡張するように設計されている。
【００３３】
構造体１２は、該構造体１２の企図された用途に適合する支持材料１４から構成されている。支持材料１４は生体適合性であることが好ましい。様々な常用の材料を支持材料１４として使用することができる。幾つかの材料は、構造体１２の典型的な用途である冠動脈用ステント以外の構造体にとって一層有用である。支持材料１４は、患者内におけるその企図された用途について必要とされるような弾性又は非弾性の何れであることもできる。支持材料は生分解性又は非生分解性の何れであることもできる。また、様々な生分解性ポリマーが公知である。また、その企図された用途又は適用に応じて、支持材料１４は孔質であることもできるが、非孔質であることが好ましい。
【００３４】
従って、支持材料１４は、ステンレス鋼、タンタル、チタン、ニチノール、金、白金、インコネル、イリジウム、銀、タングステン又はその他の生体適合性金属若しくはこれらの何れかの金属類の合金類；カーボン又は炭素繊維；酢酸セルロース、硝酸セルロース、シリコン、テレフタル酸ポリエチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオルソエステル、ポリ酸無水物、スルホン酸ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、高分子量ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン又は別の生体適合性高分子物質若しくはこれらの混合物あるいは共重合体；ポリ乳酸、ポリグリコール酸又はこれらの共重合体、ポリ酸無水物、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸エステル、吉草酸エステル又は別の生分解性ポリマー、これらの混合物又は共重合体；タンパク質、細胞外間質成分、コラーゲン、フィブリン又は別の生物学的薬剤；又はこれらの何れかの適当な混合物のうちの少なくとも一種類からなる。構造体１２が脈管用ステントとして形成される場合、支持材料１４としてはステンレス鋼が特に有用である。しかし、本発明を実施する場合、特に好ましい支持材料１４は、ステンレス鋼、ニチノール、タンタル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸及び生分解性材料類である。モリブデン−ルテニウム合金及びマグネシウムも同様に支持材料１４としておそらく有用であろう。
【００３５】
言うまでもなく、構造体１２が、ポリプロピレン、ポリエチレン又は前記のその他の材料のような放射線透過性材料から構成されている場合、常用の放射線不透過性マーカー又は被覆をその何らかの限定位置に塗布しておくこともできるし、また好ましくは塗布すべきである。放射線不透過性マーカー又は被覆は、患者の脈管系に挿入中又は挿入後に、Ｘ線又は透視検査により構造体１２の位置を識別する手段となる。
【００３６】
本発明の医療器具１０の構造体１２の支持材料１４は、該支持材料１４の上面に少なくとも部分的に延在する粗面化又は梨地状表面１６を包含する。粗面１６は下記で詳述するような方法で粗面化又は梨地状化される。粗面１６は支持材料１４の全表面であることもできるが、本発明の好ましい実施態様（構造体１２が脈管用ステントとして形成されような実施態様）では、粗面１６は支持材料１４の外面である。
【００３７】
本発明の医療器具１０は、構造体１２の支持材料１４の粗面化又は梨地状面１６上に直接配置された少なくとも一層の生物学的活性物質層１８を更に有する。本発明の医療器具１０の特徴は、この医療器具１０が生物学的活性物質層１８上に追加的な被覆又は層を必要としないか又は有しないことである。しかし、何らかの理由により、生物学的活性物質層１８の上面又は下面に追加的被覆又は層を配置することが望ましいこともある。このような被覆又は層は塗布する事ができ、本発明の企図する範囲内のものである。生物学的活性物質層１８は、粗面化又は梨地状面１６よりも平滑であることもできるし又はさらに粗い面であることもできる。
【００３８】
構造体１２自体は有孔であることができるが、構造体１２の支持材料１４は非孔質であることが好ましい。多孔質材料と有孔ではあるが非孔質の材料との相違は実際的なものである。多孔質材料の比較的小さな開放気泡は、塗布された生物学的活性物質の相当量を維持するのに十分な特性と個数のものであるが、非孔質材料の比較的大きな孔は塗布された生物学的活性物質の相当量を維持するのに不十分な特性と個数のものである。別法として、多孔質材料の開放気泡は一般的に微視的であると見做すことができるが、非孔質材料を貫通する孔は一般的に巨視的であると見做すことができる。
【００３９】
広範な種類の薬物、薬剤及び物質類を層１８における生物学的活性物質として使用することができる。本発明を実施するのに特に有用な物質類は、ステント挿入手術又はその他の処置により事前に開放された血管の突発性閉鎖及び再狭窄を予防又は改善する物質類である。血栓を溶解、分解又は分散する）血栓崩壊剤及び（血栓の生成を阻害又は予防する）抗トロンボゲン形成剤は、構造体１２が脈管用ステントとして使用される場合、特に有用な生物学的活性物質類である。特に好ましい血栓崩壊剤はウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ及び組織プラスミノーゲン活性化剤である。特に好ましい抗トロンボゲン形成剤は、ヘパリン、ヒルビン及び抗血小板物質である。
