JP4573100B2 - 自動車のドア構造 - Google Patents
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Description
また、ドア閉時の異音発生を防止する技術として、特許文献2には、ドア閉時に車体側に設けたドアスイッチに当接するドアインナパネルの所定位置に、当たり部を設けたドア構造が開示され、このドア構造により、ドア閉時にインナパネルの振動を抑制するようにしている。
また、ドアの内部にウレタン等の吸音材を設け、高周波音の発生を抑制することが行われている。
しかし、上述した特許文献1及び特許文献2のドア構造では、低周波音を増大させることが出来ない。また、上述したウレタン等の高周波音を吸収する技術では、高周波音を吸収することは出来るものの、低周波音を増大させることは出来ない。
一方、近年、車体はもちろん、ドア構造に関しても、コスト低減、軽量化及び製造時の作業性の向上が望まれているため、コスト、重量及び作業性に悪影響を与えないような簡単な構造で低周波音を増大させることが出来るドア構造が望まれている。
このように構成された本発明においては、ドアモジュールは、ドア閉時に生じるドアラッチの振動のうちの特定の低周波数の振動の音響変換効率を増大させるように1×1モードの低次の振動モードを生じさせる増大手段を備えているので、ドアモジュールに伝達されたドアラッチの振動のうち、乗員が重厚さを感じることができる特定の低周波数の振動エネルギが、1×1モードの低次の振動モードの振動により、増大した音響放射エネルギに変換され、その結果、ドアモジュールから放射される低周波音を増大させることが出来る。この増大した低周波音は、ドアアウタパネルとドアインナパネル及びドアモジュールとの間の空間に放射され、さらに、ドアアウタパネルを透過して、車外側に放射される。その結果、乗員は重厚さを感じることが出来る。また、ドアアウタパネルを透過したドア閉め音は、高周波成分が減衰されるので、より確実に、乗員に重厚さを感じさせることが出来る。
また、この増大手段は、上記ドア機能部品のうちのウインドウレギュレータが、1×1モードの振動モードの振動の腹の部分となるドアモジュールの車体前後方向のほぼ中間且つ車体上下方向のほぼ中間の部分に一方の先端部が取り付けられ、ドアモジュールのドアインナパネルへの取付け部の近傍に他方の先端部が取り付けられたブラケットを介して上記ドアモジュールに取り付けられて構成されるので、振動の腹となるドアモジュールの車体前後方向のほぼ中間且つ車体上下方向のほぼ中間の部分にドア機能部品のウインドウレギュレータの重量がかかるようにして、その振動の腹が大きな振動振幅で生じるようにすることが出来ると共に、ドアモジュールに生じる振動の振動振幅が小さい部分であるドアモジュールのドアインナパネルへの取付け部の近傍に取り付けられて、ドアモジュールに生じる1×1モードの低次モードの振動を抑制しないようにすることが出来る。従って、この1×1モードの低次の振動モードにより、特定の低周波数の振動の音響放射効率をより確実に増大させることが出来る。
また、成形性が高い樹脂製のドアモジュールに増大手段を設けているので、コスト、重量及び作業性に悪影響を与えることなく、低周波音を増大させることが出来るドア構造を得ることが出来る。
先ず、図1は、本発明の実施形態による自動車のドア構造を適用したフロントドアの基本構造を示す分解斜視図、図2は、本実施形態のドアインナパネル及びドアモジュールの構造を示す車室側から見た平面図である。
先ず、図1に示すように、フロントドア1は、鋼板製のドアアウタパネル2を備え、このドアアウタパネル2で、フロントドア1のアウタ部を構成している。このドアアウタパネル2には、鋼板製のウインドウサッシュ4が溶接により固定されている。また、ドアアウタパネル2には、側面衝突時に乗員を保護するためのサイドインパクトバー12が取り付けられている。
