JP4576196B2 - 冷蔵庫 - Google Patents

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Description

本発明は、真空断熱材、及び真空断熱材を用いた冷蔵庫に関する。
真空断熱材、及び真空断熱材を用いた冷蔵庫の従来例としては、特許文献1の図2及び明細書記載のように、ボード状芯材を繊維不織ウエブの積層体から構成し、該芯材の表面に、前記繊維がバインダーにより熱固定された硬化層が形成され、前記ボード状芯材を外被材によりパッケージングした後の真空断熱材としての表面硬度を50から80の範囲として、ハンドリング性を向上していた。
また、特許文献2の図2及び明細書記載のように、繊維材料からなる芯材の表面層の繊維材料には無機バインダーがついており、内側の層の繊維材料には無機バインダーがついていないか前記表面層よりも濃度の小さい無機バインダーがついているようにして、芯材の剛性をもたせるとともに、個体熱伝導率を小さくしていた。
また、特許文献3の図1及び明細書記載のように、熱硬化性を有する有機バインダー或いは無機バインダーで結合硬化させた芯材の厚さの減少率を10%以下として、真空断熱材自身の表面の平滑性や剛性を確保していた。
特開2004-52774号公報 特開2004-11707号公報 特開2004-11705号公報
近年、使用済みの冷蔵庫等の家電品を対象として、その原材料を再商品化(マテリアルリサイクル)して、循環型社会の構築を目指すために、特定家庭用機器再商品化法(通称;家電リサイクル法)が施行されたが、その再商品化の観点からみると、前述した従来例には、真空断熱材の具体的再商品化の対処方法が提示されてない。
つまり、前述した各特許文献にて示されたように、芯材のハンドリング性を向上させるために、芯材に、ホウ酸やリン酸等のバインダーを塗布或いは、バインダー水溶液に芯材を浸漬して加熱成型することにより、芯材を硬化させていた。しかし、芯材を硬化することによって、次のような問題が生ずることとなる。
まず第一に、使用済み芯材をリサイクル使用して再度商品化する場合に、バインダーによって芯材が硬化されていると、これらのバインダーによる結着を除去することができず、芯材が微細な粉状となってしまう。このように粉状になった芯材原料を再利用して芯材を再形成した場合、空隙率が減少してしまうので、真空排気時の抵抗が大きくなってしまい、真空排気時間が延びてしまうという課題があった。
第二に、バインダー中には、回収が義務づけられている無機物質が使用されている場合が多いが、前述の各特許文献にはその具体的対処方法が提示されてない。
第三に、真空断熱材を冷蔵庫等に組み込む際に、万一、真空断熱材の真空度に不良が発生した場合には、その芯材のみを再利用する必要が生じるが、前述の各特許文献にはその具体的対処方法が提示されてない。
本発明は、このような従来の構成が有していた問題を解決しようとするものであり、その目的とするところは、芯材を再利用、再商品化し易くすることと、芯材の再商品化時に、真空排気時間が延びないようにするものである。また、上記目的に加えて、製造工程上のハンドリング時に真空度不良が万一発生したとしても、目視により発見できるようにすることを別の目的とした。
また、芯材を、バインダー処理や加熱成形処理を施さない無機繊維で形成してあるので、排気抵抗が小さくなって、真空排気時間を短く出来るので、製造コスト上有利な真空断熱材を提供できる。
また、芯材を、バインダー処理や加熱成形処理を施さない無機繊維で形成してあるので、バインダー自身から長期間の間に発生するガス成分がないので、高真空度を長期に保持できる真空断熱材を提供できる。
また、芯材を覆う内袋があるので、芯材を内包した内袋ごと持ち運べるので、製造工程上のハンドリング性が向上する真空断熱材を提供できる。
