JP4554002B2 - コークス炉の炉内圧の上昇抑制方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、石炭装入中の炉内圧の急激な上昇を効果的に抑制するように工夫したコークス炉の炉内圧の上昇抑制方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、室炉式コークス炉にあっては、炭化室と燃焼室とが交互に並列に配置されて炉団を形成しているが、炭化室へ石炭を装入する際、装入中に炉内圧が上昇するため、煉瓦に目地切れがあると、炭化室から燃焼室側へガスや石炭粉が漏洩することがある。このとき、燃焼室側に漏れ出したガスや石炭粉が不完全燃焼することにより生じた黒煙が煙突から吹き出して、環境上の問題となることがある。
【0003】
石炭装入時の炭化室内圧力の制御方法として、いくつかの方法が考えられまた提案がなされている。
【0004】
その一つは、炭化室へ石炭を装入する際、石炭水分が小さい方が炉内圧は大きくなることが一般に知られているので、炉内圧の上昇を抑制する手段として、石炭水分下限値を設定し、装入石炭の水分率をできるだけ上昇させることが考えられる。
【0005】
黒煙の発生防止を目的とするものではないが、特開平4−36385号公報には、石炭装入時の炭化室内圧力の変動により炉外へ粉塵やガスが漏洩することを防止するため、コークス炉へ石炭を装入する際に、コークス炉の炭化室内圧力を連続的に測定し、この測定値に基づき石炭を装入する速度を調節し、前記炭化室内圧力を制御するようにしたコークス炉への石炭装入方法が示されている。
【0006】
特開平6−100866号公報には、炭化室からのガス漏れ、煙突からの黒煙発生、炭化室煉瓦の劣化を防止するため、ブロック窯出し法を実施しているコークス炉炭化室の炉内圧を制御する方法において、各炭化室の上昇管ベンド管部に、隣接する炭化室の上昇管ベンド管部と連通する遮断弁付き連結管を設け、石炭装入直後の窯の上昇管ベンド管部と隣接する炭化室内圧力が負圧になりかかっている窯の上昇管ベンド管部を連通する連結管の遮断弁を開放して所定時間連通させ、装入直後の窯から隣接する炭化室内圧力が負圧になりかかっている窯へ発生ガスの一部を流入させるようにしたコークス炉炭化室内圧力制御方法が示されている。
【0007】
なお特開昭55−56186号公報には、予熱炭装入用チェーンコンベア装置内の圧力を所定の値に維持し、炉内からのガスの逆流をなくし、かつ窒素ガスの節減ができるようにするために、チェーンコンベア装置内への予熱炭供給が停止した後、該チェーンコンベア装置から予熱炭をコークス炉へ継続して装入している間、チェーンコンベア装置内へ供給する窒素ガス量を増加して、該チェーンコンベア装置から炉内へ排出する予熱炭に相当する容量を窒素ガスで置換するようにした、予熱炭装入を行うコークス炉の予熱炭装入用チェーンコンベア装置への窒素ガス供給法が示されている。
【0008】
炭化室へ石炭を装入する際に生ずる黒煙の発生防止については、煙道に集塵機を設けて、煙突からの黒煙発生を防止することも考えられる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
炭化室へ石炭を装入する際の炉内圧の上昇を抑制する手段として、装入石炭の水分率を上昇させる方法を採用すると、装入嵩密度が小さくなるため、生産性の低下を招くことになる。また石炭水分率が上昇すると、石炭乾留に要する熱量が増加し、エネルギー面でも不利になる。
【0010】
特開平4−36385号公報の石炭装入方法は、石炭装入時の炭化室内圧力の変動により炉外へ粉塵やガスが漏洩することを防止するためのものであるが、装入時に炭化室内の圧力を連続的に測定するための測定装置を窯毎に設置することや、石炭装入速度を制御するために窯毎に駆動用モーターに接続することは、設備上困難であり、また短時間に石炭を装入する速度を調節することは、制御が複雑となる。
【0011】
特開平6−100866号公報の炭化室内圧力制御方法は、炭化室からのガス漏れ、煙突からの黒煙発生、炭化室煉瓦の劣化を防止するためのものであるが、装置コストが過大になりかつ制御が複雑となるという問題点がある。
【0012】
特開昭55−56186号公報の方法は、予熱炭装入用チェーンコンベア装置内の圧力を所定の値に維持し、炉内からのガスの逆流をなくすことを意図しており、本発明とは目的も適用の場も相違している。
