JP4551160B2 - 標識アミド化を用いたタンパク質又はペプチドの解析法 - Google Patents

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Description

本発明は、ライフサイエンス基礎研究分野に関し、より詳しくは、タンパク質・ペプチド、糖鎖等の生体分子の質量分析における解析感度を向上するための技術に関する。
従来から、タンデム質量分析計を用いたMS/MS解析手法によって、タンパク質・ペプチドの構造解析が行われている。例えば、特開平10−90226号公報において、質量分析におけるタンパク質・ペプチドのフラグメントイオンの発生を容易にする方法として、ペプチドのN末端やC末端に電荷を有するアミノ酸で化学修飾を行う方法が記載されている。
また、糖鎖構造解析の分野においても、タンデム質量分析計を用いたMS/MS解析が主流になりつつある。例えば、Rapid Communication in Mass Spectrometry, vol. 10, 1027-1032(1996)において、MALDI-TOF-MS装置によるシアル酸の付加糖鎖の測定において、シアル酸のカルボキシル基をメチルエステル化することによって、シアル酸の脱離を抑制する方法が報告されている。
特開平10−90226号公報 アンドリュー・K・パウエル(Andrew K. Powell)、デビッド・J・ハーヴェイ(David J. Harvey)著、正イオンマトリックス支援脱離イオン化マススペクトロメトリーによる分析のためのN−結合型オリゴ糖及びガングリオシドにおけるシアル酸の安定化(Stabilization of Sialic Acids in N-linked Oligosaccharides and Gangliosides for Analysis by Positive Ion Matrix-assisted Laser Desorption/Ionization Mass Spectrometry)、「ラピッド・コミュニケーションズ・イン・マス・スペクトロメトリー(Rapid Communications in Mass Spectrometry)」、1996年、第10巻、p.1027−1032
タンパク質・ペプチドのMS/MS解析では、アスパラギン酸残基及びグルタミン酸残基の部位において開裂が優先的に起こるため、他のアミノ酸残基の部位で開裂したフラグメントイオンが得にくい。従って、全体としてフラグメントイオンの検出率が悪く、解析が困難になる問題がある。
また、シアル酸含有糖鎖のMALDIをイオン源とする質量分析測定においては、ISD(in source decay)やPSD(post source decay)でシアル酸の脱離が容易に起こるため、分子量関連イオンの絶対量が減少する。さらに、シアル酸含有糖鎖のMS/MS解析では、シアル酸の脱離が優先的に起こり、解析に十分な他のフラグメントイオンを得ることが難しい。
本発明の目的は、質量分析において生体分子の解析感度を向上させる方法を提供することにある。また本発明の目的は、質量分析における解析感度を向上させる方法を用いて生体分子を迅速に且つ簡単に解析する方法を提供することにある。
本発明には、以下の発明が含まれる。
記は本発明の解析法に用いられる標識アミド化法に向けられる。
体分子が有するカルボキシル基に、窒素原子同位体15Nで標識されたアミド化試薬を作用させることにより、前記生体分子の標識アミド化体を得る、標識アミド化法。
記生体分子がタンパク質又はペプチドである、上記の標識アミド化法。
すなわち、タンパク質又はペプチドが有するカルボキシル基に、窒素原子同位体15Nで標識されたアミド化試薬を作用させることにより、標識アミド化タンパク質又は標識アミド化ペプチドを得る、標識アミド化法。
記カルボキシル基が、タンパク質又はペプチドの酸性アミノ酸残基が有するカルボキシル基である、上記の標識アミド化法。
記酸性アミノ酸残基が、グルタミン酸残基及びアスパラギン酸残基から選ばれる、上記の標識アミド化法。
記アミド化試薬が塩化[15N]アンモニウムである、上記の標識アミド化法。
