JP4561003B2 - 液晶表示素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示素子、詳しくは、カイラルネマチック液晶を含むモノカラーの反射型液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、液晶表示素子は、透明電極を有する一対の基板とこの基板間に挟持された液晶層とからなる。この液晶層に駆動電圧を印加することで液晶分子の配列を制御し、素子に入射した外光を変調して目的とする画像の表示を行う。
【0003】
液晶表示方式として従来から様々な方法が提示されている。近年、ネマチック液晶にカイラル材を添加することにより、室温においてコレステリック液晶相を示すようにしたカイラルネマチック液晶組成物を用いた液晶表示素子が種々研究されている。
【0004】
かかる液晶表示素子は、例えば、コレステリック相の選択反射を利用した低消費電力を特徴とする反射型の液晶表示素子として用いられることが知られている。この反射型表示素子では、例えば、エネルギーの高い又は低いパルス電圧を選択的に印加することにより、液晶をプレーナ状態(着色状態)とフォーカルコニック状態(透明状態)に切り換えて表示を行う。そして、パルス電圧の印加を停止した後もプレーナ状態、フォーカルコニック状態又はそれらの混在した状態が保持されることで(このようなプレーナ及びフォーカルコニックの各状態の保持性を一般的に双安定性またはメモリー性と称する)、電圧の印加を停止した後も表示が保たれるようにすることが可能である。
【0005】
コレステリック液晶層と背景との組合せで、白色と他色とのモノカラー表示を行うことが提案されている(例えば、米国特許明細書第5493430号)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記カイラルネマチック液晶組成物を用いた反射型の液晶表示素子において、白色と他色とのモノカラー表示を行う場合、白色の表示が難しいということと、視野角が狭く、見る角度によって色味が全く変わってしまうという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、白色と他色とのモノカラー表示の際に良好な白色度を得、コントラストの大きな液晶表示素子を提供することにある。
【0008】
さらに、本発明の他の目的は、良好な青/白表示を行うことのできる液晶表示素子を提供することにある。
【0009】
さらに、本発明の他の目的は、視野角依存性の小さな液晶表示素子を提供することにある。
【0010】
【発明の構成、作用及び効果】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意研究を重ねたところ、少なくとも一方が透明な一対の基板間に、室温で可視光中の特定の波長を選択反射するカイラルネマチック液晶組成物を挟持した液晶表示素子において、一対の基板に配向安定化膜が形成されており、表示面に対向する基板に青色の光吸収層を設け、前記カイラルネマチック液晶組成物の選択反射のピーク反射波長が570〜600nmの範囲内にあり、分光反射波形の半値幅が95〜115nmであり、かつ、前記青色の光吸収層のピーク反射波長が450〜480nmの範囲内であるとき、最も良好な青/白表示が行われ、白の色純度が高くなることを見出した。
【0011】
即ち、本発明に係る液晶表示素子は、少なくとも一方が透明な一対の基板間に、室温で可視光中の特定の波長を選択反射するカイラルネマチック液晶組成物を挟持した液晶表示素子において、一対の基板に配向安定化膜が形成されており、表示面に対向する基板に青色の光吸収層が設けられており、前記カイラルネマチック液晶組成物の選択反射のピーク反射波長が570〜600nmの範囲内にあり、前記青色の光吸収層のピーク反射波長が450〜480nmの範囲内であり、カイラルネマチック液晶組成物からなる液晶層を選択反射状態にしたときの分光反射波形の半値幅が95〜115nmである。
【0012】
本発明に係る液晶表示素子は、黄色の選択反射を示すカイラルネマチック液晶組成物と青色の光吸収層との組み合わせにより、良好な青色表示を可能としている。そして、カイラルネマチック液晶組成物として選択反射のピーク反射波長が570〜600nmの範囲内にあり、液晶組成物からなる液晶層を選択反射状態にしたときの分光反射波形の半値幅が95〜115nmとなるようなブロードな選択反射特性を示す液晶組成物を用い、ピーク反射波長が450〜480nmの範囲内にある青色の光吸収層と組み合わせたため、白色表示の反射率が高くなり、コントラストが高くて良好な白表示特性を示す。また、ブロードな選択反射特性のために視野角依存性も少ない。
【0013】
本発明に係る液晶表示素子においては、一対の基板がプラスチック基板であってもよい。プラスチック基板を用いることにより、軽量で薄型の素子が作製でき、割れるおそれがない。
【0014】
基板に設けられる配向安定化膜に関しては、可溶性ポリイミド樹脂を用いて形成することが好ましい。可溶性ポリイミド樹脂を使用することで、プラスチック基板に対しても成膜可能である。また、液晶と配向安定化膜の相互作用が強くなって液晶分子が均一に配向され、フォーカルコニック状態での散乱が少なくなり、素子としてのコントラストが向上する。また、ラビングしないことで視野角依存性を少なくすることができる。
【0015】
さらに、前記配向安定化膜はラビング等の配向処理が施されていなくてもよい。配向安定化膜はラビング等の配向処理を施さなくても良好な反射特性を示す。
また、配向安定化膜はラビング処理を行うことにより、さらに反射率を向上させることができる。しかし、両面の配向安定化膜をラビング処理するとフォーカルコニック状態でのメモリー性がなくなるおそれがあるため、いずれか一方のみ配向処理が施されていればよい。
【0016】
また、前記配向安定化膜の膜厚は10〜150nmであることが好ましく、10nmよりも薄いと配向を十分に制御ができないことがあり、150nmよりも厚いと駆動電圧が上昇したり、配向むらが発生しやすくなる。特に、配向安定化膜の膜厚が30〜100nmのときに塗工性が良好で、ムラなく成膜することができ、駆動電圧も低く、良好な特性を示す。
【0017】
前記青色の光吸収層は顔料の分散膜を用いることにより耐候性を上げることができ、長期に渡って良好な表示品質を保つことができる。また、ピーク反射波長が450〜480nmの青色の光吸収層は、ピーク反射率が20〜35%であることが好ましく、白色表示時での反射率が高く、白色の色純度が高くなる。
【0018】
