JP4550609B2 - 防音調湿天井構造 - Google Patents

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Description

本発明は、天井構造に関し、特に、調湿性および防音性を兼ね備えた防音調湿天井構造に関する。
従来、マンション等の集合住宅や高層住宅では、上の住人の生活音が床を通じて下の部屋に聞こえてしまうという問題点があった。そのうち、最も苦情となるのは、床に対する直接的な衝撃音、すなわち、床衝撃音である。
床衝撃音は、重量衝撃音と軽量衝撃音に分けられる。重量衝撃音は、子供が上の階で走り回ったり飛び跳ねたりする場合などの「ドン」といった音に代表される重たい音であり、軽量衝撃音は、スプーンを落とした場合などの「コツン」といった音に代表される軽い音である。従来では、この様な上階の床衝撃音を、構造体自体による方法を除いては、天井ボードの裏にロックウールやグラスウールを組み合わせるなどして緩和していた。
特開平10−131308号公報 特開平10−331298号公報 特開平5−248032号公報 特開平5−253439号公報 特開平8―112876号公報 特開平10―30281号公報 特開平10−131308号公報
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
通常、マンションなどの構造物では、天井と天井スラブとの間は約30cm程度の空間があり、その空間は、建物側壁等に設けられている通気口によって外気とつながっている。従って、室内と外気との温度差により結露が発生し、長年の居住によって天井ボードとロックウールとの間に大量のカビが発生するという問題点があった。また、結露によって天井ボードの素材である石膏がぬれ、部屋側までシミが発生するという問題点があった。また、場合によっては石膏が膨潤し、天井ボードの剥落や室内へのカビ胞子の拡散も発生するという問題点があった。
また、台所、脱衣場などの湿気により局所的に室内湿度が高くなり、じゅうたん、カーペット、布団などが湿って、カビ・ダニなどが大量に発生し、これに起因する、アトピー性皮膚炎、気管支喘息などの問題が発生していた。
一方、防音性を高めるため孔空きボードを用いた天井も知られている。この様な天井によれば、室内内部における音の反射や、室外への音の漏洩も防げ、また、外部からの音の進入防止にも一定の効果が期待できる。加えて、通気性が確保されるので、ある程度のカビ発生の遅延効果が期待できる。しかしながら、天井裏がロックウールやグラスウール等の繊維系素材であれば、長期間の居住により上記と同様に大量のカビが発生し、孔をつたって室内側のボード面にもカビが回り込むという問題点があった。
また、防音の観点からは、ロックウール等の敷設物の厚みを厚くするのが好ましいが、天井と天井スラブとの間には、配管や配線を巡らすため、厚みには自然と制約がでてくるという問題点があった。
一方、この様なロックウールやグラスウールを敷設しない天井であれば、結露が生じても外気と通じているので、やがて水分が蒸発しカビも発生しにくくなる。しかしながら今度は、床衝撃音を吸収できないという問題点が生じる。
すなわち、従来では、防音性能に着目した場合には結露ないしカビの問題が発生し、結露ないしカビの問題に着目すれば防音性に劣る、という問題点があった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、天井部分を過度に厚くすることなく、結露を防ぎつつ床衝撃音を緩和する天井を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の防音調湿天井構造は、天井スラブの下に設け、天井を構成する吸音用孔空きボードと、原料木材の長径を30mm〜50mmに破砕して炭化し、炭化後の長径が15mm以下である炭の割合が炭全体の90重量%以上を占め、嵩密度が0.104kg/l〜0.151kg/lであり、吸音用孔空きボードの上に敷き詰める天井裏敷設用炭と、吸音用孔空きボードと天井裏敷設用炭との間に介在させ炭粉落下を防止するとともに通気性を確保するシート部材と、を有し、天井裏敷設用炭の敷設高さを7cm〜15cmとして床衝撃音を抑制し、天井裏敷設用炭と天井スラブとの間の空間を外気と通じさせる通気窓を設けて外気の部屋への吹き込みを防止しつつ通気性を確保して室内調湿する、防音調湿天井構造である。
