図16のようなフロアリッドを備えた車両の荷室構造では、後席のシートバックが起立姿勢でフロアリッドが立設状態のときに、例えば、長尺の荷物を荷室に搭載するために、後席のシートバックを起立姿勢から前方へ倒伏させた倒伏姿勢に切換えると共に、フロアリッドを立設状態から床面形成状態に切換えて、荷室を拡張したい場合、シートバックの倒伏姿勢への切換え操作と、フロアリッドの床面形成状態への切換え操作とを夫々独立に行う必要があるため、これらの操作が非常に煩わしいという問題がある。
また、図16のようなフロアリッドを備えた車両の荷室構造において、立設状態のフロアリッドは起立姿勢のシートバックの後側に近接状に位置し、フロアリッドを立設させた状態で、後部荷室の前後長を長くして後部荷室を十分に広くした場合には、後部荷室の荷物の出し入れを行う開口から立設状態のフロアリッドまでの距離が長くなる。従って、乗員等が後部荷室の開口から、起立姿勢のシートバックの倒伏姿勢への切換え操作、立設状態のフロアリッドの床面形成状態への切換え操作を行うために、荷室内に身を大きく乗り出す必要が生じて、これらの操作が非常に煩雑にまた困難になり、使い勝手が悪くなる。
特許文献1の車両用荷室構造では、少なくとも蓋部材がフロアリッドに相当するが、そのフロアリッドを床面形成状態と立設状態とに切換え可能にする構造が複雑である。また、フロアリッドを立設状態に保持することについては開示されておらず、もしフロアリッドを立設状態に保持できなければ、使い勝手が非常に悪くなる。フロアリッドを立設状態に保持可能であるとしても、その保持と保持解除を可能にする構造が複雑になる虞があるし、シートバックの倒伏姿勢への切換え操作と、フロアリッドの床面形成状態への切換え操作とを夫々独立に行う必要があり、上記と同様の課題が生じる。
本発明の目的は、シートバックが起立姿勢でフロアリッドが立設状態のときに、乗員等がシートバックの倒伏姿勢への切換え操作を行うだけで、フロアリッドを床面形成状態に切換えることができて、フロアリッドを立設状態から床面形成状態に切換える際の操作性が向上し、使い勝手、利便性が良い、車両の荷室構造を提供することである。
請求項1の車両の荷室構造は、シートバックが起立姿勢と前方へ倒伏させた倒伏姿勢とに亙ってヒンジ部を中心として揺動可能に構成された後席を搭載した車両の荷室構造において、前記後席の後側の後部荷室に設置され、後部荷室の床面の少なくとも一部を形成する床面形成状態と、この床面形成状態における前端部を下端部とする立設状態とに選択的に切換え可能なボード状のフロアリッドと、前記床面形成状態のフロアリッドにより上面側が覆われると共にフロアリッドが立設状態のときに露出して後部荷室の床面の少なくとも一部を形成する下床部と、前記シートバックが起立姿勢から倒伏姿勢に揺動する動作に連動させて、前記立設状態のフロアリッドを床面形成状態に変更する状態変更手段とを備えたことを特徴とする。
この車両には後席が搭載され、この後席のシートバックが起立姿勢と前方へ倒伏させた倒伏姿勢とに亙ってヒンジ部を中心として揺動可能になっている。この車両の荷室構造では、後席の後側の後部荷室にボード状のフロアリッドが設置され、このフロアリッドが床面形成状態と立設状態とに選択的に切換えられる。フロアリッドが床面形成状態のとき、このフロアリッドにより、後部荷室の下床部の上面側が覆われ、後部荷室の床面の少なくとも一部が形成され、このフロアリッド上に荷物を載置可能になる。
フロアリッドは、床面形成状態における前端部を下端部として立設状態となり、フロアリッドが立設状態のとき、後部荷室の下床部の上面側が開放して下床部が露出し、この下床部上に荷物を載置可能になる。さて、後席のシートバックが起立姿勢でフロアリッドが立設状態のときに、乗員等がシートバックの倒伏状態への切換え操作を行うことにより、シートバックが起立姿勢から倒伏姿勢に揺動すると、状態変更手段により、その揺動動作に連動して立設状態のフロアリッドが床面形成状態に変更される。
