JP4565859B2 - ポンプ - Google Patents
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Description
本発明のポンプは、排気口圧力を大気圧とするドライ真空ポンプに好適に使用可能である。
前記渦流ポンプとして次の技術が公知である。
(J01)特許文献1(特許第3045418号明細書)記載の技術
特許文献1には、円錐状のロータ本体の外周面に階段状に形成されたリング状段差及び各リング状段差の外周の角部に形成された複数の渦流翼(角部渦流翼)により構成された渦流翼列を有する渦流ロータと、ステータ本体の円錐状内周面に階段状に形成されたリング状段差及び前記リング状段差に形成されたリング状流路(渦流溝)を有する渦流ステータと、を有する渦流ポンプが記載されている。特許文献1記載の渦流ポンプの渦流翼は、全て角部渦流翼により構成されている。
特許文献2には、特許文献1と同様の角部渦流翼のみを有する渦流ロータと、リング状流路が形成された渦流ステータとを有する渦流ポンプが記載されている。また、角部渦流翼に替えて、各リング状段差の外周の角部にリング状流路側に突出するように形成された突出渦流翼のみを有する渦流ロータも記載されている。さらに、前記渦流ポンプの気体移送方向上流側に遠心ポンプ(ターボ分子ポンプ)が配置された複合型真空ポンプも記載されている。
特許文献3には、同心円状に複数のリング状流路が形成された円板状のステータと、前記リング状流路に突出して形成された突出渦流翼のみにより構成されたリング状渦流翼列が前記同心円状のリング状流路に対応して複数段形成されたロータと、を有する渦流ポンプが記載されている。また、特許文献3には、渦流ポンプの気体移送方向上流側にホルウェック型の分子吸収ポンプが配置された複合型真空ポンプが記載されている。
特許文献4には、円筒状のステータ本体の内周面にリング状に形成されたリング状溝の外周部に形成された渦流溝を有するステータと、前記リング状溝に対応して配置された複数の円板状ロータ本体の外周部に特許文献1と同様の角部渦流翼が形成されたロータと、を有する渦流ポンプが記載されている。また、特許文献4には、渦流ポンプの気体移送方向上流側にネジ溝式ポンプが配置された複合型真空ポンプが記載されている。
前記特許文献1、2記載の技術(J01),(J02)のように、階段状のロータを使用する場合、部品製作や組立は容易となるが、円筒状の構造のため、やはり渦流ポンプが軸方向に長くなり、渦流ポンプが大型化してしまう。
(O01)圧縮・排気性能を高め、ロータの駆動力を抑えつつ渦流ポンプを小型化すること。
(O02)製作性、組立性を高め、長寿命のポンプを提供すること。
次に、前記課題を解決した本発明を説明するが、本発明の要素には、後述の実施の形態の具体例(実施例)の要素との対応を容易にするため、実施例の要素の符号をカッコで囲んだものを付記する。また、本発明を後述の実施例の符号と対応させて説明する理由は、本発明の理解を容易にするためであり、本発明の範囲を実施例に限定するためではない。
前記技術的課題を解決するために第1発明のポンプ(P,P′,P″)は、下記の構成要件(A01)〜(A04)を備えたことを特徴とする。
(A01)回転駆動する回転軸(1)を回転可能に支持するハウジング(2,72)、
(A02)前記回転軸(1)に固着され且つ前記ハウジング(2,72)に対して回転自在に支持された円板状のロータ本体(104)と、前記ロータ本体(104)の端面に半径の異なる複数の同心円に沿って所定の間隔で配置された複数の渦流翼(111,113)により構成された複数のリング状渦流翼列(112,116)と、を有する渦流ロータ(101、102)、
(A03)前記ハウジング(2,72)に回転不能に支持されたステータ本体(73)と、複数の前記リング状渦流翼列(112,116)に対応して前記ステータ本体(73)に形成された複数のリング状流路(76〜79)とを有し、前記渦流ロータ(101、102)回転時に前記リング状流路(76〜79)内で渦流を発生させることにより気体を圧縮して排出する渦流ステータ(71)、
(A04)前記ロータ本体(104)の端面から前記リング状流路(76)内に突出して形成された板状の突出渦流翼(111)がリング状に配置された第1のリング状渦流翼列(112)と、前記円板状のロータ本体(104)の放射方向に対して内周側に比べて外周側が階段状に低く形成されたリング状の段差部(107〜109)に形成され且つ前記円板状のロータ本体の放射方向に延びる段差部渦流翼(113)がリング状に配置された第2のリング状渦流翼列(116)と、を有する前記複数のリング状渦流翼列(112,116)。
