JP4553230B2 - 野生動物の生息状況評価方法及び装置並びにプログラム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は野生動物の生息状況評価方法及び装置並びにプログラムに関し、とくに地域の植生図に基づき当該地域における野生動物の生息可能性を評価する方法及び装置並びにプログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
土地の形状の変更や工作物の新設又は増改築等の土木・建築事業を行うにあたり、その事業の実施が環境に及ぼす影響を予め適正に調査・予測及び評価し、その結果に基づき環境保全のための措置を検討し、その措置が講じられた場合における環境への影響を総合的に評価する環境影響評価(以下、環境アセスメントという。)の実施が必要とされる場合がある。とくに最近では、環境アセスメントが環境の保全上極めて重要であることが認識され、一定規模以上の事業では環境アセスメントの実施が義務付けられることがある。
【0003】
他方、最近の環境アセスメントでは、生物多様性条約の批准等に伴い、公害防止や貴重な生物種の保全といった比較的限られた環境要素の評価に限らず、生態系等の幅広い環境要素についての評価が求められる。従来の環境アセスメントにおいて生態系に及ぼす影響を評価する場合は、対象地域の植生、土壌、標高、野生動物の生息状況等の様々な自然環境情報を収集し、これらの情報を生態学の専門家等が経験に基づき総合的に判断して生態系に対する影響を予測・評価する方法が一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、生態系の評価に必要な自然環境情報のうち、とくに野生動物(哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、昆虫等を含む。)の種類や出現位置、出現時期等の生息状況の情報はあまり整備されておらず、環境アセスメントを実施する都度、専門技術者が現地調査を行って情報収集しなければならない場合がほとんどである。しかも野生動物の同定・調査には特別な専門技術が必要であり、一人の技術者が全ての野生動物を同定・調査することは難しいので、野生動物の生息状況を評価するためには哺乳類専門家、鳥類専門家、昆虫専門家等の多くの専門技術者を必要とする問題点があった。
【0005】
また、現地調査は対象地域内を可能な限りくまなく踏査することが求められ、更に季節毎に生息地域を変化させる野生動物等の場合は現地調査が1年以上に及ぶ場合もあるので、評価結果を得るために時間がかかる問題点もあった。環境アセスメントに余り多くの時間がかかると、事業の実施に支障をきたすおそれがある。また多数の専門技術者による長期間の調査が必要となると、環境アセスメントの費用が膨大となる。
【0006】
他方、野生動物の人による野外調査に代えて、野生動物に発信機等を取り付けて生息状況等を調査するラジオテレメトリーと呼ばれる調査方法も開発されている。しかし、ラジオテレメトリーは発信機・受信機等の装置を必要とし、実施に多大なコストがかかるので、一般的には普及していないのが現状である。環境の保全上重要な環境アセスメントの実施を促進するため、簡単に実施でき短時間で結果が得られる環境アセスメントの技術の開発が望まれている。
【0007】
そこで本発明の目的は、野生動物の生息状況を短時間で且つ簡単に評価できる野生動物の生息状況評価方法及び装置並びにプログラムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、野生動物の生息可能な植生についての研究の蓄積に注目した。植生については、従来から環境省の自然環境保全基礎調査等により日本全国の現況植生図が整備されている。また、太陽光の反射や地上からの放射電磁波等を人工衛星上のセンサで受信して画像データとし且つその画像データの処理・解析により地上の資源等を遠隔探査する衛星リモートセンシング技術を用い、比較的精度の高い植生図をリアルタイムで得る技術も開発されている(木平勇吉、西川匡英、田中和博著「森林GIS入門」1998年、日本林業技術協会、p59-62『2.リモートセンシング』)。
【0009】
植生図に基づき野生動物の生息状況を推測することができれば、長期間を要する現地調査をせずとも、野生動物の生息状況の評価を短時間で得ることが期待できる。また、土木工事完了後の複数の緑地整備計画等に対する野生動物の生息状況評価の比較・検討が可能となり、生物多様性等に配慮した緑地整備計画等の立案にも寄与できる。本発明は、この知見に基づく実験により完成に至ったものである。
【0010】
図1の流れ図を参照するに、本発明の野生動物の生息状況評価方法は、対象地域を格子状に分割した各区画に生育する植生の所定植生区分表による区分を求め且つ各区画に該区分と対応する識別子を割り当てて地域植生図Ig(図6参照)を作図し、評価対象野生動物毎に該動物が生息可能な植生の区分と該生息可能植生の群落の広がりの下限値とを記録した動物・植生対応表T(図5参照)を作成し、地域植生図Igから前記識別子に基づき評価対象動物毎に生息可能植生区分の区画のみを抽出して生息評価植生図Ivを作成し、生息評価植生図Ivにおける領域の広がりと前記下限値との比較により前記対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価してなるものである。
【0011】