ここで、シートバックの倒伏姿勢における上面と、フロアリッドの床面形成状態における上面とが略同じ高さになるように構成することが好ましい。これにより、シートバックが倒伏姿勢でフロアリッドが床面形成状態のときに、荷室が拡張されると共に後部荷室とシートバックとに亙って略フラットな荷物載置面が形成され、例えば、荷室に長尺の荷物を積み込み易くなり、このような荷室状態への切換えを、シートバックが起立姿勢でフロアリッドが立設状態のときに、シートバックの倒伏姿勢への切換え操作を行うだけで容易に行うことが可能になる。
ここで、請求項1の発明に次の構成を採用することができる。
前記フロアリッドの床面形成状態における上面に植毛を設け、前記下床部を硬質の床面に形成する(請求項2)。前記フロアリッドの床面形成状態における前端部の近傍のフロア部分に、このフロアリッドの前端部を挿入可能な車幅方向に細長く延び且つフロアリッドを後傾状に立設状態に保持する凹部を形成し、前記状態変更手段は、前記凹部に挿入されたフロアリッドの下端部を押上げることで、フロアリッドを床面形成状態に変更させる(請求項3)。
前記起立姿勢のシートバックの後側に前記立設状態のフロアリッドが近接状に位置すると共に、前記状態変更手段は、シートバックの基端部に設けられ、前記起立姿勢のシートバックが倒伏姿勢に揺動する際に、前記立設状態のフロアリッドの下端部を押上げる腕部を有する(請求項4)。前記車両の車室内の所定部位に設けられた操作部と、この操作部を操作することにより状態変更手段によるフロアリッドの立設状態から床面形成状態への変更を禁止する状態変更禁止手段を設ける(請求項5)。
前記腕部はシートバックに対して固定解除可能に固定された押動レバー部を有し、前記状態変更禁止手段は、前記押動レバー部のシートバックに対する固定を解除する(請求項6)。前記車両の車室内又は車室外で操作可能な倒伏操作部を有し、この倒伏操作部を操作することにより後席のシートバックを起立姿勢から前傾姿勢に切換えるシートアレンジ機構を備える(請求項7)。
請求項1の車両の荷室構造によれば、特に、後席のシートバックが起立姿勢から倒伏姿勢に揺動する動作に連動させて、立設状態のフロアリッドを床面形成状態に変更する状態変更手段を設けたので、シートバックが起立姿勢でフロアリッドが立設状態のときに、乗員等がシートバックの倒伏姿勢への切換え操作を行うだけで、フロアリッドを床面形成状態に切換えることができる。つまり、フロアリッドを立設状態から床面形成状態に切換える際の操作性が向上し、シートバックが起立姿勢でフロアリッドが立設状態から、シートバックが倒伏姿勢でフロアリッドが床面形成状態となるように、煩雑な操作を行うことなく迅速に切換えることが可能になる。
請求項2の車両の荷室構造によれば、フロアリッドの床面形成状態における上面に植毛を設け、下床部を硬質の床面に形成したので、フロアリッドを床面形成状態にすると、その植毛により荷物に対するクッション性と見栄えが良くなり、フロアリッドを立設状態にすると、その植毛に荷物から汚れが付くことを気にすることなく、下床部の床面に荷物を載置することができ、下床部に汚れが付いてもそれを容易に払拭できる。
請求項3の車両の荷室構造によれば、フロアリッドの床面形成状態における前端部の近傍のフロア部分に、このフロアリッドの前端部を挿入可能な車幅方向に細長く延び且つフロアリッドを後傾状に立設状態に保持する凹部を形成し、状態変更手段は、凹部に挿入されたフロアリッドの下端部を押上げることで、フロアリッドを床面形成状態に変更させるので、フロアリッドを後席に対して自立させて立設状態に保持でき、それをフロア部分に車幅方向に細長く延びる凹部を形成して達成できるので、その保持構造を簡単化でき、フロアリッドを立設状態から確実に解放して床面形成状態に変更することができる。
請求項4の車両の荷室構造によれば、起立姿勢のシートバックの後側に立設状態のフロアリッドが近接状に位置すると共に、状態変更手段は、シートバックの基端部に設けられ、起立姿勢のシートバックが倒伏姿勢に揺動する際に、立設状態のフロアリッドの下端部を押上げる腕部を有するので、シートバックを起立姿勢から倒伏姿勢に切換えることにより、フロアリッドを立設状態から確実に解放して床面形成状態に変更することができ、それをシートバックの基端部に腕部を設けて達成できるので、状態変更手段を簡単化できる。特に、後部荷室の前後長を長くした場合、後部荷室の開口から立設状態のフロアリッドまでの距離も長くなるため、従来では、後部荷室の開口から立設状態のフロアリッドの倒伏姿勢への操作が非常に困難であるが、これを回避することができる。
