JP2002168869A - ペプチドのアミノ酸配列の決定方法 - Google Patents
ペプチドのアミノ酸配列の決定方法Info
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Abstract
方法を提供する。 【解決手段】 (1) ペプチドのN末端アミノ基を重水素
標識化する工程、(2) 該重水素標識化ペプチドについ
て、フラグメントイオンの質量スペクトルを取得する工
程及び、(3) (2)の工程で得られた質量スペクトルデー
タからペプチドのN末端アミノ基由来データおよびC末
端カルボキシル基由来データを特定し、それぞれのアミ
ノ酸配列を解析し、ペプチドのアミノ酸配列を決定する
工程を含むことを特徴とするペプチドのアミノ酸配列の
決定方法。。
Description
酸配列の決定方法に関する。
ンパク質の構造を確認、同定する手段として重要であ
る。タンパク質やペプチドのアミノ酸配列決定を行う方
法として一般的にエドマン分解法が用いられているが、
最近では質量分析法を用いるアミノ酸配列の決定も行わ
れてきている。質量分析法を用いるアミノ酸配列決定法
は、混合物試料や微量試料にも適用可能であるという特
徴を有する。
いては、例えば、衝突活性化解離法(以下、CID法と記
す)あるいはPost Source Decay(以下、PSD法と記す)
による処理によって生じるフラグメントイオンの質量ス
ペクトル(以下、フラグメントイオンを取得する方法を
MS/MS法と、フラグメントイオンの質量スペクトルをMS/
MSスペクトルとそれぞれ記す)を取得し、このスペクト
ルを解析してアミノ酸配列を決定することが行われてい
る。一般にこの方法によってMS/MSスペクトルが得られ
るのは分子量が約3000程度以下であるため、それを
越える高分子量物では通常、化学的または生化学的手段
によって切断して分子量3000程度以下のペプチドに
した後、適用される。
で解離が起こり、該ペプチドのN末端を含むフラグメン
トイオンとC末端を含むフラグメントイオンが生成する
(Methods in Enzymology, 193 (1990))。得られるMS/
MSスペクトルには、N末端を含むフラグメントイオンピ
ークとC末端を含むフラグメントイオンピークとが混在
しており、解析に多大な労力を要するという問題があっ
た。N末端を含むフラグメントイオンとC末端を含むフ
ラグメントイオンを区別する方法として、例えば、H2
18Oを含む溶液中で酵素により加水分解を行うことによ
って、断片化された各ペプチドのC末端を18Oで標識
し、18O標識されたペプチドと18O標識していないペプ
チドのMS/MSスペクトルを比較する方法が報告されてい
る(RAPIDCOMMUNICATION IN MASS SPECTROMETRY, Vol.
5, pp312-315 (1991))。しかしながらこの方法では加
水分解による断片化を行うことが必須であるため、ペプ
チド全長の配列を決定するためには煩雑な工程を経るこ
とが必要であった。
チドのアミノ酸配列を効率的に決定する方法を提供する
ことにある。
明者らはペプチドのアミノ酸配列の決定方法につき検討
した結果、フラグメントイオンの質量スペクトル取得に
先立ち、被検ペプチドのN末端アミノ基を重水素標識化
することにより極めて効率的にペプチドのアミノ酸配列
を決定できることを見出し、本発明に至った。すなわち
本発明は、(1) ペプチドのN末端アミノ基を重水素標
識化する工程、(2) 該重水素標識化ペプチドについ
て、フラグメントイオンの質量スペクトルを取得する工
程及び、(3) (2)の工程で得られた質量スペクトルデー
タからペプチドのN末端アミノ基由来データおよびC末
端カルボキシル基由来データを特定し、それぞれのアミ
ノ酸配列を解析し、ペプチドのアミノ酸配列を決定する
工程を含むことを特徴とするペプチドのアミノ酸配列の
決定方法に関するものである。
