JP4578026B2 - エレクトロルミネッセント素子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機エレクトロルミネッセント(以下ELと略称する場合がある。)層を有するEL素子であって、この有機EL層がフォトリソグラフィー法によりパターン状に形成されているEL素子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
EL素子は、対向する電極から注入された正孔および電子が発光層内で結合し、そのエネルギーで発光層中の蛍光物質を励起し、蛍光物質に応じた色の発光を行うものであり、自発光の面状表示素子として注目されている。その中でも、有機物質を発光材料として用いた有機薄膜ELディスプレイは、印加電圧が10V弱であっても高輝度な発光が実現するなど発光効率が高く、単純な素子構造で発光が可能で、特定のパターンを発光表示させる広告その他低価格の簡易表示ディスプレイへの応用が期待されている。
【0003】
このようなEL素子を用いたディスプレイの製造にあっては、電極層や有機EL層のパターニングが通常なされている。このEL素子のパターニング方法としては、発光材料をシャドウマスクを介して蒸着する方法、インクジェットによる塗りわけ方法、紫外線照射により特定の発光色素を破壊する方法、スクリーン印刷法等がある。しかしながら、これらの方法では発光効率や光の取り出し効率の高さ、製造工程の簡便さや高精細なパターン形成の全てを実現するEL素子の製造方法を提供することはできなかった。
【0004】
このような問題点を解決する手段として、発光層をフォトリソグラフィー法によりパターニングすることにより形成するEL素子の製造方法が提案されている。この方法によれば、従来行われてきた蒸着によるパターニング法と比較すると、高精度のアライメント機構を備えた真空設備等が不要であることから、比較的容易にかつ安価に製造することができる。一方、インクジェット方式を用いたパターニング法と比較すると、パターニングを補助する構造物や基体に対する前処理等を行うことない点で好ましく、さらにインクジェットヘッドの吐出精度との関係から、フォトリソグラフィー法の方がより高精細なパターンの形成に対しては好ましい方法であるといえるといった利点を有するものであった。
【0005】
このようなフォトリソグラフィー法により複数の発光部を形成する方法としては、例えば図2に示す方法が提案されている。
【0006】
まず、図2(a)に示すように基体31上にパターニングされた第1電極層32を形成し、さらにその上に、第1発光層用塗工液33を全面に塗布する。次いで、図2(b)に示すようにポジ型レジスト34を全面塗布し、図2(c)に示すように第1発光部を形成する部分のみをフォトマスク35でマスクし、その部分以外を紫外線36で露光する。
【0007】
これをレジスト現像液によって現像し、水洗することにより、図2(d)に示すように露光部のレジストが除去される。さらに発光層の溶媒によって現像すると、図2(e)に示すように剥き出しの第1発光層33が除去され、レジストとレジストに被覆された第1発光部33’が残る。
【0008】
次いで第1発光部33’の形成と同様に、図2(f)に示すように第2発光層用塗工液37を全面に塗布し、さらに図2(g)に示すようにポジ型レジスト34を全面塗布し、図2(h)に示すように第1および第2発光部を形成する部分をフォトマスク35でマスクし、それ以外を紫外線36で露光する。
【0009】
これをレジスト現像液によって現像、水洗し、さらに発光層の溶媒によって現像すると、図2(i)に示すように剥き出しの第2発光層37のみ除去され、レジスト34に被覆された部分が残る。
【0010】
さらに第1および第2発光部の形成と同様に、図2(j)に示すように第3発光層用塗工液38と、ポジ型レジスト34を全面に塗布し、図2(k)に示すように第1、第2および第3発光部を形成する部分をフォトマスク35でマスクし、その部分以外を紫外線36で露光する。
【0011】
これをレジスト現像液によって現像、水洗し、発光層の溶媒によって現像すると、図2(l)に示すように剥き出しの第3発光層38のみ除去され、レジストに被覆された部分が残る。さらにレジスト剥離液により剥離処理をするとレジストが形成された部分から上の層が剥離し、図2(m)に示すように、第1、第2、第3の3色の発光部が剥き出しに形成される。
【0012】
最後に図2(n)のようにこれらの発光層上に第2電極層39を形成すると図の下方にEL発光40を放つEL素子が製造できる。
【0013】
しかしながら、上述したような方法では、複数の発光層とフォトレジスト層とを何層も積層する必要があることから、発光部の膜厚むらや、成膜欠陥により発光が不均一になるといった問題があった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、発光効率や取り出し効率の高さ、製造工程の簡便さや高精細なパターンの形成といったフォトリソグラフィー法による利点を有しつつ、さらに複数の発光部を形成する際に生じる可能性のある発光部の膜厚むらや成膜欠陥等の不具合を回避することができるEL素子の製造方法を提供することを主目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載するように、電極層が形成された基体上に、種類の異なる発光層を複数回にわたりフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより、上記基体上に複数種類の発光部を形成するEL素子の製造方法において、上記電極層が形成された基体上に第1発光層用塗工液を塗布することにより第1発光層を形成する工程と、上記第1発光層上にフォトレジストを塗布してフォトレジスト層を形成する工程と、前記フォトレジスト層をパターン露光した後現像することにより、第1発光部が形成される部分のフォトレジスト層が残存するようにパターニングする工程、上記フォトレジスト層が除去された部分の第1発光層を除去することにより表面にフォトレジスト層を有する第1発光部を形成する工程と、上記第1発光部とその表面に残存するフォトレジスト層とを有する基体上に第2発光層用塗工液を塗布して第2発光層を形成する工程と、上記第1発光部上に残存するフォトレジスト層を、その上に形成された第2発光層と共に剥離することにより、上記基体上に第1発光部および第2発光部を形成する工程とを有することを特徴とするEL素子の製造方法を提供する。
【0016】
本発明においては、表面に第2発光層が形成されているフォトレジスト層を第2発光層と共に剥離することにより、複数の発光層やフォトレジスト層が幾層も積層した状態を解消することができる。したがって、複数の発光層やフォトレジスト層が幾層も積層された状態において、さらに次の発光層を積み重ねることによって生じる発光層の膜厚むらや成膜欠陥を回避することができる。
【0017】
