JP4557912B2 - プロセス制御システム - Google Patents

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Description

本発明は、上水道システムなどとして使用されるプロセス制御システムに係わり、特に2つ以上の複数のセンサによって計測される2つ以上の被制御量がトレードオフ関係を持つとき、被制御量の個数未満の操作量で2つ以上の被制御量を最適化させるプロセス制御システムに関する。
浄水プロセス、下水プロセスなどの水処理プロセス、石油化学プロセス、などのプロセス制御においては、何等かの基準に基づいて一つの量(変数A)を良くしようとすると、別の量(変数B)が悪くなってしまうという、いわゆるトレードオフの状況にしばしば遭遇する。このようなトレードオフの状況として、以下の様な例が挙げられる。
・下水処理プロセスでは、アンモニアを除去するために風量制御を行うことがあるが、アンモニアを除去しようとし過ぎると風量が過剰に必要になりそれに必要となる電力エネルギーコストが上昇してしまう。
・下水処理プロセスでは、硝酸を除去するために、メタノールや酢酸などの有機物(炭素源)を投入する制御を行うことがあるが、硝酸を除去するために炭素源を投入しすぎると、炭素源の薬品コストが上昇してしまう。
・下水処理プロセスでリン除去を行うために、凝集剤を投入することがあるが、リン除去率を高めるために凝集剤を投入しすぎると、その薬品コストが上昇してしまう。
・浄水処理では、オゾンを注入して有機物などの除去を行うことがあるが、注入しすぎると、臭素酸という有害物質が逆に生成されてしまう。
・生物学的下水処理プロセスでは、リン除去のためには余剰汚泥と呼ばれる量を多く引き抜く必要があるが、そうすると、余剰汚泥を処分するコストが上昇すると同時に窒素除去率が悪くなる。
・生物学的下水処理プロセスでは、窒素除去のためには、返送汚泥量と呼ばれる量を増加させる方が良いが、そうすると、りん除去率が悪化したり、返送汚泥を行うポンプの電力にかかわるコストが上昇する。
このように、一般にプロセスには様々なトレードオフの状況があり、このトレードオフの適切なバランスを保つようにすることは、プロセス制御の重要な役割の一つである。
したがって、実際のプロセス制御では、このようなトレードオフを考慮して制御を行う必要がある。現実のプロセス運転やプロセス制御においては、この様なトレードオフを経験や試行錯誤によってバランスしていることが多い。経験や試行錯誤ではなく、よりシステマティックにトレードオフを考慮した制御系として、トレードオフの関係にある複数の量を一つの評価関数にまとめて、その評価関数に基づく最適化によって、最適な運転条件(最適制御目標値や最適操作量)を求める方法がある。
このような方法の一つとして、発明者等は、特開2004−171531号公報に記載の「プラントワイド最適プロセス制御装置」(以下、特許文献1)において、プロセス内での反応を含めた物質収支式を制約条件として、最適な運転条件を求める方法を考案した。この方法では、最適化という方法を用いて、様々な外乱・外部条件(例:下水処理プロセスの場合は流入下水量や流入下水水質濃度)のもとで最適な制御目標値を決定し、その制御目標値に追従するようにワンループの制御器でプロセスを制御している。
特許文献1で主張しているように、この発明は、従来プロセス制御で用いられているPI制御などのワンループ制御との整合性の良いプラントワイドな最適化を目標としており、従来のワンループ制御を最大限に活用しながら、プラント全体の最適化を図るものである。このようなシステマティックな方法は、実用的な観点からは、極めて有望な制御方式である。しかしその一方で、このような方法を実際に実用化するためには、まだいくつかの問題点が残されている.その中の重要な問題の一つとして、以下の問題がある。
・最適な運転条件は様々な外乱条件に応じて異なるため、実際に最適化によって計算すべき最適制御目標値は、時々刻々と変化する。しかし、どのようなタイミングあるいは周期で、最適制御目標値の変更を行えば良いかについての指針が明確でない。この問題に応えるためには、例えば以下の様な検討が必要になる。
・目標値変更の周期やタイミング決定のためには、外乱条件の変化に対する被制御量(目標値が供給される変量)の応答の速さを考慮して決める必要がある。
・外乱が大幅にかつ速く変化する場合、頻繁に目標値変更が生じてしまうことが考えられる。その様な場合、ワンループ制御が目標値に追従できなくなり、結果として制御の効果が得られないことがあり得る。そのため、このような頻繁な目標値変更が生じない様な仕組みの導入、あるいは、頻繁な目標値変更があってもそれに追従できるようなワンループ制御方式の開発、などを検討する必要があるものの、これらを、具体的かつ定量的に取り扱う方法はまだ確立しているとは言えない。
一方で、現状、実際のプロセス制御では、ある被制御量に対する一定の目標値を与えて、その値に追従するようにワンループ制御で制御を行っていることが多い。これには、様々な理由が考えられるが、例えば、以下の様なものが挙げられる。
・実際に制御を実施し、プロセスの運転状態を管理する管理者やオペレータにとって、ある値が一定に保たれているという状況は、通常プラントが正しく制御されているということを意味し、心理的な安心感がある。つまり、もしある値が一定に保たれない場合は、何等かの異常がプラントに生じていることを意味するが、一定に保たれている限り安心できる。
・制御システムを開発する開発者にとって、ある値を一定に保つ一定値制御は開発しやすい。
・一定値制御は、通常PI(D)制御を用いて構成されていることが多いが、内部モデル原理と呼ばれる原理により、PI(D)制御で一定値制御を行えることが理論的に保証される。したがって、産業界で広く普及し、かつ比較的容易に実装できるPI(D)制御で制御系を実装できることのメリットは大きい。
特開2004−171531号公報
このように、現実に使われているPI(D)制御器による「一定値制御」と、プロセスのトレードオフを考慮した「最適制御」の間には、まだギャップが存在する。
このため、このようなギャップを認識した上で、ある値を一定に保つ一定値制御という考え方を捨て去ることなく、プロセスのトレードオフを考慮したプロセス制御システムの実現が強く望まれていた。
本発明は上記の事情に鑑み、プロセスにおいてトレードオフ関係にある2つ以上の量を複数のセンサを用いることによって計測し、そのトレードオフのバランスする点を考慮した制御系の設計を、既存の一定値制御という実現容易な制御系の枠組みの中で実現でき、さらに制御系設計の観点からは、通常一つのセンサでワンループ制御を行っている制御系に対して、ハードウェアとしてはもう一つ(以上)のセンサを設置するだけで、またソフトウェアとしては、トレードオフをバランスさせる関数の定義を付加するだけで、従来の一定値制御の枠組みを変更せずにプロセスのトレードオフを考慮した制御系が実現できるプロセス制御システムを提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために本発明は、2つ以上のセンサによって得られたプロセスの状態に基づき、センサの個数より少ないアクチュエータを制御することによってプロセスの状態を制御するプロセス制御システムにおいて、予め定義されたプロセスの状態が外乱によって変化するようなプロセスの状態を計測する少なくともn(n≧2)個のセンサから出力される計測値を取り込むプロセス状態計測手段と、各計測値は予め定義された指標に基づいてその良否が判断できるという条件、n個の各計測量はm(m<n)個のいずれかのアクチュエータを操作するために利用され、かつ各々の計測量が2つ以上のアクチュエータを操作するために重複して用いられることが無いようにアクチュエータと計測量のm個(1対1あるいは1対多)の組が定義されているという条件、1対多で定義されたアクチュエータ(1個)と計測量(複数個)の組において、アクチュエータによる操作量を増加した場合に、ある計測量は前記指標に基づいて良くなるが別の計測量は前記指標に基づいて悪くなるトレードオフが存在するという条件を満たしている2つ以上の計測値に対し、トレードオフのバランス点を指定する1つの関数が定義される関数定義手段と、前記プロセス状態計測手段で計測された各計測値に応じて、前記関数定義手段で定義された関数の値を一定値に保つように制御指令を出力する一定値制御手段と、この一定値制御手段から出力される制御指令に基づき、センサの個数未満のm(<n)個のアクチュエータを制御し、プロセスの状態を制御するプロセス制御操作手段とを備えたことを特徴としている。
