JP4580091B2 - 印刷装置の液滴配置誤差の低減方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷装置中のアコースティックインク印刷(AIP)用印刷ヘッド等の印刷ヘッドから噴射されるインク滴の配置誤差を低減する方法およびその装置に関する。インクタイプには、インク滴の噴射時に誘導帯電を可能にする有限導電性をもつ水溶性および相変化(フェイズ・チェンジ)性(ホットメルト)のものを含む。より特定的には、印刷媒体上への印刷時に液滴配置誤差を好ましくは0まで下げることを容易にする2つの方式が企図される。どちらの方式においても、セグメント化されたカウンター電極群が反復的に所定の電圧にバイアスされ、印刷ヘッド中に集積された液滴噴射装置に対向する側に印刷ギャップを介して配置される。ベルトまたはプラテン上の用紙等の静止媒体上への印刷では、各噴射装置列ごとの絶対的な液滴配置誤差が0に維持されて、必要なバイアス電極電圧を得る。ドラム上の用紙等の移動媒体上への印刷では、噴射装置の1列目を基準にして全噴射装置列について飛散時間が同一に維持され、これにより相対的な液滴配置誤差を0にし、絶対誤差を無視できる程度に小さくする。
【0002】
本発明は、特に印刷媒体が曲面または曲面上に配置されるアコースティックインク印刷における液滴の配置に関し、従って特にこれについて説明するが、本発明は他分野および他の応用にも有用性をもちうることを理解されたい。例えば、本発明は平面への印刷や各種インクジェット印刷にも利用可能である。
【0003】
【従来の技術】
背景および概論を説明すると、印刷における多くの応用では、インク滴は要求に応じて(オンデマンドで)媒体に発射または噴射されて媒体上に堆積し、印刷画像を形成する。高解像度の印刷画像を得るには、インク滴のサイズが小さく、かつ正確にインク滴を配置することが必要である。正確なインク滴の配置は、ドラムやベルト等の移動非平面印刷媒体上へのカラー印刷には特に重要である。
【0004】
より特定的には、アコースティックインク印刷は、インクプールから印刷媒体へのインク滴の噴射を伴う。音波が発生してインクプール表面へ集められ、インクプールからインク滴を噴射させる。アコースティックインク印刷の各要素は様々な形状をとりうるが、一般には、音波を発生させる圧電変換器、音波をインクプール表面に集めるレンズ、インクを噴射する開口が内部に形成されたカバープレート、および対応する配線を含む。1つの印刷ヘッド中には約1,000個以上のこのような要素が多様な形状で配置されうることを理解されたい。ただし一般には、印刷要素群は印刷ヘッドの長さに沿って8列に構成される。
【0005】
水溶性および相変化性AIPどちらの研究においても、液滴配置誤差を減じる上で静電界加速の利点が知られている。空気流や斜方向の液滴噴射などの横方向の妨害による液滴配置誤差は、印刷表面に垂直方向にクーロン力成分を与えてインク滴を引きつけることによって減じられる。この力はまた抗力を克服する作用があり、このため印刷ギャップを介して液滴が移動する機動力を与える。クーロン力を与えなければ、液滴は減速して印刷ヘッド上に戻って落ち、印刷ヘッドの信頼性と寿命を損なう汚染問題を引き起こしうる。他の重要な利点は、液滴の形成にちょうど十分なエネルギーを与え、その後、静電界を用いて液滴を加速させることによって液滴噴射の機械的エネルギーを低減することである。この方法は大幅な電力削減につながる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし公知の技術は、曲面から構成されるような非平面状の印刷媒体は考慮しておらず、平面媒体上に液滴を配置する場合にのみ有効となることを企図している。印刷媒体の形状は液滴配置誤差のさらなる複雑な原因となるため、この点は重要である。曲面上への印刷に関連した問題に対処することは、生産性向上のためにシステム中でドラムを使用する大量印刷システムでは特に重要である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記およびその他の問題点を解決する、アコースティックインク印刷等の印刷応用において液滴配置誤差を例えば0まで低減するのに有用な新規かつ改良された装置および方法を企図する。
