JP4549292B2 - 光熱変換測定装置、光熱変換測定方法 - Google Patents
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Description
ところで、試料に励起光を照射すると、その照射部は励起光を吸収することにより発熱し、これを光熱効果という。また、この発熱を測定することを光熱変換測定という。
従来、この光熱変換測定による試料の高感度分析法として、光熱効果により試料に形成される熱レンズ効果を用いた手法(以下、熱レンズ法という)が知られている。熱レンズ法による分析装置(光熱変換分光分析装置)は、例えば、特許文献1に示されている。
また、特許文献2には、試料に対して測定光と励起光とを照射し、その測定光の位相変化を光干渉法により測定する光熱変換測定装置が示されている。これにより、熱レンズ法による分析装置よりも、試料の光熱効果による特性変化を、安定的に高精度で測定でき、さらに、消費電力の増加や高コスト化、S/N比の低下、測定時間の長時間化を回避しつつ高感度で測定できる。
従って、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、特許文献2に示される光熱変換測定によって液体試料の光熱効果による特性変化を測定する際に、より高感度での測定を可能とする光熱変換測定装置及びその試料を収容する試料容器、並びに光熱変換測定方法を提供することにある。
各種実験の結果、上記構成によれば、より高感度での測定が可能となることがわかった。
さらに、所定の基準軸方向における前記試料容器の収容部の内寸法が、前記測定光及び前記励起光各々の強度半値幅部分の交差部の前記基準軸方向における寸法の15倍以下に設定されていることがより望ましい。ここで、前記基準軸方向は、例えば、前記測定光の照射方向とすることが考えられる。
各種実験の結果、上記構成によれば、より高感度での測定が可能となることがわかった。
以上の結果、安定的かつ高感度な液体試料の分析を行うことが可能となる。
ここに、図1は本発明の実施の形態に係る光熱変換測定装置Xの概略構成図、図2は光熱変換測定装置Xを用いた第1の実験においてセルに収容された液体試料に測定光及び励起光が入射されているときのセルの断面図、図3は光熱変換測定装置Xを用いた第1の実験の結果を表すグラフ、図4は光熱変換測定装置Xを用いた第2の実験においてセルに収容された液体試料に測定光及び励起光が入射されているときのセルの側面斜視図及び平面図、図5は光熱変換測定装置Xを用いた第2の実験における有効交差部の断面(基準軸方向に直交する方向の断面)を表す図、図6は光熱変換測定装置Xを用いた第2の実験の結果を表すグラフである。
図1に示すように、光熱変換測定装置Xは、励起光源1、チョッパ2、レンズ等の光学機器3、4、6、8〜19、レーザ光源7、光検出器20、信号処理装置21等を備えている。
さらに、光熱変換測定装置Xは、液体試料が5充填される収容部Saを内包する試料容器であるセルSを備え、液体試料5は、このセルSの収容部Saに充填(収容)された状態で測定される。
所定の励起光源1(例えば、波長533nm、出力100mWのレーザ(YAG倍波))から出力された励起光P3は、チョッパ2により所定周期の断続光(断続周波数:f)に変換(即ち、周期的に強度変調)され、これがレンズ3を通過して液体試料5に照射される。これにより、液体試料5が励起光P3を吸収して発熱し(光熱効果)、その温度変化(上昇)によって液体試料5の屈折率が変化する。
一方、液体試料5の屈折率変化を測定するための測定光を出力するレーザ光源7(例えば、出力1mWのHe−Neレーザ)から出力された測定光は、1/2波長板8で偏波面が調節され、さらに偏光ビームスプリッタ(PBS)9によって互いに直交する2偏波(P1、P2)に分光される。
各偏波P1、P2は、各々音響光学変調機(AOM)10、11によって光周波数がシフト(周波数変換)され、ミラー12、13で反射された後、偏光ビームスプリッタ14によて合成される。これら直交する2偏波P1、P2の周波数差fbは、例えば、30MHz等とする。
合成された測定光の一方の前記偏波P2は、偏光ビームスプリッタ15を通過(透過)してミラー18に反射することにより、再度、偏光ビームスプリッタ15に戻る。ここで、偏光ビームスプリッタ15に戻ってきた前記偏波P2は、その偏光ビームスプリッタ15とミラー18との間に配置された1/4波長板16を往復通過することによってその偏波面が90°回転しているため、今度は偏光ビームスプリッタ15に反射して光検出器20の方向へ向かう。
さらに、液体試料5に入射した前記偏波P1(測定光)は、液体試料5の測定部5aを通過し、液体試料5の裏面側(測定光(偏波P1)の照射面の反対面側)に設けられた反射ミラー6で反射し、再び液体試料5の測定部5aを通過(即ち、往復通過)して、前記レンズ4及び前記1/4波長板17を通過して前記偏光ビームスプリッタ15へ戻る。ここで、前記偏波P1(測定光)は、前記1/4波長板17を往復通過することによってその偏波面が90°回転しているため、今度は偏光ビームスプリッタ15を通過して前記偏波P2と合流し、前記光検出器20の方向へ向かう。