本発明において、ペプチドとは、2個以上のα−アミノ
酸がペプチド結合により結合したものを言い、通常はア
ミノ酸数が約50以下である。また、タンパク質とは、
α−アミノ酸がペプチド結合により連結したポリペプチ
ド鎖からなる高分子化合物を言い、通常は分子量約40
00以上である。
度以下のペプチドが用いられ、高分子のペプチドやタン
パク質を予め切断することにより分子量を3000程度
以下としたペプチドを用いることもできる。タンパク質
の切断方法は特に限定されず、例えば、A Practical Gu
ide to Protein and Peptide Purification for Micros
equencing, Second Edition, Academic Press, (1993)
やMethods in Enzymology, 193, 389-412, (1990)等に
記載の化学的切断方法、消化酵素を用いた生化学的切断
方法等をあげることができる。具体的に化学的切断方法
としては例えば、BrCNによる切断方法が挙げられ、消化
酵素による生化学的切断方法としては、トリプシン、キ
モトリプシンなどを用いた消化を挙げることができる。
ドや4-ビニルピリジンなどにより予め還元Sアルキル化
処理を行っておくことが実用上好ましい。この処理によ
りペプチドを構成するアミノ酸としてシステインを含む
場合の副反応が抑えられる。この還元Sアルキル化処理
自体は公知であり、例えば、A Practical Guide to Pro
tein and Peptide Purification for Microsequencing,
Second Edition, Academic Press, (1993)等に記載の
方法に準じて行うことができる。また、ペプチドを前記
したタンパク質の切断により得る場合には、タンパク質
の切断の前に還元Sアルキル化処理を行ってもよい。
標識する工程 ペプチドのN末端アミノ基を重水素標識する方法として
は、ペプチドに重水素含有アシル化剤を作用させてN末
端に重水素含有アシル基を導入する方法、ペプチドに重
水素含有イソシアネートを作用させてN末端に重水素含
有カルバモイル基を導入する方法、ペプチドに重水素含
有イソチオシアネートを作用させてN末端に重水素含有
チオカルバモイル基を導入する方法等を挙げることがで
きる。ここでペプチドのN末端に導入される重水素含有
アシル基、重水素含有カルバモイル基、重水素含有チオ
カルバモイル基等の重水素標識化のための置換基(以
下、重水素置換基と記す。)において、重水素置換基内
の重水素原子が溶媒等により容易には水素と置換しない
ことが好ましく、この点からは重水素原子は重水素置換
基の炭素原子に接続していることが好ましい。かかる重
水素置換基としては、例えば−COCD3基、−COC
D2H基、−COCDH2基、−CONHCD3基、−C
ON(CD3)2基、−CONHCD2H基、−CONH
CD3基、CONHC6D5基、CONHC2H4CD3基、
−CSNHCD3基等を挙げることができる。また、該
ペプチドのN末端アミノ基の重水素標識化は全てのペプ
チドで行うのでなく、その一部で行うことが好ましく、
この部分重水素標識化における重水素標識化されていな
いN末端は重水素置換基に対応した重水素を含有してい
ない置換基(以下、軽水素置換基と記す。例えば、−C
OCD3基、−COCD2H基及び−COCDH2基に対
応する−COCH3基がこれに当る。)で同様に置換さ
れている。従ってペプチドのN末端アミノ基の重水素標
識化は通常、重水素置換基導入剤と軽水素置換基導入剤
との混合物をペプチドに作用させることにより行われ
る。
置換基導入剤の混合物を作用させて、N末端アミノ基を
重水素標識化すると、N末端に軽水素置換基が導入され
たペプチドと、重水素置換基が導入されたペプチドの2
種類の分子種が得られる。これらは、N末端における重
水素の数だけ質量に違いが生じる。
