以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電気化学表示装置の概略構成を表すものである。図2は、図1の選択電圧パルス設定部23Bをさらに詳細にしたものである。この電気化学表示装置は、図3に示した構造を有する電気化学表示素子10と、この電気化学表示素子10を駆動させるための表示素子駆動部20とを備えている。なお、図3は、電気化学表示素子10の斜視図である。
図3に示したように、電気化学表示素子10は、第1基板11と第2基板12とが電解質13(図示省略)を介して対向配置された構造を有している。第1基板11の第2基板12と対向する側の面には、透明電極14がストライプ状に延在し、第2基板12の第1基板11と対向する側の面には、対向電極15がストライプ状に延在し、透明電極14と対向電極15とが互いに交差するように対向配置されている。この交差箇所が画素を構成するようになっている。
第1基板11は、透明性を有する材料、例えば、石英ガラスにより構成されている。図2における第2基板12は、例えば、石英ガラスにより構成されている。図2における電解質13は、溶媒と、酸化還元反応により析出および溶解する析出溶解材料とを含んでいる。溶媒としては、例えば、ジメチルスルホシキドとγ−ブチロラクトンの混合物が挙げられる。析出溶解材料は、析出した状態と溶解した状態とで色が変化することを利用して画素の表示を可能にするためのものである。析出溶解材料としては、例えば、還元により金属として析出する金属イオン、具体的には、銀イオンが挙げられる。図2における透明電極14は、画素として表示する金属を析出させるものであり、例えば、透明導電膜により構成されている。具体的には、スズ(Sn)とインジウム(In)との酸化物であるITO(Indium Tin oxide)により構成されている。図2における対向電極15は、例えば、電気化学的に安定な金属により構成されている。具体的には、銀(Ag)により構成されている。
表示素子駆動部20は、信号制御部21と、透明電極駆動部22と、対向電極駆動部23とを有している。信号制御部21は、透明電極駆動部22と接続されており、画像データ1ライン分24Aと、同期タイミング信号24Bとを透明電極駆動部22へ入力するようになっている。また、信号制御部21は、対向電極駆動部23とも接続されており、走査信号25Aと、画像の書込・消去の1サイクルにおけるどの局面であるかを設定する信号(以下、局面設定信号という)25Bと、同期タイミング信号25Cとを対向電極駆動部23へ入力するようになっている。ここで、画像の書込・消去の1サイクルにおける局面には、後述の書込時の第1、および第2の局面、ならびに消去時の第1および第2の局面が含まれる。
信号制御部21は、画像信号や制御信号を基に、透明電極駆動部22と対向電極駆動部23とを制御するようになっている。
透明電極駆動部22は、信号制御部21からの制御に応じて、透明電極14を駆動するためのもので、画像データ一時保存部22Aと、信号電圧パルス設定部22Bと、信号電圧パルス駆動部22Cとを有している。画像データ一次保存部22Aは、信号制御部21から受け取った画像データ1ライン分を一時保存するようになっている。信号電圧パルス設定部22Bは、画像データ1ライン分に対応した信号電圧パルスの大きさおよび印加時間を設定するようになっている。信号電圧パルス駆動部22Cは、信号電圧パルス設定部22Bにより設定された大きさおよび印加時間の信号電圧パルスを各透明電極14に印加するようになっている。
対向電極駆動部23は、信号制御部21からの制御に応じて、対向電極15を駆動するためのもので、対向電極選択部23Aと、選択電圧パルス設定部23Bと、選択電圧パルス駆動部23Cとを有している。対向電極選択部23Aは、走査信号25Aに基づいて、選択電圧を印加する対向電極を複数の対向電極の中から選択するようになっている。選択電圧パルス設定部23Bは、図2に示すように距離判定部23B−1、電圧補正値算定部23B−2、および補正後選択電圧パルス設定部23B−3を有する。距離判定部23B−1は、駆動対象として選択された対向電極15の透明電極駆動部22からの距離を判定するようになっており、電圧補正値算定部23B−2は、駆動対象として選択された対向電極15に対する選択電圧パルスの大きさの補正値を算定するようになっており、さらに補正後選択電圧パルス設定部23B−3は、上記で算定された補正値および局面設定信号25Bに基づいて、対向電極選択部23Aにより選択された対向電極に印加する選択電圧パルスの大きさおよび印加時間を設定するようになっている。選択電圧パルス駆動部23Cは、選択電圧パルス設定部23Bにより設定された大きさおよび印加時間の選択電圧パルスを対向電極15に印加するようになっている。
次に、以上のような構成の電気化学表示装置の動作を説明する。まず、図4および図5を参照して、電気化学表示素子10の動作原理について説明する。
図4は、対向電極15の電位を基準とした場合における、対向電極15と透明電極14との間の印加電圧の波形を示す。図5は、図4に示した三角波電圧を対向電極15の電圧を基準として透明電極14と対向電極15の間に印加した場合の電流−電圧過渡応答特性を示す。なお、図5は、対向電極15を銀(Ag)電極とし、電解質にヨウ化銀(AgI)、すなわち銀イオン(Ag+)とヨウ素イオン(I-)を溶解した場合の特性例である。
図5に示したように、透明電極14と対向電極15の間に対向電極15の電圧を基準としてゼロからマイナス側に電圧を加えていくと、しばらくは銀が析出せず、書込しきい電圧(−Vth)を越えたところで透明電極14への銀の析出が始まる。そして、書込しきい電圧(−Vth)を越えたところで析出に伴う電流が流れ始める。銀の析出は、三角波電圧の頂点に相当する書込電圧を越え、次第に電圧が下がっても続き、先の書込しきい電圧(−Vth)を下回っても続く。銀の析出が終わるのは、印加電圧が保持電圧Vkeまで下がった時である。すなわち、一度書込しきい電圧(−Vth)を越えて銀の析出核が透明電極側の表面上に形成されれば、書込しきい電圧(−Vth)未満の電圧でも、銀の析出が起こる。一方、逆極性(プラス)の電圧を透明電極と対向電極の間に印加すると、銀の溶解が始まり、消去しきい電圧Vithに到達した時点で析出していた銀は消失する。これ以上の高い電圧を印加すると、ヨウ素イオン(I-)が電気化学的に酸化され、ヨウ素(I2 )となり、黄色く着色されてしまう。
ここで、上記のような電流−電圧過渡応答特性を示す表示装置の駆動を考えた場合、最も単純には、書込しきい電圧(−Vth)を越える電圧を加えて金属を析出させ、画素の書込を行い、消去しきい電圧Vithを越えない電圧を加えて金属を溶解させ、画素の消去を行うことが考えられる。これに対して、本実施の形態では、以下に説明するように、2回の書込電圧を印加して画素の書込を行い、2回の消去電圧を印加して画素の消去を行うようにしている。
次に、図6および図7を参照して、表示素子駆動部20の動作を説明する。
図6および図7は、ある局面(後述の書込時の第1もしくは第2の局面、または消去時の第1もしくは第2の局面)において、透明電極駆動部22と、透明電極駆動部22と、対向電極駆動部23との間で生じる処理を時間軸に沿って表したものである。なお、説明の都合上、上記の局面設定信号25Bが書込時の第1の局面または消去時の第2の局面を示す場合(図6)と、書込時の第2の局面または消去時の第1の局面を示す場合(図7)とに分けて説明する。