本発明は上記目的を達成するために、外板と内板とを備え、前記外板と前記内板とによって形成される空間の前記外板側に所定の厚さ寸法を有する真空断熱材を配設し、前記真空断熱材以外の前記空間に発泡断熱材を充填した冷蔵庫において、前記真空断熱材は、芯材と、該芯材を被覆する合成樹脂フィルムの内袋と、前記内袋を被覆する外袋を有し、前記芯材はバインダー処理及び加熱成形処理されていない無機繊維の積層体であって、前記真空断熱材の真空度が低減して内部圧力が大気圧程度となった場合、該真空断熱材自身の復元力及び該真空断熱材内に浸入した空気の膨張により、該真空断熱材自身の厚さが前記所定の厚さ寸法よりも前記繊維積層体の積層方向に大きくなり、前記外板が目視又は触感によって該真空断熱材の位置が確認可能に膨らみ、前記外板側に開口を設けて、前記外袋の一辺を破袋した場合に、前記内袋が前記芯材と共に、前記外袋より取り外すことが可能であるので、真空断熱材を冷蔵庫箱体組み込み後、発生した真空度不良等の製造途中での部品不良の場合、あるいは、該冷蔵庫の廃却時に、該部の外板側に開口を設けて、前記外袋の一辺を破袋して開口を作り、該開口より芯材を内包した内袋をとりだして、再利用できるので、材料のリサイクル率が向上する冷蔵庫を提供できる。
また、内袋はウレタン等の発泡断熱材と接着されてないので、該芯材を含む内袋を、冷蔵庫箱体や扉体より簡単に取り出せるので、材料のリサイクル作業効率が向上する冷蔵庫を提供できる。
また、前記芯材は絶対圧力の変化により弾性的に厚さが変化し、第一の真空度条件下の厚さに保持された後、該第一の真空度条件より高圧である第二の真空度条件以上となった時、前記芯材自身の復元力により、真空断熱材自身の厚さが、前記第一の真空度条件下の厚さより15%以上厚くなるように構成したので、製造工程上のハンドリング時に、発生した真空度不良の場合、該真空断熱材自身の厚さが厚くなるので、高価な検査測定器具等を使用しないでも、目視により、不良品が発見できるので、安価に信頼性向上が図れる。
また、万一真空度不良が発生しても、該真空度不良が発生した部分の冷蔵庫外板側の表面に、目視確認できる膨らみが生じるので、ユーザーまで、不良品(真空度不良)が行かないので、冷蔵庫としての信頼性が向上する。
上述したように本発明は、真空断熱材を、芯材と、該芯材を覆う内袋と、前記芯材を内包した内袋を覆う外袋と、から構成し、前記芯材を、バインダー処理や加熱成形処理を施さない無機繊維で形成し、前記内袋を合成樹脂フィルムで形成したので、前記芯材は、その繊維分が保持されているために、使用済み芯材の再商品化時に、該芯材は微細な粉状とならない、従って、該芯材を再利用した芯材は、真空排気時の抵抗が大きくならないので、真空排気時間が、新原料を使用した芯材とほぼ同等となる真空断熱材を提供できる。
また、真空断熱材の真空度が低減して、該真空断熱材の内部圧力が,大気圧程度となった時、前記真空断熱材自身の復元力及び前記真空断熱材内に浸入した空気の膨張により、前記真空断熱材自身の厚さが、所定の厚さ寸法より大きくなるので、万一真空度不良が発生しても、該真空度不良が発生した部分の冷蔵庫外板側の表面に、目視確認できる膨らみが生じるので、ユーザーまで、不良品(真空度不良)が行かないので、信頼性の向上した冷蔵庫を提供できる。
また、芯材と、該芯材を被覆する内袋と、前記内袋を被覆する外袋とから構成し、冷蔵庫の外板側に開口を設けて、前記外袋の一辺を破袋した場合に、前記内袋が芯材と共に、前記外袋より取り出すことが可能にしたので、万一発生した真空度不良等の製造途中での部品不良の場合、あるいは、該冷蔵庫の廃却時に、該部の外板側に開口を設けて、前記外袋の一辺を破袋して開口を作り、該開口より芯材を内包した内袋をとりだして、再利用できるので、材料のリサイクル率が向上する冷蔵庫を提供できる。
本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施例を示す冷蔵庫の要部の縦断面図であり、図2は本発明の第一の実施例における真空断熱材の断面説明図である。先ず、図1に示すように、冷蔵庫の箱体12は、この箱体12の開口を開閉可能に密閉する複数の扉体13を備えている。前記箱体12内には、冷蔵室14a、野菜室14b、製氷室15a、冷凍室15b等が区画形成されている。冷蔵庫の箱体12の断熱壁12aは、箱体12の外板12eと箱体12の内板12fとによって形成される空間の、前記外板12e側または前記内板12f側に、後述する真空断熱材20を配設されている。この真空断熱材20の周囲の空間に、接着力を有するウレタン等の発泡断熱材12bを充填することで、真空断熱材20が固定されて断熱壁12aが形成されている。
扉体13の断熱壁13aは、扉体13の外板13eと扉体の内板13fとによって形成される空間の、外板13e側または内板13f側に、後述する真空断熱材20を配設されている。この真空断熱材20の周囲の空間に、接着力を有するウレタン等の発泡断熱材13bを充填することで、真空断熱材20が固定されて断熱壁13aが形成されている。真空断熱材20は、断熱壁12aや13a内に設置され、ウレタン等の発泡断熱材12b・13bより高い断熱性能を有するものであり、図2に示すように構成されている。
