JP4570225B2 - 金属箔付フィルム及びそれを用いた多層配線基板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属箔付フィルム及びそれを用いた多層配線基板の製造方法に関するものであり、より詳細には、例えば、半導体素子収納用パッケージなどの配線基板の回路シートや該回路シートからの多層配線基板の製造に有用な金属箔付フィルム及びそれを用いた多層配線基板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、電子機器は小型化が進んでいるが、近年携帯情報端末の発達や、コンピューターを持ち運んで操作するいわゆるモバイルコンピューティングの普及によって、一層小型化が進み、これら電子機器に内蔵される多層配線基板には、一層の小型化、薄型化且つ回路の高精細化が要求されている。
【0003】
また、通信機器に代表されるように、高速動作が求められる電子機器が広く使用されるようになってきたが、このような電子機器に対応するために、高速動作に適した多層のプリント配線板が求められている。高速動作が求められるということは、高い周波数の信号に対して正確なスイッチングが可能であるなど、多種な要求を含んでおり、高速動作を行うためには、配線の長さを短くすると共に、配線の幅を細くし且つ配線の間隙を小さくして、電気信号の伝搬に要する時間を短縮することが必要である。即ち、高速動作に適応させるという見地からも、多層配線基板には、小型化、薄型化及び回路の高精細化(回路の高密度化)が求められる。
【0004】
ところで、上述した要求を満足するような多層配線基板の製造方法として、ビルドアップ法が知られている。このビルドアップ法によれば、まず、ガラスエポキシ複合材料の絶縁基板表面に配線回路層やスルーホール導体を形成したコア基板表面に感光性樹脂の絶縁層を形成した後、露光現像によるビアホール形成、メッキ層形成、メッキ層をレジスト法によって配線回路層を形成し、必要によりこの工程を繰り返して、コア基板上に複数層の配線回路層が形成された多層配線基板を得るものである。
【0005】
また、最近では、感光性樹脂を用いて絶縁層をコア基板上に順次積層する代わりに、未硬化の熱硬化性樹脂が塗布された銅箔をコア基板上に積層した後、レジスト法で配線回路層を形成し、レーザー光等でビアホールを形成し、ビアホール内壁を含む全面にメッキ法によって金属層を形成する工程を繰り返して多層化するビルドアップ法も開発されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述したビルドアップ法で用いられる感光性樹脂は、一般にガラス転移点が低く、しかも放置によって吸水率が高まり、特に高温高湿下での回路の信頼性が損なわれるという欠点がある。また、メッキ法によって形成される配線回路層の絶縁層への密着強度が低く、得られた多層配線基板を半田リフロー等で加熱すると、この際に配線回路層が剥れたり膨れたりするという問題を生じる。さらに、得られる多層配線基板の表面平滑性に劣り、シリコンチップのフリップチップ実装等に適用できないという問題がある。
【0007】
また、後者のビルドアップ法も絶縁層表面に形成される配線回路層は、絶縁層表面から突出しているため、表面の平坦性に劣る。しかも、銅箔表面にさらに銅メッキを施して配線回路層が形成されているため、配線回路層が厚くなり、高密度の微細な配線回路層を形成することが困難であるという問題を有している。このため、銅箔をハーフエッチングして薄くするなど、様々な改善が必要である。
【0008】
そこで、本出願人は、金属箔を接着した樹脂フィルムにレジスト法等によって配線回路層を形成し、これを未硬化の絶縁シートに転写して配線回路層を絶縁シート表面に埋設して平坦性に優れた回路シートを作製した後、複数の回路シートを積層し、一括硬化することによって平坦性に優れた多層配線基板が作製できることを提案した。
【0009】
樹脂フィルムの表面に接着剤層を介して金属箔を貼り合わせる際には、通常、金属箔のしわや折れを防止するために金属箔に張力をかけながら行なう。金属はそもそも延性を有するためにある一定以上の張力をかけた場合、金属箔には伸びが発生するが、このような伸びが発生した状態で金属箔を樹脂フィルムと貼り合わせ、その後に、レジスト法によって所定のパターンを形成した時にパターンの位置精度のばらつきが大きく、絶縁シートに形成したビアホール導体との位置があわずに基板として電気的に断線するという問題が発生していた。
【0010】