上記請求項1に記載された発明において、請求項2に記載するように、上記第1発光部および第2発光部が形成された基体上にフォトレジストを塗布してフォトレジスト層を形成する工程と、上記フォトレジスト層をパターン露光した後現像することにより、第1発光部が形成される部分および第2発光部が形成される部分のフォトレジスト層が残存するようにパターニングする工程と、上記フォトレジスト層が除去された部分の第2発光層を除去することにより表面にフォトレジスト層を有する第1発光部および表面にフォトレジスト層を有する第2発光部を形成する工程と、上記表面にフォトレジスト層を有する第1発光部および表面にフォトレジスト層を有する第2発光部が形成された基体上に第3発光層用塗工液を塗布して第3発光層を形成する工程と、上記第1発光部上に残存するフォトレジスト層を、その上に形成された第3発光層と共に剥離し、同時に上記第2発光部上に残存するフォトレジスト層を、その上に形成された第3発光層と共に剥離することにより、上記基体上に第1発光部、第2発光部、および第3発光部を形成する工程とをさらに有することが好ましい。
【0018】
このように、上記表面に発光層が形成されているフォトレジスト層を、その上に形成されている発光層と共に剥離する工程を2回繰り返すことにより、第1発光部、第2発光部および第3発光部を形成することが可能であり、EL素子のフルカラー化に対応することが可能となるからである。また、フォトレジスト層の剥離工程をこのように2度に分けて行なっているので、発光層およびフォトレジスト層が積み重なった状態で塗布する必要がないことから、発光層の膜厚むらや成膜欠陥等の不具合が解消できる。さらに、上記図2において説明した方法と比較すると、フォトレジスト層を露光し現像する工程を2回行なうことで3つの発光部を形成することができる。したがって、製造工程の簡略化が図れ、製造効率を向上させることが可能となる。
【0019】
上記請求項1または請求項2に記載された発明においては、請求項3に記載するように、上記表面に発光層が形成されているフォトレジスト層の剥離が、フォトレジスト層の剥離液に接触させてフォトレジスト層を溶解させる工程と、溶解させたフォトレジスト層上に形成されている発光層に力を加えることにより発光層を剥離させる工程とを有することが好ましい。フォトレジスト層と剥離液とを接触させることによりフォトレジスト層を溶出させることが可能となり、その後発光層に力を加える工程を行なえば、下層に形成されたフォトレジスト層が溶出していることから容易に発光層を除去することができるからである。
【0020】
上記請求項1から請求項3までのいずれかに記載された発明においては、請求項4に記載するように、上記フォトレジスト層上に形成されている発光層に力を加える工程が、超音波を加えることにより行われることが好ましい。超音波を用いることにより、すでに形成された複数の発光部を損傷させることなく、表面に発光層が形成されているフォトレジスト層の剥離を円滑に進めることができるからである。
【0021】
上記請求項1から請求項4までのいずれかに記載された発明においては、請求項5に記載するように、上記発光層を除去する工程が、パターニングされる発光層上にフォトレジストを塗布し、露光、現像することによりフォトレジストをパターニングした後、フォトレジストが除去された部分の発光層をドライエッチングにより除去する工程であることが好ましい。このように発光層をドライエッチングする方法を用いることにより、より高精細なパターン形成が可能となるからである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のEL素子の製造方法について具体的に説明するが、ここでは、まずその一例について図面を用いて簡単に説明した後、各工程毎に詳細に説明することにする。
【0023】
図1は、本発明のEL素子の製造方法の一例を示すものである。なお、以下の説明を含めて本発明において、「発光層」とは発光層用塗工液を塗布し、乾燥させることにより形成された層を意味し、「発光部」は所定の位置に形成された発光層を意味するものとする。
【0024】
この例においては、まず図1(a)に示すように基体1上にパターニングされた第1電極層2を形成し、さらにその上に第1発光層用塗工液を全面塗布して第1発光層3を形成する(第1発光層形成工程)。
【0025】
次いで図1(b)に示すように、ポジ型フォトレジストを全面塗布して第1フォトレジスト層4を形成する(第1フォトレジスト層形成工程)。
【0026】
そして、図1(c)に示すように第1発光部を形成するようにフォトマスク5でマスクし第1発光部以外を紫外線6で露光した後、第1フォトレジスト層4をフォトレジスト現像液によって現像し、洗浄することにより、図1(d)に示すように第1発光部が形成される部分の第1フォトレジスト層が残存するようにパターニングする(第1フォトレジスト層パターニング工程)。
【0027】
さらに、第1フォトレジスト層が除去された剥き出し部分の第1発光層3を除去することにより、図1(e)に示すように第1フォトレジスト層と第1フォトレジスト層に被覆された第1発光部3’が残る(第1発光層除去工程)。
【0028】
次いで、図1(f)に示すように、上記第1発光部3’とその表面に残存する第1フォトレジスト層4とを有する基体1上に、第2発光層用塗工液を全面塗布して第2発光層7を形成する(第2発光層形成工程)。
【0029】
ここで、第1発光部3’上に残存する第1フォトレジスト層4をその上の第2発光層7と共に剥離(リフトオフ)することにより図1(g)に示すように、第1発光部3’および第2発光部7’を形成することができる(第1リフトオフ工程)。
【0030】
なお、本発明においては、フォトレジスト層をその表面に形成された発光層と共に剥離することを「リフトオフ」と称することとする。
【0031】
この例に示すEL素子の製造方法においては、3色の発光層を形成するための工程であるので、さらに引き続き製造工程が必要となるが、例えば2色の発光層で構成されるEL素子であれば、この段階で第1発光部および第2発光部の形成が完了することから、その後第2電極層等を形成することによりEL素子とすることが可能となる。
【0032】
次いで、上記第1発光部3’および第2発光部7’、さらにはその他の第2発光層7が形成されている基体1上に、図1(h)に示すようにポジ型フォトレジストを全面塗布して、第2フォトレジスト層4’を形成する(第2フォトレジスト層形成工程)。
【0033】
次いで、上記第2フォトレジスト層4’における第1発光部3’および第2発光部7’に相当する部分をフォトマスク5でマスクし、マスクされた以外の部分を紫外線6で露光した後、レジスト現像液で現像、水洗することにより、第1発光部3’が形成される部分および第2発光部7’が形成される部分の第2フォトレジスト層4’が残存するように第2フォトレジスト層4’をパターニングする(第2フォトレジスト層パターニング工程)。
【0034】
次いで、第2フォトレジストスト層4’が除去され剥き出しになった第2発光層を除去することにより、図1(i)に示すように表面に第2フォトレジスト層4’を有する第1発光部3’および表面に第2フォトレジスト層4’を有する第2発光部7’が残る(第2発光層除去工程)。
【0035】
