JP4555973B2 - ジコレステリルエステル化合物及び記録表示材料 - Google Patents

ジコレステリルエステル化合物及び記録表示材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶性化合物であるジコレステリルエステル化合物及び書き換え可能な感熱式の特定の色又はフルカラーによる記録表示材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
フルカラーを記録することが可能で書き換えが不可能な記録材料としてはカラー写真やカラーコピーが知られている。書き換えが可能でフルカラーではない記録材料としては、ベヘン酸等の長鎖アルキルカルボン酸誘導体を含む感熱記録材料やスピロピラン誘導体等のフォトクロミック化合物を利用した光記録材料、その他、磁気や光磁気等のメモリー材料が知られている。
【0003】
これまでの記録材料はフルカラーと書き換え可能な特性を両立するものではなかった。確かに表示材料の中にはテレビや液晶表示等のように表示が変化し、かつフルカラーのものが存在するが財布の中に収まる程度の薄いカードとして用いたり電源なしにいつまでも安定に画像を表示しておくことはできないため、記録材料の代わりに使うことはできなかった。
【0004】
近年、液晶性化合物を用いる新しい方法で書き換え可能なフルカラー記録が達成された(特開平11−24027号公報、特許第2946042号公報)。
【0005】
上記公報によれば、液晶物質が示すコレステリック相の干渉色を0℃付近まで急冷することにより固定することが可能であるが、コレステリック相を示す温度が比較的高温であり、記録用サーマルヘッドの温度、急冷操作からの制約により、より低温でコレステリック相を示し、かつ種々の色が安定に固定できる液晶物質が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の問題に鑑み、色が低温域で再現でき、色の経時安定性が高く、書き換え可能な特定の色による記録又はフルカラー記録を達成するジコレステリルエステル化合物及び記録表示材料を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、下記一般式(1)で表されることを特徴とするジコレステリルエステル化合物、
【0008】
【化2】
Figure 0004555973
【0009】
(式中、n、mは、それぞれ同一または異なって、1〜20の整数を示す。)
及び、上記ジコレステリルエステル化合物を含むことを特徴とする記録表示材料である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明のジコレステリルエステル化合物は、下記一般式(1)で表される。
【0012】
【化3】
Figure 0004555973
【0013】
(式中、n、mは、それぞれ同一または異なって、好ましくは同一であって、1〜20の整数、好ましくは3〜11の整数を示す。)
本発明の化合物は、例えば、以下に示す反応スキームによって合成される。
【0014】
まず、コレステロールとトリエチルアミンをベンゼン中5℃で撹拌し、ω−ブロモアルカン酸クロリドを滴下後5℃で30分、さらに室温で16時間撹拌する方法、又はω−ブロモアルカン酸とコレステロール及びジシクロヘキシルカルボジイミド、4−ジメチルアミノピリジンを塩化メチレン中室温下で16時間撹拌する方法で、相当するコレステリルエステルを得る。
【0015】
【化4】
Figure 0004555973
【0016】
次に、ヒドロキシ安息香酸とコレステリルエステル化合物を、炭酸カリウムの存在する2−ブタノール中、加熱撹拌し、得られた反応混合物をシリカゲル(展開溶媒は塩化メチレン)のカラムクロマトグラフィーで精製して相当するジコレステリルエステル誘導体が得られる。
【0017】
【化5】
Figure 0004555973
【0018】
本発明の化合物は、液晶性化合物であり、加熱温度に応じて、特定の色又は可視域全域の色(フルカラー)を再現できる。また、その色(反射光)を固定化することができ、フルカラー又は特定の色に固定できる感熱記録表示材料として用いることができる。
【0019】
本発明の記録表示材料は、上記化合物を含んでなり、本発明の化合物単独又は混合物の形態で用いられる。混合物として用いる場合、混合する化合物としては、他のジコレステリルエステル等の液晶化合物や、コレステロール等がある。また、色素、酸化防止剤等の添加剤を含むことができる。この場合、本発明の化合物の量は90重量%以上であることが好ましい。
【0020】
本発明の記録表示材料の態様としては、例えば、少なくとも一方が透明な部分を有する二枚の基板間に、少なくとも上記化合物を挟持してなる記録表示材料が挙げられる。
【0021】
本発明に用いる基板は、通常、薄いガラス板などが使われるが、金属板や、高分子フィルムなどの薄膜でもよい。また、二枚のうち一枚は少なくとも一部の光が透過するような透明性が必要である。また、後に述べるように記録の書き込みや消去に光を使う場合には一方の基板が光を吸収することが望ましい。