請求項5の車両の荷室構造によれば、車両の車室内の所定部位に設けられた操作部と、この操作部を操作することにより状態変更手段によるフロアリッドの立設状態から床面形成状態への変更を禁止する状態変更禁止手段を設けたので、後席のシートバックが起立姿勢でフロアリッドが立設状態のときに、シートバックを倒伏姿勢に切換えても、フロアリッドを立設状態に維持できるため、利便性が向上し、前記所定部位を後部荷室の開口付近とすることで、使い勝手を良くすることができる。
請求項6の車両の荷室構造によれば、腕部はシートバックに対して固定解除可能に固定された押動レバー部を有し、状態変更禁止手段は、押動レバー部のシートバックに対する固定を解除するので、状態変更禁止手段が機能する状態と機能しない状態とに簡単に確実に切換えることが可能になる。
請求項7の車両の荷室構造によれば、車両の車室内又は車室外で操作可能な倒伏操作部を有し、この倒伏操作部を操作することにより後席のシートバックを起立姿勢から前傾姿勢に切換えるシートアレンジ機構を備えたので、荷室構造を含む後席のシートアレンジの操作性が向上する。
図1〜図8に示すように、自動車等の車両1には、その乗員室2に後席3(2列目シートや3列目シート)が搭載され、この後席3の後側に後部荷室4が設けられている。後席3は左右のシート部を一体化したベンチシートに構成され、その後席3はシートクッション3aとシートバック3bと左右1対のヘッドレスト3cとを有する。シートクッション3aの後端部にリクライニング機構5を介してシートバック3cの基端部が支持され、シートクッション3a及びシートクッション3bが左右1対のリンク機構6を介して乗員室2のフロア部2aに支持されている。
図5〜図8に示すように、リクライニング機構5は、左右1対のブラケット5aと、これらブラケット5aに両端部が支持されたヒンジ部に相当する車幅方向向きの支軸5bとを有し、シートバック3bは、起立姿勢(図1、図2、図5、図6参照)と前方へ倒伏させた倒伏姿勢(図3、図4、図7、図8参照)とに亙って支軸5bを中心として揺動(回動)可能に、支軸5bを介してシートバック3bに支持されている。尚、シートバック3bは起立姿勢のときに僅かに後傾状になる。
また、リクライニング機構5は、ブラケット5aと支軸5bの付近に設けられ、支軸5bを中心にシートバック3bを倒伏姿勢側(図5〜図8にて反時計回り方向)へ回動付勢する比較的強力なゼンマイバネ5cと、シートバック3bをシートクッション3aに対してロックするロック機構5dとを有する。ロック機構5dは、ラチェット等の被係止部(図示略)と被係止部に係脱可能な係合爪等の係止部(図示略)からなり、シートバック3bが起立姿勢のときにのみ機能して、シートバック3bを起立姿勢に保持する。
後部荷室4の荷室開口4cの近くの側面部4bに倒伏操作部7(図1参照) が設けられている。倒伏操作部7はロック機構5d(係止部)にプッシュプルワイヤ8を介して連結され、シートバック3bがロック機構5dにより起立姿勢に保持されている状態で、乗員等が倒伏操作部7を操作すると、ロック機構5dによるロックが解除されて、シートバック3bがゼンマイバネ5cの付勢力により起立姿勢から倒伏姿勢に切換えられる。
倒伏操作部7については、後部荷室4の荷室開口4cの近くにおいて、側面部4b以外の部位に設けてもよい。また、乗員室2側からでも、シートバック3bを起立姿勢から倒伏姿勢に切換え操作し易いように、倒伏操作部7とは別の倒伏操作部を、後席2(例えば、シートクッション3aの側部やシートバック3bの上端部)に設けてもよい。尚、リクライニング機構5と倒伏操作部7がシートアレンジ機構に相当するものである。
1対のリンク機構6は、夫々、シートクッション3aの前部とフロア部2aとを連結する第1リンク6aと、シートクッション3aの後部とフロア部2aとを連結する第2リンク6bと、シートクッション3aの後部とシートバック3bの基端部分とを連結する第3リンク6cとを有する。このリンク機構6により、シートクッション3aが起立姿勢と倒伏姿勢とに亙って揺動されると、その動作と連動して、シートクッション3aが使用位置(図5、図6参照)と退避位置(図7、図8参照)とに亙って切換えられる。