【0008】
印刷システム中のインク滴配置誤差を低減する方法および装置が提供される。印刷システムは、曲面上に載置された印刷媒体上の目標位置に向かってインク滴を噴射させるように配置された印刷ヘッドを備える。印刷ヘッドは複数列の噴射装置を含み、曲面にはセグメント化された電極が内部に埋め込まれる。電極は各列に整列される。
【0009】
本発明の一実施形態では、方法は、電極に印可する電圧を反復的に決定するステップと、決定された電圧に基づいて電極をバイアスするステップと、このバイアシングおよび電極と印刷媒体との相対位置に基づいてインク滴が噴射装置から各経路に沿って印刷媒体上の目標位置へ向かうように、選択的にインク滴を噴射装置から噴射するステップとを含む。
【0010】
本発明の他の実施形態では、電圧は、印刷媒体がインク滴の噴射中に移動しているかどうかに基づいて決定される。
【0011】
本発明のさらに他の実施形態では、印刷媒体がインク滴の噴射中に移動している場合は、電圧は、噴射された各インク滴についてほぼ同一の飛散時間を維持することに基づいて決定される。
【0012】
本発明のさらに他の実施形態では、印刷媒体がインク滴の噴射中に静止している場合は、電圧は、インク滴配置の絶対誤差がほぼ0となるように決定される。
【0013】
本発明のさらに他の実施形態では、装置は、複数列の流体噴射装置群がその上に配置されたヘッドであって、噴射装置は印刷ヘッドのカバープレート中に形成される開口を有し、かつカバープレートが接地されているヘッドと、噴射装置からの流体滴の噴射を制御するように作動するコントローラと、複数列の噴射装置群と整列した電極群が埋め込まれ、かつギャップを介してヘッドの向かい側に配置される曲面と、電極群をバイアスする各電圧を反復的に決定するように作動するプロセッサとを含み、流体滴は、コントローラからの信号に基づいて印刷ヘッドの噴射装置から選択的に噴射され、かつバイアシングおよび電極と印刷媒体との相対位置に基づいて、噴射装置群の接地されたカバープレートから各経路に沿って印刷媒体上の目標位置へ向かうように噴射される。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に図面を参照するが、図面は本発明の好適な実施形態のみを示すためであり、本発明を限定するものではない。図1は本発明に従う好適なシステムの全体図を示す。このシステムは印刷装置に含まれるのが好ましいが、本明細書で開示する実施形態は、コピー機、スキャナ等の各種作像装置に適切に適応し、かかる装置中に含まれうることを理解されたい。
【0015】
図1では、電圧源10が印刷ヘッド14(噴射装置列を含む)および印刷媒体支持部18に接続して示され、印刷媒体支持部18は、以下に示すように、好ましくは曲面形状である。マーキング装置コントローラ12は印刷ヘッド14と直接連通し、かつ接続される。マーキング装置コントローラ12は、印刷媒体20を印刷ヘッド14に対して移動させる印刷媒体移動機構(特に図示しないが、支持部18または媒体20を含みうる)を制御する。コントローラ12はまた、噴射を行う噴射装置を指定する信号を印刷ヘッドに送ることによって、印刷ヘッドからの液滴の噴射を制御する。印刷媒体20は好ましくはシート状またはロール状の紙だが、トランスパレンシー、搬送ベルト、中間転写基板、またはその他の材料から構成してもよい。
【0016】
一実施形態では、印刷ヘッド14はページ幅印刷ヘッドであり、印刷媒体20が印刷ヘッド14に対して移動される。または印刷ヘッド14を走査印刷ヘッドとして構成して、静止または可動印刷媒体に対して移動するようにしてもよい。
【0017】
