JP4563628B2 - 低抵抗器の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子機器等に搭載され、例えば電源電流等の高周波且つ高電流の検出に好適な低抵抗器に係り、特にその抵抗値のトリミング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、例えばノート型のパソコン等においては、バッテリーの消費状況の管理等のため、電源電流の検出を行っている。電源電流の検出には、電源(バッテリー)と負荷回路との間にミリオーム程度の低抵抗値の抵抗器を挿入し、その抵抗器に流れる電流を、その両端から電圧という形式で検出している。
【0003】
このような用途に用いられる低抵抗器は、負荷が例えば高速のマイクロプロセッサ等であると、1〜2GHz程度のクロック周波数が採用され、高速且つ大電流が流れる。このため、係る用途の低抵抗器においては、このような高電流を精度よく検出するため、その抵抗値は10mΩ以下であり、精度は±1%以下が要求されている。また、高速のパルス状電流が流れることから、インダクタンス成分が極力低いことが検出精度上好ましい。
【0004】
係る用途の従来の低抵抗器は、図6に示すような、低抵抗用合金からなる板状の抵抗体1と、その抵抗体の長手方向両端部に配置された一対の電極2,3を備えたものが知られている。これらの低抵抗器においては、上述したように例えば±1%程度の抵抗値精度が要求される。このため、抵抗体のトリミングが行われ、抵抗値が調整されるが、このような目的のトリミングにはレーザ光により長手方向に垂直に切り込みを入れるレーザトリミングが一般的である。
【0005】
しかしながら、係るレーザトリミング方法によれば、トリミングカット5の先端部にホットスポット6が発生し、その部分で電流経路が変化してしまうという問題がある。即ち、ホットスポットの発生により、抵抗温度係数(TCR)が変化する、また測定電流の大きさに対して抵抗値が変化する電流特性に問題が生じてくる。さらに、抵抗体1の長手方向に対して略垂直方向にトリミングカット5を設けることで、電流7がそのトリミングカット部を迂回して流れるようになり、これにより抵抗器のインダクタンス値が増大するという問題がある。また、個々にトリミングカット部の長さが異なってくるため、インダクタンス値のバラツキが大きくなるという問題もある
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した事情に鑑みて為されたもので、抵抗温度係数および電流特性等において安定した特性が得られ、またインダクタンス値の低い低抵抗器の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の低抵抗器の製造方法は、低抵抗用合金からなる板状の抵抗体の両端部の下面のみに、銅または銅合金の矩形状の金属薄片が圧着または融着により固定された電極を配置した低抵抗器を準備し、前記板状の抵抗体の下面のみに配置した電極間を前記抵抗体の厚み方向に沿って一様に研磨し、且つ、前記板状の抵抗体の上面の全面を一様に研磨することでトリミングを施すことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の低抵抗器の製造方法は、下面の両端部に高導電率材料が固着された抵抗体材料を準備し、該抵抗体材料を各低抵抗器に相当する区画に切断するに際し、その切断幅を微調整し、抵抗値を調整して、個々の低抵抗器に分離することを特徴とする。
【0009】
ここでトリミングは、グラインダによる研磨、プレス加工、放電加工、又は円盤による(切削)加工、サンドラストによる研磨、化学液による化学的エッチング、又は物理的エッチング等により行われることが好ましい。
【0010】
