JP4577466B2 - スケール防止方法及びスケール防止剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スケール防止方法及びスケール防止剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、高炉若しくは転炉ガス集塵水系又は溶融炉形式の金属精錬炉ガス集塵水系のスケール発生を効果的に防止することができるスケール防止方法及びスケール防止剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
製鉄所においては、製鉄設備である高炉や転炉から、操業中に莫大な量のガスが発生する。このガスには、相当量の一酸化炭素が含まれているので、これを回収し、燃料として再利用している。
しかし、これらのガスには、多量の煤塵が含まれており、そのままでは熱効率が低下するなどの問題がある。そこでガスは炉から排出されたのち、清浄化することが必要になり、その清浄化手段として、通常は湿式集塵器、例えば、ベンチュリースクラバーや、電気集塵器などが用いられる。集塵器で煤塵を捕集した集塵水は、シックナーに送られ、集塵水中の懸濁物質を沈殿除去したのち、処理水は必要に応じて冷却塔で冷却され、再び集塵器の集塵水として利用される。
ところが、集塵水は、集塵器でカルシウムやアルカリ金属を含む煤塵を捕集すると同時に、ガス中に多量に含まれている炭酸ガスをも吸収するためにpHが低下し、煤塵中のカルシウムが溶解する。このために、集塵水にはカルシウムイオンや重炭酸イオン(Mアルカリ度成分)などが、かなりの濃度で溶存することになる。一方、集塵器から出た集塵水は、シックナーなどでの大気開放条件下で炭酸ガスを放出し、pHが上昇する。その結果、カルシウムイオンの飽和濃度は、pHの上昇とともに急激に低下するので、いったん集塵水中に溶解したカルシウムイオンは、過飽和な状態で存在することになる。
このように、カルシウムイオンの過飽和な状態の水が再び集塵水として給水されると、送水ポンプや送水配管、冷却塔充填材や集塵器の噴霧ノズル、シックナーからのスラリー引抜き配管などに、炭酸カルシウムなどがスケールとして付着する。スケール付着の結果、集塵器の噴霧ノズルの閉塞や、配管の狭窄による送水量の低下をもたらし、清掃のための操業一時停止による生産能力の低下や、送水量を確保するために送水ポンプの運転台数を増やすことによる動力費の増加など、さまざまな問題が生ずる。そのために、これまでにもいくつかのスケール防止対策がとられている。
例えば、特公昭57−54711号公報には、高炉ガス集塵水を沈殿処理し、処理水にリグニンスルホン酸又はその塩を添加して再び集塵用水として循環使用する方法が提案されている。このような水溶性高分子を添加する方法は、他にも例が多く、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリマレイン酸などを添加する方法が提案されている。これらの水溶性高分子をスケール発生箇所に添加することにより、スケール付着を防止することはできるものの、その効果は添加した箇所の近傍に限られ、効果の安定性、持続性はほとんどない。その理由は、水中の高濃度のカルシウムイオンのために、ポリマー自体が析出し、機能を果たさなくなるためである。また、ヘキサメタリン酸塩、ホスホン酸塩などのリン系化合物を添加する方法も提案されているが、上記の水溶性高分子と同様に、効果の安定性、持続性に問題がある。さらに、pHを下げることにより、炭酸カルシウムを溶解し、スケール化を防ぐ方法も提案されているが、pHが低下しすぎると装置や配管の腐食が生ずるために、pH調整操作が煩雑となり、工場の操業に悪影響を与える場合が多い。種晶を添加してスケール防止を行う方法も提案されているが、効果の面でまだ改良が必要である。また、種晶は高価でもある。
このように、高炉若しくは転炉ガス集塵水系又は溶融炉形式の金属精錬炉ガス集塵水系においては、従来のスケール防止剤ではその適用対象が限られ、また、効果の安定性にも問題があることから、これらの水系における有効なスケール防止方法及びスケール防止剤が求められていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高炉若しくは転炉ガス集塵水系又は溶融炉形式の金属精錬炉ガス集塵水系に適用して、スケールの付着を効果的に防止することができるスケール防止方法及びスケール防止剤を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、水に溶解して水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを生成する物質を集塵水系に添加することにより、スケールの付着を効果的に防止し得ることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)高炉若しくは転炉ガス集塵水系又は溶融炉形式の金属精錬炉ガス集塵水系に、水に溶解して水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを生成する物質を添加することを特徴とするスケール防止方法、
