JP4582828B2 - ポリアセタール樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、ポリアセタール樹脂組成物に関し、詳しくは、優れた摺動特性、導電性、機械的性質、熱安定性および成形性、特に、小型の摺動部材の製造に対しての優れた成形性と寸法安定性を有するポリアセタール樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、オーデイオ、ビデオテープレコーダー、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ等の電子機器の普及に伴い、多くのプラスチック製品が機構部品および内蔵部品として使用されている。これら機構部品および内蔵部品のうち、軸受、カム、歯車、滑り板、ガイド部材等の摺動部材には、優れた摺動特性、帯電防止性と機械的性質、更に、必要に応じて高い導電性が求められている。上記の用途にはポリアセタール樹脂に導電性カーボンブラックとフッ素樹脂とを配合した組成物が知られている(特公平2ー60694)。
【0003】
しかしながら、ポリアセタール樹脂に、所望の摺動特性と導電性を得るための十分な量のフッ素樹脂と導電性カーボンブラックを配合した場合、ポリアセタール樹脂の熱安定性が低下すると共に、成形性が著しく悪化し、且つ、機械的性質も低下する。特に、樹脂組成物の熱安定性および成形性の悪化に伴い、射出成形などによって導電性を有する高精度の小型の摺動部材などの機構部品および内蔵部品の成形が困難である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、優れた摺動特性、導電性、機械的性質、熱安定性および成形性、特に、小型の摺動部材の製造に対しての優れた成形性と寸法安定性を有するポリアセタール樹脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ポリアセタール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン及びカーボンブラックから成る組成物に特定の熱安定剤と成形性改良剤を特定量添加することにより、上記の目的を容易に達成し得るとの知見を得た。
【0006】
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は、(a)ポリアセタール樹脂100重量部、(b)ポリテトラフルオロエチレン5〜30重量部、(c)カーボンブラック1〜20重量部、(d)キノリン化合物、アミド化合物およびアミン化合物の群から選択された少なくとも1種の熱安定剤0.1〜15重量部、および(e)多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールとホウ酸との錯化合物の脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンの脂肪酸エステルの群から選択された少なくとも1種の成形性改良剤0.1〜10重量部とから成ることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物に存する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。先ず、ポリアセタール樹脂について説明する。ポリアセタール樹脂としては、ポリアセタールホモポリマーの他、主鎖の大部分がオキシメチレン連鎖より成るポリアセタールコポリマーを使用することが出来る。また、公知の方法で架橋またはグラフト共重合して変性させたポリアセタール樹脂も使用することが出来る。
【0008】
ポリアセタール樹脂の分子量(数平均分子量)は、その成形が可能な限り特に制限はないが、通常20,000〜80,000の範囲である。そして、比較的流動性のよいポリアセタール樹脂、例えば、ASTM−D−1238法で測定したメルトフローレートが4g/10min以上のポリアセタール樹脂が好適に使用される。
【0009】
ポリアセタール樹脂の具体例としては、ホルムアルデヒドのホモポリマー(イー.アイ.デュポン社製「デルリン」(商品名)、分子量50,000〜70,000)、トリオキサンとエチレンオキサイドとの100/0.1〜15の共重合体(ポリプラスチックス社製「ジュラコン」(商品名)、分子量約50,000)等が挙げられる。
【0010】
次に、本発明で使用されるポリテトラフルオロエチレンについて説明する。ポリテトラフルオロエチレンとしては、公知の各種のものを制限なく使用することが出来る。その市販品としては、例えば、三井デュポンフロロケミカル社製の「テフロン7AJ」、「テフロン6CJ」、「TLP−10F」(何れも商品名)、ダイキン工業社製の「ポリフロンM−12」、「ポリフロンF−201」、「ルブロンL−2」、「ルブロンL−5」(何れも商品名)、旭硝子社製の「フルオンG−163」、「フルオンCD−123」、「フルオンL−169J」(何れも商品名)、喜多村社製「KTL−450」、「KTL−610」(何れも商品名)が挙げられる。
