JP2009138018A - ゴム組成物及びそれを用いたタイヤ - Google Patents

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【課題】ゴム成分に配合する際の初期接着性と耐湿熱接着性に優れた、環境負荷の低いゴム組成物と、耐久性に優れたタイヤとを提供する。
【解決手段】カテキン類をゴム成分100質量部に対し0.1〜10質量部配合してなることを特徴とするゴム組成物である。また、一枚以上のカーカスプライからなるカーカス4と、該カーカス4のタイヤ半径方向外側に配設した一枚以上のベルト層からなるベルト5を備え、該カーカス4及びベルト5の少なくとも一方がコーティングゴムで被覆したスチールコードよりなる層を含むタイヤにおいて、カーカス4及びベルト5の少なくとも一方のスチールコードを被覆するコーティングゴムに、上記ゴム組成物を用いる。
【選択図】図1

Description

本発明は、タイヤや工業用ベルト等のゴム物品に用いられるスチールコード等の金属補強材との接着耐久性に優れたゴム組成物及びそれを用いたタイヤに関し、特に該金属補強材と加硫時に接着することが可能な接着性ゴム組成物に関するものである。
自動車用タイヤ、コンベアベルト、ホース等、特に強度が要求されるゴム製品には、ゴムを補強し強度、耐久性を向上させる目的で、スチールコード等の金属補強材をゴム組成物で被覆した複合材料が用いられている。該ゴム−金属複合材料が高い補強効果を発揮し信頼性を得るためには、ゴム−金属補強材間に安定した経時変化の少ない接着が必要である。かかる複合体を得るには、亜鉛、黄銅、真鍮等でメッキされたスチールコード等の金属補強材を、硫黄を配合したゴム組成物に埋設し、加熱加硫時にゴムの加硫と同時に接着させるいわゆる直接加硫接着が広く用いられており、これまで該直接加硫接着におけるゴム−金属補強材間の接着性、特に耐湿熱接着性向上のため様々な検討が行われている。
例えば、レゾルシン又は、レゾルシンとホルマリンを縮合して得られる、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂(以下、「RF樹脂」と略記する。)を耐湿熱接着性向上の目的で配合したゴム組成物が報告されており(特許文献1)、RF樹脂を配合することでスチールコードとゴムとの耐湿熱接着性は、確かに飛躍的に向上する。
しかしながら、レゾルシンやRF樹脂は極性が非常に高いためゴムとの相溶性に乏しく、混合、配合、貯蔵等の条件によって、レゾルシンやRF樹脂が析出するいわゆるブルームが発生するため、ゴム物品の外観を損ねるおそれがある。また、ブルーム発生により、該ゴム組成物を配合してから加硫接着まで長期間貯蔵すると未加硫ゴム間の接着性の低下につながったり、所望の耐湿熱接着性が確保できないおそれがある。
また、重量平均分子量が3000〜45000のレゾルシン骨格を有する混合ポリエステルからなる接着材料が報告されている(特許文献2)。しかしながら、分子量が大きな混合ポリエステルは、RF樹脂と比較してゴムとの相溶性は改善されるものの、完全に満足できるものとはなっていない。さらに、高分子量の混合ポリエステルをゴムに配合すると、配合ゴムの粘度が上昇し、加工性が低下するといった問題があり、耐湿熱接着性も十分なものとはなっていない。
一方、タイヤを一定の時間内に加硫成形するには、スチールコードとコーティングゴムとの接着の速さやそれらの完全な結合による充分な接着力、即ちスチールコードとコーティングゴムとの初期接着性を確保する必要がある。ここで、初期接着性を改良することは、加硫時間の短縮につながり、タイヤの製造コストの低減にもつながる。しかしながら、スチールコード用のコーティングゴムに、上述した材料を配合しても、初期接着性を満足する結果が得られていない。また、これらの材料は石油資源を原料とした材料であり、環境面から好ましくない。
特開2001−234140号公報 特開平7−118621号公報
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、ゴム成分に配合する際の初期接着性と耐湿熱接着性に優れた、環境負荷の低いゴム組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかるゴム組成物を、カーカス及びベルトの少なくとも一方のスチールコードの層のコーティングゴムに適用することにより、耐久性に優れたタイヤを提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、カテキン類をゴム成分に対し所定量配合したゴム組成物が、ゴム配合時に優れた初期接着性と高い耐湿熱接着性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明のゴム組成物は、カテキン類をゴム成分100質量部に対し0.1〜10質量部配合してなることを特徴とする。