前記構成要件(A01)〜(A04)を備えた第1発明のポンプ(P,P′,P″)では、渦流ロータ(101、102)のロータ本体(104)は、ハウジング(2,72)に回転自在に支持された回転軸(1)に固着されている。円板状のロータ本体(104)の端面には、半径の異なる複数の同心円に沿って所定の間隔で配置された複数の渦流翼(111,113)により構成されたリング状渦流翼列(112,116)が、複数配置されている。
本発明の発明の形態1のポンプ(P,P′,P″)は、前記構成要件(A01)〜(A04)を備えた第1発明のポンプ(P,P′,P″)において、下記の構成要件(A06)を備えたことを特徴とする。
(A06)同心円状に配置された複数の前記リング状渦流翼列(112,116)の外周側且つ気体移送方向上流側に、前記突出渦流翼(111)を有する前記第1のリング状渦流翼列(112)を配置し、内周側且つ気体移送方向下流側に前記段差部渦流翼(113)を有する前記第2のリング状渦流翼列(116)を配置した前記渦流ロータ(101、102)。
前記構成要件(A06)を備えた発明の形態1のポンプ(P,P′,P″)では、前記リング状渦流翼列(112,116)の外周側且つ気体移送方向上流側には、前記圧縮性能が比較的高く且つ前記駆動抵抗が大きな突出渦流翼(111)を有する前記第1のリング状渦流翼列(112)が配置されている。また、内周側且つ気体移送方向下流側には、前記圧縮性能が比較的低く且つ前記駆動抵抗が小さな段差部渦流翼(113)を有する前記第2のリング状渦流翼列(116)が配置されている。
本発明の発明の形態2のポンプ(P,P′,P″)は、前記第1発明または発明の形態1のポンプ(P,P′,P″)において、下記の構成要件(A07),(A08)を備えたことを特徴とする。
(A07)前記ステータ本体(73)の表裏両端面に形成された前記リング状流路(76〜79)、
(A08)前記ステータ本体(73)の表裏両端面に対向して配置された一対の前記渦流ロータ(101、102)。
前記構成要件(A07),(A08)を備えた発明の形態2のポンプ(P,P′,P″)では、前記リング状流路(76〜79)は、前記ステータ本体(73)の表裏両端面に形成されている。そして、前記渦流ロータ(101、102)は、前記ステータ本体(73)の表裏両端面に対向して配置されている。
したがって、渦流ステータ(71)を分割する必要が無く、渦流ステータ(71)の表裏両端面に対向するように渦流ロータ(101、102)を配置することによりポンプ(P,P′,P″)を組み立てることができるので、ポンプ(P,P′,P″)の製作性及び組立性を高めることができる。
本発明の発明の形態3のポンプ(P,P′,P″)は、発明の形態2のポンプ(P,P′,P″)において、下記の構成要件(A09)を備えたことを特徴とする。
(A09)前記ステータ本体(73)の表面及び裏面のいずれか一面側に形成された前記リング状流路(76a,77b,78a,79b)の気体移送方向下流端と、前記ステータ本体(73)の表面及び裏面のいずれか他面側に形成された前記リング状流路(76b,77a,78b,79a)の気体移送方向上流端とを接続する連絡流路(88)を有する前記渦流ステータ(71)。
前記構成要件(A09)を備えた発明の形態3のポンプ(P,P′,P″)では、前記渦流ステータ(71)には、前記ステータ本体(73)の表面及び裏面のいずれか一面側に形成された前記リング状流路(76a,77b,78a,79b)の気体移送方向下流端と、前記ステータ本体(73)の表面及び裏面のいずれか他面側に形成された前記リング状流路(76b,77a,78b,79a)の気体移送方向上流端とを接続する連絡流路(88)が設けられている。
本発明の発明の形態4のポンプ(P,P′,P″)は、前記第1発明、発明の形態1〜発明の形態3のいずれかのポンプ(P,P′,P″)において、下記の構成要件(A010)を備えたことを特徴とする。
(A010)前記ステータ本体(73)内部に配置されたポンプ冷却機構(93)。
前記構成要件(A010)を備えた発明の形態4のポンプ(P,P′,P″)では、ステータ本体(73)内部にポンプ冷却機構(93)が配置されている。したがって、渦流ステータ(71)を直接ポンプ冷却機構(93)で冷却できるので、冷却効率が高くなる。さらに、リング状流路(76〜79)を移送される気体を、リング状流路(76〜79)の壁面から冷却することができるので、気体の体積を減少させることができ、排気性能を向上させることができる。
