JP4565888B2 - 密閉型開閉装置 - Google Patents
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Description
絶縁碍子と絶縁ロッドに要求される性能には、電路での通電時の電磁振動や開閉駆動に伴う機械衝撃に耐える機械強度と、電路と接地電位部(タンク面)の間の電気絶縁の二つがあげられる。
さらに、電気絶縁性能では、要求項目が多岐に及ぶが、中でも耐電圧(両端への電圧印加に対しどの電圧まで耐えるか)は部分放電特性や絶縁抵抗等と並んで重要な性能である。以下、耐電圧の観点から従来の絶縁碍子および絶縁ロッドについて説明する。
(1)のガス種とガス圧が異なれば耐電圧が変化することは容易に理解できよう。(2)のトリプルジャンクションでは高電界が形成されやすく、全路放電のトリガとなる放電(一例として、ストリーマ放電)が同部から進展しやすいため、同部電界の低減が重要とされている。(3)の絶縁物形状は、例えばトリガ放電の進展を物理的に阻止できるバリヤ、または、ひだを備えた碍子なら、耐電圧が向上すると考えられる。この他にも、絶縁物の比誘電率、碍子の高さも耐電圧に影響を与える要因であるが、どちらもトリプルジャンクション電界に影響を与えるものと理解できる。
ストレート形状の利点は形状が単純なので製作しやすい点である。一方、ひだを設ける利点は、絶縁物の沿面距離が大きくなるので、表面が汚損しても碍子両端の絶縁抵抗の低下を防止できる点である。
絶縁ロッドも、絶縁碍子と同様で、ストレート形状か、ひだ付き形状のどちらかである。
一方、絶縁バリヤ形状の採用といった、絶縁物形状の変更は行っていない。これはその対策を行わなくても、上記第一および第二の対策で十分な効果が上がっていたからである。
なお、ひだ付き形状の絶縁碍子にひだでは、くぼみが浅い、あるいは、ひだの高さが不十分のため、絶縁抵抗維持は可能でも、トリガ放電進展阻止は困難である。そのため耐電圧性能向上は期待できない。
ここで、空気と窒素の他にも候補ガスは挙がっており、例えば、二酸化炭素(温室効果ガスではあるが、温室効果の影響力を示す温室効果係数が小さいので使用される可能性が無くはない)、純酸素、酸素と窒素の混合ガス、窒素と二酸化炭素の混合ガス、酸素と窒素と二酸化炭素の混合ガスが挙げられる。以下、煩雑になるので代替ガスとしては空気と窒素を記載し、説明する。
なお、絶縁物のトリプルジャンクション電界の緩和策は既にSF6向け絶縁碍子で採用されており、空気や窒素を使用した場合にもこれらの対策が盛り込まれることが前提となる。
以上に述べたように、ガス圧向上、トリプルジャンクションの電界緩和と併せて別の新たな対策を図ることが必要であるが、その具体策が提案されていないのが現状である。
この発明による実施の形態1を図1から図6について説明する。図1は実施の形態1における密閉型開閉装置の全体構成を示す縦断面図である。図2は図1のII−II線における断面図である。図3は実施の形態1における固体絶縁物形状の一例を示す縦断面図である。図4は実施の形態1における固体絶縁物形状の他の例を示す縦断面図である。図5は実施の形態1における固体絶縁物形状を形態別に例示する説明図である。図6は実施の形態1における大地間固体絶縁物の両側電極の変形例を示す縦断面図である。
図1において、ケーブルヘッド1は図示しないケーブルに、ケーブルヘッド1の下方から接続されている。ケーブルヘッド1はスリーポジション断路器2に接続されている。スリーポジション断路器2は、ケーブル耐圧点検端子3、避雷器4、接地開閉器5への接続状態を変えることができる。例えば図1は開閉装置の運転状態の接続を示しており、避雷器4と接地開閉器5との間は閉極しているが、ケーブル耐圧点検端子3との間は開極している。
一方、ケーブル耐圧点検時は、ケーブル耐圧点検端子3との間を閉極とし、それ以外は開極としてケーブルのみに電圧を印加できるようにする。スリーポジション断路器2の開閉駆動力は紙面手前方向の密閉容器外から軸回転力として与えられるが、その際に絶縁ロッド20で相間・対地間を絶縁しながら回転力を伝達する。
以上で単相分の電路が構成され、これを紙面奥行き方向に三列配置して三相構造としている。三相分をひとつの密閉容器10の内部に収納している。
そして、この図では線路側断路器可動子5aに密閉容器10の外部から回転駆動力を伝達しつつ、相間と対地間を絶縁する絶縁ロッド50aと50bが示されている。絶縁ロッド50aは相間絶縁用であり、絶縁ロッド50bは対地間絶縁用である。図示しないが、スリーポジション断路器2の駆動に用いる絶縁ロッド20も、同一の形状の絶縁ロッド20aと20bで構成されている。