本発明のゴム組成物は、更に硫黄をゴム成分100質量部に対し1〜10質量部配合することが好ましい。
本発明のゴム組成物は、更に有機酸コバルト塩をゴム成分100質量部に対しコバルト量として0.03〜1質量部配合することが好ましい。
本発明のゴム組成物の好適例においては、前記ゴム成分が、天然ゴム及び合成ゴムの少なくとも一方よりなる。ここで、前記合成ゴムとしては、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴム及びブチルゴムが好ましい。
本発明のゴム組成物の他の好適例においては、前記ゴム成分が、50質量%以上の天然ゴム及び残部合成ゴムよりなる。
また、本発明のタイヤは、一枚以上のカーカスプライからなるカーカスと、該カーカスのタイヤ半径方向外側に配設した一枚以上のベルト層からなるベルトとを備え、該カーカス及びベルトの少なくとも一方がコーティングゴムで被覆したスチールコードよりなる層を含むタイヤにおいて、
カーカス及びベルトの少なくとも一方で、スチールコードを被覆するコーティングゴムに、上記ゴム組成物を用いたことを特徴とする。
本発明によれば、カテキン類をゴム成分に対し所定量配合することにより、ゴム配合時の初期接着性と耐湿熱接着性に優れた、環境負荷の低いゴム組成物を提供することができる。また、かかるゴム組成物を、カーカス及びベルトの少なくとも一方のスチールコードの層のコーティングゴムに適用することにより、耐久性に優れたタイヤを提供することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のゴム組成物は、カテキン類をゴム成分100質量部に対し0.1〜10質量部配合してなることを特徴とする。本発明のゴム組成物に用いるカテキン類は、ポリヒドロキシフラバン-3-オールの総称であって、3-ヒドロキシ-2-フェニルクロマンを母核とし、これに複数の水酸基(OH)を有する化合物又はその誘導体である。従って、本発明のゴム組成物は、カテキン類を配合することによりゴムマトリクス中に水溶性が付与され、ゴム中水分率を向上させることができ、それによって、スチールコード等の金属補強材との接着反応が活性化され、初期接着性が向上する。また、本発明のゴム組成物は、カテキン類を配合することにより、ゴム−金属補強材間に強固な接着層が形成され、高い耐湿熱接着性を有する。更に、本発明のゴム組成物に用いるカテキン類は、通常天然物として存在しており、一般に安全性が高い。
本発明のゴム組成物において、カテキン類の配合量は、ゴム成分100質量部に対し0.1〜10質量部であることを要し、1〜5質量部であることが好ましい。カテキン類の配合量がゴム成分100質量部に対して0.1質量部未満では、上記したカテキン類を配合することにより得られる効果が十分に発揮されず、一方、10質量部を超えると、金属補強材との反応が過剰となり耐湿熱接着性が低下する。
本発明のゴム組成物に用いるカテキン類としては、例えば、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等が挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明のゴム組成物は、更に硫黄を配合することができる。該ゴム組成物に配合される硫黄の配合量は、ゴム成分100質量部に対し、1〜10質量部の範囲が好ましく、3〜8質量部の範囲が更に好ましい。硫黄の配合量がゴム成分100質量部に対して1質量部以上であると、スチールコード等の金属補強材との接着性の点で好ましく、10質量部以下であると、過剰な接着層の生成が抑制されるため、接着性が低下しないので好ましい。
本発明のゴム組成物は、更に有機酸コバルト塩を配合することができる。該有機酸コバルト塩としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ロジン酸コバルト、バーサチック酸コバルト、トール油酸コバルト等が挙げられる。該有機酸コバルト塩は、有機酸の一部をホウ酸等で置き換えた複合塩でもよい。具体的には、マノボンド(商標:OMG製)等が挙げられる。本発明のゴム組成物に配合される有機酸コバルト塩の配合量は、ゴム成分100質量部に対しコバルト量として0.03〜1質量部の範囲が好ましい。有機酸コバルト塩の配合量がゴム成分100質量部に対しコバルト量として0.03質量部以上であると、ゴム組成物と金属補強材との接着性が向上し、1質量部以下であると、ゴム組成物の老化が抑制される。