れば良いが、解析上2個〜5個程度が望ましい。重水素
置換基導入剤と軽水素置換基導入剤のモル比は解析を行
う上では、1/1程度が望ましい。
する工程において、ペプチドに、pH5以下で一般式
〔1〕 (R1CO)2O 〔1〕 (式中、R1はアルキル基を表わす。但し、R1における
水素原子の少なくとも1個は重水素原子で置換されてい
る。)で示される重水素カルボン酸無水物と一般式
〔2〕 (R2CO)2O 〔2〕 (式中、R2はアルキル基を表わす。但し、R2における
水素原子は重水素原子で置換されていない。)で示され
る軽水素カルボン酸無水物との混合物を作用させるか、
pH6以下で一般式〔3〕 R3NCO 〔3〕 (式中、R3は置換されていてもよいアルキル基、置換
されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいナ
フチル基または置換されていてもよいピリジル基を表わ
す。但し、R3における水素原子の少なくとも1個は重
水素で置換されている。)で示される重水素イソシアネ
ート化合物と一般式〔4〕 R4NCO 〔4〕 (式中、R4は置換されていてもよいアルキル基、置換
されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいナ
フチル基または置換されていてもよいピリジル基を表わ
す。但し、R2における水素原子は重水素原子で置換さ
れていない。)で示される軽水素イソシアネート化合物
との混合物を作用させることにより、ペプチドに対する
重水素カルボン酸無水物と軽水素カルボン酸無水物との
混合物あるいは重水素イソシアネート化合物と軽水素イ
ソシアネートとの混合物の使用量を厳密に制御しなくと
も、比較的広い範囲でε−アミノ共存下においてもN末
端に極めて選択性よく目的とする置換基を導入すること
ができる。 (1)-2 ペプチドへのカルボン酸無水物またはイソシア
ネート化合物処理工程 i) 重水素カルボン酸無水物〔1〕と軽水素カルボン酸
無水物〔2〕との混合物処理 ペプチドにpH5以下で重水素カルボン酸無水物〔1〕
と軽水素カルボン酸無水物〔2〕との混合物(以下、単
にカルボン酸無水物混合物〔1〕〔2〕と記す場合があ
る。)を作用させることにより、N末端アミノ基が選択
的に使用するカルボン酸無水物混合物に対応したアシル
基で置換されたペプチドが得られる。使用するカルボン
酸無水物混合物〔1〕〔2〕中の重水素カルボン酸無水
物〔1〕の割合により、該アシル基中の重水素含有アシ
ル基の割合が決まることとなる。重水素カルボン酸無水
物〔1〕におけるR1は直鎖または分岐アルキル基であ
り、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチ
ル基、ペンチル基、ヘキシル基等のC1〜6の直鎖また
は分岐アルキル基を挙げることができ、具体的には、無
水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、吉草酸無水
物等を挙げることができる。但し、該直鎖または分岐ア
ルキル基において水素原子のうち少なくとも1個は重水
素で置換されている。また、軽水素カルボン酸無水物
〔2〕におけるR2は水素原子が重水素で置換されてい
ない以外はR1と同じである。
H2〜5の範囲、さらに好ましくはpH3〜5の範囲で
行われる。本工程において、通常は前記pHを保持する
ための緩衝液を溶媒として使用する。該溶媒としては、
酢酸水溶液、ぎ酸水溶液、ピリジン−酢酸緩衝液、トリ
フルオロ酢酸水溶液等の揮発性溶媒が、後処理の簡便さ
の点で好ましい。通常は、本工程の反応は、ペプチドお
よび該溶媒からなる溶解または懸濁液に、カルボン酸無
水物混合物〔1〕〔2〕またはそのテトラヒドロフラン
等の溶液を添加することにより行われる。反応は、選択
性の点から約10℃以下で、使用する溶媒が凍らない範
囲の温度で行うことが好ましい。反応時間は通常、1〜