印刷ヘッド14は、複数列の噴射装置などの液滴形成装置16を含む。一実施形態では、液滴形成装置16はアコースティックインク滴アクチュエータまたは噴射装置を含むが、サーマル型および圧電変換器型のアクチュエータ等の他のタイプのインク滴アクチュエータを用いてもよい。また図にはプロセッサ22も示すが、これは本開示を読めば当業者には明らかであるような態様で、本発明に従う方法および処理技術を実行/制御する。
【0018】
次に図2を参照すると、静電界アシストを実現するには、羽毛状構造(plume)32からの分離前にまず液滴30表面上に誘導電荷が分布するようインクに十分な導電性があることが必要である。図2は、液滴30が羽毛状構造32から分離する前の液滴噴射構造を示す。液滴上の電荷を定量化すると、
【数1】
となり、Qdropは液滴の電荷、rdropは液滴の直径、hは羽毛状構造の高さ、Eはギャップの電界を示す。
【0019】
図示するように、噴射装置中で液滴30は、好ましくはインクである流体のプール38から、開口またはカバープレート34中に規定された開口36を通って噴射される。噴射は、代表的に40で示すレンズ構造によってプール38表面において音波等の音響エネルギーを集める結果として生じる。音波は、トランスデューサ44によって発生した後、好ましくはガラス製の基板42を通って伝搬する。好適な構成では、トランスデューサ44は圧電材料、および電源(図示せず)に接続された適切に配置された電極群から構成される。これら複数の噴射装置は、適切には印刷ヘッド上で列状(好ましくは8列)に配置されて、1つのアレイを構成することを理解されたい。
【0020】
もっとも単純な実施形態では、印刷ヘッドは、印刷媒体が載置された平らなプラテンに面する平面構造である。この形状は、印刷ギャップつまりカバープレートと印刷媒体との間の隙間に均一な電界を与える。AIPを相変化インクに適応させる提案では、ドラムまたはベルトを中間媒体として使用して、画像を用紙上に永久転写/定着させる前に画像を記録(レジスター)する点が新たな進歩である。好適には、本発明の印刷ヘッド構造は、4.4mmにわたって間隔を空けて設けられ、かつ1.7インチ(4.318cm)の長さに配置された8列のスタッガード状の開口からなるモジュールである。開口は中心部で340μmである。工程方向により広いスワース(一掃)分の書き込みを行うには、かかるモジュールを6mmのスペーサを挟んで2つ搭載することが提案できる。これにより二重(ダブル)の8列印刷ヘッドが得られる。この結果、第1モジュールの1列目と第2モジュールの8列目とは約14.8mm離れることになる。これ以外の複雑な構成には、移動ドラムまたはベルト上に載置された非平面媒体上への印刷がある。
【0021】
ここで図3(a)〜(b)および図4(a)〜(b)には、非平面状の印刷媒体および/またはその支持部が与えられる印刷構造を例示する。図3(a)では、接地された印刷ヘッド14は、コントローラ12から受信する信号に従って、流体滴を支持部18上の印刷媒体20へ向けて噴射するように配置される。液滴形成装置16は、複数の列52(すなわち52a,52b,52c,52d,52e,52f,52g,および52h)からなるアレイ状に配置された噴射装置群を含む。印刷媒体20は、例えば印刷後に切断されるスプールから送られる用紙、または当業者には明らかなようにシステム中の別の適当な位置で画像が用紙に転写される中間ベルトである。
【0022】
図からわかるように、セグメント化された電極群50(すなわち50a,50b,50c,50d,50e,50f,50g,および50h)は、当該技術分野で周知の技術を用いて支持構造18中に埋め込まれる。本実施形態では、支持構造18は絶縁材料から構成されるシュー60として形成される。シュー60は、印刷媒体20への張力の付与を容易にする曲面62を有する。また複数の電圧源V1〜V8も示され、これらは電極群50に接続される電圧供給部10を構成する。電極群に印可される実際の電圧は、本発明に従って本明細書中に開示する規準に従って変化することを理解されたい。ただし曲面62は対称形なので、電極50aと50hとは好適には同一電圧でバイアスされる。図から明らかなように、電極50bと50g、50cと50f、および50dと50eは、同じくそれぞれ等しくバイアスされる。