本発明の発明の形態5のポンプ(P,P′,P″)は、前記第1発明、発明の形態1〜発明の形態4のいずれかのポンプ(P,P′,P″)において、下記の構成要件(A011)を備えたことを特徴とする。
(A011)前記リング状流路(76〜79)の気体移送方向上流端に形成された吸気口(74)の気体移送方向上流側に配置されたネジ溝式ポンプ(SP)。
前記構成要件(A011)を備えた発明の形態5のポンプ(P,P′,P″)では、前記吸気口(74)の気体移送方向上流側にネジ溝式ポンプ(SP)が配置されている。したがって、ネジ溝式ポンプ(SP)が組み合わされた複合型ポンプ(P,P′,P″)により、排気できる真空度を高めることができる。
本発明の発明の形態6のポンプ(P,P′,P″)は、前記第1発明、発明の形態1〜発明の形態5のいずれかのポンプ(P,P′,P″)において、下記の構成要件(A012)を備えたことを特徴とする。
(A012)前記リング状流路(76〜79)の気体移送方向上流端に形成された吸気口(74)の気体移送方向上流側に配置されたターボ分子ポンプ(TMP)。
前記構成要件(A012)を備えた発明の形態6のポンプ(P,P′,P″)では、前記吸気口(74)の気体移送方向上流側にターボ分子ポンプ(TMP)が配置されている。したがって、ターボ分子ポンプ(TMP)が組み合わされた複合型ポンプ(P,P′,P″)により排気できる真空度を高めることができる。
(E01)圧縮性能及び排気性能を高め、ロータの駆動力を抑えつつ渦流ポンプを小型化することができる。
(E02)製作性、組立性を高め、長寿命のポンプを提供することができる。
(E03)ステータの一面側に形成されたリング状流路と他面側に形成されたリング状流路との間を接続する連絡流路を設けることにより、流路の全長を長くすることができ、圧縮性能を高めつつ外径を小さくすることができる。
(E04)渦流ステータを冷却するポンプ冷却機構により、移送される気体を冷却して体積を減少させることができるので、排気性能を高めることができる。
(E05)気体移送方向上流側に真空ポンプを配置することにより、排気可能な真空度を高めることができる。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、上下方向をZ軸方向とし、矢印Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、上方、下方、または、上側、下側とする。
図2は本発明の実施例1の複合型真空ポンプの断面説明図であり、軸受へのグリス供給路及びパージ用ガス通路を説明する断面説明図である。
図1、図2において、本発明の実施例1のポンプとしての複合型真空ポンプPは、上側(+Z側、気体移送方向上流側)の複合型ターボ分子ポンプ部P1と、複合型ターボ分子ポンプ部P1の下側(−Z側、気体移送方向渦流側)にボルトで連結された渦流ポンプ部P2と、前記渦流ポンプP2の下側にボルトで連結された下部ベアリング支持部材P3とを有している。また、前記複合型真空ポンプPは、前記下部ベアリング支持部材P3のベアリングP4により下端部が回転可能に支持され且つ、前記複合型ターボ分子ポンプ部P1及び渦流ポンプ部P2を貫通する回転軸1を有している。
図1、図2において、前記複合型ターボ分子ポンプ部P1は、上端にポンプ吸気口2aが形成された円筒状のハウジング2を有している。前記ハウジング2の内側には円筒状のインナハウジング3が設けられている。前記インナハウジング3は、上部(+Z側部分、気体移送方向上流側部分)に配置された静翼支持部材3aと、下部(−Z側部分、気体移送方向下流側部分)に配置されたネジ溝式ポンプインナハウジング3bとを有している。そして、前記静翼支持部材3aには、内側に突出する複数の静翼4が支持されている。
図4は、複合型ターボ分子ポンプ部のベース部材の冷却水路及びパージ用ガス通路を説明する平面図である。なお、図3、図4において、グリス供給路の図示は省略している。また、図4において冷却水路及びガス通路以外の部材形状等の図示は省略している。
前記符号51、52、54〜59が付された水路により複合型ターボ分子ポンプ冷却水路W(図1、図4参照)が構成されている。
前記ガス供給路53、連結ガス通路62、放射状ガス通路61及びガス排出路63、下側ガス供給路64等によりパージ用ガス通路GSが構成されている。
なお、図1、図2において、前記複合型ターボ分子ポンプ冷却水路Wやパージ用ガス通路GS等を工具により形成する際に必要な通路であって、複合型ターボ分子ポンプ冷却水路Wやパージ用ガス通路GSを構成しない通路には、封止栓66が装着されている。
