JP4570298B2 - 電界装置及びそれを用いる処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電界装置(特に、帯電又は除電等に使用するイオン源、又はオゾン発生装置に用いられる電界装置)及びそれを用いる処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電界装置は、誘電体基板を挟んで放電極及び誘起電極を配置し、これらの電極間に直流又は交流の高電圧を印加して電界を発生させる装置であり、オゾン発生源又はイオン発生源として様々な分野で利用されている。例えば、電界装置を用いることにより、繊維シートの帯電処理を行なうことができる。
このような電界装置は、例えば、特開昭63−66880号公報又は特開昭59−44782号公報等に開示されている。しかし、これらの公報に記載の電界装置では、放電が不均一であったり、あるいは、放電による発熱によって放電極が膨張し、誘電体基板との密着性が低下する等の問題があり、このため、より均一な放電が生じにくいという問題があった。
【0003】
そこで、これらの問題を解決する電界装置として、特開平10−241828号公報には、導電性ワイヤーからなる放電極が誘電体基板に固定された平板状の電界装置が開示されている。しかし、連続したシート状物を処理するには、平板状の電界装置よりも、棒状の電界装置の方が処理作業性の上で適している。また、棒状の電界装置を数本組み合わせて使用すれば、修理作業や交換作業の効率が優れている。
【0004】
このような棒状の電界装置として、本発明者による特開平9−94478号公報に、荷電式エアフィルター装置の電界装置が開示されている。この公報に開示されている電界装置は、ガラス又はセラミックなどからなる円筒状の誘電体の中心軸に誘起電極を挿入し、その誘電体の側面上にコイル状の放電極を巻きつけて担持した電界装置である。この電界装置は、エアフィルター装置内を通過する空気の抵抗を少なくするため、円柱状の形状をしており、しかも、塵埃が電界装置に堆積しないように、縦型(すなわち、円柱状電界装置を直立させた状態)に配置されている。この荷電式エアフィルター装置においては、電界装置に対して、常に大気温度の空気が風となって吹き付けられているので、電極の熱による寸法変化は問題とならない。また、塵埃の堆積防止のために、縦型に電界装置が配置されるため、放電極、誘起電極、及び誘電体は一体化又は固定化され、放電極、誘起電極、及び/又は誘電体が落下しないようになっている。
【0005】
特開平9−94478号公報に記載の前記電界装置は、荷電式エアフィルター装置において用いる場合には、特に問題は生じないが、前記電界装置を用いて、広幅(例えば、1m巾)のシート状物を処理する場合には、以下の問題点があった。すなわち、広幅のシート状物を処理する場合には、円柱状の電界装置が放電時に発生する高い熱が原因で、電界装置の各部材の熱膨張係数の違いによって電界装置にソリが発生したり、更には、誘電体がガラスの場合には、破損する等の問題があった。特に、電界装置のソリは、電界装置と吸引性電極との間の距離を不均一化するため、放電によるシート状物の帯電効果が不均一となったり、スパークが発生するなどの問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、従来技術の前記の欠点を解消し、連続したシート状物を処理する場合に生産効率を向上させることができ、しかも、電界装置の発熱によってソリが発生して、帯電処理が不均一になったり、誘電体が破損する等のトラブルが少なく、更に、メンテナンスも簡単に行える電界装置、及びそれを用いる処理方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、本発明による、
軸方向に連続して延びる中空部を有する柱状の誘電体と;
前記誘電体の中空部に挿入されている柱状の誘起電極と;
前記誘電体の側面上に設けられている放電極と