シートクッション3aが使用位置のとき、シートクッション3aの上面が僅かに後方下り傾斜状となり、シートクッション3aが退避位置のとき、使用位置よりも下側に位置するすると共に、シートクッション3aの上面が水平となり、そのシートクッション3aの上側に倒伏姿勢のシートバック3bが重なり合い、そのシートバック3bの上面が水平となり、後部荷室4の床面4a(後述の上床部20a)と略同一高さになる。尚、車両1の車体構造によっては、シートクッションを乗員室2のフロア部2aに固定的に設け、シートバックを倒伏姿勢に切換えたときに、そのシートバックの上面が後部荷室4の床面4aと略同一高さの水平面となるように構成した後席を採用可能である。
車両1の車体後部の構造については、乗員室2のフロア部2aを形成するフロアパネル10が車体後端付近まで延設され、このフロアパネル10の後端部にリヤエンドパネル11が接合され、このリヤエンドパネル11にリヤバンパーフェース12が取付けられている。後部荷室4の下側において、フロアパネル10にタイヤパン10aが凹設され、このタイヤパン10aにスペアタイヤTが収容される。
図1〜8に示すように、車両1の荷室構造においては、合成樹脂製のフロアトリム20がフロアパネル10に載置状に取付けられ、荷室開口4cを形成する合成樹脂製のリヤトリム21がフロアトリム20の後端に繋がるようにフロアパネル10とリヤエンドパネル11に取付けられ、左右の側面部4bを形成する合成樹脂製のサイドトリム22がフロアトリム20の左右両端に繋がるようにインナパネル(図示略)に取付けられ、この後部荷室4は下側にスペアタイヤTを収容できる程度に前後長を長くして十分に広いスペースに構成されている。
フロアトリム20は上床部20aと下床部20bとを有する。フロアトリム20において、その前端部を前端部とする平面視矩形の開口凹部20cが形成され、その開口凹部20cの前後長は、シートバック3bの起立姿勢における上下長と略同じ(フロアトリム20の前後長の約2/3程度)で、開口凹部20cの左右長はフロアトリム20の左右長よりも少しだけ短く、開口凹部20cの後側部分と左右両側部分に上床部20aが形成され、開口凹部20cの底板部に下床部20bが形成されている。
また、車両1の荷室構造においては、後部荷室4に合成樹脂製の矩形のボード状のフロアリッド30が設置されている。このフロアリッド30は、下床部20b(開口凹部20c)を覆い隠すことができるように、そのサイズが開口凹部20cと同等か少しだけ大きく、厚さが例えば5mm〜10mm程度に形成されている。
フロアリッド30は、後部荷室4の床面4aの一部を形成する床面形成状態(図1、図3、図5、図7参照)と、この床面形成状態における前端部を下端部とする立設状態(図2、図4、図6、図8参照)とに選択的に切換え可能である。フロアリッド30が床面形成状態のとき、このフロアリッド30により下床部20bの上面側が覆われ、このフロアリッド30と上床部20aとで後部荷室4の床面4aが形成される。
フロアリッド30が立設状態のとき、下床部20bが露出して後部荷室4の床面4aの一部を形成し、この下床部20bと上床部20aとで後部荷室4の床面4aが形成される。ここで、フロアリッド30の床面形成状態における上面に植毛(図示略)が設けられ、下床部20bが硬質の床面に形成されている。
フロアリッド30を床面形成状態に保持するために、開口凹部20cの前縁部と左右両縁部とに亙って平面視門形の台座部20dが形成され、開口凹部20cの前縁部の車幅方向中央部に後側へ張出す鉛直板状の台座部20eが形成され、開口凹部20cの後縁部の車幅方向中央部に前側へ張出すブロック状の台座部20fが形成されている。これら台座部20d〜20fは、上床部20aに対してフロアリッド30の厚さ分だけ段下がり状に形成され、フロアリッド30は開口凹部20cの上端部に嵌合された状態で床面形成状態に保持され、上床部20aに略連続した状態となる。
台座部20fには上側から穴20gが形成され、フロアリッド30には、床面形成状態のときに台座部20fの穴20gと一致する穴30aが形成されている。それ故、フロアリッド30が床面形成状態のとき、乗員等がフロアリッド30の穴30aに手の指を入れて、フロアリッド30を引っ掛けて持上げることが可能になる。
