JP4571248B2 - パートリシン誘導体の投与による腫瘍抑制法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、腫瘍細胞の増殖を選択的に抑制するための、抗真菌性ポリエン、パートリシンの半合成誘導体の利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
パートリシン(partricin)はパートリシンAおよびパートリシンBの混合物であり(The Merck Index 第12版、7181番)、S. aureofaciensの特定の株の培養から得られるポリエンで、非常に高い抗真菌活性を示す。
【0003】
このような物質は治療に用いるには毒性が高いため、パートリシンそのものまたは個々の成分、特にパートリシンAを原料として半合成的に構造上の修飾が施された。前記誘導体の例は、欧州特許出願EP−A−0434943およびEP−A−0489308、ならびに米国特許3780173(the Merck Index 第12版、5891番も参照のこと)および米国特許3961047他に記載されている。
【0004】
これら誘導体のいくつかはその出発物質や治療における現在の参照標準、すなわちアムホテリシンBと比べて、抗真菌剤としての活性が高く、毒性が非常に低いことが明らかとなった。
【0005】
パートリシン誘導体は抗真菌活性が高く、同時に真菌および糸状菌に対して活性を示す濃度で真核細胞に受容されることから、これら誘導体の真菌による汚染が示唆されたため、このような汚染を妨げるために培養細胞上で行った実験中に、驚くことに、そしてこれが本特許出願の主題であるが、腫瘍細胞系統の中にこのような物質に対する感受性が非常に高いものがあることが判明した。また、非常に低濃度(しかし、少なくとも各培養細胞で抗真菌活性を示した濃度よりは一般に高かった)で暴露時間が限られている場合にも、細胞増殖の完全阻害が観察され、最終的に細胞の完全死が認められた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
腫瘍細胞の増殖を選択的に抑制するための、抗真菌性ポリエン、パートリシンの半合成誘導体の利用についてここで述べる。
【0007】
これら誘導体は他の知られている抗腫瘍薬剤と併用することもでき、特にこれらの薬剤に対する耐性がある場合や、耐性を生じた場合には有用である。
【0008】
本発明は治療ならびに細胞培養システムに適用することができる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の利用および方法に適したパートリシン誘導体のクラスには、カルボキシル基のエステルおよびアミドで、場合によりマイコサミン残基の一級アミノ基がアシル基で置換されたものが含まれる。
【0010】
我々が用いたパートリシンAおよび/またはBの誘導体は、欧州特許出願EP−A−0434943、EP−A−0489308、米国特許3780173、および米国特許3961047に記載されているものと同じで、実際にはマクロライド環C−18カルボキシル基のエステルおよびアミドで、場合によりマイコサミン残基のアミノ基がアシル基で置換されたもの、およびそれらの薬理/製薬上容認できる有機および無機酸との塩である。
【0011】
特に、欧州特許出願EP−A−0434943(米国特許5296597に対応)に記載されているパートリシンAおよび/またはBのアミド誘導体は、マクロライド環のC−18カルボキシル基の二級および三級アミドである。特許出願EP−A−0489308(米国特許5298495に対応)に記載されているパートリシンAおよび/またはBでは、マクロライド環のC−18カルボキシル基は無置換のこともあれば中性のC1−C6アルキルエステルもしくはアミドを形成しまた追加の塩基性窒素含有官能基を含むこともあり、マイコサミン部分の一級アミノ基が追加の塩基性窒素含有基を含む2−4炭素原子の脂肪酸のカルボキシル基とアミド結合を形成する。
【0012】
本発明の利用および方法に適した他のパートリシン誘導体は、米国特許3780173および米国特許3961047に記載されている、パートリシンのアルキルエステル、例えばC1−C4アルキルエステル、特にパートリシン複合体のメチルエステル(mepartricin)およびパートリシンAおよび/またはBのメチルエステルである。
【0013】