60分程度である。
応系内の濃度は反応系内の初期濃度として通常、pH5で
反応を行う場合には、約10〜30mM、pH3.3で反応を行う
場合には、約60〜300mM程度である。本工程において反
応後、反応液からN−アシル化されたペプチドを回収す
る。例えば、反応液に揮発性の溶媒を用いた場合は、反
応液を減圧下に留去すればよい。不揮発性の塩を含む溶
媒を用いた場合には、脱塩処理を行った後溶媒を減圧留
去すればよい。本工程の処理を行うことにより、N末端
のみが選択的に使用するカルボン酸無水物混合物〔1〕
〔2〕に対応してアシル化されたペプチドを製造するこ
とができる。
軽水素イソシアネート化合物〔4〕との混合物処理 ペプチドに、pH6以下で重水素イソシアネート化合物
〔3〕と軽水素イソシアネート化合物との混合物(以
下、単にイソシアネート化合物混合物〔3〕〔4〕と記
す場合がある。)を作用させることにより、N末端アミ
ノ基が選択的にカルバモイル化されたペプチドが得られ
る。使用するイソシアネート化合物混合物〔3〕〔4〕
の割合により、該カルバモイル基中の重水素含有カルバ
モイル基の割合が決まることとなる。重水素イソシアネ
ート化合物〔3〕 におけるR3は、置換されていてもよ
いアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換
されていてもよいナフチル基または置換されていてもよ
いピリジル基である。置換されていてもよいアルキル基
としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、よ
う素原子等のハロゲン原子で置換されていても良いアル
キル基を挙げることができ、具体的には、メチル基、エ
チル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル
基等のC1〜6アルキル基、クロロメチル基、ヨードメ
チル基、ジブロモメチル基、トリフルオロメチル基、ヨ
ードエチル基等のC1〜6ハロアルキル基を挙げること
ができる。置換されていてもよいフェニル基、置換され
ていてもよいナフチル基としては、例えばフェニル基、
p−クロロフェニル基、o−ブロモフェニル基、2,4
−ジクロロフェニル基等のハロゲン置換フェニル基、1
−ナフチル基、2−ナフチル基等のナフチル基、1−ヨ
ードナフチル基、2−クロロナフチル基等のハロゲン置
換ナフチル基等を挙げることができる。置換されていて
も良いピリジル基としては、例えば2−ピリジル基、3
−ピリジル基、4−ピリジル基等のピリジル基や、2−
クロロ−4−ピリジル基、3,5−ジフルオロ−2−ピ
リジル基等のハロゲン置換ピリジル基を挙げることがで
きる。但し、前記した置換されていてもよいアルキル
基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていて
もよいナフチル基または置換されていてもよいピリジル
基において水素原子のうち少なくとも1個は重水素で置
換されている。重水素イソシアネート化合物〔3〕とし
ては具体的には、フェニルイソシアネート、p−クロロ
フェニルイソシアネート、1−ナフチルイソシアネー
ト、2−ナフチルイソシアネート、ブチルイソシアネー
ト、エチルイソシアネート、4−ピリジルイソシアネー
ト、3−ピリジルイソシアネート等を挙げることができ
る。また、軽水素イソシアネート化合物〔4〕における
R4は水素原子が重水素で置換されていない以外はR1と
同じである。本工程の反応はpH6以下で行われ、好ま
しくはpH約3〜6の範囲、さらに好ましくはpH約5
〜6で行われる。
るための緩衝液を溶媒として使用する。該溶媒として
は、酢酸水溶液、ぎ酸水溶液、ピリジン−酢酸緩衝液、
トリフルオロ酢酸水溶液等の揮発性溶媒が、後処理の簡
便さの点で好ましい。通常は、本工程の反応は、ペプチ
ドおよび該溶媒からなる溶解または懸濁液に、イソシア
ネート化合物混合物〔3〕〔4〕またはそのテトラヒド