フロアリッド30を立設状態に保持するために、フロアリッド30の床面形成状態における前端部の近傍のフロア部分、詳しくは、フロアトリム20の前端部に、フロアリッド30の床面形成状態における前端部(立設状態における下端部)を挿入可能な車幅方向に細長く延び且つフロアリッド30を後傾状に立設状態に保持する凹部35が形成され、その凹部35は、底壁35aと、前壁35bと、開口凹部20cの前壁と共通の後壁35cとで構成されている。
凹部35において、例えば、その深さはフロアリッド30の立設状態における上下長の約1/5程度であり、前壁35bと後壁35c間の間隔はフロアリッド30の厚さの約1.5倍程度であり、前壁35bの上部は上側に向かって後側へ傾斜するガイド部35dに形成され、後壁の上端部分の前面部に上側に向かって後側へ傾斜するテーパ状の支持部35eが形成されている(図11、図12参照)。
フロアリッド30の下端部が凹部35に挿入されと、その下端両縁部が底壁35aと前壁35bの交差付近部に係止されると共に、後壁35cの支持部35eに当接状に支持されて、フロアリッド30が後傾状に立設状態に保持される。ここで、フロアリッド30が立設状態のときに、フロアリッド30が撓まないように、また、フロアリッド30の上端部分がシートバック3bの上端部分に近接するように構成されている。
さて、図5〜図12に示すように、車両1の荷室構造には、シートバック3bが起立姿勢から倒伏姿勢に揺動する動作に連動させて、立設状態のフロアリッド30を床面形成状態に変更する状態変更機構40が設けられている。この状態変更機構40は、凹部35に挿入されたフロアリッド30の下端部を押上げることで、フロアリッド30を立設状態から解放して床面形成状態に変更させるように構成してある。
図9〜図12に示すように、状態変更機構40は、シートバック3bの基端部に設けられ、起立姿勢のシートバック3bが倒伏姿勢に揺動する際に、立設状態のフロアリッド30の下端部を押上げる左右1対の腕部41を有する。各腕部41は、シートバック3bに基端部が固定されてシートバック3bの背もたれ部に対して反対側へ延びる所定長さの板片からなる固定レバー部42と、固定レバー部42に(シートバック3bに対して)固定解除可能に固定された所定長さの板片からなる押動レバー部43とを有する。
固定レバー部42の長さ方向中央部分と押動レバー部43の基端部分とが左右方向に向く回動軸44を介して連結され、この回動軸44を中心に押動レバー部43が固定レバー部42に対して回動可能になっている。固定レバー部42の先端側部分と押動レバー部43の長さ方向中央部分に、夫々、回動軸44の軸心と平行に連結孔42a,43aが形成され、固定レバー部42と押動レバー部43とがストレート状になる状態で、これらの連結孔42a,43aが一致し、連結孔42a,43aに亙って連結軸45が挿入されると、固定レバー部42に押動レバー部43が固定される。
図9、図10に示すように、シートバック3bの基端部には、1対の腕部41に対応する1対のソレノイドアクチュエータ47が固定されている。各アクチュエータ47は対応する腕部41の固定レバー部42側に接近させて取付けられ、このアクチュエータ47により連結軸45が進退駆動される。アクチュエータ47は駆動制御部48に電気的に接続され、この駆動制御部48にオン/オフスイッチからなる操作部49が電気的に接続され、図1に示すように、その操作部49は、後部荷室4の荷室開口4cの近くにおいて、倒伏操作部7の近傍の側面部4bに設けられている。
操作部49を操作することにより、駆動制御部48を介してアクチュエータ47をオン/オフすることができ、アクチュエータ47がオフのとき、連結軸45が固定レバー部42と押動レバー部43の連結孔42a,43aに亙って挿入された状態となり、アクチュエータ47がオフからオンに切換えられると、アクチュエータ47が駆動されて連結軸45が押動レバー部43の連結孔43aから外れて、押動レバー部43が固定レバー部42に対して固定解除され回動軸44回りに回動可能になる。