さらに、図1(j)に示すように、これらの上に第3発光層用塗工液を全面塗布して第3発光層8を形成する(第3発光層形成工程)。
【0036】
そして、第2フォトレジスト層4’をその上の第3発光層と共にリフトオフすることにより、図1(k)に示すように第1発光部3’、第2発光部7’、および第3発光部8’の3色の発光部が形成される(第2リフトオフ工程)。
【0037】
最後に、図2(l)に示すようにこれらの発光部上に第2電極層9を形成すると図の下方に発光10を放つEL素子が製造される。
【0038】
この例に示すように、本発明のEL素子の製造方法においては、上記第1リフトオフ工程まで行なえば、2色の発光部を有するEL素子を製造することが可能であり、第2リフトオフ工程まで行なえば3色の発光部を有するEL素子を製造することが可能である。
【0039】
そして、本発明のEL素子の製造方法を用いることにより上述した例で説明するように、フォトレジスト層および発光層の積層が多くとも3層まででパターニングを行なうことが可能となることから、上述した図2で説明した例のように多層の積層により生じる可能性の高い発光層の塗りむら等の不具合が生じることがなく、高品質なEL素子を製造することが可能となる。
【0040】
さらに、上記例から明らかなように、フォトレジスト層のパターニングを2回行なうことにより、3色の発光部を形成することが可能となる。これは、上記図2で説明した一般的なEL素子の製造方法と比較するとフォトレジスト層のパターニング回数が1回少ない。したがって、工程の簡略化が可能であるといえる。
【0041】
以下、このような本発明のEL素子の製造方法の各工程について、詳細に説明する。
【0042】
1.第1発光層形成工程
本発明においては、まず電極層が形成された基体上に第1発光層用塗工液を塗布して第1発光層を形成する。
【0043】
上記本発明に用いられる基体は、このように少なくとも電極層が形成されたものが用いられるが、本発明においてはこれに限定されるものではなく、バッファー層等の他の有機EL層が形成されたものを用いることも可能である。
【0044】
また、このような基体上への第1発光層用塗工液の塗布方法は、全面に塗布することができる塗布方法であれば特に限定されるものではなく、例えばスピンコーティング法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法等の塗布方法により塗布される。
【0045】
塗布された第1発光層用塗工液は、通常加熱等されることにより乾燥・固化されて第1発光層とされる。
【0046】
以下、このような第1発光層形成工程に用いられる各構成について具体的に説明する。
【0047】
(基体)
本発明に用いられる基体は、透明性が高いものであれば特に限定されるものではなく、ガラス等の無機材料や、透明樹脂等を用いることができる。
【0048】
上記透明樹脂としては、フィルム状に成形が可能であれば特に限定されるものではないが、透明性が高く、耐溶媒性、耐熱性の比較的高い高分子材料が好ましい。具体的には、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフッ化ビニル(PFV)、ポリアクリレート(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、非晶質ポリオレフィン、またはフッ素系樹脂等が挙げられる。
【0049】
(電極層)
上記基体上には、上述したように電極層が形成されている。このような電極層としては、通常EL素子に用いられるものであれば特に限定されるものではない。なお、このように基体に先に設ける電極層を第1電極層、有機EL層形成後に設ける電極層を第2電極層と呼ぶことがある。これらの電極層は、陽極と陰極からなり、陽極と陰極のどちらか一方が、透明または、半透明であり、陽極としては、正孔が注入し易いように仕事関数の大きい導電性材料が好ましい。また、複数の材料を混合させてもよい。いずれの電極層も、抵抗はできるだけ小さいものが好ましく、一般には、金属材料が用いられるが、有機物あるいは無機化合物を用いてもよい。
【0050】
(発光層用塗工液)
本発明においては、上記電極層が少なくとも形成された基体上に発光層用塗工液が塗布され、乾燥されることにより基体上に発光層が形成される。
【0051】
このような発光層用塗工液としては、通常、発光材料、溶媒、およびドーピング剤等の添加剤により構成されるものである。なお、本発明においては、種類の異なる発光層を複数回にわたりフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより、基体上に複数種類の発光部を形成するEL素子の製造方法であることから、複数色の発光層が形成されるものである。したがって、複数種類の発光層用塗工液が用いられる。以下、これら発光層用塗工液を構成する各材料について説明する。
【0052】
A.発光材料
本発明に用いられる発光材料としては、蛍光を発する材料を含み発光するものであれば特に限定されず、発光機能と正孔輸送機能や電子輸送機能をかねていることができる。本発明においては、後述するようにフォトリソグラフィー法により発光層のパターニングを行なう関係上、発光層を形成する材料が、後述するフォトレジスト溶媒、フォトレジスト現像液、およびフォトレジスト剥離液に不溶である材料が好ましい。また、この場合は、発光層をフォトリソグラフィー法によりパターニングする際に用いるフォトレジストが、発光層の形成に用いる溶媒に不溶の材料を用いることが好ましい。
【0053】
このような発光材料としては、色素系材料、金属錯体系材料、および高分子系材料を挙げることができる。
【0054】
▲1▼色素系材料
色素系材料としては、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等を挙げることができる。
【0055】
▲2▼金属錯体系材料
金属錯体系材料としては、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属に、Al、Zn、Be等または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等を挙げることができる。
【0056】
▲3▼高分子系材料
高分子系の材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体等、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素体、金属錯体系発光材料を高分子化したもの等を挙げることができる。
【0057】
本発明においては、発光層用塗工液を用いてフォトリソグラフィー法により発光層を精度よく形成することができるという利点を活かすという観点から、発光材料として上記高分子系材料を用いたものがより好ましい。
【0058】
B.溶媒
