JP4582699B2 - 導電性エンドレスベルト - Google Patents

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Description

本発明は、複写機、プリンター等の電子写真装置や静電記録装置等における静電記録プロセスにおいて、表面に静電潜像を保持した潜像保持体等の画像形成体表面に現像剤を供給して形成されたトナー像を、紙等の記録媒体へと転写する際に用いられる導電性エンドレスベルト(以下、単に「ベルト」とも称する)、その製造方法およびこれを用いた画像形成装置に関する。
従来から、複写機、プリンター等における静電記録プロセスでは、まず、感光体(潜像保持体)の表面を一様に帯電させ、この感光体に光学系から映像を投射して光の当たった部分の帯電を消去することによって静電潜像を形成し、次いで、この静電潜像にトナーを供給してトナーの静電的付着によりトナー像を形成し、これを紙、OHP、印画紙等の記録媒体へと転写することにより、プリントする方法が採られている。
この場合、カラープリンターやカラー複写機においても、基本的には前記プロセスに従ってプリントが行われるが、カラー印刷の場合には、マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの4色のトナーを用いて色調を再現するもので、これらのトナーを所定割合で重ね合わせて必要な色調を得るための工程が必要であり、この工程を行うためにいくつかの方式が提案されている。
まず、第1には、モノクロ印刷を行う場合と同様に、感光体上にトナーを供給して静電潜像を可視化する際に、前記マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの4色のトナーを順次重ねていくことにより現像を行い、感光体上にカラーのトナー像を形成する多重現像方式がある。この方式によれば比較的コンパクトに装置を構成することが可能であるが、この方式では階調の制御が非常に難しく、高画質が得られないという問題点がある。
第2に、4つの感光ドラムを設け、各ドラムの潜像を夫々マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックのトナーで現像することにより、マゼンタによるトナー像、イエローによるトナー像、シアンによるトナー像およびブラックによるトナー像の4つのトナー像を形成し、これらトナー像が形成された感光ドラムを1列に並べて各トナー像を紙等の記録媒体に順次転写して記録媒体上に重ねることにより、カラー画像を再現するタンデム方式がある。この方式は、良好な画像が得られるものの、4つの感光ドラムと、各感光ドラムごとに設けられた帯電機構および現像機構が1列に並べられた状態となり、装置が大型化するとともに高価なものとなる。
図2にタンデム方式の画像形成装置の印字部構成例を示す。感光体ドラム1、帯電ロール2、現像ロール3、現像ブレード4、トナー供給ロール5およびクリーニングブレード6で構成する印字ユニットをイエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックBの各トナーに対応して4個並べており、駆動ローラ(駆動部材)9により循環駆動されて転写搬送ベルト10で搬送した用紙上に、トナーを順次転写しカラー画像を形成する。転写搬送ベルトの帯電および除電は夫々帯電ロール7および除電ロール8で行う。また、用紙をベルトへ吸着させるための用紙帯電には吸着ローラ(図示せず)が使用される。これらの対応により、オゾンの発生を抑えることができる。吸着ローラでは、用紙を搬送路から転写搬送ベルトに乗せるとともに、転写搬送ベルトへの静電吸着を行う。また、転写後の用紙分離は、転写電圧を低くすることにより用紙と転写搬送ベルトの吸着力を弱くして、曲率分離のみで行うことができる。
転写搬送ベルト10の材料としては抵抗体と誘電体があり、夫々に長所、短所を持っている。抵抗体ベルトは電荷の保持が短時間であるため、タンデム型の転写に用いた場合、転写での電荷注入が少なく4色の連続する転写でも比較的電圧の上昇が少ない。また、次の用紙の転写に繰り返して使用されるときも電荷が放出されており、電気的なリセットは必要としない。しかし、環境変動により抵抗値が変化するため、転写効率に影響すること、用紙の厚さや幅の影響を受けやすいことなどが短所となっている。
一方、誘電体ベルトの場合は注入された電荷の自然放出はなく、電荷の注入、放出とも電気的にコントロールしなければならない。しかし、安定に電荷が保持されるので、用紙の吸着が確実で高精度な紙搬送が行える。誘電率は温湿度への依存性も低いため、環境に対しても比較的安定な転写プロセスとなる。欠点は、転写が繰り返されるごとにベルトに電荷が蓄積されるため、転写電圧が高くなることである。
第3に、紙等の記録媒体を転写ドラムに巻き付けてこれを4回転させ、周回ごとに感光体上のマゼンタ、イエロー、シアン、ブラックを順次記録媒体に転写してカラー画像を再現する転写ドラム方式もある。この方式によれば比較的高画質が得られるが、記録媒体が葉書等の厚紙である場合には、これを前記転写ドラムに巻き付けることが困難であり、記録媒体種が制限されるという問題点がある。