下記()〜()の発明は、生体分子の解析方法に向けられる。
(1タンパク質又はペプチドが有するカルボキシル基に、標識アミド化試薬である塩化[ 15 N]アンモニウムを作用させることにより、前記タンパク質又はペプチドの標識アミド化体を得て、前記標識アミド化体を質量分析法によって解析する、タンパク質又はペプチドの解析方法。
(2)前記カルボキシル基が、タンパク質又はペプチドの酸性アミノ酸残基が有するカルボキシル基である、(1)に記載の解析法。
(3)前記酸性アミノ酸残基が、グルタミン酸残基及びアスパラギン酸残基から選ばれる、(2)に記載の解析法。
本発明によると、アミド化法を用いることにより、質量分析において生体分子の解析感度を向上させる方法を提供することができる。又本発明によると、質量分析における解析感度を向上させる方法を用いて生体分子を迅速に且つ簡単に解析する方法を提供することができる。
以下の記述は、本発明の解析法に用いられことができる標識アミド化法に関する。
本発明は、生体分子が有するカルボキシル基(−COOH基)を15N標識アミド化して15N標識カルバモイル基(−CO15NH2基)に変換する方法である。生体分子としては、タンパク質・ペプチドや糖鎖等が挙げられる。なお本明細書において、「生体分子」とは生体高分子を含む意味で用いる。
以下、本発明の標識アミド化法の一例として、タンパク質又はペプチドを標識アミド化する方法について説明する。この例においては、タンパク質又はペプチドの酸性アミノ酸残基のカルボキシル基を標識アミド化する。上記酸性アミノ酸としては、α−アミノ酸、β−アミノ酸、γ−アミノ酸、δ−アミノ酸のいずれであっても良い。α−アミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。すなわち本発明によって例えばアスパラギン酸はアスパラギンに、グルタミン酸はグルタミンに変換される。なお本発明においては、標識アミド化すべきタンパク質又はペプチドが無置換のC末端を有している場合、C末端カルボキシル基も標識アミド化される。
標識アミド化の試薬としては、アミド化試薬として用いることができる化合物の、窒素同位体15Nによる標識体を特に限定することなく用いることができる。例えば、塩化[15N]アンモニウム等を用いることができる。標識アミド化の方法としては、標識アミド化試薬を用いることの他は特に限定することなく、公知のアミド化法を用いることができる。例えば、タンパク質又はペプチドを必要に応じて変性剤で処理し、標識アミド化剤と縮合剤とを用いて標識アミド化を行うことができる。縮合剤としては、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、シアナミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等のカルボジイミド等を用いることができる。
本発明においては、カルボジイミドを縮合剤として用いるカルボジイミド法を用いることが好ましい。このとき、標識アミド化試薬として塩化[15N]アンモニウムを用いることが好ましい。また、カルボジイミドとしては1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)を用いることが好ましい。カルボジイミド法を用いる場合、例えば以下のように標識アミド化を行うことができる。タンパク質を、塩酸グアニジンを存在させた塩化[15N]アンモニウム水溶液に溶解し、塩酸グアニジンを存在させたカルボジイミドを加えて反応させる。塩化[15N]アンモニウムの量としては、タンパク質600pmolに対して500mM〜1M程度のものを50μl用いるとよい。カルボジイミドの量としては、塩化[15N]アンモニウムの0.08〜0.2倍当量程度を用いることができる。またこの反応は、4〜30℃で1〜12時間程度の条件下で行うことができる。
以上のようにして、タンパク質又はペプチドのカルボキシル基を標識アミド化することができる。本発明の標識アミド化は、タンパク質・ペプチドを質量分析によって解析する場合に特に有用である。
