JP4552185B2 - 磁気分離装置 - Google Patents
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本願第1の発明は、マイクロウェルプレートのウェル中に検査液を採集し、各ウェルの側方に永久磁石を配置して検査液に磁場を印加し、前記検査液中の磁性粒子を分離する磁気分離装置であって、前記磁石の外周面に4極以上の磁極を設ける磁気分離装置である。本発明の構成により磁極間の吸引・反発を効果的に利用した高勾配磁場を発生する磁気分離装置を得ることができる。この磁石は異方性磁石であることが好ましい。ここで、本願における異方性磁石とは合金粉末の成形時に磁場を印加して磁性粒子の配向を特定の向きにそろえて磁気特性を向上させたものだけでなく、等方性磁石を作製し、極異方的ないしラジアル異方的な着磁を行った磁石も指すものとする。極異方性磁石は、リング形状または円柱形状であることが好ましいが、例えば多角形状の筒状、柱状のものでもよい。
リング磁石はウェルの底部の径に比べて十分大きな内径を有するものが好ましく、また採集された検査液の液面高さよりも長い軸方向の長さをもつものが好ましい。これ以下の大きさでは磁場が十分検査液に印加せず、磁気分離効果が不十分となる。
本発明では、4極以上の磁極をウェルに対して対向配置することが望ましく、なおかつ磁石の磁力が高くなるようにする必要がある。今回のような矩形形状の磁石の場合に磁石の厚さに対して必要以上に磁石の幅を広げることは磁石の形状異方性を大きくすることにつながり、磁石の磁力が下がる結果となるため、磁力を高めるたには、磁石の幅をピッチ長さ以下とすることが望ましい。また、磁石の幅をピッチ長さ以下とすることで、隣り合う4極の磁石の対向面を異極の組合わせにすることが容易に可能となる。このような理由からウェルのピッチ長さより磁石の幅を短くすることが望ましいと言える。
本発明では、各ウェルでの磁場勾配をそろえる方法も可能である。本磁気分離装置では、隣り合う磁石同士が異極となるように組合わせているため、この磁石同士で磁気回路が形成されており、内部の磁石の磁力を高めることができる。一方で外周部の磁石は、その外側に磁気回路が形成されていないため内部の磁石に比べて、表面磁束密度が小さくなる結果となる。外周部の磁石の磁力を高める方法としては、外周部の磁石の厚みを厚くして、磁力を高める方法と、外周部の磁石の周囲に板状のヨークを配置して、永久磁石のパーミアンスを高める方法の2種類が考えられる。そこで、今回は、内部の永久磁石の発生する磁力と外周部の永久磁石の発生する磁力がほぼ等しくなるように板状のヨークの板厚を調整して外周部に配置することで磁気分離装置内の磁場勾配のぱらつきを抑えている。また、各ウェルに配置された永久磁石の4ヶの内、対向する2ヶの永久磁石は、それ以外の2ヶの永久磁石に比べ辺方向の長さを長くすることで、磁気分離装置の磁気回路が安定したものとすることができる。
1)極異方性磁石を各ウェル間に配置して用いることで、磁気分離効果の高い磁場勾配を有する磁気分離装置を得ることができる。
2)リング磁石を用い、その内径側に磁極を形成し、マイクロウェルプレートのウェルを挿入することで、同様に磁気分離効果の高い磁場勾配を有する磁気分離装置を得ることができる。
3)容易に小型化することができるため、マイクロウェルプレートを用いた複数処理を行う装置に対応した磁気分離装置を作成することができる。
4)極異方性磁石の配置を変える事で磁性粒子を捕集する位置を任意の位置に変更することができる。
図1は、本発明の磁気分離装置の主要部である磁場部材3aを示す斜視図である。極異方性円柱状磁石1aと極異方性円柱状磁石1aを支持するベース2aからなる。ベース2aは磁性体とすることで、磁場部材3を設置する設置台への磁気的な結合を防ぐ効果がある。このときに、格子状に配列されたウェルの隙間及び周囲の位置に磁石が隣接して位置するように磁石を配置している。
図2(a)には、第1の実施例におけるウェルが装入された際のA−A´断面図を示す。96マイクロウェル5の各ウェル6の中に検査液7が入れられている。図3(a)には、第1の実施例に用いている極異方性磁石の磁化の方向を示す。図4は、第1の実施例における1つのウェルの周囲に配置する磁石の位置及び磁化方向を示す。極異方性円筒状磁石1aは、図3(a)に示すように外周部に4極の極異方性を持つように着磁されている。また、この磁石材料は、より大きな磁場を発生する材料であることが望ましいため、Nd-Fe-B焼結磁石材料を用いた。ウェル内の磁石の配置は、図4に示すように全ての磁石の磁極が同じ方向となるように格子状に配置し、また磁極の方向をウェル6が装入される中心部に向かう方向とした。