(2)水に溶解して水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを生成する物質が、高炉又は転炉シックナースラリーである第1項記載のスケール防止方法、及び、
(3)高炉若しくは転炉ガス集塵水系又は溶融炉形式の金属精錬炉ガス集塵水系用スケール防止剤であって、水に溶解して水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを生成する物質を含有することを特徴とするスケール防止剤、
を提供するものである。
さらに、本発明の好ましい態様として、
(4)水に溶解して水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを生成する物質の添加量が、集塵水系を流れる水量に対して、50mgCa2+/L以上又は50mgMg2+/L以上となる量である第1項記載のスケール防止方法、
(5)水に溶解して水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを生成する物質の添加量が、集塵水系を流れる水量に対して、100mgCa2+/L以上又は100mgMg2+/L以上となる量である第4項記載のスケール防止方法、
(6)水に溶解して水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを生成する物質を、集塵水系を流れる水のpHが8.0以上となるように添加する第1項記載のスケール防止方法、及び、
(7)水に溶解して水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを生成する物質を、集塵水系を流れる水のpHが8.5以上となるように添加する第6項記載のスケール防止方法、
を挙げることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のスケール防止方法においては、高炉若しくは転炉ガス集塵水系又は溶融炉形式の金属精錬炉ガス集塵水系に、水に溶解して水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを生成する物質を添加する。本発明のスケール防止剤は、高炉若しくは転炉ガス集塵水系又は溶融炉形式の金属精錬炉ガス集塵水系用スケール防止剤であって、水に溶解して水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを生成する物質を含有する。
本発明のスケール防止方法及びスケール防止剤は、高炉若しくは転炉ガス集塵水系又は溶融炉形式の金属精錬炉ガス集塵水系に好適に適用することができる。
図1は、高炉ガス清浄設備の一例の工程系統図である。本例においては、高炉1において発生した高炉ガス中のダストが、ダストキャッチャー2において乾ダストとして捕集され、さらにベンチュリースクラバー3及び湿式電気集塵器4において湿ダストとして捕集される。ダストが除去された高炉ガスは、ガスホルダー5に貯留され、燃料として利用される。ベンチュリースクラバー及び湿式電気集塵器からの排水は、シックナー6に導かれて固液分離処理される。シックナーの処理水はいったん処理水槽7に貯留されたのち、冷却塔8で冷却され、ベンチュリースクラバー3及び湿式電気集塵器4に循環して再使用される。シックナーで発生したスラッジは、脱水機9において脱水処理される。
図2は、転炉ガス清浄設備の一例の工程系統図である。本例においては、転炉10において発生した転炉ガスは、誘引通風ファン11により誘引され、ダクト12を経由して第一集塵器13に導かれてダストが除去され、さらに第二集塵器14に導かれてダストが除去される。ダストが除去された転炉ガスは、回収弁15及び水封V弁16を経由してガスホルダー17に貯留され、燃料として利用される。第二集塵器14の排水は、第一集塵器13に給水され、第一集塵器の排水は粗粒分離機18で粗粒を除去したのち、シックナー19に導かれて固液分離処理される。シックナーの処理水は、いったん処理水槽20に貯留されたのち、第二集塵器に給水されて再使用される。
【0006】