図6を参照して、上記の局面設定信号25Bが書込時の第1の局面または消去時の第2の局面を示す場合について説明する。信号制御部21は、まず局面設定信号25Bを対向電極駆動部23に入力する(ステップS101)。信号制御部21は、次に走査信号25Aを対向電極駆動部23に入力する(ステップS102)。ここでの走査信号25Aは、複数の対向電極のうちの特定の1つを選択することを意味する信号である。対向電極駆動部23の対向電極選択部23Aは、走査信号25Aに基づき、選択電圧を印加する対向電極を複数の対向電極の中から選択する(ステップS103)。対向電極駆動部23の選択電圧パルス設定部23Bは、(a)駆動対象として選択された対向電極15の透明電極駆動部22からの距離を判定し、(b)次に駆動対象として選択された対向電極15に対する選択電圧パルスの大きさの補正値を算定し、(c)最後に上記で算定された補正値および局面設定信号25Bに基づいて、上記で設定された対向電極に印加する選択電圧パルスの大きさおよび印加時間を設定する(ステップS104s)。
信号制御部21は、さらに画像データ(書込用データまたは消去用データ)1ライン分24Aを透明電極駆動部22に入力する(ステップS105)。透明電極駆動部22の画像データ一時保存部22Aは、その画像データ1ライン分24Aを一時保存する(ステップS106)。透明電極駆動部22の信号電圧パルス設定部22Bは、画像データ一時保存部22Aにより一時保存された画像データ1ライン分24Aに対応した信号電圧パルスの大きさおよび印加時間を設定する(ステップS107)。
その後、信号制御部21は、透明電極駆動部22および対向電極駆動部23に対して、それぞれ、同期タイミング信号24B,25Cを互いに同期させて入力する(ステップS108)。透明電極駆動部22の信号電圧パルス駆動部22Cは、同期タイミング信号 24Cに同期して、信号電圧パルス設定部22Bにより設定された大きさおよび印加時間の信号電圧パルスを、各透明電極14に印加する(ステップS109)。対向電極駆動部23の選択電圧パルス駆動部23Cは、同期タイミング信号25Cに同期して、選択電圧パルス設定部23Bにより設定された大きさおよび印加時間の信号電圧パルスを、対向電極設定部23Aにより設定された対向電極15に出力する(ステップS110)。
上記のステップS101〜S110を行うことにより、書込時の第1の局面または消去時の第2の局面において、画面の最初の1ライン分の処理が完了する。続いて、画面の1ライン分を処理するステップ(ステップS102〜S110)を1画面を構成する複数ライン分繰り返し行う(ステップS111)。これにより、書込時の第2の局面または消去時の第2の局面における処理が完了する。
次に、図7を参照して、上記の局面設定信号25Bが書込時の第2の局面または消去時の第1の局面の場合について説明する。信号制御部21は、まず局面設定信号25Bを対向電極駆動部23に入力する(ステップS201)。信号制御部21は、次に走査信号25Aを対向電極駆動部23に入力する(ステップS202)。ここでの走査信号25Aは、全ての対向電極を選択することを意味する信号である。対向電極駆動部23の対向電極選択部23Aは、走査信号25Aに基づき、選択電圧を印加する対向電極を複数の対向電極の中から選択する(ステップS203)。ここで、対向電極選択部23Aは、全ての対向電極を選択する。対向電極駆動部23の選択電圧パルス設定部23Bは、(a)駆動対象として選択された対向電極15の透明電極駆動部22からの距離を判定し、(b)次に駆動対象として選択された対向電極15に対する選択電圧パルスの大きさの補正値を算定し、(c)最後に上記で算定された補正値および局面設定信号25Bに基づいて、上記で設定された対向電極に印加する選択電圧パルスの大きさおよび印加時間を設定する(ステップS204)。
信号制御部21は、対向電極駆動部23に対して、同期タイミング信号25Cを入力する(ステップS205)。対向電極駆動部23の選択電圧パルス駆動部23Cは、同期タイミング信号25Cに同期して、選択電圧パルス設定部23Bにより設定された大きさおよび印加時間の信号電圧パルスを、対向電極設定部23Aにより設定された対向電極15に出力する(ステップS206)。ここで、選択電圧パルス駆動部23Cは、全ての対向電極に同時に出力する。なお、上記の「同時」とは、必ずしも厳密に時間的に同時であることを意味するものではない。
上記のステップS201〜S206を行うことにより、書込時の第2の局面および消去時の第1の局面における処理が完了する。なお、書込時の第2の局面および消去時の第1の局面において、上記のステップS201〜S206を行う代わりに、書込時の第1の局面および消去時の第2の局面のように、画面の1ライン分を処理するステップ(ステップS102〜S110)を1画面を構成する複数ライン分繰り返し行う(ステップS111)ようにしてもよい。
なお、選択電圧設定部23Bにおいて、ある対向電極に印加すべき選択電圧パルスを算定する際に、以下のような方法を用いることが考えられる。例えば、ある距離での電圧降下分、およびその電圧降下分を補うだけの選択電圧の大きさをあらかじめ予測した上で、選択電圧の大きさを距離の関数として求め、それを上記の演算の際に用いることができる。さらに、例えば、ある距離での電圧降下分を随時検出する手段を設けた上で、上記の関数を随時更新することもできる。あるいは、対向電極に印加する選択電圧を予め求めたものを不揮発性メモリに記憶しておき、これを随時読み出して用いるようにしてもよい。
次に、図8〜図14を参照して、電気化学表示素子10の動作を詳細に説明する。なお、図8は、画像の書込・消去の1サイクルにおいて透明電極と対向電極の間に印加される駆動電圧波形を概念的に表すものである。図9は、電気化学表示素子10において画像が書き込まれる様子を表すものである。図10は書込時の駆動電圧波形の一具体例を表すものである。図11は、電気化学表示素子10において画像が消去される様子を表すものである。図12は、消去時の駆動電圧波形の一具体例を表すものである。図13は比較例における書込時の駆動電圧波形を表すものである。図14は比較例における消去時の駆動電圧波形を表すものである。
以下に、図8、図9、図10を参照して、書込時の動作を説明する。その前に、図10の記載について概説する。図10は、図9に記載の各透明電極14(C1,C2,C3…Cm)に加えられる電圧(信号電圧)、各対向電極15(R1,R2,R3…Rn)に加えられる電圧(選択電圧)、そして画素(C1,R1),(C1,R2),(C2,R2),(Cm,Rn)に加えられる電圧、すなわち、透明電極14と対向電極15との間に加えられる電圧(書込電圧)の合計3種類の電圧の経時変化を表している。また、図8および図10は、時間軸において3つの局面を設けている。まず、第1の局面は、1画面全体における書込対象画素に金属の析出核を形成する(これを、後述の第1の書込電圧を印加するという)局面であり、時間Taの期間に相当する。書込対象画素とは、画像を書き込む際に選択された透明電極および対向電極の交差する画素を指す。第2の局面は、先の書込対象画素に金属をさらに析出させて画像を表示する(これを、後述の第2の書込電圧を印加するという)局面であり、時間Twの期間に相当する。なお、書込後、消去開始までの間は、表示を継続する局面となり、時間Tmの期間に相当する。以下、各局面ごとに詳述する。
