JP4557340B2 - 膜式ガスメータの圧力損失低減機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、既に稼働中の膜式ガスメータの圧力損失を低減することができる圧力損失低減機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
主として都市ガスの使用に際しガス使用量を計測するために膜式ガスメータが用いられる。膜式ガスメータは、メータ内を通過するガスの最大流量によりその号数が決められており、旧計量法では、1,3,5,10,15,30号等が規定されている。なお号数は、ガスの最大流量が1m3/h当たり1号と定めてあり、例えば3号の膜式ガスメータのガスの最大流量は3m3/hということになる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、平成5年に計量法の改正が行われ、新計量法での号数は1,1.6,2.5,4,10,16,25号・・・となることが決まっており、現在大量に稼働中の膜式ガスメータを新計量法に適合した号数に切り替える必要が生じている。例えば、既存の3号の膜式ガスメータは2.5号または4号に切り替えることになるが、使用するガス器具を減らすのは現実的でないため、4号に切り替えるのが望ましい。また、新たに4号の膜式ガスメータを製造して既存の3号と交換するのは膨大なコストを要するため現実的でない。そこで、既存の3号の膜式ガスメータを流用することが考えられるが、圧力損失の問題が生じる。
【0004】
膜式ガスメータの圧力損失は最大流量時に最大となり、最大流量時の圧力損失も計量法で定められている。計量法で定められた圧力損失は、遮断弁内蔵の1号〜6号の膜式ガスメータで242Pa(パスカル)、6号〜100号で330Paと決められている。
【0005】
ところが、既存の3号の膜式ガスメータに最大流量4m3/hのガスを流すと圧力損失は270Pa程度になってしまい計量法に定める規定を満たすことができない。
本発明の目的は、ガス最大流量を多くしても既存の膜式ガスメータの圧力損失を低減することができる圧力損失低減機構を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、膜式ガスメータの圧力損失低減機構であって、前記膜式ガスメータに内蔵された既存のガス分配部より大きな開口面積の開口部を有する交換用ガス分配部と、前記膜式ガスメータに内蔵された既存のバルブより大きな凹部断面を有する交換用バルブとを備え、前記既存のガス分配部及びバルブを前記交換用ガス分配部及び交換用バルブに交換することにより圧力損失を低減させることを特徴とする膜式ガスメータの圧力損失低減機構によって達成される。
【0007】
また、上記本発明の膜式ガスメータの圧力損失低減機構において、前記膜式ガスメータに内蔵された既存のクランク機構のクランク半径を前記交換用ガス分配部及び交換用バルブに合わせて変更する変更手段を有することを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態による膜式ガスメータの圧力損失低減機構を図1乃至図10を用いて説明する。本実施の形態では既存の3号の膜式ガスメータを4号に変更する際の圧力損失低減機構を例にとって説明する。まず、膜式ガスメータの概略の構成を図1に示す断面図を用いて説明する。
【0009】
膜式ガスメータ1の内部は、図1に示すように、分割壁2により上部室4及び下部室6の2室に分けられている。上部室4には、ガス流入口8が接続されて外部配管からガスが流入するようになっている。分割壁2には上部室4と下部室6とを空間的に接続する4個の開口部(流路)a、b、a’、b’が設けられている。開口部a、b間には、ガス流出口28に接続する流出用開口部cが設けられ、開口部a’、b’間には、ガス流出口28に接続する流出用開口部c’が設けられている。流出用開口部c、c’は合流してガス流出口28に接続されている。これら開口部a、b、c、a’、b’、c’は例えば樹脂一体成型により形成されたガス分配部3に設けられ、ガス分配部3は容易に取り替え可能にダイキャスト製の分割壁2に固定されている。
【0010】
