JP4560903B2 - 可撓性シートとこれを用いた空気膜構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、貯槽等の収蔵施設上部にコンクリートドーム屋根を構築する際のコンクリート打設面とする空気膜構造や、競技場等の人員収容施設のドーム屋根自体を構成する空気膜構造の膜体として好適な可撓性シートと、これを用いた空気膜構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、ドーム屋根に用いる空気膜構造では、施設の屋根を形成すべき上方開放部の全体を可撓性シートで覆って膜体とし、施設内部の空気圧を上げて当該膜体を所要の球面形状や曲面形状に膨らませるようになっている。しかして、この膜体に使用する可撓性シートにおいては、広面積の膜体として自己保持するための強度が必要であり、とりわけコンクリートドーム屋根の構築に用いる場合、その上に打設されるコンクリート重量に耐える大きな引張強度が要求され、また膨らませた際に一定した曲率の凸曲面形状をなすように伸びが小さく、そのばらつきも少ないことが望ましい。
【0003】
従来、このような空気膜構造用の可撓性シートとして塩化ビニル樹脂材料をコーティングした織布が汎用されてきたが、塩化ビニル樹脂は、耐蝕性や耐候性に劣る上、必須成分として含まれる可塑剤等の液体成分が経時的に溶出したり滲み出して害を及ぼす懸念もあり、環境衛生面での問題が指摘されている。このため、近年においては、例えば給水所の配水タンクや最終処分場等のコンクリート屋根構築用の膜体として、前記の塩化ビニル樹脂材料をコーティングした織布に代わる可撓性シートが希求されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、塩化ビニル樹脂の場合はペーストレジンのコーティングによって織布に含浸させる形で樹脂層を形成できることから、樹脂層と織布とを積層一体化することは容易であるが、塩化ビニル樹脂に比較して耐蝕性や耐候性に優れる他の汎用樹脂では、ペーストレジンのコーティングを採用できないため、樹脂層と織布との密着性を十分に確保することが極めて困難である。そこで、密着性を確保する手段として、目の粗い織布の表裏両側にポリオレフィンの如き熱可塑性樹脂のシートを積層し、熱プレス等によって該織布の目つまり表裏に透通する開口部で表裏の樹脂シートを物理的に接合することが考えられる。
【0005】
このような積層一体化手段による可撓性シートは、建物屋上やベランダ等に敷設する防水シートとして既知(特開昭58−124645号公報、特開平6−43469号公報、同11−333957号公報等)であり、実用に供されている。しかしながら、この種の可撓性シートを空気膜構造の膜体に用いた場合、織布の織物組織の経緯方向つまり縦糸方向と横糸方向については充分な引張強度が得られるが、斜め45度方向の引張力が加わると、織り目にズレを生じて織布と樹脂層との間で界面剥離が発生し易いため、強度的に問題があり、とりわけコンクリートドーム屋根の構築用膜体としては採用困難であった。
【0006】
この発明は、上述の事情に鑑みて、織布と樹脂層との積層シートであって、耐蝕性や耐候性に優れ、しかも織布の経緯方向に加えて斜め45度方向についても充分な引張強度を具備し、コンクリートドーム屋根を構築する際のコンクリート打設面とする空気膜構造や、競技場等の観客収容施設のドーム屋根自体を構成する空気膜構造の膜体として好適に使用できる可撓性シートと、これを用いた空気膜構造を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明の請求項1に係る可撓性シートは、図面の参照符号を付して示せば、表裏に透通する開口部を有しないポリプロピレン繊維からなる織布(1)の少なくとも片面側に、ポリオレフィン系樹脂層(2)が設けられてなるものとしている。
【0008】
