本発明では、上記のとおり、本発明者等によって先に開発された特定の化合物をハロゲン化ブチルゴムを含むゴムに所定量配合してゴム組成物を形成したときは、その化合物自体がジエン系ゴムとブチルゴムとを共架橋により強固に結合することができるとの知見に基づいて、かかる配合から成るゴム組成物をタイヤ用ゴム組成物として使用することを提案する。
本発明の第1態様のタイヤ用ゴム組成物において使用されるゴムは、当該ゴム100重量部に対して、ハロゲン化ブチルゴム、例えば臭素化ブチルゴム及び塩素化ブチルゴム等を10重量部以上含む。ハロゲン化ブチルゴムは、一般に良好な耐候性を有し、気体遮断性等に優れるため、タイヤ部材にそのような優れた特性を付与する上で、タイヤ用ゴム組成物に使用することが好ましい。かかるタイヤ用ゴム組成物に使用されるゴムは、全部がハロゲン化ブチルゴムから構成されていてもよい。ハロゲン化ブチルゴムの配合量が、ゴム100重量部に対して10重量部未満では、所期の耐候性、気体遮断性を達成できないので好ましくない。
ハロゲン化ブチルゴムとブレンドできるゴムの例として、タイヤ用ゴムとして通常使用されているジエン系ゴム、例えば天然ゴム(NR)、並びにポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)及びブタジエンゴム(BR)などの各種合成ゴムの単独あるいは2種以上のブレンドが挙げられる。ハロゲン化ブチルゴムとブレンドされるゴムは、タイヤの各種部材に要求される特性に応じて選択することができる。
本発明の第1態様において、タイヤ用ゴム組成物は、ハロゲン化ブチルゴムを10重量部以上含む上記ゴム100重量部に対して、上記式(1)により表される化合物(以下、「化合物A」と呼ぶ)を0.5〜10重量部、好ましくは2〜7重量部含む。化合物Aは、ハロゲン化ブチルゴムとジエン系ゴムに共架橋して、これら両ゴム間を強固に結合する。化合物Aの配合量が0.5重量部未満では、所期の結合効果を発揮できず、一方、10重量部を超えると、理論上、ハロゲン化ブチルゴムと化合物Aとの反応点が無くなるばかりか、当該タイヤ用ゴム組成物の加硫速度が速くなり、また、セット性が低下するために好ましくない。化合物Aの配合量が上記範囲内であると、実用的な加硫速度及びセット性を有するタイヤ用ゴム組成物を得ることができる。
上記式(1)において、Zは、活性水素含有基であれば特に限定されないが、ハロゲン化ブチルゴムのジエン系ゴムに対する接着性と当該ゴム組成物の貯蔵安定性の点から、活性水素を1又は2個有する活性水素含有基であることが好ましい。活性水素を1又は2個有する活性水素含有基としては、例えばチオール基、カルボキシル基、イミノ基及びアミン基が挙げられる。イミノ基としては、例えば、−NHR2(式中、R2は、水素以外の原子数1〜20個の有機基を表す。)が挙げられる。より具体的には、例えば−NHC6H5が挙げられる。
Zで表される活性水素含有基は、本発明のゴム組成物を加硫させる加硫温度を考慮して選択することができる。当該活性水素含有基の活性水素の数が1である場合には、貯蔵安定性に特に優れたゴム組成物が得られる。また、例えば、Zがカルボキシル基のような電子吸引性の高い基である場合には、後述する熱解離(マレイミド化合物の脱離)が起こりやすくなるため、加硫温度を低くすることができる。
Xは、置換基を有していてもよく、かつ、SO2、O、NおよびSからなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい、炭素数1〜24個の有機基を表す。より具体的には、Xは、非環状脂肪族基、環状脂肪族基、芳香族基、複素環基、アルキル芳香族基などがあるが、中でも、芳香族基又は複素環基が好ましい。Xの価数は、上記式(1)から明らかなように(1+n)価である。Xは、Z以外にも置換基を有していてもよく、そのような置換基は特に限定されない。
Xとしては、例えば、エチレン基、ヘキサメチレン基(−(CH2)6−)、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、キシリル基、イミダゾール環を有する2価の基、ナフタレン環を有する2価の基、下記式(a)で表される2価の基、下記式(b)で表される3価の基が挙げられる。中でも、o−フェニレン基、p−フェニレン基、下記式(a)で表される2価の基、下記式(b)で表される3価の基、下記式(c)で表される2価の基が好ましい。
(式中、R3 は炭素数1〜24の有機基を表す。)
また、Xも、Zと同様に、本発明でのゴム組成物の加硫温度を考慮して選択することができる。
式(1)において、Aはそれぞれ独立に、活性水素基を有しないが、置換基を有していてもよい炭素数1〜24の有機基を表す。Aで表される有機基は、特に限定されないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基;並びに1個以上の置換基を有する置換アルキル、シクロアルキル及びアリール基が挙げられる。中でも、シクロアルキル基、及び芳香族基、例えばフェニル基が好ましい。
化合物Aは公知の方法を用いて合成することができる。例えば、チオール基と上記Zで表される活性水素含有基とを有する化合物と、下記式(2)で表されるマレイミド化合物とを用い、前記マレイミド化合物の炭素原子間の二重結合に前記チオール基を付加させる方法を用いて合成することができる。
(式中、Aは上記式(1)における定義と同じである。)
上記方法において、上記Zで表される活性水素含有基がチオール基よりも反応性が高い場合には、この活性水素含有基を適当な保護基で保護してから反応させるなどの方法を採ればよい。