を含み、
前記柱状誘電体の軸方向が実質的に水平になるように、前記誘電体が配置され、前記誘電体と前記誘起電極とが相互に固定されておらず、
熱による誘電体の寸法変化が、熱による誘起電極の寸法変化に影響を及ぼさず、しかも、熱による誘起電極の寸法変化が、熱による誘電体の寸法変化に影響を及ぼさない間隙が、前記誘電体と前記誘起電極との間に存在する
ことを特徴とする、電界装置により解決することができる。
【0008】
また、本発明は、柱状誘電体の軸方向が実質的に水平になるように配置した、前記電界装置と;
前記電界装置で発生する正極性イオン及び負極性イオンのいずれか一方のイオンを選択的に吸引することができ、しかも、前記電界装置と隔離して配置される吸引性電極と;
の間に被処理体を配置し、前記電界装置で発生する正極性イオン及び負極性イオンのいずれか一方のイオンを、前記電界装置から前記吸引性電極に向かって移動させ、前記イオンにより前記被処理体を処理することを特徴とする、被処理体の処理方法に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の電界装置を、図面に沿って説明する。図1は、本発明の電界装置の一態様を、被処理体であるシート状物(例えば、不織布)及びその支持体(引抜き電極を兼ねる)と一緒に、模式的に示す側面図である。
図1に示す本発明の電界装置10は、軸方向に連続して延びる中空部を有する柱状の誘電体1と、前記誘電体1の中空部に挿入されている棒状誘起電極2と、前記誘電体1の側面上に螺旋状に巻きつけられている線状放電極3とを含む。前記柱状誘電体1は、前記柱状誘電体1の軸方向が実質的に水平になるように配置されている。誘電体1と誘起電極2とは相互に固定されておらず、前記誘電体1と前記誘起電極2との間には、熱による誘電体1の寸法変化が、熱による誘起電極2の寸法変化に影響を及ぼさず、しかも、熱による誘起電極2の寸法変化が、熱による誘電体1の寸法変化に影響を及ぼさない間隙が設けられている。誘起電極2及び放電極3は、それぞれ、交流電源4に接続され、更に、放電極3は直流電源7にも接続されている。
【0010】
本発明の電界装置で用いる誘電体の形状は、軸方向に連続して延びる中空部を有する柱状である限り、特に限定されるものではなく、本発明の電界装置で用いる誘電体としては、柱状の、例えば、ガラス、セラミック、又はプラスチックなどを用いることができる。柱状誘電体の断面形状は、例えば、円形若しくは楕円形、又は多角形であることができ、誘起電極の挿入をスムーズに行うことができ、しかも、曲げ強度にも優れる点で、円形であることが好ましい。
また、本発明の電界装置で用いる誘電体は、図1に示すように、両端が開口端であることもできるし、あるいは、一方の端部が開口端であって、他方の端部が閉口端であることもできる。図1に示す態様では、誘電体1の両端が開口端であって、誘起電極2の両端が、それぞれ、前記誘電体1の両端から突出している。
【0011】
誘電体の外径は、特に限定されるものではないが、5〜30mmが好ましく、10〜20mmが更に好ましい。外径が大きすぎると、誘電体として使用する材料に対して、放電効率が悪くなることがある。すなわち、放電は、誘電体に巻かれた放電極の下部から集中的に行われ、下部以外の部分は放電にあまり寄与しないので、外径が大きいと、誘電体として使用する材料の材料費の割に放電の効果が悪くなってしまう。また、外径が小さすぎると、放電装置全体の強度が弱くなってしまう傾向がある。
また、誘電体の厚さは、特に限定されるものではなく、0.5〜5.0mmが好ましく、1.0〜3.0mmが更に好ましい。あまり厚いと、放電させるのに非常に高い電圧が必要となり、あまり薄いと、機械的強度が低下し、絶縁破壊が生じやすくなることがある。
【0012】