好ましくは、図1のステップ110及び図2の流れ図に示すように、相互に離れた前記生息可能植生群落間を移動する動物を評価対象とする場合に、動物・植生対応表Tに評価対象動物が移動可能な隣接する生息可能植生群落間の距離の上限値を記録し、生息評価植生図Ivにおける隣接する領域間の距離と前記上限値との比較により前記対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価する。
【0012】
更に好ましくは、図2の流れ図のステップ206〜210に示すように、動物・植生対応表Tに評価対象動物の移動を遮る障壁の区分を記録し、地域植生図Igから評価対象動物毎に生息可能植生区分の区画と障壁区分の区画とを抽出して移動評価植生図Imを作成し、移動評価植生図Imにおける障壁の領域を迂回する前記生息可能植生の隣接領域間の距離と前記上限値との比較により前記対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価する。
【0013】
また図1の流れ図及び図4のブロック図を参照するに、本発明の野生動物の生息状況評価装置5は、対象地域を格子状に分割した各区画に生育する植生の所定植生区分表による区分を求め且つ各区画に該区分と対応する識別子を割り当てて作図した地域植生図Ig(図6参照)、評価対象野生動物毎に該動物が生息可能な植生の区分と該生息可能植生の群落の広がりの下限値とを記録した動物・植生対応表T(図5参照)、地域植生図Igから前記識別子に基づき評価対象動物毎に生息可能植生区分の区画のみを抽出して生息評価植生図Ivを作成する区画抽出手段6、及び生息評価植生図Ivにおける領域の広がりと前記下限値との比較に基づき前記対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価する生息評価手段7を備えてなるものである。
【0014】
好ましくは、相互に離れた前記生息可能植生群落間を移動する動物を評価対象とする場合に、動物・植生対応表Tに評価対象野生動物が移動可能な隣接する生息可能植生群落間の距離の上限値を記録し、生息評価手段7により生息評価植生図Ivにおける隣接する領域間の距離と前記上限値との比較に基づき前記対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価する。
【0015】
【発明の実施の形態】
図4は、コンピュータ1を用いた本発明による野生動物の生息状況評価装置5の一実施例のブロック図を示す。生息状況評価装置5の一例は、例えばコンピュータ1に内蔵のプログラムである区画抽出手段6と生息評価手段7とを有するものである。コンピュータ1の記憶装置4には、図6に示すような野生動物の生息を評価する対象地域の地域植生図Igと、図5に示すような動物・植生対応表Tとを記憶する。区画抽出手段6は、記憶装置4から地域植生図Igと動物・植生対応表Tとを読み込み、動物・植生対応表Tに基づき地域植生図Igから生息評価植生図Iv又は移動評価植生図Imを作成する。生息評価手段7は、生息評価植生図Iv又は移動評価植生図Imに基づき、対象地域における野生動物の生息可能性を評価する。図示例のコンピュータ1には、アナログ植生図をデジタル画像に変換してコンピュータ1に取り込むスキャナー等の画像変換装置8、キーボード、マウス等の入力装置9、及びディスプレイ、プリンタ等の表示装置10が接続されている。
【0016】
図4の生息状況評価装置5を用いた対象地域における野生動物の生息状況評価方法の流れ図の一例を図1に示す。以下、図1の流れ図を参照して本発明を説明する。先ずステップ101において地域植生図Igを作成する。地域植生図Igは、対象地域を格子状に分割して以下に説明する各区画に生育する植生の所定植生区分表による区分を求め、各区画に該区分と対応する識別子を割り当てて作図したものである。例えば自然環境保全基礎調査等に基づき、日本全国の植生群落を766区分の植生区分表により分類して色分けした縮尺5万分の1の現存植生図が整備されている。図4のブロック図では、対象地域の現存植生図を画像変換装置8によりデジタル画像とし、コンピュータ1内蔵のプログラムである地域植生図作成手段2により現存植生図から地域植生図Igを作成して記憶装置4に記憶する。
【0017】
地域植生図作成手段2は、例えば入力した現存植生図を単位大きさ25m×25mの格子状に分割し、各格子区画内で最大面積の色の植生を当該区画の植生として求め、求めた植生区分と対応する色を当該区画の全体に割り当てることにより、図6に示すような地域植生図Igを作成する。但し、格子状に分割した各区画の形状は正方形に限定されず、その大きさも野生動物の生息評価に適する範囲内において任意に選択可能である。図示例では、地域植生図Igの各区画に識別子として色を割当てているが、本発明における識別子は色に限定されず、数字、文字、記号又はこれらを組み合わせたものを各区画に割り当てて識別子としてもよい。
【0018】
また、前記766区分の植生区分表に代えて、野生動物の生息状況の評価に適する適当な植生区分表を用いて地域植生図Igを作成してもよい。例えば、下記表1に示す植生自然度に基づく10区分の植生区分表を用い、現存植生図の各区画に生育する植生が何れの植生自然度による植生区分に属するかを求め、植生自然度による地域植生図Igを作成することができる。植生自然度は植生に加えられた人為的な影響の程度を示す指標であり、自然度が高い群落ほど多様な機能を有し且つ安定しているといわれている。植生自然度による地域植生図Igを用いることにより、植生の安定度を考慮した野生動物の生息状況評価が期待できる。