【0022】
本発明の化合物を二枚の基板間にはさむ方法としては、まず本発明の化合物もしくはそれを含む混合物を溶融状態かもしくは液晶状態の温度に加熱し、一方の基板上に流延し、その上にもう一方の基板をのせるか、平行に保たれた二枚の基板間に減圧やキャピラリー現象を利用して挿入する方法等がある。
【0023】
基板間の間隔は特に限定されるものではないが数μmから100μm程度が望ましい。
【0024】
本発明の記録表示材料は、部分的もしくは全体的な加熱により記録(書き込み)や記録の表示を行うことが可能である。その加熱には、サーマルヘッド、加熱ロール、レーザー光線などあらゆる方法が可能である。また、液晶温度範囲への温度コントロールが必要な加熱は、サーマルヘッドや加熱ロール等の温度をコントロールするかレーザー光線の強度やスポット径を調節すること、もしくは全体を一定の温度まで加熱した後でイメージ状の平らな金属板やゴム板で必要な温度まで降温することで可能である。
【0025】
一方、本発明化合物の呈色を固定化させるためには、その化合物をそのガラス転移温度以下へ急冷することが必要であるが、このためには、全体を冷媒や冷却された雰囲気中に浸漬する方法や、一部を冷却されたヘッドに接触させる方法等が採用される。
【0026】
また、本発明の記録表示材料の他の態様としては、高分子化合物膜やその他の成形体に本発明の化合物もしくはそれを含む混合物を分散させた分散体が挙げられる。
【0027】
本発明の記録表示材料は、例えば、カード、オーバーヘッドプロジェクト用のシート、ラベル、チケット等として用いることができ、必要に応じ、保護層、裏面層等を更に設けてもよい。例えば、ラベルの場合、記録表示材料の裏面に接着剤層を介して台紙が設けられる。磁気チケットの場合、上記台紙に代えて、バインダーと強磁性紛体からなる磁気記録層が設けられる。
【0028】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0029】
(実施例1)
<4−(3−コレステリルオキシカルボニルプロピルオキシ)安息香酸−3−コレステリルオキシカルボニルプロピルエステルの合成>
4−ブロモ−n−酪酸2.5g(0.015mol)とコレステロール5.8g(0.015mol)及びジシクロヘキシルカルボイミド3.1g(0.015mol)を塩化メチレン60mlに溶解し、縮合触媒として4−ジメチルアミノピリジン0.18g(0.0015mol)を加えて、室温で16時間撹拌し、エタノールで再結晶してコレステリルエステル5.9gを得た。
【0030】
得られたコレステリルエステル1.07g(0.002mol)と4−ヒドロキシ安息香酸0.14g(0.001mol)、炭酸カリウム0.98g(0.007mol)を2−ブタノン10mlに混合し、加熱環流下、38時間撹拌した。得られた粗製物をシリカゲル(展開溶媒は塩化メチレン)のカラムで精製して、ジコレステリルエステルである4−(3−コレステリルオキシカルボニルプロピルオキシ)安息香酸−3−コレステリルオキシカルボニルプロピルエステル0.2g(0.00019mol)を得た。
【0031】
(実施例2)
<4−(5−コレステリルオキシカルボニルペンチルオキシ)安息香酸−5−コレステリルオキシカルボニルペンチルエステルの合成>
6−ブロモ−n−カプロン酸2.9g(0.015mol)とコレステロール5.8g(0.015mol)及びジシクロヘキシルカルボイミド3.1g(0.015mol)を塩化メチレン60mlに溶解し、縮合触媒として4−ジメチルアミノピリジン0.18g(0.0015mol)を加えて、室温で16時間撹拌し、エタノールで再結晶してコレステリルエステル6.2gを得た。
【0032】
得られたコレステリルエステル0.56g(0.001mol)と4−ヒドロキシ安息香酸0.07g(0.0005mol)、炭酸カリウム0.48g(0.0035mol)を2−ブタノン5mlに混合し、加熱環流下、19時間撹拌した。得られた粗製物をシリカゲル(展開溶媒は塩化メチレン)のカラムで精製して、ジコレステリルエステルである4−(5−コレステリルオキシカルボニルペンチルオキシ)安息香酸−5−コレステリルオキシカルボニルペンチルエステル0.25g(0.00023mol)を得た。
【0033】
(実施例3)
<4−(7−コレステリルオキシカルボニルヘプチルオキシ)安息香酸−7−コレステリルオキシカルボニルヘプチルエステルの合成>
8−ブロモ−n−オクタン酸2.2g(0.010mol)とコレステロール3.9g(0.010mol)及びジシクロヘキシルカルボイミド2.1g(0.010mol)を塩化メチレン60mlに溶解し、縮合触媒として4−ジメチルアミノピリジン0.12g(0.0010mol)を加えて、室温で16時間撹拌し、エタノールで再結晶してコレステリルエステル3.7gを得た。
【0034】
