JP4582592B2 - イオン伝導膜 - Google Patents
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Description
つまり、これらの文献に記載の電解質膜によっては、低含水率で、かつ高イオン伝導度を兼ね備えたイオン伝導膜は達成されていないのである。
従って、この発明の目的は、低含水率で、かつ高イオン伝導度を兼ね備えたイオン伝導膜を提供することである。
1)含水率が10%以下である前記のイオン伝導膜。
2)イオン伝導性がスルホン基によって付与された前記のイオン伝導膜。
3)ポリエチレン部がスチレンーブタジエンブロック共重合体のポリブタジエン部の水素還元によって得られるものである前記のイオン伝導膜。
前記のイオン伝導膜は、ポリスチレン部と膜の骨格を形成するポリエチレン部とがミクロ相分離構造を形成してなる膜形状のブロック共重合体のポリスチレン部にイオン伝導性を担うイオン源である置換基を導入することによって得ることができる。
前記のブロック共重合体は、ポリブタジエン部の水添によるポリエチレン化率が90%以上であることが好ましい。また、前記のポリエチレン部は結晶性ポリエチレンとなっている。結晶化することによって骨格の強度を高め、これによって形態安定性が図られ、結果として含水率が低く抑えられる。このように非晶性ブロック共重合体にはない骨格補強効果がある。結晶化度の範囲は5〜80%、好ましくは10〜50%がよい。結晶化度は密度法で算出できる。骨格保持性能からは結晶化度は高い方が望ましい。
また、前記のポリスチレン部とポリエチレン部とのブロック共重合体は、ポリエチレン部の分子量(質量平均)が30000〜100000、ポリスチレン部の分子量(質量平均)が20000〜80000程度となる割合であるものが好ましい。
また、前記の高分子体は、分子量分布が1.1以下であるものが好ましい。
前記のポリブタジエン部ブロックの水添反応は、触媒として水添に使用される任意の触媒、例えばブタジエンの重合触媒や、Co、Niの遷移金属と有機アルミニウムを組み合わせた水添触媒、あるいはチタノセン化合物と有機アルミニウムや有機リチウムとからなる水添触媒が使用される。水添条件はいずれも、反応温度が50〜150℃、水素圧力が常圧〜30気圧程度である。
また、前記のイオン伝導膜におけるイオン伝導性を担うイオン源であるポリマー中の置換基としては、例えば−SO3H、−SO3 −M+、−COOH、−COO−M+、−PO3H2、−PO3H−M+、−PO3 2−M2+、−PO3 2−M2+およびそれらの組み合わせ、(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、又はアルキルアンモニウムである。)など、好適にはスルホン酸基を挙げることができる。
前記の溶媒としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素を挙げることができる。
この発明のイオン伝導膜はイオン化度(イオン源がスルホン基の場合はスルホン化度)が90%以上、特に100%であることが好ましい。前記のイオン化度とはポリスチレン部のベンゼン環の付加されていない5つの位置のうち1つがすべてイオン化された場合をイオン化度100%という。
前記の方法において、製膜後の溶融、冷却が必要であり、これによってポリエチレン部を結晶化処理して共連続構造の相分離形態を形成することが可能となり、低含水率が達成される。製膜後に溶融、冷却して共連続構造の相分離形態を形成しないで、フィルムに単にイオン源を付与しても低含水率化が達成されない。
前記の溶媒としては、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロエタン、1−クロロプロパン、1−クロロブタン、2−クロロブタン、1,4−ジクロロブタン、1−クロロヘキサン、クロロシクロヘキサンなどが挙げられる。
例えば、前記の製膜後のブロック共重合体の相分離形態を形成した膜又は製膜前のブロック共重合体を、クロロスルホン酸、発煙硫酸、三酸化硫黄−トリエチルフォスフェート、濃硫酸、トリメチルシリルクロロサルフェートなどのスルホン化剤、好適にはクロロスルホン酸の前記溶媒溶液に投入して、前記の反応条件で処理しることによって行うことができる。
前記のスルホン化剤は、溶媒中の濃度が0.01〜1モル/l程度、0.1〜1モル/l程度であることが好ましい。
図1において、イオン伝導膜はイオン伝導性を付与したポリスチレン部と膜の骨格を形成するポリエチレン部とがミクロ相分離構造を形成してなる。共連続網目構造の各網目のサイズ(幅)は約30ナノメートル程度の大きさである。このような共連続構造は単なるポリエチレン単品とポリスチレン単品同士のブレンドでは達成し得ないレベルのミクロ相分離である。単品ブレンドでは一般に1μm以上のサイズとなる。
以下の各例において、イオン伝導膜は以下に記載の方法によって求めた。
1.分子量測定および分子量分布