前記欧州特許の説明および例、それに対応する米国特許5296597および米国特許5298495の説明および例、前記パートリシンAおよび/またはBの誘導体の製法に関連する米国特許3780173および米国特許3961047の説明および例を本特許出願中で参考として援用する。
【0014】
本発明の範囲にはパートリシンの通常の立体配置を有するパートリシンAおよび/またはBの誘導体、ならびに例えば紫外線または太陽光線照射によって得られることがある「すべてトランス」の立体配置を有するパートリシンAおよび/またはBの誘導体(Bruzzese T.他、Il Farmaco Ed. Sci.、4巻、331〜334ページ、1974年)の利用が含まれる。
【0015】
本発明による利用に特に有用なパートリシンAおよび/またはBの誘導体は下記の化学式Iで表される。
【0016】
【化1】
【0017】
上式で、R’は水素原子またはメチル基であり、
R1はアミノアシル基−CO(CH2)mNR3R4であり、ただしmは1、2、3のいずれかで、R3とR4は同じでも違ってもよいが水素原子またはC2−C3アルキル基、あるいはこれらが結合する窒素原子とO、S、およびNからなる基から選んだ別のヘテロ原子を任意に含む5または6員環の複素環を形成し、複素環中の前記Nはメチルまたは2−ヒドロキシエチル基で置換されていてもよく、
R2は水酸基、C1−C6アルコキシ、NR3R4アミノまたは−NH−(CH2)m−NR1R4アミノアルキルアミノ基であり、ただしm、R3、およびR4は前述の定義の通り、または置換−NH−(CH2)m−R5アルキルアミノ基であり、ただしmは前述の定義の通りであり、R5は5または6員環の複素環で、複素環中のヘテロ原子は窒素原子であって、メチルまたはエチル基で置換されていてもよく、
Xは製剤上容認できる有機または無機酸の陰イオンであり、好ましくはアスパラギン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グルクロン酸、グルコン酸、およびアスコルビン酸からなる基から選択され、
nは0、1、または2である。
【0018】
我々の試験中に最も有効と判明した化合物のひとつはパートリシンA誘導体、すなわちN−ジメチルアミノ−アセチル−パートリシンA 2−ジメチルアミノエチルアミドである。対応する塩、特に二アスコルビン酸塩(実験室コード(SPA−S−843)に変換後、多くの天然ポリエンとは異なって本化合物は水溶性となり、in vitroでの培養に容易に用いることができ、また同時に非経口投与による臨床適用のための製剤(注射用アンプル剤、輸液等)にも容易に利用できる。
【0019】
ある種の腫瘍細胞系統に対する驚くほど顕著な毒性に関する前述の知見より、各腫瘍系統(例えば、白血病、リンパ腫、骨髄腫、癌腫、肉腫、その他の腫瘍)のin vitroでの細胞感受性を試験した後、抗腫瘍薬としての臨床におけるこれらの化合物の利用が予知できる。
【0020】
これらの化合物の利用は、少なくとも膜ステロールとの相互作用(他のポリエンではよく見られる)が細胞膜を損傷させて、他の抗腫瘍薬の細胞内透過および蓄積に好都合になり、相乗作用をもたらすことを考えると、抗腫瘍活性がもっとよく知られている他の薬剤(白金誘導体、ドキソルビシン、ビンクリスチン、メトトレキサート、5−フルオロウラシル等)との組み合わせでも予知可能である。
【0021】
【発明の実施の形態】
マウスWEHI−3B(D+)骨髄単球性白血病細胞に対するSPA−S−843細胞毒性の典型例(Pessina他、「Susceptibility of leukemia cell lines to quinolones and induction of resistance to ciprofloxacin in WEHI-3B (D+) leukemia cells」Cancer J.、6巻、291〜7ページ、1993年)をここで述べるが、これは発明の目的を限定するものではない。
【0022】
物質:SPA−S−843およびアムホテリシンBを滅菌二回蒸留水に溶解し2000μg/mlの濃度とした。希釈標準溶液をペニシリン+ストレプトマイシン(100U/ml+100μg/ml)を補足したMcCoy培地中で調整し、1:2の連続希釈により200μg/mlから1.56μg/mlの濃度とした。
【0023】