次に、図2により、本発明の第一の実施例における真空断熱材の一実施例について説明する。芯材21は、絶対圧力の変化により弾性的に厚さの変わる性質を有する芯材であり、具体的には、例えば、バインダー処理や加熱成形処理を施さない無機繊維{JISA9504の「人造鉱物繊維保温材」}を積層した集合体であり、所定寸法の大きさに形成してある。
なお、芯材21の弾性的に厚さの変わる程度は、例えば、芯材を内包した真空断熱材において、所定の真空度C条件下の厚さに保持された後、所定の真空度C条件より高圧である所定の真空度D条件以上となった時、芯材21自身の復元力により、真空断熱材自身の厚さが、真空度C条件下の厚さより15%以上厚くなるものである。
換言すれば、真空断熱材として利用できる高真空度C条件下の厚さに保持された後、真空断熱材が何らかの原因で、その高真空度が失われて、真空断熱材中の真空度が低減して、真空断熱材としての断熱性能を発揮できなくなる程度の真空度D条件以上となったときは、前述の、真空断熱材として利用できる真空度C条件下の厚さに対して、15%以上厚くなるように、該真空断熱材中にある芯材に弾性的復元力を持たせてあるものである。
したがって、芯材21を構成する無機繊維集合体を押圧して圧縮すると、その圧縮力に応じて厚みが減少し、押圧力を解除すると大気圧のみがかかることとなるため、次第に復元することとなる。
図中、符号22で示したものは、芯材21の水分およびガス成分を吸着する吸着剤であり、例えば、合成ゼオライトであるモレキュラシーブ13Xを使用している。モレキュラシーブ13Xの吸着原理は物理吸着であり、反応型吸着(化学吸着)によって水分を吸着する生石灰と比較して、次の点が有利である。
まず第一に、生石灰は水分を吸着すると化学反応が起こるため、吸着剤としての性質が変わってしまうということが挙げられる。生石灰の主成分である酸化カルシウムは水分を吸着して水酸化カルシウムとなり、水酸化カルシウムは水分の吸着作用が乏しい。一方、モレキュラシーブ13Xは物理吸着であり、表面層にミクロに形成された凹部(孔)に気体分子を物理的に吸着する性質を有している。具体的には、分子径の小さい気体を吸着することができるため、水分(H2O)だけではなく、酸素(O2)、窒素(N2)、アンモニアガス(NH3)、炭酸ガス(CO2)等も吸着可能である。したがって、真空断熱材に使用する吸着剤としては、主として水分だけが吸着される生石灰と比較して非常に有利である。冷蔵庫製造工程においては、水分だけではなく接着剤やポリビニルアルコール等の有機材料からガスが発生する場合があり、真空度を低下させる原因となるガス、水分等が断熱性能の悪化を招くためである。ただし、物理吸着といえども際限なくガスを吸着するわけではなく、上述の凹部が全てふさがれた場合にはそれ以上の吸着はできない。
第二に、リサイクル上も非常に有利である。上述のように、生石灰は水を吸着して水酸化カルシウムとなるが、再使用する場合には上記と逆の反応を行わなければならない。しかし、このときは大きな熱量が発生する。真空断熱材を冷蔵庫に使用する本実施例の場合においては、リサイクル工場で箱体を破砕すると生石灰が発熱し、約600℃程度まで温度が上昇する。通常、破砕工程においては、粉塵発生防止のために噴水しながら破砕を行うことが多いが、生石灰の発熱によって水が蒸発し、水蒸気が発生してしまい、リサイクル効率が低下してしまう。一方、モレキュラシーブ13Xは物理吸着であるため、小さい発熱量で再生し、しかも瞬間的な発熱に留まるため、再利用を容易にできる。
このように、吸着剤としてモレキュラシーブ13Xを使用することによって、リサイクル性に有利な真空断熱材を得ることができる。
芯材21と吸着剤22は内袋23によって覆われている。吸着剤22は、芯材21又は内袋23によって所定の位置に配置される。なお、内袋23と一体或いは別体にて形成された吸着剤押え部23aを用いて、芯材21の所定位置21aに埋設した吸着剤22が、所定位置21aより移動しないように拘束する構成としてもよい。なお、特段の押え部23aを設けなくとも、芯材21及び内袋23によって位置を拘束することは可能であり、換言すれば、内袋23自体が吸着剤22の押え部材として機能するということができる。