【0011】
ポリテトラフルオロエチレンの使用割合は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して5〜30重量部、好ましくは10〜20重量部である。ポリテトラフルオロエチレンの量が5重量部未満の場合は、所望の摺動特性が得られず、30重量部を超える場合は、機械的性質および成形性が低下する。
【0012】
次に、本発明で使用される導電性カーボンブラックについて説明する。導電性カーボンブラックは、市販の導電性カーボンブラックでよく、その一例を示せば、ライオンアクゾ社製「ケッチェンブラック」(商品名)が例示される。導電性カーボンブラックの使用割合は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して1〜20重量部、好ましくは3〜10重量部である。
【0013】
導電性カーボンブラックの量が1重量部未満の場合は、所望の導電性が得られず、20重量部を超える場合は、導電性カーボンブラックがポリアセタール樹脂へ均一に配合されず、且つ、機械的性質、熱安定性および成形性が低下する。
【0014】
次に、本発明で使用される熱安定剤としてのキノリン化合物について説明する。キノリン化合物としては、下記式一般式(1)、(2)又は(3)で表される化合物が好適に使用される。
【0015】
【化5】
【0016】
一般式(1)中、R1、R2およびR3は、それぞれ、炭素数1〜3のアルキル基、好ましくは炭素数1〜2のアルキル基を示し、Zは―OR4を示し、R4は、炭素数1〜3のアルキル基、好ましくは炭素数1〜2のアルキル基を示す。
【0017】
【化6】
【0018】
一般式(2)中、R1、R2およびR3は、それぞれ、炭素数1〜3のアルキル基、好ましくは炭素数1〜2のアルキル基を示し、nは整数であり、好ましくは1〜9の整数である。
【0019】
【化7】
【0020】
一般式(3)中、AおよびDは、それぞれ、水素原子、水酸基または炭素数1〜3のアルキル基、好ましくは炭素数1〜2のアルキル基を示し、Bは、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基、好ましくは炭素数1〜2のアルキル基を示し、Eは水素原子または水酸基を示し、Gは、水素原子、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、好ましくは炭素数1〜2のアルキル基または炭素数1〜3のアルコキシ基、好ましくは炭素数1〜2のアルコキシ基を示し、JおよびLは、それぞれ、水素原子または水酸基を示す。但し、キノリン環は少なくとも5個の水素原子を有する。
【0021】
キノリン化合物としては、2、2、4ートリメチルー1、2ージハイドロキノリン重合物、6ーエトキシー2、2、4ートリメチルー1、2ージハイドロキノリン、8ーキノリノール又はキノリンが好ましい。
【0022】
次に、本発明で使用される熱安定剤としてのアミド化合物について説明する。
アミド化合物としては、下記一般式(4)で表される化合物が好適に使用される。
【0023】
【化8】
【0024】
一般式(4)中、Rは、カルボン酸残基、好ましくは、炭素数2〜23の飽和もしくは不飽和炭化水素基、または、ビニル重合体もしくはビニル共重合体の基本単位を有する基を示し、nは1〜6の整数であり、xおよびyは0又は1〜10の整数である。但し、xが0の場合は、yは0ではない。
【0025】
一般式(4)で表されるアミド化合物としては、酪酸アミド、カプロン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド等の高級脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物が好ましく、特に、ラウリン酸ジエタノールアミド又はステアリン酸ジエタノールアミドが好ましい。
【0026】
次に、本発明で使用される熱安定剤としてのアミン化合物について説明する。
斯かるアミン化合物としては、4、4’−ジオクチルジフェニルアミン、4、4’−ビス(α、α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、N、N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N、N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、アルドール−α−ナフチルアミン等が挙げられる。