第1の局面である、第1の書込電圧を印加する動作について説明する。透明電極駆動部22により、各透明電極14(C1,C2,C3…Cm)に、1ライン分の画像データに対応した第1の信号電圧、例えば、電圧(0,−Vwc,0…0)を同時に出力する。ここで、第1の信号電圧(−Vwc)が出力されている箇所と出力されていない箇所があるが、出力されている箇所は、書込対象画素に対応しており、出力されていない箇所は、書込対象画素に対応していないことを意味する。そして、透明電極駆動部22により、1画面を構成するnライン分の画像データに対応した信号電圧を順次出力する。一方、対向電極駆動部23により、各対向電極15(R1,R2,R3…Rn)に第1の選択電圧Vwrnを第1の信号電圧(−Vwc)と同期して順次出力する。第1の選択電圧Vwrnは、Vwr1,Vwr2,Vwr3,…を代表して表したものである。なお、第1の信号電圧(−Vwc)および第1の選択電圧Vwrnの大きさは、いずれも書込しきい電圧(−Vth)より絶対値が小さい電圧である。なお、「Vwrn 」における表記「n」は、各対向電極15(R1,R2,R3…Rn)に対応する変数であり、その変数の数が大きくなるほど透明電極駆動回路22から遠くなる(以下、同様)。
例えば、画素(C2,R2)では、透明電極C2における第1の信号電圧(−Vwc)と、対向電極R2における第1の選択電圧Vwr2とが重なる。ここで、透明電極C2から画素(C2,R2)へ印加される第1の信号電圧は、上述のように透明電極の抵抗率により電圧降下(ΔVwcn)が生じているので、実際には、透明電極C2から出力される第1の信号電圧(−Vwc)よりも電圧降下分ΔVwc2だけ絶対値が小さい電圧(−Vwc2=−(Vwc−ΔVwc2))が画素(C2,R2)に印加される。一方、対向電極R2から画素(C2,R2)へ出力される第1の選択電圧は、上述のように対向電極は金属である銀により構成されているので、電圧降下を無視できる電圧Vwr2 が画素(C2,R2)に印加される。
ここで、第1の選択電圧Vwr2 は、透明電極からの距離に応じた選択電圧の大きさに設定されており、具体的には、初期電圧Vwr に上記の電圧降下分ΔVwc2を加えた電圧Vwr+ΔVwc2(=Vwr2)に設定される。以上より、これらの電位差((−Vwc2)−Vwr2)=(−(Vwc−ΔVwc2)−(Vwr+ΔVwc2))=(−(Vwc+Vwr))に基づき、書込しきい電圧の絶対値以上の大きさを持つ第1の書込電圧(−Va=−(Vwc+Vwr))が、透明電極と対向電極の間に加わり、透明電極側に金属の析出核が形成される。このような論理を全ての書込対象画素について適用することにより、全ての書込対象画素において透明電極と対向電極との間に第1の書込電圧(−Va)が均一に印加され、透明電極側に金属の析出核が形成される。ここで、書込対象画素とは、画像を書き込む際に選択された透明電極および対向電極の交差する画素を指す。
一方、画素(C2,R1)では、透明電極C2から出力される第1の信号電圧(−Vwc)よりも電圧降下分ΔVwc1だけ絶対値が小さい電圧(−Vwc1=−(Vwc−ΔVwc1))と対向電極R1から出力される第1の選択電圧Vwr1とが重なる期間が無く、書込しきい電圧(−Vth)より絶対値が低い電圧(−Vwc1)、あるいは第1の選択電圧(−Vwr1)のうちのいずれか一方が、透明電極14と対向電極15との間に加わるのみである。したがって、画素(C2,R1)では、金属の析出は起こらない。
次に、第2の局面である、第2の書込電圧を印加する動作について説明する。各透明電極14(C1,C2,C3…Cm)を接地するとともに、対向電極駆動部23により、透明電極駆動部22からの距離に応じた大きさの電圧を持つとともに書込しきい電圧(−Vth)より絶対値が小さい第2の選択電圧Vwn(=Vw1,Vw2,Vw3…Vwn)を、それぞれ、各対向電極15(R1,R2,R3…Rn)に同時に印加する。
ここで、各透明電極14(C1,C2,C3…Cm)が接地されている一端から遠ざかるにつれて、わずかではあるが接地に係る電圧(第2の信号電圧)も電圧降下を生じる。そのため、全ての書込対象画素において透明電極14と対向電極15との間に第2の書込電圧(−Vw)を均一に印加するためには、上述の第1の選択電圧Vwrn の印加の場合と同様に、対向電極15から出力される第2の選択電圧Vwnは、初期電圧に電圧降下分を加えた電圧に設定する必要がある。その結果、これらの電位差により書込しきい電圧より小さい第2の書込電圧(−Vw)が、全ての書込対象画素において均一に加わり、先の第1の書込電圧(−Va)によって透明電極14上に析出した金属の析出核の周りに金属が追加析出され、書込が完了する。
なお、上記の「同時」とは、必ずしも厳密に時間的に同時であることを意味するものではなく、画像が画面全体で同時に表示されたとユーザが感じる程度に時間的に同時であることを意味する。また、金属の析出核のない画素においても第2の書込電圧(−Vw)が印加されているが、上記した図4の電流−電圧特性(サイクリックボルタンメトリ図)より、金属の析出核がない場合には、書込しきい電圧より小さい第2の書込電圧(−Vw)が印加されても金属の析出は起こらない。
次に、図13に示した比較例と対比しながら、本実施の形態の電気化学表示装置における書込動作時の作用および効果を説明する。なお、図13は、本実施の形態の書込駆動波形(図10)に対する比較例としての書込駆動波形を表すものである。
図13に示した比較例では、透明電極駆動部22により、一定の値の第1の信号電圧Vwcを透明電極に印加する。一方、対向電極駆動部23により、透明電極駆動部22からの距離にかかわらず、一定の値の第1の選択電圧Vwrを対向電極に印加する。しかし、第1の信号電圧は、抵抗率の大きい透明電極14による電圧降下により、透明電極駆動部22から遠くなるほど小さくなる。一方、第1の選択電圧は、電圧降下が無視できるので、対向電極駆動部23から遠くなっても一定のままである。従って、透明電極14と対向電極15との間に印加される第1の書込電圧の大きさは、透明電極駆動部22から遠くなるほど小さくなる。同様に、透明電極14と対向電極15との間に印加される第2の書込電圧の大きさは、透明電極駆動部22から遠くなるほど小さくなる。この結果、透明電極駆動部22から遠い画素ほど表示濃度が低下し、画面内での表示濃度にむらが生ずる。
これに対して、本実施の形態によれば、画素書込に際し、透明電極駆動部22からの距離に応じた透明電極14の電圧降下を考慮して、各対向電極15への第1の選択電圧の大きさを変えるようにしたので、透明電極14と対向電極15との間に印加する第1の書込電圧を全ての書込対象画素について均一化することができる。同様に、透明電極14と対向電極15との間に印加する第2の書込電圧を全ての書込対象画素について均一化することができる。この結果、書込画素の反射率(表示濃度)を、透明電極駆動部22からの距離にかかわらず、画面全体で均一にすることができる。
また、本実施の形態の電気化学表示装置は、次のような点でも優れている。
一般に、電気化学表示装置では、各画素は、金属の析出以前には主にキャパシタとしての機能が強く、析出に伴って電極間の抵抗値ならびにしき値が小さくなるという特性を持っている。そのため、仮に一回の書込電圧の印加のみで金属の析出を完了しようとすると、書き込まれた画素の周囲の画素を書き込むような場合、既に書き込みされた画素部にさらに金属が析出し、不要な電流が流れてクロストークが発生したり、コントラストが低下する等の問題が生ずる。これに対して、本実施の形態のような2段階の書込駆動電圧波形を用いれば、最初の第1の書込電圧の印加において金属の析出核が不必要に大きくなるのを防止することができるので、金属を析出させた画素に不要な電流が流れてクロストークが発生したり、コントラストが低下するのを効果的に回避することができる。