すなわち、請求項1に係る発明は、所定の大きさの炭を用いて音の拡散効率を高め、嵩密度を所定の範囲として防音効率を高めかつ敷設厚みが過度に厚くなるのを防ぎ、比表面積が大きな炭を用いて調湿性能も高める。ボード自体でも防音性能を有して上階からの床衝撃音をより効果的に緩和する。この構成により、結露を防ぎつつ床衝撃音を緩和する天井を提供することが可能となる。
なお、請求項1に係る発明品は、短いもしくは小さな炭の占める割合が高いので炭同士が重なり、外気の部屋への直接進入(吹き込み)が防止される。従って、結果として室内外の通気性は保たれ、一方で気密性も確保される。なお、炭を所定厚みで用いるため断熱性および蓄熱性にも優れた天井が構築されることとなる。
なお、介在するとは各構成要素の位置関係を規定する意であって、本願の作用効果を奏するのであれば、他の構成が間に存在することを妨げない。また、孔は貫通したものであって、その形状は特に限定されず、例えば、円柱にくり抜く場合のほか、切頭円錐にくり抜く様な態様であっても良い。
なお、せいぜい数センチの大きさである炭の形状は粒状または棒状であるため、本願では、炭の大きさを規定するために長径という表現を用いるものとする。そして、長径とは炭の最も長い部分の長さを示すものとする。
なお、嵩密度の測定方法はJIS K 1474−1991の「手動充てん法」に従った。すなわち、炭を200mlの充てん密度測定容器にゴム板上でたたき充てんし、単位体積あたりの質量を求めた値である。
なお、原料が針葉樹である炭の割合が炭全体のうち95重量%以上を占めることが好ましい。針葉樹を原料とするので、炭化したときの空孔が広葉樹より大きく、拡散の作用が向上し水分吸収能が高まり高い調湿効果を得ることができる。これにより、ロックウールその他の繊維状部材を用いた場合と異なり、結露発生をより効果的に防止可能となる。また、針葉樹として解体廃材やパレット廃材、間伐材などを用いれば、原料木材を安く安定して確保でき、安価な天井構造を提供可能となる。
なお、炭の固定炭素率が90重量%以上であることが好ましい。吸放湿性能が高く、また、湿度の高い雰囲気下であっても長期(数年から数十年以上)にわたり腐らない天井構造の提供が可能となる。なお、ここで固定炭素とは、木酢液などの有機物としてではなく、化学物質の構成元素でない単独で存在する炭素をいう。
なお、炭のBET法比表面積が200m/g以上であることが好ましい。吸放湿性ないし吸着性の高い天井構造を提供可能となる。
請求項2に記載の防音調湿天井構造は、請求項1に記載の防音調湿天井構造において、前記吸音用孔空きボードは、厚みが5mm〜15mm、孔の径が5mm〜15mm、隣接する孔同士の中心間距離が20mm〜30mmであることを特徴とする。
すなわち、請求項2に係る発明は、ボードの強度を保ちつつ好適な通気性を確保し、また、上階からの床衝撃音を緩和する。
請求項3に記載の防音調湿天井構造は、請求項1または2に記載の防音調湿天井構造において、前記シート部材を、フラジール形法による通気度が1cm・(cm・s)−1以上30cm・(cm・s)−1以下の不織布としたことを特徴とする。
すなわち、請求項3に係る発明は、炭の漏洩を実質的に無視できる目としつつ通気性を好適に確保する。なお、より好ましい通気度は、5cm・(cm・s)−1以上10cm・(cm・s)−1以下である。
請求項4に記載の防音調湿天井構造は、請求項1、2または3に記載の防音調湿天井構造において、前記シート部材が通気性のある不燃紙であることを特徴とする。
すなわち、請求項4に係る発明は、防火性に優れる。
本発明によれば、天井部分を過度に厚くすることなく、結露を防ぎつつ床衝撃音を緩和する天井を提供可能となる。また、炭を用いるので、ロックウール等の繊維系素材より充填率が高く、断熱性および蓄熱性に優れた部屋を提供可能となる。なお、炭の調湿作用により結露が発生しないため、長期の使用によっても天井裏にカビが発生することなく衛生的であり、また、湿度が適度に保たれるので、ダニの発生も抑制可能となる。
さらに、ホルムアルデヒド等のシックハウスの原因物質に関しても炭の吸着性能により吸着可能となる。換言すれば、本発明は空気清浄効果も発揮する。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態.