前記多重現像方式、タンデム方式および転写ドラム方式に対して、良好な画質が得られ、かつ装置が特に大型化するようなこともなく、しかも記録媒体種が特に制限されるようなこともない方式として、中間転写方式が提案されている。
即ち、この中間転写方式は、感光体上のトナー像を一旦転写保持するドラムやベルトからなる中間転写部材を設け、この中間転写部材の周囲にマゼンタによるトナー像、イエローによるトナー像、シアンによるトナー像およびブラックによるトナー像を形成した4つの感光体を配置して4色のトナー像を中間転写部材上に順次転写することにより、この中間転写部材上にカラー画像を形成し、このカラー画像を紙等の記録媒体上に転写するものである。従って、4色のトナー像を重ね合わせて階調を調整するものであるから、高画質を得ることが可能であり、かつタンデム方式のように感光体を1列に並べる必要がないので装置が特に大型化することもなく、しかも記録媒体をドラムに巻き付ける必要もないので記録媒体種が制限されることもないものである。
中間転写方式によりカラー画像の形成を行う装置として、中間転写部材として無端ベルト状の中間転写部材を用いた画像形成装置を図3に例示する。
図3中、11はドラム状の感光体であり、図中矢印方向に回転するようになっている。この感光体11は、一次帯電器12によって帯電され、次いで画像露光13により露光部分の帯電が消去され、第1の色成分に対応した静電潜像がこの感光体11上に形成され、更に静電潜像が現像器41により第1色のマゼンタトナーMで現像され、第1色のマゼンタトナー画像が感光体11上に形成される。次いで、このトナー画像が、駆動ローラ(駆動部材)30により循環駆動されて感光体11と接触しながら循環回転する中間転写部材20に転写される。この場合、感光体11から中間転写部材20への転写は、感光体11と中間転写部材20とのニップ部において、中間転写部材20に電源61から印加される一次転写バイアスにより行われる。この中間転写部材20に第1色のマゼンタトナー画像が転写された後、前記感光体11はその表面がクリーニング装置14により清掃され、感光体11の1回転目の現像転写操作が完了する。以降、感光体が3回転し、各周回ごとに現像器42〜44を順次用いて第2色のシアントナー画像、第3色のイエロートナー画像、第4色のブラックトナー画像が順次感光体11上に形成され、これが周回ごとに中間転写部材20に重畳転写され、目的のカラー画像に対応した合成カラートナー画像が中間転写部材20上に形成される。なお、図3の装置にあっては、感光体11の周回ごとに現像器41〜44が順次入れ替わってマゼンタトナーM、シアントナーC、イエロートナーY、ブラックトナーBによる現像が順次行われるようになっている。
次に、前記合成カラートナー画像が形成された中間転写部材20に転写ローラ25が当接し、そのニップ部に給紙カセット19から紙等の記録媒体26が給送される。これと同時に二次転写バイアスが電源29から転写ローラ25に印加され、中間転写部材20から記録媒体26上に合成カラートナー画像が転写されて加熱定着され、最終画像となる。合成カラートナー画像を記録媒体26へと転写した後の中間転写部材20は、表面の転写残留トナーがクリーニング装置35により除去され、初期状態に戻り次の画像形成に備えるようになっている。
また、タンデム方式と中間転写方式とを組み合わせたタンデム中間転写方式もある。図4に、無端ベルト状のタンデム中間転写部材を用いてカラー画像の形成を行うタンデム中間転写方式の画像形成装置を例示する。
図示する装置においては、感光体ドラム52a〜52d上の静電潜像を夫々イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックにより現像する第1現像部54a〜第4現像部54dが、タンデム中間転写部材50に沿って順次配置されており、このタンデム中間転写部材50を図中の矢印方向に循環駆動させて、各現像部54a〜54dの感光体ドラム52a〜52d上に形成された4色のトナー像を順次転写することにより、このタンデム中間転写部材50上にカラーのトナー像を形成し、このトナー像を紙等の記録媒体53上に転写することにより、プリントアウトを行う。
なお、図中、符号55は、タンデム中間転写部材50を循環駆動するための駆動ローラ若しくはテンションローラを示し、符号56は記録媒体送りローラ、符号57は記録媒体送り装置、符号58は記録媒体上の画像を加熱等により定着させる定着装置を示す。また、符号59はタンデム中間転写部材50に電圧を印加する電源装置(電圧印加手段)を示し、この電源装置59は、トナー像を、感光ドラム52a〜52dから上記タンデム中間転写部材50に転写する場合と、タンデム中間転写部材50から記録媒体53上に転写する場合とで、印加する電圧の正負を反転させることができるようになっている。
上記各種画像形成装置において、転写搬送ベルト10や中間転写部材20、タンデム中間転写部材50等として使用される導電性エンドレスベルトとしては、従来、半導電性の樹脂フィルムベルトと、繊維補強体を有するゴムベルトとが主に用いられている。このうち樹脂フィルムベルトとしては、例えば、特許文献1に、熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂、または、これと他の熱可塑性樹脂とのポリマーアロイ若しくはポリマーブレンドを基材として用いた導電性エンドレスベルトが記載されている。