また、仮に一回の書込電圧のみで金属の析出を完了しようとすると、画素毎に析出に長時間を要し、特に画素数が増えれば増えるほど表示に時間がかかる。これに対し、本実施の形態では、最初の第1の書込電圧の印加時には各画素ごとに短い時間ずつ電圧を印加して順次金属の析出核だけを形成しておき、その後の第2の書込電圧の印加時には全ての書込対象画素に一斉に電圧を印加するようにしているので、各画素に書込電圧を1回ずつ順次印加して書込を完了するようにした場合と比べて、印加時間を大幅に短くすることができる。すなわち、画像表示に要する時間を著しく短縮することができる。
また、仮に一回の書込電圧の印加のみによって金属の析出を完了しようとすると、走査線(対向電極)を順次走査するに従って、順次(左上から右下に向かって)表示が行われる。このため、ユーザは画像が表示される様子を不自然に感じる。これに対し、本実施の形態では、全ての書込対象画素について同時に第2の書込電圧を印加した時点で初めて画像が画面全体で一斉に表示されることになるので、ユーザは画像が表示される様子を自然に感じることができる。なお、この「同時」は、上記の定義と同義である。
次に図11および図12を参照して、消去時の動作を説明する。
その前に、図12の記載について概説する。図12は、各透明電極14(C1,C2,C3…Cm)に加えられる電圧(信号電圧)、各対向電極15(R1, R2,R3…Rn)に加えられる電圧(選択電圧)、そして画素(C1,R1), (C1,R2), (C2,R2), (Cm,Rn)の印加電圧、すなわち、透明電極14と対向電極15との間の印加電圧(消去電圧)の合計3種類の電圧の経時変化を表している。また、図8、12は、時間軸において2つの局面を設けている。まず、第1の局面は、書込時に透明電極側に析出した金属のほとんどを(核の部分を除き)溶解する(これを、後述の第1の消去電圧を印加するという)局面であり、時間Teの期間に相当する。第2の局面は、透明電極側にわずかに残存した金属の析出核を完全に近い状態で溶解させることもできる(これを、後述の第2の消去電圧を印加するという)局面であり、時間Tsの期間に相当する。以下、各局面ごとに詳述する。
まず、第1の局面である、第1の消去電圧を印加する動作について説明する。最初に、各透明電極14(C1,C2,C3…Cm)を接地するとともに、対向電極駆動部23から各対向電極15(R1,R2,R3…Rn)に対して、書込時とは逆極性で、透明電極駆動部22からの距離に応じた大きさをもち、かつ消去しきい値電圧Vith よりも小さい第3の選択電圧を同時に印加する。この場合、各透明電極14(C1,C2,C3…Cm)では、接地端(すなわち、透明電極駆動部22)から遠ざかるにつれて、わずかではあるが接地に係る電圧(第3の信号電圧)は、電圧降下を生じる。そのため、全ての消去対象画素において透明電極と対向電極との間に第1の消去電圧Ve を均一に印加するためには、上述の第1の選択電圧の場合と同様に、対向電極15から出力される第3の選択電圧の大きさを、初期電圧に電圧降下分を加えた電圧に設定する必要がある。これらの電位差を設けることにより、消去しきい電圧Vithよりも小さい一定の第1の消去電圧Veが全ての消去対象画素に均一に加わることになる。その結果、書込時に透明電極上に析出した析出金属のほとんどが(核の部分を除き)溶解する。この時、画像が画面全体で同時に消去されたようにユーザは感じる。ここで、消去対象画素とは、画像を消去する際に選択された透明電極および対向電極の交差する画素を指す。
なお、上記の「同時」とは、必ずしも厳密に時間的に同時であることを意味するものではなく、画像が画面全体で同時に消去されたとユーザが感じる程度に時間的に同時であることを意味する。また、金属の析出核のない画素においても第1の消去電圧Veが印加されるが、上記した電流−電圧特性(図4)から、金属の析出核がない場合には、消去しきい電圧Vithより小さい消去電圧が印加されても陰イオンの酸化は生じない。
次に、第2の局面である、第2の消去電圧を印加する動作について説明する。最初に、透明電極駆動部により、各透明電極14(C1,C2,C3…Cm)に、1ライン分の画像消去データに対応した第4の信号電圧、例えば、電圧(0, Vec,0…0)を同時に出力する。ここで、信号電圧Vec が出力されている箇所と出力されていない箇所があるが、出力されている箇所は、消去対象画素に対応しており、出力されていない箇所は、消去対象画素に対応していないことを意味する。そして、透明電極駆動部22は、1画面を構成するnライン分の画像消去データに対応した第4の信号電圧を順次出力する。一方、対向電極駆動部23により、各対向電極15(R1,R2,R3…Rn)に第4の選択電圧 (−Vern)を第4の信号電圧Vecと同期して順次印加する。なお、第4の信号電圧Vecおよび第4の選択電圧(−Vern)の大きさは、消去しきい電圧Vithの絶対値より小さい電圧である。
例えば、画素(C2,R2)では、透明電極C2から出力される第4の信号電圧Vecと、対向電極R2から出力される第4の選択電圧(−Ver2)とが重なる。ここで、透明電極から画素(C2,R2)へ印加される第4の信号電圧は、上述のように透明電極の抵抗率により電圧降下(ΔVecn)が生じているので、実際には、透明電極C2から出力される第4の信号電圧Vecよりも電圧降下分ΔVwc2だけ低い電圧Vec2(=Vec−ΔVec2)が画素(C2,R2)に印加される。一方、対向電極R2から画素(C2,R2)へ出力される第4の選択電圧は、上述のように対向電極15は金属である銀により構成されているので、電圧降下を無視できる電圧(−Ver2)が画素(C2,R2)に印加される。
ここで、第4の選択電圧(−Ver2)は、透明電極からの距離に応じた選択電圧の大きさに設定されており、具体的には、初期電圧(−Ver)から上記の電圧降下分ΔVec2を引いた電圧(−(Ver−ΔVec2)=−Ver2)に設定される。これにより、これらの電位差 ( Vec2−(−Ver2)= Vec2+ Ver2=(Vec−ΔVec2)+(Ver+ΔVec2)= Vec+Ver)に基づき、消去しきい電圧Vith以上の第2の消去電圧Vs(=Vec+Ver)が、透明電極と対向電極の間に加わり、透明電極側にわずかに残存した金属の析出核を完全に近い状態で溶解させることも可能になる。このような論理を全ての消去対象画素について適用することにより、全ての消去対象画素において透明電極と対向電極との間に均一な第4の消去電圧Vsが印加され、透明電極側にわずかに残存した金属の析出核を完全に近い状態で溶解させることも可能である。また、時間Tssという極めて短時間の間だけしかVith以上の電圧が印加されないことから、残存した金属の析出核を溶解させた後に発生する、所望としない陰イオンの酸化はほとんど発生しないことも極めて重要な点である。
一方、画素(C2,R1)では、透明電極C2から出力される第4の信号電圧Vecよりも電圧降下分ΔVwc1だけ低い電圧Vec1(=Vec−ΔVec1)と対向電極R1から出力される第4の選択電圧(−Ver1)とが重なる期間が無く、消去しきい電圧Vithより絶対値が低い電圧Vec1、あるいは第4の選択電圧(−Vwr1)のうちのいずれか一方が加わるのみである。したがって、消去対象画素以外の画素には消去しきい電圧Vithより絶対値が低い電圧しか印加されないこととなり、消去画素以外の画素では陰イオンの酸化は起こらない。ここで、消去画素とは、画像を消去した画素を指す。