この発明による実施の形態では、密閉型開閉装置の電路を支持固定する絶縁碍子、および密閉容器外部から内部に動力を伝達する絶縁ロッドに対し、その表面に先行放電の伸展を阻止する絶縁バリヤを設けた。これにより絶縁バリヤがない場合に比べて耐電圧が向上する。その結果、密閉容器内のガス圧上昇を最小限にとどめ、容器コストと重量増大を抑制できる。また、絶縁碍子や絶縁ロッドの長さ縮小が可能になり、製品≧全体の寸法縮小が可能になるとともに、絶縁信頼性の高い製品が得られる。
絶縁バリヤ53には、高電圧印加部分HP側に位置する環状の絶縁物表面部分S1および接地電位部分LP側に位置する環状の絶縁物表面部分S2が形成されている。接地電位部分LP側に位置する絶縁物表面部分S2は固体絶縁物50の径方向における外方に向かって図示上方すなわち高電圧印加部分HP側に傾斜する直線L2に沿って延在する。直線L2は垂直線Vと時計回りになす角度θ1がθ1≧45°となるように設定されている。すなわち、絶縁物表面部分S2の延在方向は高電圧印加部分HPから接地電位部分LPに向かう電界方向に平行な垂直線Vとなす角度θ1がθ1≧45°に確保されるように設定されている。そして、高圧トリプルジャンクションTの垂直位置を示す高圧トリプルジャンクション位置Aはバリヤの高圧電極側最上位面Bと同じか上に設定されている。
このように、絶縁物表面部分S2の延在方向が高電圧印加部分HPから接地電位部分LPに向かう電界方向となす角度θ1がθ1≧45°となるように設定されることにより、絶縁物表面部分S2における表面の電界強度は確実に低減され、絶縁物表面部分S2における先行放電の伸展は的確に阻止される。
また、絶縁バリヤ53の高電圧印加部分HP側に位置する環状の絶縁物表面部分S1は接地電位部分LP側に位置する絶縁物表面部分S2と水平面を対称面とする面対称位置に形成されており、絶縁物表面部分S2におけると同様に、絶縁物表面部分S1における表面の電界強度も確実に低減され、絶縁物表面部分S1における先行放電の伸展は的確に阻止される。
図5には、(1)〜(10)までの10種類の形状の絶縁物が示されているが、いずれにも前記した先行放電の進展を阻止するための絶縁バリヤが備わっている。いずれも紙面上方が高圧側である。
これを改善したものが形状(5)、(6)、(7)で、高さ寸法を縮小しながら耐電圧も高くできるという効果がある。形状(2)、(3)、(4)はくぼみの深さの面では形状(5)〜(10)に及ばないが、その分構造が単純なため、製作が容易になり製造コストが抑制できるという効果がある。
形状(2)、(3)、(5)、(6)、(8)、(9)の碍子の直径よりも高圧電極寸法が大きい場合、バリヤ先端と高圧電極の距離が非常に短くなってしまうことが予想される。その場合、高圧電極側のトリプルジャンクションから放電が発生せずに、高圧電極と絶縁バリヤの最接近部から放電が発生し、バリヤの外表面を経由して全路放電する可能性が考えられる。これでは本来期待するバリヤ効果が期待できない。そこで、形状(1)、(4)、(7)、(10)は、バリヤが碍子の概略径方向に伸びる形状とし、バリヤ先端と高圧電極の距離を大きくとれるようにしている。その結果、本来想定するトリプルジャンクションTから放電が開始するようになり、狙い通りのバリヤ効果が現れるようになる。
同図は図5中の形状(6)を例にしたものであるが、図6(a)の埋め金なし、図6(b)の高圧側のみ埋め金51、図6(c)の両側に埋め金51,52〔図5の形状(6)にあたる〕、図6(d)の両極埋め金51,52に加え高圧側に電界緩和シールド51a設置、図6(e)の両極埋め金51,52に加え両側に電界緩和シールド51a,52a設置、といったバリエーションがある。このバリエーションは図5中の他の形状にも応用することができる。
この発明による実施の形態2を図1および図2ならびに図7および図8について説明する。図1は実施の形態2における密閉型開閉装置の全体構成を示す縦断面図である。図2は図1のII−II線における断面図である。図7は実施の形態2における固体絶縁物形状の例を形態別に示す説明図である。図8は実施の形態2における固体絶縁物形状の他の例を形態別に示す説明図である。
この実施の形態2において、ここで説明する特有の構成以外の構成については、先に説明した実施の形態1における構成と同一の構成内容を具備し、同様の作用を奏するものである。図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
両図記載の各形状に共通の効果から説明する。全形状共に、バリヤの根本部分におけるバリヤの伸びる方向は、低圧電極と概略反対方向である。この場合、高圧電極のトリプルジャンクションで発生した先行放電は、一度低圧電極側または径方向に進展する。しかし、それ以上放電が進展するには放電路は電位傾度に逆らう形でバリヤ先端まで大きく迂回しなければならない。また、低圧電極側または径方向に放電が進展した時点で、高圧電極と同極性の電荷がバリヤの根本付近の空間に蓄積され、高圧電極周辺の電界を緩和する。このために放電進展に必要な電界が得にくくなり、一層全路放電への進展が困難になる。以上から、両極間の耐電圧が向上するという効果がある。