【００４０】
ウロキナーゼは一般的に、ヒトの腎臓細胞培養物から得られるプラスミノーゲン活性化酵素である。ウロキナーゼはプラスミノーゲンの線維素溶解性プラスミン（これは線維素性血栓へ分解される）への変換を触媒する。
【００４１】
ヘパリンは、一般的に、ブタの腸管粘膜又はウシの肺から得られるムコ多糖の抗凝血剤である。ヘパリンは、血液の内因性抗トロンビンＩＩＩの作用を大幅に高めることにより、トロンビン阻害剤として機能する。凝結カスケード中の強力な酵素であるトロンビンは、フィブリンの生成を触媒する際の要である。従って、トロンビンを阻害することにより、ヘパリンは線維素性血栓の生成を阻害する。
【００４２】
言うまでもなく、その他の機能を有する生物学的活性物質も、本発明の器具１０により首尾良く送達することができる。例えば、メトトレキセートのような抗増殖剤は平滑筋の過剰増殖を阻害し、従って、血管の拡張部位の再狭窄を阻害する。更に、抗増殖剤の局所的送達も、高い脈管成長を特徴とする様々な悪性状態を治療するのに有用である。このような場合、本発明の器具１０を腫瘍の動脈供給内に配置させ、比較的高投与量の抗増殖剤を腫瘍に直接送達する手段を提供することができる。
【００４３】
カルシウムチャネル遮断薬又は硝酸塩のような血管拡張薬は、血管痙攣を抑制する。血管痙攣は血管形成手術後に普遍的に起こる。血管痙攣は血管の損傷に対する応答として発生する。また、血管痙攣を起こす傾向は血管の治癒に応じて低下する。従って、血管拡張薬は、約２〜３週間の期間にわたって供給することが望ましい。言うまでもなく、血管形成術による外傷性障害は、血管痙攣を起こし得る血管損傷だけではない。また、器具１０は、冠動脈以外の脈管、例えば、大動脈、頸動脈、腎動脈、腸骨動脈、又は動脈内の血管痙攣を予防するための周辺動脈などにも挿入することができる。
【００４４】
構造体１２が冠動脈ステント以外のものに形成される場合、その他の様々な生物学的活性物質はそれらの用途に特に好適である。例えば、抗癌化学療法剤は器具１０により、局所的な腫瘍に投与することができる。更に詳細には、器具１０は腫瘍に血液を供給する動脈内あるいは任意の部位に配置し、全身暴露と毒性を低下させつつ、比較的高い投与量で長期間にわたり、薬剤を腫瘍に対して投与することができる。この薬剤は、腫瘍の大きさを低下させる治療用の術前デバルカー（ｄｅｂｕｌｋｅｒ）であるか又は疾患の症状を緩和する緩和剤であることもできる。本発明の生物学的活性物質は器具１０の全域で送達されるのであり、常用の化学療法で使用されるカテーテルによるような、器具１０内に画成される管腔を経由する外面を通過することにより投与されるのではない。言うまでもなく、本発明の生物学的活性物質は器具１０から、該器具で画成される管腔内に放出されたり、器具と接触する組織に放出されたりすることもあり、また、管腔は、ここを通して放出されるべき幾つかのその他の薬剤を帯びることもできる。
【００４５】
パクリタクセルは層１８の生物学的活性物質として特に好ましい抗癌剤及び／又は抗脈管形成剤である。抗脈管形成依存性疾患は例えば、特定のタイプの癌のような、脈管成長を必要とする又は誘発する疾患である。エステロゲン又はエステロゲン誘導体類も層１８の生物学的活性物質として特に好ましい。
【００４６】
パーキンソン病などの神経障害の治療には、メシル酸ブロモクリプチンまたはペルゴリドメチラートなどのドーパミンまたは作用薬が有用である。器具１０は、この目的のために視床黒質に供給する脈管、または他の場所に配置して、視床の治療を局所化することができる。
【００４７】
また、本発明は、構造体１２の支持材料１４の粗面化又は梨地状面１６に共役結合する生物学的活性物質類の使用も企図する。
【００４８】
その他の広範な種類の生物学的活性物質を本発明の器具１０により投与することができる。従って、層１８内に含まれる生物学的活性物質は、パクリタクセル；エステロゲン又はエステロゲン誘導体類；ヘパリン又は別のトロンビン阻害剤、ヒルジン、ヒルログ、アルガトロンバン、Ｄ−フェニルアラニル−Ｌ−ポリ−Ｌ−アルギニルクロロメチルケトン、または別の抗トロンボゲン剤、またはその混合物；ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、または別の血栓溶解剤、またはその混合物；線維素溶解素、血管痙攣阻害剤、カルシウム拮抗薬、硝酸塩、窒素酸化物、窒素酸化物促進剤または別の血管拡張剤；抗菌剤または抗生物質、アスピリン、チクロピジン又は別の抗血小板剤；コルヒチンまたは他の細胞分裂阻害剤、または別の微小管阻害剤、サイトカラシンまたは別のアクチン阻害剤；リモデリング阻害剤；デオキシリボ核酸、アンチセンスヌクレオチドまたは別の分子遺伝介入の作用物質；糖蛋白（ＧＰ）ＩＩｂ／ＩＩＩａ、糖蛋白（ＧＰ）Ｉｂ−ＩＸ又は別の阻害剤または表面糖蛋白受容体；メトトレキセートまたは別の代謝拮抗剤若しくは抗増殖剤；抗癌化学療法作用物質；デキサメタゾン、デキサメタゾン燐酸ナトリウム、酢酸デキサメタゾンまたは別のデキサメタゾン誘導体、または別の抗炎症ステロイド；ドーパミン、メシル酸ブロモクリプチン、パーゴライドメシレートまたは別のドーパミン作動薬；^６０Ｃｏ（半減期５．