また、フロントドア1は、ドアアウタパネル2の車室側に設けられドアアウタパネル2と互いに溶接により固定されている鋼板製のドアインナパネル6と、このドアインナパネル6の開口部6aを覆うように車室側からドアインナパネル6に取り付けられるドアモジュール8とを備え、これらのドアインナパネル6及びドアモジュール8でフロントドア1のインナ部を構成している。インナ部の車室側には、ファスナクリップ等(図示せず)でドアトリム10が取り付けられる。
また、ドアインナパネル6は、ドアインナパネル6の車体前後方向の後方の端部でドアアウタパネル2から車室側へほぼ垂直に延びる後端面6gを有する。この後端面6g及び後方領域6cには、その内方に、ドアラッチ部16が設けられている。このドアラッチ部16は、ドアインナパネル6に固定されたドアラッチブラケット18と、このドアラッチブラケット18に固定されたドアラッチ機構20とを有する。このドアラッチ機構20は、ドア閉時に、ドアインナパネル6に形成されたラッチ開口部6hを通して、車体のピラー(図示せず)に固定されたストライカ(図示せず)と係合してフロントドア1がその閉じ位置で車体に保持されるようになっている。
また、ドアモジュールには、車室側に突出したモータ収容用凹部40や、側突用バッド部材36が収容且つ固定されるバッド部材用凹部42が形成されている。ここで、図2に示すように、ウインドウレギュレータ24は、ウインドウガラス26をガイドするレール部28、2つのブラケット30a、30b、及び、ウインドウガラス26を昇降させるモータ32を備える。モータ収容用凹部40には、このモータ32が収容される。
さらに、図1に示すように、ドアモジュール8には、作業用孔部44、スピーカ用孔部46、及び上述したハーネス類やケーブル類を通すハーネス用孔部48が形成されている。作業用孔部44は、ドアアウタパネル2に取り付けられているドアハンドル(図示せず)とケーブル類とを連結したり、その他の作業を行うためのものである。それらの作業終了後には、この孔部44に、凹部42に固定されているものと同様の側突用バッド部材(図示せず)が取り付けられるようになっている。
ここで、低周波音響増大手段を説明する。先ず、ドア閉時には、ドアラッチ機構20において振動が生じる。この振動は、ドアインナパネル6に伝達され、さらに、ドアモジュール8に伝達される。このドアモジュール8には、その機能上、上述したように様々なドア機能部品(24、34)を取り付けたり、凹部(40、42)等や孔部(44、46、48)などを形成する必要があり、その形状及び構造は複雑になる。低周波音響増大手段は、このような複雑な形状及び構造をしているドアモジュール8の剛性を調整して、ドアモジュール8に伝達された振動のうち、乗員が重厚さを感じることができる特定の低周波数の振動の振動音響変換効率を増大させるものである。即ち、ドアモジュール8の特定の低周波数の振動エネルギが、増大した音響放射エネルギに変換され、その結果、ドアモジュール8から放射される低周波音を増大させることが出来るのである。
本発明の実施形態では、音響変換効率を増大させるために、1×1の低次振動モードを発生させるようにしている。また、本発明の実施形態では、特定の低周波数の振動として、乗員がより確実に重厚さを感じることができるような200Hz以下の低周波数の振動、特に、10−100Hzの周波数の振動の音響変換効率を増大させるようにしている。即ち、本実施形態では、低周波音響増大手段によりドアモジュール8の剛性を調整して、200Hz以下の周波数で、1×1モードの振動が発生するようにしている。
なお、ドアモジュール8の形状及び構造は複雑であり、ドアモジュール8の全体が完全に1×1モードで振動しない場合がある。ここで、1×1モードの振動は、ドアモジュール8のほぼ全体にわたって大きな振動の腹が1つ生じるものであり、ドアモジュール8の一部に、その振動の腹と逆位相で生じるような他の振動の腹が生じても、その音響変換効率に与える影響が少なければ、1×1モードの振動が生じるものとすることが出来る。なお、乗員が重厚さを感じることができる低周波音が生じるのであれば、2×1モードや2×2モードのような低周波モードを生じるようにしても良い。
先ず、図2乃至図4により、低周波音響増大手段を構成する第1補強構造(第1補強部)を説明する。
