以下、添付図を参照して本発明の好適な一実施形態を説明する。
図1に、本発明の一実施形態によるプラズマエッチング装置の構成を示す。このプラズマエッチング装置は、平行平板型電極構造の容量結合型プラズマエッチング装置として構成されており、内壁の表面がアルミナ膜あるいはイットリウム酸化(Y2O3)膜で覆われたアルミニウムからなる円筒形のチャンバ(処理容器)10を有している。チャンバ10は保安接地されている。
チャンバ10の底部にはセラミックなどの絶縁板12を介して円柱状のサセプタ支持台14が配置され、このサセプタ支持台14上にたとえばアルミニウムからなるサセプタ16が設けられている。サセプタ16は平行平板型電極構造の下部電極を構成し、この上に被処理基板としてたとえば半導体ウエハWが載置される。
サセプタ16の上面には半導体ウエハWを静電吸着力で保持するための静電チャック18が設けられている。この静電チャック18は導電膜からなる電極20を一対の絶縁層または絶縁シートの間に挟みこんだものであり、電極20には直流電源22が電気的に接続されている。直流電源からの直流電圧により、半導体ウエハWがクーロン力で静電チャック18に吸着保持されるようになっている。静電チャック18の周囲でサセプタ16の上面には、エッチングの均一性を向上させるためのたとえばシリコンからなるフォーカスリング24が配置されている。サセプタ16およびサセプタ支持台14の側面には、たとえば石英からなる円筒状の内壁部材26が貼り付けられている。
サセプタ支持台14の内部には、たとえば円周方向に延在する冷媒室28が設けられている。この冷媒室28には、外付けのチラーユニット(不図示)より配管30a、30bを介して所定温度の冷媒たとえば冷却水が循環供給される。冷媒の温度によってサセプタ16上の半導体ウエハWの処理温度を制御できる。さらに、伝熱ガス供給機構(不図示)からの伝熱ガスたとえばHeガスがガス供給ライン32を介して静電チャック18の上面と半導体ウエハWの裏面との間に供給される。
サセプタ16の上方には、このサセプタ16と平行に対向して上部電極34が設けられている。平行平板型電極構造を構成する両電極16,34の間の空間はプラズマ生成空間PSである。上部電極34は、サセプタ(下部電極)16上の半導体ウエハWと対向してプラズマ生成空間PSと接する面つまり対向面を形成する。
上部電極34は、サセプタ16と所望の間隔を置いて対向配置されているリング形状またはドーナツ形状の外側(outer)上部電極36と、この外側上部電極36の半径方向内側に絶縁して配置されている円板形状の内側(inner)上部電極38とで構成される。これら外側上部電極36と内側上部電極38とは、プラズマ生成に関して、前者(36)が主で、後者(38)が補助の関係を有している。
ここで、図2につき、この実施形態における上部電極34回りの構成をより詳細に説明する。図2に示すように、外側上部電極36は、上部電極部材36Aと下部電極部材36Bとからなる上下2分割構造になっている。本体の上部電極部材36Aは、たとえばアルマイト処理されたアルミニウムで構成される。交換部品の下部電極部材36Bは、たとえばシリコンで構成され、内側上部電極38の下面よりも突出量Hだけ突出した状態でボルト(不図示)等により上部電極部材36Aに着脱可能に密着して固定される。両電極部材36A、36Bの間には、熱コンダクタンスを高めるコーティングまたはシート40が設けられている。
外部上部電極36の下部電極部材36Bにおける突出量Hおよび内径(直径)Φは、外側上部電極36ないし上部電極34よりプラズマ生成空間に与える電界の強度や方向等を規定し、ひいてはプラズマ密度の空間分布特性を左右するファクタとなる。
ここで、突出量Hは、高密度プラズマ生成において、半導体ウエハ径方向の電子密度空間分布の均一性に影響する。発明者らの実験データでは、この突出量Hは25mm以下とするのが好ましく、特に20mm付近に選ぶのが最も好ましい。重要なことは、外側上部電極36の突出部となる下部電極部材36Bは、プラズマ生成空間に対して周辺側から半径方向内向きの電界を与えることによりプラズマを閉じ込める作用を奏する点であり、このことからプラズマ密度空間分布特性の均一性を図るには半導体ウエハWのエッジよりも半径方向外側に位置することが必須といえるほど望ましい。一方で、下部電極部材36Bの径方向の幅サイズは重要でなく、任意の幅サイズに選んでよい。
この実施形態では、下部電極部材36Bの下面が電極中心部に向かって突出量が減少するテーパ面37に形成されており、角部(コーナ部)を有していない。このように角部のないテーパ面構造によれば、プラズマエッチングで生じる反応生成物の付着が防止または抑止される。
外側上部電極36と内側上部電極38との間にはたとえば0.25〜2.0mmの環状ギャップ(隙間)が形成され、このギャップにはたとえば石英からなる誘電体42が設けられる。この誘電体42を挟んで両電極36,38の間にコンデンサが形成される。このコンデンサC42は、ギャップのサイズと誘電体42の誘電率に応じて所望の値に選定または調整される。外側上部電極36とチャンバ10の側壁との間には、たとえばアルミナ(Al2 O3 )からなるリング形状の絶縁性遮蔽部材44が気密に取り付けられている。
外側上部電極36の上部電極部材36Aには、整合器46、上部給電棒48、コネクタ50および給電筒52を介して第1の高周波電源54が電気的に接続されている。第1の高周波電源54は40MHz以上の周波数たとえば60MHzの高周波電圧を出力し、プラズマ生成空間に高密度プラズマを生成する。ここで、整合器46は、高周波電源54の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるためのもので、チャンバ10内にプラズマが生成されている時に高周波電源54の出力インピーダンスと負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。整合器46の出力端子は上部給電棒48の上端に接続されている。
給電筒52は、円筒状または円錐状あるいはそれらに近い形状の導電板たとえばアルミニウム板または銅板からなり、下端が周回方向で連続的に外側上部電極36の上部電極部材36Aに接続され、上端がコネクタ50によって上部給電棒48の下端部に電気的に接続されている。給電筒52の外側では、チャンバ10の側壁が上部電極34の高さ位置よりも上方に延びて円筒状接地導体10aを構成している。この円筒状接地導体10aの上端部は筒状の絶縁部材56により上部給電棒48から電気的に絶縁されている。かかる構成においては、コネクタ50からみた負荷回路において、給電筒52および外側上部電極36と円筒状接地導体10aとで前者(36,52)を導波路とする同軸線路が形成される。
さらに、図2に示すように、シールド部材58が外側上部電極36の下部電極部材36Bの一部と絶縁性遮蔽部材44の下面に設けられている。このシールド部材58は、たとえば表面をアルマイト処理した薄いアルミニウム板からなり、処理容器10の側壁に物理的かつ電気的に結合され、容器側壁から水平に延びており、下部電極部材36Bおよび絶縁性遮蔽部材44の下面を非接触または絶縁状態で覆っている。このシールド部材58の機能は、外側上部電極36の下部電極部材36Bの下面および絶縁性遮蔽部材44の下面からの高周波放電を遮断または封印して、その直下におけるプラズマ生成を抑制することである。これにより、プラズマを半導体ウエハW直上に閉じ込める効果を一層高めることができる。
再び図1において、内側上部電極38は、多数のガス噴出孔60aを有するたとえばSi、SiCなどの半導体材料からなる電極板60と、この電極板60を着脱可能に支持する導電材料たとえば表面がアルマイト処理されたアルミニウムからなる電極支持体62とを有する。
内側上部電極38は、後述する上部ガス導入機構の一部ともなっており、電極支持体62の内部にたとえばOリングからなる環状隔壁部材64で分割された2つの上部バッファ室つまり上部中心バッファ室66と上部周辺ハッファ室68とが設けられている。そして、上部中心バッファ室66とその下面に設けられている多数のガス噴出孔60aとで上部中心シャワーヘッド66aが構成され、上部周辺バッファ室68とその下面に設けられている多数のガス噴出孔60aとで上部周辺シャワーヘッド68aが構成されている。これら上部中心シャワーヘッド66aおよび上部周辺シャワーヘッド68aは互いに独立的にガス種、ガス混合比、ガス流量等を選択ないし制御できるようになっている。
