JP4571367B2 - メソ孔担持炭酸カルシウム、その製造方法及びそれを用いた塗工紙 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
この発明は、メソ孔を有する炭酸カルシウム(メソ孔担持炭酸カルシウム)とその製造方法に関する。またこの発明は、メソ孔担持炭酸カルシウムを用いた塗工紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭酸カルシウムは、ゴム、シーラント、プラスチックス、塗料などの充填剤や、紙の内填剤や塗工紙の顔料として広く使用されている。炭酸カルシウムに求められる特性は、その用途によって異なるが、充填剤として使用される場合、分散性を考慮して高い比表面積のごく微細な炭酸カルシウムが使用される。このような高比表面積の炭酸カルシウムを製造する方法が従来、多数知られている。例えば、特公昭56-26613号には、ゴムやプラスチックの充填剤として用いられる連鎖状炭酸カルシウムの製造方法として、消石灰スラリーを炭酸化する第1次工程でヒドロキシカルボン酸、ポリヒドキシカルボン酸などのキレート剤を用いて炭酸化した後、第2次工程で水溶性金属塩等を用いて炭酸化する方法が記載され、また特公平4-6649号には、反応開始前に硫酸塩を添加し、反応途中で多価アルコールを添加して炭酸化する方法が記載されている。これらの方法では連鎖状或いは膠質炭酸カルシウムが形成される。また凝集体の高比表面積炭酸カルシウムの製造方法として、炭酸化反応中にアニオン有機ホスホネートを存在させるとともに反応後多塩基酸を加える方法(特公平5-55449号)も提案されている。
【0003】
一方、インクジェット記録紙等の記録紙の塗工用組成物に配合される炭酸カルシウムは、高い吸油性、吸水性が要求される。このような用途の炭酸カルシウムとして、特公平5-11051号には、BET比表面積25〜55m2/gでBET比表面積と平均粒子径の比が特定範囲の連鎖状炭酸カルシウムが記載され、またこのような炭酸カルシウムの製造方法として、炭酸化の第1工程でキレート剤又はアニオン性高分子化合物の水溶性塩を含む水酸化カルシウム水懸濁液に炭酸ガス含有気体を吹き込み炭酸化率75〜95%まで反応を行い、第2工程でキレート剤を加えてさらに炭酸化反応を行う方法が記載されている。また特表平11-501879号には、沈降炭酸カルシウムのスラリーに有機ホスホネート化合物を添加して熱時効し、高比表面積炭酸カルシウムを製造する方法が記載されている。
【0004】
ところで、従来、ゼオライト等の所定の細孔を有する多孔物質が触媒反応や吸着などに利用されてきたが、特に細孔が直径2〜50nmの多孔物質は、ゼオライトの細孔(直径が2nm以下)では小さすぎて入ることが困難であった分子径の大きな化合物のカラム触媒反応やナノ機能基材の補助物質としての利用が期待されている。このようなメソ孔を持つ多孔物質はメソポーラスマテリアルと呼ばれ、一部の活性炭やシリカゲルが知られているが、これらは非晶質物質であり、その細孔径の分布が広く、均一な細孔を有する結晶性多孔物質の開発が望まれている。
【0005】
均一なメソ孔を持つ多孔物質の合成方法としては、界面活性剤を利用する方法が報告されている。例えば沈降性シリカ、ケイ酸ソーダ、シリケート等の珪素を主体とする成分を原料とし、合成時に界面活性剤を使用してメソポーラスとし、合成後に界面活性剤を除去する方法がある。
しかしこの方法では、原料Si成分1モルに対し、界面活性剤0.5モルを必要とし、合成後の界面活性剤除去工程も考慮した場合、製品自体の単価が非常に高価になるという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、均一なメソ孔を有し、メソポーラスマテリアルとして利用することができるメソ孔担持炭酸カルシウム及びその製造方法を提供することを目的とする。また本発明は、メソ孔担持炭酸カルシウムを利用した塗工紙を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明のメソ孔担持炭酸カルシウムは、BET比表面積が100m2/g以上、細孔直径が2〜50nmである。好適には、細孔容積が0.5〜1.0cm3/g、吸油量が150mL/100g以上である。