なお、内袋23は、大気中の水分やガス成分が透過しないガスバリア性を有し、且つ、熱溶着可能な合成樹脂フィルム、例えば、高密度ポリエチレン樹脂等で形成されている。ここでいう内袋23が有するガスバリア性を、本実施例では短期ガスバリア性と称することとし、数時間、1日〜数日、数週間、又は1ヶ月程度経過しても真空度の低下が小さいものを示す。すなわち、後述する長期ガスバリア性を有する外袋24とは異なり、金属層を有していないため、徐々にではあるが真空度は低下する。
上記のような短期ガスバリア性を有する内袋23を使用し、外部からの水分やガス成分が浸入しないように構成されているため、本実施例のような無機繊維集合体からなる芯材21、及び吸着剤22を使用した場合であっても製造工程上、性能上、及びリサイクル上、いずれも有利である。
本実施例のような無機繊維集合体からなる芯材21は、大気中に含まれる水分やガス成分を吸着しやすいものであり、吸着剤22はさらに周辺から比較的早く且つ強力に、水分やガス成分を吸着できるように構成されているので、内袋23を用いる効果は以下に示すように顕著である。
芯材21や吸着剤22が、製造工程上で必要とされる組み込みのための作業時間や、仕掛品の保管期間中にも、外部の水分やガス成分を吸着しないように、芯材21や吸着剤22を短期ガスバリア性を有する内袋23で覆う構成にしてある。したがって、芯材21及び吸着剤22を内袋23で覆われた状態で保管可能であり、真空断熱材の製造工程を複数に分けて行うことができ、製造効率の大幅な向上が図れる。また、内袋23で覆われた状態で保管することによって、内袋23内に微少に残留したガス、水分が、保管中に吸着剤22によって吸着されるため、真空断熱材としての性能上も有利である。リサイクル上の有利な点については後述する。
内袋23はさらに外袋24によって覆われており、この外袋24は長期ガスバリア性を有するラミネートフィルムで構成されている。長期ガスバリア性を備えるために、ラミネートフィルムで構成された外袋24は、金属層を有している。また、芯材21と吸着剤22とを内部に有する内袋23は、外袋24に挿入されているだけであり、特段の接着構造は不要である。したがって、外袋24を開口して真空度を低下させれば、内袋23を容易に取り外すことができる。なお、長期的ガスバリア性とは、本実施例では、冷蔵庫の使用平均寿命相当程度の長期間、ガスバリア性を有するという意であり、例えば、約10年間程度経過しても真空度の低下が小さいものを示すものである。
次に、図3から図4について説明する。図3は本発明の一実施例を示す真空断熱材の製造工程説明図であり、図4は本発明の一実施例を示す芯材と内袋の製造工程説明図である。なお、前述した図1から図2と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
先ず図3において、芯材原綿切断工程51において、前述したグラスウール積層体等の無機繊維からなる芯材を所定寸法に切断する。芯材原綿凹部形成工程52は、前記芯材のうち、前述した内袋23(図2の23)に接する芯材の所定位置に、吸着剤22(図2の23)を収納する凹部や切込み部を形成する工程である。芯材原綿積層工程53は、前記芯材原料を所定枚数積層する工程である。芯材原綿乾燥工程54は、例えば、200℃から250℃程度の乾燥炉中で、前記芯材に含まれる水分やガス成分を除去する工程である。55は「吸着剤装填工程」、56は「内袋への挿入工程」、57は「第一圧縮工程」、58は「内袋密閉工程」である。吸着剤装填工程55から内袋密閉工程58までを、図4によりその詳細を後述する。外袋への挿入工程59は、前記内袋密閉工程で密閉した内袋を外袋に挿入する工程である。内袋の一辺開口工程60は、前述の外袋へ挿入された内袋の一辺を真空排気可能なるように開口するための工程である。真空排気工程61は前記内袋および外袋内を所定の真空度になるまで減圧する工程である。この工程では、芯材を圧縮しながら減圧を行っており、この圧縮は第一圧縮工程57よりも押圧力を大きくすることによって、外袋内を脱気して内部を高い真空状態とするものである。すなわち、「第二圧縮工程」と「減圧工程」とを併せて実施するものである。真空包装工程62は、前記真空排気した外袋を密閉する工程である。