【0023】
図3(b)に示すように、電極群50は、好適には印刷ヘッドの長さに一致するようにシュー60の長さに沿って配置される。電極群50はまた、図示するように複数の列52と適切に整列させられる。さらに曲面62は、すべり摩擦を最小限に抑えるために、好適にはわずか2ミル(mil)のテフロン(Teflon)(商標)層でコーティングされる。
【0024】
印刷ヘッドが全幅アレイ(FWA)の場合は、印刷媒体は印刷中に移動することを理解されたい。この場合、以下に詳述するように相対誤差を低減または0にするように電極電圧を決定、例えば最適化することが求められる。しかし、もし印刷ヘッドが部分幅アレイ(PWA)ならば、ページ全体を印刷するには走査モードを用いて複数回のパスが必要である。印刷媒体は静止しており、このため電極電圧は、絶対誤差を低減または0にするように決定される。転写オプションを利用すれば、より多くのタイプの用紙の使用が可能である。
【0025】
図4(a)〜(b)には、印刷媒体支持部18のドラム構造が示される。図3(a)〜(b)に示す構造と同じく、接地された印刷ヘッド14は、コントローラ12から受信する信号に従って、流体滴を支持部18上の印刷媒体へ向けて噴射するように配置される。液滴形成装置16は、複数の列52(すなわち52a,52b,52c,52d,52e,52f,52g,および52h)からなるアレイ状に配置された噴射装置群を含む。この構造では、セグメント化された電極群70(すなわち70a,70b,70c,70d,70e,70f,70g,70h,...70n)は、好適には2ミル厚さのテフロン(商標)のオーバコートをほどこしたドラム80中に埋め込まれる。便宜上、図4(a)および(b)には選択した電極群のみを示すが、電極群はドラム周辺にぐるっと配置されることを理解されたい。
【0026】
好適には、印刷用に印刷ヘッド14の8つの列52に面し、かつこれらの列と整列している8つの電極70a〜70hだけが、当業者には理解できると考える通信スイッチ技術を用いて所与の時間に付勢される。さらに、便宜上許される限りいくつの電極70を与えてもよいが、カラー印刷等の応用では、8つの付勢された電極をドラム80の周辺に沿って4回くり返すのが好適である。
【0027】
ドラム80は、その上に印刷媒体が配置される曲面82を有する。また電極群70に接続される電圧供給部10を構成する複数の電圧源V1〜V4も示される。電極に実際にかけられる電圧は、本発明に従って本明細書に開示する規準によって変化することを理解されたい。ただし曲面82は図示するように対称形なので、電極70aと70hとは好適には同一電圧でバイアスされる。図から明らかなように、電極70bと70g、70cと70f、および70dと70eとは同様にそれぞれ等しくバイアスされる。追加電極には追加の電圧源の組を与えてもよいし、または好適には、適当なスイッチ構造を設けてもよい。
【0028】
印刷媒体20は、紙または中間基板でもよい。紙は好ましくはグリッパーバー(図示せず)によって保持される。中間基板を用いる場合は、好ましくはドラム8上の絶縁コーティングとして構成される。
【0029】
印刷媒体20が実際には中間基板である場合は、追加の転写ロール90を設けて、熱と圧力との組み合わせを用いて印刷画像を用紙100上に移す。さらなる変更として、ドラムの代わりに回転スリーブを用いて印刷媒体を移動させてもよい。これは当業者であれば理解できると考えるが、スリーブの下にシュー構造を用いて実現できる。
【0030】
図3(a)〜(b)および図4(a)〜(b)に示す構造は、多様な液滴配置誤差を生じるが、これは当該技術分野ではこれまでのところ有効に対処されていない。このため液滴配置誤差は、衝撃点(インパクトスポット)と目標点(ターゲットスポット)との間の差と定義される。δα,δγ,およびδβが絶対誤差、δψが基準噴射列に対する相対誤差である。これら4つの液滴配置誤差の主原因を以下に詳述する。
【0031】