図1は、本発明の一実施の形態の構成を示した概要図である。このうち、図1(a)は、天井部分の断面図を、図1(b)は、天井を屋根裏側からみた図を、図1(c)は、天井を部屋側から見上げた図をそれぞれ示している。図1(a)に示した様に、天井部1は、野地板Jおよび野縁Fを挟んで、天井ボード2の上に天井裏用炭袋3が敷き詰められた構成となっている。天井裏用炭袋3の上は天井スラブSが形成され、天井裏用炭袋3と天井スラブSとの間の空間Kに、必要に応じて配管や配線が巡らせることができる様になっている。また、空間Kは、通気窓Mを介して外気と通じている。
各部を説明する。天井ボード2は、貫通した孔Hが多数整列して設けてある吸音ボードであり、石膏を主素材としている。その大きさは、一枚、900mm×900mm×9.5mmであり、直径5mmの孔が縦横15mmの間隔で整列している。孔Hが設けてあることにより、音が散乱し吸音および防音効果が高くなる。また、孔Hが設けられていることにより、通気性が確保され、室内の調湿、天井裏の結露を防止可能となる。なお、孔Hの大きさや形状または配置間隔はこれに限ることなく使用の態様により種々採用できる。天井ボード2は、ビス留め等により野地板Jに取り付けられる。
天井裏用炭袋3は、天井裏敷設用炭4と、これを封入する不織布からなる外袋5とから構成される。図2は、天井裏用炭袋3の一辺を開けた様子を示した概念図である。天井裏敷設用炭4は、針葉樹を炭化させたものを用いる。図3は、広葉樹木炭と、針葉樹木炭を同倍率で写した顕微鏡写真である。図から明らかな様に、針葉樹と広葉樹では、炭化させたときのマクロな空孔(100nm径以上数μm)の大きさは針葉樹の方が明らかに大きい。マクロな空孔が大きいと、空気との接触面積が大きくなり、吸放湿を促進するため好ましく、天井裏敷設用炭4では、針葉樹木炭を用いている。使用する針葉樹としては例えば、アカマツ、カラマツ、スギ、ヒノキなどが挙げられる。
また、微細であるため図3では表れないが天井裏敷設用炭4は、ミクロな空孔(0.5nm〜100nm径)を多数有した多孔質体であるので、高湿環境下では水蒸気を吸着し、乾燥ないし低湿環境下では水蒸気を放出する。シリカゲルの様な除湿剤は湿気を吸着するのみで一度吸い取ってしまえば機能を果たしにくくなるのに対し、天井裏敷設用炭4の場合は周囲の環境変化に合わせて水蒸気を吸放出するので調湿機能を発揮する。すなわち、天井部1は、針葉樹を用いた天井裏敷設用炭4を用いることにより、屋外と接続している空間Kと室内との温度差に由来する従来であれば結露となるべき水分(過度な湿気)をマクロな空孔を通じてミクロな空孔で調整し、結露発生を防止可能となっている。
なお、吸着性能を高めるため、天井裏敷設用炭4の炭化温度は700℃〜1000℃が好ましく、さらに好ましくは750℃〜900℃であり、最も好ましくは780℃〜880℃である。これは、1000℃をこえて炭化すると比表面積が小さくなるためであり、700℃未満では比表面積が小さく、かつ強度不足や炭化不良を生じるためである。なお、炭化に当たっては、比表面積を大きくする通常の制御、例えば、温度、窒素量、酸素量などの雰囲気条件、炭化時間の制御を適宜おこなう。具体的には、木炭の揮発分を10重量%以下、好ましくは6重量%以下となる様にする。また、BET法による比表面積の測定で、比表面積が200m/g以上となる様に調整するのが好ましく、300m/g以上がさらに好ましい。また、固定炭素率が90重量%以上となる様に炭化する。
天井裏敷設用炭4は、その長径が15mm以下の炭が占める割合が、炭全体の90重量%以上占めるのが好ましく、原料木材は、その範囲に収まる様に破砕する。また、同様に、炭化後の嵩密度が1リットル(1000cm)あたり0.093kg〜0.156kgであることが好ましい。より好ましくは、0.104kg〜0.151kgである。このように調整すると、平均して50%〜60%の湿度を有する天井裏(床下湿度は平均して70〜90%)を、通気性と気密性の両方を確保しながら調湿が可能となり、また、マクロな空孔および炭同士の重なり合いによる空隙が音波を効率的に散乱・吸収する。炭化処理によっても異なるが、おおよその目安としては、炭化前の原料木材を、長さが30mm〜50mm、幅が数mmの棒状に破砕するとよい。