1枚の金属箔によって、複数の配線基板のパターンを一括して形成し、これを複数の配線基板分にあたる1枚の絶縁シート(以下、1ワークという。)に転写した場合、中央部にて寸法合わせの基準とすると、周辺部にてその寸法のずれが非常に大きくなり、1枚の絶縁シートから取得できる寸法精度が良好な配線基板を確保する確率(いわゆる、歩留り)が低下しやすいという問題があった。
【0011】
従って、本発明の目的は、前述したビルドアップ法における種々の問題が改善され、微細且つ高密度の配線回路層を備え、パターン化された配線回路層を絶縁シートに転写した場合においても、位置ずれが発生しにくく、信頼性の高い配線基板を歩留りよく製造することのできる金属箔付フィルムを提供することにある。本発明の他の目的は、上記金属箔付フィルムを用いて、ビアホール導体との位置精度に優れた配線基板のための回路シートを製造する方法と、その該回路シートを用いてビアホール導体や配線回路層の位置精度が高く、電気的に断線の少ない多層配線基板を歩留りよく製造する方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記のような問題について鋭意検討した結果、樹脂フィルムの表面に接着剤層を介して金属箔が貼り付けられ、該金属箔がレジスト法によってエッチングされて形成された所定のパターンの配線回路層を絶縁シート表面に転写して、該絶縁シート表面に前記配線回路層を形成するための金属箔付フィルムにおいて、前記金属箔の抗張力が20kg/mm2以上であるとともに、前記樹脂フィルムの表面に形成された前記配線回路層の面積が前記金属箔の面積の30%以上である金属箔付フィルムを使用することにより、前記金属箔付フィルムにおいて、レジスト法によって金属箔をエッチングした時に、樹脂フィルム上に形成したパターンの位置精度のばらつきがX、Y方向に±0.02%以内とすることができることを見出した。
【0013】
また金属箔付フィルムに対して、レジスト法によって回路パターンを作製し、半硬化状態の熱硬化性樹脂から成る絶縁シートの表面に、配線回路層が絶縁シート表面に配線回路層が埋め込まれた形で転写して配線基板用回路シートを作製することができる。
【0014】
そして、この回路シートを用いて配線基板を作製する場合、前記配線回路層の絶縁シートへの転写に先立って、前記絶縁シートに、ビアホール導体が形成されて、前記ビアホール導体が形成された絶縁シート表面に対面するように前記金属箔付フィルムを位置合わせするときのばらつきをX、Y方向に±0.02%以内とし、さらに前記回路シートを複数枚重ね合わせ、圧着しながら絶縁シートを一括で加熱硬化することによって多層配線基板を作製することができる。
【0015】
かかる金属箔付フィルムによれば、接着する金属箔の抗張力を20kg/mm2以上とすることによって、樹脂フィルムと金属箔を貼り合わせる際の金属箔の伸びが小さくなるために、レジスト法によって樹脂フィルム上にパターンを形成した時の位置精度のばらつきを小さくすることができ、絶縁シートの位置合わせ精度が向上され、パターンとビアホール導体との電気的な接続の歩留りを向上させることができる。特に、1ワークのサイズが250mm×250mm以上の大型のものに特に有効である。
【0016】
この配線基板用回路シートの製造方法では、半硬化状態の熱硬化性樹脂シート(多層配線基板におけるコア基板或いはコア基板上に積層される絶縁層に相当)の表面に、前記金属箔から形成された配線回路層が埋め込まれた形で転写される。従って、得られる回路シートの所定枚数を重ね合わせて圧着した後に熱硬化性樹脂を加熱硬化させることにより、表面平滑性に優れた多層配線基板を作製することができる。
【0017】
このような回路シートを用いて得られる多層配線基板では、絶縁層の形成に感光性樹脂を用いていないため、これを高温高湿下に放置した場合にも、吸湿による絶縁層の低下を生じることがない。
【0018】
また、かかる多層配線基板では、各回路シートに形成されている配線回路層が絶縁層中に埋め込まれていることから、配線回路層と絶縁層との密着強度が高く、従って、半田リフロー等の後加工時においても、配線回路層の剥がれや膨れが有効に防止される。
【0019】
さらに、配線回路層は、金属箔上に銅メッキなどを行うことなく形成されているため、配線回路層が必要以上に厚くなることがなく、配線回路層の高密度化、及び基板の小型化、薄型化を満足させるのに極めて適している。
【0020】