ところで、カイラルネマティック液晶組成物は、カイラル材の添加量を変えることにより、選択反射波長を制御することができるという利点がある。カイラル材の添加量は、ネマチック液晶混合物及びカイラル材の合計重量に対して、8〜45wt%が良好であり、カイラル材の含有量が8wt%より少なすぎると十分な反射波長やメモリー性を得られないことがあり、逆に45wt%よりも多すぎると室温でコレステリック相を示さなくなったり、固化したりすることがある。
【0019】
また、カイラルネマチック液晶組成物は、カイラル材を2種以上混合することによって温度による選択反射波長のシフト量を調整することができ、安定した温度特性を示すことが可能となる。さらに、色素を添加することにより反射ピーク波形の色純度を向上させることができる。添加される色素としては、従来知られている各種色素を使用することができ、液晶組成物と相溶性の良好なものが好適に用いられる。例えば、アゾ化合物、キノン化合物、アントラキノン化合物等、あるいは二色性色素等が使用可能であり、これらの色素を複数種類用いてもよい。添加量としては、例えば、ネマチック液晶混合物とカイラル材との合計量に対して3重量%以下が望ましい。添加量が多すぎると液晶の選択反射量が低くなり、コントラストが下がってしまう。
【0020】
また、液晶組成物への色素添加に代えて、あるいはそれと併用してカラーフィルターを設けてもよい。例えば、液晶表示素子にフィルター層を設けることができる。このフィルター層に用いられる材料としては、例えば、無色透明物質に色素を添加したものであってもよいし、色素を添加せずとも本質的に着色状態にあるものであってもよい。例えば、フィルター層が色素と同様の働きをする特定の物質からなる薄膜であってもよい。液晶表示素子を構成するための透明基板自体を以上のようなフィルター層材料と置き換えても同様の効果が得られる。
【0021】
前記カイラルネマチック液晶組成物中に含まれるネマチック液晶混合物は、屈折率異方性が0.17〜0.23、誘電率異方性が15〜40であることが好ましい。これらの数値を示すネマチック液晶混合物を用いれば、駆動電圧が低く、反射率の高い、コントラストの良好な液晶表示素子とすることができる。
【0022】
また、液晶組成物の物性値を前記の如く調整することにより、60V以下で駆動可能となる。駆動電圧を60V以下とすることで安価なICが使用可能となり、液晶表示素子が安価に製造できる。なお、駆動電圧とは液晶組成物からの反射率をほぼ最大にするために必要な最小の電圧値を意味する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る液晶表示素子の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0024】
(第1実施形態の構成と表示動作、図1参照)
図1は本発明の第1実施形態である液晶表示素子の断面構造を示し、図1(A)は液晶に高電圧パルスを印加したときのプレーナ状態(白色状態)を示し、図1(B)は液晶に低電圧パルスを印加したときのフォーカルコニック状態(透明/青色表示状態)を示す。この液晶表示素子はメモリー性を有しており、プレーナ状態、フォーカルコニック状態及びこれらの混在した状態はパルス電圧の印加を停止した後も維持される。
【0025】
本第1実施形態である液晶表示素子において、11,12は透光性を有する透明基板であり、透明基板11,12のそれぞれの表面に、互いに平行な帯状に形成された複数の透明電極13,14が設けられている。これらの電極13,14は基板11,12に垂直な方向から見て互いに交差するように向かい合わされている。電極13,14上には絶縁性薄膜がコーティングされていることが好ましい。本第1実施形態では、電極13,14上に絶縁性薄膜15がコーティングされている。さらに、絶縁性薄膜15の上には液晶の配向を安定化させる配向安定化膜16が設けられている。
【0026】
光を入射させる側とは反対側の基板12の外面(裏面)には、青色の光吸収層17が設けられる。青色の光吸収層17のピーク反射波長は450〜480nmの範囲内に設定されている。
【0027】
青色の光吸収層17のピーク反射波長が450〜480nmの範囲外になると良好な青色表示が得られず、また、組み合わせる黄色を選択反射するカイラルネマチック液晶組成物との組み合わせによる良好な白表示ができなくなる。
【0028】
20はスペース保持部材としての柱状構造物、21は室温でコレステリック相を示すカイラルネマチック液晶組成物であり、これらの材料やその組み合わせについては以下の実験例によって具体的に説明する。24はシール材であり、液晶組成物21を基板11,12間に封入するためのものである。
【0029】
25はパルス電源であり、前記電極13,14にパルス状の所定電圧を印加する。
【0030】
(基板)
基板11,12は、いずれも透光性を有しているが、基板11,12を含め、本発明に係る液晶表示素子に用いることができる一対の基板は、少なくとも一方が透光性を有していることが必要である。透光性を有する基板としては、ガラス基板を例示できる。ガラス基板以外にも、例えば、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート等のフレキシブル樹脂基板を使用することができる。
【0031】
(電極)
電極13,14としては、例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)等の透明導電膜や、アルミニウム、シリコン等の金属電極、あるいは、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等の光導電性膜等を用いることができる。
【0032】
図1に示す液晶表示素子においては、既述のとおり、透明基板11,12の表面に互いに平行な複数の帯状の透明電極13,14が形成されており、これらの電極13,14は基板11,12に垂直な方向から見て互いに交差するように向かい合わされている。
【0033】
電極13,14をこのように形成するには、例えば、透明基板上にITO膜をスパッタリング法等でマスク蒸着するか、ITO膜を全面形成した後、フォトリソグラフィ法でパターニングすればよい。
【0034】
(絶縁性薄膜)
図1に示す液晶表示素子を含め、本発明に係る液晶表示素子は電極13,14間の短絡を防止したり、ガスバリア層として液晶表示素子の信頼性を向上させる機能を有する絶縁性薄膜が形成されていてもよい。本第1実施形態では、既述のとおり、電極13,14上に絶縁性薄膜15がコーティングされている。
【0035】
絶縁性薄膜15としては、酸化シリコン、酸化チタン、酸化ジルコニウムやそのアルコキシド等からなる無機材料やポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の有機膜を例示できる。
【0036】
これらの材料を用いて蒸着法、スピンコート法、ロールコート法などの公知の方法によって形成することができる。