すなわち、この可撓性シートでは、織布(1)と樹脂層(2)とが同系の樹脂で親和性がよく、両者(1)(2)が強固に接合一体化していることに加え、織布(2)は目が詰まって開口部のないものであるから、織布(1)の経緯方向に対する引張強度が大きいばかりか、斜め45度方向についても充分な引張強度を発揮し、コンクリートドーム屋根を構築する際のコンクリート打設面とする空気膜構造や、競技場等の観客収容施設のドーム屋根自体を構成する空気膜構造の膜体としての適性を備える。そして、樹脂層(2)がポリオレフィン系樹脂からなることから、従来の塩化ビニル樹脂を用いたものに比較して耐蝕性及び耐候性に優れると共に、該樹脂層(2)には可塑剤等の液体成分が含まれず、その溶出や滲み出しによる問題がないから、コンクリートドーム屋根の構築では、施工後に当該可撓性シートを残すことにより、耐薬品性ライニングとして充分に機能させることができ、またドーム屋根自体を構成する空気膜構造として優れた耐久性を付与できる。
【0009】
請求項2の発明は、上記請求項1の可撓性シートにおいて、ポリオレフィン系樹脂層(2)が織布(1)に対するポリプロピレン系樹脂シートの溶着によって形成されてなるものとしている。この場合、織布(1)と樹脂層(2)とは略同種の樹脂であるから、熱溶着によって完全に接合一体化することから、経緯方向及び斜め45度方向の引張強度がより大きくなり、また空気膜構造の広面積の膜体とするためにシートの端部同士を重ねて接合した部分は、空気膜を外側へ膨らませるための内圧による剪断応力が加わっても伸びを生じにくくなる。
【0010】
請求項3の発明は、上記請求項1又は2の可撓性シートにおいて、ポリプロピレン繊維からなる織布の織り糸が1000〜1500デニールの太さを有すると共に、ポリオレフィン系樹脂層が0.8〜2.0mmの層厚を有するものとしている。この構成では、織布の強度が大きいため、空気膜構造の膜体として充分な強度を確保できる上、シート全体が適度な厚みとなって施工性及び取扱い性がよいものとなる。
【0011】
請求項4の発明は、施設(3)内空間(30)の上方側が前記請求項1〜3のいずれかに記載の可撓性シート(S)からなる膜体(4)によって覆われ、この膜体(4)を施設内空間の空気圧によって屋外側へドーム状に膨らんだ形状に保持するように構成されてなる空気膜構造を要旨としている。このような空気膜構造では、膜体(4)の強度が大きく、コンクリートドーム屋根の構築において打設されるコンクリート(5)の重量に耐え、また該膜体(4)の各方向への引張強度のバランスがよく、該膜体を内圧によって屋外側へ膨らませた際の曲面形状が歪みのない安定したものとなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1(イ)(ロ)は、この発明に係る可撓性シートの一構成例を示す。この可撓性シート(S)は、ポリプロピレン繊維からなる平織の織布(1)の両面に、ポリオレフィン系樹脂層(2)(2)が積層一体化された3層構造をなす。その織布(1)は、偏平に潰れた断面を有するポリプロピレン繊維からなる緯糸(11)…及び経糸(12)…を、表裏に透通する開口部を生じないように、目が詰んだ平織にしたものである。また、ポリオレフィン系樹脂層(2)は、ポリオレフィン系樹脂のシートを織布(1)に熱プレスして溶着させたものである。
【0013】
このような可撓性シート(S)は、その所要形状とした多数枚を継ぎ合わせて広面積の膜体とし、貯槽等の収蔵施設上部にコンクリートドーム屋根を構築する際のコンクリート打設面とする空気膜構造や、競技場の如き観客収容施設等のドーム屋根自体を構成する空気膜構造の形成に使用する。
【0014】
例えば、前者のコンクリートドーム屋根の構築においては、図2に示すように、該可撓性シート(S)からなる膜体(4)で貯槽等の収蔵施設(3)の上方開放部の全体を覆い、密封した該施設(3)の内部空間(30)に送風機(5)によって空気を送り込んで内圧を高めることにより、膜体(4)を外側へドーム状に膨らませた状態に維持し、この膜体(4)上に鉄筋や補強剤(図示省略)等の所要の埋設物を配置してコンクリート(6)を打設する。一方、ドーム屋根自体を構成する空気膜構造の場合は、該膜体(4)を観客収容施設等の上方開放部の全体を覆うように取り付け、施設(3)の内側の圧力を外気圧よりも常時高く維持し、もって外側へドーム状に膨らんだ状態に保持することになる。
【0015】