次に、図14に示した比較例と対比しながら、本実施の形態の電気化学表示装置における消去動作時の作用および効果を説明する。なお、図14は、本実施の形態の消去駆動波形(図11)に対する比較例としての消去駆動波形を表すものである。
図13に示した比較例では、透明電極駆動部22により、一定の値の第4の信号電圧(Vec)を透明電極に印加する。一方、対向電極駆動部23により、透明電極駆動部22からの距離にかかわらず、一定の値の第4の選択電圧(−Ver)を対向電極に印加する。しかし、第4の信号電圧(Vec)は、抵抗率の大きい透明電極14による電圧降下により、透明電極駆動部22から遠くなるほど小さくなる。一方、第4の選択電圧は、電圧降下が無視できるので、対向電極駆動部23から遠くなっても一定のままである。従って、透明電極14と対向電極15との間に印加される第2の消去電圧の大きさは、透明電極駆動部22から遠くなるほど小さくなる。同様に、透明電極14と対向電極15との間に印加される第1の消去電圧の大きさは、透明電極駆動部22から遠くなるほど小さくなる。この結果、透明電極駆動部22から遠い画素ほど消去残りが生じ、画面内での消去むらが生ずる。
これに対して、本実施の形態によれば、画素消去に際し、透明電極駆動部22からの距離に応じた透明電極14の電圧降下を考慮して、各対向電極15への第1の選択電圧の大きさを変えるようにしたので、透明電極14と対向電極15との間に印加する第2の消去電圧を全ての消去対象画素について均一化することができる。同様に、透明電極14と対向電極15との間に印加する第1の消去電圧を全ての消去対象画素について均一化することができる。この結果、消去画素の反射率(消去の程度)を、透明電極駆動部22からの距離にかかわらず、画面全体で均一にすることができる。
ところで、その陰イオンの酸化体が電極近傍に存在している場合には、金属の核形成を阻害してしまうことがこれまでの実験結果から明らかとなっており、酸化体が電極近傍に存在する状態で書き込み(金属の核形成)を行うと、所望の書き込み濃度には達することができず、表示が不均一になってしまう。それに対して、本実施の形態では、上述のように陰イオンの酸化がほとんど生じないために、表示が不均一になるということがほとんど生じないので、書込画素および消去画素の表示色の反射率のサイクル特性が非常に優れている。
なお、本実施の形態の電気化学表示装置は、選択電圧および信号電圧を対向電極および透明電極に同期して印加することにより、これらの電位差が書込対象画素に印加されるようになっている。そして、両電極間の電位差が書込しきい電圧(−Vth)を超えた場合に画像の書込が行われるようになっている。したがって、たとえ選択電圧または信号電圧が書込しきい電圧(−Vth)を超えていたとしても、両電極間の電位差が書込しきい電圧(−Vth)を超えていない場合には、理論上画像の書込は行われない。しかし、仮に上記の同期が厳密に取れていない場合に、選択電圧または信号電圧が書込しきい電圧(−Vth)を超えているときは、両電極間の電位差が書込しきい電圧(−Vth)を超えてしまう可能性があり、不測の書込が生じる可能性がある。ところで、本実施の形態では、第1および第2の選択電圧ならびに第1および第2の信号電圧の大きさを書込しきい電圧(−Vth)の絶対値より小さくしている。そのため、仮に同期が厳密に取れていない場合であっても、両電極間の電位差が書込しきい電圧(−Vth)を超えることはないので、不測の書込が生じる可能性はない。同様に、第3および第4の選択電圧ならびに第3および第4の信号電圧の大きさを消去しきい電圧(Vith)の絶対値より小さくしているので、仮に同期が厳密に取れていない場合であっても、両電極間の電位差が消去しきい電圧Vithを超えることはないので、電解質中に存在する陰イオンの酸化が生じる可能性はない。
また、本発明の実施の形態では、全ての消去対象画素について同時に第1の消去電圧を印加して、画像が画面全体で同時に消去されたようにユーザが感じるようにしているので、画像が消去される様子をユーザは自然に感じることができる。なお、この「同時」とは、上記の定義と同義である。
次に、以上のように、画像の表示および消去の際に透明電極駆動部22からの距離に応じて対向電極15への印加電圧(選択電圧)の大きさを設定することの意義についてより詳細に説明する。
その前に、まず、対向電極に印加する選択電圧の役割について簡単に説明する。「選択電圧」とは、上述したように、対向電極駆動部から各対向電極へ出力される電圧であり、例えば、画面表面においてどの走査線上の表示(書込)や消去を行うかを指定するための電圧である。ここで、表示や消去を行う走査線を単に指定するだけであれば、印加する電圧の大きさはさほど厳密である必要はない。しかし、本実施の形態では、上述のように、例えば、書込において、書込対象画素では、透明電極の第1の信号電圧と、対向電極の第1の選択電圧とが重なり、これらの電位差により書込電圧が印加されるので、透明電極上に金属の析出核が形成される。すなわち、選択電圧は、書込電圧の一翼を担っており、選択電圧の大きさを変動させると、書込画素の反射率(表示濃度)が変動しうる。また、選択電圧は、画像の消去の際の消去画素の反射率(表示濃度)など、選択電圧が画像の表示や消去に関わる全ての場合に影響を与えうる。
ところで、本実施の形態では、画像の表示、消去において、電解質に印加する電圧の大きさは、全ての画素において一定であることが望ましい。印加電圧が一定であれば、電解質を流れる電流も一定となり、電極表面に析出する金属の析出量や電極表面から金属が溶解する溶解量が一定となる。すなわち、電解質に印加する電圧の大きさは、画面全体に渡って表示の均一性に大きく関係するからである。しかし、上述のように、画像の表示側の電極である透明電極は、低温プロセスを用いて成膜されているので、抵抗率が一般的に大きい。そのため、電圧降下を考慮せずに選択電圧を印加した場合には、透明電極に電圧を印加する透明電極駆動部から遠ざかるにつれて電圧降下が生じ、透明電極駆動部から遠い画素では近い画素に比べて低い電圧が電解質に印加されることになる。
そこで、本実施の形態では、透明電極駆動部からの距離に応じて選択電圧の大きさを大きくすることによって、電圧降下分を補っている。これにより、書込画素および消去画素の表示色の反射率を画面全体で均一にすることができるのである。
[第2の実施の形態]
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。上記の第1の実施の形態では、透明電極駆動部からの距離に応じて選択電圧の大きさを変化させるようにしたが、本実施の形態では、透明電極駆動部からの距離に応じて選択電圧の印加時間を変化させる。なお、本実施の形態では、上記第1の実施の形態の電気化学表示装置と同一の構成、動作、作用および効果については、適宜説明を省略する
図15は、本発明の第2の実施の形態に係る電気化学表示装置100の概略構成を表すものである。図16は、図15の選択電圧パルス設定部123Bおよび信号電圧パルス設定部122Bをさらに詳細にしたものである。この電気化学表示装置は、図3に示した構造を有する電気化学表示素子110と、この電気化学表示素子110を駆動させるための表示素子駆動部120とを備えている。この電気化学表示装置100における表示素子駆動部120は、図2の電圧補正値算定部23B−2に代えて、印加時間補正値算定部123B−2を備えており、図1の信号電圧パルス設定部122Bにおいて、印加時間補正値取得部122B−1および補正後信号電圧パルス設定部122B−2を備えている。