次に図4について説明する。図4(a)は前述の「吸着剤装填工程」の一例であり、芯材21の所定位置21aに、吸着剤22を自動装填する場合の説明図である。図において、コンベア33は芯材21を置載搬送する。コンベア33上に置載された芯材21の所定位置21aに、吸着剤投入装置31により、吸着剤22を自動装填するように構成されている。吸着剤22を投入する吸着剤投入装置31は、投入制御装置32で制御される。なお、前記芯材21は、バインダー処理や加熱成形処理を施さない無機繊維でなる無機繊維積層体21cと21bとを積層して形成されており、該無機繊維積層体のうちの外表面を形成する積層体21bの表面に、穴部或いは凹部により形成された前述の所定位置21aを有している。
次に図4(b)について説明する。図4(b)は前述の「内袋への挿入工程」の一例であり、芯材21を、内袋23b内に挿入する場合の説明図である。図において、芯材21は、前述の吸着剤22を設置したバインダー処理や加熱成形処理を施さない無機繊維である。芯材21を、図示しない装置で製作された開口23eを有する内袋23b内に挿入するようにコンベア34が形成されている。
次に図4(c)について説明する。図4(c)は前述の「第一圧縮工程」であり、内袋23b内を脱気しながら芯材21と吸着剤22を所定の寸法に圧縮する場合の説明図である。図において、圧縮装置は、下プレート35と上プレート36とを備えている。この下プレート35上に置載された内袋23bに覆われた芯材21は、上プレート36により所定の厚さt2寸法に圧縮された状態で、図4(d)に示す「内袋密閉工程」に送られる。
なお、前記所定の厚さt2寸法とは、この内袋を前述の外袋24(図2の24)内に挿入しやすい寸法であり、例えば、図2に示すt3寸法の1.5倍から3倍程度の寸法である。換言すれば、前述の図4(b)で示した芯材の原料厚さ寸法t1が、そのままの寸法では、前述の外袋24(図2の24)内に挿入し難い場合、該寸法t1より小さい寸法t2に圧縮して形成するように構成してある。
なお、前記第一圧縮時の芯材厚さt2寸法は、該芯材をリサイクルするときにも、該芯材の骨材となる繊維部分の破壊しない程度の厚さを保持するように設定してある。
次に図4(d)について説明する。図4(d)は前述の「内袋密閉工程」であり、前記所定の厚さt2寸法に形成された内袋の開口23eを密封する場合の説明図である。図において、袋とじ装置は、下プレート37と上プレート38とを備える。下プレート37上に置載された前述の内袋23bは、その開口部23eを下プレート37の熱溶着プレート37a、上プレート38の熱溶着プレート38aにより熱溶着されて密封される。この密封により、内袋23b内に設置された芯材21と吸着剤22は外気より完全に遮断される構成にしてある。
以上のように構成されているので、本発明は、真空断熱材を、芯材と、該芯材を覆う内袋と、前記芯材を内包した内袋を覆う外袋と、から構成し、前記芯材を、バインダー処理や加熱成形処理を施さない無機繊維で形成し、前記内袋を合成樹脂フィルムで形成したので、前記芯材は、その繊維分が保持されているために、使用済み芯材の再商品化時に、該芯材は微細な粉状とならない、従って、該芯材を再利用した芯材は、真空排気時の抵抗が大きくならないので、真空排気時間が、新原料を使用した芯材とほぼ同等となる真空断熱材を提供できる。
また、絶対圧力の変化により、弾性的に厚さの変わる芯材を内包した真空断熱材において、所定の真空度C条件下の厚さに保持された後、前記所定の真空度C条件より高圧である所定の真空度D条件以上となった時、前記芯材自身の復元力により、真空断熱材自身の厚さが、前記所定の真空度C条件下の厚さより15%以上厚くなるように構成したので、 製造工程上のハンドリング時に、発生した真空度不良の場合、該真空断熱材自身の厚さが厚くなるので、高価な検査測定器具等を使用しないでも、目視により、不良品が発見できるので、安価に信頼性向上が図れる真空断熱材を提供できる。
次に、真空断熱材の不良発見及びリサイクル性について図5を用いて説明する。
先ず図5(a)について説明する。図5(a)は本実施例の冷蔵庫断熱壁の要部の断面説明図である。冷蔵庫箱体の断熱壁(又は扉体の断熱壁)70は、鋼板製の外板71と樹脂製との間に断熱材が配設されて構成されている。本実施例においては、断熱材として外板71と内板との間にウレタン等の発泡断熱材72を充填して断熱壁を構成している。また、断熱壁の外板71側には、所定の厚さ寸法T1を有する真空断熱材80が配設されている。
この真空断熱材は80は外板71に接着剤で貼り付けられており、真空断熱材80が貼り付けられた状態で、外板71と内板との間にウレタンを注入して発泡して断熱壁が形成される。すなわち、真空断熱材80以外の断熱壁内にウレタン等の発泡断熱材72が充填される構成であり、発泡断熱材72が有する接着力によって、後述する真空断熱材80の外袋83を、断熱壁の所定位置に固定している。