上部電極34の電極板60はプラズマに曝されて消耗する交換部品である。また、電極板60およびガス噴出孔60aの表面には反応生成物が付着するので、それらを除去するためのメンテナンス作業も必要である。このため、チャンバ10が図1に記すX1−X1で上下に分割可能に構成されており、上部のアッセンブリを開けて外すと内部の部材が取り出せるようになっている。
内部上部電極38の電極支持体62には、整合器46、上部給電棒48、コネクタ50および下部給電筒70を介して第1の高周波電源54が電気的に接続されている。下部給電棒70の途中には、キャパシタンスを可変調整できる可変コンデンサ72が設けられている。
可変コンデンサ72は、外側上部電極36直下の外側電界強度(または外側上部電極36側への投入電力)と内側上部電極38直下の内側電界強度(または内側上部電極38側への投入電力)との比率つまりバランスを調整するためのものである。この可変コンデンサ72のキャパシタンスC72を変えることにより、下部給電筒70側の導波路(内側導波路)のインピーダンスまたはリアクタンスを増減させ、給電筒52側の導波路(外側導波路)の電圧降下と内側導波路の電圧降下との相対比率を変えることができ、ひいては外側電界強度(外側投入電力)と内側電界強度(内側投入電力)との比率を調整することができる。
また、後に詳述するが、外側上部電極36および内側上部電極38の上部には、冷媒室または冷媒通路(不図示)が設けられており、外部のチラーユニットにより冷媒通路に冷媒を流して上部電極34の温度を一定に制御できるようになっている。
チャンバ10の底部には排気口74が設けられ、この排気口74に排気管76を介して排気装置78が接続されている。排気装置78は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ10内のプラズマ処理空間を所望の真空度まで減圧できるようになっている。また、チャンバ10の側壁には半導体ウエハWの搬入出口を開閉するためのゲートバルブ(不図示)が取り付けられている。
この実施形態のプラズマエッチング装置では、平行平板型電極構造の下部電極であるサセプタ16に整合器80を介して第2の高周波電源82が電気的に接続されている。この第2の高周波電源82は、2MHz〜20MHzの範囲内の周波数、たとえば2MHzの高周波電圧を出力する。ここで、第2の高周波電源82は半導体ウエハW側に高密度プラズマからイオンを引き込む役割を有する。
内側上部電極38には、第1の高周波電源54からの高周波(60MHz)を通さずに第2の高周波電源82からの高周波(2MHz)をグランドに通すためのローパスフィルタ(LPF)84が電気的に接続されている。このローパスフィルタ(LPF)84は、好適にはLRフィルタまたはLCフィルタで構成されてよいが、1本の導線だけでも第1の高周波電源54からの高周波(60MHz)に対して十分に大きなリアクタンスを与えることができるので、それで済ますこともできる。一方、サセプタ16には、第1の高周波電源54からの高周波(60MHz)をグランドへ通すためのハイパスフィルタ(HPF)86が電気的に接続されている。
[第1実施形態]
次に、このプラズマエッチング装置においてチャンバ10内に処理ガス(エッチングガス)を導入するためのガス導入機構を説明する。第1の実施形態におけるガス導入機構の主要な特徴は、チャンバ10内のプラズマ生成空間PSにエッチング用のガスを導入するためのガス導入部として、上記のように上部電極38側からガスを導入する上部ガス導入部(上部中心シャワーヘッド66aおよび上部周辺シャワーヘッド68a)を備える構成に加えて、チャンバ10の側壁側からガスを導入する側部ガス導入部104を備える構成である。図1に示すように、側部ガス導入部104は、チャンバ10の側壁に取り付けられる側部シャワーヘッド108を有している。
図1において、処理ガス供給源88は、ガス供給管90にエッチャント系のガスを所望の流量で送出し、ガス供給管94に希釈系のガスを所望の流量で送出する。ガス供給管90は上部周辺シャワーヘッド68aに通じており、途中に開閉弁92が設けられている。さらに、処理ガス供給源88は、ガス供給管94a,94bにそれぞれ希釈系のガスを所望の流量で送出する。一方のガス供給分岐管94aは上部中心シャワーヘッド66aに通じ、他方のガス供給分岐管94bは側部シャワーヘッド108に通じている。ガス供給管94aの途中にはMFC(マスフローコントローラ;流量制御装置)96と開閉弁98が設けられている。ガス供給管94bの途中にもMFC100と開閉弁102が設けられている。
この実施形態のガス導入機構によれば、チャンバ10内のプラズマ生成空間PSに向けて上部周辺シャワーヘッド68aよりエッチャント系のガスが吐出(導入)されると同時に上部中心シャワーヘッド66aと側部シャワーヘッド108とから希釈系のガスが吐出(導入)され、プラズマ生成空間PSにおいてエッチャント系のガスと希釈系のガスとが混合して混合ガスのプラズマが生成されるようになっている。
ガス制御部106は、MFC96,100の制御を通じて、上部中心シャワーヘッド66aおよび側部シャワーヘッド108における希釈系ガスの流量および流量比を任意に制御できるようになっている。また、ガス制御部106は、処理ガス供給源88内の流量調整部の制御も行うようになっている。
図3に、この実施形態における側部ガス導入部104の詳細な構成を示す。図示のように、チャンバ10の側壁には周回方向に所定の間隔を置いて(ウエハ搬入出口を避けて)複数個(図示の例は4個)の側部シャワーヘッド108(108a,108b,108c、108d)が取り付けられる。
各々の側部シャワーヘッド108(108a,108b,108c、108d)は、プラズマ生成空間PSと対向する向きで肉厚が40mm程度のチャンバ10に嵌め込まれたガス噴出部110(110a,110b,110c、110d)と、このガス噴出部110と連通するようにチャンバ10の外壁側に設けられたマニホールド構造の側部バッファ室112(112a,112b,112c、112d)とを有している。ガス噴出部110(110a,110b,110c、110d)には多数のガス噴出孔114(114a,114b,114c、114d)が設けられている。各ガス噴出部110および各側部バッファ室112は、コンタミネーションの問題がないSi、SiCなどの半導体材料や、あるいは劣化の少ない材質たとえば石英で構成されてよい。ガス噴出孔114の口径はたとえば1mm程度でよい。
処理ガス供給源88からのガス供給管94bは、複数本(4本)のガス供給分岐管116(116a,116b,116c,116d)に分岐して各側部シャワーヘッド108(108a,108b,108c、108d)のバッファ室112(112a,112b,112c、112d)に通じている。各ガス供給分岐管116(116a,116b,116c,116d)には流量制御弁118(118a,118b,118c,118d)が設けられている。これら流量制御弁118(118a、118b、118c、118d)の流量調整機能により、各側部シャワーヘッド108(108a,108b,108c、108d)の吐出量または単位面積当たりの流量を同一に調整することも任意個別に調整することも可能となっている。
図4に、この実施形態における処理ガス流量制御システムの構成を示す。処理ガス供給源88は、ガス種別のガス供給源(個別ガス供給源)とMFCとを有している。個別ガス供給源は被エッチング材料やプロセス条件に応じて選ばれる。図示の例では、エッチャントガスとしてのCxFy、CxHyFzの個別ガス供給源と、希釈ガスとしてのArの個別ガス供給源と、添加ガスとしてのCO、O2の個別ガス供給源とが設けられている。ここで、CxFyはいわゆるフロロカーボン系のフッ素化合物であり、たとえばCF4、C4F6、C4F8、C5F8が含まれる。また、CxHyFzはいわゆるパーフロロカーボン系のフッ素化合物であって、たとえばCH2F2、CHF3が含まれる。なお、各々の個別ガス供給源は制御部106の制御の下でオン・オフし、エッチングに使用するガス種の組み合わせを任意に選択できるようになっている。