(渦流ステータ)
図5は実施例1の複合型真空ポンプの渦流ポンプ部の説明であり、図5Aは図5BのVA−VA線断面図、図5Bは渦流ポンプ部の縦断面説明図である。
図6は渦流ポンプの渦流ステータの説明図であり、図6Aは平面図、図6Bは図6AのVIB−VIB線断面図である。
したがって、渦流ロータ回転時に前記渦流ポンプ吸気口74から流入した気体は、図7の(1)〜(8)に示す順に、各流路76〜89を流れ、排気口92に排気される。
前記符号76〜91に示す各流路により実施例1の渦流ステータの渦流流路(76〜91)が構成されている。
なお、前記渦流ステータ71等を冷却する構成は、前記各冷却水路(冷却機構)93、94と冷却水による構成に限定されず、従来公知の種々の冷却機構を使用可能であり、各パイプの形状も変更可能である。
図1において前記渦流ステータ本体73の上下両端面に対向して上下一対の渦流ロータ101、102が配置されている。前記渦流ロータ101、102は、回転軸1に固着されており、上側渦流ロータ101及び下側渦流ロータ102の上下方向の位置は、上側渦流ロータ101及び下側渦流ロータ102間に挿入され、回転軸1に固着された位置決め用スペーサ103により位置決めされている。
図1、図5、図8において、前記渦流ロータ101、102は、円板状のロータ本体104と、前記ロータ本体104の一端面(下面または上面)から前記第1リング状流路76側に突出して形成されたリング状の翼支持部106と、翼支持部106の内周側に同心円状に各リング状流路77〜79側に突出して形成された第1リング状段差部107、第2リング状段差部108及び第3リング状段差部109とを有している。
図8、図9において、前記翼支持部106には、前記第1リング状流路76a、76b内に突出する突出渦流翼(渦流翼)111が支持されている。図8に示すように前記突出渦流翼111は、リング状の翼支持部106上にリング状に複数枚支持されており、前記リング状に配置された複数の突出渦流翼111により突出渦流翼列(リング状渦流翼列)112が構成されている。図9Bに示すように、各突出渦流翼111は、断面弧状の弧状凹面111aを有しており、渦流ロータ101、102の回転方向下流側に前記周凹面111aが面するように配置されている。前記突出渦流翼111による渦流の発生及び気体の圧縮・移送の原理は、従来公知(例えば、特許文献3等参照)なので、詳細な説明は省略する。
図8、図10において、前記第1リング状段差部107、第2リング状段差部108及び第3リング状段差部109には、段差部の放射方向に沿って段差部渦流翼(渦流翼)113が複数形成されている。そして、図10Bに示すように、前記各段差部渦流翼113どうしの間に断面弧状の渦流溝114が形成されている。前記リング状に配置された複数の段差部渦流翼113により段差部渦流翼列(リング状渦流翼列)116が構成されている。前記段差部渦流翼113及び渦流溝114による渦流の発生及び気体の圧縮・移送の原理は、従来公知(例えば、特許文献1や特許文献2等参照)なので、詳細な説明は省略する。
図2において、前記渦流ステータ71及び下部ベアリング支持部材P3には、渦流ステータ71及び下部ベアリング支持部材P3の内部を貫通して下側のベアリングP4まで延びる下側グリス供給路G1が形成されている。前記下側グリス供給路G1は、下側のベアリングP4にグリスを供給するグリス排出口G1aと、グリス供給路G1内にグリスが供給されるグリス補給口G1bとを有する。同様に、前記渦流ステータ71、ベース部材本体23及び上部ベアリング支持部材本体34には、各部材(71、23、34)の内部を貫通して上側のベアリング36まで延びる上側グリス供給路G2が形成されている。前記上側グリス供給路G2も、グリス排出口G2aと、グリス補給口2b(後述の図11参照)とを有している。
図2、図11において、前記渦流ステータ71の側部には、前記ベアリングP4,36にグリスを供給するグリス供給装置GPが配置されている。前記グリス供給装置GPは、渦流ステータ71にボルト(図示せず)により固定支持するためのフランジ部121aが形成されたグリス収容容器121を有している。前記グリス収容容器121は、下側のベアリングP4潤滑用のグリスを収容する第1グリス収容部122と、上側のベアリング36潤滑用のグリスを収容する第2グリス収容部123と、前記第1グリス収容部122及び第2グリス収容部123の間に上下方向(Z軸方向)に貫通して形成されたネジ溝124とを有している。