本発明のゴム組成物のゴム成分は、特に制限されないが、天然ゴム(NR)及び合成ゴムの少なくとも一方よりなることが好ましい。ここで、合成ゴムとして、具体的には、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられる。なお、上記ゴム成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。また、上記ゴム成分は、50質量%以上の天然ゴムを含み、残部が合成ゴムであるのが好ましい。
本発明のゴム組成物には、上記ゴム成分、カテキン類、硫黄、有機酸コバルト塩の他、カーボンブラック及びシリカ等の充填剤、アロマオイル等の軟化剤、ヘキサメチレンテトラミン、ペンタメトキシメチルメラミン、ヘキサメチルメラミン等のメトキシメチル化メラミン等のメチレン供与体、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤等のゴム工業界で通常使用される配合剤を通常の配合量で適宜配合することができる。本発明のゴム組成物の調製方法に特に制限はなく、例えば、バンバリーミキサーやロール等を用いて、ゴム成分に、カテキン類と、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを練り込んで調製することができる。
本発明のゴム組成物と接着される金属補強材は、ゴムとの接着を良好にするために黄銅、亜鉛、或いはこれらにニッケルやコバルトを含有する金属でメッキ処理されているのが好ましく、黄銅メッキ処理されているのが特に好ましい。
次に、本発明のタイヤを図を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明のタイヤの一例の断面図である。図1に示すタイヤは、一対のビード部1及び一対のサイドウォール部2と、両サイドウォール部2に連なるトレッド部3とを有し、上記一対のビード部1間にトロイド状に延在してこれら各部1,2,3を補強するカーカス4と、該カーカス4のクラウン部のタイヤ半径方向外側に位置するベルト5とを具える。
図示例のタイヤにおいて、カーカス4は、一枚のカーカスプライからなり、また、上記ビード部1内に夫々配設した一対のビードコア6間にトロイド状に延在する本体部と、各ビードコア6の周りでタイヤ幅方向の内側から外側に向けて半径方向外方に巻上げた折り返し部とからなる。なお、図示例のカーカス4は、一枚のカーカスプライよりなるが、本発明のタイヤにおいては、カーカスプライの枚数は複数であってもよい。
また、図示例のタイヤにおいて、ベルト5は、二枚のベルト層からなるが、本発明のタイヤにおいて、ベルトを構成するベルト層の枚数は一枚以上であればよく、これに限られるものではない。更に、本発明のタイヤは、ベルト5のタイヤ半径方向外側に、タイヤ周方向に対し実質的に平行に配列したコードのゴム引き層からなるベルト補強層を具えてもよく、ベルト5の端部と該ベルト補強層の間に更に層間ゴムを具えることもできる。
本発明のタイヤは、カーカス4及びベルト5の少なくとも一方がコーティングゴムで被覆したスチールコードの層を含む。即ち、カーカス4のカーカスプライの少なくとも一枚及び/又はベルト5のベルト層の少なくとも一層が、スチールコードの層であればよく、一枚以上のカーカスプライ及び一層以上のベルト層がスチールコードの層であってもよい。
そして、本発明のタイヤは、カーカス4及びベルト5の少なくとも一方で、スチールコードを被覆するコーティングゴムに、上述したゴム組成物を用いることを特徴とする。本発明のタイヤを構成するカーカス及びベルトの少なくとも一方のスチールコードの層のコーティングゴムには、上述のゴム組成物が用いられているため、該タイヤは耐久性が高い。
上記ゴム成分に、カテキン類と、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを練り込んで調製したゴム組成物を、ロール等でシート状に加工し、更に加工されたゴムシート2枚がスチールコードを挟んだ状態に成形加工して、カーカスプライやベルト層を形成することができる。形成されたベルト層は常法に従ってカーカスのタイヤ半径方向外側に積層され、その他の部材と共に本発明のタイヤを構成する。本発明のタイヤのトレッド踏面部、サイドウォール部及びビード部等には、通常のタイヤのそれらの部分に使用される材料、形状、配置を適宜採用することができる。