【0037】
絶縁性薄膜は前記の材料に色素を添加すればカラーフィルターとしても機能する。さらに、絶縁性薄膜は柱状構造物に用いる高分子樹脂と同じ材料を用いて形成することもできる。
【0038】
(配向安定化膜)
配向安定化膜16としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルブチラ−ル樹脂、アクリル樹脂等の有機膜や、酸化シリコン、酸化アルミニウム等の無機材料が例示される。これらの材料を用いて形成した配向安定化膜16は、必ずしもラビング等の配向処理を施す必要はない。また、配向安定化膜16を絶縁性薄膜15と兼用してもよい。
【0039】
配向安定化膜16をラビング処理する場合は、片方のみを軽く(例えば、ラビング密度20以下で)ラビング処理することで反射率を向上させることができる。一対の基板11,12に設けた両方の配向安定化膜16をラビング処理すると液晶のメモリー性が失われやすくなる。なお、ラビング密度Lは、ラビング回数をN、ラビングローラ半径をr、ラビングローラ回転数をm、ラビングローラに対する基板の相対移動速度をvとしたとき、下記式で表される。
L=N(1+2πrm/v)
【0040】
(スペーサー)
図1に示す液晶表示素子を含め、本発明に係る液晶表示素子は、一対の基板間に、基板間ギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。本第1実施形態の液晶表示素子には、基板11,12間にスぺーサー18を挿入してある。
【0041】
このスぺーサー18としては、樹脂製又は無機酸化物製の球体を例示できる。
また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。スペース保持部材として、特に、接着性樹脂で被覆した無機微粒子を用いることにより、セルギャップを安定に保つことができ、しかも、接着性を有することからスペーサーが流動することはなく、表示ムラが発生するような問題がない。
【0042】
なお、本第1実施形態のように、スペーサー18及び柱状構造物20をいずれも設けてもよいが、柱状構造物20に代えて、スぺーサー18のみをスペース保持部材として使用してもよい。
【0043】
(液晶組成物)
液晶層に含まれる液晶組成物は、ネマチック液晶とカイラル材とを含み、選択反射のピーク反射波長が570〜600nmの範囲内にあり、液晶組成物を選択反射状態にしたときの分光反射波形の半値幅が95〜115nmとなるようなブロードな選択反射特性を示すものである。そして、液晶組成物としての屈折率異方性が0.15〜0.30、誘電率異方性が10〜40であり、さらにカイラル材を8〜45wt%添加しているカイラルネマチック液晶組成物である。ここで、カイラル材の添加量はネマチック液晶混合物とカイラル材の合計量を100wt%としたときの値である。
【0044】
カイラルネマチック液晶組成物の屈折率異方性は0.15以上であることが望ましい。屈折率異方性が低すぎると反射光の色純度が悪く、反射率も悪くなる。
逆に高すぎる場合は視野角依存性が大きくなってしまう。
【0045】
誘電率異方性が低すぎると駆動電圧が高くなってしまい、逆に高すぎると素子としての安定性や信頼性が悪くなり、画像欠陥、画像ノイズが発生しやすくなってしまう。
【0046】
(柱状構造物)
図1に示す液晶表示素子を含め、本発明に係る液晶表示素子は、強い自己保持性を付与するために、一対の基板間が構造物で支持されていてもよい。本第1実施形態の液晶表示素子には、基板11,12間に柱状構造物20が設けられている。
【0047】
柱状構造物に関しては、まず、構造面について説明する。柱状構造物としては、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体、円錐柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隙を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は液晶表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、適度な強度を保持しながら液晶表示素子として実用上満足できる特性が得られる。
【0048】
次に、ポリエステル樹脂を用いた柱状構造物の製作方法について説明する。例えば、まず、所定のパターンが形成されたITO電極を形成した基板上にポリエステル樹脂溶液をロールコーターやグラビアコーター等の印刷機を用いて印刷した後、乾燥、硬化させる。
【0049】
液晶表示素子とするには、柱状構造物を挟持した基板間に液晶組成物を真空注入法等によって注入すればよい。あるいは、基板を貼り合わせる際に、液晶組成物を滴下しておき、基板の貼り合わせと同時に液晶組成物を封入するようにしてもよい。
【0050】
さらに、基板間ギャップ制御の精度向上のため、柱状構造物を形成するときに、柱状構造物の膜厚より小さいサイズのスペーサー材料、例えば、ガラスファイバー、ボール状のガラスやセラミックス粉、あるいは有機材料からなる球状粒子を配置し、加熱や加圧でギャップが変化しないようにすると、よりギャップ精度を向上させることができ、それだけ電圧ムラ、表示ムラ等を低減できる。
【0051】
(第2実施形態、図2参照)
図2に本発明の第2実施形態である液晶表示素子の断面構造(高電圧パルス印加時、プレーナ状態)を示す。この液晶表示素子は、表示領域内に柱状構造物が設けられていないことを除いて、図1に示した第1実施形態の液晶表示素子と実質上同じものである。なお、図2において、図1に示した素子と基本的に同じ構成、作用を有する部材には同じ参照符号を付してある。
【0052】
(第3実施形態)
本発明に係る第3実施形態は、図1に示した液晶表示素子において、柱状構造物20をスクリーン印刷法で形成したものである。
【0053】
スクリーン印刷法による柱状構造物20の形成方法は、例えば、次のようにして行う。即ち、所定のパターンが形成されたスクリーンを少なくとも一方の基板の電極等が形成された面上に被せ、該スクリーン上に印刷材料(柱状構造物形成のための組成物、例えば光硬化性樹脂など)を載せる。そして、スキージを所定の圧力、角度、速度で移動させる。これによって、印刷材料がスクリーンのパターンを介して該基板上に転写される。次に、転写された材料を硬化、乾燥させる。
【0054】
即ち、まず、樹脂材料(例えば、ポリエステル樹脂)を少なくとも一方の基板上に配置した後、一対の基板を複数の帯状電極等の形成面を対向させて重ね合わせる。重ね合わせた一対の基板を両側から加圧しながら加熱することによって、樹脂材料を軟化させた後、冷却することにより再びこれを固化させ、空セルを形成する。
【0055】
