JP4558589B2 - 温度制御装置、温度調節機能付き可動ステージ、及び輻射伝熱装置 - Google Patents

温度制御装置、温度調節機能付き可動ステージ、及び輻射伝熱装置 Download PDF

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Description

本発明は、温度制御装置に関し、特に可動部分の温度制御に適した温度制御装置に関する。また、本発明は、温度調節機能付きの可動ステージに関する。さらに、本発明は、可動部分の温度を調節することが可能な輻射伝熱装置に関する。
図6に、下記特許文献1に開示された冷却機能付き位置決め装置の概略断面図を示す。底板101の上に、微動機構103により天板102が支持されている。微動機構103は、3軸方向及び各軸周りの回転方向の6自由度に関して、天板102を微小変位させ、位置決めを行う。底板101は、粗動テーブル100に固定されている。底板101、天板102、粗動テーブル100は、真空容器内に収容される。
底板101と天板102との間に、ペルチェ素子105が、その吸熱側の面を天板102に向けるような姿勢で、配置されている。ペルチェ素子105の高温側の表面に冷却板104が取り付けられ、冷却版104は、支持部材109により底板101に支持されている。ペルチェ素子105の吸熱側の面に輻射板106が取り付けられている。天板102の底面に黒体107が取り付けられている。黒体107と輻射板106とは、ある間隙を隔てて相互に対向する。
冷却板104に冷媒用配管108が結合している。冷媒用配管108内を流れる冷媒により冷却板104が冷却される。これにより、ペルチェ素子105の発熱側の表面が、冷却される。
特開2003−58258号公報
特許文献1に開示された装置の底板101は、粗動ステージと共に移動する。このため、冷媒用配管108は可撓性を有する材料で形成しなければならない。このような材料は、真空雰囲気の汚染の原因になる。
本発明の目的は、可動部分に直接冷媒を供給することなく、可動部分の温度制御を行うことが可能な温度制御装置を提供することである。本発明の他の目的は、この温度制御装置を利用した可動テーブル装置を提供することである。本発明のさらに他の目的は、この温度制御装置に適用可能な輻射伝熱装置を提供することである。
本発明の一観点によれば、温度制御の対象となる温度制御対象部材と、前記温度制御対象部材に熱的に結合し、第1の放熱表面を有する第1の放熱部材と、前記第1の放熱表面に、ある間隙を隔てて対向配置された第1の受熱表面を有し、前記第1の放熱表面から放射された熱を受ける第1の受熱部材と、前記第1の放熱表面及び第1の受熱表面が相互に対向する姿勢を維持したまま、前記第1の放熱部材及び第1の受熱部材の一方を他方に対して移動させる第1の移動機構とを有し、前記第1の放熱部材が、相互に表裏の関係にある第1の表面と第2の表面とを持つ少なくとも1枚の放熱板を含み、該第1の表面と第2の表面とが前記第1の放熱表面を構成し、前記第1の受熱表面が、前記第1の表面に対向する領域と前記第2の表面に対向する領域を含む温度制御装置が提供される。
本発明の他の観点によると、XY直交座標系が画定された基準ベースに対して、X軸方向に移動可能に支持された粗動Xテーブルと、前記粗動Xテーブルに対して、Y軸方向に移動可能に支持された粗動Yテーブルと、前記粗動Yテーブルに対して、前記粗動Xテーブル及び粗動Yテーブルの移動可能距離よりも微小な量だけ変位可能に支持され、かつ前記粗動Xテーブル及び粗動Yテーブルの位置精度よりも高い精度で位置制御可能な微動テーブルと、前記粗動Xテーブルに支持され、該粗動Xテーブルに熱的に結合し、Y軸に平行な第1の受熱表面を有する第1の受熱部材と、前記第1の受熱表面に、ある間隙を隔てて配置された第1の放熱表面を有する第1の放熱部材と、前記粗動Yテーブルに支持され、前記第1の放熱部材と前記微動テーブルとの間の伝熱経路の一部を構成する伝熱部材と、吸熱が生ずる第1の吸熱領域と発熱が生ずる第1の発熱領域とを含む第1の吸発熱素子であって、前記伝熱部材と前記第1の放熱部材との間に配置され、該第1の吸熱領域が前記伝熱部材に熱的に結合し、該第1の発熱領域が前記第1の放熱部材に熱的に結合している第1の吸発熱素子と、前記粗動Xテーブルに支持され、該粗動Xテーブルに熱的に結合し、X軸に平行な第2の放熱表面を有する第2の放熱部材と、前記第2の放熱表面にある間隙を隔てて対向する第2の受熱表面を有する第2の受熱部材と、前記第2の受熱部材を冷却する冷却機構とを有する温度調節機能付き可動ステージが提供される。