【0008】
本発明のメソ孔担持炭酸カルシウムは、極微細な一次粒子の凝集体からなり、二次粒子内に直径が2〜50nmの細孔を持たせたことにより、メソポーラスマテリアルとして特性を有し、触媒反応や吸着、ナノ機能基材の補助物質として利用することができる。また本発明の炭酸カルシウムは、BET比表面積が100m2/g以上、細孔直径が2〜50nmであることから、吸油性、吸水性に優れる。また白色度、不透明度が高く、水に難溶であり、塗工紙の顔料として優れた性能を有する。
【0009】
本発明の炭酸カルシウムの製造方法は、消石灰懸濁液に金属イオン封鎖剤を添加し、二酸化炭素含有ガスを吹き込み、炭酸化率20〜25%まで炭酸化を行う第1の炭酸化工程と、第1の炭酸化工程終了後の懸濁液にさらに金属イオン封鎖剤を多段添加しながら、二酸化炭素含有ガスを吹き込み、反応を終結させる第2の炭酸化工程とを含む。第1の炭酸化工程の反応開始温度は、好適には0〜30℃、より好適には5〜17℃である。
【0010】
本発明の炭酸カルシウムの製造方法によれば、第1の炭酸化工程の反応開始温度を比較的低い温度にして比較的炭酸化率が低い状態で終了するとともに、その後、金属イオン封鎖剤を多段的に添加することにより、比較的長い時間、反応系の導電率を低く保つことができ、それにより結晶の成長を抑制し、比表面積が大きく、均一なメソ孔を有する炭酸カルシウムを製造することができる。
【0011】
以下、本発明の炭酸カルシウムの製造方法について詳述する。
まず原料となる消石灰懸濁液としては、一般に炭酸カルシウムの合成に用いるものを用いることができる。即ち、消石灰を水と混合して調製するか、生石灰(酸化カルシウム)を水で湿式消化させることにより調製することができる。湿式消化は、CaO濃度50〜250g/L、温度20〜100℃で、スレーカーでの平均滞留時間60分以内という消化条件下で、連続湿式型のスレーカーを用いて行うことが好ましい。また消化用の水は通常の水道水、工業用水、地下水、井戸水、或いは次の炭酸化工程で生成される炭酸カルシウム水性スラリーの分離脱水処理により得られる分離水またはろ過処理により得られるろ水を用いることができる。炭酸化に好適な水酸化カルシウム濃度は通常50〜200g/L、好適には約50〜150g/Lである。
【0012】
消石灰懸濁液に添加する金属イオン封鎖剤としては、クエン酸、リンゴ酸等のヒドロキシカルボン酸、酒石酸等のジヒドロキシカルボン酸、グルコン酸等のポリヒドロカルボン酸、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤を用いることができる。これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。金属イオン封鎖剤の添加量は、水酸化カルシウム100重量部に対し、全量で3〜10重量部、好適には5〜8重量部とする。多段添加する場合、1回に添加する量は、水酸化カルシウム100重量部に対し、0.5〜3.0重量部が適当である。
【0013】
炭酸化は少なくとも二段階に分けて行い、第1の炭酸化工程は、予め上記金属イオン封鎖剤を添加した消石灰懸濁液に、二酸化炭素含有ガスを吹き込みながら炭酸化率20〜25%となるまで行う。反応開始温度は、好適には0〜30℃、より好適には5〜17℃の温度とする。反応開始温度を比較的低くすることにより、結晶の成長を抑制することができる。
【0014】
二酸化炭素含有ガスとしては、二酸化炭素ガスのほか、焼成工程で排出される排ガスやその他の焼却炉等で排出される排ガス等の二酸化炭素を含有するガスを利用することができる。二酸化炭素濃度は5〜40容量%、好適には10〜35容量%とする。二酸化炭素ガスの吹き込み流量は、水酸化カルシウム1kgに対し3〜15NL/分とする。