【0019】
好ましくは、樹高により区分けされた複数の森林区分を植生区分表に含め、樹高により区分けされた地域植生図Igを作成する。野生動物の中には、例えばフクロウのように、樹高が所定高さ以上又は以下の森林のみを隠れ家とし又は狩場とするものが知られている。樹高により区分けされた地域植生図Igを用いれば、このような野生動物の精確な生息状況評価が可能となる。樹高により区分けした地域植生図Igは、例えば森林毎に樹木の高さや直径を管理する森林簿の情報と地域植生図Igの各区画とを対応させ、地域植生図Igの各区画に対応する樹高を求め、植生及び樹高の組み合わせに対応する色を区画毎に割り当てることにより作成することができる。このような森林簿の情報を組み合わせた地域植生図Igの作成には、従来の地理情報システム(Geographical Information System;以下、GISという。)の技術が利用できる。
【0020】
【表1】
【0021】
更に好ましくは、植生区分表に水域の区分を含め、池、溜池、用水路、水田等の水域の区画を含む地域植生図Igを作成する。水域を含む地域植生図Igを用いることにより、後述するショウジョウトンボのように、相互に離れた水域間を移動する動物の生息状況評価が可能となる。
【0022】
また、植生区分表に道路の区分を含めることが望ましい。互いに離れた植生群落間を移動する野生動物にとって、道路は移動の障壁となり得る。地域植生図Igに道路を含めることにより、後述するように、動物の移動障壁を考慮した生息状況の評価が可能となる。道路を含む地域植生図Igも、従来のGIS技術を用いて道路地図情報と地域植生図Igの各区画とを対応させ、地域植生図Igの道路と対応する区画に道路と対応する色等の識別子を割り当てることにより作成できる。道路毎の交通量等の情報を地域植生図Igに含めることも可能である。
【0023】
更に、対象地域の土壌データと組み合わせた地域植生図Igを作成することにより、森の中又は河川沿いの粘土質土壌(水面から高さ1m以上)の壁に巣穴をつくるカワセミ(鳥類)、幼虫が肥沃で空気を多く含む土壌に生息するセミ等の昆虫、産卵期に田んぼの畦のような粘土質の土壌を利用するシュレーゲルアオガエル等の野生動物の生息状況を評価することも可能である。
【0024】
また本発明で用いる地域植生図Igを、前記現存植生図に代えて、衛星リモートセンシングにより作成してもよい。衛星リモートセンシングでは、太陽光反射の波長帯毎の強弱の相違(分光反射特性)により植物、土、水等を区別できる。また、近赤外波長帯で反射率が高く且つ赤色波長帯で反射率が低いという植物の分光反射特定に基づき、下記式(1)に示す正規化植生指数(NDVI、Normalized Difference Vegetation Index)等の植生指数が提案されている。例えばNDVIを指標とする植生区分表により作成した地域植生図Igを用いれば、対象地域の植生をリアルタイムで把握することが可能であり、対象地域のリアルタイムの植生に基づく野生動物の生息状況評価が可能となる。
【0025】
【数1】
【0026】
なお、本発明外の適当な装置で作成した地域植生図Igをコンピュータ1に取り込んで記憶装置4に記憶することができ、この場合は図4の画像変換装置8及び地域植生図作成手段2を必要としない。従って図1のステップ101は本発明に必須のものではない。また、図4に示すように、記憶装置4に複数の地域植生図Igを記憶し、指定に応じて地域植生図Igを選択的に生息状況評価装置5へ読み込ませてもよい。
【0027】
再び図1に戻り、ステップ102において、例えば図4の対応表作成手段3により、動物・植生対応表Tを作成して記憶装置4に記憶する。動物・植生対応表Tの一例を図5に示す。同図に示すように動物・植生対応表Tには、評価対象動物毎に、動物の生息可能植生の植生区分(地域植生図Igと同一の植生区分表により求めた植生区分)と、該生息可能植生群落の面積又は周囲長等の広がりの下限値とを記録又は記入する。また、相互に離れた生息可能植生群落の間を移動する動物を評価対象とする場合は、動物・植生対応表Tに、評価対象動物が移動可能な隣接する生息可能植生群落間の距離の上限値を記録又は記入する。このような野生動物毎の生息可能植生に関する情報は、従来の野生動物の野外調査等により蓄積されたデータを用いることができ、また将来の野外調査等のデータに基づき更新することができる。
【0028】
例えば森林性昆虫は、従来の野外調査により、植生自然度6以上であり且つ外周から30mを除いた内側にインテリアが存在する森林に生息可能であることが知られている。この場合は、例えば図5の動物・植生対応表Tの2行目に示すように、森林性昆虫の生息可能植生区分を植生自然度6〜9、その生息可能植生群落の大きさを半径30mの円形領域が内接する大きさ以上として記録する。
【0029】
またショウジョウトンボの繁殖地域は、従来の野外調査により、ショウジョウトンボの移動可能最大距離である1000m又は1100m以下の範囲内に用水路、溜池、水田等の複数の水域が存在する地域であることが知られている。この場合は、例えば図5の3行目に示すように、ショウジョウトンボの生息可能植生区分を水域、その生息可能植生群落間の距離の上限値を1000m又は1100mとして記録する。ショウジョウトンボの繁殖可能な水域の広がりを問わない場合は、同図に示すように、生息可能植生群落の広がりの下限値を記録する必要はなく、対象地域内の全ての水域を対象とする。繁殖可能な水域の広がりを考慮する場合は、動物・植生対応表Tに生息可能植生群落の広がりの下限値を記録する。