発光層用塗工液は、上記図1に示す例からも明らかなように、フォトレジスト層上に塗布される場合がある。したがって、この発光層用塗工液に用いられる溶媒としては、フォトレジストに対する溶解度が25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましく、さらに好ましくは0.0001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましい。例えば、後述するバッファー層が水系やDMF、DMSO、アルコール等の極性溶媒に溶解し、フォトレジストが一般的なノボラック系ポジレジストの場合、ベンゼン、トルエン、キシレンの各異性体およびそれらの混合物、メシチレン、テトラリン、p−シメン、クメン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ブチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンの各異性体およびそれらの混合物等をはじめとする芳香族系溶媒、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、2−ブタノン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ジグライム等をはじめとするエーテル系溶媒、ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1−クロロナフタレン等のクロル系溶媒、シクロヘキサノン等が挙げられるが、この他でも条件を満たす溶媒であれば使用可能であり、2種以上の混合溶媒であっても良い。
【0059】
また、後述するように溶媒に可溶なバッファー層と用いる場合、発光層の成膜の際にバッファー層と発光層材料が混合や溶解することを防ぎ、発光材料本来の発光特性を保つためにバッファー層を溶解しないことが望ましい。
【0060】
このような観点から、発光層用塗工液用の溶媒はバッファー層材料に対する溶解度が25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましく、さらに好ましくは0.0001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましい。
【0061】
C.添加剤
本発明に用いられる発光層用塗工液には、上述したような発光材料および溶媒に加えて種々の添加剤を添加することが可能である。例えば、発光層中の発光効率の向上、発光波長を変化させる等の目的でドーピング材料が添加される場合がある。このドーピング材料としては例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィレン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン等を挙げることができる。
【0062】
(バッファー層)
本発明で用いられる基体上には、上述するように電極の他にバッファー層が形成されていてもよい。本発明でいうバッファー層とは、発光層に電荷の注入が容易に行われるように、陽極と発光層との間または陰極と発光層との間に設けられ、有機物、特に有機導電対などを含む層である。例えば、発光層への正孔注入効率を高めて、電極などの凹凸を平坦化する機能を有する導電性高分子とすることができる。
【0063】
本発明に用いられるバッファー層は、その導電性が高い場合、素子のダイオード特性を保ち、クロストークを防ぐためにパターニングされていることが望ましい。なお、バッファー層の抵抗が高い場合等はパターニングされていなくても良い場合もあり、またバッファー層が省ける素子の場合はバッファー層を設けなくても良い場合もある。
【0064】
本発明において、バッファー層および発光層の両者がフォトリソグラフィー法によりパターニングされて形成される場合は、バッファー層を形成する材料が、フォトレジスト溶媒および発光層形成に用いる溶媒に不溶であるものを選択することが好ましく、より好ましくはバッファー層を形成する材料が、フォトレジスト剥離液に不溶である材料を選択した場合である。
【0065】
本発明に用いられるバッファー層を形成する材料としては、具体的にはポリアルキルチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、トリフェニルアミン等の正孔輸送性物質の重合体、無機酸化物のゾルゲル膜、トリフルオロメタン等の有機物の重合膜、ルイス酸を含む有機化合物膜等が挙げられるが、上述したような溶解性に関する条件を満たしていれば特に限定されず、成膜後に反応、重合あるいは焼成等により上記の条件を満たしても良い。
【0066】
また、本発明においてバッファー層を形成する際に用いられる溶媒としては、バッファー材料が分散または溶解していればよく、特に制限されるものではないが、フルカラーのパターニング等において、複数回の成膜が必要である場合、フォトレジスト材料を溶解しないバッファー層溶媒を用いる必要があり、さらに好ましくは発光層を溶解しないバッファー層溶媒であることが好ましい。
【0067】
本発明に用いることができるバッファー層溶媒としては、レジスト材料の溶解度が、25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましく、さらに好ましくは0.0001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することである。またバッファー層溶媒としてさらに好ましくは、発光層構成材料の溶解度が、25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することであり、特に0.0001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましい。
【0068】
具体的には、水、メタノール、エタノールをはじめとするアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等の溶媒が挙げられるが、この他でも条件を満たす溶媒であれば使用可能である。また、2種以上の溶媒を混合して用いても良い。
【0069】
なお、必要であれば、硬化性の樹脂等を用いた溶媒に不溶なバッファー層を用いても良い。具体的には、ゾルゲル反応液、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を挙げることができる。すなわち、未硬化状態のゾルゲル反応液、光硬化性樹脂もしくは熱硬化性樹脂にバッファー層として機能させるための添加剤を加えてバッファー層形成用塗工液としたものや、ゾルゲル反応液、光硬化性樹脂もしくは熱硬化性樹脂自体を変性することにより、バッファー層として機能させるようにしたバッファー層形成用塗工液を用い、このようなバッファー層形成用塗工液を硬化させることにより溶媒に不溶なバッファー層を用いることも可能である。
【0070】
2.第1フォトレジスト層形成工程
次に、本発明においては、上記第1発光層が形成された基体に対し、フォトレジストを全面に塗布することにより、第1フォトレジスト層を形成する。
【0071】
このフォトレジストの塗布方法は、一般的に塗工液を全面に塗布する方法であれば特に限定されるものではなく、具体的には、スピンコーティング法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法等の塗布方法が用いられる。