1.δα:ドラムまたはベルトの曲率による幾何学的な誤差であり、図5を参照して、wを鏡映面200から噴射装置ノズル(例示するヘッド14’の8列目に位置する)までの距離、rdrumを非平面基板および/または支持部(ドラム202等)の曲率半径とすると、
【数2】
で与えられる。最初の項は鏡映面から計算した弧長の大きさである。従って、この誤差は、鏡映面200から距離wの地点に位置するノズルから噴射された液滴が、ドラム202上のwと等距離の弧長の地点に着地した場合は0である。このときの軌跡は、図5に示すようにノズル206から下方へ垂直に投影される直線204である。この誤差は、以下に説明するが誤差包絡線の正の上限を形成する。
【0032】
2.δγ:液滴に質量がないと仮定した純粋な静電ドリフトによる誤差。この場合、液滴は図5の電界線208に沿って点電荷として移動する。この計算は、液滴配置誤差の誤差包絡線の負の下限を与える。xγをドラム上の切片とした場合、対応する誤差関係は
【数3】
となる。
【0033】
3.δβ:力の積分から計算され、液滴の特性に依存し、空気流、静電気、および抗力を含む誤差。mを液滴の質量、ηを動的粘度、Vを速度として、次のニュートンの運動方程式を積分して液滴の軌跡を予測する:
【数4】
この誤差は誤差包絡線内部に位置する。xβをドラム上の液滴の切片とすると、誤差関係は
【数5】
となる。
【0034】
4.δψ:基準噴射装置列に対する液滴配置の相対誤差。例えば、図5に示すダブルの8列印刷ヘッドでは、vをドラム/ベルト基板の移動速度、Tflightを液滴の飛散時間とすると、噴射装置の2列目から8列目は次の式によって1列目に参照される。
【数6】
隣接する噴射装置間のTflightの差は、移動速度vによって大きくなる。従って、相対的な液滴配置誤差を0にするには、全噴射装置列から噴射される液滴のTflightヲ確実に同じにしなければならない。
【0035】
液滴配置誤差(δα,δγ,δβ)は、2つの印刷ヘッド構造について計算される。すなわち一列(シングル)の8列印刷ヘッドと6mmスペーサで分離された二列(ダブル)の8列印刷ヘッドである。最初の噴射速度Uと周縁の電界Eの両方に起因する液滴配置の絶対誤差は、垂直の鏡映面からもっとも離れた8列目の噴射装置群によって与えられる最悪の場合を想定して計算される。図5に示すように、これらの噴射装置は、シングル印刷ヘッドの場合はw=2.2mm、ダブル印刷ヘッドの場合はw=7.4mmの場合に対応する。
【0036】
すべての寸法および動作条件は、実験設定を模倣したものであり、以下の表に挙げる各物理量を含む。ドラム半径を変化させてランを行い、液滴配置誤差を求める。これらを以下の表1および表2に示し、かつ図6および図7にグラフで示す。
【0037】
【表1】
【0038】
上記の実験は、ドラム半径(rdrum)、液滴半径(rdrop)、一定のギャップ(g)についての最初の速度(U)、印刷ヘッドの半幅(w)、および電界アシスト電圧の相互依存性を調べるために行われる。電界に関する参照はすべてV/gapを示す。8μmの液滴についての液滴配置誤差を様々なドラムサイズについて計算する。また、幾何学的エラー δαおよびドリフトエラーδγも計算される。飛散時間(Tflight)、衝撃速度(Vimpact)、および液滴配置誤差(δβ)は、最初の噴射速度0m/sおよび2.2m/sについて計算される。最初の噴射速度が0の場合(噴射後、液滴が動かない場合)の結果は、液滴噴射エネルギーが低減された場合に対応する。
【0039】
図6および図7からわかるように、誤差包絡線は、ドラムの曲率による幾何学的誤差を表すδαと、周縁の電界中の(無質量の)点電荷の静電ドリフトによるδγとによって境界が引かれる。実際の液滴配置誤差δβは、この包絡線内に存在する。どちらの境界に近いかによって、競合する慣性力(U>0)とクーロン力との相対的効果を示す。誤差の極性は、液滴がターゲットスポットのどちら側に最終的に着地したかを示す。図6および図7のどちらにおいても、δβの曲線は負に傾いており、電界(2V/μm)が最初の噴射速度(U=2.2m/s)に関して過剰駆動(オーバードライブ)されることを示す。U=0に対応する曲線は、U=2.2の曲線のさらに下方に走り、これは高電界を補償するにはより高速な噴射速度が必要なことを示す。最後に、どの曲線もドラム半径が大きくなるにつれて誤差0に漸近していく。