このような空気膜構造においては、膜体には内圧で外側へ膨らんだ状態に自己保持するために強い張力が加わることになり、特にコンクリートドーム屋根の構築の場合には打設されるコンクリートの重量に耐えるために該張力は非常に大きくなる。しかるに、前記可撓性シート(S)からなる膜体は、該張力に充分に耐え得る強度を具備し、且つ空気膜構造として内圧で外側へ膨らませた際に一定した曲率の凸曲面形状を現出する。
【0016】
すなわち、この可撓性シート(S)では、織布(1)の繊維素材と樹脂層(2)とが共にポリオレフィン系樹脂であるために親和性がよく、両者(1)(2)が熱溶着によって強固に接合一体化していることに加え、織布(2)は目が詰まって開口部のないものであるから、織布(1)の経緯方向に対する引張強度が大きいばかりか、斜め45度方向にも充分な引張強度を発揮する。また、空気膜構造の広面積の膜体(4)とする際、図3(イ)に示すようにシートの端部同士を重ねて溶着接合することになるが、織布(1)と両側の樹脂層(2)(2)とが強固に一体化しているため、空気膜構造形成後の内圧の上昇によって矢印で示すように剪断応力が加わっても、接合端部での伸びを生じにくい。従って、空気膜構造の膜体として内圧で外側へ膨らんだ際の形状が安定したものとなる。
【0017】
これに対し、織布(1)の繊維と両側の樹脂層(2)(2)とが異質の素材で親和性に乏しい場合は、図3(ロ)に示すように、矢印の如く剪断応力が加わると、伸び率の小さい織布(1)と両側の樹脂層(2)(2)との界面でずれを生じ、接合端部は織布(1)のない状態となって大きな伸びが発生し、これによって膜体(4)の膨らんだ形状に歪みが出ることになる。
【0018】
また、この可撓性シート(S)では、樹脂層(2)がポリオレフィン系樹脂であり、従来の塩化ビニル樹脂を用いたものに比較して耐蝕性及び耐候性に優れていることから、前記のコンクリートドーム屋根の構築後にそのまま残すことによって屋根内面側の耐薬品性ライニングとして利用できる一方、ドーム屋根自体を構成する空気膜構造に用いた場合は優れた耐久性を発揮する。更に、この可撓性シート(S)は、樹脂層(2)に可塑剤等の液体成分を含まず、その溶出や滲み出しによる問題がないから、例えば給水所の配水タンクや最終処分場等のコンクリートドーム屋根構築用の空気膜構造の膜体に用い、その構築後にライニングとして残すのに好適である。
【0019】
しかして、この可撓性シート(S)における樹脂層(2)のポリオレフィン系樹脂としては、特に制約はないが、ポリプロピレン系樹脂が最適である。すなわち樹脂層(2)がポリプロピレン系樹脂である場合、織布(1)のポリプロピレン繊維に対する親和性が特に良好であるから、ポリプロピレン系樹脂のシートを織布(1)に溶着させた際、形成される樹脂層(2)が織布(1)に完全に一体化することになる。なお、樹脂層(2)のポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独ポリマーの他、プロピレンを主体とした他のモノマーとの共重合体、ポリプロピレンを主成分とした他のポリオレフィン系樹脂との混合物も包含する。
【0020】
この発明の可撓性シート(S)に用いる織布(1)は、図1(イ)(ロ)では平織のものを例示したが、表裏に透通する開口部を有しない目の詰んだ形態であれば、綾織等の他の織り方式であっても差し支えない。また、織布(1)のポリプロピレン繊維からなる織り糸は、図1(ロ)に示すような偏平に潰れた断面を有するものに限らず、通常の円形断面や様々な異形断面を有する糸も使用可能であり、糸の種類についてもモノフィラメント糸、マルチフィラメント糸、一軸延伸フィルム糸(フィルム幅方向を折り重ねる形で幅を縮めて偏平に潰れた断面の糸状にしたもの…図1)、紡績糸等の様々なものを使用できる。
【0021】
しかして、この発明の可撓性シート(S)は、ポリプロピレン繊維からなる織布(1)の片面のみにポリオレフィン系樹脂層(2)が設けられた2層構造のものも包含するが、前記の3層構造及び2層構造共に、織布(1)の織り糸の太さが1000〜1500デニールの範囲にあり、且つポリオレフィン系樹脂層が0.8〜2.0mmの層厚を有するものが好適である。すなわち、このような構成では、織布の強度が大きく、空気膜構造の膜体として充分な強度を確保できる上、シート全体が適度な厚みとなって施工性及び取扱い性がよいものとなる。