上述した方法に用いられるチオール基と上記Zで表される活性水素含有基とを有する化合物としては、例えば、チオサリチル酸、2−アミノエタンチオール、2−ピリジンチオール、4−ピリジンチオール、2−アミノベンゼンチオール、4−アミノベンゼンチオール、4−ヒドロキシベンゼンチオール、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプトイミダゾリン、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾイミダゾール、5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、メタンジチオール、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,9−ノナンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、トルエン−3,4−ジチオール、3,6−ジクロロ−1,2−ベンゼンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、1,2−ベンゼンジメタンチオール、1,3−ベンゼンジメタンチオール、1,4−ベンゼンジメタンチオール、4,4′−チオビスベンゼンチオール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール(トリメルカプト−トリアジン)、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−フェニルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ポリチオール(例えば、チオコールまたはチオールで変性されたゴムおよび/または樹脂)が挙げられる。
中でも、芳香族チオール、複素環式チオールが、熱による解離を起こしやすいという理由から好ましい。具体的には、例えば、チオサリチル酸、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−フェニルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、トリメルカプト−トリアジン、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾールが好適に挙げられる。特に、チオサリチル酸、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−フェニルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジンは、固体で臭気がないため取り扱いやすいという理由、および、熱による解離を起こしやすいという理由から好ましい。
上記式(2)で表されるマレイミド化合物としては、種々のN−置換マレイミド、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−ジクロロヘキシルマレイミド等のN−アルキル基置換マレイミド;N−シクロヘキシルマレイミド等のN−シクロアルキル基置換マレイミド;N−フェニルマレイミド等のN−芳香族基置換マレイミドが挙げられる。中でも、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドが、安価に入手できることから好ましい。
上記方法では、例えば、チオール基と上記Zで表される活性水素含有基とを有する化合物に、上記式(2)で表されるマレイミド化合物を、モル比で、0.90〜1.10倍、好ましくは0.95〜1.05倍加え、有機溶媒中、室温〜150℃で、1〜24時間攪拌する方法が挙げられる。
有機溶媒は、チオール基と上記Zで表される活性水素含有基とを有する化合物および上記式(2)で表されるマレイミド化合物の両者を溶解することができるものであれば特に限定されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミドが好適に挙げられる。中でも、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミドが高い溶解性を示す点で好ましい。
反応終了後、減圧下で有機溶剤を濃縮除去することにより本発明の化合物が得られる。
本発明の化合物の好適な具体例としては、上述したチオール基と上記Zで表される活性
水素含有基とを有する化合物と、上記式(2)で表されるマレイミド化合物のそれぞれの
具体例の組み合わせから得ることができる化合物が挙げられる。より具体的には、2−ジ
−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジンとN−フェニルマレイミド
とから得ることができる下記式(3)で表される化合物、チオサリチル酸とN−フェニル
マレイミドとから得ることができる下記式(4)で表される化合物、2−フェニルアミノ
−4,6−ジメルカプト−s−トリアジンとN−フェニルマレイミドとから得ることがで
きる下記式(5)で表される化合物が挙げられる。
かかる化合物Aをハロゲン化ブチルゴムに配合し、その後、加硫させる場合に、化合物Aは、以下に示す反応式に従って、まず、加熱によって、その活性水素含有基とハロゲン化ブチルゴム分子の炭素−ハロゲン結合(下記反応式では、炭素−臭素結合)との反応によりハロゲン化ブチルゴム分子の主鎖に結合する(下記反応式の反応1)。ハロゲン化ブチルゴム分子の主鎖に結合した化合物A上には、その後の加熱によりマレイミド基が脱離して、チオール基が生成する。このチオール基の生成によって、ハロゲン化ブチルゴム分子をこのチオール基と反応性の官能基を有する別のゴムと反応させてハロゲン化ブチルゴム分子を別のゴム分子に結合させることができる。本発明のゴム組成物が最終的にハロゲン化ブチルゴム以外にジエン系ゴムも含む場合には、上記のようにハロゲン化ブチルゴムと化合物Aを反応させた後、ジエン系ゴムと硫黄とを添加し、更に加熱する。加熱によって、ジエン系ゴムが硫黄により加硫するとともに、ハロゲン化ブチルゴムの主鎖に結合した化合物Aから熱によりマレイミド基が脱離することによりチオール基が生成し、生成したチオール基とジエン系ゴムの二重結合とが反応するため、ハロゲン化ブチルゴム及びジエン系ゴムの両者を共加硫することができる(下記反応式の反応2)。当該ゴム組成物にハロゲン化ブチル以外のゴム材料としてジエン系ゴムを含めない場合にも、マレイミド基の脱離により生成したチオール基とジエン系ゴムの二重結合との架橋形成反応を利用して、当該ゴム組成物自体をタイヤ部材とし、それを別のタイヤ部材であるジエン系ゴム部材と結合させることができ、また、当該ゴム組成物を使用して別個のタイヤ部材であるジエン系ゴム部材とブチルゴム部材とを結合させることもできる。