スルホン化処理前のポリエチレン部およびポリスチレン部の数平均分子量、質量平均分子量をGPS(ゲルろ過クロマトグラフィー)を用いて測定した。
試薬としてポリマーソース社のポリスチレン−b−エチレン(Mn 5.4×104−6.7×104,MW/Mn=1.07)を用いた。
分子量分布を質量平均分子量/数平均分子量から計算により求めた。
2.スルホン化度
スルホン化度(%)=(スルホン化処理によって置換したスルホン酸基モル数/ベンゼン環モル数)×100
測定試料を水中、室温(25℃)で一晩置いて飽和含水状態としたフィルムの重量および25〜60℃で、1晩真空乾燥後のフィルムの重量を測定し、下記の式より含水率を求めた。
含水率(%)=(FW−FD)x100/FD
FW:飽和含水状態のフィルムの重量
FD:乾燥時のフィルムの重量
4.プロトン伝導度の測定
交流インピーダンス法により測定
バイアス電圧 0V
交流振幅 300mV
測定周波数 1〜2×107Hz
5.イオン交換容量(EW)
スルホン化後の数平均分子量、原料に用いたブロック共重合体中のスチレンユニット数から、下記の式から計算により求めた。
EW=スルホン酸基1個当たりの分子量
スチレン−ブタジエンブロック共重合体のポリブタジエン部を水添して得られたポリエチレン−ポリスチレンブロック共重合体(ポリブタジエン部のポリエチレン化率:90%以上、分子量がPE部67000、PS部54000で、分子量分布1.04)をp−キシレンに1質量%濃度、130℃で溶解した。室温下、シャーレに溶液を流し込み、溶媒を乾燥除去してフィルムを作成した。
得られたフィルムを180℃で溶融後、約90℃で72時間保持した後、室温まで冷却して、厚み25μmの膜を得た。
この膜について透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。TEM観察では、ポリスチレン部と膜の骨格を形成するポリエチレン部とが形成されていることが確認された。この膜の結晶化度は密度法で45.2%であった。
この膜について透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。TEM観察では、イオン伝導性基を含むポリスチレン部と膜の骨格を形成するポリエチレン部とが相分離構造を形成していることが確認された。さらに、ポリエチレン部からなるドメインと、イオン導電性基を導入したポリスチレン部からなるドメインはマトリックスをなし、共連続網目構造としてネットワーク状に連結し、共連続していることが観察された。
また、このプロトン伝導膜について評価した。結果を次に示す。
含水率(%) 6.5%
プロトン伝導度(50℃、90%RH) 0.09S/cm
スルホン化度 100%
イオン交換容量(EW) 313
スルホン化度が100%であることから、スルホン化処理されるのはポリスチレン部位のみであることが分かる。ポリエチレン成分がスルホン化処理後でも変質しないことは骨格としての機能を保持する上で理想的な材料であることを意味する。
市販のパーフルオロカーボンスルホン酸膜について評価した。結果を次に示す。
プリトン伝導膜の評価結果
含水率(%) 30%
プロトン伝導度(50℃、90%RH) 0.1S/cm
イオン交換容量(EW) 1000
Claims (9)
- イオン伝導性を付与したポリスチレン部と膜の骨格を形成する5〜80%の範囲の結晶化度を有する結晶性ポリエチレン部に基くポリエチレン部とのブロック共重合体からなり、前記ポリスチレン部と前記ポリエチレン部とがミクロ相分離構造を形成してなるイオン伝導膜。
- 結晶性ポリエチレン部が、10〜50%の範囲の結晶化度を有する請求項1に記載のイオン伝導膜。
- 含水率が10%以下である請求項1に記載のイオン伝導膜。
- イオン伝導性がスルホン基によって付与された請求項1に記載のイオン伝導膜。
- イオン伝導膜が、ポリスチレン部と膜の骨格を形成する結晶性ポリエチレン部とがミクロ相分離構造を形成してなる膜形状のブロック共重合体のポリスチレン部にイオン伝導性を担うイオン源である置換基を導入したものである請求項1〜4のいずれか1項に記載のイオン伝導膜。
- ポリエチレン部がスチレン−ブタジエンブロック共重合体のポリブタジエンの水素還元によって得られるものであり、ポリブタジエンのポリエチレン化率が90%以上である請求項5に記載のイオン伝導膜。
- ポリスチレン部と結晶性ポリエチレン部とのブロック共重合体が、各々の分子量(質量平均)としてポリエチレン部30000〜100000、ポリスチレン部20000〜80000となる割合である請求項5又は6に記載のイオン伝導膜。
- ブロック共重合体が、ポリスチレン部とポリエチレン部とのブロック共重合体を製膜し、その後結晶化処理して得られた膜である請求項5〜7のいずれか1項に記載のイオン伝導膜。
- イオン伝導部と非イオン伝導部とが共連続構造を成している請求項1に記載のイオン伝導膜。
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