３年）、^１９２Ｉｒ（半減期７３．８日）、^３２Ｐ（半減期１４．３日）、^１１１Ｉｎ（半減期６８時間）、^９０Ｙ（半減期６４時間）、^９９ｍＴｃ（半減期６時間）または別の放射線療法薬；沃素含有化合物、バリウム含有化合物、金、タンタル、プラチナ、タングステン又は放射線不透過剤として機能する別の重金属；ペプチド、タンパク質、酵素、細胞外間質成分、細胞成分または別の生物学的作用物質；カプトプリル、エナラプリルまたは別のアンギオテンシン転換酵素（ＡＣＥ）阻害剤；アスコルビン酸、α‐トコフェロール、スーパーオキシドジスムターゼ、デフェロキアミン、２１−アミノステロイド（ラサロイド）または別のフリーラジカル捕獲剤、鉄キレート剤または酸化防止剤；アンギオペプチン；^１４Ｃ−、^３Ｈ−、^１３１Ｉ−、^３２Ｐ−または^３６Ｓ−の放射性同位元素を使って識別する形態または以上のいずれかの他の放射性同位元素を使って識別する形態；又はこれらの何れかの混合物のうちの少なくとも一つから構成することが好ましい。
【００４９】
しかし、構造体１２が脈管用ステントとして形成されている場合、層１８の生物学的活性物質として特に好ましい物質は、ヘパリン、抗炎症ステロイド（例えば、デキサメタゾン及びその誘導体など）及びヘパリンとこのようなステロイドの混合物である。
【００５０】
本発明を実施する際の生物学的活性物質としてはその他の物質類も有用である。例えば、平滑筋阻害剤、コラーゲン阻害剤、抗凝血剤、コレステロール低下薬；フォルスコリン（ｆｏｒｓｋｏｌｉｎ）、バピプロスト（ｖａｐｉｐｒｏｓｔ）、プロスタグランディン及びその類似体、プロスタサイクリン及びプロスタサイクリン類似体、デキストラン及びジピリダモール；（Ｓｑｕｉｂｂ社から市販されている）Ｃａｐｔｏｐｒｉｌ（登録商標）、（Ｈｏｆｆｍａｎ−ＬａＲｏｃｈｅ社から市販されている）Ｃｉｌａｚａｐｒｉｌ（登録商標）又は（Ｍｅｒｃｋ社から市販されている）Ｌｉｓｉｎｏｐｒｉｌ（登録商標）などのようなアンギオテンシン変換酵素阻害剤；線維芽細胞成長因子（ＦＧＦ）拮抗剤、魚油（オメガ３脂肪酸）、ヒスタミン拮抗剤、（Ｍｅｒｃｋ社から市販されているコレステロール低下薬であるＨＭＧ−ＣｏＡ還元酵素の阻害剤である）Ｌｏｖａｓｔａｔｉｎ（登録商標）、メトトレキセイト、モノクローナル抗体（例えば、ＰＤＧＦ受容体）、ニトロプルシド、ホスホジアスターゼ阻害剤、（Ｇｌａｘｏ社から市販されている）プロスタグランディン阻害剤、血管内皮細胞成長因子（ＶＥＧＦ）又はその類似体、レチノブラストーマ腫瘍抑制遺伝子のタンパク生成物又はその類似体のような様々な細胞周期阻害剤、セラミン（Ｓｅｒａｍｉｎ）（ＰＤＧＦ拮抗剤）、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害薬、トリアゾロピリミジン（ＰＤＧＦ拮抗剤）、酸化窒素、α−インターフェロン及び遺伝子工学的に作成された上皮細胞などである。
【００５１】
また、本発明は前記の医療器具１０の製造方法にも関する。更に詳細には、本発明の方法は先ず、患者内に一時的に又は恒久的に挿入することができる構造体１２を準備することからなる。構造体１２は、表面１６を有する好ましくは非孔質支持材料１４からなり、また、ステント（例えば、脈管用ステント）として形成される。構造体１２及び支持材料１４は前記に詳細に説明した通りのものであり、簡潔のために、これらの詳細な説明はここでは繰り返さない。構造体１２の支持材料１４としては、ステンレス鋼、ニチノール、タンタル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸及び生分解性材料類などが特に好ましい。
【００５２】
本発明の製造方法は、構造体１２の支持材料１４の表面１６を所望の粗さ又は梨地状になるように処理するステップと、支持材料１４の粗面化又は梨地状面１６上に生物学的活性物質層１８を直接配置するステップを更に有する。層１８において有用な広範な種類の生物学的活性物質類は前記に詳細に説明した。従って、簡潔のために、ここではそれらの詳細な説明を繰り返さない。パクリタクセル、タキサン（ｔａｘａｎｅ）又は別のパクリタクセル類似体、エステロゲン又はエステロゲン誘導体類が層１８の生物学的活性物質として特に好ましい。
【００５３】
本発明による医療器具１０の製造方法の特徴は、得られた医療器具１０が生物学的活性物質層１８の上面に追加の被覆又は層を全く必要としないか又は全く有しないことである。従って、本発明の方法は、生物学的活性物質を徐放性層又は閉じ込め層により被覆したり又はこれらの層内に包含させるための如何なるステップも有しない。本発明の方法は、それ自体が複数の層又は成分からなる支持材料１４の使用も企図するが、このような構成は本発明の実施上必ずしも好ましいものではない。何れにしろ、このような複数の層又は成分の最外部には、生物学的活性物質層１８が直接配置される粗面化又は梨地状面１６を有する。