本発明の電界装置で用いる誘起電極としては、柱状誘電体の中空部に、柱状誘電体の軸方向に挿入することができる限り、特に限定されるものではなく、例えば、導電性金属(例えば、アルミニウム、銅、又はステンレスなど)の棒状体又は管体、あるいは、非導電性材料(例えば、プラスチックなど)の棒状体又は管体の表面に、導電性塗料の塗布、又は金属層若しくは導電性樹脂層によってフィルム状電極層又はあみ状電極層を形成した前記棒状体又は管体などを挙げることができる。
【0013】
本発明の電界装置では、柱状誘電体の中空部に、誘起電極が、相互に固定されず、しかも、誘電体との間に所定の間隙が存在する状態で挿入されており、しかも、前記柱状誘電体の軸方向が実質的に水平になるように、前記誘電体が配置されている。本発明の電界装置では、誘起電極と誘電体とが相互に固定されていないため、誘電体を水平状態から大きく傾ける(例えば、垂直に立てる)と、その中空部に挿入されている誘起電極が、誘電体から外れて落下するようになっている。
また、本発明の電界装置では、前記誘電体と前記誘起電極とは、その間に設けられている間隙により、熱による誘電体の寸法変化が、熱による誘起電極の寸法変化に影響を及ぼさず、しかも、熱による誘起電極の寸法変化が、熱による誘電体の寸法変化に影響を及ぼさないようになっている。熱による寸法変化としては、例えば、電界装置の作動に伴って発生する熱による膨張、あるいは、電界装置の停止に伴う自然冷却による収縮などを挙げることができる。
【0014】
誘電体と誘起電極との間にこのような間隙を設けるには、例えば、誘起電極の外径を、柱状誘電体の内径よりも小さくすればよく、すなわち、誘起電極の外径寸法と柱状誘電体の内径寸法との間に間隙をもうければよい。本発明の電界装置では、このような構成を採用することによって、誘起電極が発生する熱により、誘起電極自身が熱膨張しても、熱膨張係数の異なる柱状誘電体の内部で自由に誘起電極の長さが伸びたり、自由に誘起電極の外径が変化するので、柱状誘電体を破損させたり、電界装置にソリを生ずることはない。
【0015】
誘起電極の外径寸法と柱状誘電体の内径寸法との間隙は、一方の熱による寸法変化が他方の熱による寸法変化に影響を与えず、しかも、充分な放電効率を得ることができる限り、特に限定されるものではないが、0.001〜1mmが好ましく、0.005〜0.7mmが更に好ましい。間隙が大きすぎると、振動などによって誘起電極の位置がずれるので、帯電効果が不均一になる場合があり、間隙が小さすぎると、自由に誘起電極の長さが伸びたり、自由に誘起電極の外径が変化することができなくなる場合がある。
【0016】
また、誘起電極の外径寸法と柱状誘電体の内径寸法との間隙が、大きい場合には、前記間隙を保持するために、図2及び図3に示すように、誘電体と誘起電極との間に間隙材を挿入することが好ましい。図2は、誘電体と誘起電極との間に間隙材を有する本発明の電界装置の一態様を模式的に示す部分拡大斜視図であり、図3は、その横断面図である。
間隙材を挿入する位置は、誘電体と誘起電極との間の間隙を保持することが可能であって、しかも、熱による誘電体の寸法変化が、熱による誘起電極の寸法変化に影響を及ぼさず、しかも、熱による誘起電極の寸法変化が、熱による誘電体の寸法変化に影響を及ぼさない限り、特に限定されるものではないが、例えば、図2及び図3に示すように、誘起電極2の上部に間隙材5を挿入することが好ましい。誘起電極2の上部に挿入することで、誘起電極2の下部の隙間が無くなり、放電極3の下部と一定間隔を保つことができると共に、放電が最も発生する放電極3の下部に誘起電極2が最も接近するので、放電が均一で、且つ強くなるからである。
【0017】
本発明の電界装置に設けることのできる前記間隙材は、誘電体と誘起電極との間隙を保持することが可能であって、しかも、熱による誘電体の寸法変化が、熱による誘起電極の寸法変化に影響を及ぼさず、しかも、熱による誘起電極の寸法変化が、熱による誘電体の寸法変化に影響を及ぼさない限り、特に限定されるものではなく、可撓性のある導電性材料又は非導電性材料からなることができ、例えば、金属(例えば、アルミニウム、銅、又はステンレスなど)製の板又はシートが好ましい。誘電体及び誘起電極が円柱状である場合には、間隙材は平板形状であることが好ましい。誘電体及び/又は誘起電極の熱による寸法変化により、平板状間隙材が幅方向にたわみ、誘電体と誘起電極との間のずれを防ぐクッションの働きをすることができるからである。間隙材の厚さは、誘起電極の外径寸法と柱状誘電体の内径寸法との間隙より小さいことが必要であり、好ましくは0.001〜1mmであり、更に好ましくは0.001〜0.7mmである。
