JP4576081B2 - スクロール圧縮機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スクロール圧縮機に係り、特に、高効率化、高信頼性化を図るのに好適なスクロール圧縮機に関するもので、空気調和機、冷凍機、冷蔵庫等に利用される。
【0002】
【従来の技術】
スクロール圧縮機のインジェクションに関する技術としては、例えば、特開平3−156186号公報がある。
【0003】
この従来技術は、旋回スクロ−ルのラップ外側面と固定スクロ−ルのラップ内側面で形成される圧縮室(A)、および旋回スクロ−ルのラップ内側面と固定スクロ−ルのラップ外側面で形成される圧縮室(B)の両方の圧縮室に、1つのインジェクション孔でインジェクションするものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の技術は、1つのインジェクション配管で済むという利点はあるが、インジェクション孔がそれぞれの圧縮室に開口する時期が異なるので、開口する際の、それぞれの圧縮室の圧力が異なり、インジェクション量も異なる。従って、それぞれの圧縮室の、吐出開始直前の最小密閉容積における圧力が異なり、過圧縮や不足圧縮といった効率低下の要因となるという課題があった。
【0005】
また、従来の技術では、インジェクションによる吐出流量増加により、吐出圧損が増加するという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、インジェクションした場合に発生する、吐出開始時の圧力のアンバランスを低減し、また吐出圧損を低減して、効率のよいスクロール圧縮機を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のスクロール圧縮機に係る構成は、次の通りである。
【0008】
それぞれの台板上に渦巻状のラップを有する旋回スクロ−ルおよび固定スクロ−ルを備え、それぞれのラップを内側にして組み合わせて、前記旋回スクロ−ルが自転を阻止された状態で前記固定スクロ−ルに対して旋回運動をなすことにより、前記旋回スクロ−ルのラップ外側面と前記固定スクロ−ルのラップ内側面で形成される圧縮室(A)、および前記旋回スクロ−ルのラップ内側面と前記固定スクロ−ルのラップ外側面で形成される圧縮室(B)、それぞれの容積を減少させてガスを圧縮し、この圧縮ガスの吐出口を前記旋回スクロ−ルあるいは前記固定スクロ−ルの少なくとも一方に有するものであり、冷媒あるいは油などを前記圧縮室に注入するインジェクション孔を、前記固定スクロ−ルに有する、スクロール圧縮機において、
前記圧縮室(A)と前記圧縮室(B)との圧縮開始時期を約180度異ならせ、
前記旋回スクロールのラップ外側面巻き始め部が前記固定スクロールのラップ内側面から離れる時期と前記固定スクロールのラップ外側面巻き始め部が前記旋回スクロールのラップ内側面から離れる時期とを異ならせて、前記圧縮室(A)の吐出開始時期と前記圧縮室(B)の吐出開始時期とを異ならせ、その吐出開始時期を異ならせた度合いを、いわゆる対称ラップ型のスクロール圧縮機での吐出開始時期が異なる度合いよりも大きくするように、前記旋回スクロールのラップの巻き始め部を削除した
ものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の参考例と実施例を図1ないし図8を参照して説明する。まず、スクロ−ル圧縮機の一般的な全体構成を、図1ないし図2を参照して説明する。図1は、本発明の参考例に係るスクロ−ル圧縮機の縦断面図を、冷凍サイクルの一例とのつながりを含めて示したものである。図2は、図1のスクロール圧縮機における、固定スクロ−ルに旋回スクロールのラップを組み合わせた説明図である。図1に示すスクロ−ル圧縮機は、密閉容器1内の上部に圧縮機構部、下部に電動機部が収納されている。圧縮機構部は、固定スクロ−ル2、旋回スクロ−ル3、フレ−ム4、クランク軸5、オルダムリング6を主要構成要素としている。固定スクロ−ル2の吸込口11には外部サイクルに接続する吸込パイプ10が圧入されている。また、固定スクロール2はインジェクション孔14を有し、インジェクションパイプ16により外部サイクルに接続されている。17はインジェクションの逆止弁である。