特開2002−132053号公報(特許請求の範囲等)
上記タンデム方式、中間転写方式、タンデム中間転写方式等の画像形成装置においては、いずれも導電性エンドレスベルトに対し、高い機械的強度を備えることに加え、表面光学特性として高光沢度を有し、かつ、良好な電気伝導性およびその安定性を備えることが要求される。上記特許文献1に記載の技術によれば、所定の良好な強度、特には屈曲耐久性および耐クリープ性と、寸法安定性とを兼ね備えた導電性エンドレスベルトが得られるが、この文献中では光沢度については言及されていない。また、近年の画像形成装置の高性能化に伴って、特に、耐久使用時における耐屈曲性をより高度に満足できる導電性エンドレスベルトを実現することが求められていた。
そこで本発明の目的は、高光沢度を備えたベルトであって、機構面で繰り返し連続使用に耐える強度、特には屈曲耐久性を備え、かつ、安定した電気伝導性をも備える導電性エンドレスベルトを提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、基材として熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂とともに所定の熱特性を有する熱可塑性樹脂を用い、その重量比率を所定に規定することで、上記要求特性、特には、屈曲耐久性を高度に満足し得る導電性エンドレスベルトが得られることを見出して、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の導電性エンドレスベルトは、静電吸着により保持した記録媒体を、駆動部材により循環駆動されて、4種の画像形成体に搬送し、各トナー像を該記録媒体に順次転写するタンデム方式の転写、搬送用導電性エンドレスベルトにおいて、
熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂、および、温度270℃におけるMFR値が25〜80g/10minである熱可塑性ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂からなる基材と、導電性材料とを含み、かつ、前記熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂と熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂との重量比率が95/5〜55/45の範囲内であることを特徴とするものである。
また、本発明の他の導電性エンドレスベルトは、画像形成体と記録媒体との間に配設され、駆動部材により循環駆動されて、前記画像形成体表面に形成されたトナー像を一旦自己の表面に転写保持し、これを記録媒体へと転写する中間転写部材用の導電性エンドレスベルトにおいて、
熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂、および、温度270℃におけるMFR値が25〜80g/10minである熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂からなる基材と、導電性材料とを含み、かつ、前記熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂と熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂との重量比率が95/5〜55/45の範囲内であることを特徴とするものである。
さらに、本発明のさらに他の導電性エンドレスベルトは、4種の画像形成体と記録媒体との間に配設され、駆動部材により循環駆動されて、前記4種の画像形成体表面に形成されたトナー像を一旦自己の表面に順次転写保持し、これを記録媒体へと転写するタンデム中間転写部材用の導電性エンドレスベルトにおいて、
熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂、および、温度270℃におけるMFR値が25〜80g/10minである熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂からなる基材と、導電性材料とを含み、かつ、前記熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂と熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂との重量比率が95/5〜55/45の範囲内であることを特徴とするものである。
本発明においては、前記熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂が、熱可塑性ポリブチレンナフタレート(PBN)樹脂および熱可塑性ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂のうちのいずれか一方または双方であることが好ましい。