本発明のさらに他の観点によると、放熱表面を有する放熱部材と、前記放熱表面にある間隙を隔てて対向する受熱表面を有する受熱部材と、前記放熱部材と受熱部材との一方を他方に対して移動させる移動機構と、吸熱が生ずる吸熱領域と発熱が生ずる発熱領域とを含む吸発熱素子であって、該吸熱領域が冷却対象物に熱的に結合し、該発熱領域が前記放熱部材に熱的に結合している吸発熱素子とを有し、前記移動機構により前記放熱部材と前記受熱部材との一方が他方に対して移動したとき、前記放熱表面と受熱表面とは、相互に対向する姿勢を維持する形状を有する輻射伝熱装置が提供される。
放熱部材の放熱表面から輻射された熱が、受熱部材の受熱表面に吸収されることにより、放熱部材が冷却される。放熱部材と受熱部材とが接触しないため、放熱部材及び受熱部材の一方を他方に対して移動させることができる。このため、フレキシブルな冷媒流路等を配置する必要がない。
図1に、実施例による低エネルギ電子ビーム近接露光(LEEPL)装置の概略図を示す。下側基準ベース1の上にウエハ用可動ステージ5が取り付けられている。上側基準ベース2が下側基準ベース1に固定されており、ウエハ用可動ステージ5の上方に、マスク用可動ステージ6を支持している。下側基準ベース1及び上側基準ベース2により基準ベース3が構成されている。基準ベース3に固定され、水平面をXY面とするXYZ直交座標系が定義される。マスク用可動ステージ6の上方に、電子ビーム源7が配置されている。電子ビーム源7は、低速電子銃、アパーチャ、電子ビーム用レンズ、偏向器等を含んで構成される。基準ベース3、ウエハ用可動ステージ5、マスク用可動ステージ6、及び電子ビーム源7は、真空容器8内に収容されている。
ウエハ用可動ステージ5に、露光すべきウエハが保持され、マスク用可動ステージにマスクが保持される。電子ビーム源7から出射された低エネルギ電子ビームが、マスクを通してウエハに入射する。
図2及び図3に、ウエハ用可動ステージ5の概略図を示す。以下、主として図2を参照しながら説明を進め、必要に応じて図3を参照することとする。
ウエハ用可動ステージ5は、粗動Xテーブル10、粗動Yテーブル11、微動テーブル12、及びウエハチャック13を含んで構成される。粗動Xテーブル10は、Xリニアガイド14(図3参照)により、下側基準ベース1に対してX方向に移動可能に支持されている。ボールねじ15を作動させることにより、粗動XテーブルをX方向に移動させることができる。粗動Yテーブル11は、Yリニアガイド18により、粗動Xテーブル10に対してY方向に移動可能に支持されている。超音波モータ19を作動させることにより、粗動Yテーブル11をY方向に移動させることができる。図2は、Y方向に平行な視線で見たときの概略図に相当し、図3は、X方向に平行な視線で見たときの概略図に相当する。
微動テーブル12は、XY微動機構24によりチルトステージ23に支持されており、チルトステージ23は、複数のピエゾアクチュエータ22により粗動Yテーブル11に支持されている。ピエゾアクチュエータ22を駆動することにより、チルトステージ23の、XY面に対する傾斜角を制御することができる。XY微動機構24を駆動することにより、微動テーブル12をXY面内で微小に移動させることができる。微動テーブル12のX方向及びY方向の変位可能距離は、例えば数μm程度であり、粗動Xテーブル10及び粗動Yテーブル11の移動可能距離よりも短い。また、微動テーブル12は、粗動Xテーブル10及び粗動Yテーブル11に比べて、より高い精度で位置制御可能である。