なお、ウバメガシを素材とする備長炭に代表される広葉樹炭は、針葉樹炭に比べマクロ空孔およびミクロ空孔の観点から調湿能力がおとり、また、燃料品質の観点から原料の選定コスト、管理コストが必要である。一方、天井裏敷設用炭4では、むしろ針葉樹が好ましく、杉、桧、松などにより構成される建築廃材などを利用すれば、木材の選別が実質的に不要なため一括して炭化処理でき、管理コストも不要となる。また、廃木材は平成14年5月30日から施行された建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)により、原則として再利用する必要があり、今後剰余するとみられる。従って、天井裏敷設用炭4は、原料の調達が容易であるとともに原料選別が不要であり低コスト化を図ることができるほか、資源の有効活用にも寄与できる。
以上の説明では、天井裏敷設用炭4は、針葉樹としたが、広葉樹由来の木炭やヤシ殻炭あるいは粒状活性炭が混入していることを妨げない。例えば、針葉樹木炭の容積:広葉樹由来の木炭その他の炭の重量=10:0が最も望ましいが、このほか、9:1、8:2、7:3であってもよく、目安としては針葉樹木炭が80重量%以上が好ましい。なお、建築廃材を減量に用いる場合は、床柱以外はほとんど針葉樹であるので、95重量%以上が針葉樹となる。
次に、外袋5について説明する。針葉樹木炭は、細胞壁の厚みが広葉樹木炭より狭く脆いため(図3参照)、運搬課程や施工時など木炭塊が擦れ合う際に木炭粉が発生しやすい。そこで、外袋5は、通気性を確保しつつ、天井裏敷設用炭4の微粉が天井ボード2の孔Hから部屋側へ漏出しないものとした。
具体的には、外袋5は不織布とした。不織布とすることで、炭粉の漏出を効率よく防止できる。これは、織布にあっては、織糸の交差部分にできる目(空隙部分)の布の厚みが必然的に薄くなるのに対し、不織布では、例え同じ広さの空隙であっても厚みがほとんど変わらないので木炭粉が通過する際の抵抗が大きくなるからである。このほか、織布では、運搬時や施工時など、外袋の片側を引っ張って移動させる様な状況下では、目が広がるのに対し、不織布では目が拡径しにくく、この点からも木炭粉の漏出を防ぐことができる。不織布の目は、JIS−L1906あるいはJIS−L1096にいうフラジール形法で測定した通気度が1cm・(cm・s)−1以上30cm・(cm・s)−1以下が好ましい。
なお、不織布の素材としては、水に対する耐腐食性の高いものが好ましい。これは、天井裏用炭袋3は頻繁に交換できない環境にあるからである。従って、例えば、10年間性状の変化しない素材が好ましく、さらに好ましくはカビの生えにくいものがよい。具体的には、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、または、ポリエステル系繊維が好ましい。
また、不織布は種々の方法で製造することができるが、例えば、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂を用いて、トウ開繊維法、バーストファイバー法および積層延展法で製造することができる。積層延展法によれば、強度、耐水性などの点で特に好ましい。
なお、従来でも、不織布を用いた広葉樹木炭用の外袋は存在していたが、通気性を巨視的にとらえていた結果、目の粗いもの、具体的には、木炭粉の漏洩が問題となるレベルである130cm・(cm・s)−1程度以上のものが用いられていた。
なお、外袋5の大きさは45cm×45cm〜55cm×55cmの範囲が好ましい。また、天井裏敷設用炭4は、外袋5が上記の大きさの場合には15リットルから21リットル封入することが好ましい。この様にすると、封入後の大きさが一辺45cm前後、厚みが10cm程度となり、4畳半、6畳、8畳といった畳単位で規定される部屋の天井を天井裏用炭袋3により整然と満たすことが可能となり、また、防音性、調湿性も好適に両立させる厚みとなる。