CxFy供給源からのCxFyガスもしくはCxHyFz供給源からのCxHyFzガスはMFC124もしくはMFC126を介してガス供給管90に送出され、ガス供給管90を通ってチャンバ10上部の上部周辺シャワーヘッド68aに供給される。制御部106は、MFC124もしくはMFC126に対する制御を通じて、上部周辺シャワーヘッド68aに供給されるエッチャントガスのCxFyガスもしくはCxHyFzガスの流量を制御する。
CO供給源からのCOガス、O2供給源からのO2ガスおよびAr供給源からのArガスは、それぞれMFC128、130、132を介してガス供給管94に送出され、ガス供給管94内で混合される。制御部106は、MFC128,130,132に対する制御を通じて、COガス、O2ガス、Arガスの各流量を制御し、ひいては混合ガスCO/O2/Arの混合比を制御する。
ガス供給管94内で作られた希釈系混合ガスCO/O2/Arの一部は、MFC96を介してガス供給管94aに送られ、ガス供給管94aを通ってチャンバ10上部の上部中心シャワーヘッド66aに供給される。残りの希釈系混合ガスCO/O2/Arは、MFC100を介してガス供給管94bに送られ、ガス供給管94bを通ってチャンバ10側壁の側部シャワーヘッド108(108a,108b,‥‥)に供給される。制御部106は、MFC96,100に対する制御を通じて、上部中心シャワーヘッド66aに供給される希釈系混合ガスCO/O2/Arと側部シャワーヘッド108に供給される釈系混合ガスCO/O2/Arの各流量および流量比を制御する。
各MFC96,100,124,126,128,130,132においては、各流量計96b,100b,124b、126b、128b、130b、132bが検出するガス流量に基づいて各流量制御弁96a,100a,124a,126a,128a,130a,132aの開度が調整される。
図5に、上部中心シャワーヘッド66aおよび上部周辺シャワーヘッド68aのガス噴出部に設けられるガス噴出孔60aの配置(分布)パターンの一例を示す。図示のように、ガス噴出孔60aは内側上部電極38の電極板60に所定のピッチまたは間隔で多数設けられ、環状隔壁部材64によって上部中心シャワーヘッド66a側と上部周辺シャワーヘッド68a側とに所望の比率で配分されている。図示の配置パターンは一例であり、放射状、同心円状、マトリクス状等でもよい。
図6に、側部シャワーヘッド108のガス噴出部110に設けられるガス噴出孔114の配置(分布)パターンの一例を示す。図示の例では、ガス噴出部110が矩形に形成され、ガス噴出孔114がx、y方向に所定のピッチでマトリクス状に多数配置されている。この構成も一例であり、ガス噴出部110が円形であってもよく、ガス噴出孔114の配置パターンが放射状や同心円状等であってもよい。実験や試行錯誤を重ねて最適なものを選ぶことができる。
次に、この実施形態におけるプラズマエッチング装置の作用を説明する。このプラズマエッチング装置において、エッチングを行うには、先ずゲートバルブ(不図示)を開状態にして加工対象の半導体ウエハWをチャンバ側壁の搬入出口(不図示)よりチャンバ10内に搬入して、サセプタ16の上に載置する。次いで、直流電源22より直流電圧を静電チャック18の電極20に印加して、半導体ウエハWをサセプタ16に固定する。
そして、上部電極34(36,38)とサセプタ(下部電極)16間のプラズマ生成空間PSに、上記のようなガス導入機構により3系統のシャワーヘッド66a,68a,108からエッチング用のガスをそれぞれ所定の流量で導入する。すなわち、上部中心シャワーヘッド66aからは添加ガスを含む希釈系のガスを、上部周辺シャワーヘッド68aからはエッチャント系のガスを、側部シャワーヘッド108からは添加ガスを含む希釈系のガスをそれぞれ所定の流量で導入する。プラズマ生成空間PSに導入された3系統のガスは互いに混り合って混合ガスとなる。一方、排気装置78によりチャンバ10内の全圧を設定値(たとえば10-1Pa〜102Pa)まで減圧する。さらに、第1の高周波電源54よりプラズマ生成用の高周波(60MHz)を所定のパワーで上部電極34(36,38)に印加するとともに、第2の高周波電源82より高周波(2MHz)を所定のパワーでサセプタ16に印加する。
上記のような各種用力の供給により、チャンバ10内では、上部電極34(36,38)とサセプタ16(下部電極)間のグロー放電でエッチングガスがプラズマ化し、このプラズマで生成されるラジカルやイオンにより半導体ウエハWの被処理表面がエッチングされる。
このプラズマエッチング装置では、上部電極34に対して高い周波数領域(イオンが動けない5〜10MHz以上)の高周波を印加することにより、プラズマを好ましい解離状態で高密度化し、より低圧の条件下でも高密度プラズマを形成することができる。
また、上部電極34においては、プラズマ生成のための高周波電極として外側上部電極36を主、内側上部電極38を副とし、両高周波電極36,38より電極直下の電子に与える電界強度の比率を調整可能にしているので、プラズマ密度の空間分布を径方向で制御し、反応性イオンエッチングの空間的な特性を任意かつ精細に制御することができる。
また、このプラズマエッチング装置は、外側上部電極36の直下でプラズマの大部分ないし過半を生成して内側上部電極38の直下に拡散させる方式である。この方式によると、シャワーヘッドを兼ねる内側上部電極38においては、プラズマのイオンから受けるアタックが少ないため交換部品である電極板60のガス噴出口60aのスパッタ進行度を効果的に抑制し、電極板60の寿命を大幅に延ばすことができる。一方、外側上部電極36は、電界の集中するガス吐出口を有してはいないため、イオンのアタックは少なく、内側上部電極38の代わりに電極寿命が短くなるようなことはない。
そして、この実施形態のプラズマエッチング装置では、チャンバ10内のプラズマ生成空間PSに3系統のシャワーヘッド66a,68a,108より導入するガスの種類、混合比、流量等をバランスよく制御することにより、様々なエッチングプロセスにおいてエッチングレートやエッチング形状等の空間分布特性を最適化することができる。
図7および図8に、チャンバ10(特にプラズマ生成空間PS)内の処理ガスの流れを模式的に示す。以下、図7および図8につき、具体例なエッチングプロセスにおいてこの実施形態によるガス導入方式の作用を説明する。
一具体例として、半導体装置を構成する半導体素子を被覆するシリコン酸化膜あるいはシリコン窒化膜にコンタクトホールを形成する場合を説明する。この種のエッチングプロセスには、エッチャントガスにCH2F2ガスあるいはCHF3ガスのようなパーフロロカーボン系ガスを使用し、添加ガスにCOガスやO2ガスを使用するのが好適である。もっとも、パーフロロカーボン系のガスをエッチャントガスに用いると、プラズマ励起で生成されるエッチングガスのラジカルにより有機ポリマーが生じ易い。特に、半導体ウエハWの周辺部領域に反応生成物の付着が起り易く、この反応生成物の付着物によりウエハ周辺部領域に順テーパ形状のコンタクトホールが形成される傾向がある。
そこで、図7に示すように、上部中心シャワーヘッド66aよりチャンバ10内に吐出されるAr流[1]よりも、側部シャワーヘッド108からチャンバ10内に吐出されるAr流[3]の方が大きくなるように両者のガス流量のバランスを調整する。このバランス調整により、上部周辺シャワーヘッド68aからチャンバ10内に導入されたパーフロロカーボン系のエッチャントガス流[2]は、外側上部電極36直下よりも内側上部電極38直下の方に多く流れる。これにより、エッチャントのラジカルは半導体ウエハWの周辺部領域で低減する。また、Arガスのプラズマ化で生じるアルゴンイオンは、上記のような反応生成物をスパッタリングで除去する働きがある。これらの作用が合わさって、半導体ウエハWの周辺部領域において反応生成物の堆積量は低減してコンタクトホールの順テーパ形状が改善される。その結果、半導体ウエハWの面内でコンタクトホールの断面形状が均一化するようになる。
また、図8に示すように、側部シャワーヘッド108から吐出されるAr流[3]は、半導体ウエハWの周辺部に向かって広がって行く。したがって、反応生成物を除去する働きを有するO2ガス、COガスも側部シャワーヘッド108から多めに吐出されるのが好ましい。