本発明のタイヤのカーカス及びベルトの少なくとも一方に用いられるゴム組成物と接触されるスチールコードは、ゴムとの接着を良好にするために黄銅、亜鉛或いはこれらにニッケルやコバルトを含有する金属でメッキ処理されているのが好ましく、黄銅メッキ処理されているのが特に好ましい。また、該コードのサイズ、撚り数、撚り条件等は、タイヤの要求性能に応じて適宜選択される。
また、本発明のタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1〜3及び比較例1〜2)
2200mLのバンバリーミキサーを用いて、表1に示すゴム配合処方で混練り混合して、未加硫のゴム組成物を調製し、以下の方法で配合直後の接着性(初期接着性)及び老化後の接着性(耐湿熱接着性)を測定、評価した。結果を表1に示す。
(1)接着性試験
黄銅(Cu;63質量%、Zn;37質量%)メッキしたスチールコードを平行に並べ、該スチールコードを上下両側から各ゴム組成物でコーティングして、これを160℃×20分の条件で加硫し、サンプルを作製した。下記の各接着性に対してASTM−D−2229に準拠して、各サンプルに対してスチールコードを引き抜き、ゴムの被覆状態を目視で観察し、その被覆率を0〜100%で表示し、各接着性の指標とした。初期接着性は上記加硫後に測定した。耐湿熱接着性は、上記加硫後、70℃、湿度100%、5日の湿熱条件下で老化させた後に測定した。
Figure 2009138018
*1 N-フェニル-N'-1,3-ジメチルブチル-p-フェニレンジアミン,大内新興化学工業(株)製,商品名:ノクラック6C.
*2 N,N'-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド,大内新興化学工業(株)製,商品名:ノクセラーDZ.
*3 OMG製,商品名:マノボンド C22.5,コバルト含有量=22.5質量%.
*4 和光純薬工業(株)製,製品名:カテキン 99%.
表1から明らかなように、実施例のゴム組成物は、比較例のゴム組成物に比べて、初期接着性及び湿熱耐久性が高度にバランスされていることが分かる。
本発明のタイヤの一例の断面図である。
符号の説明
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 トレッド部
4 カーカス
5 ベルト
6 ビードコア

Claims (7)

  1. カテキン類をゴム成分100質量部に対し0.1〜10質量部配合してなることを特徴とするゴム組成物。
  2. 更に硫黄をゴム成分100質量部に対し1〜10質量部配合することを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  3. 更に有機酸コバルト塩をゴム成分100質量部に対しコバルト量として0.03〜1質量部配合することを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  4. 前記ゴム成分が、天然ゴム及び合成ゴムの少なくとも一方よりなることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  5. 前記合成ゴムが、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、クロロプレンゴム及びブチルゴムよりなる群から選択される少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項4に記載のゴム組成物。
  6. 前記ゴム成分が、50質量%以上の天然ゴム及び残部合成ゴムよりなることを特徴とする請求項1又は4に記載のゴム組成物。
  7. 一枚以上のカーカスプライからなるカーカスと、該カーカスのタイヤ半径方向外側に配設した一枚以上のベルト層からなるベルトとを備え、該カーカス及びベルトの少なくとも一方がコーティングゴムで被覆したスチールコードよりなる層を含むタイヤにおいて、
    カーカス及びベルトの少なくとも一方で、スチールコードを被覆するコーティングゴムに、請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物を用いたことを特徴とするタイヤ。
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