本発明によるプロセス制御システムでは、プロセスにおいてトレードオフ関係にある2つ以上の量を複数のセンサを用いることによって計測し、そのトレードオフのバランスする点を考慮した制御系の設計を、既存の一定値制御という実現容易な制御系の枠組みの中で実現でき、さらに制御系設計の観点からは、通常一つのセンサでワンループ制御を行っている制御系に対して、ハードウェアとしてはもう一つ(以上)のセンサを設置するだけで、またソフトウェアとしては、トレードオフをバランスさせる関数の定義を付加するだけで、従来の一定値制御の枠組みを変更せずにプロセスのトレードオフを考慮した制御系が実現できる。
《第1実施形態》
<全体構成>
図1は、本発明によるプロセス制御システムの第1実施形態を示す構成図である。
なお、この図に示すプロセス制御システムは、循環式硝化脱窒法と呼ばれる下水処理プロセスを対象として記述しており、その中で曝気風量を制御する曝気風量制御システムを対象として記述している。また、このような下水処理プロセス以外のプロセス、例えば浄水プロセス、石油化学プロセスなど任意のプロセスを対象とすることができる。また、本プロセス制御システムに要求される必要条件は(1)2つ以上の複数のセンサがあること、(2)これら複数のセンサに何等かのトレードオフの関係があること、(3)これら複数のセンサを用いて制御を行うアクチュエータが一つあること、のみである。
この図に示すプロセス制御システムでは、流入する下水は下水処理プロセス1の最初沈殿池11を通って無酸素槽12および好気槽13からなる生物反応槽へ流れ込む。この反応槽内では、有機物除去と同時に窒素除去が行われ、この処理が行われた水は最終沈殿池14で固液分離されて放流される。窒素除去の観点からは、好気槽13では、空気を供給することによって有機物除去と同時にアンモニア性窒素を硝酸性窒素に変換するという処理が行われる。変換された硝酸性窒素は無酸素槽12に送られる。無酸素槽12では、有機物と硝酸性窒素が反応して、有機物が除去されると同時に、硝酸性窒素が窒素ガスに変換され窒素除去も同時になされる。有機物除去と窒素除去はこのように同時進行的に微生物の活動を利用することによって行われるが、窒素除去の方が有機物除去よりも反応する速度が遅い(窒素除去反応が律速となる)ため、窒素除去をうまく制御することが、結果的に有機物除去と窒素除去を同時に制御することになる。
ここでは、この窒素除去制御の一つである、アンモニア除去(アンモニア性窒素→硝酸性窒素)制御を例として、プロセス制御システムの動作を説明する。
まず、例となるアンモニア除去制御装置として機能する部分は、好気槽13内の溶存酸素濃度(DO)を計測しているDOセンサ15と、同じく好気槽13内のアンモニア濃度を計測しているアンモニアセンサ16と、DOセンサ15とアンモニアセンサ16によって計測したDO濃度とアンモニア濃度を用いて、好気槽13の中のアンモニア量を制御する曝気装置17とを有している。さらに、循環式硝化脱窒素プロセスと呼ばれる下水処理プロセス1では、アクチュエータとして、無酸素槽12内の硝酸量を制御する炭素源投入ポンプ18、リン濃度を制御するPAC注入ポンプ19、最終沈殿池14内の汚泥量を制御する余剰汚泥引き抜きポンプ110、好気槽13から無酸素槽12への硝酸供給量を制御する循環ポンプ111、無酸素槽12や好気槽13の汚泥量や有機物量を調整するための返送汚泥ポンプ112を有していることが多い。これらのアクチュエータは、各々その操作目的に応じたセンサによって制御されるが、これらの制御方法として、以下で説明する本考案の方法を用いることもできるが、そのアイデアは以下で説明するとおりであるので、詳細な説明は行わない。
第1実施形態の構成は上記の各設備を有する下水処理プロセス1と、DOセンサ15によるDO濃度データとアンモニアセンサ16によるアンモニア濃度データを所定の計測周期にしたがって時系列データとして収集し保存しておくプロセス計測データ収集および保存手段2と、プロセス計測データ収集および保存手段2において保存したDO濃度データとアンモニア濃度データの2つのデータから一定値制御を行うための一つのデータを生成するための変換方法を定義する関数定義手段3と、関数定義手段3によって定義された関数を用いて、実際にDO濃度データとアンモニア濃度データから1つのデータを生成する関数変換手段4と、関数変換手段4によって変換された値を一定値に保つためのその目標値(一定値に保つ目標)を設定する目標値供給手段5と、関数変換手段4によって変換された値が、目標値供給手段5から供給された目標値に追従するように曝気風量を制御する曝気風量一定値制御手段6とから構成される。
次に、図1に示す構成図を用いて、第1実施形態の動作を説明する。
まず、下水処理プロセス1では、好気槽13において、予め決められた所定の周期で、DOセンサ15によって好気槽13の溶存酸素濃度と、アンモニアセンサ16によって好気槽13のアンモニア濃度を計測している。
プロセス計測データ収集および保存手段2では、この溶存酸素濃度データとアンモニア濃度データを所定の周期にしたがって、時系列データとして保存している。
<請求項1に対応する部分の説明>
関数定義手段3では、アンモニア濃度とDO濃度を利用した、例えば、図2に示すような関数を定義する。
αNH+DO=β …(1)
ここで、“NH”はアンモニア濃度、“DO”はDO濃度を表す。“α”は、図2の直線の傾きを表すパラメータ、“β”は図2の切片を表すパラメータであり、原点を通る場合は“0”になることから、この場合、目標値を“0”とする一定値制御で実現できる。
図2の様な直線に対して一定値制御を行うことが良い理由を、図3および図4に示した従来使われている一定値制御と比較することによって説明する。
図2〜図4に示した曲線は、アンモニア濃度とDO濃度の関係を概念的に示したものである。DO濃度がゼロである場合、アンモニア濃度は、硝酸へ変化しないため、好気槽13に流入してくる下水のアンモニア濃度のままで保たれる。好気槽13に流入する下水のアンモニア濃度は、希釈率にもよるが、下水処理場に流入する下水のアンモニア濃度に比例するので、DO濃度がゼロの場合のアンモニア濃度は流入下水のアンモニア負荷に対応していると考えられる。実際の下水処理では、DO濃度はゼロであることは無く、DO濃度が上昇するのに伴い、アンモニア濃度が低下する。しかし、アンモニア負荷が高い場合には、DO濃度をいくら上昇してもアンモニア濃度はゼロにはならず、ある一定値に徐々に収束する。この特性を図示したものが図2〜図4の曲線である。
従来、好気槽13における空気供給の制御は、例えば、図3に示すような、DO濃度一定値制御と呼ばれる手法によって行われていた。この方法では、図3に示したように、DO濃度を一定値に保つように制御を行う。このような制御を行うことの妥当性は通常、次のように説明される。