この空セルを液晶表示素子とするには、柱状構造物を挟持した基板間に液晶組成物を、例えば真空注入法によって注入すればよい。
【0056】
(第4実施形態、図3参照)
図3に本発明に係る第4実施形態である液晶表示素子の断面構造(高電圧パルス印加時、プレーナ状態)を示す。この液晶表示素子は、絶縁性薄膜15を設けず、配向安定化膜16だけを設けたことを除いて実質的には図1に示した前記液晶表示素子と同様の構造である。なお、図3において、図1の素子と同じ構成、作用を有する部材には同じ参照符号を付してある。
【0057】
(実験例の説明)
次に、本発明に係る液晶表示素子の性能評価実験を行なったので、比較実験とともに具体的に説明する。なお、本発明に係る液晶表示素子はそれらの実験例に限定されるものではない。
【0058】
以下の各実験例や比較例において、液晶表示素子の白色状態における反射率の測定は、反射型分光測色計CM−3700d(ミノルタ社製)を用いて視感反射率(Y値)を測定することで行った。また、白色状態における、色度、選択反射のピーク波長及び分光反射波形の半値幅も分光測色計CM−3700dを用いて測定した。なお、良好な表示特性を示す白色点の色度は(x、y)=(0.31、0.32)であり、表示素子の示す色度がこの座標に近いほど白色特性が良好であることを示す。また、Y値が大きいほど明るい。また、コントラストは(高反射率状態でのY値/低反射率状態でのY値)で与えられる。以下に説明する各実験例及び比較例における液晶表示素子においては、液晶をプレーナ状態としたときに白色状態となり、フォーカルコニック状態としたときに青色状態となる。
なお、青色状態における反射率も前記分光測色計CM−3700dを用いて測定した。
【0059】
視野角特性は目視及び大塚電子製マルチ分光測色計MC2530で調べた。また、カイラルネマチック液晶組成物の屈折率異方性は25℃で、アッベ屈折計により測定した。
【0060】
(実験例1)
ネマチック液晶混合物A(誘電率異方性Δε:32.4、屈折率異方性Δn:0.230、ネマチックアイソトロピック相転移温度TNI:103℃)にカイラル材CB15(メルク社製)を液晶混合物とカイラル材の合計重量に対して36.8重量%となるように混合し、カイラルネマチック液晶組成物を調製した。このカイラルネマチック液晶組成物は、Δnが0.21、Δεが23.7であり、585nmにピーク波長があるブロードな選択反射特性を示した。
【0061】
次に、ポリエーテルスルフォンフィルム基板上に設けられたITO(インジウム錫酸化物)の透明電極上に可溶性ポリイミド樹脂を含む配向膜形成剤(JSR社製4552)を用いて厚み800オングストロームの配向安定化膜を形成し、その上に6μm径のスペーサ(積水ファインケミカル社製)を散布した。また、もう一つのポリエーテルスルフォンフィルム基板上のITO透明電極上にも、前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み800オングストロームの配向安定化膜を形成した。
【0062】
続いて、第1基板上の周辺部にシール材XN21S(三井化学社製)をスクリーン印刷して所定高さの壁を形成した。その後、基板同士を貼り合せシール材を硬化させた。その後、所定量のカイラルネマチック液晶組成物を真空注入装置を用いて注入した。このセルの裏面(光を入射させる側とは反対側の基板面)にはピーク反射波長が470nmの青色の光吸収膜DIC579(大日本インキ製)を設け、液晶表示素子を作製した。この青色の光吸収膜は青色顔料の分散膜である。
【0063】
上記の液晶表示素子の電極間に白色状態(プレーナー状態)と青色状態(フォーカルコニック状態)にするために所定電圧で駆動したところ、45Vで白色状態、30Vで青色状態を示した。白色表示時の視感反射率Y値は23.3、色度(x,y)=(0.34,0.31)、分光反射波形の半値幅は110nmであり、白色度良好かつコントラストの高い素子であった。また、青色状態(フォーカルコニック状態)におけるピーク反射率は26.30%であった。観測する角度による表示特性の変化の度合いが小さく視野角特性が良好であった。
【0064】
(実験例2)
ネマチック液晶混合物B(誘電率異方性Δε:27.1、屈折率異方性Δn:0.255、ネマチックアイソトロピック相転移温度TNI:101℃)にカイラル材CB15(メルク社製)を液晶混合物とカイラル材の合計重量に対して34.1重量%となるように混合し、カイラルネマチック液晶組成物を調製した。このカイラルネマチック液晶組成物は、Δnが0.23、Δεが19.3であり、590nmにピーク波長があるブロードな選択反射特性を示した。
【0065】
次に、ポリエーテルスルフォンフィルム基板上に設けられたITO(インジウム錫酸化物)の透明電極上に前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み1000オングストロームの配向安定化膜を形成し、その上に6μm径のスペーサ(積水ファインケミカル社製)を散布した。また、もう一つのポリエーテルスルフォンフィルム基板上のITO透明電極上にも、前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み1000オングストロームの配向安定化膜を形成した。
【0066】
続いて、第1基板上の周辺部にシール材XN21S(三井化学社製)をスクリーン印刷して所定高さの壁を形成した。その後、基板同士を貼り合せシール材を硬化させた。その後、所定量のカイラルネマチック液晶組成物を真空注入装置を用いて注入した。このセルの裏面(光を入射させる側とは反対側の基板面)にはピーク反射波長が470nmの青色の光吸収膜DIC579(大日本インキ製)を設け、液晶表示素子を作製した。
【0067】
上記の液晶表示素子の電極間に白色状態(プレーナー状態)と青色状態(フォーカルコニック状態)にするために所定電圧で駆動したところ、60Vで白色状態、45Vで青色状態を示した。白色表示時の視感反射率Y値は25.6、色度(x,y)=(0.31,0.32)、分光反射波形の半値幅は115nmであり、白色度良好かつコントラストの高い素子であった。また、青色状態(フォーカルコニック状態)におけるピーク反射率は26.30%であった。観測する角度による表示特性の変化の度合いが小さく視野角特性が良好であった。
【0068】
(実験例3)
ネマチック液晶混合物C(誘電率異方性Δε:30.6、屈折率異方性Δn:0.200、ネマチックアイソトロピック相転移温度TNI:88.8℃)にカイラル材CB15(メルク社製)を液晶混合物とカイラル材の合計重量に対して32.7重量%となるように混合し、カイラルネマチック液晶組成物を調製した。
このカイラルネマチック液晶組成物は、Δnが0.17、Δεが22.8であり、580nmにピーク波長があるブロードな選択反射特性を示した。