高炉ガス清浄設備においても、転炉ガス清浄設備においても、集塵水は、集塵器でカルシウムやアルカリ金属を含む煤塵を捕集すると同時に、ガス中に多量に含まれている炭酸ガスをも吸収するためにpHが低下し、煤塵中のカルシウムが溶解する。このために、集塵水にはカルシウムイオンや重炭酸イオンなどが多量に溶存し、シックナーなどで炭酸ガスを放出してpHが上昇すると、カルシウムイオンの飽和濃度が低下し、カルシウムイオンが過飽和となってスケールが発生しやすい状態となる。
本発明のスケール防止方法及び防止剤を適用することができる溶融炉形式により精錬される金属としては、例えば、亜鉛、クロム、鉄合金などを挙げることができる。
本発明に用いる水に溶解して水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを生成する物質としては、例えば、水酸化カルシウム(消石灰)及び水酸化マグネシウムそれ自体のほか、酸化カルシウム(生石灰)、酸化マグネシウム、高炉シックナースラリー、転炉シックナースラリー、高炉乾ダスト、転炉乾ダストなどを挙げることができる。これらの水に溶解して水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを生成する物質は、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの物質の中で、高炉シックナースラリー又は転炉シックナースラリーは、高炉又は転炉ガス集塵水系において副生する物質であり、スケール防止効果に優れるので、特に好適に用いることができる。
【0007】
本発明において、高炉若しくは転炉ガス集塵水系又は溶融炉形式の金属精錬炉ガス集塵水系に、水に溶解して水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを生成する物質を添加することにより、水中にカルシウムイオンCa2+とヒドロキシルイオンOH-が存在する状態となる。Ca2+は集塵水中のMアルカリ度成分と反応することにより、炭酸カルシウムとして析出する。また、OH-は水のpHを上昇させ、カルシウムイオンの飽和濃度を下げることにより、炭酸カルシウムの析出を促進する。さらに、析出した炭酸カルシウムは、核となって集塵水中のスケール成分の結晶化を開始させ、スケール成分の結晶の析出速度を速める。集塵水中に析出したスケール成分の結晶は、集塵水系の壁面に付着することなく、集塵水中に浮遊する。集塵水中にスケール成分の結晶が析出することにより、集塵水に溶解しているスケール成分の濃度が低下し、壁面へのスケールの付着が防止される。
本発明方法において、水に溶解して水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを生成する物質を添加する場所に特に制限はなく、集塵水系の任意の箇所において添加することができる。本発明方法において、水に溶解して水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを生成する物質の添加方法に特に制限はなく、例えば、高炉シックナースラリー及び転炉シックナースラリーはそのまま添加することができる。また、高炉乾ダスト、転炉乾ダスト、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムなどは、そのまま粉末状態で添加することができ、あるいは、粉末を液に分散させたスラリー状態で添加することもできる。
【0008】
本発明方法において、水に溶解して水酸化カルシウムを生成する物質の添加量に特に制限はないが、集塵水系を流れる水量に対して、カルシウムイオン濃度が50mg/L以上となる量であることが好ましく、100mg/L以上となる量であることがより好ましい。水に溶解して水酸化マグネシウムを生成する物質の添加量にも特に制限はないが、集塵水系を流れる水量に対して、マグネシウムイオン濃度が50mg/L以上となる量であることが好ましく、100mg/L以上となる量であることがより好ましい。水に溶解して水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを生成する物質の添加量が、集塵水系を流れる水量に対して、カルシウムイオン又はマグネシウムイオンの濃度が50mg/L未満となる量であると、スケール成分の水中における析出が十分に促進されず、壁面などにスケールが発生するおそれがある。