通常、「溶存酸素(DO)は、有機物やアンモニアを分解する微生物が活動するために必要とする酸素の量を表す指標である。したがって、これらの微生物が活動できるためにある一定量の酸素濃度を保っておく必要がある。」と言われている。この説明は、定性的な説明としては理解できる。しかし、これを定量的に考えた場合、DO濃度を「一定値」に保つ必然性は無いことを、図3を用いて、次のように説明できる。
DO濃度が一定値に保たれた場合、アンモニア濃度は、アンモニアの流入負荷に応じて、図3に示した曲線とDO一定値の直線の交点の値になる。したがって、DO濃度を一定に保ったとしても、その際のアンモニア濃度にはばらつきが生じる。このようなDO濃度一定制御は、次の様な理由で好ましくない制御であると考えられる。
まず、アンモニアの流入負荷が低い場合、図3に示したように、ある一定値のDO濃度よりも低い値のDO濃度でアンモニア濃度は既にほぼゼロになってしまうことがある。この場合、アンモニア濃度がゼロになる場合のDO濃度以上の値にDO濃度を保つ必要は無く、そのために必要となる空気供給(とその電力エネルギーコスト)は完全に無駄になる。一方、アンモニア負荷が高い状態で、ある一定値のDO濃度を保った場合、図3に示したように、もう少し高いDO濃度にすれば、さらにアンモニア濃度を低減できることは明らかである。しかし、ある一定値にDO濃度を保っている限り、さらにアンモニア除去率を向上させることができるにもかかわらず、その改善余地を自ら放棄していることになる。
これらの説明から分かるように、DO濃度を一定値に保つということは、処理効率やエネルギーコストの観点からは、必ずしも効率の良い制御では無いことがわかる。
一方、アンモニアを硝酸に変化させることが、好気槽13における風量制御の目的であるならば、DO濃度などの間接指標を一定に保つことを目標とするのではなく、直接アンモニア濃度を制御することが考えられる。このような考え方はとても自然であるが、従来アンモニア濃度をオンラインで計測する技術が確立しておらず、実際に利用されることはなかった。しかし、近年アンモニア濃度をオンラインで計測するセンサが開発されると、これを直接利用した制御方法としてアンモニア濃度一定制御の試みもなされている。このアンモニア濃度一定制御は、図4に示すように、アンモニア濃度を一定に保つように制御を行うものである。この考え方は、放流水質に直接かかわるアンモニア濃度を一定に保つため、極めて自然な考え方であり、何の問題もなく動作するように思われる。しかし、実際にアンモニア濃度を一定に保つ制御には、2つの問題がある。これを図4を用いて説明する。
一つ目の問題は、図4から明らかなように、もし流入下水中のアンモニア負荷が低く、好気槽13に流入するアンモニア濃度が、アンモニア濃度一定制御の制御目標値を下回る場合、アンモニア濃度一定制御では、DO濃度を“0”にしようとするため、結果として空気供給が停止してしまうことである。このような状況は、実際の処理では好ましくない。何故なら、空気供給では、アンモニア除去だけでなく有機物除去も目的としており、仮にアンモニア負荷が低い場合でも有機物負荷が存在する限り、空気供給を停止することは運転上許されないからである。しかし、アンモニア濃度一定制御では、空気供給が停止するということが実際に起こりうる。
もう一つの問題は、アンモニア負荷が高い場合である。この場合、アンモニア濃度一定制御の目標値に対して、実際のアンモニア濃度が到達できない場合がある。このような場合、アンモニア濃度一定制御では、DO濃度を“∞”に高める方向に制御が働き、結果として、操作量のリミッタにかかるまで、空気供給量を上昇させることになる。しかし、図4よりわかるように、ある濃度以上にDO濃度を上昇しても、アンモニア負荷が高い場合には、その除去率は殆ど変化しなくなる。したがって、リミッタにかかるまで空気供給を上げることはエネルギーのロスが多く、結果として運転コストの増加につながる。
以上のように、従来からある「DO濃度一定制御」や、オンラインアンモニアセンサの近年の開発によって実施可能になってきた「アンモニア濃度一定制御」は、実際に制御を実施する場合には、上述したような問題を含んでいる。このような問題に対処するために、例えば、特許文献1の「プラントワイド最適プロセス制御装置」の様な最適制御目標値を供給する仕組みを作り、流入下水の(アンモニアなどの)負荷状況に応じて、DO濃度一定値制御やアンモニア濃度一定値制御の目標値を変更するという方法を取ることができる。
しかし、従来の技術で述べたように、このような方法では、その変更タイミングなどにまだ検討すべき余地があり、これらの変更タイミングの具体的な方法論を確立する必要があった。また、変更が頻繁に生じる場合には、一定値制御が実用上動作しなくなる可能性があった。
そこで、第1実施形態では、次に述べるようにして、「一定値制御」をそのまま利用して、上記「DO濃度一定値制御」や「アンモニア濃度一定値制御」の持つ問題を解決し、このような状況を打開している。
解決するためのアイデアは、「DO濃度」や「アンモニア濃度」を個別に一定値に制御するのではなく、アンモニア濃度とDO濃度から作られる関数の値を一定に保つように制御するものである。その関数の例として、例えば、(1)式と図2に示した様な直線を選ぶことができる。「DO濃度一定制御」や「アンモニア濃度一定制御」と比較して、図2の様な直線上に制御を行うことの利点を説明する。
まず、アンモニアの負荷が低い場合、DO濃度一定制御では過剰なエネルギー供給の可能性があった。また、アンモニア濃度一定制御では、負荷が低い場合に空気供給が停止してしまう可能性があった。このようなアンモニア負荷が低い場合、例えば図2の様な原点を通る直線上に一定値制御を行うと、アンモニア負荷が“0”である時に限りDO濃度が“0”になり、アンモニア負荷が少しでもあれば、それに応じたDO濃度が保たれるようになる。もし、アンモニア負荷が“0”であっても有機物負荷などを考慮してDO濃度をある程度確保したい場合には、例えば、図5に示すようにDO濃度の正の軸に切片を持つように直線をずらしてやればよい。このようにすると、アンモニア濃度が“0”になった場合でもDO濃度の正の軸の切片の値分だけ、最低DO濃度を保つことができ、最低限必要と考えられる空気供給量を確保することができる。これは、単に(1)式の“β”の目標値を切片の値に等しくなるように変更するという操作のみで実施できる。
このように原点を通る直線、あるいはDO濃度にあるマージンを持たせた直線を設定することによって、「DO濃度一定制御」や「アンモニア濃度一定制御」で問題となる、アンモニア負荷が小さい場合の空気供給過剰や空気供給の停止などの現象を避けることができる。一方、アンモニア負荷が高い場合、DO濃度一定制御ではアンモニア除去率が悪くなってしまう可能性があった。また、アンモニア濃度一定制御では、アンモニア除去率が向上しないのに、空気供給が無限に大きくなってしまう可能性があった。
これに対し、図2に示す直線の上に制御を行うと、アンモニア負荷が高くなれば、それに応じてDO濃度も高くなるため、この直線の傾き“α”をうまく定義することによって、空気供給の過剰や過小を制御することができることがわかる。
以上の説明より、「DO濃度」や「アンモニア濃度」といった単独の指標を一定に制御するよりも「運転コストの観点からはDO濃度はあまり上昇したくない」が、「水質向上のためにはアンモニア濃度をなるべく下げたい」という様なトレードオフの関係がある指標から関数を作成してこれを一定に保つ制御を行うことにより、原理的にこのようなトレードオフをうまく制御できることがわかる。
以上の考え方が「請求項1」に示すアイデアの実施形態である。