【0030】
好ましくは動物・植生対応表Tに、対象地域に生息する可能性がある野生動物の全てについて、生息可能植生の植生区分、生息可能植生群落の広がりの下限値及び/又は隣接する生息可能植生群落間の距離の上限値を記録する。また、季節毎に生息地域を変化させる野生動物については、季節毎の生息可能植生の植生区分等を動物・植生対応表Tに記録しておき、季節毎の地域植生図Igに基づき評価対象動物の季節毎の生息状況を評価することができる。
【0031】
ステップ103〜109は、生息状況評価装置5における処理の流れを示す。先ずステップ103において、記憶装置4に記憶した地域植生図Igを生息状況評価装置5の区画抽出手段6に読み込む。またステップ104において、動物・植生対応表Tに記録した野生動物のうち評価対象とする動物を指定する。区画抽出手段6は動物・植生対応表Tの指定された動物欄を参照し、指定動物について離れた植生群落間の移動を考慮する必要があるか否かを判断する(ステップ105)。例えば、指定された動物欄に生息可能植生群落間の距離の上限値、又は後述する最小生息可能面積が記録されていない場合は、植生群落間の移動を考慮しない動物であると判断する。
【0032】
例えば森林性昆虫のように植生群落間の移動を考慮しない動物の場合はステップ106へ進み、ステップ106において区画抽出手段6により、地域植生図Igから指定動物の生息可能植生区分の区画のみを抽出して生息評価植生図Ivを作成する。
森林性昆虫の場合は、地域植生図Igから植生自然度が6〜9の区画のみを抽出して生息評価植生図Ivとする。作成した生息評価植生図Ivを生息評価手段7へ入力する。
【0033】
生息評価手段7は、ステップ107において、生息評価植生図Ivの領域の広がりと動物・植生対応表Tに記録された生息可能植生群落の広がりの下限値とを比較し、対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価する。森林性昆虫の場合は、生息評価植生図Ivの領域毎に半径30mの円形領域が内接する大きさ以上であるか否かを判断し、前記円形領域が内接する大きさ以上の領域が存在するときは対象地域に森林性昆虫の生息可能性ありと判断し、前記大きさ以上の領域が存在しない場合は森林性昆虫の生息可能性なしと判断する。本発明者は、従来の野外調査により森林性昆虫の生息が確認されている地域及び生息が確認されていない地域の各々について、図5に示す森林性昆虫の動物・植生対応表Tと図1の流れ図とに従って森林性昆虫の生息可能性を判断した結果、従来の野外調査と同様の評価結果が得られることを確認できた。生息評価手段7による評価結果は、例えば図4に示す表示装置10に生息評価植生図Ivと共に表示することができる。なお、前記生息可能植生群落の広がりの下限値については、将来新しい知見により変更することができる。
【0034】
また、ショウジョウトンボのように植生群落間の移動を考慮する必要がある場合は、ステップ105からステップ110へ進み、ステップ110において生息可能性を評価する。離れた生息可能植生群落間を移動する野生動物の生息可能性の評価方法(ステップ110における評価方法)の流れ図の一例を図2に示す。図2のステップ201では、図1のステップ106と同様に、区画抽出手段6により地域植生図Igから指定動物の生息可能植生区分の区画のみを抽出して生息評価植生図Ivを作成する。ショウジョウトンボの場合は、地域植生図Igから用水路、溜池、水田等の水域の区画を抽出して生息評価植生図Ivを作成する。
【0035】
更にステップ202において、動物・植生対応表Tに生息可能植生群落の広がりの下限値が記録されているか否かを判断し、下限値が記録されている場合は前記生息評価植生図Ivから前記下限値以上の広がりの領域のみを抽出して生息評価植生図Ivとする(ステップ203)。ショウジョウトンボのように生息可能な水域の広がりを問わない場合は、ステップ203を回避してステップ204以降へ進み、評価対象動物の移動を遮る障壁を考慮する必要があるか否かを判断する。障壁を考慮する場合の処理(ステップ206〜210)については後述する。ショウジョウトンボの場合は障壁を考慮する必要がないので、ステップ204からステップ205へ進む。
【0036】
ステップ205では、生息評価手段7により、生息評価植生図Ivにおける隣接する領域間の距離と動物・植生対応表Tに記録された植生群落間の距離の上限値とを比較し、対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価する。ショウジョウトンボの場合は、生息評価植生図Ivの隣接する領域間の距離が上限値1000m又は1100m以下であるか否かを判断し、前記上限値以下で隣接する領域が存在するときは対象地域にショウジョウトンボの生息可能性ありと判断し、前記上限値以下で隣接する領域が存在しない場合はショウジョウトンボの生息可能性なしと判断する。本発明者は、従来の野外調査によりショウジョウトンボの生息が確認されている地域及び生息が確認されていない地域の各々について、図5に示すショウジョウトンボの動物・植生対応表Tと図1及び2の流れ図に従ってショウジョウトンボの生息可能性を判断した結果、従来の野外調査と同様の評価結果が得られることを確認できた。図2のステップ205が終了したのち、図1のステップ108へ復帰する。なお、前記植生群落間の距離の上限値についても、将来新しい知見により変更することができる。