【0027】
上記の各熱安定剤の使用割合は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.1〜15重量部、好ましくは1〜5重量部である。熱安定剤の量が0.1重量部未満の場合は、十分な熱安定性が得られずに成形性が著しく悪くなり、射出成形によって所望の小型機構部品および内蔵部品を得ることが出来ない。熱安定剤の量が15重量部を超える場合は、機械的性質が低下し且つ成形品の表面に熱安定剤が析出する欠点がある。
【0028】
次に、本発明で使用される成形性改良剤について説明する。成形性改良剤としては、下記の(A)、(B)、(C)、(D)、(E)および(F)の少なくとも1種の化合物が好適に使用される。
【0029】
(A)多価アルコールの脂肪酸エステル、(B)多価アルコールの脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、(C)多価アルコールとホウ酸との錯化合物の脂肪酸エステル、(D)多価アルコールとホウ酸との錯化合物の脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、(E)ポリオキシエチレンアルキルアミン、(F)ポリオキシエチレンアルキルアミンの脂肪酸エステルが挙げられる。
【0030】
上記の各化合物における脂肪酸エステルの脂肪酸成分としては、特に限定されるものではないが、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸またはオレイン酸の使用が好ましい。また、上記の各化合物における多価アルコール成分としては、特に限定されるものではないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリットまたはソルビットの使用が好ましい。上記の各化合物におけるアルキル基は、炭素数2〜23のアルキル基が好ましい。
【0031】
上記の各化合物の市販品(東邦化学工業社製品)としては、(A)ソルビタン脂肪酸エステル「ソルボンSシリーズ」(商品名)、例えば、ソルビタンモノステアレート「ソルボンSー60」(商品名)、(B)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル「ソルボンTシリーズ」(商品名)、(C)グリセロールボレート脂肪酸エステル「エマルボンSシリーズ」(商品名)、例えば、ジグリセリンボレートセスキステアレート「エマルボンSー66」(商品名)(D)ポリオキシエチレングリセロールボレート脂肪酸エステル「エマルボンTシリーズ」(商品名)、(E)ポリオキシエチレンアルキルアミン「アンステックスSA−60」(商品名)、(F)ポリオキシエチレンアルキルアミンモノステアレート「アンステックスSA−300」(商品名)、グリセリンモノステアレートとステアリルジエタノールアミンを主成分とする混合物「アンステックスSP−20P」(商品名)等が挙げられる。
【0032】
上記の各成形性改良剤の使用割合は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。成形性改良剤の量が0.1重量部未満の場合は、押出機を使用してペレットを作製する際、押出機から押出されるストランドにボイドが発生して、ストランド切れを生じ、安定したペレット作製が困難となると共に得られたペレットは多孔質となる。また、この様なペレットを使用して、射出成形によって成形品を製造すると、成形品の内部にボイドが発生したりして、その重量、寸法および機械的強度がばらついたりして、所望の小型機構部品および内蔵部品を得ることが困難となる。成形性改良剤の量が10重量部を超える場合は、機械的性質が低下する。
【0033】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、(a)ポリアセタール樹脂に(b)ポリテトラフルオロエチレン、(c)カーボンブラック、(d)キノリン化合物、アミド化合物およびアミン化合物の群から選択された少なくとも1種の熱安定剤および(e)多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールとホウ酸との錯化合物の脂肪酸エステル、当該脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンアルキルアミンおよびポリオキシエチレンアルキルアミンの脂肪酸エステルの群から選択された少なくとも1種の成形性改良剤を配合して成り、導電性、機械的性質、摺動特性および熱安定性等の良好な特性、優れた成形加工性を有するが、更に、上述の成分に加えてリン酸塩等の潤滑助剤および/または炭化水素系ワックス等の潤滑剤を配合することにより、一層優れた摺動特性を発揮する。
【0034】