以下、本発明の標識アミド化法の他の一例として、糖鎖を標識アミド化する方法について説明する。この例においては、糖鎖の酸性糖残基のカルボキシル基を標識アミド化する。上記酸性糖としては、シアル酸、ムラミン酸等が挙げられる。本発明の標識アミド化法は、特にシアル酸において有用である。ここでシアル酸は、ノイラミン酸のN−アシル体及びその誘導体であり、具体的にはN−アセチルノイラミン酸、N−グリコリルノイラミン酸等が挙げられる。
標識アミド化の試薬としては、アミド化試薬として用いることができる化合物の、窒素同位体15Nによる標識体を特に限定することなく用いることができる。例えば、塩化[15N]アンモニウム等を用いることができる。標識アミド化の方法としては、標識アミド化試薬を用いることの他は特に限定することなく、公知のアミド化法を用いることができる。例えば、糖鎖を標識アミド化剤と縮合剤とを用いて標識アミド化を行うことができる。縮合剤としては、上述のタンパク質・ペプチドの標識アミド化法におけるものを用いることもできるが、好ましくは4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム=クロリドn水和物(DMT−MM)が用いられる。例えば、標識アミド化剤に塩化[15N]アンモニウムを用い、縮合剤にDMT−MMを用いる場合、塩化[15N]アンモニウムは糖鎖の5万〜50万倍当量程度、DMT−MMは塩化[15N]アンモニウムの0.1〜0.5倍当量程度を用いることができる。またこの反応は、30〜60℃で5〜48時間程度の条件下で行うことができる。
以上のようにして、糖鎖を標識アミド化することができる。本発明の標識アミド化は、糖鎖を質量分析によって解析する場合に特に有用である。
以下の記述は、標識アミド化体に関する。
本発明は、カルボキシル基が15N標識アミド化された、生体分子のアミド化体である。このアミド化体は、上記の標識アミド化法において記載したように、生体分子を標識アミド化することによって得ることができる。生体分子としては、タンパク質、ペプチド、糖鎖等が挙げられる。解析したい生体分子の標識アミド化体である場合は、質量分析によって解析する場合に特に有用に用いられる。
以下の記述は、生体分子の解析方法に関する。
本発明は、生体分子が有するカルボキシル基(−COOH基)をアミド化してカルバモイル基(−CONH2基)に変換する処理を行うことにより生体分子の解析を行う方法である。解析すべき生体分子としては、タンパク質・ペプチドや糖鎖等が挙げられる。
以下、本発明の生体分子の解析方法の一例として、タンパク質又はペプチドを解析する方法について説明する。この例においては、タンパク質又はペプチドの酸性アミノ酸残基のカルボキシル基をアミド化する。上記酸性アミノ酸としては、α−アミノ酸、β−アミノ酸、γ−アミノ酸、δ−アミノ酸のいずれであっても良い。α−アミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。すなわち本発明によって例えばアスパラギン酸はアスパラギンに、グルタミン酸はグルタミンに変換される。なお本発明においては、アミド化すべきタンパク質又はペプチドが無置換のC末端を有している場合、C末端カルボキシル基もアミド化される。
本発明のタンパク質・ペプチドの解析法においては、解析すべきタンパク質又はペプチドのカルボキシル基をアミド化し、得られたアミド化タンパク質又はアミド化ペプチドを質量分析によって解析する。アミド化タンパク質又はアミド化ペプチドは、質量分析に供する前に、必要に応じて遠心分離、還元−カルボキシメチル化、断片化、脱塩等の処理を行うと良い。これらの処理は、公知の方法を利用して行うことができる。
本発明の解析方法においては、アミド化は、カルボキシル基を非標識カルバモイル基(−CO14NH2基)に変換することと、標識カルバモイル基(−CO15NH2基)に変換することとの両方を含む。非標識アミド化法としては、公知の方法を特に限定することなく用いることができる。また標識アミド化法としては、上述したタンパク質又はペプチドの標識アミド化法を用いることができる。