アルミニウム製のウエハチャック支持部材28が、転がり軸受け29により、微動テーブル12に支持されている。ウエハチャック支持部材28は、微動テーブル12に対して、Z軸に平行な回転軸を中心として回転方向に微小変位可能である。
ウエハチャック13は、その底面に密着した銅製の均熱板30、及び弾性を有する銅製の弾性伝熱板29によりウエハチャック支持部材28に支持されている。ウエハチャック13は、ウエハチャック支持部材28と共に、回転方向に変位する。露光すべきウエハがウエハチャック13の上面に静電吸着される。微小回転駆動機構34が、ウエハチャック13に回転方向のトルクを印加する。微小回転駆動機構34は、ウエハチャック13に固定され、径方向に突出した作用バー34aと、微動テーブル12に取り付けられた駆動装置34bにより構成される。駆動装置34bが、作用バー34aに、回転方向の力を加えることにより、ウエハチャック13を微小角度回転させる。
ウエハチャック13の姿勢は、その底面と、微動テーブル12の上面との間に配置された静電チャック33により、微動テーブル12に対して拘束される。静電チャック33が作動していない状態では、伝熱板29の弾性により、静電チャック33の吸着面と、それに対向する被吸着面との間に隙間が形成される。この状態で微小回転駆動機構34を作動させることにより、ウエハチャック13を回転方向に変位させることができる。回転方向の位置合わせが完了した状態で、静電チャック33を作動させることにより、ウエハチャック13を微動テーブル12に対して固定することができる。
銅製の伝熱部材38が、断熱部材39を介して粗動Yテーブル11に取り付けられている。伝熱部材38の一方の端部(高温側の端部)は、ウエハチャック支持部材28の近傍まで延在し、他方の端部(低温側の端部)は、粗動Xテーブル10の、X方向に直交する側面に対向する位置まで延在している。伝熱部材38の低温側の端部に、第1のペルチェ素子40が取り付けられている。第1のペルチェ素子40の吸熱領域が、伝熱部材38に熱的に結合している。第1のペルチェ素子40の発熱領域に、銅製の第1の放熱部材45が取り付けられ、両者が熱的に結合している。粗動Xステージ10の、X方向に直交する側面に、銅製の第1の受熱部材46が取り付けられ、両者が熱的に結合している。
第1の放熱部材45は、2枚の第1の放熱板45aを含む。第1の放熱板45aの各々は、XY面に平行な第1の放熱表面を有する。第1の受熱部材46は、3枚の第1の受熱板46aを含む。第1の受熱板46aの各々は、XY面に平行な第1の受熱表面を有する。3枚の第1の受熱板46aと2枚の第1の放熱板45aとは、XY面内で部分的に重なり、かつZ方向に関して交互に配列するように配置されている。このため、第1の放熱板45aの、相互に表裏の関係にある2つの放熱表面のいずれも、第1の受熱板46aに対向する。
第1の放熱表面と第1の受熱表面には、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)がコーティングされている。相互に対向する第1の放熱表面と第1の受熱表面とは、例えば3mm程度の間隙を隔てて配置されている。第1の放熱表面から輻射された熱が、第1の受熱表面に吸収される。第1の放熱部材45から第1の受熱部材46までの伝熱経路が形成される。第1の放熱部材45の2枚の第1の放熱板45aのいずれの放熱表面も、第1の受熱板46aに対向するため、放熱表面からの輻射熱を効率的に吸収することができる。
第1の放熱表面と第1の受熱表面とが、共にXY面に平行であるため、粗動Yテーブル11がY方向に移動しても、両者の間隔は変動しない。また、第1の放熱表面及び第1の受熱表面は、粗動Yテーブル11がY方向に移動しても、両者の相互に対向する領域の面積が変動しないような形状にされている。なお、第1の放熱表面と第1の受熱表面とは、必ずしもXY面に平行である必要はない。Y軸に平行であれば、XY平面に対して傾いていてもよい。このように、粗動Yテーブル11を移動させても、第1の放熱表面と第1の受熱表面とが相互に対向する姿勢が維持されるような構成とされている。