【0015】
第2の炭酸化工程では、上述したように金属イオン封鎖剤を逐次多段添加しながら反応を進行させる。このように多段添加することにより、反応系の導電率を比較的長時間、低く(例えば3mS/cm程度)に抑制することができ、これによって結晶成長を遅らせ、比表面積及び細孔容積が大きいメソ孔担持炭酸カルシウムを得ることができる。
二酸化炭素ガスの吹き込み流量は、第1の炭酸化工程と同様に、水酸化カルシウム1kgに対し3〜15NL/分とする。
【0016】
炭酸化反応終了後、スラリーを振動篩等の篩でろ過することにより、本発明のメソ孔担持炭酸カルシウムを得ることができる。こうして得られた炭酸カルシウムは、微細な一次粒子の凝集体からなり、細孔直径が2〜50nmのメソポーラス材料で、100m2/g以上のBET比表面積を有する。また白色度、不透明度が高く、塗工紙の塗工用顔料や化粧料等、炭酸カルシウムが適用される用途一般に適用することが可能である。
【0017】
本発明の塗工紙は、原紙の表面に上記炭酸カルシウムを含む塗料を塗布することによって塗工層を形成したものであり、塗布量によって、微塗工紙、アート紙、コート紙、軽量コート紙などを含む。
【0018】
原紙としては、上質紙、中質紙など通常の塗工紙に用いるものを使用できる。
バインダーとしては、カゼイン、デンプン、ポリビニルアルコール等のビニル系ポリマー又はコポリマー、ポリ(メタ)アクリレート等のアクリル系ポリマー又はコポリマー、スチレン・ブタジエンラテックス等を使用することができる。塗工層は、炭酸カルシウム及びバインダーのほかに、クレーやシリカ等の炭酸カルシウム以外の顔料、顔料分散剤、消泡剤、染料などを添加することができる。
【0019】
塗料中の炭酸カルシウムの添加量は、特に限定されないが、本発明の炭酸カルシウムは比表面積が高いため多すぎると塗料の粘度が高くなりすぎるため、通常塗料中の炭酸カルシウム濃度(固形分濃度)で10〜40%程度とすることが好ましい。塗工層は、炭酸カルシウム、バインダー、必要に応じて他の添加剤を含み、水等の溶剤で適宜粘度を調整した塗料を原紙上に塗布することにより形成することができ、必要に応じてスーパーカレンダー処理、キャストコーティング処理等を施すことにより本発明の塗工紙を得る。
【0020】
本発明の塗工紙は、顔料として比表面積が高く吸水性、吸油性の高い炭酸カルシウムを用いているので、水性インク、油性インクのいずれに対してもインク吸収性が優れている。
【0021】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。なお、以下の実施例において、二酸化炭素含有ガスの吹き込み量(NL/分)は20℃の状態の100%二酸化炭素ガスに換算した量で示す。
【0022】
<メソ孔担持型炭酸カルシウムの製造方法>
実施例1
1000Lの水(導電率0.05mS/cm)に、消石灰85kgを入れて混合し、濃度105g/Lの水酸化カルシウム水性スラリーを得た。このスラリーを濃度100g/L、10℃に調整した後、150Lを半回分式反応器に仕込み、周速7.8m/sでかき混ぜながら、水酸化カルシウム換算100重量部に対して、クエン酸1.5重量部を、固形分濃度40%の水溶液として添加して混合した。次いで反応器を周速7.8m/sでかき混ぜながら、二酸化炭素濃度30容量%のガスを、水酸化カルシウム1kg当り、100容量%二酸化炭素換算で6NL/minの割合で吹き込み、反応液の炭酸化率20%またはその付近に達したところで、反応を1次停止し、1次中間体を得た。
【0023】
上記1次中間体に、その水酸化カルシウム換算100重量部に対し、クエン酸1.5重量部を、固形分濃度40%の水溶液として添加して混合し、周速7.8m/sでかき混ぜながら、二酸化炭素濃度30容量%のガスを、水酸化カルシウム1kg当り、100容量%二酸化炭素換算で6NL/minの割合で吹き込んだ。反応液の炭酸化率30%またはその付近に達したところで、反応を2次停止し、2次中間体を得た。
【0024】