ここで、化合物Aは活性水素含有基を分子内に1個のみ有しているので、室温での保存時において、または加硫時の加硫温度に達する前の加熱過程において、その活性水素含有基がゴムと反応しても、架橋は起こらず、貯蔵安定性、スコーチ等の問題がない。また、本発明のゴム組成物が酸化マグネシウムを含有する場合には、酸化マグネシウムが上記反応で発生する酸を捕捉するため、スコーチが防止される。一方、化合物Aはマレイミド基で保護されたチオール基を分子内に有しており、このマレイミド基は一定温度範囲(例えば、160〜180℃)で脱離するので、加硫温度をその温度範囲に設定すれば、所望の加硫時において加硫温度に達したときに、速やかに架橋が起こる。そして、脱離したマレイミド基は、ラジカル捕捉剤として働くため、加硫温度を高くした場合(例えば、200℃)であっても、ラジカルによるゴムの主鎖の分解を抑制することができるので、優れた熱安定性を提供する。
本発明の第1態様のタイヤ用ゴム組成物には、上記ゴム成分と上記化合物Aに加えて、通常、ゴム組成物に配合される加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、カーボンブラック等の補強剤、各種オイル、老化防止剤、充填剤、可塑剤などのタイヤ用の各種配合剤を配合することができる。更に、上記のとおり、スコーチ防止の点から、酸化マグネシウムを配合することが好ましい。
本発明のゴム組成物自体を補強するために、ハロゲン化ブチルゴムを含む上記ゴム100重量部に対して、ヨウ素吸着量が10〜110g/kgであるカーボンブラック30〜80重量部を含めることが好ましい。ヨウ素吸着量が10〜110g/kgであるカーボンブラックを使用することによって、耐クラック成長性及び耐疲労性が向上し、好ましい。カーボンブラックの配合量が30重量部未満であると、所望の補強効果が達成されず、80重量部を超えると、耐疲労性が低下するため好ましくない。
更に、本発明のゴム組成物には、ハロゲン化ブチルゴムを含む上記ゴム100重量部に対して、2重量部以下の酸化亜鉛を加硫助剤として含めることが好ましい。ゴム100重量部に対して、2重量部以下の量の酸化亜鉛が含まれると加硫速度が向上し、好ましい。酸化亜鉛の配合量が2重量部を超えると、加硫速度が速くなりすぎるため好ましくない。
かかる配合物は、上記配合剤に加えて溶剤を含めることにより、タイヤの各種部材にコーティング材として塗布するか、あるいは、汎用のゴム用混練機、例えばロール、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練した後、押出機によって所望の厚さに押出してシートとし、次いで適当な大きさに切断して、タイヤの各種部材、特にインナーライナーとその周辺部材との接着性の向上を図るために使用することができる。
次に、図面を参照して、上記化合物Aを含むタイヤ用ゴム組成物を使用した本発明の第2〜8の態様について説明する。
先に述べたように、高い気体遮断性が特に要求されるインナーライナーには、ブチルゴムが使用されることが多く、一方、インナーライナーの周辺に使用されるジエン系ゴム部材、例えばインナーライナーの外周側に設けられるカーカス又はゴム部材には、一般的に、物理的強度、金属との接着性、発熱といった観点から、ブチルゴムよりも安価な天然ゴム等のジエン系ゴムが使用されるため、本発明の上記ゴム組成物を使用して製造されたタイヤ用インナーライナーは、高い気体遮断性に加えて、それ自体が、カーカス又はゴム部材との接着性に優れたものとなり、タイヤの耐久性を向上させることができる。このようなインナーライナーは、本発明のゴム組成物を上記のように汎用のゴム用混練機、例えばロール、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練した後、押出機によって所望の厚さに押出してシートとし、次いで適当な大きさに切断することによって製造することができる。同様に、本発明のゴム組成物を使用して、インナーライナーをカーカス又はゴム部材に結合させるためのタイゴムを形成することができる。
図1及び2を参照して、上記タイヤ用ゴム組成物を使用したタイヤ用インナーライナー及びタイヤ用タイゴムを装着した車両用タイヤの例を説明する。
図1は、典型的な空気入りタイヤの回転軸方向に沿う方向(子午線方向)で切断した断面の右側部位を示した略図である。このタイヤは、カーカス層1を備えており、カーカス層1の端部はビードコア2で内側から外側に巻き上げられており、ビードフィラー3によりビードコア2に固定されている。カーカス層1のタイヤ外周側には、ベルト層4が備えられており、このベルト層4の端部にはベルトクッション5が備えられており、さらに、ベルト層4のタイヤ外周側にトレッド6が備えられている。タイヤ側面部には、サイドウォール7が備えられている。一方、タイヤ内面にはタイゴムと呼ばれるゴムシート8を介してブチルゴムを主体として成るインナーライナー9が備えられる。一般的に、タイゴム8としては、インナーライナー9とカーカス層1の内面ゴム(図示せず)の中間的なモジュラス(引張応力)を有し、かつヒステリシス損失が小さいものが使用される。インナーライナー9のタイヤ内周側にはリムクッション10が備えられ、リムクッション10は気室側端部10aでインナーライナー9と接する。図1には示されていないが、インナーライナー9とカーカス層1との間には、それらインナーライナー9とカーカス層1との間の接着性やタイヤの耐久性等の特性を向上させるために、他のゴム部材が配設されていてもよい。例えば、図3について以下で説明するように、ビード部には、インナーライナー9とカーカス層1との間に補強層としてスチールチェーファーを配設することができる。
図2は、ランフラットタイヤの子午線方向で切断した断面の右側部位を示した略図である、ランフラットタイヤ20は、上記の通常の空気入りタイヤと同様に、カーカス層21、ビードコア22、ビードフィラー23、ベルト層24、トレッド25、サイドウォール26、インナーライナー27、リムクッション28などから構成され、これらに加えて三日月形状の断面を有するサイド補強層29を具備する。