【００５４】
支持材料１４の粗面化又は梨地状面１６上に生物学的活性物質層１８を直接配置するステップは、任意の常用の方法により実施できる。構造体１２（又はその適当な箇所）を所望の生物学的活性物質の適当な溶液に浸漬するか又は浸軟させ、そして、溶液の溶剤を蒸発させ、支持材料１４の粗面化又は梨地状面１６上に生物学的活性物質層１８を残置させる。しかし、配置ステップは、生物学的活性物質の溶液を構造体１２の支持材料１４の粗面化又は梨地状面１６上に噴霧し、そして、構造体１２を乾燥させることにより実施することが好ましい。噴霧は生物学的活性物質を粗面化又は梨地状面１６に移行させるには比較的低効率であるが、本発明の目的にとっては好適である。
【００５５】
例えば、（本発明において特に好ましい生物学的活性物質である）パクリタクセルは、このエタノール溶液を支持材料１４の粗面化又は梨地状面１６上に噴霧することにより配置させることができる。この溶液は、エタノール１ｍｌ当たりパクリタクセルを約２ｍｇ〜約４ｍｇ含有することが好ましい。（エタノールは１００％米国薬局方（ＵＳＰ）品級又は同等の品級でなければならない。変性アルコール又は９５％エタノールであってはならない。）例えば、２５ｍｍ^２程度の総外表面積の粗面を有する長さが１５ｍｍで直径が３ｍｍのステントの場合、支持材料１４の粗面化又は梨地状面１６上にパクリタクセルを約５μｇ〜約５００μｇ、好ましくは５０μｇ〜１５０μｇ配置するように容易に噴霧することができる。おそらく、約１％未満のパクリタクセルが最終的に、前記溶液から梨地状面１６上に配置される。その他の生物学的活性物質類のための適当な溶剤及び濃度の選択又はその他の生物学的活性物質類を粗面化又は梨地状面１６上に直接配置するためのその他の技法の選択は本発明を考慮して当業者が容易に決定することができる。特に、このタイプの器具が米国内で配布され得るより以前に必要とされていた広範な試験を考慮すれば、必要な実験量は最小でなければならない。
【００５６】
構造体１２の支持材料１４の表面１６はエッチングなどのような任意の常用の方法で粗面化又は梨地状にすることができる。しかし、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、コルマナイト（硼酸カルシウム）、破砕ガラス又は破砕クルミ殻のうちの少なくとも一つからなる砥粗粒２４で粗面化することにより、表面１６を粗面化させるか又は梨地状にすることができる。このような粗面化又は梨地状化は、医療器具１０をマンドレル２０上に、例えば、ノズル２２から吐出される砥粗粒２４を表面１６に衝突させるような適所に配置させることにより最も容易に実施することができる。粗面化又は梨地状化前の支持材料の初期表面は、所望の表面粗さよりも一層平滑であるかあるいは一層粗い面であることもできる。
【００５７】
砥粗粒２４の粗粒サイズ及び供給速度、ノズル２２の構造、砥粗粒２４がノズル２２から吐出される際の圧力、ノズル２２から表面１６までの距離及び医療器具１０とノズル２２の相対的移動速度は、構造体１２の支持材料１４の表面１６の適当な所望の粗さ又は肌理を達成する際に考慮すべき全ての因子である。例えば、一例として、支持材料１４がステンレス鋼である場合、粗面化ステップは、約５ミクロン（５μｍ）〜約５００ミクロン（５００μｍ）の粒径を有する砥粗粒２４を用いて実施できる。一層好ましくは、粗面化ステップは、約５０ミクロン（５０μｍ）の公称粒径を有し、このうち、約５０％は４０ミクロン（４０μｍ）超であり、約１％は１５０ミクロン（１５０μｍ）超である重炭酸ナトリウム（ＵＳＰ）により実施する。このような粗面化は、約５ＰＳＩ〜約２００ＰＳＩ（約３４ＫＰａ〜約１３８０ＫＰａ）、最も好ましくは約１００ＰＳＩ（約６９０ＫＰａ）の流体圧力で吐出される重炭酸ナトリウム又はその他の砥粗粒２４で実施することが好ましい。このような粗面化はまた、約１ｇ／分〜約１０００ｇ／分、最も好ましくは約１０ｇ／分〜約１５ｇ／分の粗粒供給速度で吐出される重炭酸ナトリウム又はその他の砥粗粒２４で実施することが好ましい。
【００５８】
砥粗粒の吐出のための搬送ガス又は噴射剤は窒素、空気又はアルゴンであることが好ましく、窒素が最も好ましい。その他のガスも同様に好適である。医療器具１０が前記のように形成される場合、ノズル２２の出口からマンドレル２０の中心までの距離は約１ｍｍ〜約１００ｍｍであることができる。好ましいノズル２２はコムコマイクロブラスター（Ｃｏｍｃｏ
Ｍｉｃｒｏｂｌａｓｔｅｒ）であり、このノズルを使用する場合、ノズル２２の出口からマンドレル２０の中心までの好ましい距離は約５ｍｍ〜約１０ｍｍである。ノズル２２として、Ｐａａｓｃｈｅ
ＬＡＣ＃３も有用である。
【００５９】