【0069】
次に、ポリエーテルスルフォンフィルム基板上に設けられたITO(インジウム錫酸化物)の透明電極上に前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み600オングストロームの配向安定化膜を形成し、その上に6μm径のスペーサ(積水ファインケミカル社製)を散布した。また、もう一つのポリエーテルスルフォンフィルム基板上のITO透明電極上にも、前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み600オングストロームの配向安定化膜を形成した。
【0070】
続いて、第1基板上の周辺部にシール材XN21S(三井化学社製)をスクリーン印刷して所定高さの壁を形成した。その後、基板同士を貼り合せシール材を硬化させた。その後、所定量のカイラルネマチック液晶組成物を真空注入装置を用いて注入した。このセルの裏面(光を入射させる側とは反対側の基板面)にはピーク反射波長470nmの青色の光吸収膜DIC579(大日本インキ製)を設け、液晶表示素子を作製した。
【0071】
上記の液晶表示素子の電極間に白色状態(プレーナー状態)と青色状態(フォーカルコニック状態)にするために所定電圧で駆動したところ、40Vで白色状態、25Vで青色状態を示した。白色表示時の視感反射率Y値は21.8、色度(x,y)=(0.34,0.33)、分光反射波形の半値幅は95nmであり、白色度良好かつコントラストの高い素子であった。また、青色状態(フォーカルコニック状態)におけるピーク反射率は26.30%であった。観測する角度による表示特性の変化の度合いが小さく視野角特性が良好であった。
【0072】
(実験例4)
ネマチック液晶混合物D(誘電率異方性Δε:31.5、屈折率異方性Δn:0.220、ネマチックアイソトロピック相転移温度TNI:102℃)にカイラル材CB15(メルク社製)を液晶混合物とカイラル材の合計重量に対して37.4重量%となるように混合し、カイラルネマチック液晶組成物を調製した。このカイラルネマチック液晶組成物は、Δnが0.20、Δεが23.4であり、575nmにピーク波長があるブロードな選択反射特性を示した。
【0073】
次に、ポリエーテルスルフォンフィルム基板上に設けられたITO(インジウム錫酸化物)の透明電極上に前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み500オングストロームの配向安定化膜を形成し、その上に6μm径のスペーサ(積水ファインケミカル社製)を散布した。また、もう一つのポリエーテルスルフォンフィルム基板上のITO透明電極上にも、前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み500オングストロームの配向安定化膜を形成した。
【0074】
続いて、第1基板上の周辺部にシール材XN21S(三井化学社製)をスクリーン印刷して所定高さの壁を形成した。その後、基板同士を貼り合せシール材を硬化させた。その後、所定量のカイラルネマチック液晶組成物を真空注入装置を用いて注入した。このセルの裏面(光を入射させる側とは反対側の基板面)にはピーク反射波長470nmの青色の光吸収膜DIC579(大日本インキ製)を設け、液晶表示素子を作製した。
【0075】
上記の液晶表示素子の電極間に白色状態(プレーナー状態)と青色状態(フォーカルコニック状態)にするために所定電圧で駆動したところ、45Vで白色状態、30Vで青色状態を示した。白色表示時の視感反射率Y値は23.1、色度(x,y)=(0.32,0.33)、分光反射波形の半値幅は110nmであり、白色度良好かつコントラストの高い素子であった。また、青色状態(フォーカルコニック状態)におけるピーク反射率は26.30%であった。観測する角度による表示特性の変化の度合いが小さく視野角特性が良好であった。
【0076】
(実験例5)
ネマチック液晶混合物E(誘電率異方性Δε:32.0、屈折率異方性Δn:0.215、ネマチックアイソトロピック相転移温度TNI:103℃)にカイラル材CB15(メルク社製)を液晶混合物とカイラル材の合計重量に対して36.8重量%となるように混合し、カイラルネマチック液晶組成物を調製した。このカイラルネマチック液晶組成物は、Δnが0.19、Δεが23.2であり、590nmにピーク波長があるブロードな選択反射特性を示した。
【0077】
次に、ポリエーテルスルフォンフィルム基板上に設けられたITO(インジウム錫酸化物)の透明電極上に前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み300オングストロームの配向安定化膜を形成し、その上に6μm径のスペーサ(積水ファインケミカル社製)を散布した。また、もう一つのポリエーテルスルフォンフィルム基板上のITO透明電極上にも、前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み300オングストロームの配向安定化膜を形成した。
【0078】
続いて、第1基板上の周辺部にシール材XN21S(三井化学社製)をスクリーン印刷して所定高さの壁を形成した。その後、基板同士を貼り合せシール材を硬化させた。その後、所定量のカイラルネマチック液晶組成物を真空注入装置を用いて注入した。このセルの裏面(光を入射させる側とは反対側の基板面)にはピーク反射波長が460nmの青色の光吸収膜DIC221(大日本インキ製)を設け、液晶表示素子を作製した。この青色の光吸収膜は青色顔料の分散膜である。
【0079】
上記の液晶表示素子の電極間に白色状態(プレーナー状態)と青色状態(フォーカルコニック状態)にするために所定電圧で駆動したところ、45Vで白色状態、30Vで青色状態を示した。白色表示時の視感反射率Y値は23.3、色度(x,y)=(0.34,0.32)、分光反射波形の半値幅は100nmであり、白色度良好かつコントラストの高い素子であった。また、青色状態(フォーカルコニック状態)におけるピーク反射率は30.80%であった。観測する角度による表示特性の変化の度合いが小さく視野角特性が良好であった。
【0080】
(実験例6)
ネマチック液晶混合物F(誘電率異方性Δε:33.0、屈折率異方性Δn:0.230、ネマチックアイソトロピック相転移温度TNI:101℃)にカイラル材CB15(メルク社製)を液晶混合物とカイラル材の合計重量に対して35.8重量%となるように混合し、カイラルネマチック液晶組成物を調製した。このカイラルネマチック液晶組成物は、Δnが0.21、Δεが26.5であり、600nmにピーク波長があるブロードな選択反射特性を示した。
【0081】