次に、実験例により防音性能を説明する。実験では、発明品と、防音性を高めていない従来天井(石膏ボードのみの場合と、石膏ボード+グラスウールの場合)と、従来の防音天井(石膏ボード二枚張り+ロックウール)と、を比較することとした。また、発明品に関しては、天井裏用炭袋3中の天井裏敷設用炭4の嵩密度を異ならせた防音実験を行った。
評価に際しては、日本建築学会推奨の床衝撃法であるJIS
A 1418−1およびJIS A
1418−2「建築物の床衝撃御社弾性能の測定方法」に準じた。なお、音響評価を絶対値として出すよりも、本実験では、同一の実験室を用いて、本発明と従来の防音天井構造とを比較する、いわば、相対評価をおこなうことを念頭に置いた。図4は、実験室の様子を示した図である。4畳半の2階建ての実験室を用意し、2F音原室では、音源(タッピングマシーン)を5カ所(部屋中央、対角線上の対象な4カ所(壁から50cm離した位置))設置し、1F受音室(床から天井ボードまでの高さ2200mm)では、床から1200mmの高さにマイクロホンを3カ所(部屋中央、対角の対称な位置2カ所(壁から750mm離れた場所))設置して音の大きさを測定した。
なお、比較例を含めて以下の例では、野地板に天井ボードを打ち付け、その上(天井裏)に、天井裏敷設用炭やロックウール等を載置した。野地板は厚み9mm、幅75mm、ピッチ間隔450mmで一方向のみに渡し、これと直角に交差する野縁に固定した。野縁は、40mm×40mmの角柱であり、ピッチ間隔は380mmである。図5は、天井裏における敷設物の敷設の様子(a)と、野縁と野地板との関係(b)を示した図である。
試験では、タッピングマシーンにより軽量衝撃音を発生させ、マイクロホンで音を拾い、63Hz、125Hz、250Hz、500Hzの音の大きさ(デシベル)を測定した。また、評価としては、L等級評価を行った。なお、図6に、実験例と比較例との天井ボードと敷設物の違いを模式的に示した。
<実験例1〜7:発明品の構成>
まず、天井裏敷設用炭の原料として、建築廃木材(木製パレットや木造家屋解体材)を調達した。この木材を、破砕機により長径が30mm〜50mmの棒状に破砕した。この棒状木材を横型連続式炭化炉の中で温度750℃〜850℃で1時間加熱し、針葉樹由来の木炭を得た。炭化過程で収縮が起こったが、得られた木炭は、長径が15mm以下のものの割合が90重量%であった。また、固定炭素率は93重量%、揮発分は4重量%、灰分は3重量%であった。また、BET法比表面積は220m/gであった。
この木炭を、敷設厚みが14cm程度であって、嵩密度が0.093kg/リットル〜1.163kg/リットルとなる様に外袋に入れ、天井裏用袋体を製造した。外袋用不織布としては、ユニセルメルフィットBT−070EW(ユニセル株式会社製)を用い、一辺45cmの正方形の袋(内容物の入っていない薄い状態)とした。この不織布は70g/m、厚さ0.15mmのポリプロピレン系不織布であって、通気度は、7.5cm・(cm・s)−1である。なお、孔空き天井ボードの裏側に敷設した後、天井をたたいても、木炭微粉の落下は観察されず、炭の漏出はないことを確認した。
なお、得られた木炭について、吸放湿試験を調湿建材の評価法(JIS−A1470−1)で測定した結果、木炭1kg当たり、20g〜30g程度の水蒸気を吸放出できる能力があることが確認できた。なお、吸放出性能の測定は、動的吸放湿試験装置でおこなった。温度25℃、湿度70%の状態で1mの空気に含まれる水の量は約16gである。この空気の湿度を10%下げるには2gの水蒸気を吸湿することが必要であり、本実施例で得られた木炭はこれをはるかに上回る容量を有し、調湿能が飽和せず、調湿作用が充分確保されていることが確認できた。
なお、得られた木炭の固定炭素率はJIS−M8812による石炭類およびコークス類工業分析法に従った。比表面積は、窒素ガスBET法(島津製作所製フロソーブII型を用い、1点法、相対圧0.294)で測定したものである。
なお、天井ボードとしては、吸音用孔空きボード(吉野石膏製タイガートーン:厚み9.5mm)を用いた。
<比較例1.従来天井(敷設物なし)>