構造体１２の支持材料１４の表面１６の均一な粗さ又は肌理を形成するために、表面１６の粗面化中に、表面１６とノズル２２を相対運動させることが特に望ましい。所望の均一な粗さ又は肌理を形成するために任意の運動パターンを使用することができる。このような運動は、構造体１２に沿った縦方向又は長さ方向運動と構造体１２の周囲の円周方向運動又は復位の両方を伴うことが好ましい。異なる円周方向位置を反復的に通過する反復的な縦方向運動が最も好ましい。更に詳細には、表面１６の粗面化は円周方向位置当たり１回〜約５０回の軸方向通過を伴うことができる。しかし、このような軸方向通過に関する円周方向位置の個数は約４から無制限の円周方向位置個数の範囲に及ぶこともできる。この無制限個数は、表面１６とノズル２２の連続的な相対的回転により得られる。表面１６び沿ったノズル２２の掃射速度は、前記の特定のステント寸法について、約１ｍｍ／秒〜約７０ｍｍ／秒の範囲内であることができる。
【００６０】
構造体１２の支持材料１４がステンレス鋼であり、砥粗粒２４が５０ミクロンの重炭酸ナトリウム（ＵＳＰ）である場合、特に好ましい粗面化条件の組合せは下記の通りである。
ノズル２２：コムコマイクロブラスター（Ｃｏｍｃｏ Ｍｉｃｒｏｂｌａｓｔｅｒ）
噴射剤：窒素ガス
圧力：１２０ＰＳＩ（８２８ＫＰａ）（流動状態）
噴霧プラン：８個の等間隔円周方向位置
１円周方向位置当たり４回の軸方向通過
掃射速度：約１６ｍｍ／秒
粗粒供給速度：約０．１５ｇ／秒〜０．３０ｇ／秒
ノズル出口からマンドレル中心までの距離：約５ｍｍ〜１０ｍｍ
【００６１】
粗面化がこのような方法で実施される場合、約１０μｉｎ（約２５０ｎｍ）の平均表面粗さ（即ち、表面地勢の平均高さ）と約１μｉｎ〜約１００μｉｎ（約２５ｎｍ〜約２．５μｍ）の範囲内の表面粗さを有すると見做される粗面化又は梨地状面１６が得られる。このような表面１６は、追加的被覆層又は閉じ込め層を必要とすること無く、該表面上に直接配置された生物学的活性物質の大部分を該表面上に保持することができる。
【００６２】
更に詳細には、２種類のステンレス鋼に対するパクリタクセルの付着力について試験した。粗粒で粗面化されたステントのパクリタクセル付着力を、パクリタクセルが直接堆積される前に表面を粗粒の代わりにプラズマで処理したタイプのステント（対照ステント）のパクリタクセル付着力と比較した。すなわち、両方のタイプの被覆ステントは、一方が本発明の医療器具１０であり、他方が対照ステントであり、これらを物理的付着力試験にかけた。この試験は、医療用途においてステントが挿入及び展開中にパクリタクセルが送達される速度をシミュレートするものである。付着力試験は、適当な直径の水で満たされたガイドカテーテル中を各ステントを通過させ、そして、バルーンカテーテルを膨張させ、各ステントをその企図された直径にまで拡大させることからなる。ステントは被覆前に既に取り付けられている。その後、各ステント上のパクリタクセル残量を分光測定法により測定し、各ステントに最初に配置されたパクリタクセルの量と比較した。異なる砥粗粒２４で粗面化することにより粗面化又は梨地状にされた面１６を有するステントは、最初に塗布されたパクリタクセルを８４．１±１０．２％保持していた。これに対して、プラズマ処理面を有するステントは最初に塗布されたパクリタクセルを４４．３±８．７％しか保持していなかった（ｐ＜０．０００１）。この事実は明らかに、本発明の医療器具１０の構造体１２の支持材料１４の粗面化又は梨地状面１６上の生物学的活性物質層１８の優れた定着性を実証している。
【００６３】
前記の開示内容を考慮して、当業者であれば、特定の支持材料１４と生物学的活性物質類との望ましい組合せに関する最適処理条件を得るために任意の手探り試験を容易に実施できるであろう。このような試験は単に、特定の支持材料１４の表面１６を特定の方法で粗面化又は梨地状化させ、得られた粗面化又は梨地状面１６に特定の生物学的活性物質層１８を塗布し、そして、医療的に挿入し、かつ展開を模擬した後、粗面化又は梨地状面１６上の生物学的活性物質の残率を測定するだけでよい。
【００６４】
本発明は明らかに、従来の医療器具及びその製造方法よりも遙かに優れた医療器具１０及びその製造方法を提供する。本発明の医療器具の製造時間及びコストは、生物学的活性物質を閉じ込め層内に混和させるステップ又は生物学的活性物質層上に閉じ込め層又は徐放性層を上塗りするステップが存在しないため最小にされる。構造体の支持材料の表面を粗面化又は梨地状化させるために研磨剤として重炭酸ナトリウムを使用することは特に好ましく、製造労働者への重炭酸ナトリウムの低毒性、製品及び廃棄物の浄化の容易性及び残留重炭酸ナトリウムの生物学的適合性などの利点がある。これらはそれ自体が重要な利点であるが、付随的に、医療器具１０の製造時間及びコストも低下させる。
【００６５】
本発明の医療器具１０の様々な要素が、開示したような性能を発揮するためにこれら要素に求められる強度又は機械特性を有する限り、本発明の医療器具１０の様々な要素の構造又は組成の細部は本発明の所期の効果を得るための必須要件ではないと思われる。本発明の開示を考慮すれば、このような構成の細部に関する選択は初歩的な当業者であっても容易に為し得るものと思われる。しかし、実際的な理由により、本発明の医療器具１０は、再使用可能なものでは無くむしろ、使い捨て器具と見做すべきである。