【0015】
電動機部は、ステ−タ8およびロ−タ9からなり、ステ−タ8は密閉容器1内に焼き嵌めなどにより固定されており、ロ−タ9はクランク軸5に圧入などにより固定されている。フレ−ム4の外周部は密閉容器1に固定されており、クランク軸5の回転を受ける軸受を具備している。固定スクロ−ル2はボルト21によりフレ−ム4に締結されている。
【0016】
固定スクロ−ル2は、台板2aとこの台板2a上に直立する渦巻状のラップ2bとからなり、旋回スクロ−ル3は、台板3aとこの台板3a上に直立する渦巻状のラップ3bとからなり、それぞれラップ部2b、3bを互いに内側に向けて組み合わせて圧縮室A,Bを形成している。旋回スクロ−ル3のボス部にはクランク軸5の偏心部5aが回転自在に嵌入され、台板3a部の溝3cとフレ−ム4の溝(図示せず)にはオルダムリング6が摺動自在に配設され、旋回スクロ−ル3の自転防止手段として機能している。7は、クランク軸5の下部を支持する軸受である。
【0017】
このようなスクロ−ル圧縮機の一般的な作用を説明する。ロ−タ9はステ−タ8により回転力を受け、クランク軸5が回転し、旋回スクロ−ル3はオルダムリング6の作用により自転することなく偏心回転(公転)する。旋回スクロ−ル3の公転により、吸込パイプ10を通して固定スクロ−ル2の吸込口11から吸込まれた冷媒ガスは圧縮室A,Bの容積減少により徐々に圧縮され圧力が上昇し、吐出孔13から密閉容器1の中に放出される。放出された冷媒ガスは電動機部を冷却し吐出パイプ18から外部サイクルへ供給される。
【0018】
次に、本発明の参考例を図1、図2に合わせて図3ないし図5を参照して説明する。図3は、図1のスクロール圧縮機における圧縮室A,Bの動作を説明する図である。図4は、図1のスクロール圧縮機における旋回スクロールのラップ巻き始め部の形状を示す図である。図3の(a)は圧縮室A,Bが圧縮開始する状態、(b)(c)は、それぞれ圧縮室A,Bにインジェクション孔14が開口している状態、(d)(e)はそれぞれ圧縮室A,Bが吐出開始直前の状態を示しており、旋回スクロール3の公転により、(a)(b)(c)(d)(e)の順に圧縮室A,Bの容積が減少し、それぞれの圧力が上昇する。ただし圧縮室Aは(d)で吐出開始するので(e)では吐出行程に移行しており、もはや圧縮室ではないので記号Aを記していない。本参考例では、図4に示すように旋回スクロールのラップ3bの巻き始め部を、斜線部を削除した形状とし、圧縮室Aが圧縮室Bよりも先に吐出開始するようにしている。すなわち、旋回スクロールのラップ3bの外側面巻き始め部が、固定スクロールのラップ2bの内側面から離れる時期を、固定スクロールのラップ2bの外側面巻き始め部が、旋回スクロールのラップ3bの内側面から離れる時期よりも早くして、圧縮室Aが圧縮室Bよりも先に吐出開始するようにしている。また、圧縮室A,Bの吐出開始直前の最小密閉容積は図3(d)(e)のように異なっている。なお、本参考例では、旋回スクロールのラップ3bの外側面巻き始め部が、固定スクロールのラップ2bの内側面から離れることで圧縮室Aが吐出開始し、その後旋回スクロールのラップ3bの外側面が吐出口13と交差するが、吐出口13の位置や大きさの変更により旋回スクロールのラップ3bの外側面が吐出口13と交差することで圧縮室Aが吐出開始するようにしてもよい。
【0019】
参考例における圧縮室A,Bの圧力変化を、図5を参照して説明する。インジェクションすることにより、圧縮室A,Bの圧力はインジェクションなしの場合よりも高くなる。圧縮室A,Bへのインジェクション孔開口区間はほぼ同じであるが、圧縮室Aの方が圧縮室Bよりも低い圧力の時期にインジェクションするので、インジェクション量が多く、圧力が高くなる。従来の技術では吐出開始が同時であり、また最小密閉容積が同じなので、圧縮室Bに合った吐出開始状態、すなわち圧縮室Bが過圧縮や不足圧縮のない状態(図5のefgdに示す圧力変化)でも、圧縮室Aは過圧縮(図5のabchgd)となったり、圧縮室Aに合った吐出開始状態(図5のabcd)でも、圧縮室Bは不足圧縮(図5のeficgd)となるが、本参考例では、インジェクションによる圧力上昇が大きい圧縮室Aの最小密閉容積を圧縮室Bより大きくしたので、吐出開始時の圧力が同等となり、圧縮室A,Bとも図5のabcdおよびefgdのように過圧縮や不足圧縮を低減することができる。また圧縮室A,Bの吐出開始時期を異ならせたので、同時に吐出するよりも、吐出ガス流量が平均化され、吐出圧損の低減を図ることができる。