【0013】
炭化室へ石炭を装入する際に生ずる黒煙の発生防止するために煙道に集塵機を設けることは、非常に大きな設備投資を要するという問題点がある。またこのように一旦発生した黒煙を事後的に除去するということは、如何にも後向きの対策といわざるを得ず、黒煙発生の原因自体をなくす方法を見い出すことが先決である。
【0014】
本発明は、このような背景下において、多額の投資や複雑な制御を要することなく、石炭装入中の炉内圧の急激な上昇を効果的に抑制して、黒煙の吹き出しなどの環境上の問題を解消するようにしたコークス炉の炉内圧の上昇抑制方法を提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明のコークス炉の炉内圧の上昇抑制方法は、室炉式コークス炉の炭化室に石炭を装入するに際し、その装入前に炭化室内に窒素ガスを導入して炭化室内の酸素濃度が10%以下となるようにすることにより、石炭装入直後の急激な燃焼を抑制するようにしたことを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
【0017】
〈圧力上昇の要因分析〉
石炭装入中の炭化室内の圧力の上昇の要因としては、
(1)炭化室に装入される石炭と炭化室に流入する空気とによる圧力上昇、
(2)装入された石炭が加熱されることにより発生する水蒸気および熱分解することにより発生する炭化水素や水素等のガスによる圧力上昇、
(3)装入された石炭のうち炉内に舞い上がった微粉が、高熱の炭化室炉壁に接触したり、あるいは高温の炭化室雰囲気中で燃焼し(完全または不完全に)、その結果ガスが発生することによる圧力上昇、
がある。
【0018】
このうち(3)の要因については、特に石炭の水分が低いときには、乾燥した石炭の微粉量の増加によって石炭の燃焼表面積が増大して微粉燃焼によるガスの発生が多くなり、また石炭充填密度が上昇することにより発生ガスが炭化室上部空間に抜けにくくなり、その結果、低水分石炭装入時に炉内の圧力が特に急増するものと考えられる。
【0019】
黒煙の発生は、炭化室から燃焼室側へガスや石炭粉が漏洩し、その燃焼室側に漏れ出したガスや石炭粉の不完全燃焼に基くものであるので、石炭装入時にコークス炉の炉内圧の上昇を抑制することにより、これらガスや石炭粉の炭化室から燃焼室側への漏洩をなくすことができる。
【0020】
この石炭装入時の炭化室内の圧力の上昇を抑制する方法として、圧力上昇の要因の一つである上記(3)に着目し、その要因(3)の対策として炭化室において微粉炭を燃焼させないようにすることにより、炭化室における圧力上昇を抑制することを考えた。本発明は、このような着眼点に基いてなされたものである。
【0021】
〈圧力上昇抑制手段〉
本発明においては、炭化室に石炭を装入するに際し、その装入前に炭化室内に窒素ガスを導入して炭化室内の酸素濃度が10%以下となるようにすることにより、石炭装入直後の急激な燃焼を抑制するようにする。
【0022】
石炭装入前の炭化室内の雰囲気は空気であるのでその酸素濃度は21%程度であるが、石炭装入前に炭化室内に窒素ガスを導入して、その酸素濃度を10%以下とするのである。酸素濃度の好ましい範囲は8%以下、さらに好ましい範囲は5%以下である。後述の実施例では、試験炉を用いて酸素濃度を 1.5%にまで低下させて実験を行っているが、実際にはそこまで酸素濃度を低下させるには及ばない。実炉に適用するときには、上述の酸素濃度範囲で充分である。
【0023】
炭化室内に窒素ガスを導入する時機は、酸素濃度の管理を行いやすいように、上記のように石炭の装入前に行うのが有利である。また、装入前に炉内を窒素ガスで満たすと共に、さらに装入中に炉内へ窒素ガスを導入することにより、炭化室内の酸素濃度を減ずることも可能である。
【0024】
〈作用〉
本発明においては、炭化室に石炭を装入するに際し、装入前に炭化室内に窒素ガスを導入して炭化室内の酸素濃度が10%以下となるようにすることにより、石炭装入直後の急激な燃焼を抑制するようにしている。そのため、炉内圧の上昇は効果的に抑制され、炭化室から燃焼室側へのガスや石炭粉の漏洩が防止される。その結果、燃焼室側に漏れ出したガスや石炭粉の不完全燃焼による黒煙が煙突から吹き出して環境上の問題を生ずるような事態が防止される。