【0037】
図1のステップ108で他の動物の生息状況を評価するか否かを判断し、他の動物の生息状況を評価する場合はステップ104へ戻り、上記ステップ104〜107又はステップ110を繰り返す。この繰り返しにより、動物・植生対応表Tが記録されていることを条件として、対象地域に生息する可能性がある野生動物の全てについて生息状況を評価することができる。また、ステップ109において他の地域についての生息状況を評価するか否かを判断し、他の地域における生息状況を判断する場合はステップ103へ戻り、上記ステップ103〜107又はステップ110を繰り返す。この繰り返しにより、例えば対象地域を土木又は建築工事対象地域とした場合、工事前の地域植生図Igと工事完了後の植生を予測して作図した予測植生図Igとの双方について野生動物の生息状況の評価結果を比較することが可能となり、土木・建築工事の実施が環境に及ぼす影響を予測できる。また、複数の緑地整備計画に対する野生動物の生息状況評価の比較・検討が可能となり、生物多様性等に配慮した緑地整備計画の立案に寄与できる。
【0038】
本発明は、対象地域の植生図に基づき対象地域における野生動物の生息状況を評価するので、専門技術者による長期に亘る現地調査を必要としない。従って、対象地域における評価結果を短時間で得ることができ、環境アセスメントの迅速化を図ることができる。また、対象地域の植生図をコンピュータに読み込んで処理することができるので、専門技術者でなくとも簡単に対象地域の野生動物の生息状況について一定の評価をすることができる。更に、衛星リモートセンシングにより作成した植生図等を用いることにより、対象地域のリアルタイムの植生に基づく野生動物の生息状況評価も可能である。
【0039】
こうして、本発明の目的である「野生動物の生息状況を短時間で且つ簡単に評価できる野生動物の生息状況評価方法及び装置並びにプログラム」の提供を達成できる。
【0040】
【実施例】
図5の動物・植生対応表Tの4行目は、モリアオガエルの生息可能植生を示す。従来の野外調査により、モリアオガエルの繁殖地域は、モリアオガエルの移動可能最大距離である80m以下の範囲内に繁殖期に利用する水田、溜池等の水域と内規模1ha以上の森林地とが存在する地域であることが知られている。但し、水域と森林地との間に幅48m以上の草本群落又は幅7.5m以上の道路が存在する場合は、モリアオガエルの移動が遮られるので繁殖地域とはならない。図5の動物・植生対応表Tでは、モリアオガエルの生息可能植生区分を水域及び森林地とし、森林地の広がりの下限値を1haとし、水域と森林間の距離の上限値を80mとして記録している。また、モリアオガエルの移動を遮る障壁を、幅48m以上の草本群落又は幅7.5m以上の道路として記録している。
【0041】
モリアオガエルの生息状況を評価する場合は道路を含む地域植生図Igを用いる。図2の流れ図を参照するに、ステップ201において道路を含む地域植生図Igからモリアオガエルの生息可能植生区分である水域と森林地の区画を抽出し、更にステップ202〜203において、抽出された森林地の領域のうち面積が1ha以上のものと全ての水域の領域を抽出することにより生息評価植生図Ivを作成する。
【0042】
モリアオガエルの場合は障壁が存在するのでステップ204からステップ206へ進み、障壁図Ioを作成する。障壁図Ioは、区画抽出手段6により地域植生図Igから障壁である草本群落と道路の区画を抽出し(ステップ206)、更に抽出された草本群落の領域のうち幅48m以上のものと、道路の領域のうち幅7.5m以上のものを抽出することにより作成する(ステップ207〜208)。ステップ209において、生息評価手段7により、生息評価植生図Ivと障壁図Ioとを重畳することにより移動評価植生図Imを作成する。
【0043】
生息評価手段7は、ステップ210において、障壁の領域を迂回する生息可能植生の隣接領域間の距離が、動物・植生対応表Tに記録された生息可能植生群落間の上限値より小さいか否かにより生息可能性を評価する。モリアオガエルの場合は、移動評価植生図Imにおいて、草本群落又は道路の領域を迂回する水域領域と森林地領域との間の隣接距離が80m以下である場合に生息可能性ありと判断し、前記迂回する隣接距離が80mより大きい場合、例えば水域領域と森林地領域との間に道路が横切っている場合は生息可能性なしと判断する。
【0044】
なお、図2の流れ図では、生息評価植生図Ivと障壁図Ioとの重畳により移動評価植生図Imを作成しているが、移動評価植生図Imの作成方法は図示例に限定されない。例えば、地域植生図Igから評価対象動物の生息可能植生区分の区画(モリアオガエルの場合は水域及び森林地の区画)と障壁区分の区画(モリアオガエルの場合は幅48m以上の草本群落及び幅7.5m以上の道路)を抽出して移動評価植生図Imを作成してもよい。
【0045】