【００６６】
【発明の効果】
本発明は様々な外科的処置の実行及び様々な外科的処置の実行用器具の製造に有用である。従って、本発明の医療器具はヒト及び獣類患者に適用可能であることが認められる。
【００６７】
本発明によれば、本発明の医療器具１０の一部分だけを生物学的活性物質で被覆するだけでなく、医療器具１０の別の箇所を異なる生物学的活性物質で被覆することもできる。
【００６８】
更に、本発明によれば、本発明の医療器具の様々な部品、引っ込んだ所、部分、側面、セグメント、溝などにも生物学的活性物質を単独で又はその他の生物学的活性物質類、被覆剤又は多層化剤と共に配置することもできる。これにより、送達部位に対して生物学的活性物質の放出を更に制御することができる。
このような構成は、米国特許第５３８０２９９号明細書、同第５６０９６２９号明細書、同第５８２４０４９号明細書、同第５８７３９０４号明細書、同第６０９６０７０号明細書、同第６２９９６０４号明細書で企図され、これら明細書に開示されている。同様に、米国特許出願第０８／９５６７１５号明細書、同第０９／０２７０５４号明細書、同第０９／８５０６９１号明細書などのような、前記特許に対して優先権を主張した現在出願継続中の特許出願明細書にも開示されている。
【００６９】
前記のように、本発明の医療器具は、生物学的活性物質を配置させることができる器具表面積を増加させるために、溝、へこみ、引っ込んだ所、窪み、突起、隆起などを包含することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明の製造方法のステップの好ましい実施態様の一例を示す側面図である。
【図２】 本発明の好ましい実施態様の医療器具及び生成物の一部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
１０ 医療器具
１２ 構造体
１４ 支持材料
１６ 粗面化又は梨地状面
１８ 生物学的活性物質層
２０ マンドレル
２２ ノズル
２４ 砥粗粒

Claims (19)

1. 患者の体内に挿入するための医療器具であって、
   ２５ｎｍから２．５μｍの表面粗さを有する、粗面化面、非平坦化面、非平滑化面又は梨地状の面を形成するために、該器具の表面の少なくとも一部分が処理され、前記表面の少なくとも前記粗面化面、非平坦化面、非平滑化面又は梨地状面の部分に生物学的活性物質が配置されていることを特徴とする医療器具。
2. 前記表面は、約５０ミクロン（５０μｍ）の公称粒径を有し、このうち、約５０％は４０ミクロン（４０μｍ）超であり、約１％は１５０ミクロン（１５０μｍ）超である重炭酸ナトリウム砥粗粒により研磨された金属表面であって、前記処理の度合いを制御し、パクリタキセル生物学的活性物質を前記表面に十分に付着させ、前記生物学的活性物質は、エタノール１ｍｌあたりの２〜４ミリグラム（ｍｇ）のパクリタキセルを含有するエタノール溶液により塗布されることで前記金属表面に配置されているパクリタキセルである、ことを特徴とする請求項１に記載の医療器具。
3. （ａ）患者の体内に挿入することができ、２５ｎｍから２．５μｍの表面粗さを有する、粗面化面、非平坦化面、非平滑化面又は梨地状面のうちの少なくとも一つを有する支持材料からなる構造体と、
   （ｂ）前記構造体の前記支持材料の前記少なくとも一つの面上に直接配置された生物学的活性物質層と
   からなることを特徴とする医療器具。
4. 前記構造体の前記支持材料は、
   ステンレス鋼、タンタル、チタン、ニチノール、金、白金、インコネル、イリジウム、銀、タングステン又はその他の生体適合性金属若しくはこれらの何れかの金属類の合金類；カーボン又は炭素繊維；酢酸セルロース、硝酸セルロース、シリコン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオルソエステル、ポリ酸無水物、スルホン酸ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、高分子量ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン又は別の生体適合性高分子物質若しくはこれらの混合物あるいは共重合体；ポリ乳酸、ポリグリコール酸又はこれらの共重合体、ポリ酸無水物、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸エステル、吉草酸エステル又は別の生分解性ポリマー、これらの混合物又は共重合体；タンパク質、細胞外間質成分、コラーゲン、フィブリン（線維素）又は別の生物学的薬剤；又はこれらの何れかの適当な混合物のうちの少なくとも一種類を含むことを特徴とする請求項３に記載の医療器具。