上部室4には、開口部a、b、c上を摺動して開口部a、b、cのそれぞれを開口あるいは遮蔽するバルブ10と、開口部a’、b’、c’上を摺動して開口部a’、b’、c’のそれぞれを開口あるいは遮蔽するバルブ12とが設けられている。バルブ10は開口部a又はbと流出用開口部cとを空間的に接続するための凹部が形成されており、樹脂製材料を成型して製造されている。同様に、バルブ12は開口部a’又はb’と流出用開口部c’とを空間的に接続するための凹部が形成されており、樹脂製材料を成型して製造されている。
【0011】
バルブ10と12は上部室4内に設けられたクランク機構14により後述のように連動して開口部a、b、c、a’、b’、c’上をそれぞれ摺動するようになっている。クランク機構14は、小ひじ金16、18及び大ひじ金20、22を介して翼軸24、26に接続されている。翼軸24、26の所定角の回転運動に基づいてクランク機構14はバルブ10、12を所定角度だけ開口部a、b、c、a’、b’、c’上を摺動させるようになっている。翼軸24、26は分割壁2に設けられた開口を通って下部室6に達している。
【0012】
下部室6には、室を左右に分離する仕切板30が中央に設けられている。仕切板30で仕切られた左右の室にはそれぞれ薄いゴム製の膜32、32’を介して膜板34、34’が支持されており、これらにより4つの計量室I〜IVが構成されている。計量室I〜IVへのガスの導入及び排出は、膜32、32’とバルブ10、12の連動作用により行われるが、その原動力はガスが使用されることによって生じるガス流入口8とガス排出口28との間のガスの圧力差による。
【0013】
各膜板34、34’はそれぞれ翼軸24、26に連結されており、膜板34、34’の移動に伴って翼軸24、26が所定量回転するようになっている。この回転が大ひじ金20、22、小ひじ金16、18を経由しクランク機構14を回転させバルブ10、12を摺動させる。このバルブ10、12の動きにより計量室I〜IV内へのガスの導入及び排出が制御される。
【0014】
次に、この膜式ガスメータ1によるガス流入及びガス排出の動作について、図2を用いてより詳細に説明する。図2(a)〜(d)は図1と同方向から見た膜式ガスメータ1の簡略化した断面を示している。図2(i)〜(iv)は、膜式ガスメータ1のクランク機構14と開口部部a、b、c、a’、b’、c’及びその近傍を上方から見た状態を示している。但し、図2(i)〜(iv)におけるバルブ10、12はその摺動動作を分かり易くするために模式的に示している。
【0015】
図2(a)、(i)において、バルブ10は開口部a、bを共に遮蔽しており、膜板34は進行方向と反対方向へ折り返す死点の位置に達して停止している。このとき、バルブ12は開口部a’、b’を開口している。計量室III内のガスは開口部a’から流出側開口部c’を通って圧力の低いガス流出口28に流出すると共に、計量室IVには開口部b’を介して上部室4のガス量入口8からのガスが流入し、ガス圧力により膜板34’は計量室III側に移動する。この膜板34’の動きにより、翼軸26、大ひじ金22、小ひじ金18を介してクランク機構14が回転しバルブ10、12を図中右側へ摺動させる(図2(b)、(ii))。
【0016】
これにより、計量室Iにガスが導入されると同時に計量室IIに充満していたガスの排出が始まる。このとき排出されるガス量は図1の斜線で示した容積Vとなる。また、このときのバルブ10側の膜板34の動きによりバルブ12が作動し、計量室IIIにガスが導入されると同時に計量室IVのガスは排出され、以下、図2(d)、(iv)−>図2(a)、(i)−>図2(b)、(ii)−>図2(c)、(iii)の順に連続的に繰り返される。なお、クランク機構14の回転は図示しない水平軸に伝達され、カウンタを動作させてガス消費量を表示することができる。
【0017】
次に、本実施の形態による膜式ガスメータの圧力損失低減機構を従来例との対比において図3乃至図10を用いて説明する。図3乃至図5は本実施の形態に係る交換用ガス分配部3と交換用バルブ10、12を示し、図6乃至図8は比較例としての従来例に係るガス分配部103とバルブ110、112を示している。
【0018】