図3は、離れた生息可能植生群落間を移動する野生動物の生息可能性の評価方法(ステップ110における評価方法)の他の例を示す。同図の流れ図では、隣接する生息可能植生群落間の距離に基づく生息可能性の評価に代えて、対象地域における対象動物の最小生息可能面積と該生息可能面積中の生息可能植生群落の最小占有率とに基づき生息可能性を評価する。例えば従来の野外調査によりフクロウの最小生息可能面積は1km×1km程度であり、その面積中に隠れ家となる樹高15m以上の森林地が20%以上、狩場となる樹高10m以上の森林地(樹高15m以上の森林地を含む)が45%以上、更に狩場となる草地・畑地が25%以上含まれる地域であることが知られている。但し、例えば2車線以上の道路のように夜間の交通量が多い道路が前記最小生息可能面積内に存在する場合は繁殖地域とはならない。
【0046】
図5の5行目は、フクロウの生息可能植生区分を樹高15m以上の森林地、樹高10m以上の森林地、及び草地・畑地とし、最小生息可能面積を1km×1kmとし、樹高15m以上の森林地の最小占有率を20%、樹高10m以上の森林地の最小占有率を45%、草地・畑地の最小占有率を25%としたフクロウの動物・植生対応表Tを示す。また、夜間交通量の多い道路を障壁の広がりの下限値として記録している。
【0047】
フクロウの生息状況を評価する場合は、道路を含み且つ樹高により区分けされた地域植生図Igを用いる。図3の流れ図を参照するに、ステップ301において区画抽出手段6により、地域植生図Igから樹高15m以上の森林地の区画と、樹高10m以上の森林地の区画と、草地・畑地の区画を抽出して生息評価植生図Ivを作成する。動物・植生対応表Tに生息可能植生群落の広がりの下限値の指定がある場合は、ステップ302〜303において、更に下限値以上の広がりの領域を抽出することにより生息評価植生図Ivとしてもよい。
【0048】
ステップ304において障壁を考慮する必要があるか否かを判断し、障壁を考慮する必要がない場合はステップ305へ進み、地域植生図Ig中に前記最小生息可能面積及び最小占有率を満足する部分が存在するか否かにより評価対象動物の生息可能性を評価する。即ち、地域植生図Ig中に、樹高15m以上の森林地の領域を20%以上、樹高10m以上の森林地の領域を45%以上、草地・畑地の領域を25%以上含み且つ面積1km×1kmの部分が存在する場合はフクロウの生息可能性ありと判断し、そのような部分が存在しない場合はフクロウの生息可能性なしと判断する。
【0049】
障壁を考慮する場合はステップ304からステップ306へ進み、障壁図Ioを作成する。フクロウの障壁図Ioは、地域植生図Igから夜間交通量の多い道路の区画を抽出することにより作成する。動物・植生対応表Tに道路の幅の下限値の指定がある場合は、ステップ307〜308において、更に下限値以上の幅の道路の領域を抽出して障壁図Ioとすることができる。ステップ309において、生息評価手段7により、生息評価植生図Ivと障壁図Ioとを重畳することにより移動評価植生図Imを作成する。
【0050】
生息評価手段7は、ステップ310において、移動評価植生図Im中に、前記最小生息可能面積及び最小占有率を満足し且つ障壁の領域と重ならない部分が存在するか否かにより評価対象動物の生息可能性を評価する。フクロウの場合は、移動評価植生図Im中に、樹高15m以上の森林地の領域を20%以上、樹高10m以上の森林地の領域を45%以上、草地・畑地の領域を25%以上含み且つ夜間交通量の多い道路の領域と重ならない面積1km×1kmの部分が存在する場合は生息可能性ありと判断し、そのような部分が存在しない場合は生息可能性なしと判断する。なお、前記最小生息可能面積、最小占有率、及び障壁の広がりの下限値についても、将来新しい知見により変更することができる。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の野生動物の生息状況評価方法及び装置並びにプログラムは、対象地域の植生図と評価対象野生動物毎に該動物が生息可能な植生の植生区分等を記録した動物・植生対応表とに基づき、対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価するので、次の顕著な効果を奏する。
【0052】
(イ)専門技術者による長期に亘る現地調査を必要としないので、対象地域における野生動物の生息状況の評価結果を短時間で得ることができる。
(ロ)専門技術者による現地調査を必要とせず、また短時間で評価結果が得られるので、環境アセスメントのコスト低減を図れる。
(ハ)季節毎の生息可能植生を動物・植生対応表に記録し、季節毎の地域植生図を用いることにより、評価対象動物の季節毎の生息状況を評価することができる。
(ニ)離れた生息可能植生群落間を移動する野生動物の生息状況も評価することが可能である。
(ホ)野生動物の移動を妨げる道路等の障壁の存在を考慮した生息状況の評価が可能である。
(ヘ)専門技術者でなくとも対象地域の野生動物の生息状況を簡単に評価することができ、環境アセスメントの容易化を図ることができる。
(ト)複数の緑地整備計画等に対する野生動物の生息状況評価の比較・検討が可能となり、生物多様性等に配慮した緑地整備計画・環境保全対策等の立案に寄与できる。
(チ)衛星リモートセンシングにより作成した地域植生図を用いることにより、対象地域のリアルタイムの野生動物生息状況を評価することができる。
(リ)最新の現地調査の結果に応じて動物・植生対応表を更新することにより、野生動物の生息状況評価の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明方法を示す流れ図の一例である。
【図2】は、離れた生息可能植生群落間を移動する野生動物の生息状況評価方法を示す流れ図の一例である。