上記のようにカーカス層より気室側にインナーライナーを有する空気入りタイヤにおいて、当該インナーライナーを、上記化合物Aを含む本発明のゴム組成物を使用して形成できる。未加硫の本発明のゴム組成物から成るインナーライナー上にカーカス材、トレッド部材等の他のゴム部材を周方向に巻き付けてグリーンタイヤを得た後、加硫することによって、インナーライナーに本発明のゴム組成物を使用した空気入りタイヤを得ることができる。ランフラットタイヤの場合には、インナーライナーとカーカスの間にサイド補強層も配設する。ジエン系のゴムは、ブチルゴムを含むゴムとの接着性に劣ることが一般的に知られているけれども、上記化合物Aを含む組成物は、先に述べたように、化合物Aをハロゲン化ブチルゴム分子の主鎖に結合させた後、ジエン系ゴムと架橋させることにより強固な結合を生じるものであるため、ブチルゴムを含むゴム層に化合物Aを添加することによって、インナーライナー層等のブチルゴムを含むゴム部材をタイゴム又は、サイド補強層、或いはカーカスコートゴム等のジエン系ゴム部材(これらジエン系ゴム部材はブチルゴムを含んでいたとしても比較的低い割合で含む)を強固に結合させることができる。また、上記化合物Aを含む本発明のゴム組成物をインナーライナー9,27に使用すると、インナーライナー9,27をタイゴムの有無にかかわらずカーカス層1,21又はサイド補強層29或いは他のゴム部材(図示せず)と強固に結合させることができる。インナーライナー9,27は、単一又は複数の層から成ることができる。インナーライナー9,27が複数の層から成り、それをタイゴムを介さずにインナーライナー9,27をカーカス層1,21、又は他のゴム部材に結合させる場合には、インナーライナーを構成する複数の層のうちのカーカス層1,21、サイド補強層29又は他のゴム部材と接する層に上記化合物Aを含む本発明のゴム組成物を使用することが好ましく、それら複数の層のゴム組成にタイヤ外面側又はカーカス側方向に傾斜を持たせ、タイヤ内面側からタイヤ外面側に各層に含まれるブチルゴムの割合を漸次的に減少させると、インナーライナー9,27とタイヤ外面側に存在するカーカス層1,21、サイド補強層29又はゴム部材とのより強固な結合を達成することができる。そのような場合には、特にタイゴム8を必要としない。図2には、インナーライナー27とサイド補強層29の間にタイゴムが存在することが示されていないが、それらの間にタイゴムが存在していてもよい。インナーライナーは単数又は複数の層で構成し、タイゴムを単数の層で構成することができる。上記化合物Aを含むゴム組成物をインナーライナー9,27及び/又はタイゴム8に使用することよって、高い気体遮断性と強固な接着性による高い耐久性の両方を備えたタイヤを提供することができる。
次に、図3を参照して、本発明のゴム組成物から成るゴムシートによりインナーライナーとリムクッションとを接合して成る空気入りタイヤの態様を説明する。
図3(a)、(b)、(c)及び(d)は、それぞれ、本発明のゴム組成物から成るゴムシートを使用してインナーライナーとリムクッションとを接合した態様を例示する図であり、図1に示した空気入りタイヤの部分断面図におけるインナーライナーとリムクッションとが接する部位を含むタイヤ内周部を拡大して示されている。当然のことながら、この態様は、上記のようなランフラットタイヤにも適用できる。これらの図は、リムクッションがリムフランジに接触する部分よりビードトウを経てタイヤ内面側に折り返され、端部が更にタイヤ内面側に折り返された形状を有し、リムクッション部分のタイヤ内面側の端部がインナーライナーと接する構造を有する空気入りタイヤを例に示したものであるが、ブチルゴムを用いたインナーライナーがジエン系ゴムを用いたリムクッションに接する構造を有する空気入りタイヤであれば、リムクッションの形状やインナーライナーの端部とリムクッションの端部とが接する位置にかかわらず、本発明のゴム組成物から成るゴムシートを使用してインナーライナーとリムクッションとを強固に接合してリムクッションの剥離を防止し、タイヤの耐久性を向上させることができる。
これらの図において、カーカス層32の端部はビードコア33で内側から外側に巻き上げられており、また、ビード部において、カーカス層32はスチールチェーファー34で被覆されている。これらの図において、参照番号30で示された層は、単層として示されているが、この層は単層又は複数の層から成るインナーライナーであっても、あるいは、タイゴムとインナーライナーとの積層体であってもよい。参照番号30で示された層がタイゴムとインナーライナーとの積層体である場合には、図1に示した本発明の第1態様におけるように、タイヤ内面側に配設されるインナーライナーは、単層又は複数の層から成ることができる。本発明のゴム組成物から成るゴムシートを使用してインナーライナーとリムクッションとが強固に接合された空気入りタイヤは、本発明のゴム組成物から成るゴムシートをインナーライナーとリムクッションの接する部位に配設してグリーンタイヤを得、これを成形、加硫することによって製造することができる。
図3(a)には、インナーライナー30とリムクッション31とを、インナーライナー30及びリムクッション31の両方に対してビードコア33側に配設された本発明のゴム組成物から成るゴムシート35により接合した態様が例示されている。図3(b)には、インナーライナー30とリムクッション31とを、ビードコア33の反対側、すなわちインナーライナー30及びリムクッション31の両方に対してタイヤ内面側に配設された本発明のゴム組成物から成るゴムシート36により接合した態様が例示されている。図3(c)には、インナーライナー30とリムクッション31との間に本発明のゴム組成物から成るゴムシート37が配設され、インナーライナー30とリムクッション31とをゴムシート37により接合した態様が例示されている。図3(d)には、インナーライナー30とリムクッション31とを、インナーライナー30及びリムクッション31の両方に対してビードコア33側に配設された本発明のゴム組成物から成るゴムシート35により接合し、かつ、ビードコア33の反対側、すなわちタイヤ内面側に配設された本発明のゴム組成物から成る別のゴムシート36により接合した態様が例示されている。これらの図において、インナーライナー30の端部とリムクッション31の気室側とは、インナーライナー30の端部がビードコア側に入り込んで、リムクッション31の気室側の端部がインナーライナー30の内面と接するように相互に重なり合っており、これらインナーライナー30の端部とリムクッション31の気室側端部とが重なり合っている領域に本発明のゴム組成物から成るゴムシート35,36,37を配設して、インナーライナー30とリムクッション31とを強固に結合する。本発明のゴム組成物から成るゴムシートは、上記化合物Aを含むことによって、これらインナーライナー30とリムクッション31の両方と強固に結合し、長期にわたる走行による剥離を防止し、ひいては空気入りタイヤの耐久性を高めることができる。図3(a)、(b)、(c)及び(d)に示す態様において、ゴムシート35,36,37は、タイヤ周方向に沿って環状に配設されることが好ましい。