前記ネジ溝124、ネジ138及びグリス供給モータMG等によってグリス自動供給部材139が構成されている。
したがって、作業者が注射器等を使用してグリスを手作業で補給する場合と比較して、容易にグリスを補給することができると共に、グリス供給モータMGの回転量を制御することにより補給量を容易且つ精度良く調節することができる。
図12は実施例1の複合型真空ポンプの制御部が備えている各機能をブロック図(機能ブロック図)で示した図である。
図12において、複合型真空ポンプPのコントローラCは、外部との信号の入出力および入出力信号レベルの調節等を行うI/O(入出力インターフェース)、必要な処理を行うためのプログラムおよびデータ等が記憶されたROM(リードオンリーメモリ)、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM(ランダムアクセスメモリ)、前記ROMに記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU(中央演算処理装置)、ならびにクロック発振器等を有するマイクロコンピュータ等により構成されており、前記ROM等に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
前記コントローラCは、制御パネル(コンソールパネル)CPやその他の信号入力要素からの信号が入力されている。
前記制御パネルCPは、複合型真空ポンプPの主電源である電源スイッチSW1と、複合型真空ポンプPの排気開始・排気停止用の排気スイッチSW2等を備えており、それらが入力されたことを検出して、その検出信号をコントローラCに入力する。
また、コントローラCは、排気モータ駆動回路D1、グリス供給モータ駆動回路D2、冷却水供給装置駆動回路D3、ガス供給装置駆動回路D4や図示しない電源回路、その他の制御要素に接続されており、それらの作動制御信号を出力している。
前記排気モータ駆動回路D1は、排気モータMを介して回転軸1を所定の回転速度(例えば、毎分1万回転)で回転駆動する。
前記冷却水供給装置駆動回路D3は、前記複合型ターボ分子ポンプ冷却水路W用の冷却水供給装置(図示せず)や、ステータ冷却水路(ポンプ冷却機構)93、下部ベアリング支持部材冷却水路94(下部ベアリング支持部材冷却機構)に冷却水を供給する冷却水供給装置等を作動させる。
前記ガス供給装置駆動回路D4は、ガス供給装置(図示せず)を作動させる。
前記コントローラCは、前記各信号出力要素からの出力信号に応じた処理を実行して、前記各制御要素に制御信号を出力する機能(制御手段)を有している。前記コントローラCの機能(制御手段)を次に説明する。
C1:排気モータ回転制御手段
排気モータ回転制御手段C1は、前記排気モータ駆動回路を介して、排気モータMの回転駆動を制御する。
グリス供給モータ制御手段C2は、排気モータ駆動時間カウントタイマTM1と、グリス供給開始判別時間記憶手段C2Aと、グリス供給開始判別手段C2Bと、グリス供給モータ回転量記憶手段C2Cとを有する。そして、前記グリス供給モータ制御手段C2は、前記グリス供給モータ駆動回路D2を介して前記グリス供給モータMGの駆動を制御する。
TM1:排気モータ駆動時間カウントタイマ
排気モータ駆動時間カウントタイマTM1は、前記排気スイッチSW1のオン・オフに応じて、排気モータMが回転駆動した時間のカウント値(積算値)t1をカウントする。なお、前記カウント値t1は、不揮発性メモリに記憶され、リセット(初期化)されない限り、複合型真空ポンプPの電源スイッチSW1がオフになっても記憶されている。
グリス供給開始判別時間記憶手段C2Aは、グリス供給を開始する時期になったか否かを判別するための閾値であるグリス供給開始判別時間taを記憶する。
C2B:グリス供給開始判別手段
グリス供給開始判別手段C2Bは、前記排気モータ駆動時間カウントタイマTM1のカウント値t1と、前記グリス供給開始判別時間taとに基づいて、グリス供給を開始する時期になったか否かを判別する。
グリス供給モータ回転量記憶手段C2Cは、グリス供給を行う際に前記グリス供給モータMGが回転駆動する回転量(グリス供給モータ回転量)を記憶する。前記回転量には、1度に供給される設定されたグリスの供給量に対応するグリス供給モータMGの回転量が設定されている。
C3:冷却水供給装置制御手段