【0022】
この発明に係る空気膜構造は、上記の可撓性シート(S)からなる膜体によって施設内空間の上方側が覆われ、この膜体を施設内空間の空気圧によって屋外側へドーム状に膨らんだ形状に保持するように構成されたものであり、既述したように、貯槽等の収蔵施設上部にコンクリートドーム屋根を構築する際のコンクリート打設面とする空気膜構造と、競技場の如き観客収容施設等のドーム屋根自体を構成する空気膜構造とを包含する。しかして、膜体とするための可撓性シート(S)の継ぎ合わせ構成と使用枚数、膜体の大きさ、膜体が内圧で膨らんだ時の形状等については、構築すべき空気膜構造に応じて適宜設定すればよい。
【0023】
【実施例】
次に、この発明に係る可撓性シートの実施例について、比較例と対比して具体的に説明する。
【0024】
実施例
緯糸及び経糸が偏平に潰れた断面を有する太さ1500デニールのポリプロピレン一軸延伸フィルム糸からなり、表裏に透通する開口部を有しない目の詰んだ平織の織布(トスコ社製ハイパワー#5000)の両面に、各々厚さ0.5mmのポリプロピレン樹脂シート(筒中プラスチック工業社製サンロイドSG)を重ね合わせ、温度170℃、圧力4Kg/cm2 にて10分間の熱プレスを行うことにより、織布の両面にポリプロピレン樹脂層が接合一体化した厚さ1.5mmの3層構造の可撓性シートを得た。
【0025】
比較例1
緯糸及び経糸が太さ1500デニールのポリエステル糸からなり、表裏に透通する開口部を有する目の粗い平織の織布(クラボウ社製ポリエステル系ネット試作品)の両面に、各々ポリプロピレン樹脂シート(実施例1と同じ)を重ね合わせ、実施例1と同様の熱プレスを行うことにより、織布の両面にポリプロピレン樹脂層が接合一体化した厚さ1.0mmの3層構造の可撓性シートを得た。
【0026】
比較例2
緯糸及び経糸が太さ1500デニールのポリエステル糸からなり、表裏に透通する開口部を有する目の粗い平織の織布(クラレ社製ポリエステル系ネットKFE10)の両面に、各々ポリプロピレン樹脂シート(実施例1と同じ)を重ね合わせ、実施例1と同様の熱プレスを行うことにより、織布の両面にポリプロピレン樹脂層が接合一体化した厚さ1.0mmの3層構造の可撓性シートを得た。
【0027】
比較例3
緯糸及び経糸が太さ1500デニールのポリエステル糸からなり、表裏に透通する開口部を有しない目の詰んだ平織の織布(ユニチカ社製ポリエステル系ネットU−300)の両面に、オレフィン系プライマー処理を施したのち、該織布の両面に各々ポリプロピレン樹脂シート(実施例1と同じ)を重ね合わせ、実施例1と同様にして熱プレスを行うことにより、織布の両面にポリプロピレン樹脂層が接合一体化した厚さ1.5mmの3層構造の可撓性シートを得た。
【0028】
実施例及び比較例1〜3の各可撓性シートについて、JIS L 1096(一般織物試験方法準拠)A法により、試験速度200mm/分、試験幅3cmの条件でMD方向(ウエール方向)、TD方向(コース方向)、45度方向の各引張強度と伸び率を測定した。その結果を、45度方向/MD方向の引張強度比と、シートの樹脂層−織布界面の耐剥離性と共に次の表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
上表の結果から、ポリエステル繊維からなる目の粗い織布の表裏両側にポリプロピレン樹脂のシートを重ね、熱プレスによって該織布の表裏に透通する開口部で表裏両側の樹脂シートを溶着した比較例1及び2の可撓性シートでは、45度方向の引張強度はMD方向の引張強度(最高強度)に対して20%程度しかなく、且つ45度方向の伸びも大きく、空気膜構造の膜体としての適用性に劣ることが明らかである。これに対し、この発明に係る実施例の可撓性シートでは、MD方向、TD方向、45度方向の全ての引張強度が比較例1,2の可撓性シートよりも大きく、しかも45度方向の引張強度はMD方向の引張強度の40%以上であってシートとしての強度バランスがよい上、45度方向の伸びも比較例1,2の可撓性シートに比較して小さく、空気膜構造の膜体としての適用性に優れていることが判る。一方、表裏に透通する開口部を有しない目の詰んだものであってもポリエステル繊維製の織布を用いた比較例3の可撓性シートでは、各方向の引張強度が大きく、45度方向の伸びも小さいものの、プライマー処理を施しているにも拘らず織布と両側のポリプロピレン樹脂層との接合力が弱い(手で剥離できる程度)ために空気膜構造の膜体として実用に供し得ない。