第2のペルチェ素子37の発熱領域が、伝熱部材38の高温側の端部に熱的に結合している。第2のペルチェ素子37の吸熱領域が、可撓性伝熱部材36を介してウエハチャック支持部材28に熱的に結合している。ウエハチャック支持部材28は、ピエゾアクチュエータ22、XY微動機構24、及び微小回転駆動機構34を作動させることにより、粗動Yテーブル11及びそれに固定された伝熱部材38に対して、微小に変位する。可撓性伝熱部材36は、この微小変位を許容する程度の可撓性を有する。
均熱板30、弾性伝熱板29、ウエハチャック支持部材28、可撓性伝熱部材36が、ウエハチャック13から、第2のペルチェ素子37の吸熱領域までの伝熱経路を構成している。伝熱部材38が、第2のペルチェ素子37の発熱領域から第1のペルチェ素子40の吸熱領域までの伝熱経路を構成している。第1の放熱部材45及び第1の受熱部材46が、第1のペルチェ素子40の発熱領域から粗動Xテーブル10までの輻射伝熱経路を構成している。これらの伝熱経路は、YZ面に平行なある仮想平面に関して面対称な構造を有する。
粗動Xテーブル10の、Y方向に垂直な側面に、銅製の第2の放熱部材48が取り付けられ、両者が熱的に結合している。X方向に長い銅製の第2の受熱部材49が、粗動Xテーブル10の下方に配置されている。第2の受熱部材49は、断熱部材47を介して下側基準ベース1に固定されており、冷却機構50により冷却される。冷却機構50は、例えば、第2の受熱部材49に熱的に結合した冷媒流路と、冷媒を流すポンプを含んで構成される。
第2の放熱部材48及び第2の受熱部材49は、第1の放熱部材45及び第1の受熱部材46と同様の基本構造を有する。以下に、その構造を説明する。
図3に示すように、第2の放熱部材48は、2枚の第2の放熱板48aを含む。第2の放熱板48aの各々は、XY面に平行な第2の放熱表面を有する。第2の受熱部材49は、3枚の第2の受熱板49aを含む。第2の受熱板49aの各々は、XY面に平行な第2の受熱表面を有する。3枚の第2の受熱板49aと2枚の第2の放熱板48aとは、XY面内で部分的に重なり、かつZ方向に関して交互に配列するように配置されている。
第2の放熱表面と第2の受熱表面には、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)がコーティングされている。相互に対向する第2の放熱表面と第2の受熱表面とは、例えば3mm程度の間隙を隔てて配置されている。第2の放熱表面と第2の受熱表面とが、共にX軸に平行であるため、粗動Xテーブル10がX方向に移動しても、両者の間隔は変動しない。また、第2の放熱表面及び第2の受熱表面は、粗動Xテーブル10がX方向に移動しても、両者が相互に対向する領域の面積が変動しないような形状にされている。このように、粗動Xテーブル10が移動しても、第2の放熱表面と第2の受熱表面とが相互に対向する姿勢が維持されるような構成とされている。
図4(A)及び(B)を参照して、ウエハチャック支持部材28と伝熱部材38との接続部分について説明する。図4(A)は、Y方向に平行な視線で見たときの正面図を示し、図4(B)は、一点鎖線B4−B4における断面図を示す。
ウエハチャック支持部材28は、頭部28a、連結部28b、平板部28c、及び4本の脚部28dにより構成される。頭部28aは、図2に示した転がり軸受け29を介して微動テーブル12に支持される。平板部28cは、XY面に平行な正方形の板状形状を有し、頭部28aの下方に配置される。連結部28bが、頭部28aと平板部28cのほぼ中心とを連結する。脚部28dは、平板部28cの四隅から下方に伸びる。
伝熱部材38は、図2に示した粗動Yテーブル11上に固定された基部38b、及び基部38bから上方に立ち上がる4本の立ち上がり部38aを含んで構成される。立ち上がり部38aは、ウエハチャック支持部材28の相互に隣り合う脚部28dの間に配置される。
4本の立ち上がり部38aの各々の、内側を向く面に、第2のペルチェ素子37が取り付けられている。第2のペルチェ素子37の発熱領域が立ち上がり部38aに密着する。第2のペルチェ素子37の吸熱領域の表面に、接続部材35が密着する。1つの脚部28dから、それに隣り合う脚部28dまで、可撓性伝熱部材36が架け渡されている。2本の脚部28dの間において、接続部材35が可撓性伝熱部材36を挟み込んでいる。このようにして、脚部28dから可撓性伝熱部材36及び接続部材35を経由して第2のペルチェ素子37に至る伝熱経路が構成される。