固定レバー部42、押動レバー部43、回動軸44には、夫々、アクチュエータ47に対して反対側へ突出するピン状のバネ装着部42b,43b,44aが設けられ、巻バネ50がバネ装着部44aに外装され、その巻バネ50の一端部がバネ装着部42bに取付けられ、他端部がバネ装着部43bに取付けられている。この巻バネ50により、固定レバー部42に対して押動レバー部43が側面視にてストレート状となる中立位置に常時回動付勢されている。尚、バネ装着部44aにはその両端部に鍔部44bが形成され、これら鍔部44bにより巻バネ50が外れないようになっている。尚、図示していないが、この回動付勢に対し、押動レバー部43を固定レバー部42に対してストレート状とするストッパ部材が設けられている。
支軸5bの軸心から腕部41(押動レバー部43)の先端部までの長さは、支軸5bと立設状態のフロアリッド30の下端部間の長さよりも長く、シートバック3bが起立姿勢から倒伏状態に揺動すると、1対の腕部41は凹部35をその後側から上端側る亙って横切るようになっている。それ故、凹部35の底壁35a及び前壁35b及び後壁35cには、1対の腕部41が通過可能な左右1対のスリット35fが形成されている。
腕部41の固定レバー部42と押動レバー部43がストレート状となり、連結軸45を介して固定され一体的された状態で、シートバック3bが起立姿勢でフロアリッド30が立設状態のときに、図11に示すように、シートバック3bを起立姿勢から倒伏姿勢に揺動させると、1対の腕部41が凹部35のスリット35fを通過して、この凹部35に挿入されているフロアリッド30の下端部を押上げて、フロアリッド30を立設状態から解放し、フロアリッド30が床面形成状態に変更される。ここで、床面形成状態のフロアリッド30の前端部と起立姿勢のシートバック3bの後面とに両端部が連結された可撓性のあるシート状連結材30bが設けられ、このシート状連結材30bにより、倒伏姿勢のシートバック3bと床面形成状態のフロアリッド30の間が塞がれる。
一方、腕部41の固定レバー部42と押動レバー部43が連結軸45を介して固定されない状態で、シートバック3bを起立姿勢から倒伏姿勢に揺動させると、図12に示すように、1対の腕部41が凹部35のスリット35fを通過して、この凹部35に挿入されているフロアリッド30の下端部に当接するが、それ以降は、押動レバー部43が固定レバー部42に対して回動して、フロアリッド30を押上げることなく、フロアリッド30が立設状態に維持される。このように、押動レバー部42のシートバック3bに対する固定が解除され、フロアリッド30の立設状態から床面形成状態への変更が禁止される。
ここで、押動レバー部43が固定レバー部42に対して回動すると、巻バネ50の付勢力が、フロアリッド30の押上げ方向に作用するが、フロアリッド30を押上げない程度の付勢力に設定されている。尚、アクチュエータ47、駆動制御部48、操作部49等が、状態変更手段に相当するものである。
以上説明した車両1の荷室構造の作用・効果について説明する。
先ず、この車両1の荷室構造では、シートバック3bが起立姿勢でフロアリッド30が床面形成状態となる図1、図5の状態、シートバック3bが起立姿勢でフロアリッド30が立設状態となる図2、図6の状態、シートバック3bが倒伏姿勢でフロアリッド30が床面形成状態となる図3、図7の状態、シートバック3bが倒伏姿勢でフロアリッド30が立設状態となる図4、図8の状態、の4つの状態に切換え可能である。
図1、図5の状態から図2、図6の状態に切換える場合、乗員等が床面形成状態のフロアリッド30を手で持って立設状態に切換えることになる。図2、図6の状態から図3、図7の状態に切換える場合、操作部49をオン操作しないで、倒伏操作部7を操作することで行うことができる。つまり、操作部49をオン操作しない場合、固定レバー部42と押動レバー部43が一体化された状態となり、この状態で、倒伏操作部7を操作すると、シートバック3bがゼンマイバネ5cの付勢力により起立姿勢から倒伏姿勢に揺動し、状態変更機構40により、その揺動動作に連動して立設状態のフロアリッド30が床面形成状態に変更される。図3、図7の状態から図4、図8の状態に切換える場合、乗員等が床面形成状態のフロアリッド30を手で持って立設状態に切換えることもできる。