また上述した金属箔付フィルムを用いて多層配線基板を製造する場合には、絶縁基板を構成する絶縁シートの作製と配線回路層の形成とを、別個の工程で且つ同時に進行させることができるため、生産性を著しく向上させることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の金属箔付フィルムは、樹脂フィルムの片面に接着剤層を介して金属箔が貼り付けられてなるものである。
【0022】
樹脂フィルムとしては、適度な柔軟性を有している公知の樹脂フィルムを使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等の樹脂から成るフィルムが使用される。
【0023】
この樹脂フィルムの厚みは、10〜500μm、望ましくは20〜300μmの範囲にあることが望ましい。厚みが上記範囲よりも薄いと、金属箔を回路パターン状に1加工して配線回路層を形成した時、フィルムの変形や折れ曲がりにより、配線回路層の断線を生じ易くなり、一方、上記範囲よりも厚いと、フィルムの柔軟性が損なわれ、このフィルムを金属箔(配線回路層)から引き剥がし難くなる傾向がある。
【0024】
この樹脂フィルムの表面の接着剤層としては、アクリル系、ゴム系、シリコン系、エポキシ系等公知の接着剤が使用できる。また、接着剤層の厚みは、接着力とも関係するが、1〜20μmが適当である。金属箔との接着力は、50〜700g/20mm(約0.5〜7.0N/20mm)の範囲にあることが望ましい。接着力が上記範囲より低いとエッチング時金属箔が接着剤から剥がれる。また上記範囲より高いと絶縁シート表面に配線回路を転写後のフィルムの剥離ができなくなる。尚、接着剤の接着力は樹脂フィルムと引き剥がす時の180°ピール強度(JIS Z0237)により測定することができる。
【0025】
また、この樹脂フィルムに上記接着剤層によって貼り付けられる金属箔としては、配線基板の配線層を形成するに好適な金属、例えば、金、銀、銅、アルミニウム等の低抵抗金属、或いはこれら低抵抗金属の少なくとも1種を含む合金などの箔が使用される。
【0026】
本発明によれば、この金属箔の抗張力は20kg/mm2以上、特に30kg/mm2以上であることが重要である。これは、金属箔の抗張力が20kg/mm2より小さいと金属箔付フィルムにおいて金属箔をエッチングした時にパターンの位置精度のばらつきがX、Y方向に±0.02%より大きくなってしまうためである。
【0027】
この金属箔の抗張力は、金属箔を構成する金属結晶粒の大きさによって制御され、特に抗張力を20kg/mm2以上とするためには、結晶粒の大きさを平均で1μm以下とすることが望ましい。
【0028】
この金属箔の厚みは、1〜100μm、望ましくは5〜50μmの範囲にあるのが好ましい。この厚みが上記範囲よりも薄いと、この金属箔から形成される配線回路層の抵抗率が高くなり、配線基板の製造に不適当となる傾向がある。また上記範囲よりも厚いと、後述する配線基板を製造する際の積層時に、絶縁基板或いは絶縁層の変形が大きくなり、また金属箔から形成される配線回路層を絶縁シートに転写させる際に配線回路層の埋め込み量が多くなり、絶縁シートの歪みが大きくなってしまい、樹脂を硬化させる時に変形を生じ易くなる等の不都合を生じるおそれがある。更には、金属箔をエッチングして配線回路層を形成する際、このエッチングが困難となり、精度の高い微細な回路を得ることが困難となるという問題も生じる。
【0029】
また、上記金属箔には、内層用の配線回路層を形成する場合には、その金属箔の樹脂フィルムとの接着面側を粗面加工して、その樹脂フィルム側の表面に微細な凹凸を形成しておくこともできる。例えば、金属箔表面に、その表面粗さRa(JIS B0601)が0.2乃至0.7μm程度となるように微細な凹凸を形成することができる。更に、金属箔と樹脂フィルムとの密着力を高めるために、金属箔表面にカップリング剤を塗布してもよいが、樹脂フィルムの剥離を容易に行うためには、カップリング剤を使用しないことが望ましい。
【0030】
尚、金属箔の樹脂フィルム側とは反対側の表面についても、上記と同様に粗面加工して、同様の表面粗さの微細な凹凸を形成しておくことにより、絶縁シートと配線回路層との接合力を高めることもできる。
【0031】
本発明によれば、上述した金属箔付フィルムの金属箔を回路パターン形状に加工して配線回路層を形成した金属箔付フィルム(以下、転写シートということがある)を得、この金属箔付フィルムを絶縁シートに圧着して配線回路層を絶縁シート表面に転写し、次いで、金属箔付フィルムの樹脂フィルムを引き剥がすことにより、配線基板用の回路シートを製造する。
【0032】
金属箔付フィルムの金属箔を回路パターン状に形成するには、それ自体公知のレジスト法を採用することができる。