表示素子駆動部120は、信号制御部121と、透明電極駆動部122と、対向電極駆動部123とを有している。信号制御部121は、透明電極駆動部122と接続されており、画像データ1ライン分24Aと、同期タイミング信号24Bと、対向電極駆動部123で設定された印加時間124Cとを透明電極駆動部22へ入力するようになっている。また、信号制御部121は、対向電極駆動部123とも接続されており、走査信号25Aと、画像の書込・消去の1サイクルにおけるどの局面であるかを設定する信号(以下、局面設定信号という)125Bと、同期タイミング信号125Cとを対向電極駆動部123へ入力するようになっている。一方、対向電極駆動部123は、対向電極駆動部123で設定された印加時間125Dを信号制御部121へ入力するようになっている。
信号制御部21は、画像信号や制御信号を基に、透明電極駆動部22と対向電極駆動部23とを制御するようになっている。第1の実施の形態では、電圧補正値算定部23B−2が、駆動対象として選択された対向電極15に対する選択電圧パルスの大きさの補正値を算定するようにしていたが、第2の実施の形態では、電圧補正値算定部23B−2に代わって印加時間補正値算定部123B−2が、駆動対象として選択された対向電極15に対する選択電圧パルスの印加時間の補正値を算定するようにしている。
次に、図17および図18を参照して、表示素子駆動部120の動作を説明する。
図17および図18は、ある局面(第1の実施の形態と同様の、書込時の第1もしくは第2の局面、または消去時の第1もしくは第2の局面)において、透明電極駆動部22と、透明電極駆動部22と、対向電極駆動部23との間で生じる処理を時間軸に沿って表したものである。第1の実施の形態との差異は、ステップ104およびステップ204において、選択電圧パルス設定部23Bが、(a)駆動対象として選択された対向電極15の透明電極駆動部22からの距離を判定し、(b)次に上記の対向電極15に対する選択電圧パルスの「大きさ」の補正値を算定し、(c)最後に上記の補正値および局面設定信号25Bに基づいて、上記の対向電極に印加する選択電圧パルスの大きさおよび印加時間を設定する代わりに、ステップ304およびステップ404において、印加時間補正値算定部123B−2が、(a)駆動対象として選択された対向電極15の透明電極駆動部22からの距離を判定し、(b)次に上記の対向電極15に対する選択電圧パルスの「印加時間」の補正値を算定し、(c)最後に上記の補正値および局面設定信号25Bに基づいて、上記の対向電極に印加する選択電圧パルスの大きさおよび印加時間を設定するようにしている。
次に、図19および図20を参照して、電気化学表示素子110の動作を説明する。なお、図19は書込時の駆動電圧波形の一例を表し、図20は消去時の駆動電圧波形の一例を表す。図19および図20の記載の仕方は、第1の実施の形態における図9および図10と同様である。
まず両電極間に印加する選択電圧パルスおよび信号電圧パルスの印加時間を補正する理由について説明する。たとえば、表示に際して、電圧降下により画素に印加する書込電圧の大きさが減少すると、その画素における電解質中を流れる電流も減少する。そして、電解質中を流れる電流が減少すると、透明電極側に析出する金属の析出量も減少する。その結果、透明電極駆動部から遠い画素ほど、金属の析出量が少なくなり、表示色の濃度が薄く(表示色の反射率が大きく)なってしまう。しかし、電解質中を流れる電流が減少しても、電流を流す時間を長くすれば、透明電極側に析出する金属の析出量は増加する。そして、その電流を流す時間を各書込対象画素ごとに適切に設定することにより、全ての書込画素において金属の析出量を均一にすることができる。その結果、全ての書込画素において表示色の濃度を均一(表示色の反射率を均一)にすることができるからである。
以下に、上記のように全ての書込画素において表示色の濃度を均一(表示色の反射率を均一)にすべく、印加時間を補正する一具体例を説明する。たとえば、透明電極Cmから出力された第1の信号電圧(−Vwc)は、電圧降下によって電圧が減少するので、画素(Cm,Rn)には電圧(−Vwc=−(Vwc−ΔVwcn))が印加される。一方、対向電極Rnから出力された選択電圧Vwrは、電圧降下が無視できるので、画素(Cm,Rn)には電圧Vwrが印加される。従って、これらの電位差(−(Vwc+Vwr)+ΔVwcn )が、第1の書込電圧として画素(Cm,Rn)に重畳して印加される。
そこで、まず最初に、上記の電圧降下ΔVwcnによって減少する金属の析出量Mnを見積もる。次に、その電圧降下ΔVwcnが生じた場合の金属の析出速度Vnを見積もる。すると、その金属の減少量を補うのに必要な第1の書込電圧の印加時間の延長時間Tnは、Tn=Mn÷Vnで求まる。従って、画素(Cm,Rn)において印加する第1の書込電圧の印加時間Tasnは、初期設定値Tに上記の延長時間Tnを加算した値T+Tn=T+Mn÷Vn=Tasnとなる。以上より、各書込対象画素において、第1の書込電圧を時間Tasnだけ印加することにより、全ての書込画素において表示色の反射率を均一(表示色の濃度を均一)にすることができる。同様の方法を用いて、第2の書込電圧、第1の消去電圧および第2の消去電圧の補正を行うことにより、全ての書込画素および消去画素において表示色の反射率を均一(表示色の濃度を均一)にすることができる。
次に、第1の実施の形態および第2の実施の形態に共通する変形例を示す。
第1基板11は、上記の石英ガラス以外に、例えば、合成樹脂、具体的には、ポリエチレンナフタレート,ポリエチレンテレフタレートあるいはポリカーボネートなどのエステル、または、酢酸セルロースなどのセルロースエステル、または、ポリフッ化ビニリデンあるいはポリテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ素ポリマー、または、ポリオキシメチレンなどのポリエーテル、または、ポリアセタール,ポリスチレン,ポリエチレン,ポリプロピレンあるいはメチルペンテンポリマーなどのポリオレフィン、または、ポリアミドイミドあるいはポリエーテルイミドなどのポリイミド、または、ポリアミドにより構成してもよい。これら合成樹脂は、容易に曲がらないような剛性基板状であってもよく、また、可とう性を有するフィルム状の構造体であってもよい。
第2基板12は、透明であっても、透明でなくてもよく、上記の石英ガラスの他に、白板ガラス、セラミックス、紙あるいは木材により構成することができる。また、この他にも、第1基板11で説明した合成樹脂により構成するようにしてもよい。なお、対向電極15が十分な剛性を有する場合には、第2基板12は設けなくてもよい。
電解質13に含まれる溶媒としては、上記のジメチルスルホシキドとγ−ブチロラクトンの混合物以外に、例えば、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、アセトニトリル、スルホラン、ジメトキシエタン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホシキド、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンあるいはこれらの混合物などが挙げられる。