上記2次中間体に、その水酸化カルシウム換算100重量部に対し、クエン酸1.5重量部を、固形分濃度40%の水溶液として添加して混合し、周速7.8m/sでかき混ぜながら、二酸化炭素濃度30容量%のガスを、水酸化カルシウム1kg当り、100容量%二酸化炭素換算で6NL/minの割合で吹き込んだ。反応液の炭酸化率40%またはその付近に達したところで、反応を3次停止し、3次中間体を得た。
【0025】
上記3次中間体に、その水酸化カルシウム換算100重量部に対し、クエン酸1.5重量部を、固形分濃度40%の水溶液として添加して混合し、周速7.8m/sでかき混ぜながら、二酸化炭素濃度30容量%のガスを、水酸化カルシウム1kg当り、100容量%二酸化炭素換算で6NL/minの割合で吹き込み、反応を終結させた。 得られた炭酸カルシウムは、微細一次粒子の凝集体であり、X線回折分析結果からカルサイトであることが確認された。その物性(平均粒径、比表面積、吸収量、細孔直径(平均値)、細孔容積)を表1に示す。またこの炭酸カルシウムの細孔分布を図1に示す。
【0026】
尚、各実施例において炭酸カルシウムの物性は下記の装置或いは方法で計測した。
・平均粒径(メディアン径):レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LA-920:堀場製作所製)
・BET比表面積:Flow Sorb II 2300 (Micromeritics社製)
・吸油量:JIS-K5101に準拠し、煮アマニ油を用いて測定した。
・細孔直径、細孔容積:TriStar 3000 (Micromeritics社製)
【0027】
実施例2
実施例1と同様に消石灰懸濁液を用意し、水酸化カルシウム換算100重量部に対して、クエン酸2.0重量部を、固形分濃度40%の水溶液として添加して混合し、実施例と同様に第1段階の炭酸化反応を行った。その後、クエン酸の添加量を、1次中間体生成後に2.0重量部、2次中間体生成後に2.0重量部とし、実施例1と同様に炭酸化反応を行いながら3段階の炭酸化反応を終了させた。クエン酸の合計添加量は6.0重量部である。
このようにして得られた炭酸カルシウムは、微細一次粒子の凝集体であり、X線回析分析結果からカルサイトであることが確認された。物性を表1に示す。
【0028】
実施例3
実施例1と同様に消石灰懸濁液を用意し、この消石灰懸濁液150Lを半回分式反応器に仕込み、周速7.8m/sでかき混ぜながら、水酸化カルシウム換算100重量部に対して、クエン酸6.0重量部を、固形分濃度40%の水溶液として添加して混合した。次いで、周速7.8m/sでかき混ぜながら、二酸化炭素濃度30容量%のガスを、水酸化カルシウム1kg当り、100容量%二酸化炭素換算で6NL/minの割合で吹き込み、反応を終結させた。 このようにして得られた炭酸カルシウムは、微細一次粒子の凝集体であり、X線回析分析結果からカルサイトであることが確認された。物性を表1に示す。
【0029】
実施例4
実施例1と同様に消石灰懸濁液を用意し、水酸化カルシウム換算100重量部に対して、クエン酸1.0重量部を、固形分濃度40%の水溶液として添加して混合し、実施例と同様に第1段階の炭酸化反応を行った。その後、クエン酸1.0重量部を逐次(合計5回)添加しながら、段階的に反応を行った。反応条件は実施例lと同様にした。クエン酸の合計添加量は6.0重量部である。 このようにして得られた炭酸カルシウムは、微細一次粒子の凝集体であり、X線回析分析結果からカルサイトであることが確認された。物性を表1に示す。
【0030】
実施例5
実施例1と同様に消石灰懸濁液を用意し、水酸化カルシウム換算100重量部に対して、クエン酸1.5重量部を、固形分濃度40%の水溶液として添加して混合し、実施例と同様に第1段階の炭酸化反応を行った。その後、クエン酸1.5重量部を逐次(合計4回)添加しながら、段階的に反応を行った。反応条件は実施例lと同様にした。クエン酸の合計添加量は7.5重量部である。 このようにして得られた炭酸カルシウムは、微細一次粒子の凝集体であり、X線回析分析結果からカルサイトであることが確認された。物性を表1に示す。
