JP4569261B2 - 変速機の同期装置 - Google Patents
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Description
前記シンクロハブと前記ボークリングの軸方向に対向する位置に設けられ、前記シンクロハブと前記ボークリングとの相対回転方向に対して傾斜するカム面が形成されたシンクロハブ凹部とボークリング凸部とを有し、変速時であって、ボークリングコーン面とクラッチギヤコーン面との間で微少な同期トルクが発生することにより、前記シンクロハブと前記ボークリングとの間に相対回転が発生しているとき、前記シンクロハブ凹部のカム面と前記ボークリング凸部のカム面との接触により、前記相対回転による周方向の力を、前記ボークリングを前記クラッチギヤに押し付ける軸方向のサポート同期力に変換するサポート同期力発生機構と、
前記シンクロハブと前記ボークリングの軸方向に対向する位置に設けられ、前記シンクロハブと前記ボークリングとの前記相対回転方向に対して垂直な面が形成された第一凹部と第一凸部とを有し、同期時、前記第一凹部と前記第一凸部との凹凸接触により、前記シンクロハブと前記ボークリングとの割り出し量がスプライン歯ピッチの1/2未満となるように規制する割り出し量規制構造と、
を設けた。
図1は実施例1の同期装置のニュートラル状態におけるインサートキー部を示す断面図である。実施例1の変速機の同期装置は、図1に示すように、カップリングスリーブ1と、メインギヤ2と、クラッチギヤ3と、ボークリング4と、シンクロハブ5と、インサートキー6と、を備えている。
本出願人は、特願2004−135994号の出願において、図5(a),(b)に示すように、カップリングスリーブ1と、シンクロハブ5と、ボークリング4と、クラッチギヤ3と、を備えた変速機の同期装置において、変速時であって、ボークリングコーン面4aとクラッチギヤコーン面3aとの間で微少な同期トルクが発生することにより、前記シンクロハブ5と前記ボークリング4との間に相対回転が発生しているとき、前記相対回転を受ける周方向の力を、前記ボークリング4をクラッチギヤ3に押し付ける軸方向のサポート同期力に変換するサポート同期力発生機構(シンクロハブ凹部5dとボークリング凸部4d)を設けたものを提案した。
割り出しは、シンクロハブ凹部5dとボークリング凸部4dのカム角斜面を沿って(滑り)割り出されるため、ボークリング4が長期の使用等により摩耗してくると、初期の割り出し量よりも割り出し量が摩耗量に比例して増大してくる(図6(b)参照)。
割り出し量が大きくなり過ぎると(スプライン歯ピッチ1/2以上になる)と、カップリングチャンファ1aがボークリングチャンファ4bを押し分ける方向(実際の押し分け方向)とボークリングチャンファ4bの押し分け可能な方向(ボークリング凸部4dとシンクロハブ凹部5dとに隙間がある方向)が逆方向になるため、カップリングチャンファ1aとボークリングチャンファ4bとの間で股裂き状態となる(図7(a),(b)参照)。
実施例1の同期装置は、上記課題を解決するものであり、実施例1の同期装置による変速同期作用について以下説明する。ここでは、カップリングスリーブ1を図1の右方向に移動させ、高速で回転しているメインギヤ2の回転を低速で回転している変速軸の回転数に同期させ、メインギヤ2を変速軸と一体回転させる変速例について説明する。
上記図12に示す動作荷重特性について説明する。まず、t0の時点でシフトレバーに対するシフト操作を開始すると、中立状態からカップリングスリーブ1とインサートキー6とが図1の右方向に移動して徐々に動作荷重が増し、t1の時点に近づくと、シフトレバーに加えた荷重が伝達されるシフト操作機構の途中位置に設けられたシフトチェックボールをスプリング付勢力に抗して乗り上げ、乗り上げるt1の時点で最大のシフトチェック荷重が作用し、その後、t2の時点まで動作荷重は低下する。なお、自動MTの場合、図12のt0の時点でシフト動作を開始すると、t2の時点まで徐々に動作荷重が上昇する。以下述べる作用は、手動変速機の場合も自動MTの場合も同様である。
実施例1の変速機の同期装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
この結果、ボークリング4の摩耗が進行する長期使用や高頻度使用に耐えることができるのに加え、手動変速機の場合には、ドライバーがシフトレバーに加えるシフト操作力が軽減されるし、また、自動MTの場合には、シフトアクチュエーターとして、コスト的にもスペース的にも有利な小型アクチュエーターを用いることができる。
[変速同期作用]
実施例2の同期装置による変速同期作用を、各作動工程に分けて説明する。
(引き摺りμ発生工程)