真空断熱材80は、内部に無機繊維{JISA9504の「人造鉱物繊維保温材」}を積層した集合体を芯材81として使用し、この芯材81は所定の寸法の大きさに形成してある。本実施例の芯材81は、絶対圧力の変化により弾性的に厚さの変わる芯材であり、例えば、バインダー処理や加熱成形処理を施さない無機繊維{JISA9504の「人造鉱物繊維保温材」}としている。グラスウール等のガラス繊維材料を積層した芯材は、押圧されると厚みが減少し、押圧が解除されると大気圧のみによって押圧されることになるため、次第に復元されることとなる。いわば、繊維積層方向にほぼ弾性的に厚さが変わるということができる。
なお、芯材81の弾性的に厚さの変わる程度は、例えば、芯材を内包した高真空度を有する真空断熱材80において、所定の断熱壁内における厚さをT1寸法とすると、断熱壁内において何らかの事故等により、真空度が低減して、前記真空断熱材の内部圧力が,大気圧程度となった時、芯材81自身の復元力及び前記真空断熱材内に浸入した空気の膨張により、真空断熱材80自身の厚さが、所定の厚さ寸法T1より大きくなるように設定してある。
芯材81は内袋82によって覆われており、この内袋82は大気中の水分やガス成分が透過しない短期ガスバリア性を有し、且つ、熱溶着可能な合成樹脂フィルム、例えば、高密度ポリエチレン樹脂等で形成されている。この内袋82はさらに外袋83によって覆われており、内袋82と外袋83との間は、特段の接着構造を設ける必要はなく、真空引き後は大気圧を周囲から受けて接触している。すなわち、内袋82と外袋83とは真空度が低減すると容易に接触が離れるということである。
外袋83は前述したように、ウレタン等の発泡断熱材72との間が接着されて、断熱壁70の所定位置に固定されている。なお、上述のように発泡断熱材72の充填前に真空断熱材80の位置決めを行うために、外板71と真空断熱材80との間は接着剤によって貼り付けられている。内袋82内には、芯材81とともに吸着剤84を有しており、真空断熱材80中の水分やガス成分を吸着する。
芯材81は、無機繊維が積層されて構成されているが、この繊維状積層体81a、81b、81cは、それぞれが絶対圧力の変化により弾性的に厚さの変わるように構成してある。
次に、図5(b)について説明する。図5(b)は真空断熱材80が何らかの故障或いは事故により、その真空度が低減して、真空断熱材80の内部圧力が、ほぼ大気圧程度となった状態を説明するための断面図であり、前述した図5(a)部相当の断面図である。
このように真空度が低減する要因としては、外袋83に何らかの傷が生ずることが挙げられるが、その原因として、真空断熱材80を外板71に貼付ける際に他の部品等と接触して表面に傷が生じた場合、外袋83の溶着不良による場合、等が考えられる。外袋83は複数層からなるラミネートフィルムから構成されており、ガスバリア性のための金属層、内部を密封するための熱溶着層、その他の層を備えている。真空断熱材80を外板71に貼り付けるにあたって、他の部品と接触したり、作業環境上の他の要因によって衝撃を受けたりすることによって裂傷が生じ、例えば4層のラミネートフィルムのうちの3層に裂傷が至る場合や、溶着不良の場合は、「スローリーク」という現象が生じ得る。このスローリークとは、真空度がゆっくりと低下していく現象のことを示す。
したがって、製造前に行う性能試験では高い断熱性能を示した真空断熱材であっても、製造、箱詰、出荷と至る間に徐々に真空度が低減するということが起こり得る。
例えば、図3に示す工程59から工程62までを終えて、さらに冷蔵庫の外板71に真空断熱材80を貼り付け、さらに発泡断熱材72を充填発泡し、冷蔵庫の完成に至る各工程を全て終える段階、あるいは箱詰段階において、断熱性能が低下していると、冷蔵庫全体としての性能の低下を招くこととなってしまう。また、従来のように芯材として無機繊維集合体をバインダーで結着した場合には、真空度の低減が一見して把握できないという問題もあった。
本実施例では、内部の真空度の変化によって厚さに変化を生ずる真空断熱材を使用しているため、真空度の低減の発見が従来の芯材と比較して容易になっている。
図において、T2は、真空断熱材の内部圧力が前述したように、ほぼ大気圧程度となった状態での真空断熱材の厚さ寸法であり、T2寸法は前述の所定の厚さ寸法T1より大きくなっている。換言すれば、前述した芯材81自身の復元力及び真空断熱材内に浸入した空気の膨張により、前記所定の厚さ寸法T1より大きくなるように設定してある。