図5を参照して、温度制御の方法について説明する。図5の横軸は、ウエハチャック13から第2の受熱部材49までの伝熱経路上の位置を表し、縦軸は温度を単位「℃」で表す。ウエハチャック13及び粗動Xテーブル10の制御目標温度は23℃である。ウエハチャック13からウエハチャック支持部材28までの各部材は、熱伝導効率の高い部材で接続されているため、ウエハチャック支持部材28の温度は、ウエハチャック13の温度とほぼ同一になる。可撓性伝熱部材36の高温端と低温端との間で、約1℃の温度差が生ずると予測される。このため、可撓性伝熱部材36の低温端の制御目標温度は約22℃になる。すなわち、第2のペルチェ素子37の吸熱領域の温度を22℃にすればよい。第2の発熱領域の制御目標温度を30℃にする。
これにより、伝熱部材38の高温端の制御目標温度が30℃になる。伝熱部材38の熱伝導率を考慮すると、その低温端の制御目標温度を約20℃にすればよいことになる。すなわち、第1のペルチェ素子40の吸熱領域の温度を20℃にすればよい。粗動Xテーブル10の制御目標温度が23℃であるため、それに熱的に結合した第1の受熱部材46の温度も23℃になる。第1の放熱部材45と第1の受熱部材46との間の輻射効率を考慮すると、第1の放熱部材45の温度を40℃程度に設定することが好ましい。第1のペルチェ素子40は、その吸熱領域と発熱領域との温度差が約20℃になるように制御される。
粗動Xテーブル10に熱的に結合した第2の放熱部材48の温度が23℃になる。第2の放熱部材48と第2の受熱部材49との間の輻射効率を考慮すると、第2の受熱部材49の温度を−30℃程度にすればよい。第2の受熱部材49の温度は、冷却機構50により、−30℃に維持される。
上記実施例では、基準ベース1に固定された第2の受熱部材49のみが、冷媒により直接冷却される。粗動Xテーブル10やウエハチャック13等の可動部分には、冷媒の流路が設けられていない。このため、フレキシブルチューブを用いることなく、温度制御を行うことができる。真空中においては、フレキシブルチューブは環境汚染の原因になる。上記実施例のように、温度制御対象となる可動部分が真空中に配置されているような場合に、顕著な効果が期待できる。
また、上記実施例では、ウエハチャック13から粗動Xテーブル10までの伝熱経路内に第1のペルチェ素子40及び第2のペルチェ素子37が直列に配置されている。このため、ウエハチャック13と粗動Xテーブル10との温度を共に23℃に維持しつつ、ウエハチャック13で発生した熱を粗動Xテーブル10まで伝えることができる。上記実施例では、ペルチェ素子を2段構成にしたが、1段構成にしてもよい。ただし、温度をより高精度に制御するために、ペルチェ素子を2段構成とするほうが好ましい。以下にその理由を説明する。
例えば、第1のペルチェ素子40を配置しない場合について検討する。第1のペルチェ素子40を配置しない場合には、第1の放熱部材45の温度が約40℃であるため、伝熱部材38の低温端の温度も約40℃になる。伝熱部材38の高温端と低温端との温度差が約10℃であるため、低温端の温度が40℃であれば、高温端の温度は約50℃になる。従って、第2のペルチェ素子37の発熱領域が50℃、吸熱領域が22℃になるように、第2のペルチェ素子37を駆動することになる。しかし、伝熱部材38の高温端の温度が50℃まで上昇するため、この部分が熱源となり、真空容器内の他の部材を加熱してしまう。
逆に、第2のペルチェ素子37を配置しない場合には、伝熱部材37の低温端の温度を12℃にしなければならない。このため、真空容器内の他の部材を冷却してしまう。
上記実施例の場合には、伝熱部材38の高温端の温度が高々30℃程度であり、低温端の温度が20℃程度である。また、第1の放熱部材45の温度も、高々40℃程度である。このため、真空容器内の他の部材の温度に擾乱を与えにくい。さらに、上記実施例では、第1の放熱部材45の2枚の放熱板45aの各々は、第1の受熱部材46の受熱板46aにより挟まれている。第1の放熱部材45から発生した輻射熱のほとんどが第1の受熱部材46で吸収されるため、真空容器内の他の部材に与える熱的影響は軽微である。