ロフラン等の溶液を添加することにより行われる。反応
は、例えば使用する溶媒が凍らない程度の低温から50
℃程度の範囲を挙げることができる。反応時間は通常、
1〜60分程度である。イソシアネート化合物混合物
〔3〕〔4〕の反応系内の濃度は反応系内の初期濃度と
して通常、pH6で反応を行う場合には、約2〜300mM程度
である。
イル化されたペプチドを回収する。例えば、反応液に揮
発性の溶媒を用いた場合は、反応液を減圧下に留去すれ
ばよい。不揮発性の塩を含む溶媒を用いた場合には、脱
塩処理を行った後、溶媒を減圧留去すればよい。本工程
の処理を行うことにより、N末端のみが選択的に使用す
るイソシアネート化合物混合物〔3〕〔4〕に対応して
カルバモイル化されたペプチドを製造することができ
る。
て、フラグメントイオンの質量スペクトルデータを取得
する工程 (1)の工程後の反応生成物であるペプチドは通常、軽水
素置換基導入剤でN末端アミノ基が修飾されたペプチド
と、重水素置換基導入剤でN末端アミノ基が修飾された
ペプチドとの質量数の違う2種類の分子種が含まれるこ
ととなる。反応生成物の質量スペクトルを測定すると、
N末端における対応する軽水素置換基に対する重水素置
換基の重水素の数だけ質量差に違いが生じた2本のピー
クを生じることとなる。これら2本のピークのMS/MSス
ペクトルデータをそれぞれ取得する。2本のピークを同
時に一つのMS/MSスペクトルデータとして取得すること
もできる。MS/MSスペクトルの取得の方法としては、ペ
プチドを主鎖部分で開裂させた質量スペクトルを分析で
きる方法であればよく、質量分析装置の種類、イオン化
法、ペプチドのフラグメント化方法は特に限定されな
い。例えば、最新のマススペクトロメトリー(化学同
人)、Methods in Enzymology, 270, 453-586 (1996)等
に記載の質量分析装置、イオン化法、ペプチドのフラグ
メント化方法を使用することができる。例えば、質量分
析装置としてはイオントラップ質量分析計、四重極型質
量分析計、磁場型質量分析計、飛行時間型質量分析計、
フーリエ変換型質量分析計などを挙げることができ、イ
オン化法としてはエレクトロスプレーイオン化法(ESI
法)、MALDI法、FAB法などが挙げられる。ペプチドのフ
ラグメント化方法としてはCID法、PSD法などによる処理
が挙げられる。
データからペプチドのN末端アミノ基由来データおよび
C末端カルボキシル基由来データを特定し、それぞれの
アミノ酸配列を解析し、ペプチドのアミノ酸配列を決定
する工程 (2) の工程で得られたペプチドのMS/MSスペクトルデー
タにおいて、軽水素カルボン酸無水物〔2〕や軽水素イ
ソシアネート化合物〔4〕等の軽水素置換基導入剤によ
りN末端アミノ基が修飾された分子種と、重水素カルボ
ン酸無水物〔1〕や重水素イソシアネート化合物〔3〕
等の重水素置換基導入剤によりN末端アミノ基が修飾さ
れた分子種の違いは、N末端における置換基(軽水素置
換基と重水素置換基)の質量差だけである。従って、N
末端を含むフラグメントイオンのみが、ペプチドに含ま
れる重水素置換基における重水素の数だけ質量差を生じ
ることになる。2つの分子種のMS/MSスペクトルを別々
に取得した場合には、これら2組のスペクトルデータを
比較し、質量変化していないフラグメントイオンのピー
クを特定することにより、これをC末端カルボキシル基
由来のフラグメントイオンと判定でき、重水素の数だけ
質量変化があるフラグメントイオンのピークを特定する
ことにより、これをN末端アミノ基由来のフラグメント
イオンと判定できる。2つの分子種を同時にMS/MSスペ
クトルを取得した場合には、該MS/MSスペクトルデータ
上で重水素の数だけ質量変化がある二重になったフラグ
メントイオンのピークを特定することにより、これをN
末端アミノ基由来のフラグメントイオンと判定でき、該
質量変化のないフラグメントイオンのピークを特定する