さて次に、「どのような関数を定義すれば、よりよい制御が可能になるか?」という問題に応える必要がある。この問いに対しては、様々な応えが考えられるが、以下各請求項毎に、本発明で考案しているいくつかのアイデアを示す。
<請求項2に対応する部分の説明>
「請求項2」に示すアイデアは、トレードオフを定義する曲線を、最適化問題の解から求めようとするものである。つまり、流入下水のアンモニア負荷量を変動して、これに対応する最適なDO濃度と最適なアンモニア濃度を図6に示すようにプロットする。このようにプロットされた点を適当な補間方法(ラグランジュ補間、スプライン補間、多項式補間など)を用いて補間し、図6の様な曲線を作成する。このような曲線は、DO濃度とアンモニア濃度の適当な関数となるので、実際には一定値制御を以下のように行うことができる。
f(NH,DO)=β …(2)
ここで、“f(*、*)”は、“f(0、0)=0”となる関数であり、適当な補間関数で構成されるものである。“β”はDO濃度の軸の切片を表す定数であり、この値を目標値として与えて、DO濃度とアンモニア濃度から構成される関数値“f(*、*)”を一定に保つようにPI制御などで制御を行えばよい。(2)式の様な関数を定義してこれを一定値になるように制御する方法と、従来の最適制御の違いは、以下の通りである。
従来の最適制御では、最適なDO濃度あるいは最適なアンモニア濃度を計算して、その値を流入下水のアンモニア負荷に応じて常に目標値を変更していた。しかし、(2)式の様な関数を定義すれば、この関数値を常に一定値に保つように制御することで、従来の方法と同じ制御が達成できる。
前述したように、実際の制御は、「目標値に保つためのアクション」を起こす必要があり、その目標が変化する(従来)と、変化しない(本発明)との違いは、実際のアクションに大きな影響を与える。実際、現実に利用されているPI制御では一定値への定常偏差“0”での追従は保証されるが、頻繁に目標値が変化する場合に追従できるか否かはわからない。さらに、従来の方法では、実装上、目標値を常に変化しなければならないという煩雑な操作を伴う。これと比較して、本考案の方法は(2)式を定義するだけで、従来の一定値制御で簡単に実行できる。
<請求項3、4に対応する部分の説明>
「請求項3」と、「請求項4」に示すアイデアは、最適化という手段を利用せずに、アンモニア濃度とDO濃度との関係を示す曲線を利用して、一定値に保つべき関数を決定しようとするものである。
図7(および図2〜図5)に示した曲線は、アンモニア濃度とDO濃度の関係を示したものである。このような曲線は、例えば、プロセスシミュレータを用いて、流入アンモニア負荷と空気供給量を各々、段階的に変化してシミュレーションを行い、各シミュレーション結果のアンモニア濃度とDO濃度を各々、プロットすることによって作成できる(「請求項3」の考え方)。
また、別の方法としては、シミュレータではなく、実際のプラントあるいはパイロットプラントで実験を行って、その場合のアンモニア濃度とDO濃度をプロットすることによっても作成できる(「請求項4」の考え方)。いずれにしろ、図7に示した様な、DO濃度とアンモニア濃度の関係を示す曲線を作成することができる。
このようにして作成した曲線を利用すると、制御系の設計を行う設計者が一定値に保つべき直線あるいは曲線を設計することができる。設計の考え方は、その目的によっていろいろ変化させることができるが、例えば、ある最低DO濃度を保ったままで、窒素除去効率がなるべく良くなるような制御系を設計することを想定する。この場合、まず、最初に図7に示したように、必要最小限のDO濃度をDO濃度軸上にプロットする。その後、いくつかの曲線において、窒素除去率がほぼ改善されなくなるとみなせる範囲で最も低いDO濃度に対応する箇所にプロットをしていく。最後に、これらのプロットした点を何等かの補間方法を利用して補間曲線を作成する。このような手順を踏むことによって作成された補間曲線を一定値に保つ制御を行えば、必要最小限のエネルギーで、最も効率の良い窒素除去を実施することができる。
このような、エンジニアリング的発想で一定値に保つべき曲線を作成する方法が、「請求項3」、「請求項4」で主張するアイデアである。
<請求項5に対応する部分の説明>
「請求項5」では、図8に示すように、一定値に保つべき関数をDO濃度と、NH濃度で表される平面上の中で、例えばDO濃度の軸に対して有界となるような関数を設定することによって、DO濃度に対するリミッタを自動的に挿入することができる。つまり、図8に示したような関数を設定すれば、同じく図8で示した様な範囲内でDO濃度が変動することになる。
これが「請求項5」に示す発明で主張するアイディアである。
<請求項6に対応する部分の説明>
「請求項6」では、完全な一定値制御を諦める代わりに、いくつかの運転モードを用意し、運転モードに応じて、一定値に追従する関数を切り替えるものである。この概念を図9に示す。例えば、「請求項2」に示す方法では、アンモニア負荷を変動して最適化を実行し、負荷に応じた曲線を作成するものであった。しかし、実際の流入下水は、アンモニア以外にも各種有機物も含んでいる。したがって、有機物負荷が変動すれば、最適なアンモニア濃度やDO濃度の値も変化する。アンモニアは処理の律速となっているため、多少の有機物負荷変動では、最適なアンモニア濃度やDO濃度はそれほど大きくは変化しないが、有機物負荷が大幅に変われば変化も大きくなる。したがって、例えば、典型的な有機物負荷の場合、有機物負荷が高い場合、および有機物負荷が低い場合、などのいくつかのモードを設けて、そのモードに対して一定値制御で追従すべき関数を切り替えることが考えられる。反応槽内の有機物濃度も直接計測している場合には、有機物濃度とアンモニア濃度とDO濃度との3つについて、トレードオフを考えた関数を設計すればよいが、反応槽内の有機物濃度は計測されていないことが多い。
このような場合、流入有機物濃度から、いくつかのモードを判断して、一定値制御を切り替えると言う方法は現実的な方法である。これが、「請求項6」に示す発明である。
以上の様な方法が一定値制御すべき関数の設計方法として具体的に実施可能な方法である。
<関数定義手段3〜曝気風量一定値制御手段6の動作説明>
次に、関数定義手段3の動作を説明する。なお、関数定義手段3〜曝気風量一定値制御手段6の動作は、通常の一定値制御の場合と殆ど同じである。
まず、関数変換手段4では、関数定義手段3で定義した関数にしたがって、実際にオンラインで計測してきたDO濃度とアンモニア濃度を変換する。
また、目標値供給手段5では、関数定義手段3で定義した関数のDO濃度軸の切片の値を目標値として供給する。
また、曝気風量一定値制御手段6では、関数変換手段4で変換された値と目標値供給手段5で供給された目標値の差がゼロになるように一定値制御を行い、風量を制御する。この一定値制御には、通常利用されているPI制御などを利用することができる。但し、場合によっては単にPI制御を適用するだけでは、十分な制御性能が得られないことがある。以下これを具体的に説明する。
PI制御では、制御を行うパラメータとして、比例ゲインと呼ばれるパラメータ(以下Kρと記述)と積分定数と呼ばれるパラメータ(以下Tと記述)の2つのパラメータを設定する必要がある。これらのパラメータは、例えばステップ応答試験と呼ばれる試験結果からプロセスゲイン(以下Kと記述)とプロセス時定数(以下Tと記述)を同定して、これらの値から決定することが多い。
プロセス時定数は、DO一定値制御の場合には、空気供給量変化に対するDO濃度の変化の速さを示しており、アンモニア一定値制御の場合には、空気供給量変化に対するアンモニア濃度変化の速さを示している。しかし、DO濃度の変化の速さはアンモニア濃度の変化の速さよりも通常かなり速い。言い換えると、DO濃度に対するプロセス時定数とアンモニア濃度に対するプロセス時定数は全く異なる。したがって、DO濃度とアンモニア濃度から構成した関数のプロセス時定数を決定することは困難であり、そのため、PI制御器の比例ゲイン“Kρ”や積分定数“T”を設計することが難しくなる。