これを改善したものが列cで、高さ寸法を縮小しながら耐電圧も従来構造より高くできるという効果がある。列aはくぼみの深さの面では列b、列cに及ばないが、その分構造が単純なため、製作が容易になり製造コストが抑制できるという効果がある。
高圧電極を埋め込み構造にすると、その分トリプルジャンクション電界を低減できるので耐電圧向上が容易になるという効果がある。埋め込み構造にしない場合はトリプルジャンクション電界の低減効果は埋め込み構造には劣るが、その分製作が容易であり、低コスト化できるという効果がある。列eと列gのように内側沿面にもバリヤを配置すると、絶縁物の内側沿面の耐電圧も向上できるという効果がある。列dと列eは列eと列gに比べると内側の沿面耐電圧は劣るが、その分製作が容易であり低コスト化できるという効果がある。
また、図7と図8では図示していないが、絶縁物の内側表面にのみ絶縁バリヤを設けた形状の碍子を用いてもよい。この場合、外側の沿面耐電圧向上はあまり期待できないが、内側の沿面耐電圧は向上する。どうしても内側沿面の方が外側よりも短くなる構成の場合、本構成によるバリヤ設置が効果的である。
この発明による実施の形態3を図1および図2ならびに図9について説明する。図1は実施の形態3における密閉型開閉装置の全体構成を示す縦断面図である。図2は図1のII−II線における断面図である。図9は実施の形態3における固体絶縁物形状の例を形態別に示す説明図である。
この実施の形態3において、ここで説明する特有の構成以外の構成については、先に説明した実施の形態1または実施の形態2における構成と同一の構成内容を具備し、同様の作用を奏するものである。図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
列yのようなくぼみの付いたバリヤ形状にすると、高圧電極側のトリプルジャンクションで発生した先行放電は、一度反対電極側または径方向に向かって進展する。しかし、それ以上放電が進展するには放電路は電位傾度に逆らう形でバリヤ先端まで大きく迂回しなければならない。
また、低圧電極側に放電が進展した時点で、高圧電極と同極性の電荷がバリヤの根本付近の空間に蓄積され、高圧電極周辺の電界を緩和する。このために放電進展に必要な電界が得にくくなり、一層全路放電への進展が困難になる。以上から、両極間の耐電圧が向上するという効果がある。列zの形状なら、くぼみ付きバリヤの他にもう一枚バリヤが装着されているため、さらに耐電圧向上効果が期待できる。列xは列yに比べると耐電圧上昇効果は小さいが、形状が単純な分だけ製作は容易になりコスト低減効果が大きくなる。
この発明による実施の形態4を図1および図2ならびに図10について説明する。図1は実施の形態4における密閉型開閉装置の全体構成を示す縦断面図である。図2は図1のII−II線における断面図である。図10は実施の形態4における固体絶縁物形状の例を示す縦断面図である。
この実施の形態4において、ここで説明する特有の構成以外の構成については、先に説明した実施の形態1から実施の形態3までのいずれかにおける構成と同一の構成内容を具備し、同様の作用を奏するものである。図中、同一符号は同一または相当部分を示す。
固体絶縁物50に設けられたバリヤ53の配置により、高圧電極側のトリプルジャンクションTで発生した先行放電は、一度接地電極側に向かって進展する。しかし、それ以上放電が進展するには放電路は電位傾度に逆らう形でバリヤ先端まで大きく迂回しなければならない。また、接地電極側に放電が進展した時点で、高圧電極と同極性の電荷がバリヤ53の根本付近の空間に蓄積され、高圧電極周辺の電界を緩和する。このために放電進展に必要な電界が得にくくなり、一層全路放電への進展が困難になる。以上から、高圧電極部と密閉容器10の間の耐電圧が向上するという効果がある。
Claims (2)
- ガスを充填した密閉容器に遮断部および断路部を含む開閉装置機能部が収納された密閉型開閉装置において、前記開閉装置機能部の開閉操作のための操作力を伝達しつつ対地間との絶縁を図る固体絶縁物に先行放電を阻止する表面形状を持つ前記固体絶縁物と同じ材質の絶縁バリヤが接地電位部分よりも電圧印加部分に近い位置に設けられているものであって、前記絶縁バリヤの電圧印加部分側表面部分の延在方向が前記固体絶縁物の絶縁物本体の外径方向へ接地電位部分と逆方向に延びるものであることを特徴とする密閉型開閉装置。
- 前記固体絶縁物の形状が概略円筒である場合に、前記固体絶縁物の外表面に前記絶縁バリヤが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の密閉型開閉装置。
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