本発明の解析方法においてアミド化を行うことは、以下の点で好ましい。すなわち、優先的な開裂が起こりやすいアスパラギン酸残基やグルタミン酸残基等の酸性アミノ酸残基の部位がアミド化によって無くなるため、他のアミノ酸残基の部位においても開裂が起こりやすくなり、多種類のフラグメントイオンを検出することができる。従って、より多くの配列情報を得ることができる。
本発明の解析方法においては、以下の理由で、標識アミド化を行うことが特に好ましい。すなわち、標識アミド化によって−COOH基を−CO15NH2基に変換することで、解析すべきタンパク質・ペプチドと標識アミド化タンパク質・ペプチドとの質量差がカルボキシル基1個あたり0.01301938と極微小に抑えられる。すなわち、標識アミド化前後でタンパク質・ペプチドの質量がほとんど変わらない。このため、質量分析によって得られる質量データは、標識アミド化前のもとの解析すべきタンパク質・ペプチドの質量をほぼ反映しており、質量分析データからもとのタンパク質・ペプチドの解析をより容易に行うことができる。従って、ペプチドマスフィンガープリント(PMF)解析やMS/MSイオンサーチ(MIS)解析において、データベースとの照合が容易であり、迅速にかつ容易にタンパク質・ペプチドの同定を行うことができる。
一方、非標識アミド化を行った場合は、解析すべきタンパク質・ペプチドと非標識アミド化タンパク質・ペプチドとでカルボキシル基1個あたり約1の質量差が生じる。PMF解析やMIS解析においては、非標識アミド化による質量変化が質量誤差として支障となることもある。
以下、本発明の生体分子の解析方法の他の一例として、糖鎖を解析する方法について説明する。この例においては、糖鎖が有する酸性糖残基のカルボキシル基をアミド化する。上記酸性糖としては、シアル酸、ムラミン酸等が挙げられる。得られたアミド化糖鎖は、質量分析によって解析する。
本発明の解析方法においては、アミド化は、カルボキシル基を非標識カルバモイル基(−CO14NH2基)に変換することと、標識カルバモイル基(−CO15NH2基)に変換することとの両方を含む。非標識アミド化法としては、公知の方法を特に限定することなく用いることができる。また標識アミド化法としては、上述した糖鎖の標識アミド化法を用いることができる。
本発明の解析方法においてアミド化を行うことは、以下の点で好ましい。例えばシアル酸含有糖鎖の場合、優先的な脱離が起こりやすいシアル酸の部位がアミド化によって無くなる。このため、ISDやPSDにおいてシアル酸の脱離が抑制される分、分子量関連イオンの絶対量が増加し、感度が向上する。またMS/MS解析においては、シアル酸の脱離が抑制され、他の部位由来のフラグメントイオンが検出される。このことを利用し、シアル酸付加イオンをプレカーサーイオンとしたMS/MSスペクトルと、シアル酸脱離イオンをプレカーサーイオンとしたMS/MSスペクトルとから、より詳細な糖鎖構造解析を行うことが可能となる。
本発明の解析方法においては、以下の理由で、標識アミド化を行うことが特に好ましい。すなわち、標識アミド化によって−COOH基を−CO15NH2基に変換することで、解析すべき糖鎖と標識アミド化糖鎖との質量差がカルボキシル基1個あたり0.01301938と極微小に抑えられる。すなわち、標識アミド化前後で糖鎖の質量がほとんど変わらない。このため、質量分析によって得られる質量データは、標識アミド化前のもとの解析すべき糖鎖の質量をほぼ反映しており、質量分析データからもとの糖鎖の解析をより容易に行うことができる。従って、糖鎖のデータベース解析において、質量変化を考慮する手間を省くことが可能となり、迅速にかつ容易に糖鎖の同定を行うことができる。
一方、非標識アミド化を行った場合は、解析すべき糖鎖と非標識アミド化糖鎖とでカルボキシル基1個あたり約1の質量差が生じる。糖鎖のデータベース解析においては、非標識アミド化による質量変化が質量誤差として支障となることもある。
[実施例1]
ミオグロビンに対し、塩化[14N]アンモニウム及び塩化[15N]アンモニウムを用いて、アミド化が行われることを質量分析によって確認する実験をそれぞれ行った。
非標識アミド化については、以下のように行った。