【0072】
本発明は、このように発光層上にフォトレジスト層を形成し、発光層をフォトリソグラフィー法によりパターニングし、さらに後述するリフトオフ工程をフォトリソグラフィー法に取り入れたことを特徴とするものである。このフォトリソグラフィー法とは、光照射により膜の光照射部の溶解性が変化することを利用して光照射パターンに応じた任意のパターンを形成する方法である。
【0073】
以下、この工程で用いられるフォトレジストおよびフォトレジスト溶媒について説明する。
【0074】
(フォトレジスト)
本発明において用いることができるフォトレジストは、ポジ型であってもネガ型であっても特に限定されるものではないが、発光層などの有機EL層形成に用いる溶媒に不溶であるものが好ましい。
【0075】
具体的に用いることができるフォトレジストとしては、ノボラック樹脂系、ゴム+ビスアジド系等を挙げることができる。
【0076】
(フォトレジスト溶媒)
本発明において、上記フォトレジストをコーティングする際に用いられるフォトレジスト溶媒としては、フォトレジスト成膜の際に発光層等の上述した有機EL層とフォトレジスト材料が混合や溶解することを防ぎ、本来の発光特性を保つために発光層材料等の有機EL材料を溶解しないものを用いることが望ましい。この点を考慮すると、本発明に用いることができるフォトレジスト溶媒としては、発光層形成用材料等の有機EL層形成用の材料に対する溶解度が、25℃、1気圧で0.001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましく、さらに好ましくは0.0001(g/g溶媒)以下の溶媒を選択することが好ましい。
【0077】
例えば、バッファー層形成材料が水系の溶媒に溶解し、発光層が芳香族系等の無極性有機溶媒に溶解する場合に用いることができるフォトレジスト溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトンをはじめとするケトン類、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、をはじめとするセロソルブアセテート類、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルをはじめとするセロソルブ類、メタノール、エタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、シクロヘキサノールをはじめとするアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、シクロヘキサン、デカリン等が挙げられるが、この他でも条件を満たす溶媒であれば使用可能であり、2種以上の混合溶媒であっても良い。
【0078】
3.第1フォトレジスト層パターニング工程
次に、本発明においては、上記フォトレジスト層をパターン露光した後、現像することにより、第1発光部が形成される部分のフォトレジスト層が残存するようにパターニングする工程が行なわれる。
【0079】
この工程においては、まずフォトマスクを介してフォトレジスト層が露光される。この露光方法等に関しては、従来の露光方法と同様であるので、ここでの説明は省略するが、フォトマスクは、第1発光部が形成される部分のフォトレジスト層が残存するように形成されたフォトマスクが用いられる。具体的には、図1に示す例では、ポジ型のフォトレジストが用いられていることから、第1発光部に該当する部分が遮光されるようなフォトレジストが用いられ、逆にネガ型のフォトレジストを用いる場合は、上記第1発光部に該当する部分のみ露光するようなフォトマスクが用いられるのである。
【0080】
なお、例えばレーザ光等による描画によりパターン状に露光される場合も考えられるが、本発明はこのような場合も含むものである。
【0081】
そして、パターン露光が行なわれた後、第1フォトレジスト層の現像が行なわれ、その結果、第1発光部上に第1フォトレジスト層が残存するようにフォトレジスト層のパターニングが行なわれる。
【0082】
以下、この工程におけるフォトレジスト層のパターニングに用いられる現像液について、説明する。
【0083】
(フォトレジスト現像液)
本発明に用いることができるフォトレジスト現像液としては、上記発光層を形成する材料を溶解するものでなければ特に限定されるものではない。具体的には、一般的に使用されている有機アルカリ系現像液を使用できるが、そのほかに、無機アルカリ、またはフォトレジスト層の現像が可能な水溶液を使用することができる。フォトレジスト層の現像を行った後は水で洗浄するのが望ましい。
【0084】
本発明に用いることができる現像液としては、発光層形成用材料に対する溶解度が、25℃、1気圧で0.001(g/g現像液)以下の現像液であることが好ましく、さらに好ましくは0.0001(g/g現像液)以下の現像液を選択することである。
【0085】
4.第1発光層除去工程
本発明においては、このように第1フォトレジスト層がパターニングされた後、第1フォトレジスト層で覆われていない第1発光層を除去する第1発光層除去工程が行なわれる。
【0086】
この第1発光層除去工程は、発光層を溶解する溶媒を用いる湿式法、およびドライエッチングを用いる乾式法を用いることが可能であるが、本発明においては、混色等の不具合の無い乾式法を用いることが好ましい。以下、それぞれの方法について説明する。
【0087】
(湿式法)
この場合の湿式法とは、フォトレジストを剥離することなく、発光層を溶解または剥離することができる溶媒を用いて第1発光層を溶解させて除去される方法である。この際用いることができる溶媒としては、上述した発光層用塗工液の溶媒を用いることができる他、上記条件を満たす溶媒であれば他の溶媒を選択することもできる。
【0088】
また、この溶媒を用いて除去する際に超音波浴中で行なうようにしてもよい。
このように超音波浴を用いることにより、第1発光層のパターンの細りや第1発光層の流出等の不具合の無い、精度の高いパターニングが可能となるからであり、短時間で精度の高いパターニングが可能となる点で好ましい。
【0089】
本発明においては、この超音波浴に用いる超音波の条件は、25℃において、20〜100キロヘルツの発振周波数で、0.1〜60秒間行なうことが好ましく、このような条件とすることで、短時間で精度の高いパターニングが可能となる。
【0090】
(乾式法)
一方、乾式法とは、ドライエッチングを用いてフォトレジストが除去された部分の第1発光層を除去する方法である。
【0091】
通常、フォトレジスト層は、発光層よりかなり厚く成膜されることから、全体的にドライエッチングを行うことにより、発光層を除去することができるのである。
【0092】
この場合、フォトレジスト層の膜厚は、0.1〜10μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、0.5〜5μmの範囲内である。このような膜厚とすることで、フォトレジストのレジスト機能を保ったまま、加工精度の高いドライエッチングが可能となる。