冷却水供給装置制御手段C3は、前記冷却水供給装置駆動回路D3を介して前記冷却水路W,93、94に冷却水を供給する冷却水供給装置(図示せず)等の作動を制御する。なお、実施例1の冷却水供給装置制御手段C3は、排気スイッチSW2がオンになると冷却水供給装置のバルブを開放して給水を行い、排気スイッチSW2がオフになるとバルブを閉じるように制御する。なお、実施例1では、ポンプPによる排気が開始されると自動的に冷却水の供給が開始されるが、例えば、冷却水路W,93、94を水道の蛇口に接続し、作業者が栓をあけることにより手動で給水を開始するように構成することも可能である。
ガス供給装置制御手段C4は、前記ガス供給装置駆動回路D4を介して前記ガス供給装置(図示せず)の作動を制御する。なお、実施例1のガス供給装置制御手段C4は、排気スイッチSW2がオンになるとガス供給装置のバルブを開放して所定量のガスの供給を行い、排気スイッチSW2がオフになるとバルブを閉じるように制御する。なお、実施例1では、排気開始時に自動的にガスの供給が実行されるが、作業者がバルブの開閉を行って手動でガスの供給を行うように構成することも可能である。また、実施例1では所定量のガスの供給を行ったが、例えば、グリスの雰囲気圧力が低下するのに応じて、ガスの供給量を増やすように制御することも可能である。
(メインフローチャートの説明)
図13は本発明の実施例1の複合型真空ポンプのグリス供給処理のフローチャートである。
図13のフローチャートの各ST(ステップ)の処理は、前記コントローラCのROMやハードディスクに記憶されたプログラムに従って行われる。また、この処理は複合型真空ポンプPの他の各種処理(排気モータ回転制御処理等)と並行して実行される。
図13に示すフローチャートは複合型真空ポンプPの電源スイッチSW1がオンにより開始される。
ST2において、排気モータ駆動時間カウントタイマTM1による計時(時間のカウント)を開始する(再開する)。そして、ST3に移る。
ST3において、排気スイッチSW2がオフになったか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST4に移り、ノー(N)の場合はST5に移る。
ST4において、排気が終了したので排気モータ駆動時間カウントタイマTM1による計時を終了する(中断する)。そして、ST1に戻る。
ST6において、次の処理(1)、(2)を実行して、ST3に戻る。
(1)排気モータ駆動時間カウントタイマTM1のカウント値t1をリセットする。
(2)グリス供給モータMGをグリス供給モータ回転量だけ回転駆動する。
前記構成を備えた実施例1の複合型真空ポンプPでは、排気モータMにより回転軸1が回転駆動すると、ターボ分子ポンプロータ部6a、ネジ溝式ポンプロータ部6b及び渦流ロータ101、102等が回転駆動する。そして、ポンプ吸気口2aが連通する真空室内部の気体が、ターボ分子ポンプTMPの部分で動翼7及び静翼4により圧縮されながら下方に移送され、ネジ溝式ポンプSPのネジ山8によりさらに下方に圧縮・移送される。そして、ネジ溝式ポンプSPのネジ山14により、前記複合型ターボ分子ポンプロータ6とネジ溝式ポンプステータ11との間を圧縮されながら上方に移送され、最終的に複合型ターボ分子ポンプ排気口28に移送される。前記複合型ターボ分子ポンプ排気口28まで移送された気体は、渦流ポンプ吸気口74から流入し、渦流流路(76〜91)を順次圧縮されながら移送され、排気口92から排気される。
したがって、従来技術(特許文献3等参照)ではアキシャル荷重や繰り返し加重によりベアリング寿命が短くなる問題があったが、実施例1の複合型真空ポンプPでは、ベアリング36,P4に作用する力が相殺されて小さくなるので、ベアリング36,P4の寿命を長くすることができる。
さらに、実施例1の複合型真空ポンプPでは、ステータ冷却水路(ポンプ冷却機構)93を流れる冷却水により、リング状流路76〜79で圧縮された気体から発生する熱や、渦流ロータ101、102回転駆動時の渦流翼111、113と気体との摩擦による摩擦熱等を除去し、渦流ステータ本体73を直接冷却することができる。この結果、渦流ステータ本体73や渦流ロータ101、102等の部材の熱膨張等による寸法の変化によって排気性能が変化することを防止できる。また、渦流ステータ本体73が冷却されるので、リング状流路76〜79の壁面を介して、リング状流路76〜79を移送される気体を冷却することができる。気体が冷却されると気体の体積が減少するので、排気効率が高まり、排気性能を向上させることができる。