図2に示すように、ドアモジュール8には、その中央領域に、低周波音響増大手段を構成する第1補強構造(第1補強部)50が形成されている。この第1補強構造50は、ドアモジュール8の中央領域の剛性を調整するものであり、ドアモジュール8のほぼ中心部に位置し環状に延びる環状肉厚部50aと、ドアモジュール8のほぼ中心部を中心として環状に且つ同心円状に延びる複数の環状肉厚部50b〜dで構成されている。ここで、ほぼ中心部とは、ドアモジュール8の車体前後方向のほぼ中間且つ車体上下方向のほぼ中間の部分を指す。
先ず、図2に示すように、ドアモジュール8には、低周波音響増大手段を構成する第2補強構造(第2補強部)56が形成されている。この第2補強構造56は、ドアモジュール8の全体の車体前後方向の剛性を調整するものであり、ドアモジュール8のドアラッチ部16の側からドアモジュール8のほぼ中心部を通ってドアヒンジ14の側まで車体前後方向に直線状に延びる直線状リブ56からなる。図4(a)に示すように、この直線状リブ56は、ドアモジュール8と一体的に成型されると共に第1補強構造である複数の肉厚部50a〜dと一体的に成型されている。図4(b)に示すように、この直線状リブ56は、その断面が矩形状に形成されている。
先ず、図2に示すように、ドアモジュール8には、その外周領域に、低周波音響増大手段を構成する第3補強構造(第3補強部)60が形成されている。この第3補強構造60は、ドアモジュール8の外周領域の剛性を調整するものであり、その外周領域のほぼ全周にわたって、ドアモジュール8のほぼ中心部に向かって放射状に延びるように形成された複数の放射状リブ60からなる。ここで、外周領域とは、上述した中央領域の周囲の部分であり、ドアインナパネル6に取り付けられる周縁部を含む。
これらの放射状リブ60は、ドアモジュール8と一体的に成型され、その断面は、上述した直線状リブ56(図4(b)参照)と同様に矩形状に形成されている。これらの放射状リブ60のうち、バッド部材用凹部42に形成された放射状リブ60は、その凹部34の内側で、その突出形状に沿って湾曲して延びている。
具体的には、先ず、互いに隣り合う補強リブ同士の間隔が、外周領域の全周にわたって不規則となるように形成されている。具体的には、ドアモジュール8の外周領域のうち、ドアラッチ部16の側及びドアヒンジ14の側に形成された放射状リブ60の間隔(例えば、図2中a)は、その他の側、即ち、上方側及び下方側(ドアラッチ部16の側からドアヒンジ14の側まで延びる各側)に形成された放射状リブ60の間隔(例えば、図2中b)に比べ、比較的小さくなるように形成されている。
次に、その長さは、ドアモジュール8の外周領域のうち、ドアラッチ部16の側及びドアヒンジ14の側に形成された放射状リブ60(例えば、60c)は、その他の側、即ち、上方側及び下方側に形成された放射状リブ60(例えば、60d)に比べ、比較的長くなるように形成されている。
先ず、図2に示すように、低周波音響増大手段を構成する第4補強構造(第4補強部)70は、作業用孔部44、スピーカ用孔部46、及び、ハーネス類等を通す孔部48、及び、モータ収容用凹部40に形成されている。この第4補強構造70は、それらの孔部44、46、48や凹部40からその周囲の部分にかけて均一な剛性が得られるように、ドアモジュール8の剛性を調整するものである。即ち、ドアモジュール8に孔部や凹部を形成すると、それらの部分の剛性が低くなり、それらの周囲の部分との剛性差が生じて、剛性が不均一になってしまい、例えば、その部分に振動の節が発生したり、その部分で折れ曲がるような振動が発生してしまい、1×1モードの振動の発生を妨げる要因となる。また、高周波の振動の発生要因にもなる。そこで、本実施形態では、第4補強構造70として、孔部44、46、48や凹部40に、或いは、その周囲の部分にわたって補強部を形成することにより、孔部44、46、48や凹部40からその周囲の部分にかけての剛性が均一に分布するようにしている。