本発明の導電性エンドレスベルトは、好適には、前記導電性材料としてカーボンブラックを、前記基材100重量部に対し5〜30重量部の範囲内で含有する。また、その体積抵抗率は、102Ωcm〜1013Ωcmの範囲内であることが好ましい。
また、本発明の導電性エンドレスベルトの製造方法は、上記本発明の導電性エンドレスベルトの製造方法であって、前記基材と導電性材料とを含む樹脂組成物を、押出し成形する工程を含むことを特徴とするものである。
さらに、本発明の画像形成装置は、上記本発明の導電性エンドレスベルトを用いたことを特徴とするものである。
本発明によれば、上記構成としたことで、熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂と所定のエステル結合を有する熱可塑性樹脂との組み合わせにより優れた屈曲耐久性を実現するとともに、良好な相溶性に基づく高光沢度をも実現した、高性能の導電性エンドレスベルトを得ることが可能となった。また、本発明のベルトは、導電性材料の配合により、安定した電気伝導性をも備えている。さらに、本発明においては特に、押出し成形を用いて作製した場合に、ベルトの上記要求性能をより向上させることが可能となる。従って、かかる本発明のベルトを用いた画像形成装置によれば、長期にわたる使用においても不良を生ずることなく、良好な画像を提供することができる。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
導電性エンドレスベルトには、一般に、ジョイントありのものとジョイントなしのもの(いわゆるシームレスベルト)とがあるが、本発明においてはいずれのものであってもよい。好ましくはシームレスベルトである。本発明の導電性エンドレスベルトは、前述したように、タンデム方式、中間転写方式およびタンデム中間転写方式の転写部材等として用いることができるものである。
本発明の導電性エンドレスベルトが、例えば、図2に参照符号10で示す転写搬送ベルトの場合、駆動ローラ9等の駆動部材により駆動され、これに伴い搬送される記録媒体上にトナーが順次転写され、カラー画像が形成される。
また、本発明の導電性エンドレスベルトが、例えば、図3に参照符号20で示す中間転写部材の場合、これを駆動ローラ30等の駆動部材により循環駆動させ、感光体ドラム(潜像保持体)11と紙等の記録媒体26との間に配設することで、前記感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像を一旦転写保持し、次いでこれを記録媒体26へと転写する。なお、図3の装置は、上述したように、中間転写方式によりカラー印刷を行うものである。
さらに、本発明の導電性エンドレスベルトが、例えば、図4に参照符号50で示すタンデム中間転写部材の場合、感光体ドラム52a〜52dを備える現像部54a〜54dと紙等の記録媒体53との間に配設されて、駆動ローラ55等の駆動部材により循環駆動され、各感光体ドラム52a〜52dの表面に形成された4色のトナー像を一旦転写保持し、次いでこれを記録媒体53へと転写することで、カラー画像を形成する。
本発明の導電性エンドレスベルトは、熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂、および、それ以外のエステル結合を有する熱可塑性樹脂からなる基材と、導電性材料とを含むものであって、かかる2種類の基材樹脂の重量比率を所定に規定した点に特徴を有する。基材として、熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂とともに所定のエステル結合を有する熱可塑性樹脂を用いたことにより、相溶性を良好にすることができ、得られるベルトにおいて高光沢度を実現することが可能となる。
本発明に用いる熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂は、耐衝撃性、寸法安定性および耐侯性に優れ、かつ、弾性回復特性が良好なエンプラであり、市場で容易に入手することができる。具体的には、例えば、熱可塑性ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂や熱可塑性ポリブチレンナフタレート(PBN)樹脂等を好適に用いることができ、これらを併用することも好ましい。
また、本発明に係るエステル結合を有する熱可塑性樹脂は、温度270℃におけるMFR(メルトフローレート)値が3〜80g/10min、好ましくは5〜40g/10minであるものを用いることが必要であり、上記MFR値がこの範囲よりも高いと耐屈曲性が悪化してしまい、一方、小さいと相溶性が悪くなるため、いずれにしても本発明の所期の効果を得ることができない。ここで、温度270℃におけるMFR値を基準とするのは、本発明のベルトの主材料となる上記熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂の融点を考慮すると、溶融混練およびベルト成形時における温度が270℃付近となるためである。かかるエステル結合を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリアルキレンテレフタレート樹脂を好適に用いることができ、具体的には例えば、温度270℃におけるMFR値が3〜45g/10minである熱可塑性ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂や、温度270℃におけるMFR値が25〜80g/10minである熱可塑性ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂を好適に挙げることができる。