【0093】
このように、ドライエッチングを用いれば、エッチングの端部をよりシャープとすることが可能となることから、パターンの端部に存在する膜厚不均一領域の幅をより狭くすることが可能となり、その結果、より高精細なパターニングが可能となるという効果を奏する。
【0094】
本発明に用いられるドライエッチング法としては、ドライエッチングが、反応性イオンエッチングであることが好ましい。反応性イオンエッチングを用いることにより、有機膜が化学的に反応を受け、分子量の小さい化合物となることにより、気化・蒸発して基体上から除去することができ、エッチング精度の高い、短時間の加工が可能となるからである。
【0095】
また、本発明においては、上記ドライエッチングに際して、酸素単体または酸素を含むガスを用いることが好ましい。酸素単体または酸素を含むガスを用いることで有機膜の酸化反応による分解除去が可能であり、基体上から不要な有機物を除去することができ、エッチング精度の高い、短時間の加工が可能である。また、この条件では、通常用いられるITO等の酸化物透明導電膜をエッチングすることがないので、電極特性を損なうことなく、電極表面を浄化することができる点においても効果的である。
【0096】
さらに、本発明においては上記ドライエッチングに、大気圧プラズマを用いることが好ましい。大気圧プラズマを用いることで、通常真空装置が必要であるドライエッチングが大気圧下で行なうことができ、処理時間の短縮、およびコストの低減が可能である。この場合、エッチングはプラズマ化した大気中の酸素によって有機物が酸化分解することを利用することとできるが、ガスの置換および循環によって反応雰囲気のガス組成を任意に調整してもよい。
【0097】
5.第2発光層形成工程
本発明においては、このようにして第1フォトレジスト層で覆われていない第1発光層の部分を除去した後、第2発光層用塗工液を全面に塗布することにより第2発光層を形成する。
【0098】
この際の塗布方法、および第2発光層用塗工液の組成等に関しては、上記第1発光層用塗工液と同様であるので、ここでの説明は省略する。ただし、通常第1発光層と第2発光層とでは、異なる色の光を発光させることが要求されることから、上述した発光材料としては、異なる種類の発光材料が選択されて用いられる。
【0099】
6.第1リフトオフ工程
本発明においては、このように全面に第2発光層を形成した後、第1発光部上に残存する第1フォトレジスト層を、その上に形成された第2発光層と共に剥離する、いわゆるリフトオフを行なう。
【0100】
このようにリフトオフを行なうことにより、第1発光部および第2発光部が形成され、その他の部分、具体的には第3発光部が形成される部分に第2発光層が残存することになる。
【0101】
なお、ここで、発光部が2種類のみで形成される場合は、この第1リフトオフ工程を行うことにより、第1発光部および第2発光部を形成することができ、最後に電極層等を形成することにより、EL素子とすることができる。
【0102】
以下、本発明で行なわれるリフトオフ工程について説明する。
【0103】
(リフトオフ工程)
本発明で行なわれるリフトオフ工程は、フォトレジスト層の剥離液に接触させてフォトレジスト層を溶解させる溶解工程と、溶解されたフォトレジスト層上に形成されている発光層に力を加えることにより発光層を剥離させる剥離工程とを有するものである。
【0104】
(溶解工程)
溶解工程においては、基体上のフォトレジスト層がフォトレジスト層の剥離液に接触させられる。ここで、接触するとは、例えば剥離液に浸漬させた状態、剥離液がシャワー状でかけられている状態等のフォトレジスト層と剥離液が物理的に接触している状態をいう。
【0105】
本発明に用いられるフォトレジスト層の剥離液としては、上記発光層を溶解せずに、フォトレジスト層を溶解することができるものであれば特に限定されるものはないが、上述したようなフォトレジストの溶媒をそのまま使用することも可能であり、また、ポジ型レジストを用いた場合は紫外線露光を行った後でフォトレジスト現像液として列挙した液を用いて剥離することも可能である。
【0106】
さらに、強アルカリ水溶液、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等の溶媒、およびそれらの混合物、市販のフォトレジスト剥離液を用いてもよい。
【0107】
(剥離工程)
剥離工程においては、上記溶解工程によりフォトレジスト層が溶解した状態において、何らかの力をフォトレジスト層上に残存する発光層に加えることにより発光層を剥離する。
【0108】
ここで、加える力としては、例えば剥離液をシャワー状に加えることによる水圧であってもよいし、また剥離液中に基体を浸漬させた状態で、左右に揺らすことにより剥離液の水流により力を加え、これにより発光層を剥離するようにしてもよい。
【0109】
しかしながら、本発明においては、上記フォトレジスト層上に形成されている発光層に力を加える工程が、超音波を加えることにより行なわれることが好ましい。超音波を用いることにより、剥離するフォトレジスト層の下の発光部を損傷させることなくリフトオフが可能となり、各パターンの細りや発光層材料の流出等の不具合のない、精度の高いパターニングが可能となるからである。
【0110】
本発明においては、この超音波浴に用いる超音波の条件は、25℃において、20〜100キロヘルツの発振周波数で、0.1〜60秒間行なうことが好ましく、このような条件とすることで、短時間で精度の高いパターニングが可能となる。
【0111】
7.第2フォトレジスト層形成工程
このように1回目のリフトオフ工程が終了し、第1発光部および第2発光部が形成された基体全面にフォトレジストを塗布して、第2フォトレジスト層を形成する。
【0112】
ここで用いられるフォトレジストに関しては、上記第1フォトレジスト層形成工程において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。なお、本発明においては、第1フォトレジスト層と第2フォトレジスト層を構成する材料は、同一の材料が通常用いられるが、必要があれば異なる材料を用いてもよい。
【0113】
8.第2フォトレジスト層パターニング工程
全面に第2フォトレジスト層が形成された後、パターン状に露光して現像することにより、第1発光部が形成される部分および第2発光部が形成される部分のフォトレジストが残存するように第2フォトレジスト層がパターニングされる。
【0114】
この際の、露光方法、現像方法等に関しては、上記第1フォトレジスト層パターニング工程と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0115】
9.第2発光層除去工程
上記第2フォトレジスト層パターニング工程において第2フォトレジスト層が除去された部分の第2発光層を除去することにより、表面に第2フォトレジスト層を有する第1発光部および表面に第2フォトレジスト層を有する第2発光部を形成する。
【0116】