次に、エッチングプロセスの別の具体例として、半導体装置の上層に設ける多層配線構造体の層間絶縁膜にビアホールあるいはダマシン配線用の溝を形成する場合について説明する。この種の層間絶縁膜はシリコン酸化膜よりも低誘電率の絶縁膜、たとえばメチル基あるいはエチル其含有のシリコン酸化膜、SiC膜、SiOC膜などで構成される。そこで、この層間絶縁膜にビアホールあるいはダマシン配線用の溝を形成する場合には、シリコン酸化膜あるいはシリコン窒化膜からなるハードマスクを用いる。この場合、エッチャントガスにはC4F8ガスのようなフロロカーボン系ガスを好適に使用できる。
このようなフロロカーボン系のエッチャントガスを用いるときは、上部中心シャワーヘッド66aからチャンバ10内に吐出されるAr流[1]の方が、側部シャワーヘッド108からチャンバ10内に吐出されるAr流[3]よりも大きくなるように両者の流量を調整する。つまり、上記コンタクトホール形成の場合とは逆のバランスで流量調整することにより、半導体ウエハWの面内でビアホールあるいはダマシン配線用の溝の断面形状が均一化するようになる。この場合、反応生成物を除去する働きを有するCOガスやO2ガスも上部中心シャワーヘッド66aから多めに導入されてよい。
このように、上部周辺シャワーヘッド68aより導入されるエッチャントガスを中心部と側方から挟むように、上部中心シャワーヘッド66aおよび側部シャワーヘッド108より反応生成物を除去するArガス、O2ガスあるいはCOガスを吐出させ、かつ上部中心シャワーヘッド66aと側部シャワーヘッド108間のガス吐出量のバランスを適宜調整することで、様々なエッチングプロセスにおいて(たとえば反応生成物の多いプロセスでも反応生成物の少ないプロセスでも)半導体ウエハW上のエッチング特性を自在かつ最適に制御することができる。
[第2実施形態]
次に、図9〜図11につき、このプラズマエッチング装置においてチャンバ10内に処理ガス(エッチングガス)を導入するための第2の実施形態のガス導入機構を説明する。この第2の実施形態におけるガス導入機構の主要な特徴は、チャンバ10内のプラズマ生成空間PSにエッチング用のガスを導入するためのガス導入部として、第1の実施形態の側部ガス導入部104に代えて、上部周辺シャワーヘッド68aのさらに外側に上部第3シャワーヘッドを有している。すなわち、第2の実施形態におけるガス導入機構は、上部電極の中心部から径方向外側に向かって上部第1シャワーヘッド(第1実施形態の上部中心シャワーヘッドに対応)、上部第2シャワーヘッド(第1実施形態の上部周辺シャワーヘッドに対応)上部第3シャワーヘッドを有する構成である。このプラズマエッチング装置におけるガス導入機構以外の構成は全て第1の実施形態と同じである。
図9に、第2の実施形態におけるガス導入機構の要部の構成を示す。内側上部電極38は、多数のガス噴出孔60aを有するたとえばSi,SiCなどの半導体材料からなる電極板60と、この電極板60を着脱可能に支持する導電材料たとえば表面がアルマイト処理されたアルミニウムからなる電極支持体62とを有する。
内側上部電極38は、後述する上部ガス導入機構の一部ともなっており、電極支持体62の内部にたとえばOリングからなる環状隔壁部材64,264で分割された3つの上部バッファ室つまり上部第1バッファ室66と上部第2バッファ室68と上部第3バッファ室208とが設けられている。そして、上部第1バッファ室66とその下面に設けられている多数のガス噴出孔60aとで上部第1シャワーヘッド66aが構成され、上部第2バッファ室68とその下面に設けられている多数のガス噴出孔60aとで上部第2シャワーヘッド68aが構成され、上部第3バッファ室208とその下面に設けられている多数のガス噴出孔60aとで上部第3シャワーヘッド208aが構成されている。これら上部第1シャワーヘッド66a、上部第2シャワーヘッド68aおよび上部第3シャワーヘッド208aは、互いに独立的にガス種、ガス混合比、ガス流量等を選択ないし制御できるようになっている。
図9において、処理ガス供給源88は、ガス供給管90にエッチャント系のガスを所望の流量で送出し、ガス供給管94に希釈系のガスを所望の流量で送出する。ガス供給管90は上部第2シャワーヘッド68aに通じており、途中に開閉弁92が設けられている。さらに、処理ガス供給源88は、ガス供給管94a,94cにそれぞれ希釈系のガスを所望の流量で送出する。一方のガス供給管94aは上部第1シャワーヘッド66aに通じ、他方のガス供給管94cは上部第3シャワーヘッド208aに通じている。ガス供給管94aの途中にはMFC96と開閉弁98が設けられている。ガス供給管94cの途中にもMFC200と開閉弁202が設けられている。
この第2の実施形態のガス導入機構によれば、チャンバ10内のプラズマ生成空間PSに向けて上部第2シャワーヘッド68aよりエッチャント系のガスが吐出(導入)されると同時に上部第1シャワーヘッド68aと上部第3シャワーヘッド208aとから希釈系のガスが吐出(導入)され、プラズマ生成空間PSにおいてエッチャント系のガスと希釈系のガスとが混合して混合ガスのプラズマが生成されるようになっている。
ガス制御部106は、MFC96,200の制御を通じて、上部第1シャワーヘッド66aおよび上部第3シャワーヘッド208aにおける希釈系ガスの流量および流量比を任意に制御できるようになっている。また、ガス制御部106は、処理ガス供給源88内の流量調整部の制御も行うようになっている。
図10に、この実施形態における処理ガス流量制御システムの構成を示す。処理ガス供給源88は、ガス種別のガス供給源(個別ガス供給源)とMFCとを有している。個別ガス供給源は被エッチング材料やプロセス条件に応じて選ばれる。図示の例では、第1の実施形態と同様にエッチャントガスとしてのCxFy、CxHyFzの個別ガス供給源と、希釈ガスとしてのArの個別ガス供給源と、添加ガスとしてのCO、O2の個別ガス供給源とが設けられている。なお、各々の個別ガス供給源は制御部106の制御の下でオン・オフし、エッチングに使用するガス種の組み合わせを任意に選択できるようになっている。
CxFy供給源からのCxFyガスもしくはCxHyFz供給源からのCxHyFzガスはMFC124もしくはMFC126を介してガス供給管90に送出され、ガス供給管90を通ってチャンバ10上部の上部第2シャワーヘッド68aに供給される。制御部106は、MFC124もしくはMFC126に対する制御を通じて、上部第2シャワーヘッド68aに供給されるエッチャントガスのCxFyガスもしくはCxHyFzガスの流量を制御する。
CO供給源からのCOガス、O2供給源からのO2ガスおよびAr供給源からのArガスは、それぞれMFC128、130、132を介してガス供給管94に送出され、ガス供給管94内で混合される。制御部106は、MFC128,130,132に対する制御を通じて、COガス、O2ガス、Arガスの各流量を制御し、ひいては混合ガスCO/O2/Arの混合比を制御する。
ガス供給管94内で作られた希釈系混合ガスCO/O2/Arの一部は、MFC96を介してガス供給管94aに送られ、ガス供給管94aを通ってチャンバ10上部の上部第1シャワーヘッド66aに供給される。残りの希釈系混合ガスCO/O2/Arは、MFC200を介してガス供給管94cに送られ、ガス供給管94cをチャンバ10上部の上部第3シャワーヘッド208aに供給される。制御部106は、MFC96,200に対する制御を通じて、上部第1シャワーヘッド66aに供給される希釈系混合ガスCO/O2/Arと上部第3シャワーヘッド208aに供給される釈系混合ガスCO/O2/Arの各流量および流量比を制御する。
各MFC96,200,124,126,128,130,132においては、各流量計96b,200b,124b、126b、128b、130b、132bが検出するガス流量に基づいて各流量制御弁96a,200a,124a,126a,128a,130a,132aの開度が調整される。
図示省略するが、上部第1シャワーヘッド66a、上部第2シャワーヘッド68aおよび上部第3シャワーヘッド208aのガス噴出部に設けられるガス噴出孔60aは内側上部電極38の電極板60に所定のピッチまたは間隔で多数設けられ、環状隔壁部材64,264によって上部第1シャワーヘッド66a側と上部第2シャワーヘッド68a側と上部第3シャワーヘッド208a側とに所望の比率で配分されている。また、配置パターンは、放射状、同心円状、マトリクス状等でもよい。