マウスWEHI−3B(D+)骨髄単球性白血病細胞を25−cm2プラスチックボトル内で5%FCS(Gibco、米国)含有McCoy培地(Seromed、ドイツ)中での継代培養により維持した。
【0024】
アムホテリシンBを参照物質として比較した場合のSPA−S−843の毒性に対する細胞感受性を、次の異なる2法で調べた。
【0025】
A)マイクロタイター試験(MTT)(Pessina他、「In vitro shor-term and long-term cytotoxicity of fluoroquinones on murine cell line」、Ind. J. Exp. Biol.、32巻、113〜8ページ、1994年)。
【0026】
B)寒天クローン原性試験(Pessina他、「Inhibition of murine leukemia cell - WEHI-3B and L1210 - Proliferation by cholera toxin B subunity」、Biochem. Biophys. Acta、1013巻、206〜11ページ、1989年)。
【0027】
試験の説明
MTTによる細胞毒性:本法はMossman T.(J. Immunol. Methods、65巻、55〜63ページ、1983年)の方法をKriegler A.B.他(J. Immunol. Methods、103巻、93〜102ページ。1987年)が改変したものに従い、3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニル−2−H−臭化テトラゾリウム(MTT - Sigma、米国)を用いたマイクロタイター試験である。
【0028】
すなわち、2薬剤それぞれを1:2で連続希釈した2μg/mlから0.015μg/mlの溶液50μlを96穴平底マイクロタイタープレートに入れ、次に各ウェルに50μlの細胞懸濁液(6×103 cells/ml)を加えた。培養液を空気+5%CO2中37℃で7日間インキュベートし、最後にPBS中5mg/ml濃度のMTT20μlを各ウェルに加えた。37℃で3時間インキュベート後、ドデシルスルホン酸ナトリウム/ジメチルホルムアミド/酢酸/塩酸で調整した溶解緩衝液100μlで培養液を分解した。さらに一夜インキュベート後、620nmの吸光度(OD)をマイクロプレートLP200検出器で測定した。細胞を含まないウェルの吸光度を増殖0%と考えた。薬剤を含まない培地中で細胞が増殖しているウェルの吸光度を増殖100%と考えた。薬剤の細胞毒性をin vitroで50%細胞増殖阻害を引き起こす最低濃度(IC50)で計算した。
【0029】
寒天クローン原性試験による細胞毒性:WEHI−3B(D+)細胞のクローン原性を、35mmペトリ皿で0.3mlの完全強化培地(McCoy+10%FCS、10mMピルビン酸ナトリウム、4% NEAA(10×)、4% Mem Vit(100×))+0.3%寒天中300個の細胞を培養することにより試験した。
【0030】
SPA−S−843およびアムホテリシンB(100μl)を25から0.19μg/mlの連続希釈濃度でペトリ皿に予め加えておいた。対照プレートには100μlの培地を入れた。空気+5%CO2中37℃で7日間インキュベート後、コロニーを計数した。
【0031】
結果
MTT試験により評価した二剤の細胞増殖に対する細胞毒性を、対照試料で測定した吸光度値(未処理細胞、吸光度1133.5±48)の%で表す。
【0032】
図1に用量反応曲線を示す。線形回帰分析で確認したとおり、SPA−S−843およびアムホテリシンBの毒性は用量相関性の動態を示すが、WEHI−3B(D+)細胞に対するSPA−S−843の細胞毒性はかなり高いようである。図2のヒストグラムで同じ細胞系統に対する二剤のIC10、IC50およびIC90を示す。IC値間の差の検定より、SPA−S−843のIC10、IC50およびIC90は有意に低く、本剤の細胞毒性はアムホテリシンBよりもかなり高いことが明らかである。
【0033】
寒天試験で評価した二剤の細胞のクローン原性に対する細胞毒性試験の結果を、対照試料中で計数したコロニー数(未処理細胞、WEHI−3B(D+)コロニー=212±62)のパーセントで表した。
【0034】
図3にSPA−S−843の実質的に高い細胞毒性が確認できる用量反応曲線を示す。図4のヒストグラムでIC10、IC50およびIC90の値を示す。