【0040】
図5に示すように、曲面上への印刷による幾何学的誤差、および噴射速度Uによる液滴の慣性は、ドラムまたはベルト構造の中心へ向かって進む周縁の電界によって補償されうる。従って、他のパラメータはすべて同じと仮定すると、液滴配置の絶対誤差δβが0に強制できる場合は、各ドラム半径ごとに固有の(U,E)の組が存在する。これは、液滴がターゲットスポット上に着地するように液滴を操作する正しいレベルの電界の使用が可能なことを意味する。
【0041】
このように、図1〜図4(b)に関連して上記の説明から明らかなように、セグメント化されたカウンター電極群からなるシステムが、印刷ギャップのレシーバ側、すなわち印刷媒体支持部18が配置される側に実現される。電極群は印刷媒体上の液滴の目標点と一致するように所望の電圧にバイアスされる。一つの電極は各噴射装置列と整列される。これらの電極群は好適にはターゲットスポットがその質量中心にくるように配置される。
【0042】
同じく図8は、さらなる説明のため、この概念を上記で説明した実施形態とは異なる態様で表した概略図を示す。このため図8の例示図は、例えば図3(a)〜図4(b)に示す構造とはわずかに異なるが、本発明の特徴部分は同様に適用できる。
【0043】
図8に示すように、シングルの8列印刷ヘッドでは、図示する関連の噴射装置列は5〜8であり、これらは電極5〜8に対向する。ダブルの8列印刷ヘッドでは、図示する関連の噴射装置列は1〜8(図には1〜4のみ示す)であり、これらは対応の電極アレイに対向する。従来のAIP印刷ヘッドは、8列の噴射装置では4.4mmであり、つまり噴射装置のピッチが0.6285mmである。隣接する電極間の誘電スペーサを約0.1mmとすると、電極幅には最低0.5mmを割り当てることができる。0.5mmのギャップを挟んでアスペクト比は約1:1となり、電極は入来する液滴の明確なターゲットとなる。
【0044】
本発明の目的に合致するいずれかの構造の印刷システムが実現されると、好適には、各セグメント化されたカウンター電極の所望の電圧が決定され、対応する噴射装置列の液滴配置誤差を最小限にするために適当な調整が行われる。このため、ニュートン法に基づいた数値アルゴリズムを用いて、所望の物理量を最小にするために電極電圧を反復的に調整する。この方法は当業者には周知のもので、各種の公知のハードウェアおよび/またはソフトウェア技術を用いて実現することができる。
【0045】
ただし好適には、セグメント化された各電極の電圧は、ニュートン法から導出した反復アルゴリズムを用いて順次決定され、直近の電圧値が次のように以前の推測に関連づけられる。
【数7】
ここでVkは反復k番目の電圧、f(Vk)は液滴配置誤差を示す残、およびf’(Vk)は電圧に対する残の収束率であり、
【数8】
で与えられる。
【0046】
残は、各液滴についてニュートンの運動方程式を積分して計算される。
【数9】
これはクーロン力と抗力とを組み合わせた力のもとでの液滴の運動を考慮している。収束規準は
【数10】
であり、これに基づき、計算された電極電圧の差が予め指定された公差であるεより小さい場合に、反復が終了する。
【0047】
絶対誤差を0にするには、関連の式は、
【数11】
である。対応する相対誤差を0にする式は、 ΔTflightをn列目と1列目の噴射装置間の相対的飛散時間とすると、
【数12】
である。
【0048】
こうして、図9を参照すると、本発明の方法900は、電極に印可する電圧を、上述したニュートン法のアルゴリズムを用いてプロセッサ22によって反復的に決定するステップで始まる(ステップ902)。好適には電圧は反復的使用のためにシステム中で決定かつ設定されることを理解されたい。だが、反復的な「オンザフライ(高速)」決定が望ましい場合もある。例えば、これはシステム中で異なるタイプの用紙(ボンド、厚紙、麻等)または印刷媒体への適応に有用となりうる。システムの電圧を予め決定するか、または各用紙もしくはランごとに電圧を計算するかの選択は、主としてシステム構成、処理速度、およびユーザのニーズに依存する。