図5に示すように、開口補強リブ72は、断面が矩形状に形成され、その高さは、開口面積が大きいほど高くなるように形成されている。ここで、後述するように、スピーカ用孔部46にも同様の開口補強リブ72が形成されている(図6参照)。図2に示すように、作業用孔部44の開口44aは、そのスピーカ用孔部46の開口46aより小さいので、作業用孔部44の開口補強リブ72の高さは、スピーカ用孔部46の開口補強リブ72よりも小さくなっている。
次に、図2及び図3により、ハーネス類等を通すハーネス用孔部48の第4補強構造70を説明する。第4補強構造70は、この孔部48の開口48aの周縁の全周にわたって形成された開口補強リブ72で構成され、その高さは、その開口48aが小さいので、上述した作業用孔部44及びスピーカ用孔部46の各開口補強リブ72に比べて小さくなるように形成されている。
凹部補強リブ76は、上述した開口補強リブ72や孔部補強リブ74と同様に断面矩形状に形成されている(図5及び図6参照)。その高さは、上述した作業用孔部44の孔部補強リブ74等と同様に、振動中立面の位置に応じて設定されている。
先ず、図2に示すように、ウインドウレギュレータ24は、レール部28、2つのブラケット30a、30b及びモータ32を備え、ユニット化されている。具体的には、モータ32は、レール部28に固定され、それぞれ、レール部28で支持されている。各ブラケット30a、30bは、レール部28に固定され、レール部28の長手方向に対してほぼ垂直方向に延びている。このウインドウレギュレータ24は、レール部28の上端部及び下端部、及び、各ブラケット30の先端部で、ボルト及びナットによる取り付け部33(33a、33bを含む)により、ドアモジュール8に取り付けられている(図3及び図4参照)。
ウインドウレギュレータ24は、ドアモジュール8に生じる振動、特に、1×1モードの振動を抑制しないように、ドアモジュール8に生じる振動の振動振幅が小さい部分に取り付けられている。具体的には、レール部28は、ドアインナパネル6の開口部6aの上下方向のほぼ全長にわたって延び、その上端部及び下端部が、ドアモジュール8の周縁部(ドアモジュール8のドアインナパネル6への取り付け部)の近傍に取り付けられている。また、ブラケット30aは、ドアモジュール8の周縁部の近傍まで延び、その先端部がドアモジュール8に取り付けられている。なお、連結部22が設けられており、振動の節となるドアモジュール8の周縁部に取り付けても良い。なお、ドアモジュール8に2×1モードや2×2モードの振動を発生させる場合、このようなブラケットを、その2×1モードや2×2モードの振動の節となる箇所に取り付け、また、後述するように、振動の腹となる箇所にドア機能部品の重量が大きくかかるようにブラケットを取り付けると良い。
ここで、本実施形態では、ドアモジュール8に1×1モードの振動が生じるようにしており、この場合、ドアモジュール8のほぼ中心部の重量が大きい程、その中心部が振動の腹となる1×1モードの振動が生じ易く且つ振幅も大きくなりやすい。一方、ウインドウレギュレータ24は、モータ32やウインドウガラス26等の重量により、ドアモジュール8に取り付けられるドア機能部品の中でその重量が最も大きいものである。
そこで、本実施形態では、図2に示すように、ウインドウレギュレータ24の重量が、ドアモジュール8のほぼ中心部に大きくかかるように、ブラケット30bがドアモジュール8のほぼ中心部まで延びるように形成され、その先端部が、取り付け部33bにより、ドアモジュール8のほぼ中心部、具体的には、環状肉厚部50aに取り付けられている(図3及び図4参照)。特に、モータ32は、このブラケット30bに近い位置でレール部28に取り付けられているので、モータ32の重量がこのドアモジュール8のほぼ中心部に大きくかかる。また、肉厚部50a自身の重量も、その高さ及び直径を調整することにより高められている。なお、複数の環状肉厚部50のうち、ほぼ中心部に位置する環状肉厚部50aを形成しない場合には、直線状リブ56にブラケット30bを取り付けても良い。