ことにより、これをC末端カルボキシル基由来のフラグ
メントイオンと判定できる。
端カルボキシル基由来のフラグメントイオンデータとN
末端アミノ基由来のフラグメントイオンデータをそれぞ
れ、例えばMethods in Enzymology, 193 (1990)に記載
の方法によりMS/MSスペクトルデータ上で質量の順にた
どり、その質量差からアミノ酸の特定及びその配列順序
を解析することができ、これらの結果から、ペプチドの
アミノ酸配列を決定することができる。もちろんいずれ
か一方のみを解析することによってもペプチドのアミノ
酸配列を決定することは多くの場合可能であるが、N末
端アミノ基由来のフラグメントイオンデータより求めら
れるアミノ酸配列とC末端カルボキシル基由来のフラグ
メントイオンデータより求められるアミノ酸配列の両者
を解析することにより、より正確にペプチドのアミノ酸
配列を決定することができ、特に、ある特定部分のフラ
グメントイオンが検出されない等により、N末端アミノ
基由来、C末端カルボキシル基由来のいずれか一方の解
析ではアミノ酸配列の決定が困難となり得る場合により
効果的に目的が達せられるので、ペプチドの確実なアミ
ノ酸配列決定が図れることとなる。
に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるもの
ではない。 実施例1 (1)ヒト成長ホルモンのトリプシン消化物の調製 組換えヒト成長ホルモン(hGH)200μgを1%炭酸水素ア
ンモニウム緩衝液(pH7.9)200μLに溶解し、トリプシ
ンを4μg添加して、37℃、24時間反応させた。
渣に0.1%酢酸水溶液(pH 3.3)を12μL加えて溶解し、
氷上で1分間インキュベートした後、無水酢酸と無水酢
酸-d6(無水酢酸の水素原子が全て重水素置換されたも
の)との1:1で混合し、これを無水テトラヒドロフラン
で1Mに調製した試薬を5μL添加して氷中で5分間インキ
ュベートした。該反応液からの溶媒を減圧下に溜去し、
残渣を質量分析用試料とした。
ップ型質量分析計LCQで行った。(2)の工程で得られ
た質量分析用試料を10μLの溶媒(酢酸/水/メタノー
ル=0.1/50/50)に溶解し、1μLをNanospray用チップに
入れ、Nanosprayイオン源(Protana社製)に装着した。
エレクトロスプレー電圧を0.7kV、キャピラリー温度を1
20℃に設定してエレクトロスプレーマススペクトルおよ
びMS/MSスペクトルをそれぞれ取得した。
5)の解析を例にする。無水酢酸-d6を含む無水酢酸でア
セチル化処理したhGHトリプシン消化物試料のマススペ
クトルを取得すると、本消化断片は、水素からなる試薬
でアセチル化された反応物ピークm/z886.5と、重水素か
らなる試薬でアセチル化された反応物ピークm/z889.5が
検出された。これらの2本のピークm/z886.5とm/z889.5
のMS/MSスペクトルを一度に同時に取得した(図1)。M
S/MSスペクトル中から質量差が3Daある*を付けた二重
のピークを特定することができ、これらはN末端由来の
フラグメントイオンであることがわかった。これらのフ
ラグメントイオン(*)の質量差を読み取ることによ
り、→E→I/L→I/L→Rという配列が確認できた(ここ
で、IとLとは分子量が同じであるためいずれかを特定
できないので、I/Lと記載する。以下同様。)。一方、
3Daの質量差がある二重のピーク以外の一重のピーク
は、C末端由来のフラグメントイオンであることがわか
り、質量差を読み取ることによりAc-Ser→N→I/L→E→
という配列を確認できた。以上の結果から、hGHトリプ
シン消化物に含まれるペプチドをアミノ酸配列SN(I/L)E
(I/L)(I/L)Rと決定できた。
LRRIRPKLKWDNQ、ペプチド研究所製)100pmolを0.1Mピリ
ジン-酢酸(pH6.0)、0.1Mピリジン-酢酸(pH5.0)、0.