この磁気分離装置では、極異方性円柱状磁石1aがウェル4の周囲4箇所を囲むように配置している。このとき、極異方性円柱状磁石1aのある磁極と隣あう磁極は、異極になるように配置していることから、同一磁石内の磁極間及び隣接する磁石の異極間で図4に示す磁力線のような磁気回路が形成されている。この磁気回路は、ウェル中心部が、各磁石から最も離れているため、磁場が最も小さく、ウェルの外周部に近くなるほど磁場が大きくなるような磁場分布とすることができる。
このとき、極異方性磁石を配置するために磁極の方向を判別する必要があることから、組立性向上のために磁石の1部に切り欠きなどの位置決めマークを設けても良い。図5に外形5mmの極異方性円筒状磁石用い、ウェル6の径が7mmである96マイクロウェルプレートを用いた場合のウェル内に発生する磁場分布を磁界解析により求めた結果を示す。中央の円内は、ウェルが装入される空間4を示し、磁場分布を等高線図によって示している。等高線の間隔が狭いほど高い磁場勾配が得られていることを示したものであり、後述する比較例に対して等高線の数が多く、間隔も狭くなっており、高い磁場勾配が得られることが分かった。
実施例1と同様の磁気分離装置を製造した。ただし、外周4極の極異方性円柱状磁石1aの磁極方向を図10に示すように隣接する磁石の方向に向け、かつ隣接する磁石同士の極が対向するように配置した。この磁場部材に対して実施例1と同様に磁界解析を行い、ウェル内に発生する磁場分布を求めたが実施例1ほどの磁場勾配は得られないことがわかった。この磁気分離装置は、前記マイクロウェルプレートの各ウェル間に配置されるよう外周4極の極異方性磁石が板状のベース上に格子状に配置され、かつ各前記極異方性磁石の磁化の向きが同一の方向になるように配置する。ウェルに側方から磁場を印加させ、またウェルを囲む4つの磁石による磁極間の吸引・反発を効果的に利用した磁気回路を形成することができるため、ある程度の磁気分離効果を有する磁気分離装置を得ることができる。
実施例1と同様に極異方性をベース2a上に格子状に並べた磁場部材を想定して磁界解析を行い、ウェル内に発生する磁場分布を求めた。ただし、極異方性磁石1bは図3(b)に示す、略円錐状のNd−Fe−B系ボンド磁石を用いた。図2(b)にその断面図を示す。ウェル6は、その先端部が、先細りの形状になっているため、ウェル間は上部が狭く、下部が広くなっている。図2(b)に示すようにウェルの隙間にあわせて、下部が広く、上部が狭い略円錐形状の極異方性磁石1bを用いることで、ウェルと磁石の隙間を垂直方向のいずれの部分でも狭くした構造とした。極異方性磁石1bの上端での外径はΦ5mm、下端での外径はΦ10mmである。磁界解析の結果、図5とほぼ同程度の磁場分布が得られた。また、下部の方の磁場解析を行ったところ、さらに高い磁場分布が得られていることが解った。
図11は、本発明の第3の実施例における磁気分離装置の主要部である磁場部材3cを示す斜視図である。極異方性円柱状磁石1aと極異方性円柱状磁石1aを支持するベース2aからなる。このときに、格子状に配列されたウェルの隙間及び周囲のウェルを中心とした対向する位置の一方に磁石が隣接して配置され、他の位置の磁石を取り除いている。極異方性円柱状磁石1aは、図3に示すように外周部に4極の極異方性を持つように着磁されている。また、この磁石材料は、より大きな磁場を発生する材料であることが望ましいため、Nd-Fe-B焼結磁石材料を用いた。図12には、図11のB−B´断面の磁石配置を示す。ウェル内の磁石は、図11,12に示すように実施例1と比較して半分の数であり、かつウェル間を一つおきに配置されている。全ての磁石が同じ方向となるように配置し、また磁極の方向をウェル5が装入されるウェル装入空間4の中心部に向かう方向とした。図13に外径6mmの極異方性円柱状を用い、ウェル6の径が7mmである96マイクロウェルプレートを用いた場合のウェル内に発生する磁場分布を磁界解析により求めた結果を示す。中央の円内は、ウェルが装入される空間4を示し、磁場分布を等高線図によって示している。実施例1と比較して、磁石の配置されていない部分の等高線の間隔が広くなっており、この部分には磁性粒子が集まらないことが分かる。磁性粒子が2箇所にのみ集められ、ピペットでの検査液の採集が行いやすい。