この第2発光層除去工程においても、上記第1発光層除去工程と同様に、湿式法および乾式法の両方式を用いることが可能であるが、この場合も上述したように高精細なパターン形成を行なうことが可能である点等を考慮して、乾式法により行われることが好ましい。
【0117】
なお、この発光層の除去方法自体は、上記第1発光層除去工程で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0118】
10.第3発光層形成工程
このように第2発光層が除去され、表面に第2フォトレジスト層を有する第1発光部および表面に第2フォトレジストが形成された第2発光部が形成された基体上に、第3発光層用塗工液を塗布し、乾燥等させることにより第3発光層を形成する。
【0119】
この第3発光層用塗工液は、上記第1発光層用塗工液の欄で説明した材料を用いることが可能であるので、ここでの説明は省略するが、上記第2発光層の場合と同様に、フルカラー発光を行なうことが要求される場合は、第3発光層用塗工液に用いる発光材料は、第1および第2発光層用塗工液と異なる色を発光するものであることが必要となる。
【0120】
11.第2リフトオフ工程
そして最後に、第1発光部上および第2発光部上に残存する第2フォトレジスト層をその上に形成された第3発光層と共に剥離する第2リフトオフ工程を行なうことにより、基体上に第1発光部、第2発光部、および第3発光部が形成される。
【0121】
この際の第2リフトオフ工程の詳細は、上記第1リフトオフ工程と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0122】
この第2リフトオフ工程を行なうことにより、3種類の発光部を有するEL素子を形成することが可能となるが、さらに同様にしてリフトオフ工程を行なうことにより4種類以上の発光部を形成することも可能である。
【0123】
12.その他
(その他の有機EL層)
本発明のEL素子の製造方法においては、上述したバッファー層以外の有機EL層を形成する工程を有していてもよい。このような有機EL層としては、電荷輸送層や電荷注入層を挙げることができる。この電荷注入層には正孔注入層および/または電子注入層が含まれる。これらを形成する材料としては、例えば特開平11−4011号公報に記載のもののように、EL素子に一般に用いられるものであれば特に限定されない。
【0124】
なお、有機EL層を構成する、発光材料、正孔輸送材料、または電子輸送材料は、それぞれ単独で使用してもよいし、混合して使用してもよい。同じ材料を含む層は1層でも複数層でもよい。
【0125】
(絶縁層)
また、上記第1発光層形成工程において用いられる基体上に絶縁層が形成されていてもよい。この絶縁層は、基体上に形成されている第1電極層のパターニングしたエッジ部分および素子の非発光部分を覆い、発光に不要な部分での短絡を防ぐために、発光部分が開口となるように予め形成されているものである。このように絶縁層を形成することで、最終的に得られるEL素子の短絡等による欠陥を低減し、長寿命で安定発光する素子が得られる。
【0126】
このような絶縁層は、通常知られている通り、例えば、UV硬化性の樹脂材料等を用いて1μm程度の膜厚でパターン形成することができるが、上述したようにドライエッチングで発光層を除去する場合、絶縁層はドライエッチング耐性があることが望ましく、耐性が小さい場合は、1μm以上、例えば、1.5〜10μmの膜厚で形成し、ドライエッチングで欠損しないようにすることが好ましく、さらに好ましくは2〜5μmの膜厚で形成することである。
【0127】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0128】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明をさらに説明する。
【0129】
(バッファー層の成膜)
6インチ□、板厚1.1mmのパターニングされたITO基体を洗浄し、基体および第1電極層とした。バッファー層塗布液(バイエル社製;BaytronP、以下の化学式(1)に示す。)を0.5mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。2500rpmで20秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は800オングストロームとなった。
【0130】
【化1】
【0131】
ポジ型フォトレジスト液(東京応化社製;OFPR−800)を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。500rpmで10秒間保持し、その後、2000rpmで20秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は1μmとなった。80℃で30分間プリベークを行った。その後、アライメント露光機に露光マスクと共にセットし、バッファー層を除去したい部分に紫外線露光した。レジスト現像液(東京応化社製;NMD−3)で20秒間現像後、水洗し、露光部のフォトレジストおよび、バッファー層を除去した。120℃で30分間ポストベークした後、アセトンでフォトレジストを全て除去し、アセトンに不溶のバッファー層を任意のパターンに形成した。
【0132】
(発光層の成膜)
第1発光層としてバッファー層がパターニングされた基体上にポリビニルカルバゾール(以下の化学式(2)に示す。)の2wt%トルエン溶液を、を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。2000rpmで10秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は800オングストロームとなった。
【0133】
【化2】
【0134】
ポジ型フォトレジスト液(東京応化社製;OFPR−800)を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。500rpmで10秒間保持し、その後、2000rpmで20秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は1μmとなった。80℃で30分間プリベークを行った。その後、アライメント露光機に露光マスクと共にセットし、第1発光部以外の第1発光層を除去したい部分に紫外線露光した。レジスト現像液(東京応化社製;NMD−3)で20秒間現像後、水洗し、露光部のフォトレジストを除去した。120℃で30分間ポストベークした後、トルエンでフォトレジストが除去された部分の発光層を除去し、第1の発光部がフォトレジストで保護された基体を得た。
【0135】
第2発光層としてポリパラフェニレンビニレン誘導体発光高分子MEH−PPV(以下の化学式(3)に示す。)の1wt%キシレン溶液を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。2000rpmで10秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は800オングストロームとなった。