次に、放熱表面及び受熱表面にDLCをコーティングした効果について説明する。DLCは、炭素原子同士の結合状態がダイヤモンド構造とグラファイト構造の両者から成り立ち、かつ一部の炭素原子が水素とも結合している構造を有する。長距離のオーダでは、規則正しい結晶構造を持たず、アモルファス構造となっている。このDLCは、耐摩耗性に優れ、かつ低い摩擦係数を有するという顕著な特徴を持っている。上記実施例においては、放熱表面と受熱表面とが接触しないため、DLCの公知の特徴は利用されていない。
輻射板の表面処理として、黒クロムめっきが知られている。上記実施例においては、黒クロムめっき処理を行う代わりに、DLCコーティングを行った。DLCコーティングを行うことにより、黒クロムめっき処理を行う場合に比べて、より高い輻射伝熱量を達成することができた。
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
実施例によるLEEPL装置の概略図である。 実施例によるウエハステージの概略図である。 実施例によるウエハステージの概略図である。 (A)及び(B)は、それぞれ実施例によるウエハステージのウエハチャック支持部材と伝熱部材との接続部分の正面図及び平断面図である。 実施例によるウエハステージのウエハチャックから第2の受熱部材までの伝熱経路の各部分の温度を示すグラフである。 従来の冷却機能つきウエハステージの概略図である。
符号の説明
1 下側基準ベース
2 上側基準ベース
3 基準ベース
5 ウエハ用可動ステージ
6 マスク用可動ステージ
7 電子ビーム源
8 真空容器
10 粗動Xテーブル
11 粗動Yテーブル
12 微動テーブル
13 ウエハチャック
15 ボールねじ
18 Yリニアガイド
19 超音波モータ
22 ピエゾアクチュエータ
23 チルトステージ
24 XY微動機構
28 ウエハチャック支持部材
29 弾性伝熱板
30 均熱板
33 静電チャック
34 微小回転駆動機構
35 接続部材
36 可撓性伝熱部材
37 第2のペルチェ素子
38 伝熱部材
39 断熱部材
40 第1のペルチェ素子
45 第1の放熱部材
46 第1の受熱部材
48 第2の放熱部材
49 第2の受熱部材
50 冷却機構

Claims (11)

  1. 温度制御の対象となる温度制御対象部材と、
    前記温度制御対象部材に熱的に結合し、第1の放熱表面を有する第1の放熱部材と、
    前記第1の放熱表面に、ある間隙を隔てて対向配置された第1の受熱表面を有し、前記第1の放熱表面から放射された熱を受ける第1の受熱部材と、
    前記第1の放熱表面及び第1の受熱表面が相互に対向する姿勢を維持したまま、前記第1の放熱部材及び第1の受熱部材の一方を他方に対して移動させる第1の移動機構と
    を有し、
    前記第1の放熱部材が、相互に表裏の関係にある第1の表面と第2の表面とを持つ少なくとも1枚の放熱板を含み、該第1の表面と第2の表面とが前記第1の放熱表面を構成し、
    前記第1の受熱表面が、前記第1の表面に対向する領域と前記第2の表面に対向する領域を含む温度制御装置。
  2. さらに、吸熱が生ずる吸熱領域と発熱が生ずる発熱領域とを含む吸発熱素子であって、該吸熱領域が、前記温度制御対象物に熱的に結合され、該発熱領域が、前記第1の放熱部材に熱的に結合されている吸発熱素子を有する請求項に記載の温度制御装置。
  3. さらに、前記第1の受熱部材を支持し、該第1の受熱部材に熱的に結合した可動テーブルと、
    前記可動テーブルに取り付けられ、該可動テーブルに熱的に結合し、第2の放熱表面を有する第2の放熱部材と、
    前記第2の放熱表面に、ある間隙を隔てて対向配置された第2の受熱表面を有し、前記第2の放熱表面から放射された熱を受ける第2の受熱部材と、