【0033】
即ち、この金属箔の全面に、フォトレジストを塗布し、所定パターンのマスクを介して露光を行い、現像後、プラズマエッチングやケミカルエッチング等のエッチングにより、非パターン部(フォトレジストが除去されている部分)の金属箔を除去する。これにより、金属箔が回路パターン状に形成された配線回路層が形成される。勿論、スクリーン印刷等により、所定の回路パターン状にフォトレジストを金属箔表面に塗布し、次いで、上記と同様に露光後にエッチングすることにより配線回路層を形成することもできる。
【0034】
エッチング終了後においては、配線回路層上にレジストが残存するが、レジスト除去液により、残存するレジストを除去し、洗浄することにより、配線回路層が樹脂フィルム表面上に形成された転写シートを得ることができる。この時、パターン面積が元の金属箔の面積の30%以上とされている。特に50%以上とすることが望ましい。これは、パターンの面積が元の金属箔の面積の30%より小さいとエッチング後のパターンの位置ばらつきがX、Y方向で±0.02%より大きくなる。
【0035】
本発明においては、前述した金属箔付フィルムを用い、上記のようにして配線回路層を備えた転写シートを作製するが、金属箔は適度な粘着力で樹脂フィルムに保持されており、接着剤層がエッチングに際して用いる薬液に対する耐性を有し且つ薬液のしみ込みも抑制されているために、エッチングによる配線回路層形成時に金属箔が剥がれる等の不都合は有効に防止される。この結果、微細で且つ高密度の配線回路層を高精度で形成することが可能となる。
【0036】
転写シートに形成された配線回路層が転写される絶縁シートは、半硬化状の熱硬化性樹脂から成るものであり、このような熱硬化性樹脂としては、A−PPE(アリル化ポリフェニレンエーテル樹脂)、BTレジン(ビスマレイドトリアジン)、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリアミノビスマレイミド樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂等を挙げることができ、好ましくは室温で液体の熱硬化性樹脂が用いられる。
【0037】
この絶縁シートは、回路基板における絶縁基板に相当するものであり、一般に強度を高めるために、フィラーが上記熱硬化性樹脂と共に使用される。このようなフィラーとしては、有機質又は無機質の粉末或いは繊維体が挙げられる。
【0038】
例えば、無機質フィラーとしては、SiO2、Al2O3、ZrO2、TiO2、AlN、SiC、BaTiO3、SrTiO3、MgTiO3、ゼオライト、CaTiO3、ほう酸アルミニウム等、それ自体公知のものを使用することができる。これらの無機フィラーは、平均粒径が20μm以下、好ましくは10μm以下、最も好ましくは7μm以下のほぼ球形の粉末状であることが好適であるが、平均アスペクト比が2以上、特に5以上の繊維状のものであってもよい。更に繊維体のフィラーとしては、ガラスなどの繊維体があり、織布、不織布など、任意の性質のものを使用することができる。また、有機質フィラーとしては、アラミド繊維、セルロース繊維などを挙げることができる。
【0039】
上述した各種のフィラーは、それぞれ単独或いは2種以上を組み合わせて使用することができ、一般に、熱硬化性樹脂とフィラーとは、体積基準で、熱硬化性樹脂/フィラー=15/85及至65/35の割合で使用されるのがよい。
【0040】
この絶縁シートは、熱硬化性樹脂或いは熱硬化性樹脂と無機フィラーとを含むスラリーをドクターブレード法等によってシート状に成形し、半硬化状態となる程度に加熱することによって得られる。
【0041】
また、半硬化状態の絶縁シートには、炭酸ガスレーザー等によりビアホールを形成し、このビアホール内に、金、銀、銅、アルミニウム等の低抵抗金属の粉末を充填することによりビアホール導体を形成しておくことが好ましい。
【0042】
尚、この絶縁シートの厚みは、最終目的の多層配線基板の厚みに応じて適宜設定される。
【0043】
本発明においては、先に述べた転写シートを、その配線回路層が絶縁シートに対面するように絶縁シートと重ね合わせて圧着する。この場合、絶縁シートに形成されているビアホール導体の表面露出部分と配線回路層とが重なり合うように位置設定される。
【0044】
この時の位置合わせのばらつき精度がX、Y方向に±0.02%以内とすることができる。位置合わせのばらつき精度が±0.02%より大きくなるとビアホール導体と配線回路層との位置が合わずに電気的に断線する虞がある。電気的に断線がない場合でも、ビアホール導体がランドより外側に出た時にはビアホール導体の信頼性が低下する。