リン酸塩は、それ自体では、例えば、黒鉛や二硫化モリブデンの様な潤滑性を示さないが、ポリテトラフルオロエチレンと一緒にポリアセタール樹脂に配合されることにより、摺動の際、相手材表面(摺動面)へのポリテトラフルオロエチレンの潤滑被膜の造膜性を助長し、且つ、形成された潤滑被膜の保持性および耐久性を高めるという効果を発揮する。
【0035】
リン酸塩としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の第三リン酸塩、第二リン酸塩、ピロリン酸塩、亜リン酸塩またはメタリン酸塩が挙げられる。具体的には、リン酸三リチウム、リン酸水素二リチウム、ピロリン酸リチウム、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウム又はピロリン酸カルシウムが好ましい。
【0036】
リン酸塩の配合割合は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して、通常15重量部以下、好ましくは0.1〜15重量部、更に好ましくは0.5〜10重量部である。15重量部を超える場合は、機械的性質および成形性が低下する。
【0037】
炭化水素系ワックスは、摺動特性のうち、特に摩擦係数の低下に効果を発揮する。炭化水素系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0038】
炭化水素系ワックスの配合割合は、ポリアセタール樹脂100重量部に対して、通常10重量部以下、好ましくは0.1〜10重量部、更に好ましくは0.5〜7重量部、特に好ましくは1〜5重量部である。10重量部を超える場合は、ポリアセタール樹脂の有する機械的性質等が損なわれる。
【0039】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は優れた成形性を有し、且つ、当該ポリアセタール樹脂組成物から成る成形部材は、体積固有抵抗値が1〜107Ω・cm、すべり速度10m/min、荷重10kgf/cm2、試験時間72時間のラジアルジャーナル試験における摩擦係数が0.12〜0.30で摩耗量が80μm以下の優れた摺動特性を示す。
【0040】
斯かる本発明のポリアセタール樹脂組成物は、オーデイオ、ビデオテープレコーダー、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ等の電子機器の小型で優れた摺動特性と高い導電性と機械的強度が求められている機構部品および内蔵部品、例えば、軸受、カム、歯車、滑り板、ガイド部材等の摺動部材の成形に適している。
【0041】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。なお、ポリアセタール樹脂組成物および摺動部材の評価は以下の方法で行った。
【0042】
(1)体積固有抵抗値:
成形物の両端に導電性塗料を塗布し、JIS K6911に準拠して乾燥後両端の抵抗を測定した。
【0043】
(2)成形性(1):
押出機(35mmφ)を使用して混合紛を溶融混練しペレットを作製した。ストランドの切れの有無とペレットの表面状態を目視してボイドの発生の有無を調べ、表1の評価基準にて評価した。
【0044】
【表1】
◎: 優
○: 良
△: 可
×: 不可
【0045】
(3)成形性(2):
射出成形機(住友重機械工業社製、SG−50)を使用してペレットから試験片を成形した。成形品の金型からの離型性および表面状態を目視し、表2の評価基準にて評価した。
【0046】
【表2】
◎: 優
○: 良
△: 可
×: 不可
【0047】
(4)寸法安定性:
射出成形機(住友重機械工業社製、SG−50)を使用してペレットから試験片(内径:10mm、外径:14mm、長さ:10mm)を50個成形した。成形品の寸法のばらつきを測定し、表3の評価基準にて評価した。
【0048】
【表3】
◎: 優(ばらつきが20μm未満)
○: 可(ばらつきが20〜40μm)
×: 不可(ばらつきが40μmを超える)
【0049】
(5)摺動性(摩擦係数、摩耗量)
ラジアルジャーナル試験機を用いて、表4に記載の条件下で摩擦係数および摩耗量を測定した。
【0050】
【表4】
すべり速度:10m/min
荷重 :10kg/cm2
試験時間 :72時間(Hr)
試験片 :円筒状摺動部材(内径10mm、外径14mm、長さ10mm)
相手材 :機械構造用炭素鋼(S45C)
潤滑 :無潤滑
【0051】
実施例1