図3はガス分配部3を示しており、図3(a)はその平面図、図3(b)は図3(a)のA−A線で切断した断面図、図3(c)は、ガス分配部3の開口部a、b、cの平面図を示している。図3において、開口部a、b、cと開口部a’、b’、c’はA−A線について対称に配置されており、開口部a、b、cの中心及び開口部a、b、c上面で摺動するバルブ10の回転軸の軸受部50とを結ぶ仮想直線と、開口部a’、b’、c’の中心及び開口部a’、b’、c’上面で摺動するバルブ12の回転軸の軸受部51とを結ぶ仮想直線とがほぼ直交する位置関係になっている。
【0019】
また、図3(b)に示すガス分配部3の高さd1は例えば11mmに設定され、図3(c)に示す開口部a、b、cの最長幅d2は例えば36.6mm、流出用開口部cの最短幅d3は例えば12.52mmに設定されている。また、図3(b)に示すように、開口部上端部はバルブ10、12が摺動可能なように平坦に形成されている。
【0020】
一方、図6は現行品のガス分配部103を示しており、図6(a)はその平面図、図6(b)は図6(a)のA−A線で切断した断面図、図6(c)は、ガス分配部103の開口部a、b、cの平面図を示している。図6に示すように現行品の外観形状は本実施の形態のガス分配部3と同様の外形寸法で同様の外観形状を有している。しかしながら、図6(b)に示すガス分配部103の高さd100は13mmに設定され、図6(c)に示す開口部a、b、cの最長幅d102は33mm、流出用開口部cの最短幅d103は11mmとなっている。
【0021】
図9は、本実施の形態によるガス分配部3の開口部a、b、cと現行品のガス分配部103の開口部a、b、cを重ね合わせて見た状態を示している。図中実線が本実施の形態であり、破線が現行品である。図9の比較から明らかなように本実施の形態による開口部a、b、cの方が開口面積において現行品より広くなっていることが分かる。
【0022】
次に、図4は本実施の形態によるバルブ10、12を示しており、図4(a)はその平面図、図4(b)は同底面図、図4(c)は図4(a)のA−A線で切断した断面図を示している。図4に示すように、バルブ10、12は、ガス分配部3の開口部a、b、c上及び開口部a’、b’、c’上をそれぞれ摺動できるように底面部端部は平面に形成されている。底面部中央には、開口部a(a’)又はb(b’)と流出用開口部c(c’)とを空間的に接続するための凹部54が形成されている。バルブ10、12上面にはクランク機構14と連結するための連結棒56が形成されている。
【0023】
バルブ10、12の一端側には、バルブ10、12の回転中心となる回転軸に回転自在にはまりこむばか穴52が形成されている。また、図4(a)に示すバルブ10、12の摺動方向に沿う最大寸法d4は例えば37.18mmに設定され、図4(c)に示す凹部54の深さd5は例えば10mmに設定されている。
【0024】
一方、図7は現行品のバルブ110、112を示しており、図7(a)はその平面図、図7(b)は同底面図、図7(c)は図7(a)のA−A線で切断した断面図を示している。図7に示すように、現行品の外観形状は本実施の形態のバルブ10、12と同様の外観形状を有している。しかしながら、図7(a)に示すバルブ110、112の摺動方向に沿う最大寸法d104は32.56mmに設定され、図7(c)に示す凹部154の深さd105は8mmに設定されている。
【0025】
図10は、本実施の形態によるバルブ10、12と現行品のバルブ110、112を平面方向に重ね合わせて見た状態を示している。図中実線が本実施の形態であり、破線が現行品である。図10の比較から明らかなように本実施の形態によるバルブ10、12の方が底面面積及び凹部54底面積において現行品より広くなっていることが分かる。また、図4(c)と図7(c)との対比により、凹部54の方がより深く形成されていることが分かる。
【0026】
このように、本実施の形態によるバルブ10、12の凹部54の深さを現行品より深くすることにより、流路の流れ部の抵抗を減らすことができる。これにより膜式ガスメータ1の圧力損失を低減させることができると共に、現行品と比較して、新計量法で定める所定の検定公差(流量範囲が使用最大流量の0.1倍の流量〜使用最大流量以下において1.5%)より十分小さい範囲内に納めてガスメータの器差特性の平準化が図れるようになる。
【0027】