次に、ポリカーボネートフィルム基板上に設けられたITO(インジウム錫酸化物)の透明電極上に前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み400オングストロームの配向安定化膜を形成し、その上に6μm径のスペーサ(積水ファインケミカル社製)を散布した。また、もう一つのポリカーボネートフィルム基板上のITO透明電極上にも、前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み400オングストロームの配向安定化膜を形成した。
【0082】
続いて、第1基板上の周辺部にシール材XN21S(三井化学社製)をスクリーン印刷して所定高さの壁を形成した。その後、基板同士を貼り合せシール材を硬化させた。その後、所定量のカイラルネマチック液晶組成物を真空注入装置を用いて注入した。このセルの裏面(光を入射させる側とは反対側の基板面)にはピーク反射波長が460nmの青色の光吸収膜DIC221(大日本インキ製)を設け、液晶表示素子を作製した。
【0083】
上記の液晶表示素子の電極間に白色状態(プレーナー状態)と青色状態(フォーカルコニック状態)にするために所定電圧で駆動したところ、45Vで白色状態、30Vで青色状態を示した。白色表示時の視感反射率Y値は22.8、色度(x,y)=(0.33.0.32)、分光反射波形の半値幅は105nmであり、白色度良好かつコントラストの高い素子であった。また、青色状態(フォーカルコニック状態)におけるピーク反射率は30.80%であった。観測する角度による表示特性の変化の度合いが小さく視野角特性が良好であった。
【0084】
(実験例7)
ネマチック液晶混合物G(誘電率異方性Δε:36.5、屈折率異方性Δn:0.225、ネマチックアイソトロピック相転移温度TNI:105℃)に、カイラル材CB15(メルク社製)とカイラル材S−811(メルク社製)とを3:2の重量比で混合したものを、液晶混合物とカイラル材の合計重量に対して35重量%となるように混合し、カイラルネマチック液晶組成物を調製した。このカイラルネマチック液晶組成物は、Δnが0.20、Δεが30.2であり、570nmにピーク波長があるブロードな選択反射特性を示した。
【0085】
次に、ポリエーテルスルフォンフィルム基板上に設けられたITO(インジウム錫酸化物)の透明電極上に前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み150オングストロームの配向安定化膜を形成し、その上に6μm径のスペーサ(積水ファインケミカル社製)を散布した。また、もう一つのポリエーテルスルフォンフィルム基板上のITO透明電極上にも、前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み150オングストロームの配向安定化膜を形成した。
【0086】
続いて、第1基板上の周辺部にシール材XN21S(三井化学社製)をスクリーン印刷して所定高さの壁を形成した。その後、基板同士を貼り合せシール材を硬化させた。その後、所定量のカイラルネマチック液晶組成物を真空注入装置を用いて注入した。このセルの裏面(光を入射させる側とは反対側の基板面)にはピーク反射波長が470nmの青色の光吸収膜DIC579(大日本インキ製)を設け、液晶表示素子を作製した。
【0087】
上記の液晶表示素子の電極間に白色状態(プレーナー状態)と青色状態(フォーカルコニック状態)にするために所定電圧で駆動したところ、43Vで白色状態、28Vで青色状態を示した。白色表示時の視感反射率Y値は23.7、色度(x,y)=(0.33,0.31)、分光反射波形の半値幅は108nmであり、白色度良好かつコントラストの高い素子であった。また、青色状態(フォーカルコニック状態)におけるピーク反射率は26.30%であった。観測する角度による表示特性の変化の度合いが小さく視野角特性が良好であった。
【0088】
(実験例8)
ネマチック液晶混合物H(誘電率異方性Δε:20.8、屈折率異方性Δn:0.182、ネマチックアイソトロピック相転移温度TNI:105℃)にカイラル材CB15(メルク社製)を液晶混合物とカイラル材の合計重量に対して36.8重量%となるように混合し、カイラルネマチック液晶組成物を調製した。このカイラルネマチック液晶組成物は、Δnが0.16、Δεが14.6であり、585nmにピーク波長があるブロードな選択反射特性を示した。
【0089】
次に、ガラス基板上に設けられたITO(インジウム錫酸化物)の透明電極上に前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み1400オングストロームの配向安定化膜を形成し、その上に6μm径のスペーサ(積水ファインケミカル社製)を散布した。また、もう一つのガラス基板上のITO透明電極上にも、前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み140オングストロームの配向安定化膜を形成した。
【0090】
続いて、第1基板上の周辺部にシール材XN21S(三井化学社製)をスクリーン印刷して所定高さの壁を形成した。その後、基板同士を貼り合せシール材を硬化させた。その後、所定量のカイラルネマチック液晶組成物を真空注入装置を用いて注入した。このセルの裏面(光を入射させる側とは反対側の基板面)にはピーク反射波長が470nmの青色の光吸収膜DIC579(大日本インキ製)を設け、液晶表示素子を作製した。
【0091】
上記の液晶表示素子の電極間に白色状態(プレーナー状態)と青色状態(フォーカルコニック状態)にするために所定電圧で駆動したところ、55Vで白色状態、40Vで青色状態を示した。白色表示時の視感反射率Y値は21.8、色度(x,y)=(0.34,0.32)、分光反射波形の半値幅は105nmであり、白色度良好かつコントラストの高い素子であった。また、青色状態(フォーカルコニック状態)におけるピーク反射率は26.30%であった。観測する角度による表示特性の変化の度合いが小さく視野角特性が良好であった。
【0092】
(実験例9)
ネマチック液晶混合物I(誘電率異方性Δε:30.6、屈折率異方性Δn:0.230、ネマチックアイソトロピック相転移温度TNI:102℃)にカイラル材CB15(メルク社製)を液晶混合物とカイラル材の合計重量に対して36.8重量%となるように混合し、カイラルネマチック液晶組成物を調製した。このカイラルネマチック液晶組成物は、Δnが0.20、Δεが24.2であり、595nmにピーク波長があるブロードな選択反射特性を示した。
【0093】