図3(a)に示される態様において、ビードコア33側に配設された本発明のゴム組成物から成るゴムシート35は、そのタイヤ外周側部分で、インナーライナー30の端部と結合するとともに、そのタイヤ内周側部分で、インナーライナー30とリムクッション31とが重なり合っている領域近傍のリムクッション31側の外延部と結合し、インナーライナー30とリムクッション31とを強固に結合する。
図3(b)に示される態様において、インナーライナー30及びリムクッション31の両方に対してタイヤ内面側に配設された本発明のゴム組成物から成るゴムシート36は、そのタイヤ内周側部分で、リムクッション31の端部と結合し、そのタイヤ外周側部分でインナーライナー30とリムクッション31とが重なり合っている領域近傍のインナーライナー30側の外延部と結合し、インナーライナー30とリムクッション31とを強固に結合する。
図3(c)に示される態様において、本発明のゴム組成物から成るゴムシート37は、インナーライナー30の端部とリムクッション31の端部との間に配設されてそれら両端部と強固に結合し、インナーライナー30とリムクッション31とを強固に結合する。
図3(d)には、2枚の本発明のゴム組成物から成るゴムシート35及び36を用いて、インナーライナー30とリムクッション31とを接合した態様が例示されており、この態様は、図3(a)と図3(b)の態様を組み合わせたもので、インナーライナー30とリムクッション31とをより強固に接合することができるものである。図3(d)において、ビードコア33側に配設された本発明のゴム組成物から成るゴムシート35は、そのタイヤ外周側部分で、インナーライナー30の端部と結合するとともに、そのタイヤ内周側部分で、インナーライナー30とリムクッション31とが重なり合っている領域近傍のリムクッション31側の外延部と結合しており、インナーライナー30及びリムクッション31の両方に対してタイヤ内面側に配設された本発明のゴム組成物から成るゴムシート36は、そのタイヤ内周側部分で、リムクッション31の端部と結合し、その外周側部分でインナーライナー30とリムクッション31とが重なり合っている領域近傍のインナーライナー30側の外延部と結合している。同様に、図3(a)に示した態様と図3(c)に示した態様を組み合わせて、図3(b)に示した態様と図3(c)に示した態様を組み合わせて、図3(a)に示した態様と図3(b)に示した態様と図3(c)に示した態様を組み合わせて、インナーライナーとリムクッションとを強固に接合することができる。
上記のようにインナーライナーとリムクッションとを結合するための本発明のゴム組成物から成るゴムシートは、好ましくは0.5〜4mm、より好ましくは1〜4mmの厚さを有する。厚さ0.5mm未満のシートを精度よく作製するのは困難であり、厚さが1mm以上であると、耐剥離性の向上効果が大きい。一方、このゴムシートの厚さが4mmを超えると、このゴムシート自体が剥がれやすくなり、好ましくない。本発明のゴム組成物から成るゴムシートは、インナーライナーとリムクッションとが接触する部分の構造に応じて任意の幅を有することができるが、強固な結合を得るには、5mm以上であることが好ましい。本発明のゴム組成物から成るゴムシートは、上記のように、タイヤ周方向に沿って環状に配設されることが好ましい。
次に、図4を参照して、本発明のゴム組成物から成る層を介してタイゴムとインナーライナーとから成るゴムシート(以下、「タイゴム/インナーライナーゴムシート」ともいう。)のスプライス部分を接合した空気入りタイヤの態様を説明する。図4(a)及び図4(b)は、それぞれ、インナーライナー40とタイゴム41とから成るゴムシート42を円筒状に巻き、ゴムシート42の周方向両端を互いに接合する際の接合部を、その周方向で切断した断面を示したものである。図4(a)は、スプライス部において、ゴムシート42の周方向の両端面43が互いに重なり合う領域の面積が最大限になるように接合された状態を示す図である。図4(b)は、ゴムシート42の両端面43が互いに部分的に重なり合った状態を示す図である。図4(c)は、図4(b)の接合部を本発明のゴム組成物から成る層を介して接合した状態を示す図である。
タイゴムとインナーライナーとから成るゴムシートは、それらタイゴムとインナーライナーとを当該技術分野で知られている圧着等による積層法で形成することができる。タイゴムとインナーライナーとを圧着させて成るゴムシートの周方向両端面の接合形態としては、図4(a)に示すような、当該ゴムシートの接合しようとする両端面を突き合わせる形態があるが、部材の精度や加工条件によっては、オフセットして接合され、ラップ量、すなわちシート両端面の重なり合う面積が小さくなり、スプライス不良が生じる。スプライス不良であると、一般的に接着性が低いブチルゴムとジエン系ゴムとを貼り合わせて成るこのようなゴムシートでは、長期の走行によってスプライス部分が剥離してタイヤの故障の原因となる。図4(a)では、ゴムシート42の両端面が、互いに重なり合う領域の面積が最大限になるように接合された状態で示されている。タイゴムとインナーライナーとから成るゴムシートを接合する場合には、従来、タイゴムとインナーライナーとから成るゴムシートを円筒状に巻いた後、ゴムシートの接合面に何も適用せずに、或いはゴムシートの片端面に接着剤を適用した後に両端面を重ね合わせることが行なわれてきた。接合部において適切な接着性を得るためには、両端面が互いに適切に重なり合う必要があり、また、タイゴムとインナーライナーとから成るゴムシートの周方向の両端面を接合する場合には、接合に使用される接着剤又はシートがインナーライナー層とタイゴムとの低い接着性に由来する剥離を防止するものであることが必要である。従って、スプライス部分における強固な接着を達成する上で、タイゴムとインナーライナーとから成るゴムシートの接合部における両端面の配置と、接合に使用されるコーティング材もしくは接着剤又はシートを構成する材料のインナーライナー及びゴムシート層を構成する材料に対する適合性は重要である。
本発明の第7の態様によれば、部材の精度や加工条件によって適切なラップ量とならなかった場合であっても、本発明のゴム組成物から成る層を介して接合しようとする周方向の両端面を接合することによりスプライス部分におけるブチルゴムとジエン系ゴムとの接着性を確保してスプライス不良を防止することで、タイヤの故障が防止される。この態様において、本発明のゴム組成物は、本発明の態様1に関して先に述べたように配合することができ、各種配合物を加えた後、シートの形態で、或いは、更に溶剤を含めることにより液状にして、接合面に適用することができる。