図13及び図14に示すニュートラル状態を維持したままでの非同期時において、オイル等の油膜によりボークリングコーン面4aとクラッチギヤコーン面3aとの間に引き摺り摩擦力(引き摺りトルク)が発生することがある(図17及び図18参照)。
この引き摺り摩擦力が発生すると、ボークリング4とシンクロハブ5との間に相対回転差が生まれ、ボークリング凸部4dとシンクロハブ凹部5dのカム角斜面が接触し、自発同期力を発生しようとする。しかし、サポート同期力発生機構としてのボークリング凸部4dとシンクロハブ凹部5dの傾斜面隙間L10より、相対回転量規制構造としての溝部10と突起部9の周方向隙間L11の方が小さいため(L10>L11)、図18に示すように、溝部10と突起部9とがロック状態となり(L11'=0)、ボークリング凸部4dとシンクロハブ凹部5dとが接触しない(L10'>0)ように相対回転量を規制する。
すなわち、非同期時において、オイル等の油膜によりボークリングコーン面4aとクラッチギヤコーン面3aとの間に引き摺り摩擦力が発生しても、自発同期力の発生を防止することができる。
図13及び図14に示すニュートラル状態から、カップリングスリーブ1をシフト方向へ移動させると、インサートキー6がボークリング4を押し、ボークリングコーン面4aとクラッチギヤコーン面3aが接触するが、このときのボークリング4の移動量L14よりも突起部9の軸方向長さL15が短いため、溝部10と突起部9との凹凸嵌合は解除されることで、同期作用が可能となる(図19及び図20参照)。
インサートキー6がボークリング4を押し、ボークリングコーン面4aとクラッチギヤコーン面3aが接触し、微少な同期トルクが発生することでボークリング4の割り出しが行われる。割り出しは、ボークリング凸部4dとシンクロハブ凹部5dのカム角斜面を沿って(滑り)割り出される(図21及び図22参照)。
よって、この割り出しと同時に、ボークリング凸部4dとシンクロハブ凹部5dにより自発同期力が発生し、ボークリング4は、カップリングスリーブ1からの入力を用いることなく、自発的に同期作用を始める。
さらに、割り出しは、上記のように、シンクロハブ凹部5dとボークリング凸部4dのカム角斜面を沿って(滑り)割り出されるため、ボークリング4が長期の使用等により摩耗してくると、初期の割り出し量よりも割り出し量が増大してくる。しかし、ボークリング割り出し量が設定された周方向隙間より大きくなると、図22に示すように、割り出し量規制構造の突起部7が溝部8に接触し、ボークリング割り出し量をスプライン歯ピッチの1/2未満となるように規制する。
ボークリング4の割り出し後、カップリングスリーブ1がさらに進み、カップリングチャンファ1aがボークリングチャンファ4bを押すと、自発同期トルクと、カップリングチャンファ1aがボークリングチャンファ4bを押す力で発生する同期トルクと、による同期作用が行われる。そして、同期が終了すると、カップリングチャンファ1aがボークリングチャンファ4bを押し分ける(図23及び図24参照)。
このとき、ボークリング4が摩耗状態であっても、図24に示すように、割り出し量規制構造の突起部7と溝部8とがロック状態となり、ボークリング割り出し量をスプライン歯ピッチ1/2未満に規制することで、カップリングチャンファ1aがボークリングチャンファ4bを押し分ける実際の押し分け方向と、ボークリングチャンファ4bの押し分け可能な方向が同方向、つまり、カップリングチャンファ1aがボークリングチャンファ4bを押し分け可能な状態が確保される。
カップリングチャンファ1aがボークリングチャンファ4bを押し分けてストロークし、カップリングチャンファ1aが隣接するボークリングチャンファ4bの間の位置まで移動すると、カップリングチャンファ1aによるボークリングチャンファ4bの押し分けが終了する(図25及び図26参照)。
この押し分け終了状態では、図26に示すように、ボークリング4が中立位置へ戻ることになるため、突起部7も突起部9もボークリング4の戻りに伴って中立位置へ戻ることになり、同期時に割り出し量を規制する割り出し量規制構造も非同期時に相対回転量を規制する相対回転量規制構造もその機能を終えて解除される。
さらに、カップリングチャンファ1aがストロークし、クラッチギヤチャンファ3bに噛み合うと、カップリングスリーブ1を介し、シンクロハブ5とクラッチギヤ3とが一体にスプライン結合され、シフトを終了する(図27及び図28参照)。
このシフト終了状態では、シフト終了前の同期が終了時点で、ボークリング4は、図外のリターンスプリングの力によりニュートラル位置(初期位置)に戻り、このボークリング4の初期位置戻りに伴って、突起部7も突起部9も初期位置に戻ることになる。
なお、他の作用は、実施例1と同様であるので説明を省略する。
この実施例2の変速機の同期装置にあっては、実施例1のの効果に加え、下記に列挙する効果を得ることができる。
1a カップリングチャンファ
2 メインギヤ
3 クラッチギヤ
3a クラッチギヤコーン面