次に、ポリエーテルスルフォンフィルム基板上に設けられたITO(インジウム錫酸化物)の透明電極上に前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み500オングストロームの配向安定化膜を形成し、この基板を弱くラビングした。ラビング処理の条件としては、レーヨンのラビング布を巻いたローラーの回転数を50rpm、配向安定化膜の形成されたプラスチック基板に対するラビングローラーの相対移動速度を140cm/分、ラビング布のパイルの押込み量を0.3mmとした(ラビング密度約15)。その上に6μm径のスペーサ(積水ファインケミカル社製)を散布した。また、もう一つのポリエーテルスルフォンフィルム基板上のITO透明電極上にも、前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み500オングストロームの配向安定化膜を形成した。なお、こちらの基板にはラビング処理は行わなかった。
【0094】
続いて、第1基板上の周辺部にシール材XN21S(三井化学社製)をスクリーン印刷して所定高さの壁を形成した。その後、基板同士を貼り合せシール材を硬化させた。その後、所定量のカイラルネマチック液晶組成物を真空注入装置を用いて注入した。このセルの裏面(光を入射させる側とは反対側の基板面)にはピーク反射波長が470nmの青色の光吸収膜DIC579(大日本インキ製)を設け、液晶表示素子を作製した。
【0095】
上記の液晶表示素子の電極間に白色状態(プレーナー状態)と青色状態(フォーカルコニック状態)にするために所定電圧で駆動したところ、45Vで白色状態、30Vで青色状態を示した。白色表示時の視感反射率Y値は24.2、色度(x,y)=(0.34,0.33)、分光反射波形の半値幅は112nmであり、白色度良好かつコントラストの高い素子であった。また、青色状態(フォーカルコニック状態)におけるピーク反射率は26.30%であった。観測する角度による表示の変化が小さく視野角特性が良好であった。
【0096】
(比較例1)
ネマチック液晶混合物A(誘電率異方性Δε:32.4、屈折率異方性Δn:0.230、ネマチックアイソトロピック相転移温度TNI:103℃)にカイラル材CB15(メルク社製)を液晶混合物とカイラル材の合計重量に対して37.7重量%となるように混合し、カイラルネマチック液晶組成物を調製した。このカイラルネマチック液晶組成物は、Δnが0.20、Δεが25.2であり、560nmにピーク波長があるブロードな選択反射特性を示した。
【0097】
次に、ポリエーテルスルフォンフィルム基板上に設けられたITO(インジウム錫酸化物)の透明電極上に前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み800オングストロームの配向安定化膜を形成し、その上に6μm径のスペーサ(積水ファインケミカル社製)を散布した。また、もう一つのポリエーテルスルフォンフィルム基板上のITO透明電極上にも、前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み800オングストロームの配向安定化膜を形成した。
【0098】
続いて、第1基板上の周辺部にシール材XN21S(三井化学社製)をスクリーン印刷して所定高さの壁を形成した。その後、基板同士を貼り合せシール材を硬化させた。その後、所定量のカイラルネマチック液晶組成物を真空注入装置を用いて注入した。このセルの裏面(光を入射させる側とは反対側の基板面)にはピーク反射波長が470nmの青色の光吸収膜DIC579(大日本インキ製)を設け、液晶表示素子を作製した。
【0099】
上記の液晶表示素子の電極間に白色状態(プレーナー状態)と青色状態(フォーカルコニック状態)にするために所定電圧で駆動したところ、45Vで白色状態、30Vで青色状態を示した。白色表示時の視感反射率Y値は18.1、色度(x,y)=(0.35,0.37)、分光反射波形の半値幅は110nmであり、白色度が悪く、コントラストの低い素子であった。また、青色状態(フォーカルコニック状態)におけるピーク反射率は26.30%であった。観測する角度による表示特性の変化の度合いが実験例のものに比べて大きくなり、視野角特性が実験例のものより劣っていた。
【0100】
(比較例2)
ネマチック液晶混合物A(誘電率異方性Δε:32.4、屈折率異方性Δn:0.230、ネマチックアイソトロピック相転移温度TNI:103℃)にカイラル材CB15(メルク社製)を液晶混合物とカイラル材の合計重量に対して36.8重量%となるように混合し、カイラルネマチック液晶組成物を調製した。このカイラルネマチック液晶組成物は、Δnが0.21、Δεが23.7であり、595nmにピーク波長があるブロードな選択反射特性を示した。
【0101】
次に、ポリエーテルスルフォンフィルム基板上に設けられたITO(インジウム錫酸化物)の透明電極上に前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み800オングストロームの配向安定化膜を形成し、その上に6μm径のスペーサ(積水ファインケミカル社製)を散布した。また、もう一つのポリエーテルスルフォンフィルム基板上のITO透明電極上にも、前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み800オングストロームの配向安定化膜を形成した。
【0102】
続いて、第1基板上の周辺部にシール材XN21S(三井化学社製)をスクリーン印刷して所定高さの壁を形成した。その後、基板同士を貼り合せシール材を硬化させた。その後、所定量のカイラルネマチック液晶組成物を真空注入装置を用いて注入した。このセルの裏面(光を入射させる側とは反対側の基板面)にはピーク反射波長が490nmの青色の光吸収膜DIC2361(大日本インキ製)を設け、液晶表示素子を作製した。
【0103】
上記の液晶表示素子の電極間に白色状態(プレーナー状態)と青色状態(フォーカルコニック状態)にするために所定電圧で駆動したところ、45Vで白色状態、30Vで青色状態を示した。白色表示時の視感反射率Y値は17.9、色度(x,y)=(0.35,0.35)、分光反射波形の半値幅は110nmであり、白色度が悪く、コントラストの低い素子であった。また、青色状態(フォーカルコニック状態)におけるピーク反射率は11.45%であった。観測する角度による表示特性の変化の度合いが実験例のものに比べて大きくなり、視野角特性が実験例のものより劣っていた。
【0104】
(比較例3)
ネマチック液晶混合物A(誘電率異方性Δε:32.4、屈折率異方性Δn:0.230、ネマチックアイソトロピック相転移温度TNI:103℃)にカイラル材CB15(メルク社製)を液晶混合物とカイラル材の合計重量に対して35.3重量%となるように混合し、カイラルネマチック液晶組成物を調製した。このカイラルネマチック液晶組成物は、Δnが0.21、Δεが24.4であり、620nmにピーク波長があるブロードな選択反射特性を示した。
【0105】