【0018】
本発明の電界装置で用いる放電極としては、誘電体の側面上に担持させることができる限り、特に限定されるものではなく、例えば、導電性金属(例えば、アルミニウム、銅、タングステン、又はステンレスなど)から形成されるコイル状、格子状、又はメッシュ状などの形態が適している。放電極として、導電性金属からなる金属線を用いると、放電が生じ易い。また、金属線がより細いほど、放電がより生じ易く、エネルギー効率も高くなるので、金属線の直径は0.1〜2mmが好ましい。
【0019】
本発明の電界装置では、誘電体と放電極との間に、熱による誘電体の寸法変化が、熱による放電極の寸法変化に影響を及ぼさず、しかも、熱による放電極の寸法変化が、熱による誘電体の寸法変化に影響を及ぼさないような間隙を設けることができる。熱による寸法変化としては、例えば、電界装置の作動に伴って発生する熱による膨張、あるいは、電界装置の停止に伴う自然冷却による収縮などを挙げることができる。
本発明の電界装置において、このような間隙が誘電体と放電極との間に設けられていると、放電極が発生する熱により、放電極自身が熱膨張しても、熱膨張係数の異なる柱状誘電体の側面上で自由に放電極の長さが伸びたり、放電極の内径が大きくなったり、放電極の面積が大きくなるので、柱状誘電体を破損させたり、電界装置にソリを生ずることはない。
【0020】
本発明の電界装置では、誘電体と放電極との間に前記間隙(すなわち、熱による誘電体の寸法変化が、熱による放電極の寸法変化に影響を及ぼさず、しかも、熱による放電極の寸法変化が、熱による誘電体の寸法変化に影響を及ぼさないような間隙)を設ける代わりに、あるいは、前記間隙を設けると共に、放電極として、誘電体の熱による変形に応じて変化が可能な構造を有する電極、例えば、コイル状電極(例えば、金属線をコイル状にしたスプリング)を用いることもできる。
誘電体の側面上に間隙のないように巻きつけたコイル状電極を用いると、放電極が発生する熱により、金属線の総長が伸びてコイルの全長は長くなっても、コイルの外径は大きくなることはないので、放電極が熱せられても誘電体の側面と放電極との間に間隙が生じず、誘電体と放電極との間でずれが生じないため、好ましい。このようなコイル状の放電極の金属線としては、ステンレスなどの剛性のあるものが好ましい。コイルの巻き間隔は、5〜20mmが好ましい。
また、放電極として、コイルの内径が誘電体の外径よりやや小さめ(例えば、誘電体外径寸法とコイル内径寸法との差が0.1〜1mm)のスプリングを用いると、スプリングが誘電体から外れて落下することを防止することができる点で好ましい。すなわち、このようなスプリングは内径が拡張された状態で誘電体に担持されるので、スプリングの内径が縮まろうとする作用が生じる。この作用のため、誘電体を水平状態から傾けたとしても、その側面に担持されている放電極(スプリング)が誘電体から外れて落下することを防止することができる。
【0021】
本発明の電界装置を用いると、被処理体、例えば、シート状物(例えば、繊維シート)に帯電又は除電処理を実施することができる。本発明の電界装置を用いて被処理体の帯電又は除電処理を実施するには、電界装置として本発明の電界装置を用いること以外は、特に限定されるものではないが、例えば、公知の帯電又は除電処理方法(例えば、特開平8−60535号公報参照)に従って実施することもできるし、あるいは、後述の本発明の処理方法により実施することもできる。