【0020】
次に本発明の実施例を、図6ないし図8を参照して説明する。図6は本発明の実施例における、固定スクロ−ルに旋回スクロールのラップを組み合わせた説明図である。図7は図6のスクロール圧縮機における圧縮室A,Bの動作を説明する図である。図8は図6のスクロール圧縮機における圧縮室A,Bの圧力変化を説明する指圧線図である。
【0021】
図6は、図2に対して、固定スクロールのラップ2bの内側面の巻き終わりを、約180度延長している。また、後述するように旋回スクロールのラップ3bの巻き始め部を図2よりも大きく削除しているため、吐出口13の位置や大きさ、および固定スクロールのラップ2bの巻き始め部の形状が図2と異なっている。
【0022】
図7の(a)(b)は、それぞれ圧縮室A,Bが圧縮開始する状態、(c)(d)は、それぞれ圧縮室A,Bにインジェクション孔が開口している状態、(e)(f)はそれぞれ圧縮室A,Bが吐出開始直前の状態を示しており、旋回スクロール3の公転により、(a)(b)(c)(d)(e)(f)の順に圧縮室A,Bの容積が減少し、それぞれの圧力が上昇する。ただし圧縮室Bは(b)で圧縮開始するので(a)では記号Bを記していない。また圧縮室Aは(e)で吐出開始するので(f)では吐出行程に移行しており、もはや圧縮室ではないので記号Aを記していない。本実施例では、図7(a)(b)のように、圧縮室A,Bの圧縮開始時期が異なっており、また圧縮室A,Bそれぞれの圧縮開始する最大密閉容積が異なっている。また、図3と図7を比較してわかるように、旋回スクロールのラップ3bの巻き始め部を図4よりも大きく削除しており、図3よりも、圧縮室Aが圧縮室Bより、さらに早く吐出開始するようにしている。すなわち、旋回スクロールのラップ3bの外側面巻き始め部が、固定スクロールのラップ2bの内側面から離れる時期を、固定スクロールのラップ2bの外側面巻き始め部が、旋回スクロールのラップ3bの内側面から離れる時期より、さらに早くして、圧縮室Aが圧縮室Bより、さらに早く吐出開始するようにしている。従って、図3の参考例よりも吐出開始時期が大きく異なっており、より効果的に吐出圧損の低減が図れるようになっている。
【0023】
なお、本実施例では、参考例と同様に、旋回スクロールのラップ3bの外側面巻き始め部が、固定スクロールのラップ2bの内側面から離れることで圧縮室Aが吐出開始し、その後旋回スクロールのラップ3bの外側面が吐出口13と交差するようになっているが、旋回スクロールのラップ3bの外側面巻き始め部が、固定スクロールのラップ2bの内側面から離れる時期が、参考例よりも早いので、吐出口13の位置や大きさ、および固定スクロールのラップ2bの巻き始め部形状が参考例と異なっている。また、本実施例においても、吐出口13の位置や大きさの変更により旋回スクロールのラップ3bの外側面が吐出口13と交差することで圧縮室Aが吐出開始するようにしてもよい。
【0024】
本実施例における圧縮室A,Bの圧力変化を、図8を参照して説明する。圧縮室Aは、圧縮室Bよりも早く圧縮開始するので、インジェクション時の圧力が、図5の場合よりも、圧縮室Bのインジェクション時の圧力に近くなる。従ってインジェクション量のバランスは良くなるが,従来技術のように吐出開始を同時にした場合は、圧縮室Bに合った吐出開始状態、すなわち圧縮室Bが過圧縮や不足圧縮のない状態(図8のefgdに示す圧力変化)でも、圧縮室Aは過圧縮(図8のabchgd)となったり、圧縮室Aに合った吐出開始状態(図8のabcd)でも、圧縮室Bは不足圧縮(図8のeficgd)となるが、本実施例では、圧縮開始時期が早く、また圧縮開始時の最大密閉容積が大きい圧縮室Aの最小密閉容積を、参考例よりさらに、圧縮室Bの最小密閉容積より大きくしたので、吐出開始時の圧力が同等となり、圧縮室A,Bとも図8のabcdおよびefgdのように過圧縮や不足圧縮を低減することができる。