次に、ポリエーテルスルフォンフィルム基板上に設けられたITO(インジウム錫酸化物)の透明電極上に前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み800オングストロームの配向安定化膜を形成し、その上に6μm径のスペーサ(積水ファインケミカル社製)を散布した。また、もう一つのポリエーテルスルフォンフィルム基板上のITO透明電極上にも、前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み800オングストロームの配向安定化膜を形成した。
【0106】
続いて、第1基板上の周辺部にシール材XN21S(三井化学社製)をスクリーン印刷して所定高さの壁を形成した。その後、基板同士を貼り合せシール材を硬化させた。その後、所定量のカイラルネマチック液晶組成物を真空注入装置を用いて注入した。このセルの裏面(光を入射させる側とは反対側の基板面)にはピーク反射波長が490nmの青色の光吸収膜DIC2361(大日本インキ製)を設け、液晶表示素子を作製した。
【0107】
上記の液晶表示素子の電極間に白色状態(プレーナー状態)と青色状態(フォーカルコニック状態)にするために所定電圧で駆動したところ、45Vで白色状態、30Vで青色状態を示した。白色表示時の視感反射率Y値は18.8、色度(x,y)=(0.34,0.36)、分光反射波形の半値幅は110nmであり、白色度が悪く、コントラストの低い素子であった。また、青色状態(フォーカルコニック状態)におけるピーク反射率は11.45%であった。観測する角度による表示特性の変化の度合いが大きく、視野角特性は実用に適さないレベルのものであった。
【0108】
(比較例4)
ネマチック液晶混合物J(誘電率異方性Δε:30.2、屈折率異方性Δn:0.126、ネマチックアイソトロピック相転移温度TNI:90.7℃)にカイラル材CB15(メルク社製)を液晶混合物とカイラル材の合計重量に対して32.3重量%となるように混合し、カイラルネマチック液晶組成物を調製した。
このカイラルネマチック液晶組成物は、Δnが0.10、Δεが22.4であり、605nmにピーク波長を示した。
【0109】
次に、ポリエーテルスルフォンフィルム基板上に設けられたITO(インジウム錫酸化物)の透明電極上に前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み800オングストロームの配向安定化膜を形成し、その上に6μm径のスペーサ(積水ファインケミカル社製)を散布した。また、もう一つのポリエーテルスルフォンフィルム基板上のITO透明電極上にも、前記配向膜形成剤(JSR社製AL−4552)を用いて厚み800オングストロームの配向安定化膜を形成した。
【0110】
続いて、第1基板上の周辺部にシール材XN21S(三井化学社製)をスクリーン印刷して所定高さの壁を形成した。その後、基板同士を貼り合せシール材を硬化させた。その後、所定量のカイラルネマチック液晶組成物を真空注入装置を用いて注入した。このセルの裏面(光を入射させる側とは反対側の基板面)にはピーク反射波長が470nmの青色の光吸収膜DIC579(大日本インキ製)を設け、液晶表示素子を作製した。
【0111】
上記の液晶表示素子の電極間に白色状態(プレーナー状態)と青色状態(フォーカルコニック状態)にするために所定電圧で駆動したところ、50Vで白色状態、35Vで青色状態を示した。白色表示時の視感反射率Y値は18.6、色度(x,y)=(0.35,0.36)、分光反射波形の半値幅は86nmであり、白色度が低くかつコントラストの低い素子であった。また、青色状態(フォーカルコニック状態)におけるピーク反射率は26.30%であった。観測する角度による表示特性の変化の度合いが大きく、視野角特性は実用に適さないレベルのものであった。
【0112】
(他の実施形態)
なお、本発明に係る液晶表示素子は前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0113】
特に、液晶セルの構成に関しては、液晶組成物と高分子樹脂組成物とからなる網目状の複合膜を形成するネットワーク型であってもよい。また、柱状の高分子構造物は格子状の形状であってもよいし、上下基板を接続しない構造のものでもよい。但し、ネットワーク型の場合は駆動電圧の上昇を招きやすい。また、格子状の高分子構造物の場合は素子製造工程が複雑になったりコントラストが低下したりしやすくなる。さらに、高分子構造物が両基板を接着しない場合、液晶層の厚みが不均一になりやすい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態である液晶表示素子の断面構図を示す概略図であり、(A)は液晶層に含まれる液晶組成物がプレーナ状態にある場合を示し、(B)は液晶層に含まれる液晶組成物がフォーカルコニック状態にある場合を示す。
【図2】本発明の第2実施形態である液晶表示素子の断面構図を示す概略図であり、液晶層に含まれる液晶組成物がプレーナ状態にある場合を示す。
【図3】本発明の第4実施形態である液晶表示素子の断面構図を示す概略図であり、液晶層に含まれる液晶組成物がプレーナ状態にある場合を示す。
【符号の説明】
11,12…透明基板
13,14…透明電極
15…絶縁性薄膜
16…配向安定化膜
17…青色の光吸収層
18…スペーサー
20…柱状構造物
21…液晶組成物
25…電源
Claims (4)
- 少なくとも一方が透明な一対の基板間に、室温で可視光中の特定の波長を選択反射するカイラルネマチック液晶組成物を挟持した液晶表示素子において、
一対の基板に配向安定化膜が形成されており、
表示面に対向する基板に青色の光吸収層が設けられており、
前記カイラルネマチック液晶組成物の選択反射のピーク反射波長が570〜600nmの範囲内にあり、
前記青色の光吸収層のピーク反射波長が450〜480nmの範囲内であり、
前記液晶組成物からなる液晶層を選択反射状態にしたときの分光反射波形の半値幅が95〜115nmであること、
を特徴とする液晶表示素子。 - 前記青色の光吸収層のピーク反射率が20〜35%であることを特徴とする請求項1記載の液晶表示素子。
- 前記カイラルネマチック液晶組成物中に含まれるネマチック液晶混合物の屈折率異方性が0.17〜0.23、誘電率異方性が15〜40であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の液晶表示素子。
- 駆動電圧が60V以下であることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の液晶表示素子。
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