3b クラッチギヤチャンファ
4 ボークリング
4a ボークリングコーン面
4b ボークリングチャンファ
4c ボークリングキー溝
4d ボークリング凸部(サポート同期力発生機構)
5 シンクロハブ
5a シンクロハブスプライン歯
5d シンクロハブ凹部(サポート同期力発生機構)
6 インサートキー
7 突起部(第一凸部:割り出し量規制構造)
8 溝部(第一凹部:割り出し量規制構造)
9 突起部(第二凸部:相対回転量規制構造)
10 溝部(第二凹部:相対回転量規制構造)
11 キースプリング
12 溝部(第一凹部:割り出し量規制構造)
13 突起部(第一凸部:割り出し量規制構造)
42 自動MT
44 シフトアクチュエーター
Claims (8)
- カップリングスリーブと、シンクロハブと、ボークリングと、クラッチギヤと、を備えた変速機の同期装置において、
前記シンクロハブと前記ボークリングの軸方向に対向する位置に設けられ、前記シンクロハブと前記ボークリングとの相対回転方向に対して傾斜するカム面が形成されたシンクロハブ凹部とボークリング凸部とを有し、変速時であって、ボークリングコーン面とクラッチギヤコーン面との間で微少な同期トルクが発生することにより、前記シンクロハブと前記ボークリングとの間に相対回転が発生しているとき、前記シンクロハブ凹部のカム面と前記ボークリング凸部のカム面との接触により、前記相対回転による周方向の力を、前記ボークリングを前記クラッチギヤに押し付ける軸方向のサポート同期力に変換するサポート同期力発生機構と、
前記シンクロハブと前記ボークリングの軸方向に対向する位置に設けられ、前記シンクロハブと前記ボークリングとの前記相対回転方向に対して垂直な面が形成された第一凹部と第一凸部とを有し、同期時、前記第一凹部と前記第一凸部との凹凸接触により、前記シンクロハブと前記ボークリングとの割り出し量がスプライン歯ピッチの1/2未満となるように規制する割り出し量規制構造と、
を設けたことを特徴とする変速機の同期装置。 - 請求項1に記載された変速機の同期装置において、
前記シンクロハブ凹部と前記ボークリング凸部の周方向隙間L1と、前記第一凹部と前記第一凸部の周方向隙間L2との大小関係は、L1<L2となるように設定し、かつ、前記第一凸部の軸方向長さL3と前記ボークリングの背面隙間L4との大小関係は、L3>L4となるように設定したことを特徴とする変速機の同期装置。 - 請求項1又は2に記載された変速機の同期装置において、
前記ボークリングと前記シンクロハブとの間に、非同期時、サポート同期力が発生しないように、ボークリングとシンクロハブの相対回転量を規制する相対回転量規制構造を設けたことを特徴とする変速機の同期装置。 - 請求項3に記載された変速機の同期装置において、
前記相対回転量規制構造は、前記シンクロハブと前記ボークリングの軸方向に対向する位置に設けられ、シンクロハブとボークリングとの相対回転量を凹凸接触により規制する第二凹部と第二凸部であり、
前記シンクロハブ凹部と前記ボークリング凸部の傾斜面隙間L10と、前記第二凹部と前記第二凸部の周方向隙間L11との大小関係は、L10>L11となるように設定したことを特徴とする変速機の同期装置。 - 請求項4に記載された変速機の同期装置において、
前記第一凹部と前記第一凸部、前記第二凹部と前記第二凸部の軸方向噛み合い条件として、非同期時には、前記第一凹部と前記第一凸部、前記第二凹部と前記第二凸部の両方が軸方向に噛み合う設定とし、同期時には、前記第二凹部と前記第二凸部の軸方向噛み合いが解除され、前記第一凹部と前記第一凸部のみが軸方向に噛み合う設定としたことを特徴とする変速機の同期装置。 - 請求項5に記載された変速機の同期装置において、
前記第一凸部の軸方向長さをL16、前記第二凸部の軸方向長さをL15、同期するために前記ボークリングが軸方向に移動する量をL14、前記ボークリングの背面隙間をL13、とすると、L16>L13、かつ、L14>L15となるように設定したことを特徴とする変速機の同期装置。 - 請求項4または6に記載された変速機の同期装置において、
前記第一凹部と前記第一凸部、前記第二凹部と前記第二凸部の周方向噛み合い条件として、同期時には、前記第一凹部と前記第一凸部、前記第二凹部と前記第二凸部との両方を周方向に規制可能な設定とし、非同期時には、前記第二凹部と前記第二凸部のみが周方向に規制可能な設定としたことを特徴とする変速機の同期装置。 - 請求項7に記載された変速機の同期装置において、
前記ボークリング凸部とシンクロハブ凹部の傾斜面隙間をL10、前記第一凹部と前記第一凸部の周方向隙間をL12、前記第二凹部と前記第二凸部の周方向隙間をL11、とすると、L12>L10>L11となるように設定することを特徴とする変速機の同期装置。
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