得られたコレステリルエステル0.83g(0.014mol)と4−ヒドロキシ安息香酸0.09g(0.0007mol)、炭酸カリウム0.67g(0.0049mol)を2−ブタノン7mlに混合し、加熱環流下、28時間撹拌した。得られた粗製物をシリカゲル(展開溶媒は塩化メチレン)のカラムで精製して、ジコレステリルエステルである4−(7−コレステリルオキシカルボニルヘプチルオキシ)安息香酸−7−コレステリルオキシカルボニルヘプチルエステル0.50g(0.00043mol)を得た。
【0035】
(実施例4)
4−(3−コレステリルオキシカルボニルプロピルオキシ)安息香酸−3−コレステリルオキシカルボニルプロピルエステルを厚さ0.18mmの二枚のガラス板間にはさみ、全体を150℃に加熱して溶融し、試料部の厚さが20ミクロンとなるように調製した。
【0036】
次に78℃に保たれたホットステージ上にサンプルをのせると全体が青色を呈した。その後、サンプルをすばやく氷水に浸せきしたところ、サンプルは固化し青色の状態がそのまま固定された。反射スペクトルを測定したところ380nmに極大を有する波長域の光を反射していることがわかった。
【0037】
(実施例5)
4−(5−コレステリルオキシカルボニルペンチルオキシ)安息香酸−5−コレステリルオキシカルボニルペンチルエステルを厚さ0.18mmの二枚のガラス板間にはさみ、全体を150℃に加熱して溶融し、試料部の厚さが20ミクロンとなるように調製した。
【0038】
次に56.5℃に保たれたホットステージ上にサンプルをのせると全体が深い赤色を呈した。その後、サンプルをすばやく氷水に浸せきしたところ、サンプルは固化し赤色の状態がそのまま固定された。反射スペクトルを測定したところ626nmに極大を有する波長域の光を反射していることがわかった。
【0039】
同様にホットステージの温度を57.1℃、58.5℃に保った状態でサンプルの色を固定したところ、それぞれ反射スペクトルの極大の波長が534nm、436nmに固定でき、固定された色は緑もしくは青になった。
【0040】
(実施例6)
4−(7−コレステリルオキシカルボニルヘプチルオキシ)安息香酸−7−コレステリルオキシカルボニルヘプチルエステルを厚さ0.18mmの二枚のガラス板間にはさみ、全体を150℃に加熱して溶融し、試料部の厚さが20ミクロンとなるように調製した。
【0041】
次に65℃に保たれたホットステージ上にサンプルをのせると全体が青色を呈した。その後、サンプルをすばやく氷水に浸せきしたところ、サンプルは固化し青色の状態がそのまま固定された。反射スペクトルを測定したところ400nmに極大を有する波長域の光を反射していることがわかった。
【0042】
同様にホットステージの温度を44℃、41.5℃に保った状態でサンプルの色を固定したところ、それぞれ反射スペクトルの極大の波長が540nm、615nmに固定でき、固定された色は緑もしくは赤になった。
【0043】
(実施例7)
4−(5−コレステリルオキシカルボニルペンチルオキシ)安息香酸−5−コレステリルオキシカルボニルペンチルエステルを厚さ0.18mmの二枚のガラス板間にはさみ、全体を150℃に加熱して溶融し、試料部の厚さが20ミクロンとなるように調製した。
【0044】
次に58.5℃に保たれたホットステージ上にサンプルをのせると全体が青色を呈した。その上に文字が刻まれたゴム製のスタンプをのせて部分的に温度を下げた。2秒後にサンプルをすばやく氷水に浸せきしたところ、文字の部分が緑色でその他の部分が青色の画像が得られた。得られた画像は室温に戻しても安定であった。
【0045】
【発明の効果】
以上説明のように、本発明によれば、書き換え可能な特定の色による記録又はフルカラー記録を達成することができ、しかも色が低温域で再現でき、色の経時安定性にも優れる。
【0046】
従って、カードなどにフルカラーの写真が記録でき自由に書き換えることが可能である。またオーバーヘッドプロジェクト用のシートとして用いた場合、カラーで複数回書き換えて用いることも可能となり環境問題の解決のためにも有効である。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1)で表されることを特徴とするジコレステリルエステル化合物。
    Figure 0004555973
    (式中、n、mは、それぞれ同一または異なって、1〜20の整数を示す。)
  2. 請求項1に記載のジコレステリルエステル化合物を含むことを特徴とする記録表示材料。
  3. 少なくとも一方が透明な部分を有する二枚の基板もしくは薄膜の間に、少なくとも前記ジコレステリルエステル化合物を挟持してなることを特徴とする請求項2に記載の記録表示材料。
  4. 透明な部分を有する成形体に、少なくとも前記ジコレステリルエステル化合物を分散してなることを特徴とする請求項2に記載の記録表示材料。
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