比較例1としては、化粧石膏ボード(吉野石膏製ジプトーン:厚み9.5mm)だけの構成とし、敷設物を敷設しなかった。
<比較例2.従来天井>
比較例2としては、天井ボードは、化粧石膏ボード(吉野石膏製ジプトーン:厚み9.5mm)とし、敷設物には、グラスウール(パラマウントガラス工業製ハウスロン:厚み50mm)を用いた。
<比較例3.防音天井>
比較例3としては、天井ボードは、石膏ボード(吉野石膏製タイガーボード:厚み12.5mm×2枚重ね)とし、敷設物には、ロックウール(ニチアス製ホームマット:厚み55mm)を用いた。
<防音試験の比較>
図7に実験結果を示した。防音性能をみると、実験例1〜7から分かる様に、嵩比重が0.093kg/リットルをこえ0.156kg/リットル未満であると、軽量衝撃音の防音性に優れることが分かる。比較例とL等級で比較すると、少なくとも、嵩比重が0.104kg/リットル以上0.151kg/リットル以下であると、従来の防音天井(比較例3)と同等程度であることが確認できた。なお、図7で、予備実験として示している様に、天井裏敷設用炭を敷設する前では、軽量衝撃音に対する防音効果が劣ることも確認できた。
以上の結果から、本発明品によれば、従来の防音天井と同等レベルの防音性能を発揮できるとともに、天井ボードの孔があるため調湿作用が発揮され、他の繊維系素材を敷設した密閉型の天井と異なり、結露が発生せず、また、断熱作用・蓄熱作用の期待できる天井を提供可能となる。
なお、ここまで、炭を外袋に封入する態様について説明したが、これに限ることなく、孔空きボード自体に通気性のある不燃紙を貼り付けて、不燃紙張りの孔空きボードで炭を挟んだ天井部材として本発明を応用できる。この様な孔空き不燃ボードとして、例えば、不燃紙張りタイガートーン(吉野石膏株式会社製)を挙げることができる。
木炭は、また、比表面積が大きく、吸着作用を発揮するので脱臭作用等の空気浄化作用を期待できる。このため、シックハウス症候群の患者の住居において改修工事をおこない、快適な家屋を提供可能となる。
本発明の一実施の形態の構成を示した概要図である。 天井裏用炭袋3の一辺を開けた様子を示した概念図である。 広葉樹木炭と、針葉樹木炭を同倍率で写した顕微鏡写真である。 実験室の様子を示した図である。 天井裏における敷設物の敷設の様子と、野縁と野地板との関係を示した図である 実験例と比較例との天井ボードと敷設物の違いを示した模式図である。 実験結果を示した図表である。
1 天井部
2 天井ボード
3 天井裏用炭袋
4 天井裏敷設用炭
5 外袋
F 野縁
H 孔
J 野地板
K 空間
M 通気窓
S 天井スラブ

Claims (4)

  1. 天井スラブの下に設け、天井を構成する吸音用孔空きボードと、
    原料木材の長径を30mm〜50mmに破砕して炭化し、炭化後の長径が15mm以下である炭の割合が炭全体の90重量%以上を占め、嵩密度が0.104kg/l〜0.151kg/lであり、吸音用孔空きボードの上に敷き詰める天井裏敷設用炭と、
    吸音用孔空きボードと天井裏敷設用炭との間に介在させ炭粉落下を防止するとともに通気性を確保するシート部材と、
    を有し、
    天井裏敷設用炭の敷設高さを7cm〜15cmとして床衝撃音を抑制し
    天井裏敷設用炭と天井スラブとの間の空間を外気と通じさせる通気窓を設けて外気の部屋への吹き込みを防止しつつ通気性を確保して室内調湿する
    防音調湿天井構造。
  2. 前記吸音用孔空きボードは、厚みが5mm〜15mm、孔の径が5mm〜15mm、隣接する孔同士の中心間距離が20mm〜30mmであることを特徴とする請求項1に記載の防音調湿天井構造。
  3. 前記シート部材を、フラジール形法による通気度が1cm・(cm・s)−1以上30cm・(cm・s)−1以下の不織布としたことを特徴とする請求項1または2に記載の防音調湿天井構造。
  4. 前記シート部材が通気性のある不燃紙であることを特徴とする請求項1、2または3に記載の防音調湿天井構造。


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