実施例1の渦流ポンプKPでは、渦流ステータ本体73のリング状流路76〜79により、上面側→下面側→下面側→上面側→…のように気体が移送されたが、第1リング状流路76a、76bには気体圧縮性能の高い突出渦流翼111が配置されているため、上側第1リング状流路76a、76bでの気体の圧縮性能が高くなる。したがって、隣接する上側第1リング状流路76aの気体の圧力と、上側第2リング状流路77aの気体の圧力との差(圧力差)は大きくなる。この結果、第1流路仕切部材81aのラビリンスシール37部分から排気気体が戻る可能性が大きくなることがあり、第1流路仕切部81aと渦流ロータ101との間の隙間を通じて上側第2リング状流路77a側から上側第1リング状流路76aに気体が戻る(逆流する)ことがある。
従って、実施例1の変更例の渦流ポンプKPでは、図14に示すような順序で気体が移送されるように、渦流ステータ本体73及び渦流ロータ101、102の構成が変更されている。即ち、上側第2リング状流路77aを省略し、下側第2リング状流路77bから第2内側移行流路89b′を介して下側第3リング状流路78bに気体を移送するよう構成されている。これに伴い、下流側の流路が、下側第3リング状流路78b→第3連絡流路88c→上側第3リング状流路78a→第3内側移行流路89c→上側第4リング状流路79a→第4連絡流路88d→下側第4リング状流路79b→排気路91に変更されている。
なお、この実施例2の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
この実施例2は、下記の点で前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成されている。
実施例2の複合型真空ポンプP′では、実施例1のターボ分子ポンプTMP(静翼4、動翼7等)が省略されている。
前記構成を備えた実施例2の複合型真空ポンプP′では、ターボ分子ポンプTMPが省略されているので、実施例1の複合型真空ポンプPに比べ、高真空領域における圧縮・排気性能が低下している。即ち、ユーザのニーズや使用環境により、高真空領域まで排気する必要が無く、中真空領域程度まで排気できれば良い場合には、ターボ分子ポンプTMPを省略することにより、製造コストやメンテナンスコストを抑えることができる。その他の渦流ポンプKP部分に関しては、実施例2の複合型真空ポンプP′は、実施例1の複合型真空ポンプPと同様の作用効果を奏する。
なお、この実施例3の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
この実施例3は、下記の点で前記実施例1、2と相違しているが、他の点では前記実施例1、2と同様に構成されている。
実施例3のポンプP″では、実施例1のターボ分子ポンプTMP(静翼4、動翼7等)及びネジ溝式ポンプSP(ネジ山8、14等)が省略されている。
前記構成を備えた実施例3のポンプP″では、ターボ分子ポンプTMP及びネジ溝式ポンプSPが省略されているので、実施例1の複合型真空ポンプPに比べ、高真空領域及び中真空領域における圧縮・排気性能が低下している。即ち、ユーザのニーズ等により、低真空領域程度まで排気できれば良い場合や、大気圧よりも低圧に排気したい場合(即ち、真空ポンプではなく、通常の排気ポンプとして使用する場合)には、ターボ分子ポンプTMP及びネジ溝式ポンプSPを省略することにより、製造コストやメンテナンスコストを抑えることができる。その他の渦流ポンプKP部分に関しては、実施例3のポンプP″は、実施例1の複合型真空ポンプPと同様の作用効果を奏する。なお、実施例3のポンプP″において、複合型ターボ分子ポンプ部P1をさらに省略し且つ、回転軸1の長さを短く調節して、渦流ポンプ吸気口(吸気口)74を直接、排気対象の排気室(または真空室)に接続することも可能である。
(H01)前記各実施例において、渦流ステータ本体73には、4段のリング状流路76〜79が形成されているが、段数は適宜変更可能である。
(H02)前記各実施例において、第1リング状流路76に対応する部分だけ突出渦流翼111の渦流翼列112で構成したが、最外周だけでなく、外周側の数段分、例えば、第1リング状流路76及び第2リング状流路77に対応する部分に突出渦流翼111の渦流翼列112を設けることも可能である。
(H04)前記各実施例において、ベアリングP4,36はグリスにより潤滑する転がり軸受を使用したが、磁気軸受等の従来公知の軸受に変更可能である。
(H06)前記各実施例において、渦流翼として、突出渦流翼111と段差部渦流翼113の2種類の渦流翼を使用したが、これらに限定されず、その他の形状の渦流翼を使用することができる。例えば、前記段差部渦流翼113に替えてタービン羽根形状の渦流翼の渦流翼列(リング状段差部に半径方向の長さが短いタービン羽根(渦流翼、動翼7参照)を固着して形成した渦流翼列)を配置したり、3種類以上の渦流翼を組み合わせて使用することも可能である。