ミオグロビン600pmolを、5M 塩酸グアニジン/1M 14NH4Cl 50μlに溶解した。この溶液に、5M 塩酸グアニジン/0.4M1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)を15μl添加して反応液を調製し、得られた反応液を室温で2時間インキュベーションした。マイクロコンYM−10(ミリポア社製)に反応液を加え、さらに0.001M HClを335μl加え、14000rpm、4℃で70分遠心した。さらに0.001M HClを400μl加え、14000rpm、4℃で70分遠心した。その後、50mM NH4HCO3を加え、溶液の全量が100μlになるように調製した。これに1MDDTを1μl添加し、56℃で1時間インキュベーションした。さらに1Mヨードアセトアミドを5.5μl添加し、室温で45分インキュベーションした。その後、100mM CaCl2を5μl加えた。Sequencing Grade Modified Trypsin(プロメガ社製)を6pmol添加し、37℃で16時間インキュベーションした。0.1重量%TFAを10μl添加し、ZipTip μ-C18(ミリポア社製)を用いて脱塩精製を行うことにより、ミオグロビンのトリプシン消化断片を得た。
標識アミド化については、14NH4Clの代わりに15NH4Clを用いた以外は、上記非標識アミド化と同様に行うことにより、ミオグロビンの消化断片を得た。
別途用意したアミド化されていないミオグロビンのトリプシン消化断片と、上記非標識及び標識アミド化によって得られたトリプシン消化断片とについて、それぞれAXIMA-QIT(島津製作所製)によって質量分析を行った結果を図1の(a)及び(b)に示す。すなわち図1の(a)及び(b)は、VEADIAGHGQEVLIR(配列番号1)の配列を有するミオグロビントリプシン消化断片(m/z=1606)(以下、単にペプチドと表記する。)の、アミド化反応を行わなかった(non-amidation)ものと、非標識アミド化反応(amidation(14N))を行ったものと、標識アミド化反応(amidation(15N))を行ったものとのスペクトルを比較して表している。なお、図1中のスペクトルはいずれも、横軸に質量/電荷(Mass/Charge)を表し、縦軸にフラグメントイオンの相対強度(%Int.)を表す。
図1において、(a)の下段は、アミド化反応を行わなかった(non-amidation)ペプチドのMS/MSスペクトルである。このスペクトルは、(b)の下段のピーク(m/z=1606.85)をプレカーサイオン(Precursor ion)として測定した。(a)の中段は、非標識アミド化反応(amidation(14N))を行ったペプチドのMS/MSスペクトルである。このスペクトルは、(b)の中段のピーク(m/z=1603.91)をプレカーサイオン(Precursor ion)として測定した。(a)の上段は、標識アミド化反応(amidation(15N))を行ったペプチドのMS/MSスペクトルである。このスペクトルは、(b)の上段のピーク(m/z=1606.89)をプレカーサイオン(Precursor ion)として測定した。
ペプチドの非標識アミド化が行われれば、非標識アミド化ペプチドにおいては、アミド化反応を行わなかったペプチドよりも、反応によって変換されたカルボキシル基1個あたり質量数が約1Da小さくなる。図1によると、MS/MSスペクトルにおいてペプチド中の同じ部位で切断されて生成したフラグメントイオン同士の質量数を比較した場合、非標識アミド化反応を行ったペプチドから生成したフラグメントイオンの方が、アミド化反応を行わなかったペプチドから生成したフラグメントイオンよりも、上記非標識アミド化反応によって変換されたカルボキシル基の数だけ小さい。以上のことから、非標識アミド化反応によってペプチドの非標識アミド化が行われたことが示された。
さらに、非標識アミド化によって、ペプチドにおけるアスパラギン酸及びグルタミン酸部位での優先的な開裂が抑制されたため、非標識アミド化反応を行わなかったペプチドには検出されなかった他のフラグメントイオンが検出された。また、内部配列断片(Internal fragment)のフラグメントイオンも新たに検出された。このように、ペプチドの非標識アミド化を行うことによってフラグメントイオンの検出率が向上したことが示された。