本発明の電界装置を用いて、広幅のシート状物を処理する場合には、電界装置は長いものが必要となる。このような場合に、例えば、処理中にシート状物が詰まったときや、あるいは、掃除等のメンテナンス時に誤って、誘電体が破損した場合、図1に示すように誘電体が一体化していると、交換又は修理などの作業や費用が大きくなってしまう。そこで、本発明の電界装置においては、柱状誘電体として、図1に示すように、一体化した誘電体を使用する以外にも、あるいは、図4に示すように、複数の誘電体を用いることもできる。複数の誘電体を有する本発明の電界装置によれば、交換又は修理などの作業や費用を軽減することができる。なお、柱状誘電体として、複数の誘電体を用いる場合には、誘電体の数に等しい複数の放電極を用いることが好ましい。
【0022】
図4は、複数の誘電体及び放電極を有する本発明の電界装置の一態様を、被処理体であるシート状物(例えば、不織布)及びその支持体(引抜き電極を兼ねる)と一緒に、模式的に示す側面図である。
図4に示す本発明の電界装置10では、軸方向に連続して延びる中空部を有する柱状の2個の誘電体1a,1bの中空部に、1本の誘起電極2が挿入されている。前記柱状誘電体1a,1bは、前記柱状誘電体1a,1bの軸方向が実質的に水平になるように配置されている。前記誘電体1aと誘起電極2とは相互に固定されておらず、誘電体1aと誘起電極2との間には、熱による誘電体1aの寸法変化が、熱による誘起電極2の寸法変化に影響を及ぼさず、しかも、熱による誘起電極2の寸法変化が、熱による誘電体1aの寸法変化に影響を及ぼさない間隙が設けられている。同様に、前記誘電体1bと前記誘起電極2とは相互に固定されておらず、誘電体1bと誘起電極2との間には、熱による誘電体1bの寸法変化が、熱による誘起電極2の寸法変化に影響を及ぼさず、しかも、熱による誘起電極2の寸法変化が、熱による誘電体1bの寸法変化に影響を及ぼさない間隙が設けられている。
【0023】
また、各誘電体1a,1bの側面上に、それぞれ、線状放電極3a,3bが巻きつけられている。誘電体1aと放電極3aとの間には、熱による誘電体1aの寸法変化が、熱による放電極3aの寸法変化に影響を及ぼさず、しかも、熱による放電極3aの寸法変化が、熱による誘電体1aの寸法変化に影響を及ぼさない間隙を設けることができる。同様に、誘電体1bと放電極3bとの間には、熱による誘電体1bの寸法変化が、熱による放電極3bの寸法変化に影響を及ぼさず、しかも、熱による放電極3bの寸法変化が、熱による誘電体1bの寸法変化に影響を及ぼさない間隙を設けることができる。誘起電極2及び各放電極3a,3bは、それぞれ、交流電源4に接続され、更に、放電極3a,3bは直流電源7にも接続されている。
【0024】
本発明の電界装置では、図1に示すように、1個の誘電体及び放電極を含むこともできるし、あるいは、図4に示すように、軸方向に直列に配置した複数個の誘電体及び放電極を含むこともできる。本発明の電界装置における誘電体及び放電極の数は、その使用態様又は使用目的などに応じて適宜決定することができ、例えば、1m以上の誘起電極に対して、200mmの誘電体5個を使用する(例えば、1mの長さの誘電体を200mmずつに5分割する)ことができる。このように分割して帯電装置を形成する場合、各誘電体は、その端面で隙間なく合わさっていることが望ましい。隙間が多いと、誘起電極と放電極との間でスパークを発生するので好ましくない。また、各誘電体をその端面で隙間なく合わせるには、可撓性のあるチューブ状の絶縁体(パッキング)を誘起電極に挿入して、各誘電体を押し込むようにして、各誘電体を摩擦力で誘起電極に止めることもできる。
【0025】
本発明の処理方法(例えば、帯電処理方法又は除電処理方法)では、本発明の電界装置と、前記電界装置から隔離して配置された吸引性電極(すなわち、引き抜き電極)との間に、被処理体を配置した状態で、前記電界装置で発生する正極性イオン及び負極性イオンのいずれか一方のイオンを、前記電界装置から前記吸引性電極に向かって移動させることにより、前記イオンで被処理体を処理(例えば、帯電処理又は除電処理)する。なお、本発明の電界装置と前記吸引性電極とを含む、本発明の処理装置(例えば、帯電処理装置又は除電処理装置)も本発明に包含される。