ポリアセタール樹脂として、「ジュラコンM90」(ポリプラスチックス社製)100重量部に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)として、「ルブロンL5」(ダイキン工業社製)10重量部、導電性カーボンブラックとして、「ケッチェンブラックEC600JD」(ライオン・アクゾ社製)3重量部、熱安定剤として、2、2、4ートリメチルー1、2ージハイドロキノリン重合物「ノンフレックス」(精工化学社製)1重量部および成形性改良剤として、ポリオキシエチレンアルキルアミンモノステアレート「アンステックスSA−300」(東邦化学工業社製)0.1重量部をヘンシェルミキサーで混合し、二軸押出機(35mmφ)で溶融混練してペレットを得た。次いで、射出成形機(住友重機械工業社製「SGー50」)を使用してペレットから試験片を成形し、特性を測定した。結果を表5に示す。
【0052】
実施例2〜24、比較例1〜4
実施例1において、表5〜表14に示す様に組成を変更した以外は、実施例1と同様にして試験片を成形した。成分組成および諸特性を表5〜表14に示す。
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】
【表9】
【0058】
【表10】
【0059】
【表11】
【0060】
【表12】
【0061】
【表13】
【0062】
【表14】
【0063】
表中、’TMDHQ’は2、2、4ートリメチルー1、2ージハイドロキノリン重合物を示し、’SDEA’はステアリン酸ジエタノールアミドを示し、’DODPA’は4、4’−ジオクチルジフェニルアミンを示し、’BMBDPA’は4、4’−ビス(α、α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンを示し、’SA−300’はポリオキシエチレンアルキルアミンモノステアレート「アンステックスSA−300」(東邦化学工業社製)を示し、’SP−20P’はグリセリンモノステアレートとステアリルジエタノールアミンを主成分とする混合物「アンステックスSP−20P」(東邦化学工業社製)を示し、’S−60’はソルビタンモノステアレート「ソルボンSー60」(東邦化学工業社製)を示し、’S−66’はジグリセリンボレートセスキステアレート「エマルボンSー66」(東邦化学工業社製)を示す。
【0064】
上述の試験結果から、本発明の樹脂組成物は特に成形性と寸法安定性に優れており、成形品の外観が良好であり、且つ、当該樹脂組成物を成形して成る摺動部材は、低い摩擦係数および少ない摩耗量を示し摺動特性に優れていた。他方、比較例1乃至4の樹脂組成物から成る摺動部材は、低い摩擦係数および少ない摩耗量を示すものの、押出成形時に、ストランドにボイドが発生して、ストランド切れが生じ、ペレットの生産が困難となった。さらに、成形品はボイドの影響により、機械的性質が低下し、寸法のばらつきも大きくなり、外観も本発明の成形品に比較して良いものではなっかた。
【0065】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、優れた摺動特性、導電性、機械的性質、熱安定性および成形性、特に、小型の摺動部材の製造に対しての優れた成形性と寸法安定性を有するポリアセタール樹脂組成物が提供される。
Claims (5)
- (a)ポリアセタール樹脂100重量部、(b)ポリテトラフルオロエチレン5〜30重量部、(c)カーボンブラック1〜20重量部、(d)キノリン化合物、アミド化合物およびアミン化合物の群から選択された少なくとも1種の熱安定剤0.1〜15重量部、および(e)多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールとホウ酸との錯化合物の脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンの脂肪酸エステルの群から選択された少なくとも1種の成形性改良剤0.1〜10重量部とから成ることを特徴とするポリアセタール樹脂組成物。
- キノリン化合物が下記一般式(1)、(2)又は(3)で表される化合物である請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
- 多価アルコール成分が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリットまたはソルビットからなり、脂肪酸成分が、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸またはオレイン酸からなる請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
- 追加成分として、ポリアセタール樹脂100重量部に対して、15重量部以下のリン酸塩および/または10重量部以下の炭化水素系ワックスを含有する請求項1〜4の何れかに記載のポリアセタール樹脂組成物。
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