【0049】
次に、決定された電圧に基づいて、電極群が電圧源10によってバイアスされる(ステップ904)。最後に、コントローラ12から受信した信号に基づいて、液滴が選択的に噴射装置から噴射され、液滴は、電極のバイアスおよび電極と印刷媒体との相対位置に基づいて、噴射装置から図8の経路Pなどの各経路に沿って印刷媒体上の目標位置へと向かう(ステップ906)。
【0050】
ステップ902の電圧の決定に関しては、上述したように、かつ好適なニュートン法についての議論で述べたように、液滴配置誤差を最小化するために2つの方式が提案される。まず静止媒体の場合は、電圧を決定するために絶対誤差が好ましくは0(δβ=0)まで下げられる。次に移動媒体については、噴射装置の1列目を基準にして全噴射装置列に ΔTflight=0を強制して、相対誤差が好ましくは0(δψ=0)まで下げられる。このように電圧の決定は、印刷媒体が噴射中に移動しているかどうかによって異なる。噴射中に印刷媒体が移動している場合は、電圧は、噴射される液滴の飛散時間をほぼ同一に維持することに基づい決定される。反対に、噴射中に印刷媒体が静止している場合は、電圧は、液滴配置の絶対誤差をほぼ0にするように決定される。
絶対的液滴配置誤差0(δβ=0)
【0051】
上述のように、印刷媒体が静止している場合は、δβが計算され、事前に設定した公差内でδβが0に近づくように、電極に印可されるバイアス電圧を反復的に修正することができる。計算はδβ<10-4μmになったときに停止される。噴射装置アレイの位置を表すある範囲のwについて実験を行った。表3に、ドラム半径6cmおよび8cmの場合の結果を示す。これには、δβ=0を得るために必要なTflight、Vimpact、およびバイアス電圧Vの計算データが含まれる。
図10にはこの結果のグラフを示す。
【0052】
どちらのドラム半径についても、必要電圧は非常に無理のないもので、円形のドラム形状によるギャップの二次的曲率を反映するように、ある二次的な態様で増大する。ギャップの拡大速度が速くなるため、半径の小さいドラムのほうがwが大きくなるにつれてより高いバイアス電圧が必要である。明らかに、セグメント化された電極電圧のこの調整方法は、幅広印刷ヘッド構造に特に有益である。これは液滴配置の絶対誤差をドラムの曲率からやや無関係にする。
【0053】
噴射装置−電極対は、垂直の鏡映面から測定して等距離に位置しなければならない。図10の曲線は、すべての最適な(V,w)対の軌跡と解釈することができる。表4は、ここで検討されるシングルおよびダブル印刷ヘッド構造についての特定の(V,w)対を示す。これに対応する曲線は図11に示す。
【0054】
【表2】
相対的液滴配置誤差0(δψ=0)。
【0055】
先に定義したように、印刷ヘッドの相対的液滴配置誤差は、噴射装置の1列目を基準にした他の7列の液滴配置の誤差と定義される。例えば、6mm間隔で配置された2組の8列印刷ヘッドモジュールからなる16列の印刷ヘッドでは、最大相対誤差(δψ)は1列目と8列目の噴射装置間にある。次の式を代入して、表3から相対的配置誤差が推定される。
【数13】
【0056】
次表は、各液滴についての絶対誤差δβが10-4μm未満でも、相対誤差がかなり大きいことを示す。明らかに、この誤差の大きさは、移動印刷媒体には絶対誤差0を課すのは不適当であることを示す。
【0057】
【表3】
【0058】
従って、印刷ヘッド中の全噴射装置についてTflightを同一にしながら、カウンター電極の電圧を反復的に調整する他の方式が考慮される。電極はその後、1列目の噴射装置と比較した場合にそれに続く噴射装置列間のTflightの差を最小にする(すなわち ΔTflight=0)最適な電圧でバイアスされる。基準噴射装置には、δβ=0の場合の電圧設定(表3および表4)におけるパラメータが計算されて設定される。この噴射装置のTflightを基準値として、εを特定の公差(10-3μs)とした場合、 ΔTflight<εが強制される。この条件は、相対誤差δψ=0を示す。しかしこの制約を課すには、多少の絶対的配置誤差の容認、つまりδβ≠0を伴う。