電解質13に含まれる析出溶解材料としては、上記の銀イオンの他に、金属イオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ビスマスイオン,銅イオン,銀イオン,ナトリウムイオン,リチウムイオン,鉄イオン,クロムイオン,ニッケルイオンあるいはカドミウムイオンが挙げられる。その中でも特に好ましい金属イオンはビスマスイオンあるいは銀イオンであり、更に好ましいのは銀イオンである。ビスマスイオンおよび銀イオンは、可逆的な反応を容易に進めることができると共に、析出時の変色度が高く、特に、銀イオンはイオン価数が通常1であるので、イオン価数が通常3であるビスマスイオンに比べて、1原子を還元させて金属にするのに必要な電荷量が3分の1となるからである。金属イオンは、例えば、金属塩として溶媒に添加されている。金属塩としては、銀塩であれば、例えば、硝酸銀、ホウフッ化銀、ハロゲン化銀、過塩素酸銀、シアン化銀あるいはチオシアン化銀が挙げられる。金属塩には、いずれか1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
この電解質13は、また、必要に応じて支持電解質塩と着色剤と各種添加剤とを含んでいてもよい。
支持電解質塩は、電解質のイオン伝導性を高めることにより、析出溶解材料の析出溶解反応がより効果的に、かつ安定して行われるようにするためのものである。支持電解質塩としては、例えば、LiCl,LiBr,LiI,LiBF4 ,LiClO4 ,LiPF6 あるいはLiCF3 SO3 などのリチウム塩、または、KCl,KIあるいはKBrなどのカリウム塩、または、NaCl,NaIあるいはNaBrなどのナトリウム塩、または、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム塩,過塩素酸テトラエチルアンモニウム塩,ホウフッ化テトラブチルアンモニウム塩,過塩素酸テトラブチルアンモニウム塩あるいはテトラブチルアンモニウムハライド塩などのテトラアルキル四級アンモニウム塩が挙げられる。支持電解質塩にはいずれか1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
着色剤は、コントラストを向上させるためのものである。着色剤としては、例えば、無機顔料あるいは有機顔料が挙げられ、これらを単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。例えば、銀のように金属の発色が黒色の場合には、白色の隠蔽性の高い材料が好ましい。このような材料として、例えば、二酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウムあるいは酸化アルミニウムなどの無機粒子を使用することができる。また、色素を用いることもできる。色素としては、油溶性染料を用いることが好ましい。
添加剤としては、電気化学的な反応、特に金属の析出溶解反応を可逆的、かつ効率的に行うために、成長阻害剤、応力抑制剤、光沢剤、錯化剤あるいは還元剤のいずれか1種または2種以上を混合して含んでいることが好ましい。このような添加剤としては、酸素原子(O)または硫黄原子(S)を有する基を備えた有機化合物が好ましく、例えば、チオ尿素、1−アリル−2−チオ尿素、メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、クマリン、フタル酸、コハク酸、サリチル酸、グリコール酸、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、酒石酸、シュウ酸あるいはD−グルコノ−1,5−ラクトンが挙げられる。
アニオン種に起因した副反応に伴い、所望の発色以外の発色が生じる虞があるので、添加剤としては、アニオン種に起因した副反応を抑制するための還元剤または酸化剤のいずれか1種または2種以上を混合して含んでいることが好ましい。
このような還元剤としては、例えば、アスコルビン酸化合物あるいはトリアルキルアルコールアミンなどが好ましい。中でも、トリアルキルアルコールアミン種であり、トリエタノールアミンは、長期保存性および高温保存性においても優れた効果を得ることができるので好ましい。
この電解質13は、これら液状の溶媒,析出溶解材料および添加剤などからなる液状のいわゆる電解液とされていてもよいが、更に、これらを保持する高分子化合物を含み、ゲル状とされていてもよい。ゲル状とする場合、単層により構成してもよいが、複数層により構成してもよい。複数層にする場合、着色剤は複数層に含有させる必要はなく、少なくとも1層に含有させるようにすればよい。
高分子化合物としては、例えば、主骨格単位、もしくは側鎖単位、もしくはその両方に、アルキレンオキサイド、アルキレンイミン、アルキレンスルフィドの繰り返し単位を有するもの、または、これらの異なる単位を複数含む共重合物、または、ポリメチルメタクリレート誘導体、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリルあるいはポリカーボネート誘導体が好ましい。高分子化合物には、いずれか1種を用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
電解質13の厚みは、無機粒子を着色剤として含む場合、20μm〜200μmであることが好ましく、30μm〜120μmであればより好ましく、30μm〜50μmであれば更に好ましい。薄い方が電極間の抵抗が小さくなり、発色・消色時間の低減や消費電力の低下を図ることができる一方、薄すぎると着色剤の含有量が少なくなるため、白色性(光学濃度)が十分でなく、特に、20μm以下であると、機械的強度が低下してピンホールや亀裂も生じるからである。
電解質13は、例えば、スルホキシドと環状カルボン酸エステルとを混合した溶媒に析出溶解材料を溶解させたのち、これに必要に応じて、支持電解質塩,着色剤および各種添加剤を添加することにより製造することができる。また、ゲル状とする場合には、この電解液と高分子化合物とを混合して乾燥させることにより製造することができる。また、この電解液を高分子化合物の出発原料であるモノマーあるいはオリゴマーと混合し、加熱法あるいはUV照射法により、重合あるいは架橋させることにより製造することもできる。なお、この場合、効率的にゲル化を促進させるために、架橋助剤や光増感剤などを併用してもよい。
透明電極14は、上記のITO(Indium Tin oxide)の他に、酸化インジウム(In2 O3 )、あるいは酸化スズ(SnO2 )、または、ITO、酸化インジウム(In2 O3 )、あるいは酸化スズ(SnO2 )にスズあるいはアンチモン(Sb)などをドーピングしたものにより構成されることが好ましい。また、酸化マグネシウム(MgO)あるいは酸化亜鉛(ZnO)などにより構成してもよい。
対向電極15は、上記の銀(Ag)の他に、電気化学的に安定な金属、中でも、金(Au),白金(Pt),クロム(Cr),アルミニウム(Al),コバルト(Co),パラジウム(Pd),ビスマス(Bi)からなる群のうちの少なくとも1種により構成されることが好ましい。また、析出させる金属と同じ金属により構成するようにすれば、電気化学的により安定な電極反応を実現できるのでより好ましい。この他にも、主反応に用いる金属を予めあるいは随時十分に補うことができれば、カーボンにより構成するようにしてもよい。カーボンを使用することで、対向電極15の低価格化を図ることができるからである。また、透明電極14と同じ透明導電膜により構成するようにしてもよい。
[実施例]
以下に、本発明の実施例に係る電気化学表示装置の概略構成を説明する。
図14は、実施例および比較例に用いた透明電極と対向電極の構成を示したものである。透明電極は、厚さ0.7mmの石英ガラス基板上に、ストライプ状にITO膜を公知の 方法により成膜した。対向電極は、厚さ0.7mmの石英ガラス基板上に、ストライプ状に銀を公知の方法により成膜した。電極本数は、それぞれ40本で、電極幅は0.3mm、電極ピッチは0.6mmとした。