本発明においては、上記熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂とエステル結合を有する熱可塑性樹脂との重量比率を、95/5〜55/45の範囲内、好ましくは80/20〜60/40の範囲内とする。上記エステル結合を有する熱可塑性樹脂の配合量が、上記範囲よりも少ないと耐屈曲性が悪化してしまい、一方、多いと表面性が悪化するため、いずれにしても本発明の所期の効果を得ることができない。
また、本発明のベルトに用いる導電性材料としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウムの過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、ハロゲン化ベンジル塩(臭化ベルジル塩、塩化ベンジル塩等)等の第4級アンモニウムなどの陽イオン界面活性剤;脂肪族スルホン酸、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸塩、高級アルコール燐酸エステル塩等の陰イオン界面活性剤;各種ベタイン等の両性イオン界面活性剤;高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等の非イオン性帯電防止剤などの帯電防止剤、LiCF2SO2、NaClO4、LiBF4、NaCl等の周期律表第1族の金属塩;Ca(ClO42等の周期律表第2族の金属塩;ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン;酸化処理を施したカラーインク用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト等;酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅等の金属および金属酸化物;ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマーなどを挙げることができる。本発明においては、特に、導電性材料としてカーボンブラックを用いることが好ましい。
これらの導電性材料の添加量は、基材100重量部に対して好ましくは0.01〜30重量部、より好ましくは0.1〜20重量部程度であるが、特に、カーボンブラックを5〜30重量部の範囲内で用いることが好適である。これにより、ベルトの体積抵抗率を102Ωcm〜1013Ωcmの範囲内程度とすることができる。
また、本発明の導電性エンドレスベルトには、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の成分に加えて他の機能性成分を適宜添加することも可能であり、例えば、各種充填材、カップリング剤、酸化防止剤、滑剤、表面処理剤、顔料、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、中和剤、発泡剤、架橋剤等を適宜配合することができる。さらに、着色剤を添加して着色を施してもよい。
本発明の導電性エンドレスベルトの厚さは、転写搬送ベルトまたは中間転写部材等の形態に応じて適宜選定されるものであるが、好ましくは50〜200μmの範囲内である。また、その表面粗さとしては、好適には、JIS10点平均粗さRzで10μm以下、特に6μm以下、更には3μm以下とする。
また、駆動時における導電性エンドレスベルトの回転位置などの制御を光センサーにより行う場合には、ベルト表面の光沢度が重要となる。かかる光による位置制御を確実に行うためには、ベルト表面の光沢度が50〜90、特には、70〜80の範囲内であることが好ましい。さらに、ベルトを、例えば、タンデム方式の転写搬送ベルト10として用いる場合、印字ユニットをベルト上に吸着させて印字することから、繰り返し印刷時においては数万枚もの用紙をベルト上に通紙することになる。従って、繰り返し印刷後においても位置制御を確実に行うためには、用紙、例えば、タルク紙、タンカル紙、シリカ紙等の表面コート紙の繊維によるベルト表面の傷つきを防止して、光沢度の低下を防止することが重要となる。本発明のベルトに基材として用いるポリアルキレンナフタレートは高い硬度を有するため、かかる傷付きの防止に関しては有利であるが、特には、他のエステル結合を有する熱可塑性樹脂や導電性材料等の配合を調整することにより、通紙後における光沢度の低下を、赤外線反射率の割合で0.03〜0.05%、特には、0.04〜0.05%の範囲内とすることが好ましい。なお、光沢度は市販の光沢計で、赤外線反射率は市販の光反射率測定機で、それぞれ測定することが可能である。