したがって、外板の膨らみ部71aの出っ張り寸法δ1は零より大きくなるので、真空度不良となった真空断熱材の位置が目視により確認できる。外板71には、通常は鋼板を使用しているが、厚みが非常に薄いため、このような膨らみ部71aを目視によって、あるいは触感によって確認することができる。
次に、図5(c)について説明する。図5(c)は前述した真空度不良となった真空断熱材を取り出すときの説明図であり、前述した図5(b)相当の断面説明図である。真空断熱材80を取り出すにあたっては、外板の膨らみ部の相当位置に開口71bを設け、同じく前記相当位置に真空断熱材80の外袋83の一辺を破袋した開口83bを設ける。開口83b部より後述する芯材を内包した内袋82が取り出しできる大きさを有している。前述のように、内袋82と外袋83との間は特段の接着がなされていないため、容易に内袋を取り出すことができる。すなわち、芯材81を有する内袋82は、外袋83から取り外すことが可能になるように構成されていることを特徴とするものである。
また、内袋82内の芯材81は、バインダーによる結着等がなされておらず、内袋82内に無機繊維の積層体が入っている構造であるため柔軟性を有するものであり、大きなサイズの真空断熱材80を小さな開口71b、83bから取り出すにあたっても、板状であった従来の真空断熱材よりも取り出しが容易となる。また、取り出した芯材81はそのまま再利用が可能であり、リサイクル性に寄与する効果は非常に大きいものである。
以上のように構成されているので、本実施例では、芯材と、該芯材を被覆する内袋と、前記内袋を被覆する外袋とから構成し、前記外板側または前記内板側に開口を設けて、前記外袋の一辺を破袋した場合に、前記内袋が芯材と共に、前記外袋より取り外すことが可能にしたので、真空断熱材を冷蔵庫箱体組み込み後、発生した真空度不良等の製造途中での部品不良の場合、あるいは、該冷蔵庫の廃却時に、該部の外板側に開口を設けて、前記外袋の一辺を破袋して開口を作り、該開口より芯材を内包した内袋をとりだして、再利用できるので、材料のリサイクル率が向上する冷蔵庫を提供できる。
また、内袋はウレタン等の発泡断熱材と接着されてないので、該芯材を含む内袋を、冷蔵庫箱体や扉体より簡単に取り出せるので、材料のリサイクル作業効率が向上する冷蔵庫を提供できる。
図6は芯材と内袋の製造工程説明図であり、図3に示した内袋への挿入工程56、第1圧縮工程57、及び内袋密閉工程58の各工程を併せて行うこととした例である。
真空断熱材の芯材となる無機繊維集合体21’はコンベア33’によって上下を挟まれて搬送される。上下のコンベアの間は、上流側が下流側よりも大きく距離が取られているため、無機繊維集合体21’は、コンベア33’によって搬送される間に上下方向に圧縮されることとなる。図6(a)の矢印方向に搬送された無機繊維集合体21’が所定位置まで達すると内袋へと挿入される。
この内袋への挿入について図6(a)及び図6(b)を用いて説明する。本実施例では、無機繊維集合体21’の搬送経路を遮るように上下に延びた内袋用フィルム23’に向かって、無機繊維集合体21’が搬送されることによって内袋に挿入されるものである。
上下の上流側コンベア33’よりも上方に位置し、ロール状に巻かれた内袋用フィルム23’は、下方に位置する内袋用フィルム23’と熱溶着された状態で、かつ、この熱溶着部が無機繊維集合体21’の搬送経路上に位置した状態が図6(a)に示されている。この図6(a)に示された状態は、挿入待機状態である。
また、上流側コンベア33’の上下のコンベア間は、最上流側の方が下流側よりも距離を大きく取っており、搬送経路上に位置する内袋用フィルム23’と当接する前において、無機繊維集合体21’を圧縮しながら搬送する。なお、下流側コンベア34’の上下のコンベア間の距離は、上流側コンベア33’の中の下流側に位置するコンベア間の距離とほぼ同程度としている。
挿入待機状態から、図中の矢印方向に向かって無機繊維集合体23’が上下のコンベア33’によって圧縮されながら搬送され、搬送経路を遮るように配置された内袋用フィルム23’と当接する。当接後もさらにコンベア33’によって無機繊維集合体21’が下流側へと送られ、この無機繊維集合体21’とともに内袋用フィルム23’が下流側コンベア34’によって搬送されるため、無機繊維集合体21’が内袋用フィルム23’に挿入される。本実施例では、挿入待機状態で、熱溶着部が無機繊維集合体21’の搬送経路上に位置しているため、この熱溶着部が上下の下流側コンベア34’との接触によって溶着が外れることが防止される。