<請求項7に対応する部分の説明>
そこで、「請求項7」では、このような時定数の違いを調整するためのフィルタを導入することを提案している。具体的には、時定数の大きい方が律速となるため、時定数の小さい方の変数にフィルタを導入して時定数を調整する。この例の場合は、DO濃度に対して、例えば以下の様なフィルタを導入する。
DO(t)={1/[1+(Tnh4−Tdo)s]}・DO(t) …(3)
ここで、“s”はラプラス演算子あるいは微分演算子、“Tnh4”は空気供給量に対するアンモニア濃度の変化速度を表す時定数、“Tdo”は空気供給量に対するDO濃度の変化速度を表す時定数、“DO”はDO濃度のフィルタ値である。このフィルタは連続時間系のフィルタであるが、双一次変換などの適当な離散化手段を用いて、離散化すれば、デジタルフィルタを構成できる。あるいは、直接的に、以下の様な指数フィルタと呼ばれるデジタルフィルタを構成しても良い。
DO(t)=α・DO・(t−1)+(1一α)・DO(t) …(4)
0≦α≦1 …(5)
ここで、“α”は時定数を調整するための値である。この他にも、色々なフィルタ設計法があるが、どのような方法を用いるにせよ、DO濃度のフィルタ値DO値“DO”を求めることができる。そして、DO濃度のかわりに時定数分の調整を行ったフィルタ値“DO”とアンモニア濃度に対してPI制御器を作ることにする。
こうすることによって、PI制御器のパラメータ“Kρ”や積分定数“T”の設計が可能になり、トレードオフを持つ変数の時間に対する変化速度が異なるような場合にも、制御性能を著しく劣化することなく、一定値制御によってトレードオフを考慮した制御を行うことができる。
これが「請求項7」に示す発明で主張するアイディアである。
<第1実施形態に対応する主たる効果の説明>
第1実施形態の主たる効果は以下の通りである。
・従来、プロセス制御の多くで用いられている一定値制御の考えかたをそのまま利用して、エネルギーコスト削減と水質の向上というトレードオフを考慮した制御が可能になる。
・ハードウェアの観点からは、センサを一つ追加するだけで制御系を容易に実現できる。
・ソフトウェアの観点からは、第1実施形態で説明したような関数を定義するだけで、制御系を容易に実現できる。
《第2実施形態》
<全体構成>
図10は、本発明によるプロセス制御システムの第2実施形態を示す構成図である。
なお、この図に示すプロセス制御システムは、下水処理プロセス(A2Oプロセス)7は、A2O法と呼ばれる下水処理プロセスを対象として記述しており、第1実施形態との違いは、A2O法では窒素除去だけでなく、リン除去も行うことを目的としている点である。ここでは、このA2O法と呼ばれる下水処理プロセス7の余剰汚泥引き抜き量を制御する装置について記述する。
この図に示すプロセス制御システムでは、最初沈殿池71と、嫌気槽72と、無酸素槽73と、好気槽74と、最終沈殿池75と、好気槽76に設置されたリン酸センサ76と無酸素槽77に設置された硝酸センサ77と、余剰汚泥引抜流量センサ78と、凝集剤注入ポンプ79と、余剰汚泥引抜ポンプ710と、循環ポンプ711と、返送ポンプ712と、曝気装置713と、炭素源投入ポンプ714とを備えた下水処理プロセス(A2Oプロセス)1と、リン酸センサ76によるリン酸濃度データと、硝酸センサ77による硝酸濃度データと、余剰汚泥引抜流量センサ78による余剰汚泥流量データとを所定の計測周期にしたがって時系列データとして収集し保存するしておくプロセス計測データ収集および保存手段8と、プロセス計測データ収集および保存手段8において保存したリン酸濃度データと硝酸濃度データと余剰汚泥流量データの3つのデータから一定値制御を行うための一つのデータを生成するための変換方法を定義する関数定義手段9と、関数定義手段9によって定義された関数を用いて、実際にリン酸濃度データと硝酸濃度データと余剰汚泥流量データから1つのデータを生成する関数変換手段10と、関数変換手段10によって変換された値を一定値に保つためのその目標値(一定値に保つ目標)を設定する目標値供給手段20と、関数変換手段10によって変換された値が、目標値供給手段20から供給された目標値に追従するように余剰汚泥流量を制御する余剰汚泥流量一定値制御手段21とから構成される。
<第2実施形態と、第1実施形態との相違点>
第2実施形態の動作と第1実施形態の動作との違いは、(1)第1実施形態では曝気風量の制御を扱っていたのに対し、第2実施形態では余剰汚泥流量の制御を扱っている。(2)第1実施形態では2つのセンサのトレードオフを考えていたのに対し、第2実施形態では3つのセンサがある場合を扱っているの2点である。(1)に関しては、窒素除去を目的とした曝気風量制御だけでなく、他にもトレードオフが存在するような場合にはどのような制御でも本考案が適用できることを説明するために、第2実施形態では異なる制御を採用している。(2)についてはより本質的であり、2つのセンサでなく3つ(以上)のセンサを用いたトレードオフを考える場合の制御系構成法を示すために、第2実施形態では3つのセンサを利用した制御を考えることにした。
<第2実施形態の動作>
次に、図10に示す構成図を参照して、第2実施形態の動作を説明する。
まず、下水処理プロセス(A2Oプロセス)7では、好気槽74に配置したリン酸センサ76によって好気槽74のリン酸濃度と、無酸素槽73に配置した硝酸センサ77によって無酸素槽73の硝酸濃度と、余剰汚泥引抜流量センサ78による余剰汚泥ポンプ710の余剰汚泥流量を、予め決められた所定の周期で計測している。プロセス計測データ収集および保存手段8では、これらのリン酸濃度データと硝酸濃度データと余剰汚泥流量データとを、所定の周期にしたがって、時系列データとして保存している。
関数定義手段9では、リン酸濃度データと硝酸濃度データと余剰汚泥流量データから、余剰汚泥ポンプ710を動かすことによって追従すべき関数を作成する必要がある。この場合に、第1実施形態で用いたように制御目標値最適化演算を、複数のアンモニア負荷、リン酸負荷を変動して行い、その値を図11に示すようにプロットし、これらの各点を適当な補間方法によってつなぐことにより、一定値制御で追従すべき関数を作り出すことができる。なお、この図11に示す関数はイメージであり、最適化演算を行ったものではない。また、アンモニア負荷、あるいはリン酸負荷のいずれか一方を変動した場合を示すものであり、アンモニア負荷およびリン酸負荷を同時に変動した場合、曲線ではなく曲面になる。
この方法は、最適化演算という手段を用いる場合には有効である、しかし、第1実施形態で示した、例えば図7に示す様な関数定義を行う場合は、高次元空間(この例では、3次元空間であるが、N個のセンサを使用した場合には、N次元空間になる)の中で関数を定義する必要があり、高次元になればなるほど、エンジニアの直感を働かせることが難しくなり、関数定義の作業自身が難しくなる。
<請求項8に対応する部分の説明>
このような場合の関数定義方法を考案しているのが、「請求項8「と「請求項9」に示すアイデアである。