【0025】
また本実施例では、参考例よりも、圧縮室A,Bの吐出開始時期が大きく異なっており、より効果的に吐出圧損の低減を図ることができる。
【0026】
なお、上記参考例および実施例ではインジェクション孔が1つで圧縮室A,Bに交互に開口し、開口期間がほぼ同じ場合を示したが、インジェクション孔が圧縮室A,Bに交互に開口し、開口期間が同じでない場合でも、1つのインジェクション孔が片方の圧縮室にのみ開口する場合でも、複数のインジェクション孔がそれぞれ圧縮室A,Bに開口し、開口期間が同じでない場合でも、吐出開始時期を異ならせることで、あるいは最小密閉容積を異ならせることで、吐出開始時の圧力アンバランスの低減や、吐出圧損の低減を図ることができる。また、複数のインジェクション孔がそれぞれ圧縮室A,Bに開口し、開口期間が同時期の場合でも、吐出圧損の低減を図ることができる。
【0027】
また、上記実施例では、圧縮開始時期を約180度異ならせたが、180度でなくてもよい。
【0028】
また、上記参考例および実施例では詳しく説明していないが、吐出開始時期、最小密閉容積、圧縮開始時期、最大密閉容積の選定は、各圧縮室の圧力差による、固定スクロールおよび旋回スクロールのすきまからのガスの漏れを考慮するとさらによい。
【0029】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、インジェクションした場合に発生する、吐出開始時の圧力のアンバランスを低減し、また吐出圧損を低減して、効率のよいスクロール圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の参考例に係るスクロ−ル圧縮機の縦断面図を、冷凍サイクルの一例とのつながりを含めて示したものである。
【図2】図1のスクロール圧縮機における、固定スクロ−ルに旋回スクロールのラップを組み合わせた説明図である。
【図3】図1のスクロール圧縮機における圧縮室A,Bの動作を説明する図である。
【図4】図1のスクロール圧縮機における旋回スクロールのラップ巻き始め部の形状を示す図である。
【図5】図1のスクロール圧縮機における圧縮室A,Bの圧力変化を説明する指圧線図である。
【図6】本発明の実施例における、固定スクロ−ルに旋回スクロールのラップを組み合わせた説明図である。
【図7】図6のスクロール圧縮機における圧縮室A,Bの動作を説明する図である。
【図8】図6のスクロール圧縮機における圧縮室A,Bの圧力変化を説明する指圧線図である。

Claims (1)

  1. それぞれの台板上に渦巻状のラップを有する旋回スクロ−ルおよび固定スクロ−ルを備え、それぞれのラップを内側にして組み合わせて、前記旋回スクロ−ルが自転を阻止された状態で前記固定スクロ−ルに対して旋回運動をなすことにより、前記旋回スクロ−ルのラップ外側面と前記固定スクロ−ルのラップ内側面で形成される圧縮室(A)、および前記旋回スクロ−ルのラップ内側面と前記固定スクロ−ルのラップ外側面で形成される圧縮室(B)、それぞれの容積を減少させてガスを圧縮し、この圧縮ガスの吐出口を前記旋回スクロ−ルあるいは前記固定スクロ−ルの少なくとも一方に有するものであり、冷媒あるいは油などを前記圧縮室に注入するインジェクション孔を、前記固定スクロ−ルに有する、スクロール圧縮機において、
    前記圧縮室(A)と前記圧縮室(B)との圧縮開始時期を約180度異ならせ、
    前記旋回スクロールのラップ外側面巻き始め部が前記固定スクロールのラップ内側面から離れる時期と前記固定スクロールのラップ外側面巻き始め部が前記旋回スクロールのラップ内側面から離れる時期とを異ならせて、前記圧縮室(A)の吐出開始時期と前記圧縮室(B)の吐出開始時期とを異ならせ、その吐出開始時期を異ならせた度合いを、いわゆる対称ラップ型のスクロール圧縮機での吐出開始時期が異なる度合いよりも大きくするように、前記旋回スクロールのラップの巻き始め部を削除した
    ことを特徴とするスクロール圧縮機。
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