1%酢酸水溶液(pH3.3)および1%酢酸水溶液(pH2.7)各
12μLにそれぞれ溶解し、氷上で1分間インキュベート
した後、0.005M〜5Mの無水酢酸/無水テトラヒドロフラ
ンを5μL添加し、氷上で5分間インキュベートした。
該反応液から溶媒を減圧下に留去し、残渣を質量分析用
試料とした。質量分析は二重収束型質量分析計(日本電
子、型式JMS-HX/HX110A)を用い、FABイオン化法を使用
した。上記質量分析用試料を水・メタノール・酢酸(5
0・50・1)2μLに溶解し、該試料溶液1μLをグリ
セロール・チオグリセロール(1・1)1μLと混合し
て上記分析計に供し、FAB-MSおよびFAB-MS/MS測定を行
った。無水酢酸処理後に原料のダイノルフィンAに比し
質量が42増加したピークについてMS/MS分析を行ったと
ころ、N末端α-アミノ基のみがアセチル化されたダイ
ノルフィンAであることが確認できた。各pHおよび無
水酢酸量条件におけるN末端のみアセチル化されたダイ
ノルフィンAの選択率を表1に示す。
と同様にしてN末端アミノ基をCD3CO基により重水
素標識化できる。
アネート化合物〔2〕を用い、表2に記載した条件とし
た以外は参考例1と同様に実験を行った。結果を表2に
示す。
化合物/THF5μL中のシアネート化合物のモル濃度
(mM)として表示する。 *2:N末端のみカルバモイル化されたダイノルフィン
Aの選択率 重水素置換体も化学的性質は同様であるため、同様にし
てN末端アミノ基にC6D5NHCO基またはCD3C2H
4NHCO基により重水素標識化できる。
列を極めて効率的に決定することが可能な方法を提供で
きる。
チル化処理試料のマススペクトルにより得られたアセチ
ル化されたピーク(m/z886.5と889.5)のMS/MSスペクト
ルを示す。 *印は、3Daの質量差がある二重フラグメントピークを
示す。S、N、I/L、E、Rはそれぞれフラグメントイ
オンピークの質量差から求められるアミノ酸残基を示
し、Sはセリン残基を、Nはアスパラギン残基を、I/L
はイソロイシン残基またはロイシン残基を、Eはグルタ
ミン酸残基を、Rはアルギニン残基を表わす。また、A
cはアセチル基を表す。
Claims (4)
- 【請求項1】(1) ペプチドのN末端アミノ基を重水素標
識化する工程、(2) 該重水素標識化ペプチドについて、
フラグメントイオンの質量スペクトルを取得する工程及
び(3) (2)の工程で得られた質量スペクトルデータから
ペプチドのN末端アミノ基由来データおよびC末端カル
ボキシル基由来データを特定し、それぞれのアミノ酸配
列を解析し、ペプチドのアミノ酸配列を決定する工程を
含むことを特徴とするペプチドのアミノ酸配列の決定方
法。 - 【請求項2】ペプチドのN末端アミノ基を重水素標識化
する工程が、ペプチドに、pH5以下で一般式〔1〕 (R1CO)2O 〔1〕 (式中、R1はアルキル基を表わす。但し、R1における
水素原子の少なくとも1個は重水素原子で置換されてい
る。)で示される重水素カルボン酸無水物と一般式
〔2〕 (R2CO)2O 〔2〕 (式中、R2はアルキル基を表わす。但し、R2における
水素原子は重水素原子で置換されていない。)で示され
る軽水素カルボン酸無水物との混合物を作用させるか、
pH6以下で一般式〔3〕 R3NCO 〔3〕 (式中、R3は置換されていてもよいアルキル基、置換
されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいナ
フチル基または置換されていてもよいピリジル基を表わ
す。但し、R3における水素原子の少なくとも1個は重
水素で置換されている。)で示される重水素イソシアネ
ート化合物と一般式〔4〕 R4NCO 〔4〕 (式中、R4は置換されていてもよいアルキル基、置換
されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいナ
フチル基または置換されていてもよいピリジル基を表わ
す。但し、R2における水素原子は重水素原子で置換さ
れていない。)で示される軽水素イソシアネート化合物
との混合物を作用させる工程である請求項1に記載の方
法。 - 【請求項3】ペプチドとして、〔1〕の工程に先立ちS
アルキル化処理されたものを用いる請求項1または2に
記載の方法。 - 【請求項4】ペプチドとして、タンパク質の切断により
得られたものを用いる請求項1〜3に記載の方法。
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- 2000-12-05 JP JP2000369684A patent/JP2002168869A/ja active Pending
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