図2、図6の状態から図4、図8の状態に切換える場合、操作部49をオン操作してから、倒伏操作部7を操作することで行うことができる。つまり、操作部49をオン操作すると、固定レバー部42に対して押動レバー部43が回動可能な状態となり、この状態で、倒伏操作部7を操作すると、シートバック3bがゼンマイバネ5cの付勢力により起立姿勢から倒伏姿勢に揺動するが、状態変更機構40が機能しなくなり、フロアリッド30の立設状態から床面形成状態への切換えが禁止され、フロアリッド30が立設状態に維持される。尚、図4、図8の状態から図3、図7の状態に切換える場合、乗員等が立設状態のフロアリッド30を手で持って床面形成状態に切換えることもできる。
この車両1の荷室構造では次の効果を奏する。
後席3のシートバック3bが起立姿勢から倒伏姿勢に揺動する動作に連動させて、立設状態のフロアリッド30を床面形成状態に変更する状態変更機構40を設けたので、シートバック3bが起立姿勢でフロアリッド30が立設状態のときに、乗員等がシートバック3bの倒伏姿勢への切換え操作を行うだけで、フロアリッド30を床面形成状態に切換えることができる。つまり、フロアリッド30を立設状態から床面形成状態に切換える際の操作性が向上し、シートバック3bが起立姿勢でフロアリッド30が立設状態から、シートバック3bが倒伏姿勢でフロアリッド30が床面形成状態となるように、煩雑な操作を行うことなく迅速に切換えることが可能になる。
フロアリッド30の床面形成状態における上面に植毛を設け、下床部20bを硬質の床面に形成したので、フロアリッド30を床面形成状態にすると、その植毛により荷物に対するクッション性と見栄えが良くなり、フロアリッド30を立設状態にすると、その植毛に荷物から汚れが付くことを気にすることなく、下床部20bの床面に荷物を載置することができ、下床部20bに汚れが付いてもそれを容易に払拭できる。
フロアリッド30の床面形成状態における前端部の近傍のフロアトリム20の前端部に、このフロアリッド30の前端部を挿入可能な車幅方向に細長く延び且つフロアリッド30を後傾状に立設状態に保持する凹部35を形成し、状態変更機構40は、凹部35に挿入されたフロアリッド30の下端部を押上げることで、フロアリッド30を床面形成状態に変更させるので、フロアリッド30を後席3に対して自立させて立設状態に保持でき、それをフロアトリム20に車幅方向に細長く延びる凹部35を形成して達成できるので、その保持構造を簡単化でき、フロアリッド30を立設状態から確実に解放して床面形成状態に変更することができる。
起立姿勢のシートバック3bの後側に立設状態のフロアリッド30が近接状に位置すると共に、状態変更機構40は、シートバック3bの基端部に設けられ、起立姿勢のシートバック3bが倒伏姿勢に揺動する際に、立設状態のフロアリッド30の下端部を押上げる腕部41を有するので、シートバック3bを起立姿勢から倒伏姿勢に切換えることにより、フロアリッド30を立設状態から確実に解放して床面形成状態に変更することができ、それをシートバック3bの基端部に腕部41を設けて達成できるので、状態変更機構40を簡単化できる。特に、後部荷室4の前後長を長くした場合、後部荷室4の荷室開口4cから立設状態のフロアリッド30までの距離も長くなるため、従来では、後部荷室4の荷室開口4cから立設状態のフロアリッド30の倒伏姿勢への操作が非常に困難であるが、これを回避することができる。
車両1の車室内の所定部位に設けられた操作部49を設け、この操作部49を操作することにより状態変更機構40によるフロアリッド30の立設状態から床面形成状態への変更を禁止するので、後席3のシートバック3bが起立姿勢でフロアリッド30が立設状態のときに、シートバック3bを倒伏姿勢に切換えても、フロアリッド30を立設状態に維持できるため、利便性が向上し、前記所定部位を後部荷室4の荷室開口4cの近く、更に、倒伏操作部7の近くとすることで、使い勝手を良くすることができる。