5. 前記生物学的活性物質層は、パクリタクセル、タキサン（ｔａｘａｎｅ）又は別のパクリタクセル類似体；エステロゲン又はエステロゲン誘導体類；ヘパリン又は別のトロンビン阻害剤、ヒルジン、ヒルログ、アルガトロンバン、Ｄ−フェニルアラニル−Ｌ−ポリ−Ｌ−アルギニルクロロメチルケトン、または別の抗トロンボゲン剤、またはその混合物；ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、または別の血栓溶解剤、またはその混合物；線維素溶解剤、血管痙攣阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬、硝酸塩、窒素酸化物、窒素酸化物促進剤または別の血管拡張剤；抗菌剤または抗生物質、アスピリン、チクロピジン又は別の抗血小板剤；血管内皮細胞成長因子（ＶＥＧＦ）又はその類似体；コルヒチンまたは他の細胞分裂阻害剤、または別の微小管阻害剤、サイトカラシンまたは別のアクチン阻害剤；リモデリング阻害剤；デオキシリボ核酸、アンチセンスヌクレオチドまたは別の分子遺伝介入の作用物質；（レチノブラストーマ腫瘍抑制遺伝子のタンパク生成物又はその類似体のような）細胞周期阻害剤、糖蛋白（ＧＰ）ＩＩｂ／ＩＩＩａ、糖蛋白（ＧＰ）Ｉｂ−ＩＸ又は別の抑制剤または表面糖蛋白受容体；メトトレキセートまたは別の代謝拮抗剤若しくは抗増殖剤；抗癌化学療法作用物質；デキサメタゾン、デキサメタゾン燐酸ナトリウム、酢酸デキサメタゾンまたは別のデキサメタゾン誘導体、または別の抗炎症ステロイド；プロスタグランディン、プロスタサイクリン又はその類似体；（シクロスポリン又はラパマイシンのような）免疫抑制剤；（ストレプトマイシン、エリスロマイシン又はバンコマイシンのような）抗生物質；ドーパミン、メシル酸ブロモクリプチン、パーゴライドメシレートまたは別のドーパミン作動薬；^６０Ｃｏ、^１９２Ｉｒ、^３２Ｐ、^１１１Ｉｎ、^９０Ｙ、^９９ｍＴｃまたは別の放射線療法薬；沃素含有化合物、バリウム含有化合物、金、タンタル、プラチナ、タングステン又は放射線不透過剤として機能する別の重金属；ペプチド、タンパク質、酵素、細胞外間質成分、細胞成分または別の生物学的作用物質；カプトプリル、エナラプリルまたは別のアンギオテンシン転換酵素（ＡＣＥ）阻害剤；アスコルビン酸、α‐トコフェロール、スーパーオキシドジスムターゼ、デフェロキアミン、２１−アミノステロイド（ラサロイド）または別のフリーラジカル捕獲剤、鉄キレート剤または酸化防止剤；アンギオペプチン；^１４Ｃ−、^３Ｈ−、^１３１Ｉ−、^３２Ｐ−または^３６Ｓ−の放射性同位元素を使って識別する形態または以上のいずれかの他の放射性同位元素を使って識別する形態；又はこれらの何れかの混合物のうちの少なくとも一つからなることを特徴とする請求項３に記載の医療器具。
6. 前記支持材料の前記少なくとも一つの面は、５μｍから５００μｍの粒径を有する重炭酸ナトリウム砥粗粒によって粗面化され、前記砥粗粒は、約５ＰＳＩ〜約２００ＰＳＩ（約３４ＫＰａ〜約１３８０ＫＰａ）の流体圧力を有する搬送ガス又は推進剤によって吐出されることを特徴とする請求項３に記載の医療器具。
7. 前記医療器具は前記生物学的活性物質層上に追加の被覆又は層を必要としないか又は有しないことを特徴とする請求項３に記載の医療器具。
8. 医療器具であって、
   （ａ）患者の体内に挿入することができる構造体と、
   ここで、前記構造体は、粗面化面、非平坦化面、非平滑化面又は梨地状面のうちの少なくとも一つを有し、
   前記構造体は脈管用ステントとして形成され、
   前記支持材料はステンレス鋼、ニチノール及びニッケル・チタン合金のうちの少なくとも一つからなる、
   （ｂ）前記構造体の前記支持材料の前記少なくとも一つの面上に直接配置されたパクリタクセルからなる生物学的活性物質層とからなり、
   前記医療器具は前記生物学的活性物質層上に追加の被覆又は層を必要とせず、
   前記構造体の前記支持材料の前記少なくとも一つの面の平均表面粗さは２５０ｎｍであり、表面粗さは２５ｎｍから２．５μｍの範囲内であることを特徴とする医療器具。
9. （Ａ）表面を有する支持材料からなり、患者の体内に挿入することができる構造体を準備するステップと、
   （Ｂ）前記構造体の前記支持材料の表面を５μｍから５００μｍの粒径を有する砥粗粒によって２５ｎｍから２．５μｍの表面粗さを有するように粗面化することにより、粗面化するか又は梨地状にするステップと、
   （Ｃ）前記構造体の前記支持材料の前記粗面化又は梨地状面上に生物学的活性物質層を直接配置するステップとからなる医療器具の製造方法であって、
   得られた医療器具は前記生物学的活性物質層上に追加の被覆又は層を必要としないことを特徴とする医療器具の製造方法。