【0031】
実施例6
クエン酸添加量を7.5重量部とした以外は実施例3と同様にし、炭酸カルシウムを製造した。このようにして得られた炭酸カルシウムは、微細一次粒子の凝集体であり、X線回析分析結果からカルサイトであることが確認された。物性を表1に示す。
【0032】
実施例7
金属イオン封鎖剤として、クエン酸の代わりに酒石酸を用いた以外は実施例1と同様にして、反応開始前と第2工程において2段階に分けて添加して反応を行い、炭酸カルシウムを製造した。このようにして得られた炭酸カルシウムは、微細一次粒子の凝集体であり、X線回析分析結果からカルサイトであることが確認された。物性を表1に示す。
【0033】
実施例8
金属イオン封鎖剤として、クエン酸の代わりに、クエン酸0.75重量部及び酒石酸0.75重量部を用いた以外は実施例1と同様にして、反応開始前と第2工程において2段階に分けて添加して反応を行い、炭酸カルシウムを製造した。このようにして得られた炭酸カルシウムは、微細一次粒子の凝集体であり、X線回析分析結果からカルサイトであることが確認された。物性を表1に示す。
【0034】
比較例1
クエン酸を添加することなく、それ以外は実施例3と同様にして炭酸カルシウムを製造した。このようにして得られた炭酸カルシウムは、微細一次粒子の凝集体であり、X線回析分析結果からカルサイトであることが確認された。物性を表1に示す。またこの炭酸カルシウムの細孔分布を図2に示す。
【0035】
比較例2
クエン酸の代わりに硫酸を用い、水酸化カルシウム換算100重量部に対して5.0重量部を40%水溶液として添加した。それ以外は実施例3と同様にして炭酸カルシウムを製造した。このようにして得られた炭酸カルシウムは、微細一次粒子の凝集体であり、X線回析分析結果からカルサイトであることが確認された。物性を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示す結果からもわかるように、本発明によりメソ孔を有し、比表面積、細孔容積、吸油量高い炭酸カルシウムを得ることができる。また実施例3、6と他の実施例との比較からわかるように、金属イオン封鎖剤の添加量が同じでも、反応前に1回添加した場合(実施例3、6)に比べ、多段添加することにより比表面積、細孔容積の大きいメソ孔担持炭酸カルシウムが得られた。また金属イオン封鎖剤としては、酒石酸よりもクエン酸を使用した場合の方が、比表面積、細孔容積の大きいメソ孔担持炭酸カルシウムが得られた。
【0038】
一方、金属イオン封鎖剤を用いない場合には、図1及び図2に示す細孔分布の比較からもわかるように、メソ孔を含むものの幅広い分布の細孔であり、比表面積、細孔容積ともに低いものしか得られなかった。
【0039】
<塗工紙の製造>
実施例1で得た反応終了後の炭酸カルシウム水性分散スラリー及び比較例1の炭酸カルシウム水性分散スラリーを顔料組成物として用い、下記処方の塗工液(固形分濃度15重量%)を調製した。
・炭酸カルシウム 100重量部
・ポリビニルアルコール 13重量部
・水 640重量部
【0040】
この塗工液を市販の上質紙(坪量6g/m2)にコーティングロッドで手塗りにて塗工を行い、105℃で2分乾燥後、24時間調湿を行い、スーパーカレンダー処理(線圧:100kgf/cm、処理温度:55℃、処理速度:8m/min、ニップ回数:1回)を行い、塗工紙を得た。この塗工紙について、以下のようにISO白色度、不透明度を評価した。その結果を表2に示す。
【0041】
・ISO白色度:塗工紙を4枚重ねて、測定面をISO白色度計(CMS−35SPX)の受光部側にセットし、白色度を測定した。6回の測定の平均値を測定値とした。
・不透明度:GLOSS&REFLECTOMETER(GM-26D(45°)、(株)村上色彩技術研究所)を用い、試料に白色及び黒色標準板の裏当てをし、緑色フィルターを用いてそれぞれの反射率を測定し、前者に対する後者の比を不透明度(%)として求めた。