また、標識アミド化反応を行ったペプチドのMS/MSスペクトルにおいては、アミド化反応を行わなかったペプチドのMS/MSスペクトルにおけるものとほぼ同じ質量数を有するフラグメントイオンが検出された。さらに、標識アミド化反応を行わなかったペプチドには検出されなかった他のフラグメントイオンが検出された。また、内部配列断片(Internal fragment)のフラグメントイオンも新たに検出された。このことと、上述の非標識アミド化による結果とから、標識アミド化反応によってもペプチドの標識アミド化が行われたことが示された。従って、ペプチドの標識アミド化を行うことによっても、ペプチドにおけるアスパラギン酸及びグルタミン酸部位での優先的な開裂が抑制され、その結果、フラグメントイオンの検出率が向上したことが示された。
上述のことから、ペプチドのアミド化によって質量分析における解析の感度が上昇したことが示された。
[実施例2](参考例)
シアル酸含有糖鎖であるシアリルラクト−N−フコペンタオース(Sialyllacto-N-Fucopentaose;SLNFP、Exact Mass:1144.40)に対し、塩化[14N]アンモニウム及び塩化[15N]アンモニウムを用いて、アミド化が行われることを質量分析によって確認する実験をそれぞれ行った。なお、SLNFPは、N−アセチルノイラミン酸(NeuNAc)、ガラクトース(Galactose)、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、グルコース(Glucose)、及びフコース(Fucose)を構成糖とする糖鎖である。SLNFPの構造は、後述の図2中に記載した。
非標識アミド化については、以下のように行った。
1nmol/μl Sialyllacto-N-Fucopentaose IV(SLNFP)水溶液1μlを、50μlの1M 14NHCl水溶液に添加し、15μlの1M 4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム=クロリドn水和物(DMT−MM)水溶液を加え(pH4.2)、37℃で24時間インキュベーションした。
直径1cm×高さ5.5cmのリアクションベッセル(島津製作所製)にSephadex G-10(アマシャムバイオサイエンス製)を2.3ml充填し、大気圧下で、生成物のゲルろ過クロマトグラフィーを行った。26〜28drop目(1drop≒40μl)を回収し、遠心乾燥を行った。
乾燥した回収物を5μlのHOに溶解し、1μlを非標識アミド化SLNFPの質量分析測定用試料とした。
標識アミド化については、14NH4Clの代わりに15NH4Clを用いた以外は、上記非標識アミド化と同様に行うことにより、標識アミド化SLNFPの質量分析測定用試料を得た。
別途用意したアミド化されていないSLNFPと、上記非標識及び標識アミド化によって得られたSLNFPとについて、それぞれによって質量分析を行った結果を図2及び図3に示す。図2には、SLNFPの構造も示す。図2のAは、AXIMA-CFR(島津製作所製)によるMSスペクトルである。図2のBは、Aにおける分子量関連イオンのNa付加体のピーク([M+Na])の拡大スペクトルである。図3は、AXIMA-QIT(島津製作所製)による、[M+Na]をプレカーサーイオンとしたMS/MSスペクトルである。また、図2及び図3のスペクトルにおいて、上段スペクトルは、15NH4Clによる標識アミド化反応を行ったSLNFPのもの、中段スペクトルは、14NH4Clによる非標識アミド化反応を行ったSLNFPのもの、下段スペクトルは、アミド化反応を行わなかったSLNFPのものである。なお、これらのスペクトルはいずれも、横軸に質量/電荷(Mass/Charge)を表し、縦軸にフラグメントイオンの相対強度を表す。