ここでも、WEHI−3B(D+)細胞におけるアムホテリシンBのIC値はすべてSPA−S−843のIC値よりも有意に高いことが明らかで、この結果から典型的なクローン原性試験でさえも試験中の細胞に対する細胞毒性がSPA−S−843で高いことが実質上確認できる。
【0035】
全体として、前述の結果より、マウス骨髄単球性白血病細胞に対する二剤の細胞毒性試験ではいずれも、この細胞がすべての真核細胞に対する細胞毒性がよく知られているアムホテリシンBよりもSPA−S−843に対して感受性が高いことがわかる。
【0036】
SPA−S−843は他のいくつかのパートリシン誘導体と同じく動物細胞では概して耐容性が高いと文献報告されているため、本知見はまったく驚くべきことである。例えば、米国特許5298495では、パートリシンAの誘導体SPA−S−843や他の誘導体の赤血球に対する溶解作用は18μg/ml以上といった非常に高濃度で現れる(SPA−S−843遊離塩基:完全溶解濃度−THC>18μg/ml)と報告されている。このように赤血球や他の哺乳動物細胞に対する細胞毒性が低いため、動物の全身毒性が低くなる。事実、a/m米国特許で報告されているとおり、マウスで経静脈投与によりその50%が死に至る用量(LD50)は58mg/kgである。アムホテリシンBではTHCが2μg/mlでマウスにおける経静脈LD50が4.77mg/kgと報告されており(T. Bruzzese他、Eur. J. Med. Chem.、31巻、965〜72ページ、1996年)、対応する値間の差を指摘することができる。前述の解説および添付の図1〜図4によって示唆されるとおり、SPA−S−843の毒性は、例えばWHEI−3B(D+)といった腫瘍細胞の場合には、かなり低い濃度で生じることもある。
【0037】
このように、パートリシン誘導体の中にはある種の腫瘍細胞系統に対し予期せぬ高い選択的細胞毒性を示すものがあることから、これらの薬剤に、あるいは適当なin vitro細胞毒性スクリーニングの後に、前記誘導体に対する細胞感受性によりある種の腫瘍治療のための選択的適応を付与することができる。抗腫瘍活性の選択性は、例えば、腫瘍治療のために選んだパートリシンAおよび/またはBの誘導体を用いて、腫瘍に冒されている同じ臓器または組織から得た腫瘍細胞および健常細胞に対しin vitro細胞毒性試験を予備的に行うことによって評価する。腫瘍に冒されている同じ生物(例えば、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒト)から得た他の健常細胞も治療のために選んだパートリシン誘導体の細胞毒性に対し感受性であると考えられるため、このような細胞を用いても同様の比較ができるはずである。
【0038】
すでに述べたとおり、パートリシン誘導体は他の抗腫瘍薬(例えば、白金誘導体、ドキソルビシン、ビンクリスチン、メトトレキサート、5−フルオロウラシル等)の補助薬としても用いることができる。
【0039】
例えば、ある種の腫瘍細胞系統、または特にある細胞が、最も知られている抗腫瘍薬に対して耐性であったり、あるいは耐性を生じるかもしれないことが知られており、これによって腫瘍の再発、および化学療法の成功に著しい損害をきたすことがよくある。また、細胞壁ステロールとの複合体形成により細胞膜に作用するアムホテリシンBのような薬剤(例えば、Kuwano他、「Techniques to reverse or circumvent drug resistance in vitro」、Prog. Clin. Biol. Res. 223巻、163〜71ページ、1986年;Morikage他、「Reversal of cisplatin resistance with amphotericin B in a non-small cell lung tumor cell line」、Japan J. Cancer Res.、82巻、747〜51ページ、1991年)は抗腫瘍薬に耐性の細胞と相互作用し、それにより膜透過性を変えて細胞中に化学療法剤を蓄積させ、その後薬剤に対する細胞の感受性を回復させるものもあることが示唆されている。我々は、甲状腺髄様癌(TMC)細胞に対するシスプラチン(CP)の化学療法作用を実験的に試験し、細胞毒性試験(MTT)によりシスプラチンに対する癌細胞の耐性がSPA−S−843(2μg/ml)による予備治療で実質的に中和されることを確認した。
【0040】