【図3】は、離れた生息可能植生群落間を移動する野生動物の生息状況評価方法を示す流れ図の他の一例である。
【図4】は、本発明の生息状況評価装置の一例のブロック図である。
【図5】は、動物・植生対応表の一例の説明図である。
【図6】は、地域植生図の一例の説明図である。
【符号の説明】
1…コンピュータ 2…地域植生図作成手段
3…対応表作成手段 4…記憶装置
5…生息状況評価装置 6…区画抽出手段
7…生息評価手段 8…画像変換装置
9…入力装置 10…表示装置
Ig…地域植生図 T…動物・植生対応表
Iv…生息評価植生図 Im…移動評価植生図
Io…障壁図
Claims (22)
- 対象地域を格子状に分割した各区画に生育する植生の所定植生区分表による区分を求め且つ各区画に該区分と対応する識別子を割り当てて地域植生図を作図し、評価対象野生動物毎に該動物が生息可能な植生の区分と該生息可能植生の群落の広がりの下限値とを記録した動物・植生対応表を作成し、前記地域植生図から前記識別子に基づき評価対象動物毎に生息可能植生区分の区画のみを抽出して生息評価植生図を作成し、前記生息評価植生図における領域の広がりと前記下限値との比較により前記対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価してなる野生動物の生息状況評価方法。
- 請求項1の評価方法において、前記植生の群落の広がりを該植生の面積又は周囲長としてなる野生動物の生息状況評価方法。
- 請求項1又は2の評価方法において、相互に離れた前記生息可能植生群落間を移動する動物を評価対象とする場合に、前記動物・植生対応表に評価対象動物が移動可能な隣接する生息可能植生群落間の距離の上限値を記録し、前記生息評価植生図における隣接する領域間の距離と前記上限値との比較により前記対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価してなる野生動物の生息状況評価方法。
- 請求項3の評価方法において、前記動物・植生対応表に評価対象動物の移動を遮る障壁の区分を記録し、前記地域植生図から評価対象動物毎に生息可能植生区分の区画と障壁区分の区画とを抽出して移動評価植生図を作成し、前記移動評価植生図における前記障壁の領域を迂回する前記生息可能植生の隣接領域間の距離と前記上限値との比較により前記対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価してなる野生動物の生息状況評価方法。
- 請求項1又は2の評価方法において、相互に離れた前記生息可能植生群落間を移動する動物を評価対象とする場合に、前記動物・植生対応表に評価対象動物の最小生息可能面積と該生息可能面積中の生息可能植生群落の最小占有率とを記録し、前記生息評価植生図における前記最小生息可能面積及び最小占有率を満足する部分の有無により前記対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価してなる野生動物の生息状況評価方法。
- 請求項5の評価方法において、前記動物・植生対応表に評価対象動物の移動を遮る障壁の区分を記録し、前記地域植生図から評価対象動物毎に生息可能植生区分の区画と障壁区分の区画とを抽出して移動評価植生図を作成し、前記移動評価植生図における前記最小生息可能面積及び最小占有率を満足し且つ前記障壁の領域と重ならない部分の有無により前記対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価してなる野生動物の生息状況評価方法。
- 請求項4又は6の評価方法において、前記所定植生区分表に道路の区分を含め、前記障壁に道路を含めてなる野生動物の生息状況評価方法。
- 請求項3から7の何れかの評価方法において、前記所定植生区分表に水域の区分を含め、相互に離れた水域間を移動する動物を評価対象としてなる野生動物の生息状況評価方法。
- 請求項1から8の何れかの評価方法において、前記所定植生区分表に樹高により区分けした複数の森林区分を含め、所定樹高の森林を生息可能植生群落とする動物を評価対象としてなる野生動物の生息状況評価方法。
- 請求項1から9の何れかの評価方法において、前記対象地域を土木又は建築工事対象地域とし、前記地域植生図を工事完了後の対象地域の植生を予測して作図した予測植生図としてなる野生動物の生息状況評価方法。
- 対象地域を格子状に分割した各区画に生育する植生の所定植生区分表による区分を求め且つ各区画に該区分と対応する識別子を割り当てて作図した地域植生図、評価対象野生動物毎に該動物が生息可能な植生の区分と該生息可能植生の群落の広がりの下限値とを記録した動物・植生対応表、前記地域植生図から前記識別子に基づき評価対象動物毎に生息可能植生区分の区画のみを抽出して生息評価植生図を作成する区画抽出手段、及び前記生息評価植生図における領域の広がりと前記下限値との比較に基づき前記対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価する生息評価手段を備えてなる野生動物の生息状況評価装置。
- 請求項11の評価装置において、相互に離れた前記生息可能植生群落間を移動する動物を評価対象とする場合に、前記動物・植生対応表に評価対象野生動物が移動可能な隣接する生息可能植生群落間の距離の上限値を記録し、前記生息評価手段により前記生息評価植生図における隣接する領域間の距離と前記上限値との比較に基づき前記対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価してなる野生動物の生息状況評価装置。