上述した本発明によれば、板状の抵抗体の上面の全面を研磨するトリミングを施すことで、ホットスポットの発生が防止される。また、トリミングによる長手方向に垂直方向のカット部が生じないので、これにより電流路の迂回という問題が生ぜず、インダクタンス値の増大という問題が防止される。従って、抵抗温度係数および電流特性等の安定性に優れ、且つインダクタンス値が低く、バラツキが生じない低抵抗器が得られる。また、本発明の製造方法によれば、簡単なトリミング方法を用いて、高精度でインダクタンス値の上昇を生じない、特性が安定した低抵抗器を経済的に製造することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態の低抵抗器を示す。この低抵抗器は、低抵抗用合金からなる板体状の抵抗体11に、その下面側両端部に一対の電極12,13を備え、上面には保護膜15を備えている。抵抗体11は、例えば銅・ニッケル合金系、ニッケル・クロム合金系、鉄・クロム合金系、マンガン・銅・ニッケル合金系、白金・パラジウム・銀合金系、金・銀合金系、金・白金・銀合金系等から構成され、10mΩ以下の低抵抗で且つ抵抗温度係数が50ppm/℃以下の良好な特性が得られる。電極12,13は、銅または銅合金等の高導電性材料の薄片が圧着または融着により抵抗体11の両端部に固定されて構成されている。
【0013】
図2は、本発明のトリミング例を模式的に示す。図2(a)は、抵抗体11の側面17を長手方向に沿って略平行に削り落とした状態を示している。また、図2(b)は、抵抗体11の上下面18を厚み方向に削り落としたものである。このような抵抗体11の部分的な除去は、グラインダを用いた研磨、プレス加工、放電加工、又は円盤(切削)加工、砂を吹き付けて材料を除去するサンドプラスト、化学的な又は物理的なエッチング等を用いて行うことができる。なお、抵抗体の側面と上下面とで形成される角部を削り落とすようにしてもよい。
【0014】
図3(a)(b)は、それぞれ抵抗体の温度分布を示す図である。図3(a)は、本発明の低抵抗器の温度分布を示し、温度分布が抵抗体の幅方向に沿って一様であることを示している。これに対して、図3(b)は図6に示す従来の低抵抗器における温度分布例を示し、温度分布が乱れていることを示している。このことは、抵抗体内における従来の略垂直方向のトリミングによる電流分布の乱れと、これに伴う温度分布の乱れを示している。
【0015】
図4は、電流特性について本発明と従来例とを対比して示したグラフである。
電流特性とは、電流値の大きさに伴う抵抗の変化率であり、図中横軸は電流値であり、縦軸は抵抗変化率(%)を示している。そして、図中の黒丸印は、本発明を示し、黒角印は従来例を示している。図示するように、従来例においては負荷電流が20Aを越えると、抵抗値の変化率が1%を越える程度に大きくなるが、本発明の例ではこの抵抗値変化率が低減していることが分かる。
【0016】
図3(b)に示すように、従来例においては電流経路にレーザ光の切り込み部により迂回路が形成される。そして、これにより例えば1.0nH程度のインダクタンスが生じる。これに対して、本発明では電流路に迂回路が形成されるという問題が生じないので、材料の抵抗体自体のインダクタンスとなる。このため、例えば0.2nH程度のインダクタンス値が得られ、本発明によればインダクタンスの増大が防止される。また、インダクタンス値のバラツキもより小さくすることができる。このインダクタンス増大の現象は、例えば1〜数GHz程度のクロック周波数を有するマイクロプロセッサ等を負荷とする電源電流の検出等の場合には、10mΩ以下の低抵抗器において深刻であり、これにより抵抗器の両端部に生じる検出電圧が実際の抵抗分のみによる検出電圧に対して解離を生じてくる。
【0017】
図5(a)は、本発明における実際電流(皮相電流)と測定電流(抵抗器の抵抗分に対応した電流)を示し、横軸は時間を示し、縦軸はその時の電流値を示している。同様に図5(b)は、比較例として従来例の抵抗器における実際電流(皮相電流)と測定電流(抵抗器の抵抗分に対応した電流)を示し、横軸は時間を示し、縦軸はその時の電流値を示している。これらの図は、電流値の変動を実際電流と測定電流とを対比して示した図である。図示するように、本発明においては、実際電流と測定電流とは殆ど乖離を生じていない。また、本発明のような、例えば、大略100kHz程度(好ましくは例えば300kHz程度)又はそれ以上の高周波であって、しかも抵抗値が約10mΩ以下というような金属抵抗においては、電流経路をより円滑に、よりきれいに、及び/またはより短距離にすることが重要となる。これに対して、従来例においては実際電流と測定電流とが大きく乖離し、抵抗体のインダクタンスにより正確な電流検出が行えないことを示している。
【0018】