次に、第2の実施形態におけるプラズマエッチング装置の作用を説明する。このプラズマエッチング装置において、エッチングを行うには、先ずゲートバルブ(不図示)を開状態にして加工対象の半導体ウエハWをチャンバ側壁の搬入出口(不図示)よりチャンバ10内に搬入して、サセプタ16の上に載置する。次いで、直流電源22より直流電圧を静電チャック18の電極20に印加して、半導体ウエハWをサセプタ16に固定する。
そして、上部電極34(36,38)とサセプタ(下部電極)16間のプラズマ生成空間PSに、上記のようなガス導入機構により3系統のシャワーヘッド66a,68a,208aからエッチング用のガスをそれぞれ所定の流量で導入する。すなわち、上部第1シャワーヘッド66aからは添加ガスを含む希釈系のガスを、上部第2シャワーヘッド68aからはエッチャント系のガスを、上部第3シャワーヘッド208aからは添加ガスを含む希釈系のガスをそれぞれ所定の流量で導入する。プラズマ生成空間PSに導入された3系統のガスは互いに混り合って混合ガスとなる。一方、排気装置78によりチャンバ10内の全圧を設定値(たとえば10-1Pa〜102Pa)まで減圧する。さらに、第1の高周波電源54よりプラズマ生成用の高周波(60MHz)を所定のパワーで上部電極34(36,38)に印加するとともに、第2の高周波電源82より高周波(2MHz)を所定のパワーでサセプタ16に印加する。
上記のような各種用力の供給により、チャンバ10内では、上部電極34(36,38)とサセプタ16(下部電極)間のグロー放電でエッチングガスがプラズマ化し、このプラズマで生成されるラジカルやイオンにより半導体ウエハWの被処理表面がエッチングされる。
このように、第2の実施形態のプラズマエッチング装置では、チャンバ10内のプラズマ生成空間PSに3系統のシャワーヘッド66a,68a,208aより導入するガスの種類、混合比、流量等をバランスよく制御することにより、様々なエッチングプロセスにおいてエッチングレートやエッチング形状等の空間分布特性を最適化することができる。
図11に、チャンバ10(特にプラズマ生成空間PS)内の処理ガスの流れを模式的に示す。以下、図11につき、具体例なエッチングプロセスにおいてこの実施形態によるガス導入方式の作用を説明する。
一具体例として、第1の実施形態と同様に半導体装置を構成する半導体素子を被覆するシリコン酸化膜あるいはシリコン窒化膜にコンタクトホールを形成する場合を説明する。この種のエッチングプロセスには、エッチャントガスにCH2F2ガスあるいはCHF3ガスのようなパーフロロカーボン系ガスを使用し、添加ガスにCOガスやO2ガスを使用するのが好適である。もっとも、パーフロロカーボン系のガスをエッチャントガスに用いると、プラズマ励起で生成されるエッチングガスのラジカルにより有機ポリマーが生じ易い。特に、半導体ウエハWの周辺部領域に反応生成物の付着が起り易く、この反応生成物の付着物によりウエハ周辺部領域に順テーパ形状のコンタクトホールが形成される傾向がある。
そこで、図11に示すように、上部第1シャワーヘッド66aよりチャンバ10内に吐出されるAr流[1]よりも、上部第3シャワーヘッド208aからチャンバ10内に吐出されるAr流[3]の方が大きくなるように両者のガス流量のバランスを調整する。このバランス調整により、上部第2シャワーヘッド68aからチャンバ10内に導入されたパーフロロカーボン系のエッチャントガス流[2]は、外側上部電極36直下よりも内側上部電極38直下の方に多く流れる。これにより、エッチャントのラジカルは半導体ウエハWの周辺部領域で低減する。また、Arガスのプラズマ化で生じるアルゴンイオンは、上記のような反応生成物をスパッタリングで除去する働きがある。これらの作用が合わさって、半導体ウエハWの周辺部領域において反応生成物の堆積量は低減してコンタクトホールの順テーパ形状が改善される。その結果、半導体ウエハWの面内でコンタクトホールの断面形状が均一化するようになる。
次に、エッチングプロセスの別の具体例として、第1の実施形態と同様に半導体装置の上層に設ける多層配線構造体の層間絶縁膜にビアホールあるいはダマシン配線用の溝を形成する場合について説明する。この種の層間絶縁膜はシリコン酸化膜よりも低誘電率の絶縁膜、たとえばメチル基あるいはエチル其含有のシリコン酸化膜、SiC膜、SiOC膜などで構成される。そこで、この層間絶縁膜にビアホールあるいはダマシン配線用の溝を形成する場合には、シリコン酸化膜あるいはシリコン窒化膜からなるハードマスクを用いる。この場合、エッチャントガスにはC4F8ガスのようなフロロカーボン系ガスを好適に使用できる。
このようなフロロカーボン系のエッチャントガスを用いるときは、上部第1シャワーヘッド66aからチャンバ10内に吐出されるAr流[1]の方が、上部第3シャワーヘッド208aからチャンバ10内に吐出されるAr流[3]よりも大きくなるように両者の流量を調整する。つまり、上記コンタクトホール形成の場合とは逆のバランスで調整をすることにより、半導体ウエハWの面内でビアホールあるいはダマシン配線用の溝の断面形状が均一化するようになる。この場合、反応生成物を除去する働きを有するCOガスやO2ガスも上部第1シャワーヘッド66aから多めに導入されてよい。
このように、上部第2シャワーヘッド68aより導入されるエッチャントガスを中心部と側方から挟むように、上部第1シャワーヘッド66aおよび上部部第3シャワーヘッド208aより反応生成物を除去するArガス、O2ガスあるいはCOガスを吐出させ、かつ上部第1シャワーヘッド66aと上部第3シャワーヘッド208a間のガス吐出量のバランスを適宜調整することで、様々なエッチングプロセスにおいて(たとえば反応生成物の多いプロセスでも反応生成物の少ないプロセスでも)半導体ウエハW上のエッチング特性を自在かつ最適に制御することができる。
なお、図示省略するが、上記第2の実施形態におけるガス導入機構に上記第1の実施形態の側部シャワーヘッド108を付加する構成も可能である。
次に、図12〜図15につき、この実施形態における処理ガス流量制御システムの変形例(別の構成例)を説明する。図12に、この変形例の構成を示す。図中、図10のシステムと共通する部分には同一の符号を附してある。この処理ガス流量制御システムにおいては、第1シャワーヘッド66aと第3シャワーヘッド208aとに分配する希釈系ガスの流量または分流量を圧力制御装置(PCV)により制御し、ガス流の設定変更に際して高い応答性を確保することができる。
図12において、処理ガス供給源88の段階では、CO供給源からのCOガス、O2供給源からのO2ガスおよびAr供給源からのArガスは、それぞれMFC128、130、132を介してガス供給管94に送出され、ガス供給管94内で混合される。制御部106は、MFC128,130,132に対する制御を通じて、COガス、O2ガス、Arガスの各流量を制御し、ひいては混合ガスCO/O2/Arの混合比を制御する。
ガス供給管94内で作られた希釈系混合ガスCO/O2/Arの一部は、流量比制御部を構成する第1のPCV300を介してガス供給管94aに送られ、ガス供給管94aを通ってチャンバ10上部の第1シャワーヘッド66aに供給される。ここで、第1のPCV300は、たとえばノーマルオープンタイプのエアオペレイトバルブからなる圧力制御弁300aと圧力センサ300bとを有している。残りの希釈系混合ガスCO/O2/Arは、同様に流量比制御部を構成する第2のPCV302を介してガス供給管94cに送られ、ガス供給管94cを通りチャンバ10上部の第3シャワーヘッド208aに供給される。第2のPCV302も、たとえばノーマルオープンタイプのエアオペレイトバルブからなる圧力制御弁302aと圧力センサ302bとを有している。
ガス制御部106は、第1および第2のPCV300,302における圧力制御弁300a,302aの開度調整を行う。この場合、開度調整を圧力制御弁300a,302aの双方について行うこともできるが、片方だけで行うことも可能である。たとえば、相対的に出力圧力が大きくなる方の圧力制御弁300aを全開状態にし、出力圧力が小さい方の圧力制御弁302aの開度を調整することで、任意の圧力比を選定することもできる。このような圧力比の制御を通じて、第1シャワーヘッド66aに供給する希釈系混合ガスCO/O2/Arの流量と第3シャワーヘッド208aに供給する希釈系混合ガスCO/O2/Arの流量との比を任意に制御することができる。