【0136】
【化3】
【0137】
アセトン浴中で超音波を用いてフォトレジストを剥離することで、パターニングされた第1発光層の上部に形成された第2発光層をフォトレジストと共に剥離(リフトオフ)し、パターニングされた第1発光層(第1発光部)を露出させた。
【0138】
ポジ型フォトレジスト液(東京応化社製;OFPR−800)を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。500rpmで10秒間保持し、その後、2000rpmで20秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は1μmとなった。80℃で30分間プリベークを行った。その後、アライメント露光機に露光マスクと共にセットし、第1発光部と第2発光部以外の発光層を除去したい部分に紫外線露光した。レジスト現像液(東京応化社製;NMD−3)で20秒間現像後、水洗し、露光部のフォトレジストを除去した。120℃で30分間ポストベークした後、トルエンでフォトレジストが除去された部分の発光層を除去し、第1発光部および第2発光部がフォトレジストで保護された基体を得た。
【0139】
第3発光層として上記ポリパラフェニレンビニレン誘導体発光高分子MEH−PPVの1wt%キシレン溶液を2mlとり、基体の中心部に滴下して、スピンコーティングを行った。2000rpmで10秒間保持して層形成した。この結果、膜厚は800オングストロームとなった。
【0140】
アセトン浴中で超音波を加えながらフォトレジストを剥離することで、パターニングされた第1発光部および第2発光部の上部に形成された第3発光層をフォトレジストと共に剥離(リフトオフ)し、パターニングされた第1および第2発光部を露出させた。
【0141】
このとき、第3発光層は第1発光部および第2発光部上からは除去されており、改めてパターニングする必要がない。100℃で1時間乾燥した後、次いで得られた基体上に、第2電極(上部電極)としてCaを500オングストロームの厚みで蒸着し、さらに保護層としてAgを2500オングストロームの厚みで蒸着し、EL素子を作製した。
【0142】
(EL素子の発光特性の評価)
ITO電極側を正極、Ag電極側を負極に接続し、ソースメータにより、直流電流を印加した。10V印加時に、第1発光部乃至第3発光部のそれぞれより発光が認められた。
【0143】
【発明の効果】
本発明によれば、表面に第2発光層が形成されているフォトレジスト層を第2発光層と共に剥離することにより、複数の発光層やフォトレジスト層が幾層も積層した状態を解消することができる。したがって、複数の発光層やフォトレジスト層が幾層も積層された状態において、さらに次の発光層を積み重ねることによって生じる発光層の膜厚むらや成膜欠陥を回避することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のEL素子の製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】従来のEL素子の製造方法の一例を示す工程図である。
【符号の説明】
1 … 基体
2 … 第1電極層
3 … 第1発光層
3’ … 第1発光部
4 … 第1フォトレジスト層
4’ … 第2フォトレジスト層
6 … 紫外線
7 … 第2発光層
7’ … 第2発光部
8 … 第3発光層
8’ 第3発光部
Claims (5)
- 電極層が形成された基体上に、種類の異なる発光層を複数回にわたりフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることにより、前記基体上に複数種類の発光部を形成するエレクトロルミネッセント素子の製造方法において
前記電極層が形成された基体上に第1発光層用塗工液を塗布することにより第1発光層を形成する工程と、
前記第1発光層上にフォトレジストを塗布してフォトレジスト層を形成する工程と、
前記フォトレジスト層をパターン露光した後現像することにより、第1発光部が形成される部分のフォトレジスト層が残存するようにパターニングする工程と、
前記フォトレジスト層が除去された部分の第1発光層を除去することにより表面にフォトレジスト層を有する第1発光部を形成する工程と、
前記第1発光部とその表面に残存するフォトレジスト層とを有する基体上に第2発光層用塗工液を塗布して第2発光層を形成する工程と、
前記第1発光部上に残存するフォトレジスト層を、その上に形成された第2発光層と共に剥離することにより、前記基体上に第1発光部および第2発光部を形成する工程と、
を有することを特徴とするエレクトロルミネッセント素子の製造方法。 - 前記第1発光部および第2発光部が形成された基体上にフォトレジストを塗布してフォトレジスト層を形成する工程と、
前記フォトレジスト層をパターン露光した後現像することにより、第1発光部が形成される部分および第2発光部が形成される部分のフォトレジスト層が残存するようにパターニングする工程と、
前記フォトレジスト層が除去された部分の第2発光層を除去することにより表面にフォトレジスト層を有する第1発光部および表面にフォトレジスト層を有する第2発光部を形成する工程と、
前記表面にフォトレジスト層を有する第1発光部および表面にフォトレジスト層を有する第2発光部が形成された基体上に第3発光層用塗工液を塗布して第3発光層を形成する工程と、
前記第1発光部上に残存するフォトレジスト層を、その上に形成された第3発光層と共に剥離し、同時に前記第2発光部上に残存するフォトレジスト層を、その上に形成された第3発光層と共に剥離することにより、前記基体上に第1発光部、第2発光部、および第3発光部を形成する工程と、
を有することを特徴とする請求項1記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。 - 前記表面に発光層が形成されているフォトレジスト層の剥離が、フォトレジスト層の剥離液に接触させてフォトレジスト層を溶解させる工程と、溶解させたフォトレジスト層上に形成されている発光層に力を加えることにより発光層を剥離させる工程とからなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
- 前記フォトレジスト層上に形成されている発光層に力を加える工程が、超音波を加えることにより行なわれることを特徴とする請求項3に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
- 前記発光層を除去する工程が、パターニングされる発光層上にフォトレジストを塗布し、露光、現像することによりフォトレジストをパターニングした後、フォトレジストが除去された部分の発光層をドライエッチングにより除去する工程であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のエレクトロルミネッセント素子の製造方法。
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