(H08)前記各実施例において、各リング状流路76〜79を上側→下側→下側→上側→…の順に接続したが、接続する順序は適宜変更可能である。例えば、上側のリング状流路76a〜79aを外周側から内周側に順次接続すると共に、下側のリング状流路76b〜79bを外周側から内周側に順次接続し、上側のリング状流路76a〜79aで圧縮された気体を下側のリング状流路76b〜79bでさらに圧縮するように構成することも可能である。
(H09)前記実施例1、2において、複合型ターボ分子ポンプ排気口28が直接渦流ポンプ吸気口74に接続されているが、パイプ等を介して接続することも可能である。
2,72…ハウジング、
2a,74…吸気口、
92…排気口、
71…渦流ステータ、
73…ステータ本体、
76〜79,76a,76b,77a,77b,78a,78b,79a,79b…リング状流路、
88…連絡流路、
93…ポンプ冷却水路、
101、102…渦流ロータ、
104…ロータ本体、
107〜109…リング状段差部、
111…突出渦流翼、
111,113…渦流翼、
112,116…リング状渦流翼列、
113…段差部渦流翼、
P,P′,P″…ポンプ、
SP…ネジ溝式ポンプ、
TMP…ターボ分子ポンプ。
Claims (7)
- 下記の構成要件(A01)〜(A04)を備えたことを特徴とするポンプ、
(A01)回転駆動する回転軸を回転可能に支持するハウジング、
(A02)前記回転軸に固着され且つ前記ハウジングに対して回転自在に支持された円板状のロータ本体と、前記ロータ本体の端面に半径の異なる複数の同心円に沿って所定の間隔で配置された複数の渦流翼により構成された複数のリング状渦流翼列と、を有する渦流ロータ、
(A03)前記ハウジングに回転不能に支持されたステータ本体と、複数の前記リング状渦流翼列に対応して前記ステータ本体に形成された複数のリング状流路とを有し、前記渦流ロータ回転時に前記リング状流路内で渦流を発生させることにより気体を圧縮して排出する渦流ステータ、
(A04)前記ロータ本体の端面から前記リング状流路内に突出して形成された板状の突出渦流翼がリング状に配置された第1のリング状渦流翼列と、前記円板状のロータ本体の放射方向に対して内周側に比べて外周側が階段状に低く形成されたリング状の段差部に形成され且つ前記円板状のロータ本体の放射方向に延びる段差部渦流翼がリング状に配置された第2のリング状渦流翼列と、を有する前記複数のリング状渦流翼列。 - 下記の構成要件(A06)を備えたことを特徴とする請求項1記載のポンプ、
(A06)同心円状に配置された複数の前記リング状渦流翼列の外周側且つ気体移送方向上流側に、前記第1のリング状渦流翼列を配置し、内周側且つ気体移送方向下流側に前記段差部渦流翼を有する前記第2のリング状渦流翼列を配置した前記渦流ロータ。 - 下記の構成要件(A07),(A08)を備えたことを特徴とする請求項1または2記載のポンプ、
(A07)前記ステータ本体の表裏両端面に形成された前記リング状流路、
(A08)前記ステータ本体の表裏両端面に対向して配置された一対の前記渦流ロータ。 - 下記の構成要件(A09)を備えたことを特徴とする請求項3記載のポンプ、
(A09)前記ステータ本体の表面及び裏面のいずれか一面側に形成された前記リング状流路の気体移送方向下流端と、前記ステータ本体の表面及び裏面の他面側に形成された前記リング状流路の気体移送方向上流端とを接続する連絡流路を有する前記渦流ステータ。 - 下記の構成要件(A010)を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか記載のポンプ、
(A010)前記ステータ本体内部に配置されたポンプ冷却機構。 - 下記の構成要件(A011)を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか記載のポンプ、
(A011)前記リング状流路の気体移送方向上流端に形成された吸気口の気体移送方向上流側に配置されたネジ溝式ポンプ。 - 下記の構成要件(A012)を備えたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか記載のポンプ、
(A012)前記リング状流路の気体移送方向上流端に形成された吸気口の気体移送方向上流側に配置されたターボ分子ポンプ。
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