図2及び図6に示すように、スピーカ用孔部46の段上げ部46aの上面部には、ボルト通し孔46cが2箇所に形成されている。図2に示すように、これらのボルト通し孔46cは、ドアモジュール8のほぼ中心部に向かう方向(中心部に対する半径方向)に対して直交する方向(図2中VI-VI線の方向)、或いは、中心部に対する円周方向にほぼ並ぶ位置に形成され、これらの位置で、ボルト及びナット(図示せず)により、スピーカ34が取り付けられるようになっている。
ここで、スピーカ34はそれ自体剛性が高く、ドアモジュール8への取り付けの位置が複数の場合、その取り付け位置を結んだ線上に剛性が高まる。一方、ドアモジュール8に1×1モードの振動が生じる場合、ドアモジュール8の外周領域からほぼ中央領域にかけて振幅値が大きくなるように振動振幅が分布する。
そこで本実施形態では、ドアモジュール8のほぼ中心部に向かう方向に対して直交する方向にほぼ並ぶ位置、即ち、振動振幅がほぼ同一となる線上でスピーカを取り付けて、ドアモジュール8に生じる低周波振動、特に、1×1モードの振動を抑制しないようにしている。
先ず、図2に示すように、ドアモジュール8は、上述したようにその周縁部に沿って複数の連結部22によりドアインナパネル6に取り付けられている。
これらの連結部22のうち、ドアラッチ側(ドアモジュール8の後縁部)に並ぶ8つの連結部22及びその反対側(ドアモジュール8の前縁部)に並ぶ5つの連結部22では、ボルト80及びナット82(図9参照)で強固に連結されている。
このように、これらの連結部22aは、他の連結部22より弱く連結され、弾性体84により、ドアインナパネル6に対するドアモジュール8の変位を許容するようになっており、ドアモジュール8に生じる低周波数の振動、特に、1×1モードの振動を抑制しないようになっている。なお、ドアラッチの側からその反対側に向かう方向に並ぶ連結部22の全部に、弾性体84を設けるようにしても良い。
本実施形態によるドア構造では、ドア閉時にドアラッチ機構20において生じた振動がドアモジュール8に伝達され、その振動のうち特定の低周波数の振動を低周波音響増大手段により増大させるようにしている。そのため、本実施形態では、ドア閉時にドアラッチ機構20において生じた振動が、よりドアモジュール8に効率よく伝達されるようなドアラッチ部16の構造、及び、ドアモジュール8とドアインナパネル6とドアラッチ部16との連結構造としている。
また、連結部22bが設けられている領域、即ち、ドアモジュール8とドアインナパネル6とドアラッチブラケット18とが重なり合う領域には、ドアラッチ部16からドアモジュール8に向かう方向に直線状に延びる補強リブ(補強部)86がドアモジュール8と一体的に形成されている。
本実施形態では、振動遮断用の補強構造をドアインナパネル6に設けることにより、ドアラッチ機構20において生じる振動がドアモジュール8に効率よく伝達される一方、ドアラッチ機構20において生じる振動及びドアモジュール8に伝達された振動が、ドアインナパネル6に伝達されにくいようにしている。
具体的には、先ず、図2に示すように、ドアインナパネル6には、連続的に線状に延びる振動遮断用補強部90が形成されている。図8に示すように、この振動遮断用補強部90は、図8中f、gの2箇所で折り曲げられて剛性が高められた段差部92で構成されている。
次に、図2に示すように、この段差部92は、ドアラッチ部16が設けられている側の面即ち後方領域6cを除いた前方領域6b、上方領域6d及び下方領域6eで、ドアモジュール8を囲むように連続して延びる第1振動遮断部92aと、後方領域6cに形成された第2振動遮断部92bとを有する。この第2振動遮断部92bは、ドアラッチ部16の上方及び下方で、それぞれ、上方領域6d及び下方領域6eがドアラッチ部16から分断されるように、第1振動遮断部92aから連続して延びると共にドアインナパネル6の後端面6gとの境界縁まで延びている。なお、ドアインナパネル6の後端面6gにも、この第2振動遮断部92bから連続して延びる段差部を形成しても良い。
本実施形態のドア構造では、低周波音響増大手段により、ドアモジュール8に伝達される、ドア閉時に生じるドアラッチ機構20の振動のうち、乗員が重厚さを感じることができる特定の低周波数の振動エネルギが、増大した音響放射エネルギに変換され、その結果、ドアモジュール8から放射される低周波音を増大させることが出来る。