糖鎖の非標識アミド化が行われれば、非標識アミド化糖鎖においては、アミド化反応を行わなかった糖鎖よりも、反応によって変換されたカルボキシル基1個あたり質量数が約1Da小さくなる。図2のA及びBによると、14NH4Clによる非標識アミド化反応を行ったSLNFPのスペクトル(中段)におけるNaが付加した分子量関連イオンピーク(m/z=1166.59)は、アミド化反応を行わなかったSLNFPのスペクトル(下段)におけるNaが付加した分子量関連イオンピーク(m/z=1167.48)よりも1Da小さくなっている。これは、SLNFPが有する1個のN−アセチルノイラミン酸のカルボキシル基がカルバモイル基に変換されたことに相当する。このことから、14NH4Clによる非標識アミド化反応によって糖鎖の非標識アミド化が行われたことが示された。
さらに図2のA及びBによると、非標識アミド化反応を行ったSLNFPのスペクトル(中段)のシアル酸脱離ピーク(m/z=876.34)は、アミド化反応を行わなかったSLNFPのスペクトル(下段)のシアル酸脱離ピーク(m/z=876.42)よりもイオン強度が小さくなっている。このことから、ISDやPSDによりシアル酸の脱離が抑制されたことが示された。
さらに、MS/MSの結果である図3によると、非標識アミド化されたSLNFPのスペクトル(中段)においては、アミド化されなかったSLNFPのスペクトル(下段)に比べてのシアル酸脱離ピーク(m/z=876付近)のイオン強度が小さくなるとともに他のフラグメントイオンが新たに検出されている。これは、非標識アミド化によって質量分析における糖鎖のシアル酸の脱離が抑制されたために他のフラグメントイオンの検出率が向上したことを示す。この結果、糖鎖の構造決定が容易になった。
そして、図2のAによると、15NH4Clによる標識アミド化反応を行ったSLNFPのスペクトル(上段)におけるNaが付加した分子量関連イオンピーク(m/z=1167.44)は、アミド化反応を行わなかったSLNFPのスペクトル(下段)におけるNaが付加した分子量関連イオンピーク(m/z=1167.48)とほぼ同じ質量数を有するものであった。さらに、MS/MSの結果である図3によると、標識アミド化反応を行ったSLNFPのスペクトル(上段)においては、非標識アミド化を行ったSLNFPのスペクトル(中段)におけるように、アミド化反応を行わなかったSLNFPのスペクトル(下段)に比べてシアル酸脱離ピークのイオン強度が小さくなるとともに他のフラグメントイオンの検出率が向上した。このことから、15NH4Clによる標識アミド化反応によって糖鎖の標識アミド化が行われたことが示された。さらに、非標識アミド化と標識アミド化とにおいて、同位体によって質量差の異なるピークが検出されること以外は、糖鎖の開裂パターンやイオンの検出率への同位体による影響はないことが確認された。
上述のことから、糖鎖のアミド化によって質量分析における解析の感度が上昇したことが示された。
ミオグロビントリプシン消化断片VEADIAGHGQEVLIR(m/z=1606)の、アミド化反応を行わなかった(non-amidation)もの、非標識アミド化反応(amidation(14N))を行ったもの、及び標識アミド化反応(amidation(15N))を行ったものについての質量分析結果である。 SLNFP(m/z=1144)の、アミド化反応を行わなかったもの、非標識アミド化反応を行ったもの、及び標識アミド化反応を行ったものについてのMSスペクトルである。 SLNFP(m/z=1144)の、アミド化反応を行わなかったもの、非標識アミド化反応を行ったもの、及び標識アミド化反応を行ったものについてのMS/MSスペクトルである。

Claims (3)

  1. タンパク質又はペプチドが有するカルボキシル基に、標識アミド化試薬である塩化[ 15 N]アンモニウムを作用させることにより、前記タンパク質又はペプチドの標識アミド化体を得て、前記標識アミド化体を質量分析法によって解析する、タンパク質又はペプチドの解析法
  2. 前記カルボキシル基が、タンパク質又はペプチドの酸性アミノ酸残基が有するカルボキシル基である、請求項1に記載の解析法。
  3. 前記酸性アミノ酸残基が、グルタミン酸残基及びアスパラギン酸残基から選ばれる、請求項2に記載の解析法。
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