また、本発明の導電性エンドレスベルトには、図1に一点鎖線で示すように、図2の画像形成装置における駆動ローラ9または図3の駆動ローラ30などの駆動部材と接触する側の面に、該駆動部材に形成した嵌合部(図示せず)と嵌合する嵌合部を形成してもよく、本発明の導電性エンドレスベルトは、このような嵌合部を設け、これを駆動部材に設けた嵌合部(図示せず)と嵌合させて走行させることにより、導電性エンドレスベルトの幅方向のずれを防止することができる。
この場合、前記嵌合部は、特に制限されるものではないが、図1に示すように、ベルトの周方向(回転方向)に沿って連続する凸条とし、これを駆動ローラ等の駆動部材の周面に周方向に沿って形成した溝に嵌合させるようにすることが好ましい。
なお、図1(a)では、1本の連続する凸条を嵌合部として設けた例を示したが、この嵌合部は多数の凸部をベルトの周方向(回転方向)に沿って一列に並べて突設してもよく、また嵌合部を2本以上設けたり(図1(b))、ベルトの幅方向中央部に設けてもよい。更に、嵌合部として図1に示した凸条ではなく、ベルトの周方向(回転方向)に沿った溝を設け、これを前記駆動ローラ等の駆動部材の周面に周方向に沿って形成した凸条と嵌合させるようにしてもよい。
また、本発明の導電性エンドレスベルトを用いた本発明の画像形成装置としては、図2に示すタンデム方式のものや図3に示す中間転写方式のもの、または、図4に示すタンデム中間転写方式のものを例示することができるが、これらには限定されない。尚、図3の装置の場合、本発明の中間転写部材20を回転させる駆動ローラまたは駆動ギアには適宜電源61から電圧を印加することができ、この場合の電圧は直流のみの印加または直流に交流を重量する印加など、印加条件は適時選択することができる。
さらに、本発明の導電性エンドレスベルトの製造方法は、上記基材と導電性材料とを含む樹脂組成物を押出し成形する工程を含むものであればよく、押出し成形により作製された本発明のベルトは、特に、上記要求性能に優れたものとなる。具体的には、例えば、二軸混練機により基材と導電性材料等の機能性成分とからなる樹脂組成物を混練し、得られた混練物を環状ダイスを使って押出し成形することにより製造することができる。または、静電塗装等の粉体塗装法、ディップ法または遠心注型法も好適に採用することができる。
以下、本発明を、実施例により具体的に説明する。
実施例1〜7および比較例1〜4
下記の表1、2中に夫々示す配合にて、各実施例および比較例の導電性エンドレスベルトを作製した。具体的には、各配合成分を二軸混練機により溶融混練して、得られた混練物を環状ダイスを用いて押出し成形することにより、内径220mm、厚さ100μm、幅250mmの寸法を有する導電性エンドレスベルトを得た。
各実施例および比較例のベルトにつき、電気抵抗の測定を、温度20℃、相対湿度50%にて、測定電圧100Vまたは500Vのいずれかで、夫々行った。測定装置としては、アドバンテスト(ADVANTEST)社製の、抵抗計R8340AにサンプルチャンバーR12704Aを接続したものを用いた。また、各ベルトの耐折れ回数を、東洋精機(株)製の耐揉疲労試験機を用いて測定した。さらに、光沢度については、堀場製作所製、ハンディ光沢計IG−320形を用いて測定した。これらの結果を、目視による外観評価の結果と併せて下記の表1、2中に示す。なお、外観評価は、良好なものを○とし、ベルト表面にスジ状の欠陥が確認できる場合を△とした。
また、各実施例および比較例で用いた基材樹脂の温度270℃におけるMFR値を、下記の表3中にまとめて示す。なお、MFR値の測定は、JIS K 7210に準拠して、温度270℃、予熱10分、荷重5kgの条件にて行った。
さらに、各実施例および比較例のベルトの赤外線反射率を、初期と、市販のカラーレーザービームプリンター(LBP、タンデム方式)で3万枚通紙した後の双方において、光反射率測定機としてU−4000型分光光度計((株)日立製作所製)を用いて測定した。通紙用紙には、市販の表面コート紙(タンカル紙)を用いた。この結果を、併せて下記の表1、2中に示す。
Figure 0004582699
*1)PBN:帝人化成(株)製、商品名 TQB−OT
*2)PEN:帝人化成(株)製、商品名 TN8065S
*3)PET(A):ユニチカ(株)製、商品名 SA−1206
*4)PET(B):三菱レイヨン(株)製、商品名 KC−251
*5)PBT(A):ポリプラスチックス(株)製、商品名 800FP
*6)PBT(B):カネボウ合繊(株)製、商品名 128
*7)PBT(C):カネボウ合繊(株)製、商品名 124
*8)PBT(D):カネボウ合繊(株)製、商品名 120
*9)カーボンブラック:電気化学工業(株)製、商品名 デンカブラック
Figure 0004582699
*10)PA12:ポリアミド樹脂、宇部興産(株)製、商品名 3024U
Figure 0004582699
上記表1〜3の結果から明らかなように、熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂と所定の熱特性を有する熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂とを所定の重量比率にて基材に用いた実施例のベルトは、適正な電気抵抗、高光沢度および良好な外観を備え、かつ、比較例のベルトに比し耐折れ回数が極めて向上していることがわかる。