両PCV300,302の圧力センサ302a,302bより出力されるモニタ圧力信号は、ガス制御部106を経由してメンテナンス制御部304に与えられる。メンテナンス制御部304は、マイクロコンピュータからなり、圧力センサ302a,302bからのモニタ圧力(圧力測定値)に基づいて後述するようなメンテナンス処理を実行する。
この構成例によれば、希釈系のガスを第1シャワーヘッド66aと第3シャワーヘッド208aとに分配する流量(ガス分流量)の設定値を変更する場合に、ガス制御部106が主制御部からのコマンドに応じて圧力制御弁300a,302aの双方または片方を制御することで、瞬時にガス流量の変更を実行することができる。このことにより、第1シャワーヘッド66aよりチャンバ10内に吐出(導入)されるAr流[1]と、第3シャワーヘッド208aからチャンバ10内に吐出(導入)されるAr流[3]とのガス流量比のバランスをエッチング中において高精度に調整することができる。このような流量バランス調整機能の向上により、たとえば半導体ウエハW面内のエッチング形状の均一化等のエッチング特性が向上する。なお、上記のような圧力制御装置を用いた流量比制御の方法は、第1シャワーヘッド66aおよび第3シャワーヘッド208aへのガス分流に限定されるものではなく、同様のガス分流を行う任意のアプリケーションに適用できる。
上述したように、図12の処理ガス流量制御システムは、図10で説明した処理ガス流量制御システムよりもガス流量の設定変更に対して迅速な応答ができるようになるが、一方において圧力制御装置(PCV300,302)から下流側でガス分流量の精度がガス流路のコンダクタンス変化により影響を受け易いという一面もある。その場合は、圧力制御装置の監視およびそのメンテナンスが重要になってくる。
以下、この実施形態における圧力制御装置についての好適なメンテナンス法を説明する。このメンテナンス法は、メンテナンス制御部304が中心になって実施するもので、以下に述べるように「ガス圧力スパンずれチェック」、「ガス圧力安定性チェック」の検査と良否判定を行う。
(ガス圧力スパンずれチェック)
たとえば、上述のようなチャンバ10内をN2(窒素)ガスでパージする工程の中で、第1および第2のPCV300,302における圧力制御弁300a,302aを全開(フルオープン)状態にする。そして、チャンバ10内の排気速度を一定に保ち、N2ガス供給源(不図示)から一定流量の窒素ガスをガス供給管94内に送り込む。そうすると、両PCV300,302の圧力センサ300b、302bより得られるモニタ圧力(圧力測定値)PC、PEは、図13Aに示すように、N2(窒素)ガス供給の開始とともに指数関数的に立ち上がってそれぞれ一定の圧力[PC],[PE]に安定する。通常、第1シャワーヘッド66aの方が第3シャワーヘッド208aよりもガス噴出孔の数が少ないため(ガス流路のコンダクタンスが小さいため)、第1のPCV300側の圧力[PC]が第2のPCV302系の圧力[PE]よりも幾らか高くなる。正常状態では、このガス圧力差A=[PC]−[PE]が一定のスパン内に収まる。
メンテナンス処理部304は、両圧力センサ300b、302bより得られるモニタ圧力(圧力測定値)PC、PEを取得して、一定周期たとえば100ミリ秒間隔でガス圧力差A=[PC]−[PE]を求めて圧力監視を行う。この圧力監視は、パージングを開始して圧力が安定するまでの所定時間(t1)が過ぎてから、たとえばパージングが終了するまで実施する。監視内容は、ガス圧力差Aが予め設定した許容範囲(下限AL〜上限AH)内に入っているか否かをチェックしてよく、所定時間たとえば3秒間連続して(100ミリ秒のサンプリングで連続30回)許容範囲(下限AL〜上限AH)から外れた場合は「異常」と判定してアラームを表示する。ここで、「異常」とは、PCV300ないし第1シャワーヘッド66a側のガス分流系統とPCV300ないし第1シャワーヘッド66a側のガス分流系統との相対的なバランスがくずれたことを意味し、通常はいずれか一方のガス系統で何らかの故障が起きていることが多い。
上記のように「異常」のアラームを表示するときは、同時にインターロックをかけて、次の半導体ウエハWが当該プラズマエッチング装置のチャンバ10に搬入されるのを禁止し、所要の復旧作業を行う。
(ガス圧力安定性チェック)
「ガス圧力安定性チェック」は定期的なメンテナンスの中で実施される。この検査でも、チャンバ10内の排気速度を一定に保って、N2ガス供給源(不図示)から所定流量の窒素ガスをガス供給管94内に送り込む。ただし、窒素ガスを双方のガス分流系統に送り込むのではなく、片側だけに送り込む。すなわち、両PCV300,302の圧力制御弁300a,302aのうち一方を完全に閉じて他方をフルオープンにする。
より詳細には、圧力制御弁300a,302aの開閉状態を2通りに切り替える。第1のステップでは、PCV300の圧力制御弁300aを完全に閉じ、PCV302の圧力制御弁302aを全開つまりフルオープンにする。その際、両圧力制御弁300a,302aをそれぞれフルオープンにした状態から圧力制御弁300aだけを完全に閉じるのが好ましい。第2のステップでは、反対に、PCV302の圧力制御弁302aを完全に閉じ、PCV300の圧力制御弁300aをフルオープンにする。そして、各ステップ毎に両PCV300,PCV302の圧力センサ300b、302bより得られるモニタ圧力(圧力測定値)を取得する。
図14Aおよび図14Bに、「ガス圧力安定性チェック」の検査でN2ガス流量をL1(たとえば600sccm),L2(たとえば1000sccm)とした場合に圧力センサ300b、302bより得られるモニタ圧力(圧力測定値)の時間特性を波形で示す。図示のように、第1のステップでは、フルオープンのPCV302側で通常の動作時よりも相当高い圧力PELが得られ、完全に閉じた状態のPCV300側で通常の動作時よりも相当低い圧力PCOが得られる。また、第2のステップでは、フルオープンのPCV300側で通常の動作時よりも相当高い圧力PCLが得られ、完全閉状態のPCV302側で通常の動作時よりも相当低い圧力PEOが得られる。
メンテナンス処理部304は、第1のステップにおいて、ガス圧力の安定する所定の時刻t2から一定の期間(たとえば9秒)にわたってモニタ圧力PEL,PCOをそれぞれ一定の周期(たとえば1秒間隔)でサンプリングして平均値を求める。また、第2のステップにおいても、ガス圧力の安定する所定の時刻t3から一定の期間にわたってモニタ圧力PCL,PCOをそれぞれ一定の周期でサンプリングして平均値を求める。
次に、メンテナンス処理部304は、上記のようなN2ガス流量をパラメータとする複数回(たとえば2回)の検査で得られたモニタ圧力のデータを基に幾つかの検査項目について判定処理を行う。
第1の検査項目は、ガス流量に対する圧力の応答性に関するスパン特性である。図15Aに示すように、第1のPCV300ないし第1シャワーヘッド66aのガス分流系統について、1回目(N2ガス流量L1)の検査で得られるフルオープン時の圧力PCL1と2回目(N2ガス流量L2)の検査で得られるフルオープン時の圧力PCL2との間の増加率または傾きGPCを一次近似式(PCL2−PCL1)/(L2−L1)で求める。そして、この傾きGPCが予め設定されている許容範囲(下限GL〜上限GH)内に入っているか否かを判定する。同様にして、図15Bに示すように、第2のPCV302ないし第3シャワーヘッド208aのガス分流系統について、1回目(N2ガス流量L1)の検査で得られるフルオープン時の圧力PEL1と2回目(N2ガス流量L2)の検査で得られるフルオープン時の圧力PEL2との間の増加率または傾きHPEを一次近似式(PEL2−PEL1)/(L2−L1)で求める。そして、この傾きHPEが予め設定されている許容範囲(下限HL〜上限HH)内に入っているか否かを判定する。許容範囲から出た場合の原因としては、たとえば当該PCV内の圧力制御弁や圧力センサ等の故障が考えられる。いずれにしても、分流制御を設定通りに行い得ない状態になっている以上、点検や部品交換を求めるアラームを表示してよい。