本発明方法においては、水に溶解して水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを生成する物質を、集塵水系を流れる水のpHが8.0以上となるように添加することが好ましく、集塵水系を流れる水のpHが8.5以上となるように添加することがより好ましい。水に溶解して水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを生成する物質を添加したのちの水のpHが8.0未満であると、カルシウムイオンの飽和濃度が高く、水中に多量のカルシウムイオンが溶解した状態で存在し、スケール化するおそれがある。
【0009】
本発明方法においては、必要に応じて、他のスケール防止剤を併用することができる。他のスケール防止剤としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の共重合体、アクリル酸と2−ヒドロキシ−3−アリロキシプロパンスルホン酸の共重合体などの有機ポリマー、ニトリロトリメチレンスルホン酸、ヒドロキシエチリデンホスホン酸、ホスホノブタントリカルボン酸、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどのリン系化合物などを挙げることができる。
本発明方法によれば、高炉若しくは転炉ガス集塵水系又は溶融炉形式の金属精錬炉ガス集塵水系に含まれるスケール成分は、大部分が水中において分散した結晶として析出、成長し、壁面にスケールとして付着するものはわずかである。水系に添加されたスケール防止剤は、析出した結晶とともにシックナーなどにおいて固液分離され、懸濁物質スラリーとして系外に除去される。
集塵水はスケール成分の高過飽和溶液であり、水に溶解して水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを生成する物質を添加することにより、溶液中のスケール成分の析出が促進され、水中に分散した状態で結晶が成長する。その結果、溶存するスケール成分の濃度が低下し、溶液中のスケール成分の過飽和度が低下して、璧面などへのスケールの付着が発生しにくい水に変化するものと考えられる。
【0010】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1
図3に示す装置を用いて、スケール付着防止試験を行った。
製鉄工場の高炉集塵水の水質を分析したところ、pH7.6、電気伝導率150mS/m、カルシウム硬度200mgCaCO3/L、Mアルカリ度5,000mgCaCO3/Lであった。この水質を参考にして、カルシウム硬度200mgCaCO3/L、Mアルカリ度5,000mgCaCO3/Lとなるように、純水に10重量%塩化カルシウム水溶液と、5重量%重炭酸ナトリウム水溶液を加え、pHを7.5として試験水200Lを調製し、タンクAに入れた。また、粉末の消石灰を、薬剤タンクDに入れた。
タンクAの試験水を、16L/hで40℃に加温したタンクBに連続的に供給し、同時に薬剤タンクDの消石灰を、定量供給機を用いて1,600mg/hの割合でタンクBに連続的に供給し、試験水に消石灰を分散した。タンクB内の水量は4L、すなわち滞留時間を15minとした。
タンクBの水は、16L/hで40℃に加温したタンクCに連続的に供給した。タンクCには、容量4Lでオーバーフローするように、オーバーフロー口を設けている。タンクCの水は、60℃の温水を通水するステンレスチューブFを装着したアクリル樹脂製カラムGに、5m/minの流速で通水し、ステンレスチューブの伝熱面と接触させたのち、タンクCに戻した。
試験は、8時間連続して行った。試験終了時のタンクCの水のpHは、8.3であった。試験終了後にタンクCの水をサンプリングし、直ちに0.1μmフィルターでろ過し、ろ液について水質分析を行ったところ、カルシウム硬度は90mgCaCO3/Lであった。また、ステンレスチューブをカラムから取り外して、乾燥、秤量し、重量増加からスケール付着量を求めたところ、0.15mg/cm2であった。
実施例2
消石灰の10重量%水分散液を薬剤タンクEに入れ、この水分散液を16g/hの割合でタンクBに連続的に供給した以外は、実施例1と同じ操作を繰り返した。
試験終了時のタンクCの水のpHは、8.3であった。試験終了後のろ液のカルシウム硬度は85mgCaCO3/Lであり、ステンレスチューブのスケール付着量は0.10mg/cm2であった。
実施例3
消石灰の10重量%水分散液の供給量を32g/hに増加した以外は、実施例2と同じ操作を繰り返した。
試験終了時のタンクCの水のpHは、8.5であった。試験終了後のろ液のカルシウム硬度は55mgCaCO3/Lであり、ステンレスチューブのスケール付着量は0.07mg/cm2であった。
実施例4
水酸化マグネシウムの10重量%水分散液を薬剤タンクEに入れ、この水分散液を32g/hの割合でタンクBに連続的に供給した以外は、実施例1と同じ操作を繰り返した。