まずはじめに、一つの操作量(この例の場合は余剰汚泥引抜量)を考えた場合、その操作量を増加させる(余剰汚泥引抜量を増やす)かその操作量を減少させる(余剰汚泥引抜量を減らす)かの2方向の操作しか存在しないことを注意しておく。そして、トレードオフを考慮すべきセンサが2つ以上存在するということは、これらのセンサは、操作量を上昇させる方が良いセンサ(この例の場合はリンセンサの値を下げるためには、余剰汚泥引抜量を増加させる方が良い)と、操作量を減少させる方が良いセンサ(この例の場合は、硝酸濃度を低下させるためと汚泥処理コストおよび余剰汚泥引抜に伴う電力コストを削減するためには、余剰汚泥引抜量を減少させる方が良い)の2つに原理的に分類される。なお、厳密には、余剰汚泥引抜量を上げすぎると、かえってリン除去が悪くなることがあるので、あるセンサとある操作量の関係も単純でない場合があるが、操作量の動作点付近では、大体どちらの方向に動かすかはほぼ決まっていることが多い。
したがって、3つ以上のセンサがある場合であっても、原理的には操作量を上昇させるべきセンサと操作量を減少させるべきセンサに分類される。
「請求項8」のアイデアは、操作量を上昇させるべきセンサのグループと、操作量を減少させるべきセンサのグループの中から、各グループを代表する変数を選んで、代表変数とグループ内の各変数との関係を予め規定しておくことを提案している。
この例の場合は、余剰汚泥引き抜き量を減少させる方が良いもの(これをグループAとする)に対応するセンサは硝酸センサ77と余剰引抜流量センサ78である。この場合、余剰汚泥引き抜き量をある単位量、減少させることによって、余剰汚泥引き抜き量削減による汚泥処理コストと余剰汚泥引き抜きポンプ710の電力コストがどの程度削減されるか計算しておく。一方、同じ単位量の余剰汚泥引き抜き量を削減した場合に、硝酸濃度の低減によってどの程度放流窒素負荷が減少するかを計算しておく。この計算は、例えば水質シミュレータを利用すれば実施することができる。さらに、この計算結果を何等かの方法でコスト換算する。コスト換算の方法として、例えば、排水負荷金の様なものを考え、放流窒素の物質量に対するコストを与えて、金額換算しておけばよい。以上の様な計算を行うと、余剰汚泥引抜流量センサ78による余剰汚泥引抜流量と硝酸センサ77による硝酸濃度をコストの観点で定量的に関係づけることができる。例えば、以下の様な関係が得られる。
was=γNO (6)
ここで、“Qwas”は余剰汚泥引抜流量、“NO”は硝酸濃度を表し、“γ”は単位当たりの余剰汚泥引抜流量にかかるコストと単位当たりの硝酸濃度にかかるコストを調整するパラメータであり、上記計算によって求められる。もちろん、このような比例関係ではなく、複雑な非線形関数になることもありうるが、何らかの関数を定義することによって、余剰汚泥引抜流量で、グループAを代表させることができる。
一方、余剰汚引き抜き量を増加させる方が良いもの(これをグループBとする)に対応するセンサはリン酸センサ76のみである。したがって、この場合、単純に、リン酸センサ76自身をグループBの代表とする。もし、グループBに入るセンサが他にある場合には、上記と同様にその定量的な関係式を求めておけばよい。
このような方法によって、グループAの代表変数(余剰汚泥引抜流量)とグループBの代表変数(リン酸濃度)の2つの変数を選定できる。この操作を行うと各々のグループから一つづつの代表変数が選ばれるため、第1実施形態で示したように2変数間のトレードオフを考えた曲線をエンジニアリング的な方法(例えば前実施例で示した図7の様な方法)で設計することができる。この設計によって定義した関数をg(PO,Qwas)とすると、
g(PO,Qwas)=α …(7)
g(PO,γNO)=α …(8)
α:目標値
を連立させた関数が最終的に一定値追従されるべき曲線である。
<請求項9に対応する部分の説明>
また、「請求項9」の発明は、(6)式のようにある変数を代表とするのではなく、グループ内の合成変数を代表変数としよういう考え方に基づいている。例えば、次の様な関数を定義することができる。
X=αQwas+βNO …(9)
ここで、“X”はグループAの変数である余剰汚泥引き抜き流量と硝酸濃度から作られる合成変数であり、“α”と“β”は、各々、余剰汚泥引抜流量に対する重み、硝酸濃度に対する重みであり、典型的には、例えばコスト換算係数などの値を設定することができる。この合成変数とグループBの合成変数と見なせるリン酸濃度との2つの変数に対して、第1実施形態で示したように2変数間のトレードオフを考えた曲線をエンジニアリング的な方法で設計することができる。
これは、「請求項8」の方法と概念的には類似しているが、実際のセンサで計測している変数ではなく、合成変数どうしのトレードオフを見ている点が異なる。なお、この例のグループBのように一つの変数しかない場合には、合成変数はセンサで計測している変数と一致する。
このような合成変数どうしのトレードオフを考えることは、エンジニアが直感的に理解するという観点からは、「請求項8」よりも劣っているが、「請求項9」の方法が優れている点はよりシステマティックに実施できる点である。
具体的には、グループAに属する変数と、グループBに属する変数の各々の計測データあるいはシミュレーションデータに対して、例えば主成分分析(PCA)と呼ばれる方法を適用することによって、(9)式の様な関係式を導出することができる。したがって、個別の変数どうしの定量的な関係が明確に捉えられない様な場合にも、主成分分析という数学的操作でグループを代表する変数を作り出すことができる。さらに、グループAとグループBの分類すらわからない場合には、全変数に対して主成分分析などを施すことによって、正の係数になる変数をグループA、負の係数になる変数をグループBとすることもできる。
このように「請求項9」の方法は、エンジニアリング的な設計を行う前処理をシステマティックに行えるというメリットがある。
<関数変換手段10〜余剰汚泥引抜流量一定値制御手段21の動作説明>
次に、関数変換手段10〜余剰汚泥引抜流量一定値制御手段12の動作を説明する。なお、これら関数変換手段10〜余剰汚泥引抜流量一定値制御手段21の動作は、第1実施形態の動作とほとんど同じである。
まず、関数変換手段10では、関数定義手段9で定義した関数にしたがって、実際にオンラインで計測してきた硝酸濃度とリン酸濃度と余剰汚泥引抜流量を変換する。
目標値供給手段20では、関数定義手段9で定義した関数の余剰汚泥引き抜き流量軸の切片の値を最低確保するべき余剰汚泥引抜流量として、これを目標値として供給する。
余剰汚泥引抜流量一定値制御手段21では、関数変換手段10で変換された値と目標値供給手段20で供給された目標値の差がゼロになるように一定値制御を行い、余剰汚泥引抜流量を制御する。
以上の一連の操作によって、余剰汚泥引抜流量の制御が行われる。
<第2実施形態に対応する主たる効果の説明>
・放流リン負荷低減による放流リン水質向上と放流窒素負荷低減による放流窒素水質向上および汚泥処理コストの削減とのトレードオフを考慮した余剰汚泥引き抜き流量の制御を、従来の一定値制御という枠組みで簡単に実施することができる。
・3つ以上のセンサで一つの操作量を制御する場合にも、エンジニアの直感を利用した一定値制御で追従すべき関数を容易に作成できる。
《他の実施形態》
また、上述した第1実施形態、第2実施形態では、システム設計者が定義した関数を各関数定義手段3、9にセットし、プロセスの運転員が直接、見ることができないようにしているが、関数表示部を設け、各関数定義手段3、9に定義された関数の値をグラフ表示するようにしても良い。
これにより、「何を一定に保っているか」をプロセスの運転員などに明示的に示し、プロセス運転員に安心してプラントを管理させることができる(請求項10の効果)。
また、上述した第1実施形態、第2実施形態で示した関数の他、例えば下水処理プロセスを対象プロセスとするとともに、曝気風量をアクチュエータとし、アンモニアセンサで得られるアンモニア濃度、全窒素センサで得られる全窒素濃度、リン酸センサで得られるリン酸濃度、全リンセンサで得られる全リン濃度、有機物濃度センサで得られる有機物濃度のいずれか1つ以上の計測値と、DOセンサで得られるDO濃度、流量センサで得られる曝気風量、ORPセンサで得られる酸化還元電位差のいずれか1つ以上の計測値とを用いて関数を定義し、これを各関数定義手段3、9に設定するようにしても良い。