10. 前記方法は、ステンレス鋼、タンタル、チタン、ニチノール、金、白金、インコネル、イリジウム、銀、タングステン又はその他の生体適合性金属若しくはこれらの何れかの金属類の合金類；カーボン又は炭素繊維；酢酸セルロース、硝酸セルロース、シリコン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオルソエステル、ポリ酸無水物、スルホン酸ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、高分子量ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン又は別の生体適合性高分子物質若しくはこれらの混合物あるいは共重合体；ポリ乳酸、ポリグリコール酸又はこれらの共重合体、ポリ酸無水物、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸エステル、吉草酸エステル又は別の生分解性ポリマー、これらの混合物又は共重合体；タンパク質、細胞外間質成分、コラーゲン、フィブリン（線維素）又は別の生物学的薬剤；又はこれらの何れかの適当な混合物のうちの少なくとも一種類からなる支持材料を用いて実施されることを特徴とする請求項９に記載の方法。
11. 前記方法は、パクリタクセル、タキサン（ｔａｘａｎｅ）又は別のパクリタクセル類似体；エステロゲン又はエステロゲン誘導体類；ヘパリン又は別のトロンビン阻害剤、ヒルジン、ヒルログ、アルガトロンバン、Ｄ−フェニルアラニル−Ｌ−ポリ−Ｌ−アルギニルクロロメチルケトン、または別の抗トロンボゲン剤、またはその混合物；ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子、または別の血栓溶解剤、またはその混合物；線維素溶解剤、血管痙攣阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬、硝酸塩、窒素酸化物、窒素酸化物促進剤または別の血管拡張剤；抗菌剤または抗生物質、アスピリン、チクロピジン又は別の抗血小板剤；血管内皮細胞成長因子（ＶＥＧＦ）又はその類似体；コルヒチンまたは他の細胞分裂阻害剤、または別の微小管阻害剤、サイトカラシンまたは別のアクチン阻害剤；リモデリング阻害剤；デオキシリボ核酸、アンチセンスヌクレオチドまたは別の分子遺伝介入の作用物質；糖蛋白（ＧＰ）ＩＩｂ／ＩＩＩａ、糖蛋白（ＧＰ）Ｉｂ−ＩＸ又は別の抑制剤または表面糖蛋白受容体；メトトレキセートまたは別の代謝拮抗剤若しくは抗増殖剤；抗癌化学療法作用物質；デキサメタゾン、デキサメタゾン燐酸ナトリウム、酢酸デキサメタゾンまたは別のデキサメタゾン誘導体、または別の抗炎症ステロイド；ドーパミン、メシル酸ブロモクリプチン、パーゴライドメシレートまたは別のドーパミン作動薬；^６０Ｃｏ、^１９２Ｉｒ、^３２Ｐ、^１１１Ｉｎ、^９０Ｙ、^９９ｍＴｃまたは別の放射線療法薬；沃素含有化合物、バリウム含有化合物、金、タンタル、プラチナ、タングステン又は放射線不透過剤として機能する別の重金属；ペプチド、タンパク質、酵素、細胞外間質成分、細胞成分または別の生物学的作用物質；カプトプリル、エナラプリルまたは別のアンギオテンシン転換酵素（ＡＣＥ）阻害剤；アスコルビン酸、α‐トコフェロール、スーパーオキシドジスムターゼ、デフェロキアミン、２１−アミノステロイド（ラサロイド）または別のフリーラジカル捕獲剤、鉄キレート剤または酸化防止剤；アンギオペプチン；^１４Ｃ−、^３Ｈ−、^１３１Ｉ−、^３２Ｐ−または^３６Ｓ−の放射性同位元素を使って識別する形態または以上のいずれかの他の放射性同位元素を使って識別する形態；又はこれらの何れかの混合物のうちの少なくとも一つからなる生物学的活性物質層を用いて実施されることを特徴とする請求項９に記載の方法。
12. 前記配置ステップは、前記構造体の前記支持材料の前記粗面化又は梨地状面上に前記生物学的活性物質の溶液を噴霧することにより実施されることを特徴とする請求項９に記載の方法。
13. 前記粗面化又は梨地状化ステップは、前記構造体の前記支持材料の表面を約５ＰＳＩ〜約２００ＰＳＩ（約３４ＫＰａ〜約１３８０ＫＰａ）の流体圧力を有する搬送ガス又は推進剤によって吐出される砥粗粒を用いて粗面化することにより実施されることを特徴とする請求項９に記載の方法。
14. 前記粗面化は、重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、コルマナイト、破砕ガラス又は破砕クルミ殻のうちの少なくとも一つからなる砥粗粒を用いて実施されることを特徴とする請求項１３に記載の方法。
15. 前記粗面化は、５０μｍの公称粒径を有する重炭酸ナトリウムを用いて実施されることを特徴とする請求項９に記載の方法。
16. 前記粗面化は、５ＰＳＩから２００ＰＳＩ（３４ＫＰａから１３８０ＫＰａ）の流体圧力で吐出される砥粗粒を用いて実施されることを特徴とする請求項１５に記載の方法。
17. 前記粗面化は、毎分１ｇから１０００ｇの粗粒供給速度で吐出される砥粗粒を用いて実施されることを特徴とする請求項１４に記載の方法。
18. 平均表面粗さが１０マイクロインチ（μｉｎ）（２５０ｎｍ）であり、表面粗さが１μｉｎから１００μｉｎ（２５ｎｍから２．５μｍ）の範囲内である、前記構造体の前記支持材料の粗面化又は梨地状面を形成するために、前記粗面化が実施されることを特徴とする請求項１７に記載の方法。
19. 前記生物学的活性物質は、エタノール１ｍｌあたりの２〜４ミリグラム（ｍｇ）のパクリタキセルを含有するエタノール溶液により塗布されることで前記金属表面に配置されているパクリタキセルを含んでいることを特徴とする請求項１８に記載の方法。

Images