この増大した低周波音のうち、車室側に放射された低周波音により、車内にいる乗員は、ドア閉め音を重厚と感じることが出来る。また、車室側に放射された低周波音は、ドアトリム10で高周波成分が減衰されて、車内にいる乗員に、より確実に重厚さを感じさせることが出来る。
増大した低周波音のうち、車外側に放射された低周波音は、ドアアウタパネル2(アウタ部)とドアインナパネル6及びドアモジュール8(インナ部)との間の空間に放射され、さらに、ドアアウタパネル2を透過して、車外側に放射される。その結果、車外にいる乗員はドア閉め音を重厚と感じることが出来る。また、ドアアウタパネル2を透過したドア閉め音は、高周波成分が減衰されるので、車外にいる乗員に、より確実に重厚さを感じさせることが出来る。
次に、本実施形態の作用効果を具体的に説明する。
先ず、本実施形態では、ドアモジュール8に形成された第1乃至第4補強構造(補強部)によりドアモジュール8の剛性を調整しているので、200Hz以下の低周波数で、ドアモジュール8に1×1の振動モードの振動を発生させて、ドアモジュール8から放射される低周波音を増大させることが出来る。
先ず、第1補強構造は、ドアモジュール8のほぼ中心部を中心とする環状に延びる環状補強部である環状肉厚部50であり、この環状肉厚部50により、ドアモジュール8の中央領域が環状に補強される。その結果、1×1モードの振動を発生させ易くなる。即ち、この環状肉厚部50により、ドアモジュール8のほぼ中心部が最も振幅が大きくなるような振動の腹を発生させることが出来る。さらに、この環状肉厚部50は、同心円状に複数形成されているので、より確実に1×1モードの振動を発生させることができる。さらに、高周波振動も発生しにくくなる。
特に、直線状リブ56は、ドアラッチ機構20において生じる振動が伝達される方向、即ち、ドアラッチ部16の側からドアモジュール8のほぼ中心部を通って反対のドアヒンジ14の側に向かう方向に延びているので、効果的に1×1モードの振動を発生させることが出来る。
さらに、直線状リブ56は、環状肉厚部50(第1補強構造)と一体で形成されているので、複数の環状肉厚部50が形成された領域が一体的に振動の腹として振動し易くなり、さらに、最も外側に位置する環状肉厚部50dとその外側の部分との境界部で折れ曲がるようにして振動の節が生じることを防止することが出来る。その結果、1×1モードの振動が確実に発生するようにすることが出来る。また、高周波振動も発生しにくくなる。
また、複数の放射状リブ60の幅及び/又は高さは、それぞれ、ドアモジュール8の外周領域の剛性分布がほぼ均一になるように調整されている。さらに、その幅及び/又は高さは、ドアモジュール8の外周領域の単位面積当たりの質量がほぼ均一に分布するように調整されている。従って、ドアモジュール8に発生した1×1モードの振動分布をなめらかにすることが出来る。従って、低周波音の音響放射効率が向上する。また、複数の放射状リブ60を不規則な間隔になるように形成しても、1×1モードの振動を確実に発生させることが出来る。
他方、上端側及び下端側で車体前後方向に並ぶ連結部22dでは、変位を許容するように弱く連結されており、これに合わせ、これらの連結部22dの近傍の放射状リブ60を短く形成している。従って、これらの連結部22dの近傍の部分の剛性が大きく高まらないようにして、ドアモジュール8の1×1モードの振動を抑制しないようにすることが出来る。
また、孔部補強リブ74及び凹部補強リブ76の高さは、振動中立面からの距離が小さい程高くなるように形成され、開口補強リブ72の高さは、開口の大きさが大きいほど高くなるように形成されているので、孔部44、46、48や凹部40とその周囲との剛性差が小さくなるようにして、剛性を均一にすることが出来る。
即ち、スピーカ用孔部46では、ドアモジュール8のほぼ中心部に向かう方向に対して直交する方向にほぼ並ぶ位置にスピーカ34の取り付け部46cが設けられている。ここで、ドアモジュール8に1×1モードの振動が生じる場合、ドアモジュール8の外周領域からほぼ中央領域にかけて振幅が徐々に大きくなるように振動振幅が分布する。これに対し、例えば、剛性が大きく高められた部分が、半径方向(外周領域から中央領域に向かう方向)に、ある長さにわたって存在すると、その部分が、1×1モードの振動の発生を抑制してしまう。