腕部41はシートバック3bに対して固定解除可能に固定された押動レバー部43を有し、前記状態変更を禁止するために、押動レバー部43のシートバック3bに対する固定を解除するので、状態変更機構40が機能する状態と機能しない状態とに簡単に確実に切換えることが可能になる。車室外で操作可能な倒伏操作部7、更に、室内で操作可能な倒伏操作部を有し、この倒伏操作部7を操作することにより後席3のシートバック3bを起立姿勢から前傾姿勢に切換える可能であるので、車両1の荷室構造を含む後席3のシートアレンジの操作性が向上する。
次に、前記実施例を部分的に変更した変更例について説明する。
1]図13に示すように、紐状部材60の一端部がフロアリッド30の床面形成状態における後端部分(立設状態における上端部分)が連結され、その紐状部材60の巻取りと引出しが可能な巻取装置61が車体部材に固定的に設けられている。巻取装置61には紐状部材60を巻取り方向へ回動付勢するバネ部材が設けられ、そのバネ部材によりフロアリッド30が立設状態と床面形成状態との間で少なくとも上側へ付勢されている。
これにより、状態変更機構40によりフロアリッド30が立設状態から解放されると、自重により後伏状に落下して床面形成状態となるが、フロアリッド30が床面形成状態になる際の衝撃を緩和することができる。ここで、図13では、フロアリッド30が立設状態と床面形成状態との間で前側へも付勢されるように構成され、凹部35の上前側部にストッパ62が設けられている。つまり、凹部35から外れたフロアリッド30は前方へ移動してその下端部がストッパ62に係止され位置決めされ、それでもって後傾するため、フロアリッド30を確実に床面形成状態に切換えることが可能になる。尚、紐状部材60と巻取装置61の代わりに、直接バネ部材を介してフロアリッド30を車体部材に連結して上記と同機能が得られるように構成してもよい。
2]図14に示すように、腕部41の固定レバー部42と押動レバー部43がストレート状になった状態で、固定レバー部42に対して押動レバー部43を図示にて反時計回り方向へ回動させないように係止する回動規制部65が固定レバー部42に設けられている。そして、巻バネ50は、押動レバー部43を回動規制部65に比較的弱い力で圧接させるように構成されている。これにより、固定レバー部42と押動レバー部43がストレート状になるように、押動レバー部43を確実に回動付勢すると共に、巻バネ50バネの劣化により、その特性が多少変化してもその機能を維持することができる。
3]図15に示すように、前記連結軸45、連結孔42a,43a、巻バネ50等を省略し、回動軸44に回動ロック機能付きの電動モータ67が直結され、その電動モータ67がシートバック3bの基端部に固定されると共に、駆動制御部48に電気的に接続されている。但し、回動軸44は固定レバー部42に回動自在に挿通され、押動レバー部43に内嵌固着されている。
そして、状態変更機構40によるフロアリッド30の立設状態から床面形成状態への変更を禁止する場合には、操作部49を操作することにより電動モータ67を駆動させて、予め、固定レバー部42に対して押動レバー部43を図示にて時計回り方向へ回動駆動して退避させておくことで実現できる。この場合、図1、図5に示す状態、或いは、図4、図8に示す状態から図3、図7に示す状態に切換えたい場合、電動モータ67を駆動させて、固定レバー部42に対して押動レバー部43を図示にして反時計回り方向に回動させて、その押動レバー部43によりフロアリッド30の下端部を押上げて実現できる。
4]フロアリッド30の立設状態における上下長(即ち、下床部20bの前後長)については、シートバック3bの上下長以下の種々の長さに設定可能である。
5]フロアリッド30が立設状態のときに、起立姿勢のシートバック3bから後側へ離隔させてもよい。
6]フロアリッド30の立設状態における姿勢については種々設定可能である。
7]下床部20bについては、開口凹部20cの底面として、上床部20aよりかなり低い位置に形成したが、フロアリッド30の厚さ分だけ低い位置に形成してもよい。
8]後部荷室4の床面4aの全部を形成する床面形成状態となり得るフロアリッド30に構成してもよい。
9]その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前記開示事項以外の種々の変更を付加して実施可能であり、本発明の車両の荷室構造は、種々の自動車、自動車以外の種々の車両に適用することが可能である。