- 請求項12の評価装置において、前記動物・植生対応表に評価対象動物の移動を遮る障壁の区分を記録し、前記区画抽出手段により前記地域植生図から評価対象動物毎に生息可能植生区分の区画と障壁区分の区画とを抽出して移動評価植生図を作成し、前記生息評価手段により前記移動評価植生図における前記障壁の領域を迂回する前記生息可能植生の隣接領域間の距離と前記上限値との比較に基づき前記対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価してなる野生動物の生息状況評価装置。
- 請求項11の評価装置において、相互に離れた前記生息可能植生群落間を移動する動物を評価対象とする場合に、前記動物・植生対応表に評価対象動物の最小生息可能面積と該生息可能面積中の生息可能植生群落の最小占有率とを記録し、前記生息評価手段により前記生息評価植生図における前記最小生息可能面積及び最小占有率を満足する部分の有無に基づき前記対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価してなる野生動物の生息状況評価装置。
- 請求項14の評価装置において、前記動物・植生対応表に評価対象動物の移動を遮る障壁の区分を記録し、前記生息評価手段により前記地域植生図から評価対象動物毎に生息可能植生区分の区画と障壁区分の区画とを抽出して移動評価植生図を作成し、前記生息評価手段により前記移動評価植生図における前記最小生息可能面積及び最小占有率を満足し且つ前記障壁の領域と重ならない部分の有無に基づき前記対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価してなる野生動物の生息状況評価装置。
- 請求項12から15の何れかの評価装置において、前記所定植生区分表に水域の区分及び/又は道路の区分を含めてなる野生動物の生息状況評価装置。
- 対象地域における野生動物の生息可能性を評価するためにコンピュータを、対象地域を格子状に分割した各区画に生育する植生の所定植生区分表による区分を求め且つ各区画に該区分と対応する識別子を割り当てて作図した地域植生図を記憶する記憶手段、評価対象野生動物毎に該動物が生息可能な植生の区分と該生息可能植生の群落の広がりの下限値とを記録した動物・植生対応表を作成する作成手段、前記地域植生図から前記識別子に基づき評価対象動物毎に生息可能植生区分の区画のみを抽出して生息評価植生図を作成する区画抽出手段、及び前記生息評価植生図における領域の広がりと前記下限値との比較に基づき前記対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価する生息評価手段として機能させる野生動物の生息状況評価プログラム。
- 請求項17のプログラムにおいて、相互に離れた前記生息可能植生群落間を移動する動物を評価対象とする場合に、前記作成手段により前記動物・植生対応表に評価対象動物が移動可能な隣接する生息可能植生群落間の距離の上限値を記録し、前記生息評価手段により前記生息評価植生図における隣接する領域間の距離と前記上限値との比較に基づき前記対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価してなる野生動物の生息状況評価プログラム。
- 請求項18のプログラムにおいて、前記作成手段により前記動物・植生対応表に評価対象動物の移動を遮る障壁の区分を記録し、前記区画抽出手段により前記地域植生図から評価対象動物毎に生息可能植生区分の区画と障壁区分の区画とを抽出して移動評価植生図を作成し、前記生息評価手段により前記移動評価植生図における前記障壁の領域を迂回する前記生息可能植生の隣接領域間の距離と前記上限値との比較に基づき前記対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価してなる野生動物の生息状況評価プログラム。
- 請求項17のプログラムにおいて、相互に離れた前記生息可能植生群落間を移動する動物を評価対象とする場合に、前記作成手段により前記動物・植生対応表に評価対象動物の最小生息可能面積と該生息可能面積中の生息可能植生群落の最小占有率とを記録し、前記生息評価手段により前記生息評価植生図における前記最小生息可能面積及び最小占有率を満足する部分の有無に基づき前記対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価してなる野生動物の生息状況評価プログラム。
- 請求項20のプログラムにおいて、前記作成手段により前記動物・植生対応表に評価対象動物の移動を遮る障壁の区分を記録し、前記区画抽出手段により前記地域植生図から評価対象動物毎に生息可能植生区分の区画と障壁区分の区画とを抽出して移動評価植生図を作成し、前記生息評価手段により前記移動評価植生図における前記最小生息可能面積及び最小占有率を満足し且つ前記障壁の領域と重ならない部分の有無に基づき前記対象地域における評価対象動物の生息可能性を評価してなる野生動物の生息状況評価プログラム。
- 請求項18から21の何れかのプログラムにおいて、前記所定植生区分表に水域の区分及び/又は道路の区分を含めてなる野生動物の生息状況評価プログラム。
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