本実施形態では、ドアモジュール8のほぼ中心部に向かう方向に対して直交する方向(円周方向)にほぼ並ぶ位置でスピーカを取り付けているので、円周方向に剛性が高まり、半径方向には剛性が高まらないようにすることが出来る。従って、ドアモジュールに1×1モードの振動が発生し易くなると共にその振動の腹がなめらかな振動分布(振動振幅分布)で生じるようにすることが出来る。また、スピーカ用孔部46とその周囲との剛性差が小さくなるようにして、剛性を均一にすることが出来る。その結果、上述したように、音響放射効率を増大させることが出来る。
先ず、レール部28の一部及びブラケット30aが、作業用孔部44の周りでこの作業用孔部44を囲むように延び、レール部28の上端部及びブラケット30の先端部が、それぞれ、作業用孔部44の近傍でドアモジュール8に取り付けられている。従って、ウインドウレギュレータ24の取り付け位置及びウインドウレギュレータ24のレール部28及びブラケット30の形状により、ドアモジュール8において剛性が不均一となっている部分、即ち、作業用孔部44とその周囲の部分の剛性を均一にすることが出来る。その結果、上述したように、音響放射効率を増大させることが出来る。
また、ブラケット30bは、環状肉厚部50aに取り付けられている。この環状肉厚部50aはもともと剛性が高められた部分なので、ブラケット30bを介してウインドウレギュレータ24を取り付けても、1×1モードの振動を抑制しないようにすることが出来る。なお、直線状リブ56に取り付ける場合も同様の作用効果を奏する。また、他のドア機能部品をドアモジュールに取り付ける場合も、肉厚部50、リブ、ビードなどの補強部に取り付けるようにしても同様の作用効果を奏する。
本実施形態では、ドアラッチ部16の側からその反対側に向かう方向に並ぶ連結部22dは、ドアモジュール8の変位を許容するように、他の連結部22より弱く連結されている。従って、低周波音響増大手段により増大されたドアモジュール8の1×1モードの振動を抑制しないようにすることが出来る。
特に、これらの連結部22dは、ドアラッチ部16の側からその反対側に向かう方向のほぼ中間付近に配置され、この中間付近の部分は、ドアラッチ部16の側から反対のドアヒンジ14の側に向かう方向に分布する1×1モードの振動の腹の振動振幅が大きい位置であるので、その1×1モードの振動を抑制しないようにすることが出来る。
また、連結部22dでは、弾性体を介してボルト及びナットによりドアモジュール8がドアインナパネル6に連結されているので、ドアモジュール8のドアインナパネル6に対する変位を効果的に許容することが出来る。
本実施形態では、ドアモジュール8と、ドアインナパネル6と、ドアラッチブラケット18とが共締めされているので、ドアラッチ機構20において生じる振動をドアモジュール8に効率よく伝達させることが出来る。ここで、ドアモジュール8に伝達される振動が大きい程、低周波音響増大手段により増大される低周波数の振動も大きくなる。従って、乗員が重厚さを感じることができる低周波音をより効果的に増大させることができる。
特に、これらの共締めされている連結部20bでの取り付け剛性が、他の連結部22より高められているので、より効率よく振動を伝達させることが出来る。さらに、共締めによる連結は複数のボルトにより行われ、これらのボルトは、ドアラッチ部16からドアモジュール8に向かう方向、即ち、振動が伝達される方向と交わる方向に沿って2列に配置されているので、より効率よく振動を伝達させることが出来る。
さらに、ドアモジュール8の共締めされている領域には、ドアラッチ部16からドアモジュール8に向かう方向に延びる補強リブ86が形成されているので、ドアラッチ部16で生じた振動エネルギをドアモジュール8に有効に伝達することが出来る。