これにより、空気供給に伴う電力コストの削減と、有機物濃度低減、アンモニア濃度低減、リン酸濃度低減による水質向上とのトレードオフを考慮した制御系を簡単に構成することができる(請求項11の効果)。
また、上述した第1実施形態、第2実施形態で示した関数の他、例えば下水処理プロセスを対象プロセスとするとともに、炭素源投入量をアクチュエータとし、硝酸センサで得られる硝酸濃度、全窒素センサで得られる全窒素濃度、OPRセンサで得られる酸化還元電位差のいずれか1つ以上の計測値と、有機物濃度センサで得られる反応槽内の有機物濃度、炭素源投入物質の有機物濃度のいずれか1つ以上の計測値とを用いて関数を定義し、これを各関数定義手段3、9に設定するようにしても良い。
これにより、炭素源投入に伴う薬品コストおよび有機物処理に伴うコストと、硝酸濃度低減による水質向上とのトレードオフを考慮した制御系を簡単に構成することができる)。
また、上述した第1実施形態、第2実施形態で示した関数の他、例えば下水処理プロセスを対象プロセスとするとともに、凝集剤投入量をアクチュエータとし、リン酸センサで得られるリン酸濃度、全リンセンサで得られる全リン濃度のいずれか1つ以上の計測値と、凝集剤投入量とを用いて前記関数を定義し、これを各関数定義手段3、9に設定するようにしても良い。
これにより、凝集剤投入に伴う薬品コストと、リン酸濃度低減による水質向上とのトレードオフを考慮した制御系を簡単に構成することができる(請求項13の効果)。
また、上述した第1実施形態、第2実施形態で示した関数の他、例えば下水処理プロセスを対象プロセスとするとともに、余剰汚泥引き抜き量をアクチュエータとし、リン酸センサで得られるリン酸濃度、全リンセンサで得られる全リン濃度、余剰汚泥引き抜き量のいずれか1つ以上の計測値と、アンモニアセンサで得られるアンモニア濃度、硝酸センサで得られる硝酸濃度、ORPセンサで得られる酸化還元電位差、全窒素濃度、反応槽MLSS濃度、余剰汚泥MLSS濃度による全窒素濃度のいずれか1つ以上の計測値とを用いて前記関数を定義し、これを各関数定義手段3、9に設定するようにしても良い。
これにより、リン濃度低減によるリン水質向上、余剰汚泥引き抜きに伴う電力コストおよび汚泥処分コストと、窒素濃度低減による窒素水質向上とのトレードオフを考慮した制御系を簡単に構成することができる(請求項14の効果)。
また、上述した第1実施形態、第2実施形態で示した関数の他、例えば下水処理プロセスを対象プロセスとするとともに、返送量をアクチュエータとし、リン酸センサで得られるリン酸濃度、全リンセンサで得られる全リン濃度、返送量のいずれか1つ以上の計測値と、硝酸センサ、または全窒素センサで得られる全窒素濃度、ORPセンサで得られる酸化還元電位差に対応した硝酸濃度のいずれか1つ以上の計測値とを用いて前記関数を定義し、これを各関数定義手段3、9に設定するようにしても良い。
これにより、リン濃度低減によるリン水質向上および返送ポンプの電力コストと、硝酸濃度低減による窒素水質向上とのトレードオフを考慮した制御系を簡単に構成することができる(請求項15の効果)。
また、上述した第1実施形態、第2実施形態で示した関数の他、例えば浄水処理プロセスを対象プロセスとするとともに、凝集剤投入量をアクチュエータとし、濁度計による濁度と凝集剤投入量とを用いて前記関数を定義し、これを各関数定義手段3、9に設定するようにしても良い。
これにより、浄水処理プロセスの濁度低減による水質向上と、凝集剤薬品コストとのトレードオフを考慮した制御系を簡単に構成することができる(請求項16の効果)。
また、上述した第1実施形態、第2実施形態で示した関数の他、例えば浄水処理プロセスを対象プロセスとするとともに、オゾン供給量をアクチュエータとし、溶存オゾン酸素濃度センサで得られた溶存オゾン酸素濃度、オゾン供給量のいずれか1つ以上の計測値と、蛍光強度計で得られた蛍光強度、UVセンサで得られた有機物濃度のいずれか1つ以上の計測値とを用いて前記関数を定義し、これを各関数定義手段3、9に設定するようにしても良い。
これにより、浄水処理プロセスのオゾン処理による水質向上とオゾン供給に伴うコストのトレードオフを考慮した制御系を簡単に構成することができる(請求項17の効果)。
本発明によるプロセス制御システムの第1実施形態を示す構成図。 図1に示す関数定義手段に設定される関数のうち、一定値追従すべき関数のメリットを示す模式図。 図1に示す関数定義手段に設定される関数のうち、DO一定値制御の概念に対応する関数とその問題点を示す模式図。 図1に示す関数定義手段に設定されると関数のうち、アンモニア濃度一定値制御の概念に対応する関数とその問題点を示す模式図。 図1に示す関数定義手段に設定されると関数のうち、一定値追従すべき関数にマージンを持たせることのメリットを示しす模式図。 図1に示す関数定義手段に最適目標値計算を利用して、一定値追従すべき関数を作成するときの手順例を示す模式図。 図1に示す関数定義手段にトレードオフ曲線を利用して、一定値追従すべき関数を作成する方法を示す模式図。 図1に示す関数定義手段に一定値追従すべき関数の範囲を制限することによって自動的にリミッタを導入できることを示す模式図。 図1に示す関数定義手段に一定値追従すべき関数を複数用意するときの概念を示す模式図。 本発明によるプロセス制御システムの第2実施形態を示す構成図。 図10に示す関数定義手段に3次元的に一定値追従すべき関数を定義するときの概念を示す模式図。
符号の説明
1:下水処理プロセス(循環式硝化脱窒法)
2:プロセス計測データ収集
3:関数定義手段
4:関数変換手段
5:目標値供給手段
6:曝気風量一定値制御手段
7:下水処理プロセス(A2O法)
8:プロセス計測データ収集および保存手段
9:関数定義手段
10:関数変換手段
11:最初沈殿池
12:無酸素槽
13:好気槽
14:最終沈殿池
15:DOセンサ
16:アンモニアセンサ
17:曝気装置
18:炭素源投入ポンプ
19:PAC注入ポンプ
20:目標値供給手段
21:余剰汚泥流量一定値制御手段
71:最初沈殿池
72:嫌気槽
73:無酸素槽
74:好気槽
75:最終沈殿池
76:リン酸センサ(好気槽)
77:硝酸センサ(無酸素槽)
78:余剰汚泥引抜流量センサ
79:凝集剤注入ポンプ
110:余剰汚泥引き抜きポンプ
111:循環ポンプ
112:返送汚泥ポンプ
710:余剰汚泥引抜ポンプ
711:循環ポンプ
712:返送ポンプ
713:曝気装置
714:炭素源投入ポンプ

Claims (17)

  1. 2つ以上のセンサによって得られたプロセスの状態に基づき、センサの個数より少ないアクチュエータを制御することによってプロセスの状態を制御するプロセス制御システムにおいて、
    予め定義されたプロセスの状態が外乱によって変化するようなプロセスの状態を計測する少なくともn(n≧2)個のセンサから出力される計測値を取り込むプロセス状態計測手段と、
    各計測値は予め定義された指標に基づいてその良否が判断できるという条件、n個の各計測量はm(m<n)個のいずれかのアクチュエータを操作するために利用され、かつ各々の計測量が2つ以上のアクチュエータを操作するために重複して用いられることが無いようにアクチュエータと計測量のm個(1対1あるいは1対多)の組が定義されているという条件、1対多で定義されたアクチュエータ(1個)と計測量(複数個)の組において、アクチュエータによる操作量を増加した場合に、ある計測量は前記指標に基づいて良くなるが別の計測量は前記指標に基づいて悪くなるトレードオフが存在するという条件を満たしている2つ以上の計測値に対し、トレードオフのバランス点を指定する1つの関数が定義される関数定義手段と、