【0031】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、貯槽等のコンクリートドーム屋根を構築する際のコンクリート打設面とする空気膜構造や、競技場等の観客収容施設のドーム屋根自体を構成する空気膜構造の膜体として使用される可撓性シートとして、表裏に透通する開口部を有しないポリプロピレン繊維からなる織布にポリオレフィン系樹脂層が接合一体化した構造であることから、従来の織布に塩化ビニル樹脂をコーテングしたシートに代替し得る強度特性を備え、しかも耐蝕性及び耐候性に優れ、コンクリートドーム屋根の構築では施工後に残して耐薬品性ライニングとして利用でき、またドーム屋根自体を構成する空気膜構造として優れた耐久性を付与でき、液体成分の溶出や滲み出しによる問題もないから、例えば給水所の配水タンクや最終処分場等のコンクリート屋根構築用の膜体としても好適なものが提供される。
【0032】
請求項2の発明によれば、上記の可撓性シートとして、ポリオレフィン系樹脂層が織布に対してポリプロピレン系樹脂シートを溶着したものであることから、経緯方向及び斜め45度方向の引張強度がより大きく、空気膜構造の広面積の膜体とするためにシートの端部同士を重ねて接合した部分に剪断応力が加わっても伸びを生じにくく、空気膜構造において内圧によって外側へ膨らむ時に歪みのない安定した曲面形状となり、且つ製造容易なものが提供される。
【0033】
請求項3の発明によれば、上記の可撓性シートとして、織布の強度が大きいため、空気膜構造の膜体として充分な強度を確保できる上、シート全体が適度な厚みを有し、施工性及び取扱い性のよいものが提供される。
【0034】
請求項4の発明に係る空気膜構造は、前記可撓性シートからなる膜体を用いることから、コンクリートドーム屋根の構築において打設されるコンクリートの重量に耐える強度を備える共に、該膜体を内圧によって屋外側へ膨らませた際の曲面形状が安定し、且つ耐蝕性及び耐候性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明に係る可撓性シートの構成例を示し、(イ)図は一部破断平面図、(ロ)図は断面図である。
【図2】 同可撓性シートを用いた空気膜構造の一例を示す概略縦断側面図である。
【図3】 空気膜構造の膜体とするための可撓性シートの端部同士の溶着接合部に剪断応力が加わった際の状態を示し、(イ)図はこの発明の可撓性シートにおける溶着接合部の断面図、(ロ)図は織布と樹脂層の素材が異質である可撓性シートにおける溶着接合部の断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・織布
11・・・・・・緯糸
12・・・・・・経糸
2・・・・・・・樹脂層
3・・・・・・・施設
4・・・・・・・膜体
6・・・・・・・コンクリート
S・・・・・・・可撓性シート
Claims (3)
- 表裏に透通する開口部を有しない目の詰んだポリプロピレン繊維からなる織布の少なくとも片面側に、ポリオレフィン系樹脂層が設けられてなり、
ポリオレフィン系樹脂層は、織布に対してポリプロピレン系樹脂シートが熱溶着によって接合一体化されることにより形成されてなる可撓性シート。 - ポリプロピレン繊維からなる織布の織り糸が1000〜1500デニールの太さを有すると共に、ポリオレフィン系樹脂層が0.8〜2.0mmの層厚を有する請求項1に記載の可撓性シート。
- 施設内空間の上方側が前記請求項1または2に記載の可撓性シートからなる膜体によって覆われ、この膜体を施設内空間の空気圧によって屋外側へドーム状に膨らんだ形状に保持するように構成されてなる空気膜構造。
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