    前記第2の放熱表面及び第2の受熱表面が相互に対向する姿勢を維持したまま、前記可動テーブルを前記第2の受熱部材に対して移動させる第2の移動機構と、
    前記第2の受熱部材を冷却する冷却機構と
    を有する請求項1または2に記載の温度制御装置。
  4. XY直交座標系が画定された基準ベースに対して、X軸方向に移動可能に支持された粗動Xテーブルと、
    前記粗動Xテーブルに対して、Y軸方向に移動可能に支持された粗動Yテーブルと、
    前記粗動Yテーブルに対して、前記粗動Xテーブル及び粗動Yテーブルの移動可能距離よりも微小な量だけ変位可能に支持され、かつ前記粗動Xテーブル及び粗動Yテーブルの位置精度よりも高い精度で位置制御可能な微動テーブルと、
    前記粗動Xテーブルに支持され、該粗動Xテーブルに熱的に結合し、Y軸に平行な第1の受熱表面を有する第1の受熱部材と、
    前記第1の受熱表面に、ある間隙を隔てて配置された第1の放熱表面を有する第1の放熱部材と、
    前記粗動Yテーブルに支持され、前記第1の放熱部材と前記微動テーブルとの間の伝熱経路の一部を構成する伝熱部材と、
    吸熱が生ずる第1の吸熱領域と発熱が生ずる第1の発熱領域とを含む第1の吸発熱素子であって、前記伝熱部材と前記第1の放熱部材との間に配置され、該第1の吸熱領域が前記伝熱部材に熱的に結合し、該第1の発熱領域が前記第1の放熱部材に熱的に結合している第1の吸発熱素子と、
    前記粗動Xテーブルに支持され、該粗動Xテーブルに熱的に結合し、X軸に平行な第2の放熱表面を有する第2の放熱部材と、
    前記第2の放熱表面にある間隙を隔てて対向する第2の受熱表面を有する第2の受熱部材と、
    前記第2の受熱部材を冷却する冷却機構と
    を有する温度調節機能付き可動ステージ。
  5. さらに、前記微動テーブルと前記伝熱部材との間の伝熱経路の一部を構成し、可撓性を有する部材で形成された可撓性伝熱部材と、
    吸熱が生ずる第2の吸熱領域と発熱が生ずる第2の発熱領域とを含む第2の吸発熱素子であって、前記可撓性伝熱部材と前記伝熱部材との間に配置され、該第2の吸熱領域が前記可撓性伝熱部材に熱的に結合し、該第2の発熱領域が前記伝熱部材に熱的に結合している第2の吸発熱素子と、
    を有する請求項に記載の温度調節機能付き可動ステージ。
  6. 前記粗動Yテーブルがその可動範囲内でY軸方向に移動したとき、前記第1の放熱表面と前記第1の受熱表面との相互に対向する領域の面積が変化しない請求項4または5に記載の温度調節機能付き可動ステージ。
  7. 前記粗動Xテーブルがその可動範囲内でX軸方向に移動したとき、前記第2の放熱表面と前記第2の受熱表面との相互に対向する領域の面積が変化しない請求項4〜6のいずれかに記載の温度調節機能付き可動ステージ。
  8. 放熱表面を有する放熱部材と、
    前記放熱表面にある間隙を隔てて対向する受熱表面を有する受熱部材と、
    前記放熱部材と受熱部材との一方を他方に対して移動させる移動機構と
    吸熱が生ずる吸熱領域と発熱が生ずる発熱領域とを含む吸発熱素子であって、該吸熱領域が冷却対象物に熱的に結合し、該発熱領域が前記放熱部材に熱的に結合している吸発熱素子と
    を有し、
    前記移動機構により前記放熱部材と前記受熱部材との一方が他方に対して移動したとき、前記放熱表面と受熱表面とは、相互に対向する姿勢を維持する形状を有する輻射伝熱装置。
  9. 前記移動機構により前記放熱部材と前記受熱部材との一方が他方に対して移動しても、前記放熱表面と前記受熱表面との間隔が変動しない請求項に記載の輻射伝熱装置。
  10. 前記移動機構により前記放熱部材と前記受熱部材との一方が他方に対して移動しても、前記放熱表面と前記受熱表面との相互に対向する領域の面積が変動しない請求項8または9に記載の輻射伝熱装置。
  11. 前記放熱表面と前記受熱表面との少なくとも一方に、ダイヤモンドライクカーボンがコーティングされている請求項8〜10のいずれかに記載の輻射伝熱装置。
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