即ち、不透明度C(%)は、
C=(R0/R0.89)×100
R0は、裏当て黒色板を用いたときの試料の反射率、R0.89は、裏当て黒色板を用いたときの試料の反射率である。
【0042】
【表2】
【0043】
表2の結果からもわかるように、実施例1の炭酸カルシウムを用いた塗工紙は、白色度、不透明度ともに従来の炭酸カルシウムを用いた塗工紙と変わらない性能を有していた。一方、炭酸カルシウム自体の吸油量に大きな差があるため、高吸油性塗工紙が得られた。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、比表面積、細孔容積の大きいメソ孔担持型炭酸カルシウムを提供できる。従って、ゼオライトの細孔では小さすぎて入ることが困難であった分子量の大きな化合物の絡む触媒反応や吸着あるいはナノ機能材料の補助物質としての利用が期待される。また本発明の炭酸カルシウムは、塗工紙の顔料として用いた場合に、従来の炭酸カルシウムと同様の白色度、不透明度を達成することができ、しかも従来の炭酸カルシウムに比べ吸油量は大幅に向上しているので、高吸油性塗工紙を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の炭酸カルシウムの細孔分布を示す図。
【図2】 従来の炭酸カルシウムの細孔分布を示す図。
Claims (10)
- 微細一次粒子の凝集体からなり、BET比表面積が100m2/g以上、細孔直径が2〜50nmであるメソ孔担持炭酸カルシウム。
- 細孔容積が0.5〜1.0cm3/gである請求項1記載のメソ孔担持炭酸カルシウム。
- 吸油量が150mL/100g以上である請求項1又は2に記載のメソ孔担持炭酸カルシウム。
- 消石灰懸濁液に金属イオン封鎖剤を添加し、反応開始温度17℃以下で、二酸化炭素含有ガスを吹き込み、炭酸化率20〜25%まで炭酸化を行う第1の炭酸化工程と、
第1の炭酸化工程終了後の懸濁液にさらに金属イオン封鎖剤を多段添加しながら、二酸化炭素含有ガスを吹き込み、反応を終結させる第2の炭酸化工程とを含むメソ孔担持炭酸カルシウムの製造方法。 - 前記第1の炭酸化工程は、反応開始温度が5〜17℃であることを特徴とする請求項4記載のメソ孔担持炭酸カルシウムの製造方法。
- 前記金属イオン封鎖剤が、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸を含むヒドロキシカルボン酸類及びエチレンジアミン四酢酸を含むキレート剤から選択される1種または2種以上である請求項4又は5記載のメソ孔担持炭酸カルシウムの製造方法。
- 前記第1の炭酸化工程において、金属イオン封鎖剤を、水酸化カルシウム100重量部に対し0.5〜10.0重量部添加することを特徴とする請求項4ないし6いずれか1項に記載のメソ孔担持炭酸カルシウムの製造方法。
- 前記第2の炭酸化工程において、金属イオン封鎖剤の1段あたりの添加量を、水酸化カルシウム100重量部に対し0.5〜3.0重量部とすることを特徴とする請求項4ないし7のいずれか1項記載のメソ孔担持炭酸カルシウムの製造方法。
- 請求項4ないし8のいずれか1項記載の製造方法によって製造された微細一次粒子の凝集体からなるメソ孔担持炭酸カルシウム。
- 塗工層に請求項1、2、3及び9のいずれか1項記載のメソ孔担持炭酸カルシウムを含む塗工紙。
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JPS52126697A (en) * | 1976-04-16 | 1977-10-24 | Toyo Soda Mfg Co Ltd | Production of chain calcium carbonate |
JPS5997530A (ja) * | 1982-11-27 | 1984-06-05 | Kounoshima Kagaku Kogyo Kk | 炭酸カルシウムの製造方法 |
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