電解質は、ジメチルスルホシキド(DMSO)とγ−ブチロラクトン(γBr)を6:4の割合で混合した溶媒に析出溶解材料として0.5mol/lのヨウ化銀(AgI)、支持電解質塩として0.75mol/lのヨウ化リチウム(LiI)を溶解されたものである。この電解 質に対して、3官能ポリーテル基からなるマクロモノマーTA140(第一工業製薬社製)と着色材である二酸化チタン(TiO2)を重量比で5:1:6の割合で添加し、これを均一に分散させた。その後、上記のマクロモノマーTA140に対して、架橋材として過酸化物を重量比で1:0.02〜0.05の割合で添加した。電極上にギャップ形成材として、50μmの真絲球を敷設し、両電極を重ね合わせた後、両電極間の空間内に上記の電解質を真空注入法を用いて注入した。その後、重ね合わせた端面を所望な部材で封じた後、これを70度〜100度で数分〜10分程度加熱し、架橋化反応を行った。
本実施例では、図14に示した構成の電気化学表示素子に対して、図6(書き込み)、図7(消去)に示す駆動波形により駆動を行った。なお、書き込み時の駆動電圧波形において、最初に選択的に書き込み対象画素に書き込み電圧(−Va=−(Vwc+Vwr))を印加することにより金属の析出核を形成するのに要する時間Taを1200msec、書き込み対象画素に書き込みを完了させるために金属を追加析出させる電圧Vwを印加するのに要する時間Tsを1200msec、透明電極の抵抗率による電圧降下が考慮された選択電圧Vwrnを1ラインごとにアドレッシングするのに要する時間Tsaを30msecとした。また、消去時の駆動電圧波形において、最初に消去対象画素に消去電圧Veを印加するのに要する時間Teを1200msec、選択的に消去対象画素に残存している析出金属を追加溶解させる電圧Vs(=Vec+Ver)を印加するのに要する時間Tsを1200msec、選択電圧Vernを1ラインごとにスキャンするのに要する時間Tssを30msecとした。
上記において、透明電極の抵抗率による電圧降下が考慮される。具体的には、透明電極駆動部から最も近い画素における信号電圧Vwc1と最も遠い画素における信号電圧Vwc40の差分(Vwc40−Vwc1)を(透明電極のライン数−1)で割った値を傾きとし、透明電極駆動部 から対向電極へ出力される選択電圧Vwrを切片とする一次関数により考慮される。 VwrnおよびVernは、補正後の対向電極駆動部から対向電極へ印加される選択電圧である。
Vwrn=Vwr+n×(Vwc40−Vwc1)/39
Vern=Ver+n×(Vec40−Vec1)/39(但し、n=1〜40)
比較例では、図14に示した構成の電気化学表示素子に対して、図8(書き込み)、 図9(消去)に示す駆動波形により駆動を行った。なお、書き込み時の駆動電圧波形において、最初に選択的に書き込み対象画素に書き込み電圧(−Van=−(Vwcn+Vwr)= −(Vwc+Vwr)+ΔVwcn )を印加することにより金属の析出核を形成するのに要する時間Taを1200msec、書き込み対象画素に書き込みを完了させるために金属を追加析出させる電圧Vwを印加するのに要する時間Tsを1200msec、選択電圧Vwrを1ラインごとにアドレッシングするのに要する時間Tsaを30msecとした。また、消去時の駆動電圧波形において、最初に消去対象画素に消去電圧Veを印加するのに要する時間Teを1200msec、選択的に消去対象画素に残存している析出金属を追加溶解させる電圧(Vs=Vecn+Ver=(Vec+Ver)−ΔVecn )を印加するのに要する時間Ts を 1200msec、選択電圧Vernを1ラインごとにスキャンするのに要する時間Tss を30msecとした。もちろん、書き込み時の駆動電圧波形および消去時の駆動電圧波形において透明電極の抵抗率の影響は何ら考慮されていない。
図15〜図20は、実施例と比較例において書き込み時の駆動電圧波形を画素(C1,R1)および(C1,R40)に印加したときの反射率の変化の様子を示す。実施例1と比較例1は透明導電膜の抵抗率が10オーム/□の場合の結果を示し、実施例2と比較例2は透明導電膜の抵抗率が50オーム/□の場合の結果を示す。実施例3と比較例3は透明導電膜の抵抗率が100オーム/□の場合の結果を示す。
比較例では、透明導電膜の抵抗率が最も低い10オーム/□を用いた比較例1において 、接合部位に最も近い(C1,R1)と最も遠い(C1,R40)の書き込み時の応答性は(C1,R1)の方が(C1,R40)よりも若干速く、また、最終的な着色時の反射率も(C1,R1)の方が(C1,R40)よりも若干低い。透明導電膜の抵抗率を10オーム/□、50オーム/□、100オーム/□と大きくするに従って、透明電極駆動部に最も近い(C1,R1)と最も遠い(C1,R40)の最終的な着色時の反射率の差がより大きくなり、また、その着色濃度自体も薄くなってしまう。
実施例では、透明導電膜の抵抗率が最も低い10オーム/□を用いた実施例1において 、透明電極駆動部に最も近い(C1,R1)と最も遠い(C1,R40)の書き込み時の応答性、ならび に最終的な着色時の反射率もほぼ同じとなった。さらに、比較例1〜3で見られたように、透明導電膜の抵抗率を10オーム/□、50オーム/□、100オーム/□と大きくする に従って、透明電極駆動部に最も近い(C1,R1)と最も遠い(C1,R40)の最終的な着色時の反 射率の差をほぼなくすことができた。なお、クロストークならびに表示異常の現象は見られず、1万サイクルの書き換え試験をしても、顕著な劣化は見られなかった。
以上より、実施例のほうが、圧倒的に、書込画素および消去画素の表示色の反射率を画面全体で均一にすることができる。
以上、2つの実施の形態および1つの実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は、これらに限定されず、種々の変形が可能である。
例えば、本実施の形態では、書込対象画素について、第1の選択電圧を対向電極に印加して、透明電極と対向電極の間に書込しきい電圧以上の電圧を印加したのち、第2の選択電圧を対向電極に印加して、透明電極と対向電極の間に書込しきい電圧より小さい電圧を印加しているが、個々の画素について異なる間合い(タイミング)で書込電圧を印加してもよい。
また、消去対象画素について、第3の選択電圧を対向電極に印加して、透明電極と対向電極の間に消去しきい電圧より小さい電圧を印加したのち、第4の選択電圧を対向電極に印加して、透明電極と対向電極の間に消去しきい電圧以上の電圧を印加しているが、個々の画素について異なる間合い(タイミング)で書込電圧を印加してもよい。
また、第1の消去電圧が、消去しきい電圧以上であってもよい。また、第2の消去電圧が消去しきい電圧より小さくてもよい。
10…電気化学表示素子、11…第1の基板、12…第2の基板、13…電解質、14…透明電極、15…対向電極、21,121…信号制御部、22,122…透明電極駆動部、22A,122A…画像データ一次保存部、22B,122B…信号電圧パルス設定部、22C,122C…信号電圧パルス駆動部、23,123…対向電極駆動部、23A,123A…対向電極選択部、23B,123B…選択電圧パルス設定部、 23B−1,123B−1…距離判定部、23B−2…電圧補正値算定部、23B−3,123B−3…補正後の選択電圧パルス設定部、122B−1…印加時間補正値取得部、122B−2…補正後信号電圧パルス設定部、123B−2…印加電圧補正値算定部、23C,123C…選択電圧パルス駆動部。