次に、本発明の低抵抗器についてその製造方法の概要を説明する。まず、抵抗体材料を準備し、この両端部に相当する部分に例えば銅の薄片等の高導電率材料を融着、圧着、圧延、または熱拡散接合により固着する。そして、各抵抗器に相当する区画に切断するに際し、その切断幅を微調整し、抵抗値を調整して、個々の抵抗器に分離する。また、別の方法として、抵抗体を切断し、個々の抵抗器の抵抗値を調整する。この抵抗値のトリミングは、両電極にプローブを接触させて抵抗値を測定しつつ、抵抗体の厚み方向または幅方向に、長手方向に沿って一様に研磨する。そして、所要の抵抗値精度が得られたときに研磨を終了することで、これにより例えば±1%程度の高精度にトリミングされた抵抗器が得られる。抵抗値は1〜10mΩ程度の所要の値に調整される。
【0019】
ここで、研磨はグラインダによる研磨、プレス加工、放電加工、円盤(切削)加工、砂を吹き付けるサンドトリミングによる研磨、化学的な溶液を用いた化学エッチング、又は物理エッチング等の比較的簡単な研磨方法を用いる。これにより、レーザトリミングのような単体として観た場合の長手方向に対して略直交する方向又は略交差する方向の切り込み部を設けないで、所要の精度を得ることができる。また、簡単な設備で行えるので製造コストを低減できる。
【0020】
このトリミングは、抵抗体面の全面に行えば、部品全体を行わなくてよい。裏面の抵抗体を研磨する場合には、電極間の凹部のみを研磨する。また、抵抗体上下面および側面に限らず、上下面と側面との間に形成される角部の稜線部分を削り取るようにしてもよい。研磨が終了すると、上面に保護膜を被覆して捺印等を行い、これにより高精度低抵抗値の低抵抗器が完成する。
【0021】
なお、上記実施形態に示す例においては、本発明および従来例ともその一例を示したものであるが、本発明によればレーザトリミングによるホットスポットおよび電流の流れ方向に対して垂直方向のトリミングカット部が存在しないので、抵抗器のインダクタンス特性および諸抵抗特性が改善されることは明らかである。また、上記実施形態に示す低抵抗器の構造例は、その一例を示すものであって、各種変形構造例に対して本発明の趣旨を同様に適用できることはもちろんである。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、インダクタンス値が小さく、インダクタンス値のバラツキも小さく、抵抗温度係数、電流特性等に優れた低抵抗値で且つ高精度の低抵抗器を提供することができる。また、本発明の低抵抗器の製造方法によれば、レーザトリミングを用いることなく、比較的容易な手法で高精度且つ高信頼性の低抵抗器を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の低抵抗器を示す斜視図である。
【図2】本発明のトリミングを模式的に示す(a)平面図、(b)側面図である。
【図3】低抵抗器の温度分布を示す図であり、(a)は本発明の例を示し、(b)は従来例を示す。
【図4】電流特性について、本発明の例と従来例とを対比して示したグラフである。
【図5】抵抗器に観測される電流の時間変化例を示した図であり、(a)は本発明の例を示し、(b)は従来例を示す。
【図6】従来の低抵抗器のトリミング例とこれに伴う電流経路を模式的に示した平面図である。
【符号の説明】
11 抵抗体
12,13 電極
15 保護膜
17 側面
18 上下面

Claims (4)

  1. 低抵抗用合金からなる板状の抵抗体の両端部の下面のみに、銅または銅合金の矩形状の金属薄片が圧着または融着により固定された電極を配置した低抵抗器を準備し、
    前記板状の抵抗体の下面のみに配置した電極間を前記抵抗体の厚み方向に沿って一様に研磨し、且つ、
    前記板状の抵抗体の上面の全面を一様に研磨することでトリミングを施すことを特徴とする低抵抗器の製造方法。
  2. 下面の両端部に高導電率材料が固着された抵抗体材料を準備し、該抵抗体材料を各低抵抗器に相当する区画に切断するに際し、その切断幅を微調整し、抵抗値を調整して、個々の低抵抗器に分離することを特徴とする請求項1記載の低抵抗器の製造方法。
  3. 前記トリミングは、グラインダによる研磨で施すことを特徴とする請求項1記載の低抵抗器の製造方法。
  4. 前記トリミングは、サンドブラストによる研磨で施すことを特徴とする請求項1記載の低抵抗器の製造方法。
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