本実施形態では、ドアインナパネル6に、ドアインナパネル6のドアラッチ部16が固定されている側の後方領域6cを除く他の領域6b、6d、6eでドアモジュール8を囲むように振動遮断用補強部90(第1振動遮断部92a)が形成されているので、ドアモジュール8に伝達された振動が、さらに各領域6b、6d、6eに大きく伝達されにくくなり、その結果、ドアインナパネル6で高周波音の音響放射が生じることを防止することが出来る。即ち、ドアインナパネル6は、鋼板製であり、また、各領域6b、6d、6eの面積が比較的小さく、また、その外形が、特に開口部6aのように複雑であるので、高周波音が発生しやすいが、ドアモジュール8から伝達される振動が少ないので、そのような高周波音の発生を防止することが出来るのである。
さらに、振動遮断用補強部90は、連続的に線状に延びるように形成されているので、上述した振動遮断用補強部90の作用効果をより確実に得ることが出来る。
一方、後方領域6cには、ドアモジュール8を囲むような振動遮断用補強部90が形成されていないので、ドアラッチ機構20において生じる振動をドアモジュール8に効率よく伝達させることが出来る。
さらに、この段差部92は、ドアモジュール8よりその面外方向に突出するように形成されているので、段差部92が、ドアモジュール8の周縁に対して面内方向に対向する壁として形成される。従って、ドアモジュール8から放射される低周波音が、ドアモジュール8とドアインナパネル6との隙間から逃げないようにして、ドアモジュール8から放射される音響放射エネルギが低減しないようにすることが出来る。特に、本実施形態では、ドアモジュール8の周縁部に沿って離間した複数の連結部22が設けられ、さらに、連結部22dでは、変位を許容するようにしているので、ドアモジュール8が振動すると、ドアモジュール8とドアインナパネル6との間に隙間が生じやすくなっているので有効である。なお、振動遮断用補強部90をビード部94で同様に構成しても、同様の作用効果を奏する。
6 ドアインナパネル
6a 開口部
6b〜e ドアインナパネルの前方領域、後方領域、上方領域、下方領域
8 ドアモジュール
16 ドアラッチ部
18 ドアラッチブラケット
20 ドアラッチ機構
22 ドアモジュールとドアインナパネルとの連結部
24 ウインドウレギュレータ
28 レール部
30 ブラケット
32 モータ
33 ウインドウレギュレータのドアモジュールへの取り付け部
40 モータ収容用凹部
44 作業用孔部
46 スピーカ用孔部
48 ハーネス用孔部
50 環状肉厚部(第1補強部)
56 直線状リブ(第2補強部)
60 放射状リブ(第3補強部)
70 第4補強部
72 開口補強リブ(第4補強部)
74 孔部補強リブ(第4補強部)
76 凹部補強リブ(第4補強部)
84 弾性体
90 振動遮断用補強部
92 段差部
94 ビード部
Claims (1)
- ドアラッチにより車体に開閉自在に支持される自動車のドア構造であって、
ドアアウタパネルと、
このドアアウタパネルの車室側に配置されると共に上記ドアラッチを備えさらに開口部が形成されたドアインナパネルと、
ウインドウレギュレータ、スピーカ、衝撃吸収部材、ハーネス類、上記ドアラッチに連結されるケーブル類から選択される少なくとも1つのドア機能部品を備え且つ上記ドアインナパネルの開口部を覆うように上記ドアインナパネルに取り付けられた樹脂製のドアモジュールと、を有し、
このドアモジュールは、ドア閉時に生じる上記ドアラッチの振動のうちの特定の低周波数の振動の音響変換効率を増大させるように1×1モードの低次の振動モードを生じさせる増大手段を備え、この増大手段は、上記ドア機能部品のうちのウインドウレギュレータが、上記1×1モードの振動モードの振動の腹の部分となる上記ドアモジュールの車体前後方向のほぼ中間且つ車体上下方向のほぼ中間の部分に一方の先端部が取り付けられ、振動の節が生じる部分となる上記ドアモジュールの上記ドアインナパネルへの取付け部の近傍に他方の先端部が取り付けられたブラケットを介して上記ドアモジュールに取り付けられて構成されていることを特徴とする自動車のドア構造。
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