本発明の一実施の形態に係る導電性エンドレスベルトの幅方向断面図である。 本発明の画像形成装置の一例としての転写搬送ベルトを用いたタンデム方式の画像形成装置を示す概略図である。 本発明の画像形成装置の他の例としての中間転写部材を用いた中間転写装置を示す概略図である。 本発明の画像形成装置の他の例としてのタンデム中間転写部材を用いたタンデム中間転写装置を示す概略図である。
符号の説明
1、11、52a〜52d 感光体ドラム
2、7 帯電ロール
3 現像ロール
4 現像ブレード
5 トナー供給ロール
6 クリーニングブレード
8 除電ロール
9、30、55 駆動ローラ(駆動部材)
10 転写搬送ベルト
12 一次帯電器
13 画像露光
14、35 クリーニング装置
19 給紙カセット
20 中間転写部材
25 転写ローラ
26、53 記録媒体
29、61 電源
41、42、43、44 現像器
50 タンデム中間転写部材
54a〜54d 第1現像部〜第4現像部
56 記録媒体送りローラ
57 記録媒体送り装置
58 定着装置
59 電源装置(電圧印加手段)

Claims (8)

  1. 静電吸着により保持した記録媒体を、駆動部材により循環駆動されて、4種の画像形成体に搬送し、各トナー像を該記録媒体に順次転写するタンデム方式の転写、搬送用導電性エンドレスベルトにおいて、
    熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂、および、温度270℃におけるMFR値が25〜80g/10minである熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂からなる基材と、導電性材料とを含み、かつ、前記熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂と熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂との重量比率が95/5〜55/45の範囲内であることを特徴とする導電性エンドレスベルト。
  2. 画像形成体と記録媒体との間に配設され、駆動部材により循環駆動されて、前記画像形成体表面に形成されたトナー像を一旦自己の表面に転写保持し、これを記録媒体へと転写する中間転写部材用の導電性エンドレスベルトにおいて、
    熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂、および、温度270℃におけるMFR値が25〜80g/10minである熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂からなる基材と、導電性材料とを含み、かつ、前記熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂と熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂との重量比率が95/5〜55/45の範囲内であることを特徴とする導電性エンドレスベルト。
  3. 4種の画像形成体と記録媒体との間に配設され、駆動部材により循環駆動されて、前記4種の画像形成体表面に形成されたトナー像を一旦自己の表面に順次転写保持し、これを記録媒体へと転写するタンデム中間転写部材用の導電性エンドレスベルトにおいて、
    熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂、および、温度270℃におけるMFR値が25〜80g/10minである熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂からなる基材と、導電性材料とを含み、かつ、前記熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂と熱可塑性ポリブチレンテレフタレート樹脂との重量比率が95/5〜55/45の範囲内であることを特徴とする導電性エンドレスベルト。
  4. 前記熱可塑性ポリアルキレンナフタレート樹脂が熱可塑性ポリブチレンナフタレート樹脂および熱可塑性ポリエチレンナフタレート樹脂のうちのいずれか一方または双方である請求項1〜3のうちいずれか一項記載の導電性エンドレスベルト。
  5. 前記導電性材料としてカーボンブラックを、前記基材100重量部に対し5〜30重量部の範囲内で含有する請求項1〜のうちいずれか一項記載の導電性エンドレスベルト。
  6. 体積抵抗率が10Ωcm〜1013Ωcmの範囲内である請求項1〜のうちいずれか一項記載の導電性エンドレスベルト。
  7. 請求項1〜のうちいずれか一項記載の導電性エンドレスベルトの製造方法であって、前記基材と導電性材料とを含む樹脂組成物を、押出し成形する工程を含むことを特徴とする導電性エンドレスベルトの製造方法。
  8. 請求項1〜のうちいずれか一項記載の導電性エンドレスベルトを用いたことを特徴とする画像形成装置。
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