処理前の被処理体が、帯電していないか、あるいは、前記被処理体に供給するイオンと同じ極性に帯電している場合には、本発明の処理方法により、前記被処理体を帯電処理[更に帯電する処理(すなわち、帯電量を増加させる処理)を含む)]することができる。また、処理前の被処理体が、前記被処理体に供給するイオンと逆の極性に帯電している場合には、本発明の処理方法により、前記被処理体を除電処理するか、あるいは、前記イオンと同じ極性に帯電処理することができる。
【0026】
本発明の処理方法は、特に限定されるものではないが、例えば、以下の手順により実施することができる。
すなわち、図1に示すように、本発明の電界装置10の下方に位置する、シート状物9の支持体を兼ねる引き抜き電極6の上に、被処理体であるシート状物9を配置する。図1に示す態様では、シート状物9は、手前から奥に向かって(あるいは、その逆方向)、連続的に移送されるが、本発明の処理方法では、被処理物を静置した状態で実施することもできる。誘起電極2及び放電極3は交流電源4に接続され、更に、放電極3は直流電源7にも接続されている。一方、引き抜き電極6はアースされている。
誘起電極2及び放電極3に交流電源4から交流高電圧を印加すると、放電極3から誘電体表面の放電極担持表面に沿って電離が生じ、正極性イオン及び負極性イオンの両イオンが生成されて沿面放電が生じる。この際に同時に、直流電源7から放電極3に直流高電圧を印加すると、放電極3と引き抜き電極6との間に直流電界が形成されるため、電界装置10で発生した正極性イオン及び負極性イオンの内、いずれか一方のイオンが電界装置10から引き抜かれ、電界装置10から引き抜き電極6に向かって移動する。図1に示す態様では、放電極3に正電圧が印加されるので、正極性イオンが、電界装置10から引き抜き電極6に向かって移動する。負極性イオンを、電界装置10から引き抜き電極6に向かって移動させたい場合には、放電極3に負電圧を印加するか、あるいは、引き抜き電極6に正電圧を印加することにより、実施することができる。
電界装置10から引き抜き電極6に向かって移動したイオンは、その途中に位置するシート状物9に作用し、電荷の正負に応じて、シート状物9の帯電処理又は除電処理が行なわれる。
図1に示す態様では、被処理体の一方の面に対向する位置に、本発明の電界装置を設け、被処理体の一方の面から被処理体を処理する態様であるが、本発明においては、更に、被処理体のもう一方の面に対向する位置に、本発明の電界装置を設け、被処理体の両面から被処理体を処理することもできる。なお、この場合の引き抜き電極は、対向する位置にある電界装置の放電極とすることができる。
【0027】
本発明の処理方法で用いる吸引性電極は、電界装置で発生する正極性イオン及び負極性イオンのいずれか一方を吸引することができる電極である限り、特に限定されるものではなく、図1に示すように、被処理体の支持体を兼ねる吸引性電極であることもできるし、あるいは、被処理体の支持体とは独立した吸引性電極であることもできる。例えば、シート状物の支持体を兼ねる吸引性電極としては、特に限定されるものではないが、例えば、非導電性材料(例えば、プラスチックなど)からなる平板、ロール、又はドラムの表面に、導電性塗料を塗布したり、金属層又は導電性樹脂層を形成したもの、あるいは、金属(例えば、ステンレス、アルミニウム、銅など)などから形成される平板状電極、ロール状電極、又はドラム状電極などが好適である。
吸引性電極と電界装置との距離は、例えば、処理するシート状物の厚み又は密度、吸引性電極に印加する直流高電圧の大きさ、あるいは、放電極及び誘導電極に印加する交流の電圧又は周波数などによって適宜決定することができ、好ましくは3〜50mm、より好ましくは5〜30mmの範囲である。吸引性電極と電界装置との距離があまりに離れていると、効果的に荷電するために非常に高い電圧が必要となるので、安全上の問題がある。また、あまりに近いと、短絡の危険がある。