図13にこの磁気分離装置の磁石の磁化方向及び、各磁極から発生する磁力線、各ウェルの磁場勾配等高線図をしめす。この磁気分離装置では、極異方性円柱状磁石1aは、ウェルに対して、対向する位置に2ヶ所となるように配置している。このとき、極異方性円柱状磁石1aのある磁極に対して、最も近い距離にある異極は、同一磁石内の隣接する異極となる。このため、主要な磁気回路は、同一磁石内の隣接する異極間で形成されるため、図13に示す磁力線のようになる。ウェルを挟んで対向する位置にある磁極は同極となるように配置されているため、磁石同士が反発するため、ウェル中央部では、磁力が小さくなる結果となる。このため、図に示すウェル内部の等高線図のように各磁極の近傍で高い磁場勾配が発生することとなり、磁性粒子が2ヶ所のみに集められる結果となる。
図14は、本発明の第4の実施例における磁気分離装置の主要部である磁場部材3dを示す斜視図である、極異方性円柱状磁石1aと極異方性円柱状磁石1aと支持するベース2aからなる。このとき、格子状に配列されたウェルの隙間に対して一列置きに磁石を配置している実施例1と同様に、図15に等高線図によって示したウェル内の磁場分布を示す。この結果から、磁性粒子は磁石の近傍に集められることが分かる。
このような磁気回路の場合、一列離れた磁石間では、磁気回路はほとんど形成されず、同一磁石内での隣接する異極間及び隣接する磁石の異極間に磁気回路が形成することができる。図15にこの磁気分離装置の磁石の磁化方向及び、各磁極から発生する磁力線、各ウェルの磁場勾配等高線図をしめす。この磁気分離装置では、極異方性円柱状磁石1aは、ウェル間に一列あけて配置している。各極異方性円柱状磁石1aの磁化の方向は、全て同じ向きとなるように配置している。このとき、極異方性円柱状磁石1aのある磁極に対して、近い距離にある異極は、同一磁石内の隣接する異極及び隣接する磁石の異極となる。このため、主要な磁気回路は、同一磁石内の隣接する異極間及び隣接する磁石の異極間で形成されるため、図15に示す磁力線のようになる。各極異方性円柱状磁石1aは、一列あけて配置しているため、磁石のないウェルの反対側は、磁界の小さい場所となり、磁石に近づくにつれて磁力が大きくなる。そのためこのため、図に示すウェル内部の等高線図のように各磁極の近傍で高い磁場勾配が発生することとなり、磁性粒子が磁石を配置している側の2ヶ所に集められる結果となる。
図20に示すように従来のウェル側方から磁石により磁場を与える磁気分離方法に関して磁界解析を行い、ウェル内に発生する磁場分布を求めた。96マイクロウェルプレートは実施例1と同様のものを使用したと仮定した。磁石の外径は実施例1と同じ5mmであり、かつ一方向にのみ着磁を行っている。その結果を図19に示す。図19は、磁石の近傍のウェルが装入される空間の磁場分布を等高線図によってしめしたものであり、等高線の間隔が近いほど磁場勾配が高いことを示す。図16では、磁石近傍では、磁場勾配があるが、磁石から離れると、磁場勾配が非常に小さく、本発明の磁場勾配よりも低いものしか得られていないことが分かる。
図6は、本発明の第5の実施例を示す斜視図である。図7には、第5の実施例に用いている極異方性リング磁石1cの斜視図を示す。図8は、この極異方性磁石1cにウェル6が装入した時の断面図である。図6の磁場部材3bは、96ウェルマイクロウェルプレート用に配置された96ヶの極異方性リング磁石1cと極異方性磁石を支持するベース2bとからなる。マイクロウェルプレートは、この磁場部材3bに重ね合わせて使用する。このときに、格子状に配列されている各ウェル6がこの極異方性リング磁石内部の空間に収まる。ベース2bは、磁性体とすることで、磁気分離装置を設置する設置台への磁気的な結合を防ぐ意味でも磁性材を用いることが望ましい。極異方性リング磁石1cは、図7に示すように内周部に4極の極異方性を持つように着磁されている。また、この磁石材料には、Nd-Fe-B系の焼結磁石を用いた。極異方性リング磁石1cは、内径4mm、外径6mm、長さ10mmの円筒形状である。極異方性リング磁石の内部空間は、4箇所から磁場が印加されており、極異方性リング磁石1cが独立して1個の磁気分離装置として成立している。また、図8にしめすように、ウェル6中の検査液7は、この極異方性磁石の上面とほぼ同じ高さもしくは、下方になるように磁石の径、試料液の量を選択することが望ましい。また、図9にはこの極異方性磁石を磁界解析により求めた磁石内部の空間の磁場分布を等高線によって示す。この磁石内部の空間は、同心円状の等高線が得られており、外周部が強く、中心に近づくにつれて磁場が弱くなっていく結果が得られ、等高線間隔の狭い、すなわち高い磁場勾配が得られることが分かった。