以上のようであるから、本実施の形態によるガス分配部3の開口部a、b、c、a’、b’、c’及びその上を摺動するバルブ10、12で形成されるガス流路の容積は、現行品のそれより大きくすることができる。従って、現行品の膜式ガスメータのガス分配部103とバルブ110、112とを本実施の形態によるガス分配部3とバルブ10、12とに付け替えることにより、ガスメータ内のガスの最大流量を増加させても圧力損失を抑えることができるようになる。
【0028】
なお、現行品に比較して本実施の形態によるガス分配部3とバルブ10、12との相対的移動距離は増大するので、それに伴ってクランク機構14のクランク半径を大きくさせる必要がある。本実施の形態では図5(a)に示すようにクランク半径を例えば8.5mmとしている。ちなみに図8(a)に示すように現行品では7.2mmである。
【0029】
こうすることにより、本実施の形態では、図5(b)に示すように、例えばガス分配部3の開口部bと流出用開口部c、及びバルブ10の凹部54とで形成される流路の有効バルブ開口面積として例えば1.25mm2の広さを得ることができる。一方、図8(b)に現行品における有効バルブ開口面積は1.03mm2である。従って、本実施の形態によれば、現行品と比較して圧力損失を20%程度小さくすることができるようになる。
【0030】
なお、上記実施の形態で示した各寸法は、現行品との比較において本実施形態による圧力損失軽減機構のガス流路の方が大きい容積を有していることを示すための一具体的例示であり、他の種々の数値を用いることももちろん可能である。
【0031】
このように本実施の形態によれば、例えば3号の膜式ガスメータのバルブ110、112及びガス分配部103並びにクランク半径を、本実施の形態による交換用バルブ10、12及びガス分配部3等に交換することにより、4号の膜式ガスメータに容易に改良することができるようになる。
【0032】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば、既存の膜式ガスメータにおける圧力損失を低減することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による膜式ガスメータの概略の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態による膜式ガスメータ1によるガス流入及びガス排出の動作について説明する図である。
【図3】本発明の一実施の形態によるガス分配部3の概略の構成を示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態によるバルブ10、12の概略の構成を示す図である。
【図5】本発明の一実施の形態によるクランク半径の一例を示す図である。
【図6】現行品の膜式ガスメータに搭載されたガス分配部103の概略の構成を示す図である。
【図7】現行品の膜式ガスメータに搭載されたバルブ110、112の概略の構成を示す図である。
【図8】現行品の膜式ガスメータにおけるクランク半径を示す図である。
【図9】本発明の一実施の形態によるガス分配部3の開口部a、b、cと現行品のガス分配部103の開口部a、b、cを重ね合わせて見た状態を示す図である。
【図10】本発明の一実施の形態によるバルブ10、12と現行品のバルブ110、112を平面方向に重ね合わせて見た状態を示す図である。
【符号の説明】
1 膜式ガスメータ
2 分離壁
3、103 ガス分配部
4 上部室
6 下部室
8 ガス流入口
10、12、110、112 バルブ
14 クランク機構
16、18 小ひじ金
20、22 大ひじ金
24、26 翼軸
28 ガス流出口
30 仕切板
32、32’ 膜
34、34’ 膜板
50 軸受部
54、154 凹部
a、b、c、a’、b’、c’ 開口部
I〜IV 計量室
Claims (1)
- 膜式ガスメータの圧力損失低減機構であって、
前記膜式ガスメータに内蔵された既存のガス分配部より大きな開口面積の開口部を有する交換用ガス分配部と、
前記膜式ガスメータに内蔵された既存のバルブより大きな凹部断面を有する交換用バルブとを備え、
前記既存のガス分配部及びバルブを前記交換用ガス分配部及び交換用バルブに交換することにより圧力損失を低減させることを特徴とする膜式ガスメータの圧力損失低減機構。
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