【0059】
移動媒体による印刷ギャップ中の空気流を無視すると、相対誤差は垂直の鏡映面に対して対称である。表5は、rdrum=6cmおよび8cm、かつU=2.2m/sの場合の、最適なセグメント化電極の電圧を示す。この設定における最適電極電圧を図12にプロットする。
【0060】
検討する電圧範囲では、δβはVの変化にあまり影響されないようにみえる。
ΔTflight=0というより厳しい要求を課すことによって、絶対誤差δβをわずか約1μmしか増やさず、かつ相対誤差δψをほとんどなくすることができる。定数値は直流オフセットを示し、これは移動制御および記録(レジストレーション)によって補償されうる。いずれの場合でも、誤差は他の絶対的方式と比較するとはるかに小さく、移動印刷媒体上への書き込みに適している。
【0061】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う全体的なシステムの概略図である。
【図2】液滴噴射構造を示す図である。
【図3】本発明に従う好適な実施形態を示す図である。
【図4】本発明に従う他の好適な実施形態を示す図である。
【図5】ヘッドおよびドラムの概略図である。
【図6】シングル印刷ヘッドについての液滴配置誤差とドラムサイズの範囲との関係を示す図である。
【図7】ダブル印刷ヘッドについての液滴配置誤差とドラムサイズの範囲との関係を示す図である。
【図8】本発明に従うカウンター電極システムの概略図である。
【図9】本発明に従う方法を示すフローチャートである。
【図10】ある範囲の噴射装置位置についてのカウンター電極電圧を示すグラフである。
【図11】絶対誤差が0のカウンター電極電圧を示すグラフである。
【図12】相対誤差が0のカウンター電極電圧を示すグラフである。
【符号の説明】
12 コントローラ、14 印刷ヘッド、20 印刷媒体、22 プロセッサ、30 液滴、34 カバープレート、50 電極群、52 噴射装置列。
Claims (3)
- 曲面上に配置された印刷媒体上の目標位置へ向かってインク滴を噴射するように位置決めされた印刷ヘッドを備えた印刷システムにおいて液滴配置誤差を低減する方法であって、印刷ヘッドは複数列の噴射装置を有し、前記曲面の内部にはセグメント化された電極群が埋め込まれ、前記方法は、
前記電極群に印可する電圧を反復的に決定するステップと、
決定された電圧に基づいて前記電極群をバイアスするステップと、
バイアシングおよび前記印刷媒体に対する前記電極の位置に基づいて、前記インク滴が前記噴射装置群から各経路に沿って前記印刷媒体上の目標位置に向うように、前記インク滴を前記噴射装置から選択的に噴射するステップとを含む方法。 - 請求項1に記載の方法において、前記電圧を決定するステップは、前記印刷媒体が噴射時に移動しているかどうかに基づく方法。
- 印刷媒体上への液滴印刷時の液滴配置誤差の低減に有用な装置であって、
複数列の流体噴射装置がその上に配置されるヘッドであって、ヘッドのカバープレート中に形成される開口を有し、カバープレートは接地に接続されるヘッドと、
前記噴射装置からの流体滴の噴射を制御するように作動するコントローラと、
前記複数列の噴射装置に整列した電極群が埋め込まれ、前記ヘッドからギャップを介して向かい側に配置される曲面と、
前記電極群をバイアスする各電圧を反復的に決定するように作動するプロセッサとを含み、
前記流体滴は、前記コントローラからの信号に基づいて前記印刷ヘッドの前記噴射装置から選択的に噴射され、かつバイアシングおよび前記電極群と前記印刷媒体との相対位置に基づいて、前記噴射装置群の前記接地されたカバープレートから各経路に沿って前記印刷媒体上の目標位置へ向かうように噴射される装置。
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