このような比較的低濃度にも関わらず、SPA−S−843は耐性細胞に対するシスプラチンの細胞毒性を本来感受性の細胞に対するのと同程度まで強めることができた。結論として、SPA−S−843とインキュベートすることによりシスプラチンの抗腫瘍活性を全TMC細胞に対して細胞毒性を示す程度にまで増強することができた。通常の抗腫瘍薬による治療に反応しなくなった患者にパートリシン誘導体を前記抗腫瘍薬補助薬として適用した例として、1993年6月にC2期のG2腺腫のために大動静脈前リンパ腺切除を伴う左結腸半切除、脾摘、および左付属器摘出を受けた71歳女性患者症例をこれにより報告する。患者は引き続き5−フルオロウラシルおよびフォリン酸による合併化学療法で治療した。
【0041】
化学療法の後、腫瘍胎児性抗原(CEA)の投与によりCEA濃度が262ng/mlからほぼ正常濃度(5ng/ml)まで低下したことが明らかとなった。1997年2月、左副腎部に起源が共通の充実性組織の発生を伴う腫瘍の再発を見た。
【0042】
患者に開腹術を施して全摘出を行い、その後5−フルオロウラシル(500mg)およびフォリン酸(250mg)の緩速注入による化学療法を行った。治療はまず通常の計画に沿って行い(A相)、3週間後に半合成ポリエンSPA−S−843(50mg i.v.)を合併投与した(B相)。
【0043】
A相の後にCEA−RIA(RIA=ラジオイムノアッセイ)モノクローナル1段階キット(Boehringer Mannheim、ドイツ)を用いて行ったCEA分析(Disaia P.J.他、Am. J. Obster. Gynecol.、121巻、159〜163ページ、1993年)では、272ng/mlという値が得られたが、B相の後では65ng/mlであった。
【0044】
患者には現在、鎮痛を目的とする放射線療法を行っている。
【0045】
通常の化学療法剤を単独で投与した場合には薬剤耐性が生じたのに対し、これら薬剤とポリエンとを併用すると薬剤感受性が回復したことは言及するに値するが、これはあるいはポリエンと細胞膜ステロールとの相互作用および細胞透過性の上昇によるものかもしれない。
【0046】
前述のパートリシンAおよび/またはBのエステルおよびアミド誘導体は、腫瘍細胞が存在するかもしくは発生しやすい、またはその両方で、抗腫瘍治療が必要な動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトの治療法に用いることができる。
【0047】
前記治療法に従い、前記動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトに投与すべきパートリシンAおよび/またはBの誘導体の用量は、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトの体重および年齢、疾患の重症度(すなわち、動物の腫瘍細胞の量もしくは発生段階、またはその両方)によって異なり、特定のパートリシンAおよび/またはBの誘導体に対する腫瘍に冒されている動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトの反応、および前記パートリシンAおよび/またはBの誘導体の前記動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトへの投与を管理する人間の判断によって調整することができる。
【0048】
一般に、効果的用量は1日に体重1kgあたり約0.025から約3mg、好ましくは1日に体重1kgあたり約0.15から約1.5mgの範囲である。前記用量を1回で投与してもよいし、2回以上に分割してもよい。前記用量を毎日投与してもよいし、病状および疾患の重症度に応じて間欠的(例えば2から7日おき)に与えてもよい。通常の投与経路は非経口経路で、静脈内投与、特に0.5から8時間で投与する点滴静注の形態が好ましい。抗腫瘍薬として用いるためのSPA−S−843製剤は活性成分を1から100mg、好ましくは5から50mg含み、通常の方法で製剤する。これらの製剤は好ましくはアスコルビン酸/アスコルビン酸ナトリウムを抗酸化剤および安定剤として含有し、固形すなわち凍結乾燥して保存することが多い。静注用の典型的な製剤の例を次に示すが、これに限定されるものではない。
【0049】
SPA−S−843 25mg
アスコルビン酸 4.5mg
ラクトース 250mg
滅菌二回蒸留水を適量加えて5mlとする