図16は、本発明の第6の実施例における磁気分離装置の主要部を示す斜視図である。図16では、2種類の長さの板磁石111と板磁石112およびベースとなるヨーク221及び磁石側面に設けられたヨーク222からなる。磁石111は、厚さ2mm、長さ9mm、高さ20mmであり、磁石112は、厚さ2mm、長さ7mm、高さ20mmの形状であり、磁石の材質は共にNdFeB系焼結磁石を用いた。ヨーク221は、板磁石111及び板磁石112を固定するための幅2mm、深さ2mmの溝が9mm間隔で格子状に設けている。ベースとなるヨーク221は、磁性体であることにより、磁気分離装置を設置する設置台への磁気的な結合を防ぐことや、磁石の固定する効果が得られる。この溝に幅の長い磁石111を先に差し込み、次に幅の短い磁石112を差し込む。磁石同士は、ヨーク及び隣接する磁石に吸い付けられるため、磁石同士の位置合わせは及び組立は、容易である。このように磁石111及び磁石112が所定の位置に納めた後、ヨーク222を磁石側面に貼り付ける。
2a,2b:ベース
3a,3b,3c,3d:磁場部材
4:ウェル装入空間
5:マイクロウェルプレート
6:ウェル
7:検査液
8:円柱状磁石(2極着磁)
9a,9b,9c:磁気分離装置
111,112:板磁石
221、222:ヨーク
Claims (11)
- マイクロウェルプレートのウェル中に検査液を採集し、各ウェルの側方に磁石を配置して前記検査液に磁場を印加し、前記検査液中の磁性粒子を分離する磁気分離装置であって、前記磁石の外周側面に4極以上の磁極を設けたことを特徴とする磁気分離装置。
- 前記磁石に極異方性磁石を用いることを特徴とする請求項1に記載の磁気分離装置。
- 前記磁気分離装置は、前記マイクロウェルプレートの各ウェル間に外周4極の極異方性磁石が配置されるよう極異方性磁石が板状のプレート上に格子状に配置され、かつ各前記極異方性磁石の磁化の向きが同一の方向に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気分離装置。
- 前記外周4極の極異方性磁石は、前記マイクロウェルプレートを取り付けた際に、各磁極が前記各ウェルの方向に向くよう配置されていることを特徴とする請求項3に記載の磁気分離装置。
- 前記極異方性磁石は、略円錐形状であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の磁気分離装置。
- マイクロウェルプレートのウェル中に検査液を採集し、各ウェルの側方に磁石を配置して前記検査液に磁場を印加し、前記検査液中の磁性粒子を分離する磁気分離装置であって、磁場を印加する手段として内周面に4極以上の磁極を有するリング磁石を用い、前記ウェルの各底部が前記リング磁石の内径側に挿入されるよう前記リング磁石を板状のプレート上に格子状に配置したことを特徴とする磁気分離装置。
- 前記リング磁石は、内周側が4極に異方性着磁またはラジアル着磁されていることを特徴とする請求項6に記載の磁気分離装置。
- ウェルの周囲に永久磁石を設け、前記ウェルを中心として周方向に互いに異なる極性の磁極が交互に現れるように4極以上の磁極をウェルに対して対向配置したことを特徴とする磁気分離装置。
- 前記磁極はウェルのピッチ長さ以下の幅を有し、厚さ方向に着磁された複数の矩形形状の永久磁石により形成される請求項8に記載の磁気分離装置。
- 磁気分離装置の最外周面に面する永久磁石の表面磁束密度と対向する内部の永久磁石の表面磁束密度とが、ほぼ等しくなるように板厚を調整した板状ヨークを外周部に配置した請求項8又は9に記載の磁気分離装置。
- 4辺の対向する2辺を形成する永久磁石は、それ以外の2辺を形成する永久磁石に比べ辺方向の長さが長いことを特徴とする請求項8乃至10に記載の磁気分離装置。
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