試験終了時のタンクCの水のpHは、8.5であった。試験終了後のろ液のカルシウム硬度は60mgCaCO3/Lであり、ステンレスチューブのスケール付着量は0.07mg/cm2であった。
実施例5
高炉シックナースラリーを薬剤タンクEに入れ、480g/hの割合でタンクBに連続的に供給した以外は、実施例1と同じ操作を繰り返した。
試験終了時のタンクCの水のpHは、8.4であった。試験終了後のろ液のカルシウム硬度は70mgCaCO3/Lであり、ステンレスチューブのスケール付着量は0.09mg/cm2であった。
比較例1
消石灰の水分散液の代わりに、ヘキサメタリン酸ナトリウムをリンとして30.4重量%含む水溶液を薬剤タンクEに入れ、この水溶液を160mg/hの割合でタンクBに連続的に供給した以外は、実施例1と同じ操作を繰り返した。
試験終了時のタンクCの水のpHは、7.5であった。試験終了後のろ液のカルシウム硬度は、178mgCaCO3/Lであり、ステンレスチューブのスケール付着量は3.29mg/cm2であった。
比較例2
スケール防止剤を添加することなく、実施例1と同じ操作を繰り返した。
試験終了時のタンクCの水のpHは、7.5であった。試験終了後のろ液のカルシウム硬度は、120mgCaCO3/Lであり、ステンレスチューブのスケール付着量は8.68mg/cm2であった。
実施例1〜4及び比較例1〜2の結果を、第1表に示す。
【0011】
【表1】
【0012】
第1表に見られるように、試験水に消石灰、水酸化マグネシウム又は高炉シックナースラリーを添加した実施例1〜5においては、ろ液のカルシウム硬度が低く、ステンレンチューブへのスケール付着量が少ない。試験水への消石灰、水酸化マグネシウム又は高炉シックナースラリーの添加により、試験水中のスケール成分が水中に浮遊する結晶として析出し、水中のスケール成分の濃度が低下したために、スケール付着量が減少したものと考えられる。これに対して、ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を添加した比較例1においては、ろ液のカルシウム硬度が高く、結晶の成長が抑制されているが、それでもスケール付着量はかなり多い。また、薬剤を添加しなかった比較例2においては、スケールの付着量が非常に多く、付着したスケールに相当する量のカルシウム硬度が低下しているものと考えられる。
【0013】
【発明の効果】
本発明のスケール防止方法及びスケール防止剤によれば、従来の金属イオン封鎖剤を添加するスケール防止方法と異なり、高炉若しくは転炉がス集塵水系又は溶融炉形式の金属精錬炉がス集塵水系から、炭酸カルシウムなどのスケール成分を結晶として析出させるが、析出した結晶の付着性が低く、スケール化しにくいために、スケールの発生を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、高炉ガス清浄設備の一例の工程系統図である。
【図2】図2は、転炉ガス清浄設備の一例の工程系統図である。
【図3】図3は、実施例において用いたスケール付着防止試験装置の説明図である。
【符号の説明】
1 高炉
2 ダストキャッチャー
3 ベンチュリースクラバー
4 湿式電気集塵器
5 ガスホルダー
6 シックナー
7 処理水槽
8 冷却塔
9 脱水機
10 転炉
11 誘引通風ファン
12 ダクト
13 第一集塵器
14 第二集塵器
15 回収弁
16 水封V弁
17 ガスホルダー
18 粗粒分離機
19 シックナー
20 処理水槽
A タンク
B タンク
C タンク
D 薬剤タンク
E 薬剤タンク
F ステンレスチューブ
G アクリル樹脂製カラム
Claims (3)
- 高炉若しくは転炉ガス集塵水系又は溶融炉形式の金属精錬炉ガス集塵水系に、水に溶解して水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを生成する物質を添加することを特徴とするスケール防止方法。
- 水に溶解して水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを生成する物質が、高炉又は転炉シックナースラリーである請求項1記載のスケール防止方法。
- 高炉若しくは転炉ガス集塵水系又は溶融炉形式の金属精錬炉ガス集塵水系用スケール防止剤であって、水に溶解して水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを生成する物質を含有することを特徴とするスケール防止剤。
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