    前記プロセス状態計測手段で計測された各計測値に応じて、前記関数定義手段で定義された関数の値を一定値に保つように制御指令を出力する一定値制御手段と、
    この一定値制御手段から出力される制御指令に基づき、センサの個数未満のm(<n)個のアクチュエータを制御し、プロセスの状態を制御するプロセス制御操作手段と、
    を備えたことを特徴とするプロセス制御システム。
  2. 請求項1に記載のプロセス制御システムにおいて、
    前記関数定義手段は、予め定義されたプロセス最適化手段によって外乱の状態に応じた複数の最適解を求め、これらの最適解を補間して、複数のトレードオフをバランスさせる関数を構成する、
    ことを特徴とするプロセス制御システム。
  3. 請求項1に記載のプロセス制御システムにおいて、
    前記関数定義手段は、対象とするプロセスの挙動を模擬できるプロセスシミュレータを用いて、トレードオフ関係にある、2つ以上の変数の定常状態において取り得る値を外乱状態に応じて計算し、これらの値を補間することによって得られる曲線を使用して、前記関数を決定する、
    ことを特徴とするプロセス制御システム。
  4. 請求項1に記載のプロセス制御システムにおいて、
    前記関数定義手段は、対象とするプロセスに対し、トレードオフ関係にある、2つ以上の変数の実測値を外乱状態に応じて計測し、その計測された値を補間することによって得られる曲線を使用して、前記関数を決定する、
    ことを特徴とするプロセス制御システム。
  5. 請求項1に記載のプロセス制御システムにおいて、
    前記関数定義手段は、トレードオフ関係にある、2つ以上の変数の中でいずれか1つ以上の変数の取り得る範囲に限界値が存在する有界関数を使用して、前記関数を決定する、
    ことを特徴とするプロセス制御システム。
  6. 請求項1に記載のプロセス制御システムにおいて、
    前記関数定義手段は、複数の関数を定義しておき、状況に応じて追従させる関数を切り替える、
    ことを特徴とするプロセス制御システム。
  7. 請求項1に記載のプロセス制御システムにおいて、
    前記一定値制御手段は、トレードオフ関係にある2つ以上の変量の操作量に対する変化率(時定数)が異なる場合に、変化率を調整するためのフィルタを導入した上で、一定値制御を行う、
    ことを特徴とするプロセス制御システム。
  8. 請求項1に記載のプロセス制御システムにおいて、
    前記関数定義手段は、トレードオフ関係にある変数が3つ以上存在する場合に、対応する操作量の増加によって良くなる変数(グループA)と、減少によって良くなる変数(グループB)を予めグルーピングしておき、グループAの代表変数とグループBの代表変数とを選択し、これら2変数のトレードオフを考慮した関数を作成する、
    ことを特徴とするプロセス制御システム。
  9. 請求項1に記載のプロセス制御システムにおいて、
    前記関数定義手段は、トレードオフ関係にある変数が3つ以上存在する場合に、対応する操作量の増加によって良くなる変数(グループA)と、減少によって良くなる変数(グループB)を予めグルーピングしておき、グループAの全変数から1つの合成変数を作成するとともに、グループBの全変数から1つの合成変数を選択し、これら2変数のトレードオフを考慮して関数を作成する、
    ことを特徴とするプロセス制御システム。
  10. 請求項1に記載のプロセス制御システムにおいて、
    前記関数定義手段に設定された関数の値をグラフ表示する関数表示部、
    を有することを特徴とするプロセス制御システム。
  11. 請求項1に記載のプロセス制御システムにおいて、
    前記関数定義手段は、下水処理プロセスを対象プロセスとするとともに、曝気風量をアクチュエータとし、
    アンモニアセンサで得られるアンモニア濃度、全窒素センサで得られる全窒素濃度、リン酸センサで得られるリン酸濃度、全リンセンサで得られる全リン濃度、有機物濃度センサで得られる有機物濃度のいずれか1つ以上の計測値と、DOセンサで得られるDO濃度、流量センサで得られる曝気風量、ORPセンサで得られる酸化還元電位差のいずれか1つ以上の計測値とを用いて前記関数を定義する、
    ことを特徴とするプロセス制御システム。
  12. 請求項1に記載のプロセス制御システムにおいて、
    前記関数定義手段は、下水処理プロセスを対象プロセスとするとともに、炭素源投入量をアクチュエータとし、
    硝酸センサで得られる硝酸濃度、全窒素センサで得られる全窒素濃度、OPRセンサで得られる酸化還元電位差のいずれか1つ以上の計測値と、有機物濃度センサで得られる反応槽内の有機物濃度、炭素源投入物質の有機物濃度のいずれか1つ以上の計測値とを用いて前記関数を定義する、
    ことを特徴とするプロセス制御システム。
  13. 請求項1に記載のプロセス制御システムにおいて、
    前記プロセスは、下水処理プロセスを対象プロセスとするとともに、凝集剤投入量をアクチュエータとし、
    リン酸センサで得られるリン酸濃度、全リンセンサで得られる全リン濃度のいずれか1つ以上の計測値と、凝集剤投入量とを用いて前記関数を定義する、
    ことを特徴とするプロセス制御システム。
  14. 請求項1に記載のプロセス制御システムにおいて、
    前記関数定義手段は、下水処理プロセスを対象プロセスとするとともに、余剰汚泥引き抜き量をアクチュエータとし、
    リン酸センサで得られるリン酸濃度、全リンセンサで得られる全リン濃度、余剰汚泥引き抜き量のいずれか1つ以上の計測値と、アンモニアセンサで得られるアンモニア濃度、硝酸センサで得られる硝酸濃度、ORPセンサで得られる酸化還元電位差、全窒素濃度、反応槽MLSS濃度、余剰汚泥MLSS濃度による全窒素濃度のいずれか1つ以上の計測値とを用いて前記関数を定義する、
    ことを特徴とするプロセス制御システム。
  15. 請求項1に記載のプロセス制御システムにおいて、
    前記関数定義手段は、下水処理プロセスを対象プロセスとするとともに、返送量をアクチュエータとし、
    リン酸センサで得られるリン酸濃度、全リンセンサで得られる全リン濃度、返送量のいずれか1つ以上の計測値と、硝酸センサ、または全窒素センサで得られる全窒素濃度、ORPセンサで得られる酸化還元電位差に対応した硝酸濃度のいずれか1つ以上の計測値とを用いて前記関数を定義する、
    ことを特徴とするプロセス制御システム。
  16. 請求項1に記載のプロセス制御システムにおいて、
    前記関数定義手段は、浄水処理プロセスを対象プロセスとするとともに、凝集剤投入量をアクチュエータとし、
    濁度計による濁度と凝集剤投入量とを用いて前記関数を定義する、
    ことを特徴とするプロセス制御システム。
  17. 請求項1に記載のプロセス制御システムにおいて、
    前記関数定義手段は、浄水処理プロセスを対象プロセスとするとともに、オゾン供給量をアクチュエータとし、
    溶存オゾン酸素濃度センサで得られた溶存オゾン酸素濃度、オゾン供給量のいずれか1つ以上の計測値と、蛍光強度計で得られた蛍光強度、UVセンサで得られた有機物濃度のいずれか1つ以上の計測値とを用いて前記関数を定義する、
    ことを特徴とするプロセス制御システム。
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