本発明のゴム組成物から成る層を介して接合しようとする両端面を接合する場合には、本発明のゴム組成物から成る層によりスプライス部分の両端面間に形成しようとする接着層の形状に合わせて本発明のゴム組成物から成る層を形成することができる。例えば本発明のゴム組成物を予めシート状としたものを使用し、タイゴムとインナーライナーから成るゴムシートの両端面を接合することができる。このように本発明のゴム組成物をシートとして使用する場合、例えば、インナーライナー40とタイゴム41から成るゴムシート42の接合すべき片方の端面43aの全体又は一部の上に、本発明のゴム組成物から成る層44をシートとして配置し、次に、接合すべき他方の端面43bを重ねる。層44は、例えば、図4(c)に示されるように、ゴムシート42の主表面45に垂直な平面で切断した断面で平行四辺形の形状を有するものであれば、ゴムシート42の両端面との重なりが大きくなるため、強固な接合が達成される。このような形状は強固な接合を達成する上で好ましいが、層44の形状はこのような形状に限られない。しかしながら、スプライス部分からの層44のはみ出しが最低限に抑えられるように層44を配設することが好ましい。本発明のゴム組成物から成るシートを接合面に配置する場合には、当該シートは、接合しようとする端面に配置した状態でタイヤ周方向に沿う方向の厚さdで好ましくは0.5〜4mm、より好ましくは1〜4mmに相当する厚さを有する。タイヤ周方向に沿う方向の厚さで0.5mm未満のシートを精度よく作製するのは困難であり、タイヤ周方向に沿う方向の厚さで1mm以上であると、耐剥離性の向上効果が大きい。一方、このシートのタイヤ周方向に沿う方向の厚さが4mmを超えると、このシート自体が剥がれやすくなり、好ましくない。本発明のゴム組成物をシートの形態でゴムシート42のタイヤ周方向の端面に適用する場合には、当該シートは、端面のタイヤ周方向の幅に応じて任意の幅を有することができるが、強固な結合を得るには、10mm以上であることが好ましい。当然のことながら、本発明のゴム組成物から成るシートは、ゴムシート42のスプライス部分に沿って配設されることが好ましい。
本発明のゴム組成物に更に溶剤を含めることにより液状とし、例えばコーティング材又は接着剤として使用することもできる。コーティング材又は接着剤として使用する場合には、スプライス部分からの当該ゴム組成物のはみ出しが最低限に抑えられることから、タイヤの均一性は損なわれず、好ましい。また、本発明のゴム組成物をシートとして使用する場合よりもタイヤの生産性が向上し、さらに、タイヤの軽量化を図ることができるため、好ましい。本発明のゴム組成物をコーティング材又は接着剤として端面に塗布する場合には、シートとして使用する場合の上記のようなシート厚みの下限に関する問題はないが、タイヤの均一性の点から、本発明のゴム組成物を端面に均一に塗布することが好ましい。本発明のゴム組成物をコーティング材又は接着剤として端面に塗布する場合には、当該コーティング材又は接着剤中の当該ゴム組成物の濃度及び塗布条件に応じて塗布厚を変えることができる、上記のようにゴムシートとして適用する場合とは対照的に、0.5mm未満の厚さで適用することもできる。本発明のゴム組成物をコーティング材又は接着剤として塗布する場合にも、スプライス部分に沿って塗布することが好ましい。
次に、図5を参照して、本発明のゴム組成物から成る層を介してインナーライナーのタイヤ内面の少なくとも一部にジエン系ゴムシートを接合させた空気入りタイヤの態様を説明する。図5(a)に、本発明のゴム組成物から成る層50を介してジエン系ゴムから成るシート51をインナーライナー52のタイヤ内面の一部に接合した空気入りタイヤを例示する。図5(a)には、典型的な空気入りタイヤの子午線方向で切断した断面の右側部位が略図で示されている。この図では、ジエン系ゴムシート51は、本発明のゴム組成物から成る層50を介してタイヤの内面に配設されており、空気入りタイヤ、本発明のゴム組成物から成る層50及びジエン系ゴムシート(以下、「プラットホームゴムシート」ともいう。)51はそれぞれ中心軸線より右側の部位が示されている。未加硫の本発明のゴム組成物を予めシート状に成形し、インナーライナーの内面に積層させ、次に未加硫のジエン系ゴムシートを本発明のゴム組成物からなる未加硫シート上に積層させ、その後に、加硫させることによって、図5(a)に示されるように、本発明のゴム組成物から成る層50を介してジエン系ゴムから成るシート51をインナーライナー52の内面の一部に結合することができる。図5(b)は、図5(a)の本発明のゴム組成物から成る層50を介してジエン系ゴムシート51をインナーライナー52の内面に結合した部分を拡大した図である。
この態様において、本発明のゴム組成物は、本発明の態様1に関して先に述べたように配合することができ、各種配合物を加えた後、シートの形態で、或いは、更に溶剤を含めることにより液状のコーティング材又は接着剤として、インナーライナー内面の少なくとも一部に適用することができる。本発明のゴム組成物から成る層を用いると、ジエン系ゴムから成るシート又はジエン系ゴムから成る部分を表面に有する部材をインナーライナーの表面に強固に結合することができる。ジエン系ゴムからなるシート又はジエン系ゴムから成る部分を表面に有する部材をインナーライナーの表面に強固に結合できるため、タイヤ内面の任意の位置にバランスウエイトや空気圧又は温度センサー、その他の付加的な構造物を設置することができる。例えば、溶剤を含めることにより液状にした本発明のゴム組成物をインナーライナーの内面に塗布し、次に溶剤を蒸発させた後、未加硫の本発明のゴム組成物から成る層上に未加硫のジエン系ゴムシートを積層させ、その後に、加硫させることによっても、図5(a)に示されるように、本発明のゴム組成物から成る層を介してジエン系ゴムから成るシート51をインナーライナー52の内面の一部に結合することができる。図5(c)に、図5(b)のジエン系ゴムからなるシート51の下方にさらにバランスウエイトや空気圧又は温度センサー、その他の付加的な構造物53を配設した例を示す。