溶液を一般には凍結乾燥し、使用前に5%ブドウ糖溶液に溶解して(50−500ml)緩速注入で投与する。
【0050】
パートリシンAおよび/またはBの誘導体を他の抗腫瘍薬の抗腫瘍活性補助薬として用いる場合、通常の抗腫瘍薬と同時に投与することもできるし、逐次投与してもよい。それゆえ、製剤は単回投与形態中に両活性成分を含有してもよいし、同じ活性成分を別の投与形態に含んで使用時に単回投与形態として複合できるようにしてもよい(例えば、静脈内投与以外の投与のための溶液または懸濁液)。あるいは、2種の活性成分を別の投与形態に封入し、抗腫瘍療法中に逐次投与できるようにすることも可能である。
【0051】
従って、前述の説明により、本発明の主な目的の一つは先に定義したパートリシンAおよび/またはパートリシンBの誘導体を腫瘍性疾患治療法で用いる医薬品製造のために利用することで、前記治療はパートリシンAおよび/またはBの誘導体を単独でまたは通常の抗腫瘍薬との組み合わせにより実施する。
【図面の簡単な説明】
【図1】in vitroでの細胞増殖に対する細胞毒性の用量反応曲線を示す図である(MTT試験)。
【図2】in vitroでの細胞増殖試験で評価したSPA−S−843およびアムホテリシンBのIC値を示す図である。
【図3】細胞クローン原性に対する細胞毒性の用量反応曲線を示す図である(寒天試験)。
【図4】in vitroでの細胞クローン原性試験で評価したSPA−S−843およびアムホテリシンBのIC値を示す図である。
Claims (14)
- N−ジメチルアミノ−アセチル−パートリシンA 2−ジメチルアミノエチルアミドの二アスコルビン酸塩(SPA−S−843)を含む、抗腫瘍治療のための医薬製剤。
- 白血病、リンパ腫、骨髄腫、黒色腫、癌腫、および肉腫からなる群から選択される腫瘍を治療するための、請求項1に記載の医薬製剤。
- N−ジメチルアミノ−アセチル−パートリシンA 2−ジメチルアミノエチルアミドの二アスコルビン酸塩を、他の知られている抗腫瘍薬と併用する、請求項1に記載の医薬製剤。
- 前記抗腫瘍薬が白金誘導体、ドキソルビシン、ビンクリスチン、メトトレキサートおよび5−フルオロウラシルで表される、請求項3に記載の医薬製剤。
- 前記抗腫瘍薬がシスプラチンまたは5−フルオロウラシルで表される、請求項4に記載の医薬製剤。
- N−ジメチルアミノ−アセチル−パートリシンA 2−ジメチルアミノエチルアミドの二アスコルビン酸塩を非経口経路で投与し、その用量が体重1キログラム当り1日に0.025〜3mgの範囲である、請求項1に記載の医薬製剤。
- N−ジメチルアミノ−アセチル−パートリシンA 2−ジメチルアミノエチルアミドの二アスコルビン酸塩を非経口経路で投与し、その用量が体重1キログラム当り1日に0.15〜1.5mgの範囲である、請求項1に記載の医薬製剤。
- N−ジメチルアミノ−アセチル−パートリシンA 2−ジメチルアミノエチルアミドの二アスコルビン酸塩を、1〜100mgの量で含んでいる、請求項1に記載の医薬製剤。
- N−ジメチルアミノ−アセチル−パートリシンA 2−ジメチルアミノエチルアミドの二アスコルビン酸塩を、5〜50mgの量で含んでいる、請求項1に記載の医薬製剤。
- 更に、抗酸化剤および安定剤としてアスコルビン酸/アスコルビン酸ナトリウムを含む、請求項1〜9に記載の医薬製剤。
- N−ジメチルアミノ−アセチル−パートリシンA 2−ジメチルアミノエチルアミドの二アスコルビン酸塩および知られている抗腫瘍剤が、同一の投与形態で封入されている、請求項3に記載の医薬製剤。
- N−ジメチルアミノ−アセチル−パートリシンA 2−ジメチルアミノエチルアミドの二アスコルビン酸塩および知られている抗腫瘍剤が別の投与形態で封入され、腫瘍治療中に逐次投与ができることを特徴とする、請求項3に記載の医薬製剤。
- N−ジメチルアミノ−アセチル−パートリシンA 2−ジメチルアミノエチルアミドの二アスコルビン酸塩を、腫瘍細胞に適用することからなる、腫瘍細胞の増殖をin vitroまたはex vivoで選択的に抑制する方法。
- 抗腫瘍剤を製造するための、N−ジメチルアミノ−アセチル−パートリシンA 2−ジメチルアミノエチルアミドの二アスコルビン酸塩の使用。
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1998
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