さらに無機繊維集合体21’と内袋用フィルム23’とが下流側へと搬送されると、内袋用フィルム切断器によって内袋用フィルム23’が切断され、また、この切断されたフィルム23’の切断部がヒートシール器によって熱溶着される。本実施例では、この切断器及びヒートシール器の機能を併せた切断シール器37a’、38a’を、上流側コンベア33’と下流側コンベア34’との間であって、挿入待機状態における内袋用フィルムの待機位置(図6(a)参照)よりも上流側の位置に配設している。
図6(c)は、切断シール器の構成を示す図である。搬送経路上に位置する2枚の内袋用フィルム23’の上下を挟むように、上側にカット部38a1及びヒートシール部38a2を有している。このカット部38a1は熱溶断を行う部分であり、カット部38a1を搬送方向の両側から挟むように、図中左右にヒートシール部38a2が配置される。ヒールシール部38a2は、例えば加熱バーであり、加熱することによって2枚の内袋用フィルム23’を熱溶着する。
また、カット部38a1は搬送方向両側に配置されるヒートシール部38a2よりも下に突出して形成されており、切断シール器38a’(図6(b)参照)を下方に移動させることによって、内袋用フィルム23’を切断し、かつ、切断部の両側を熱溶着する。また、切断シール器38a’と対向する切断シール器37a’は、ヒートシール部38a2の受け部37a1であり、カット部38a1の突出に合わせて凹部が形成されている。この凹部寸法は、カット部38a1のヒートシール部38a2からの突出寸法よりも大きくし、ヒートシール部38a2と受け部37a1との接触を確保して確実な熱溶着を図ることとしている。
切断部よりも上流側を熱溶着することによって、無機繊維集合体21’が挿入された内袋となり、また、上下のコンベアによって圧縮されながら搬送されているため、圧縮脱気が可能である。また、切断部よりも下流側を熱溶着することによって、図6(a)に示す挿入待機状態となり、次に搬送されてくる無機繊維集合体21’に対しても同様の工程を繰り返す。したがって、内袋内に挿入し、内袋の内部を脱気し、内袋を密閉する工程を連続的に行うことが可能とし、生産工程の効率化が図れる。
本発明の一実施例を示す冷蔵庫の要部の縦断面図 本発明の第一の実施例における真空断熱材の断面説明図 本発明の一実施例を示す真空断熱材の製造工程説明図 本発明の一実施例を示す芯材と内袋の製造工程説明図 本実施例の冷蔵庫断熱壁の要部の断面説明図 芯材と内袋の製造工程説明図
符号の説明
12a 冷蔵庫箱体の断熱壁
12e 箱体の外板
12f 箱体の内板
13a 冷蔵庫扉体の断熱壁
13e 扉体の外板
13f 扉体の内板
20 真空断熱材
21 芯材
22 吸着剤
23 内袋
24 外袋

Claims (2)

  1. 外板と内板とを備え、前記外板と前記内板とによって形成される空間の前記外板側に所定の厚さ寸法を有する真空断熱材を配設し、前記真空断熱材以外の前記空間に発泡断熱材を充填した冷蔵庫において、
    前記真空断熱材は、芯材と、該芯材を覆う合成樹脂フィルムの内袋と、内袋を覆う外袋と、を有、前記芯材はバインダー処理及び加熱成形処理されていない無機繊維の積層体であって
    前記真空断熱材の真空度が低減して内部圧力が大気圧程度となった場合、該真空断熱材自身の復元力及び該真空断熱材内に浸入した空気の膨張により、該真空断熱材自身の厚さが前記所定の厚さ寸法よりも前記繊維積層体の積層方向に大きくなり、前記外板が目視又は触感によって該真空断熱材の位置が確認可能に膨らみ、
    前記外板側に開口を設けて、前記外袋の一辺を破袋した場合に、前記内袋が前記芯材と共に、前記外袋より取り外すことが可能であることを特徴とする冷蔵庫
  2. 請求項1において、前記芯材は絶対圧力の変化により弾性的に厚さが変化し、第一の真空度条件下の厚さに保持された後、該第一の真空度条件より高圧である第二の真空度条件以上となった時、前記芯材自身の復元力により、真空断熱材自身の厚さが、前記第一の真空度条件下の厚さより15%以上厚くなることを特徴とする冷蔵庫
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