【0045】
圧着は、0.01〜0.5N/cm2程度の圧力で行うのがよく、これにより、配線回路層が絶縁シート表面に埋め込まれる。また、この圧着は、通常、80〜150℃程度の加熱下で行うのがよい。これにより、埋め込まれた配線回路層は、絶縁シートにしっかりと保持される。また、前述した金属箔の表面を粗面加工しておけば、配線回路層の表面に形成された微細な凹凸が絶縁シート表面に噛み合うため、この配線回路層と絶縁シートの接合強度は一層高められる。
【0046】
次いで、転写シートの樹脂フィルムを引き剥がすことにより、配線回路層は、絶縁シート表面に転写され、表面に配線回路層を有する回路シートが得られる。
【0047】
このようにして得られた回路シートは、配線回路層がシート表面に埋め込まれているため、平坦度が極めて高く、この回路シートを用いて、フリップチップ実装にも適応し得る平坦度に優れた多層回路基板を得ることが可能となる。
【0048】
上記回路シートを加熱して絶縁シートを完全に硬化させることにより単層の配線基板が得られるが、この回路シートを用いて多層の配線基板を製造することが、多層配線基板の生産性を高める上で有利である。
【0049】
即ち、上記で得られた回路シート(例えばビアホールが形成された回路シート)の所定枚数を、配線回路層と絶縁シートとが交互に位置するように重ね合わせて圧着し、この状態で加熱を行って各絶縁シートを一括して完全に硬化させることにより、目的とする多層配線基板を得ることができる。
【0050】
かかる方法によれば、絶縁基板を構成するビアホール導体を備えた絶縁シートの作製と、配線回路層を備えた転写シートの作製とを、別個の工程で同時に進行させることができるため、きわめて生産効率が高い。
【0051】
また、得られる多層配線基板では、各層に形成されている配線回路層が各層の絶縁基板中に完全に埋め込まれており、最上層の配線回路層も、その表面に埋め込まれている。従って、この多層配線基板は、フリップチップ実装にも適応し得るような平坦性に極めて優れたものであり、且つその厚みも可及的に薄くすることができる。
【0052】
さらに、この多層配線基板は、絶縁基板材料として感光性樹脂を用いる必要がないため、高温高湿下に長時間放置された場合にも、回路の信頼性が損なわれることがない。さらに、配線回路層は、金属箔の上にさらにメッキ施すことなく、金属箔から直接形成されるため、配線回路層が必要以上に厚く形成されることもなく、従って、配線回路層の厚肉化による基板強度の変形や強度低下を有効に防止することができ、且つ基板の小型化の点でも極めて有利である。
【0053】
【実施例】
38μmの厚みのポリエチレンテレフタレート(PET)の表面にアクリル系樹脂からなる接着剤を塗布して350g/20mmの接着力をもたせ、表層用として表面粗さRaが0.2μm、内層用として表面粗さRa0.6μmの銅箔を接着した。接着はPETフィルム、銅箔ともロール状のものを使用して行った。
ロール状の銅箔付フィルムの長手方向をX、幅方向をYとした。なお、金属箔として、表1のように、抗張力が10〜60kg/mm2の数種の厚みが12μmの銅箔を用いた。
【0054】
そして、この銅箔付フィルムを25個の配線基板を一括して形成する1ワークの大きさにカットして、カットした銅箔付フィルムの銅箔表面に、感光性のドライフィルムレジストを全面に貼付した後、配線回路層のパターンを露光した。
【0055】
パターンの面積は銅箔全体の面積の10〜60%とした。これを塩化第二鉄溶液中に浸漬して非パターン部をエッチング除去した後、2%の水酸化ナトリウム水溶液でレジストを剥離した。この時、絶縁シートに形成するビアホール導体と対向する位置に、直径が200μmのランドを形成しビアホール導体と配線回路層との導通をとるようにした。
【0056】
一方、絶縁性スラリーとして、有機樹脂としてアリル化ポリフェニレンエーテル(A−PPE)と、無機質フィラーとして球状シリカを体積比率で30:70の割合で混合し、この混合物に酢酸ブチルを加えてミキサーによって十分に混合して粘度100ポイズのスラリーを調製した。
【0057】
次に、前記絶縁性スラリーを用いてドクターブレード法により約125μmの厚みに成形して絶縁シートを作製し、さらにレーザーによりビアホールを形成しそのホール内に銀をメッキした銅粉末を含む銅ペーストを充填してビアホール導体を形成し、多層配線基板用の絶縁シートを作製した。
【0058】