【0025】
【実施例】
次に実施例をあげて本発明をさらに説明する。
【0026】
実施例1〜2、比較例1〜2
図1は、本発明の方法を実施するための試験装置の一例を示した説明図である。(1) は試験炉で、高さが1100mm、有効奥行きが1200mm、巾が400mmのサイズを有する。(2) は石炭装入用のホッパー、(3) は上昇管である。なお、装入口の径は300mm、上昇管(3) の径は150mmである。(4) は炭化室(試験炉)内へ窒素ガスを導入するためのN2 導入管、(5) は炭化室(試験炉)内の圧力を測定するための圧力取り出し配管である。圧力取り出し配管(5) の設置位置は、炉底から420mmの高さとしてある。加熱方式は、コークス炉ガス単焼方式を採用した。
【0027】
上記試験装置を用いて、石炭装入時の炉内の圧力の上昇を確認した。すなわち、温度約1050℃に設定してある試験炉(1) に、ホッパー(2) から水分3%前後、粒度3mm下79.9〜80.7%の石炭をドライベースで約340kg装入して、炉内圧がどのように変化するかを調べた。
【0028】
試験は、下記のように、予めN2 導入管(4) から試験炉(1) 内に窒素ガスを充填して炉内の酸素濃度を 1.5%に低下させてから石炭を装入した場合(実施例1〜2)と、試験炉(1) 内に空気が存在する状態で石炭を装入した場合(比較例1〜2)とについて行った。
・実施例1 装入石炭の水分率 3.1%、炉内N2 充填(酸素濃度 1.5%)
・実施例2 装入石炭の水分率 2.8%、炉内N2 充填(酸素濃度 1.5%)
・比較例1 装入石炭の水分率 3.0%、炉内には空気が存在
・比較例2 装入石炭の水分率 2.9%、炉内には空気が存在
【0029】
石炭装入時の炉内圧の推移の状態を表1および図2に示す。図2の横軸は炉内への石炭装入開始後の経過時間(sec) 、縦軸は炉内圧(mmAq)(大気圧との差圧)である。なお、圧力取り出し配管(5) の高さは炉底から420mmの位置としてあるため、表1および図2には石炭層中に配管(5) が埋没する約15秒後までの圧力推移を示した。
【0030】
【表1】
炉内圧 (mmAq)
装入開始後経過時間 (sec)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
実施例1 1 3 4 6 9 15 20 26 30 34 37 39 41 44 48
実施例2 1 2 3 4 6 9 11 14 19 23 25 27 29 33 38
比較例1 22 55 79 80 83 88 88 87 87 86 81 92 91 80 65
比較例2 1 15 64 66 83 79 79 81 79 79 79 80 78 77 76
【0031】
表1および図2から、実施例1,2にあっては、比較例1,2と対比すると、装入直後から圧力が低く、炉内圧の急激な上昇が抑制されていることがわかる。すなわち、炉内の酸素濃度を低下させることにより、炉内での微粉炭の燃焼が防がれ、炉内圧の上昇が有効に抑制できることが確認された。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、多額の投資や複雑な制御を要することなく、石炭装入中の炉内圧の急激な上昇が効果的に抑制され、黒煙の吹き出しなどの環境上の問題を解消することができる。また炉体に加わる圧力が低減されるので、炉体保護の観点からも好ましいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の方法を実施するための試験装置の一例を示した説明図である。
【図2】 石炭装入時の炉内圧の推移の状態(炉内への石炭装入開始後の経過時間と炉内圧との関係)を示したグラフである。
【符号の説明】
(1) …試験炉、
(2) …ホッパー、
(3) …上昇管、
(4) …N2 導入管、
(5) …圧力取り出し配管
Claims (1)
- 室炉式コークス炉の炭化室に石炭を装入するに際し、その装入前に炭化室内に窒素ガスを導入して炭化室内の酸素濃度が10%以下となるようにすることにより、石炭装入直後の急激な燃焼を抑制するようにしたことを特徴とするコークス炉の炉内圧の上昇抑制方法。
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