第2の検査項目は、CEL削れ、つまりシャワーヘッドにおけるガス噴射孔の削れ(劣化)具合である。プラズマエッチング装置においては、上部電極を兼ねるシャワーヘッドがイオンのアタックを受けて消耗劣化し、特にガス噴射孔が電界を集中させるためスパッタされやすい。ガス噴射孔が削れると、コンダクタンスが低くなり、当該ガス分流系統で圧力が下がる。
そこで、第1のPCV300ないし第1シャワーヘッド66aのガス分流系統について、第1シャワーヘッド66aにおけるガス噴射孔の削れ具合(センターのCEL削れ)を判定するために、図14Bに示すように、所定のN2ガス流量(たとえばL2)の下で得られるフルオープン時の圧力PCL2が予め設定した許容範囲(下限KL〜上限KH)内に入っているか否かを判定する。そして、許容範囲(下限KL〜上限KH)内に入っているときはスペック内(異常無し)、許容範囲(下限KL〜上限KH)内に入っていないときはスペック外(異常有り)との判定結果を出す。
同様に、第1のPCV300ないし第1シャワーヘッド66aのガス分流系統についても、第3シャワーヘッド208aにおけるガス噴射孔の削れ具合(エッジのCEL削れ)を判定するために、図14Bに示すように、所定のN2ガス流量(たとえばL2)の下で得られるフルオープン時の圧力PCE2が予め設定した許容範囲(下限JL〜上限JH)内に入っているか否かを判定する。そして、許容範囲(下限JL〜上限JH)内に入っているときは「スペック内(異常無し)」、許容範囲(下限JL〜上限JH)内に入っていないときは「スペック外(異常有り)」との判定結果を出す。
第3の検査項目は、ガス分流系統におけるガスリークである。「ガス圧力安定性チェック」では、図14Aまたは図14Bに示すように、圧力制御弁を完全に閉じたガス分流系統側でもガスリークに応じた圧力(PCO,PEO)が検知される。この種のガスリークは、ガス分流系統内部(特にシャワーヘッド内の環状隔壁部材64,264)のリークだけでなく、チャンバ10の室内を介して外からガスが回り込んでくる分もある。たとえば、第1のステップでは、フルオープン側の第3シャワーヘッド208aよりチャンバ10内に噴出された窒素ガスがクローズ側の第1シャワーヘッド66aのガス噴射孔からガス分流系統の内部に入り込む。ガスリークの大きいのは、望ましいことではない。
そこで、上記のようにクローズ側のガス分流系統側で得られるモニタ圧力(PCO,PEO)が許容値Mより高いか否かを判定する。モニタ圧力(PCO,PEO)が許容値Mより低いときは、ガスリークが許容値を超えていない旨の「異常無し」の判定結果を出す。モニタ圧力(PCO,PEO)が許容値Mより高いときは、ガスリークが許容値を超えている旨の「異常有り」の判定結果を出す。
上記のようなメンテナンス処理に用いる種々の基準値または許容範囲は、当該装置の機差、使用期間、あるいはプロセスガス等に対応させて随時変変えることもできる。なお、圧力制御装置における圧力センサのゼロ点確認は別の検査手段により行ってよい。
次に、図16〜図18につき、この実施形態における電極兼シャワーヘッドの冷却機構について説明する。高密度プラズマを生成する容量結合型プラズマエッチング装置では、平行平板電極に印加する高周波電力により生じ易い電極の温度上昇を低減させ、電極を所定の温度に制御することが非常に重要になる。
図16に、この実施形態のプラズマエッチング装置において上部電極34(外側上部電極36および内側上部電極38)に設けられる冷媒通路138の取付位置を示す。図17は、冷媒通路138における冷媒経路のパターンを示す。図18に、図17のX2−X2についてみた冷媒通路138の断面構造を示す。
冷却通路138には、外付けのチラーユニット(不図示)より配管を介して所定温度の冷媒たとえば冷却水が循環供給される。図17に示すように、冷媒は、チラーユニットからの配管(不図示)を流れてきて内側入口140から冷却通路138に入り、中心部を一周してから、第1冷媒通路148Aを矢印の方向に流れる。そして、冷媒は、第1冷媒通路148Aをほぼ同心円状に一周すると、次に第2冷媒通路148Bを第1冷媒通路148Aにおける流れとは逆の方向に流れ、さらに第2冷媒通路148Bにおける流れとは逆の方向に第3冷媒通路148Cを流れて内側出口142に出るようになっている。ここで、内側出口142と外側入口144は配管(不図示)で接続されており、内側出口142から出て外側入口114に入った冷媒は第4冷媒通路148Dを第3冷媒通路148Cにおける流れとは逆方向に流れるようになっている。このように隣接する冷媒通路における冷媒の流れを互いに逆方向にすることで、外側上部電極36および内側上部電極38における温度ムラが大幅に低減する。
図18に、上記冷媒通路148の好ましい断面形状として2種類のものを示す。すなわち、図18の(a)は冷媒通路の断面形状を櫛状にする構成であり、図18の(b)は冷媒通路の断面形状を長細い蛇行状にする構成である。このような櫛状または蛇行状の通路断面構造にすることで、冷媒通路の側壁の面積が増加して冷媒との接触面積が増大して、冷媒の排熱効率が向上する。また、どちらの場合でも、上記冷媒通路138の断面積は、上述した外部配管の断面積に近い大きさになっている。このような大断面積の冷媒通路とすることで、圧力損失の発生が抑えられ、冷媒の流速が低下しないようになる。実際、冷媒と外側上部電極36および内側上部電極38との温度差が従来は20℃であったものが、この実施形態では2℃に低減する。
上記のような電極兼シャワーヘッドの冷却機構により、高周波電力が印加され高密度プラズマ生成する上部電極に対する高精度の温度制御が可能になり、図16に示す電極板60への反応生成物の付着およびそれに伴うガス噴出孔60aのガス詰まり等が大幅に低減する。したがって、このプラズマエッチング装置のメンテナンス管理が簡便になる。
次に、この実施形態における電極兼シャワーヘッドの中心ガス導入室66あるいは周辺ガス導入室68に処理ガスを導入するガスラインについて説明する。この実施形態では、チャンバ10内のガス供給管90あるいは分岐管94a等の全てのガス供給配管を絶縁材料で構成する。ガス供給配管がSUSのような導電材料で構成されていると、チャンバ10内での高周波伝送が乱され、エッチング特性に大きな影響が出るからである。
図19に、図1の領域150を拡大して示す。図19に示すように、テフロン(登録商標)製のガス供給管90の先端部には凸部152が設けられるとともに、電極支持体62の上面には該凸部152に対応する凹部が形成されている。上記凸部152が上記凹部に実質的なスペースまたは隙間を作らずに嵌合されることで、ガス供給管90がOリング154およびセンターリング156を介して電極支持体62に気密に取り付けられる。ここで、処理ガスは、ガス供給管のガス通路158を通って周辺ガス導入室68に供給される。このように、上部電極34のシャワーヘッドに接続されるガス供給管90のジョイント部をテフロン(登録商標)のような絶縁体で隙間無く塞ぐ構成により、処理ガス導入配管部での異常放電を確実に防止することができる。
次に、図1、図20〜図22を参照して、この実施形態におけるプラズマエッチング装置の安全機能、特に電磁波漏洩防止機能すなわちEMI(Electro−Magnetic Interference)シールド機能について説明する。
チャンバ10は、図1に記したX1−X1で上下に分離すると、図20Aおよび図20Bに示すように下部チャンバ・アッセンブリ162と上部チャンバ・アッセンブリ164とに分けられる。ここで、図20Aはこの分離状態における両アッセンブリ162,164の対向部分を示す要部側面図であり、図20Bはその断面図である。
図20Aに示すように、下部チャンバ・アッセンブリ162の円筒状の接合部材166の所定位置に下部クロー(爪部)168が固定して取り付けられ、上部チャンバ・アッセンブリ164の円筒状の接合部材170の所定位置に上部クロー172が設けられている。ここで、上部クロー172は、後述するベアリング機構により円周方向に一定の範囲内で移動できるようになっている。なお、チャンバ外周に沿って上記のような相対向する上部および下部クロー(172,168)が等間隔で複数組配置されている。