そして、上記エッチング処理後の転写シートと絶縁シートを1ワークの中心を基準に位置合わせして真空積層機により130℃、30kg/cm2の圧力で2分間加圧した後、樹脂フィルムを剥がして配線回路層を絶縁シートに転写させた。転写後の回路シートについて、3次元測定機または断面写真より測定し、ビアホール導体とランドの位置ずれを測定した。
【0059】
位置ずれの測定には、最も外側に位置するビアホール導体とランドの位置との位置ずれ量(μm)を測定し、さらにワークサイズの大きさに対する比率を算出した。
【0060】
そして、回路シート5層を積層して200℃、3時間加熱処理して絶縁シートを完全に硬化させた。そして、作製した1ワークを切断して25個の多層配線基板を得た。
【0061】
得られた各配線基板に対して、回路における電気的な導通不良の有無をチェックし不良発生率を求めた。また、良品の配線基板に対して、150℃、1000時間大気中に放置した後、デイジーチェーン(800個に並んだビアホール導体を配線回路層によって直列に接続したもの)の抵抗を測定し、処理前の抵抗率に対して抵抗の変化率が10%以内のものを良品、10%以上のものを不良品として試料数20個中の不良発生数を表1に示した。なお、表1において試料No.6、7は参考試料を示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1の結果から明らかなように、試料No.1〜5の結果から、用いる金属箔の抗張力が20kg/mm2よりも低い試料No.1、11では、1ワーク内の外側に位置する配線基板において位置ずれによる電気的な断線が多く認められた。また、電気的には接続している配線基板においてもビアホール導体とランドとの位置ずれにより高温多湿試験後にビアホール導体の酸化によって抵抗が10%以上上昇するものが多数見受けられた。これに対して、抗張力が20kg/mm2以上の金属箔を用いることによって、1ワーク内の外側においても位置ずれが小さく、その結果、1ワーク内での配線基板の歩留り(良品率)も向上した。また、高温多湿試験後においても、抵抗変化率が10%以内と信頼性の高いものであった。また、試料No.6〜10の結果から、金属箔にパターンを形成した場合、そのパターンの面積率が30%よりも低いと位置ばらつきが発生しやすくなることがわかった。
【0064】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の金属箔付フィルムによれば、金属箔の抗張力を定めることによって、金属箔からなる配線回路層をビアホール導体が形成された絶縁シートに位置合わせして積層した時に、ビアホール導体と配線回路層との位置ずれの発生を防止し、1ワークから多数個の配線基板を形成する場合においてもパターン形成された金属箔においても、位置ずれによる電気的断線を防止し、且つ高い信頼性を有する配線基板を歩留りよく製造することができる。
Claims (6)
- 樹脂フィルムの表面に接着剤層を介して金属箔が貼り付けられ、該金属箔がレジスト法によってエッチングされて形成された所定のパターンの配線回路層を絶縁シート表面に転写して、該絶縁シート表面に前記配線回路層を形成するための金属箔付フィルムにおいて、前記金属箔の抗張力が20kg/mm2以上であるとともに、前記樹脂フィルムの表面に形成された前記配線回路層の面積が前記金属箔の面積の30%以上であることを特徴とする金属箔付フィルム。
- 前記樹脂フィルムの表面に形成された前記配線回路層の位置精度のばらつきがX、Y方向に±0.02%以内であることを特徴とする請求項1記載の金属箔付フィルム。
- 請求項1または請求項2記載の金属箔付フィルムの配線回路層を、半硬化状態の熱硬化性樹脂から成る絶縁シートの表面に転写して、前記配線回路層が前記絶縁シート表面に埋め込まれてなる回路シートを得ることを特徴とする配線基板用回路シートの製造方法。
- 前記配線回路層の絶縁シートへの転写に先立って、前記絶縁シートに、ビアホール導体が形成されている請求項3に記載の配線基板用回路シートの製造方法。
- 前記ビアホール導体が形成された前記絶縁シート表面に対面するように前記金属箔付フィルムを位置合わせする時のばらつきがX、Y方向に±0.02%以内であることを特徴とする請求項3記載の配線基板用回路シートの製造方法。
- 請求項3乃至請求項5のいずれか記載の方法によって作製された回路シートを複数枚重ね合わせ、圧着しながら絶縁シートを一括で加熱硬化させることを特徴とする多層配線基板の製造方法。
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