本発明のゴム組成物は、シートの形態又は液状のコーティング材もしくは接着剤として、インナーライナーの内面側に、タイヤ周方向に沿って周状に連続的に又は離間して任意の周方向の長さ及びタイヤ横断方向の幅で適用することができる。本発明のゴム組成物をタイヤ周方向に沿って周状に連続的に適用した場合には、ジエン系ゴムシート51をプラットホームゴムシート又は支持体として用い、タイヤ周方向の任意の場所に、バランスウエイトや空気圧又は温度センサー、その他の付加的な構造物を設置することができる。しかしながら、バランスウエイトを設置する場合には、モーメントの関係上、トレッドの裏側、すなわちタイヤ内面のタイヤ半径方向のトレッド側にバランスウエイトを設置することが好ましい。また、空気圧センサー又は温度センサーをインナーライナーの内面に設置する場合には、走行中の撓みの少ないビード部に空気圧センサー又は温度センサーを設置することが望ましいが、温度センサーをトレッドの裏側付近に設置して、走行中のトレッド温度により近い温度を求めることができる。バランスウエイトとしては、鉛などの高比重材料をジエン系ゴムで被覆したものや、タングステンなどの高比重の金属粉末を分散させたジエン系ゴムが挙げられる。このように、鉛などの高比重材料をジエン系ゴムで被覆したものや、タングステンなどの高比重の金属粉末を分散させたジエン系ゴムを使用する場合には、架橋剤を含む接着剤(図示せず)によりジエン系ゴムシート51に接着させることができる。空気圧センサー又は温度センサーを図5(c)に示すようにジエン系ゴムシート51に接合する場合には、例えば空気圧センサー又は温度センサーにジエン系ゴムから成る台座(図示せず)を設け、バランスウエイトと同様に架橋剤を含む接着剤により付加的な構造物53をジエン系ゴムシート51に接着させることができる。本発明のゴム組成物を用いると、タイヤの生産性を低下させずに、タイヤ製造後にタイヤ内面側の任意の位置にバランスウエイトや空気圧又は温度センサー、その他の付加的な構造物をインナーライナーのタイヤ内面に設置することができる。
本発明のゴム組成物は、インナーライナーの組成を変更することなく、すなわちインナーライナーの気密性を犠牲にせずに、インナーライナーの内面側にバランスウエイトや空気圧又は温度センサー、その他の付加的な構造物を設置することを可能にする。
本発明のゴム組成物をシートの形態で用いてジエン系ゴムシートをインナーライナーのタイヤ内面に配設する場合、本発明のゴム組成物から成るシートは、好ましくは0.5〜4mmの厚さを有する。0.5mm未満のシートを精度よく作製するのは困難であり、一方、4mmを超えると剥離に耐える十分な機械的強度を得ることができず、好ましくない。
この態様においても、本発明のゴム組成物に更に溶剤を含めることにより液状とし、コーティング材又は接着剤として使用することができる。本発明のゴム組成物をコーティング材又は接着剤として使用する場合には、それをシートとして使用する場合よりもタイヤの生産が高まり、また、タイヤの軽量化を図ることができるため好ましい。また、本発明のゴム組成物を接着剤として使用する場合には、ゴムシートとして使用する場合の上記のようなシート厚みの下限に関する問題はない。本発明のゴム組成物を接着剤として端面に塗布する場合には、コーティング中の当該ゴム組成物の濃度及び塗布条件に応じて塗布厚を変えることができる、上記のようにゴムシートとして適用する場合とは対照的に、0.5mm未満の厚さで適用することもできる。
インナーライナー自体が化合物Aを含む場合には、本発明のゴム組成物を介さずにインナーライナー内面にジエン系ゴムシートを結合させることも可能である。
図6は、空気入りタイヤのビード部に本発明のゴム組成物から成る層60を介してジエン系ゴムシート61を配設し、さらにジエン系ゴムシート61の上に空気圧センサー及び温度センサー等の付加的な構造物62を配設した態様を例示する図である。付加的な構造物をジエン系ゴムシート61に接合する場合には、例えば付加的な構造物62にジエン系ゴムから成る台座(図示せず)を設け、架橋剤を含む接着剤により付加的な構造物62をジエン系ゴムシート61に接着させることができる。
以下に、実施例及び比較例によって本発明を更に説明するが。本発明の範囲をこれら実施例に限定するものでないことは言うまでもない。
化合物−1の合成
チオサリチル酸15.4g(0.1モル)とN−フェニルマレイミド17.3g(0.1モル)とをメチルエチルケトン150g中で、90℃で5時間反応させた。反応終了後、反応物を減圧下90℃で濃縮して、先に化合物Aの具体例として示した式(4)で表される化合物−1を32.5g得た(収率99%)。
化合物−2の合成
2−フェニルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン23.6g(0.1モル)とN−フェニルマレイミド34.6g(0.2モル)とをジメチルホルムアミド150g中で、90℃で5時間反応させた。反応終了後、反応物を減圧下100℃で濃縮して、先に化合物Aの具体例として示した式(5)で表される化合物−2を56.3g得た(収率97%)。
ゴム組成物の調製
上記のようにして合成した化合物−1又は化合物−2を使用して、下記表1に示す配合組成よりなる比較例及び実施例のゴム組成物を得た。これらゴム組成物の加硫速度及びセット性を下記試験法に従って求めた。下記表1には、それらの試験結果が、配合組成と合わせて記載されている。
次いで、これらのゴム組成物について、さらに、下記の各種試験方法に従って、カーカス、リムクッションゴム、タイゴム、及びプラットホームゴムに対する剥離試験を行い、さらに、幾つかの比較例及び実施例のゴム組成物を実際にタイヤのインナーライナーとリムクッションとが接する部位及びインナーライナーのスプライス部分に使用して、耐剥離性を評価した。
各種試験法
1)加硫速度試験: JIS K6300に準じて180℃でのT95を求めた。
2)セット性試験: JIS K6262に準じて試験した。ただし、上記表1に示す配合組成よりなる比較例及び実施例の未加硫ゴム組成物を、金型にて150℃で30分間加硫して、直径29.0mm及び厚さ12.5mmの円柱状試験片を作製し、それらの試験片を70℃で圧縮率25%で22時間放置後に、試験片の厚さを測定して永久歪を求めた。
3)カーカスに対する剥離試験: JIS K6256に準じて、以下の試験片を用い、剥離速度を50mm/分として、剥離力及び剥離形態について試験した。結果は、比較例1の剥離力を100として指数で表示した。指数が大きいほど、剥離力が大きいことを示す。剥離形態は、剥離後の剥離面を目視で観察した。試験片は、下記のように作製した。