【0028】
本発明の処理方法において処理することのできる被処理体は、特に限定されるものではなく、例えば、繊維シート(例えば、織物、編物、若しくは不織布、又はこれらの複合体など)、微孔フィルム、発泡体、フィルム、繊維、又は樹脂成形品などがある。
【0029】
本発明の電界装置を用いて繊維シートを帯電処理する場合は、例えば、ステンレスドラムの吸引性電極上に繊維シートを載せ、その上方に、本発明の電界装置10本組のものを4セット配置して、それぞれのセットごとに異なる電圧をかけながら、スチールドラムを回転させて、帯電処理する方法がある。
【0030】
【発明の効果】
本発明の電界装置によれば、連続したシート状物を処理する場合に生産効率を向上させることができる。また、電界装置の発熱によってソリが発生して、帯電処理が不均一になったり、誘電体が破損する等のトラブルを少なくすることができる。更に、メンテナンスも簡単に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電界装置の一態様を、被処理体であるシート状物及びその支持体と一緒に、模式的に示す側面図である。
【図2】誘電体と誘起電極との間に間隙材を有する本発明の電界装置の一態様を模式的に示す部分拡大斜視図である。
【図3】図2に示す本発明の電界装置の一態様の横断面図である。
【図4】分割された複数の誘電体及び放電極を有する本発明の電界装置の一態様を、その処理対象物であるシート状物及びその支持体と一緒に、模式的に示す側面図である。
【符号の説明】
10・・・電界装置;
1・・・誘電体;2・・・誘起電極;3・・・放電極;4・・・交流電源;
5・・・間隙材;6・・・引き抜き電極;9・・・シート状物。

Claims (5)

  1. 軸方向に連続して延びる中空部を有する柱状の誘電体と;
    前記誘電体の中空部に挿入されている柱状の誘起電極と;
    前記誘電体の側面上に設けられている放電極と
    を含み、
    前記柱状誘電体の軸方向が実質的に水平になるように、前記誘電体が配置され、
    前記誘電体と前記誘起電極とが相互に固定されておらず、
    熱による誘電体の寸法変化が、熱による誘起電極の寸法変化に影響を及ぼさず、しかも、熱による誘起電極の寸法変化が、熱による誘電体の寸法変化に影響を及ぼさない間隙が、前記誘電体と前記誘起電極との間に存在し、前記誘起電極の外径寸法と前記誘電体の内径寸法との間隙が0.001〜1mmであるか、又は前記誘起電極と前記誘電体との間に間隙材を有する
    ことを特徴とする、電界装置。
  2. 熱による誘電体の寸法変化が、熱による放電極の寸法変化に影響を及ぼさず、しかも、熱による放電極の寸法変化が、熱による誘電体の寸法変化に影響を及ぼさない間隙が、前記誘電体と前記放電極との間に存在する、請求項1に記載の電界装置。
  3. 前記放電極が、誘電体の熱による変形に応じて変化が可能なコイル状電極である、請求項1又は2に記載の電解装置。
  4. 軸方向に直列に配置した複数の誘電体からなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の電界装置。
  5. 柱状誘電体の軸方向が実質的に水平になるように配置した、請求項1〜のいずれか一項に記載の電界装置と;
    前記電界装置で発生する正極性イオン及び負極性イオンのいずれか一方のイオンを選択的に吸引することができ、しかも、前記電界装置と隔離して配置される吸引性電極と;
    の間に被処理体を配置し、前記電界装置で発生する正極性イオン及び負極性イオンのいずれか一方のイオンを、前記電界装置から前記吸引性電極に向かって移動させ、前記イオンにより前記被処理体を処理することを特徴とする、被処理体の処理方法。
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