図20Bに示すように、円筒状の下部接合部材166の上面にはシールド用溝174が上面部に沿い延在して形成され、このシールド用溝174内にリング状のEMIシールドスパイラル176が埋め込まれている。なお、下部接合部材166の径方向内側に隣接して絶縁体部材178が取り付けられている。一方、円筒状の上部接合部材170の外壁にベアリング支持体180が固着され、このベアリング支持体180の上にベアリング機構184を介してベアリング可動体182が円周方向に移動可能に取り付けられている。上部クロー172はベアリング可動体182に固定されている。また、上部接合部材170の径方向内側に隣接して絶縁体部材186が取り付けられている。上下の絶縁体部材186,178は図1の絶縁性遮蔽部材44を構成する。
図1のX1−X1で下部チャンバ・アッセンブリ162と上部チャンバ・アッセンブリ164とを連結させた状態を図21Aおよび図21Bに示す。ここで、図21Aは連結状態におけるチャンバ接合部を示す要部側面図であり、図21Bはその断面図である。
図21Aに示すように、上部チャンバ・アッセンブリ164側の上部クロー172と下部チャンバ・アッセンブリ162側の下部クロー168とは、それらの上面172aと下面168aとが互いに噛み合って係合している。この上部および下部クロー172,168同士の係合は、下部接合部材166の上面に上部接合部材170の下面を接合させた後、たとえばピニオン&ラックのような駆動および運動変換機構(不図示)を用いてベアリング機構184により可動の上部クロー172を円周方向に適当な距離だけ移動または変位させることによって行われる。
この実施形態の連結状態では、図21Bに示すように、下部接合部材166と上部接合部材170とはEMIシールドスパイラル176によって完全に電気的に接続し、本装置内に投入された高周波がチャンバ10の外部に漏洩することは皆無になる。なお、下部接合部材166と上部接合部材170同士は、Oリング等の周知の気密シール材(不図示)を介して気密に接触するようになっている。また、Oリング等の気密シール材はEMIシールドスパイラル176の内側に設けられてもよい。
このような電磁波漏洩あるいはノイズ発生を防止する機構は、その他にも、この実施形態のプラズマエッチング装置の必要な箇所に設けられている。何れのところでも、図22で拡大して示すように、たとえばステンレス製のEMIシールドスパイラル176が、円筒状の下部接合部材(たとえば上記の下部接合部材166)の上面に設けられたスパイラル取付溝に埋め込まれ、その上から上側接合部材(たとえば上記の下部接合部材170)がEMIシールドスパイラル176を押圧するように着脱可能に接続される。
この実施形態では、図23に示すように、EMIシールドスパイラル176を予め所要の直径または長さを有するリング体に形成し、このリング体の状態でスパイラル用溝に装入するようにしている。このようなリング型EMIシールドスパイラルにより、プラズマエッチング装置の組み立て時あるいはメンテナンス時の安定性および安全性が大幅に向上する。従来は、EMIシールドスパイラルを所要の長さに切断して線状の状態でスパイラル取付溝に装入していた。しかしながら、線状EMIシールドスパイラルは、装入状態で両端をぴったり合わせないと電磁波漏洩防止機能が不完全になったり、装入作業が困難になっていた。なお、線状のEMIシールドスパイラルは、その両端をたとえば溶接で接合することにより、リング体のEMIシールドスパイラルに形成(変形)できる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明を限定するものでない。当業者にあっては、具体的な実施態様において本発明の技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形・変更を加えることが可能である。
たとえば、上記第1の実施形態では、上部電極34(内側上部電極38)に設ける上部シャワーヘッドを上部中心シャワーヘッド66aと上部周辺シャワーヘッド68aとに2分割し、チャンバ10の側壁に設ける側部シャワーヘッド108と合わせて3系統のシャワーヘッド方式とした。しかし、たとえば環状隔壁部材64を省いて上部シャワーヘッドを1系統タイプ[66a,68a]に構成して、側部シャワーヘッド108と合わせて2系統のシャワーヘッド方式とすることも可能である。その場合は、上部シャワーヘッド[66a,68a]よりエッチャント系のガスを導入し、側部シャワーヘッド108より希釈系のガスを導入してよい。また、側部ガス導入部において、上記実施形態のシャワーヘッド108に代えて、ガスパイプで処理ガスを導入するようにしてもよい。
また、上記第1の実施形態では、O2ガスやCOガス等の添加ガスを希釈ガス(特にArのような不活性ガス)と一緒に側部シャワーヘッド108あるいは上部中心シャワーヘッド66aよりチャンバ10内に導入した。しかし、添加ガスをエッチャントガスと一緒に上部周辺シャワーヘッド68aよりチャンバ10内に導入する方法も可能である。また、希釈ガス系のシャワーヘッド108,66aとエッチャント系のシャワーヘッド68aとの間で、あるいは希釈ガス系のシャワーヘッド108,66a同士の間で、添加ガスをガス種別にあるいは所望の流量比で分配してチャンバ10内に導入する方法も可能である。さらには、希釈ガス系のシャワーヘッド108,66aから導入するガスにある程度のエッチャントガスを含ませることや、エッチャント系のシャワーヘッド68aから導入するガスにある程度の希釈ガス(特に不活性ガス)を含ませることも可能である。
また、上記第2の実施形態では、O2ガスやCOガス等の添加ガスを希釈ガス(特にArのような不活性ガス)と一緒に上部第3シャワーヘッド208aあるいは上部第1シャワーヘッド66aよりチャンバ10内に導入した。しかし、添加ガスをエッチャントガスと一緒に上部第2シャワーヘッド68aよりチャンバ10内に導入する方法も可能である。また、希釈ガス系のシャワーヘッド208a,66aとエッチャント系のシャワーヘッド68aとの間で、あるいは希釈ガス系のシャワーヘッド208a,66a同士の間で、添加ガスをガス種別にあるいは所望の流量比で分配してチャンバ10内に導入する方法も可能である。さらには、希釈ガス系のシャワーヘッド208a,66aから導入するガスにある程度のエッチャントガスを含ませることや、エッチャント系のシャワーヘッド68aから導入するガスにある程度の希釈ガス(特に不活性ガス)を含ませることも可能である。
また、上記実施形態ではガス分流のための流量比制御を2つのガス供給管に分流する場合について説明している。しかし、3つ以上のガス供給管に分流する場合にも同様に適用可能である。たとえば、図12で説明した圧力制御装置により流量制御部を構成する場合には、分流するガス供給管の数にあわせた3つ以上のPCVを並列配置してガス供給管を分岐すればよい。そして、3つ以上のPCVを用いた流量比制御部のメンテナンスチェックでは、その中の2つのPCVを取り出し、図13〜図15を参照して説明したチェックおよび判定を行う。ここで、2つのPCVの組み合わせ毎に上記チェックおよび判定を行うようにすることが好ましい。また、上記実施形態におけるPCVに対するメンテナンス法またはメンテナンス処理装置はプラズマエッチング装置以外の処理装置にも適用可能である。
本発明のプラズマエッチング装置では、プロセスに応じて任意のエッチャントガス、希釈ガス、添加ガスを使用することができる。たとえば、ハロゲン含有の有機化合物ガスとしては、フッ素(F)に限らず、塩素(Cl)、臭素(Br)あるいは沃素(I)を含有するものであってもよい。
また、上記実施形態では上部電極34を構成する外側上部電極36がリング状に1つ配置される場合について説明しているが、2つ以上の外側上部電極36が内側上部電極38の周縁部に等間隔に配置される構造であってもよい。上部電極34は一体型または単体型のものでも構わない。
上記実施形態では、被処理基板が半導体ウエハの場合について説明しているが、プラズマ処理される被処理基板はLCDガラス基板、PDP基板のようなフラットディスプレイパネルに用いるガラス基板等であってもよい。
なお、上記実施形態ではプラズマエッチング装置について説明しているが、本発明は、絶縁体膜、導電体膜あるいは半導体膜等のプラズマCVD、絶縁基板表面のプラズマ洗浄、チャンバ内壁のプラズマクリーニング等の場合でも同様に適用できるものである。