糸の打ち込み本数50本/5cmで厚さ0.8mmの補強用のカーカス材で片面を補強した厚さ1.2mmの比較例及び実施例の各ゴム組成物からなる未加硫ゴムシートと、この未加硫ゴムシートの片面に使用したものと同じカーカス材で片面を補強した下記表2に示す組成を有するカーカスゴム層とを、未加硫ゴムシートとカーカスゴム層とが重なり合うように積層させ、長さ150mm以上および幅100mmの未加硫積層ゴム片を作製した。このとき、試験機の掴みしろとするために長手方向に端から60mmまでセロファンを挟み込んでおいた。これらの積層ゴム片を150℃で45分間加硫し、16時間放置した後、幅が25mmとなるように切断して、試験片とした。タイヤ用カーカス材は、下記表2に示す組成を有するカーカスゴムで被覆された布層を有する。
4)リムクッションゴムに対する剥離試験: 試験片は、前記したカーカスゴム層を下記表3に示す配合組成よりなる厚さ1.2mmのリムクッションゴムシートに置き換え、そのリムクッションゴムシートに対し、厚さ1.2mmの比較例及び実施例の各ゴム組成物から成る未加硫シートを積層したことを除き、上記「カーカスゴムに対する剥離試験」と同様の試験法により試験した。
5)タイゴムに対する剥離試験: 試験片は、前記したカーカスゴム層を下記表4に示す配合組成よりなる厚さ1.2mmタイゴムシートに置き換え、そのタイゴムシートに対し、厚さ1.2mmの比較例及び実施例の各ゴム組成物から成る未加硫シートを積層したことを除き、上記「カーカスゴムに対する剥離試験」と同様の試験法により試験した。
6)プラットホームゴムシートに対する剥離試験: 試験片は、前記したカーカスゴム層を下記表5に示す配合組成よりなる厚さ1.2mmのプラットホームゴムに置き換え、そのプラットホームゴムシートに対し、厚さ1.2mmの比較例及び実施例の各ゴム組成物から成る未加硫シートを積層したことを除き、上記「カーカスゴムに対する剥離試験」と同様の試験法により試験した。
7)インナーライナーとリムクッションとが接する部位の耐剥離性: 上記実施例4のゴム組成物を用いて厚さ1mm及び幅25mmのゴムシートを作製し、インナーライナーとリムクッションとの接する部位がそれぞれ図1に示したような構造を有する11R22.5サイズのタイヤを製造し、22.5×8.25サイズのリムに装着し、酸素濃度70%の気体を700kPaになるまで充填し、1707mm径のドラム上で荷重26.73kN、速度45km毎時で20,000km走行後のリムクッション部分の剥離状態を目視観察した。対照として、インナーライナーとリムクッションとの接する部位にゴムシートを有しないことを除いて同様なタイヤを製造し、上記と同様に試験した。
8)スプライス部分の耐剥離性: カーカス層より気室側にタイゴム及びインナーライナーを有する11R22.5サイズのタイヤを製造する際に、ライナースプライス部分を1本のタイヤに対して2箇所作り、一方を図4(b)に示したような両端面が部分的に重なり合った状態とし、もう一方を実施例4のゴム組成物から成る幅25mm及び厚さ1mmのシートを介して図4(c)に示したようにスプライスした。タイゴムは上記表4に示す配合組成よりなり、厚さは製造時に3mmであった。インナーライナーは比較例1の配合組成よりなり、その厚さは製造時に4mmであった。このように製造したタイヤを22.5×8.25サイズのリムに装着し、酸素濃度70%の気体を700kPaになるまで充填し、1707mm径のドラム上で荷重26.73kN、速度45km毎時で20,000km走行後のスプライス部分の剥離状態を目視観察した。
9)ランフラット耐久性試験: それぞれ表1に示した比較例1、実施例4及び実施例6の配合組成よりなる各インナーライナー層を作製し、表2に示した配合組成よりなるカーカスゴム層を作製し、下記表6に示す配合組成よりなるサイド補強ゴム層を作製し、これら各比較例又は実施例のインナーライナー、カーカスゴム層及びサイド補強ゴム層を図2において符号27、符号21、符号29で示した部材として使用してタイヤサイズ215/45R17の試験タイヤを作製した。試験は、排気量2.5リットルのセダン型乗用車の右前輪に試験タイヤを取り付け、タイヤ空気圧200kPaとし、テストコースを反時計回りに2周予備走行を行なった後、試験タイヤリムのバルブコアを抜いてタイヤ空気圧をゼロkPaとして持続90km/hで反時計周りに走行し、50kmごとにタイヤを外して内部を目視観察した。結果は、内部に異常がなければ○、サイド部の内側(インナーライナー)に皺が見られた場合を△、インナーライナーに剥がれが見られた場合を×として表した。インナーライナーの剥がれが生じた時点で試験を終了した。
試験の結果
カーカス、リムクッションゴム及びタイゴム及びプラットホームゴムに対する剥離試験の結果を下記表7〜10に、ランフラット耐久性試験の結果を下記表11に示す。剥離試験の結果から、インナーライナーとリムクッションとが接する部位の耐剥離性については、試験後に対照の場合に剥離が観察されたのに対し、本発明のゴム組成物から成るゴムシートを使用した場合にはいずれも剥離は観察されなかった。さらに、本発明のゴム組成物から成るゴムシートをスプライス部分に使用しなかった部位には、試験後にスプライス部分に剥離が観察されたのに対して、本発明のゴム組成物から成るゴムシートを使用した部位には剥離は観察されなかった。また、ランフラット耐久性試験の結果から、本発明のゴム組成物をインナーライナー層に使用した場合には、ランフラットタイヤの耐久性が格段に向上し、特に実施例4の配合組成よりなるインナーライナー層を使用した場合には、250km走行した後でもライナーの剥がれは観察されなかった。
上記剥離試験及びランフラット耐久性試験の結果に加えて、表1に示した結果より、本発明のゴム組成物では実用的な加硫速度及びセット性が達成されたことから、本発明は、ジエン系ゴムに対する接着性に優れ、良好な加工作業性でジエン系ゴムとブチルゴムとを強固に接着することができるタイヤ用ゴム組成物を提供し、かかるタイヤ用ゴム組成物をインナーライナー及びその周辺部材に使用してインナーライナーとその周辺部材間の接着がより強固にし、タイヤの気密性及び耐久性を向上させ、また、タイヤ内面にプラットホームゴムシートを強固に接着できるという優れた効果を奏する。