前記偏光ビームスプリッタ15と前記光検出器20との間には偏光板19が配置され、この偏光板19において前記偏波P1と、該偏波P1と光周波数が異なる前記偏波P2とが、それぞれ観測光(測定光)と参照光として干渉し、その干渉光の光強度が前記光検出器20(光電変換手段)によって電気信号(以下、この電気信号の信号値を干渉光強度という)に変換される。この電気信号(即ち、干渉光強度)は、計算機等からなる信号処理装置21に入力及び記憶され、該信号処理装置21において前記偏波P1(測定光)の位相変化の演算(算出)処理(即ち、光干渉法による位相変化の測定)がなされる。ここで、前記偏波P1、P2を各々所定の方向へ導く光学系機器及び前記偏波P1、P2(測定光と参照光)の干渉光を形成させる前記偏光板19、並びに前記光検出器20と前記信号処理装置21とが、測定光測定手段の一例を構成する。
Sv=C1+C2・cos(2π・fb・t+φ) …(1)
この(1)式において、C1、C2は偏光ビームスプリッタ等の光学系や液体試料5の透過率により定まる定数、φは前記偏P1、P2の光路長差による位相差、fbは2偏波P1、P2の周波数差である。
(1)式より、前記干渉光強度Svの変化(前記励起光を照射しない或いはその光強度が小さいときとその光強度が大きいときとの差)から、前記位相差φの変化が求まることがわかる。前記信号処理装置21は、(1)式に基づいて前記位相差φの変化を算出する。
また、液体試料5の測定部5aにおいて、励起光P3を吸収する所定の含有物質の量に応じて吸熱量(発熱量)が変わり、その発熱量に応じて測定部5aの屈折率が変わり、その屈折率に応じて前記位相差φ(液体試料5中の前記偏波P1の光路長)が変わる。即ち、励起光P3を吸収する含有物質の量が多いほど、励起光P3の変化に対する前記位相差φの変化(即ち、前記偏波P1の位相変化)が大きい。従って、前記位相差φを測定すれば、液体試料5の温度変化により生じる屈折率の変化が求まり、その結果、試料の含有物質の量(濃度)の分析が可能となる。
例えば、当該光熱変換測定装置Xを用いて、予め所定の含有物質の量(濃度)が既知である複数種類のサンプル試料について前記位相差φの変化を測定し、その結果とその含有物質の量との対応づけを前記信号処理装置21にデータテーブルとして記憶しておく。
そして、測定対象とする液体試料についての前記位相差φの測定結果を前記データテーブルに基づいて補間処理等を行う等によりその含有物質の量を特定する処理を前記信号処理装置21により実行すればよい。
このように、液体試料5の光熱効果による屈折率変化を、光干渉法を用いて、液体試料5の測定部5aを通過(透過)させた測定光(前記偏波P1)における位相変化(励起光P3の照射による位相変化)を測定することによって、即ち、参照光(前記偏波P2)と測定光(前記偏波P1)との位相の相対評価(位相差)することによって検出(測定)する。これにより、例えば装置ごとに光検出器20の位置や測定光P1の強度及びその強度分布等が異なっても、測定中に変化さえしなければ、これらに依存することなく安定的に、しかも光学的に高精度で試料の屈折率変化を測定することが可能となる。
さらに、前記励起光は周波数fで強度変調されているため、液体試料5の屈折率も周波数fで変化し、偏波P1の光路長も周波数fで変化し(偏波P2の光路長は一定)、前記位相差φも周波数fで変化する。従って、前記位相差φの変化を、周波数fの成分(前記励起信号の強度変調周期と同周期成分)について測定(算出)すれば、周波数fの成分を有しないノイズの影響を除去しつつ液体試料5の屈折率変化のみを測定できる。
これにより、前記位相差φの測定のS/N比が向上する。
また、本実施形態では、前記セルSの壁は、その内面がほぼ直方体状に形成されており、前記基準軸方向は、セルSの壁面(測定光P1の入射面)に対してほぼ垂直な方向となるように構成(配置)されている。
なお、図1には、基準軸方向と励起光P3の照射方向とがほぼ直交するように構成された例を示すが、これに限らず、斜めに交差させることも考えられる。
また、図1には、測定光P1を反射ミラー6で反射して折り返す(液体試料5に往復通過させる)構成を示すが、これに限らず、例えば、参照光P2を図1における下側に導く等により、測定光P1を液体試料5に対して一方向のみ通過させる構成も考えられる。或いは、測定光P1を液体試料5の両側で多重反射させ、液体試料5に対して3回以上通過させた後に参照光P2と干渉させる構成等も考えられる。
以下、セルSの寸法と測定感度との相関関係を評価した第1の実験、及びセルS内における液体試料5の測定位置と測定感度との相関関係を評価した第2の実験について説明する。
まず、セルSの寸法と測定感度との相関関係を評価した第1の実験について説明する。
図2は、光熱変換測定装置Xを用いた第1の実験においてセルSに収容された液体試料5に測定光P1及び励起光P3が入射されているときのセルSの断面図を表す。
ここで、図2(a)、(b)は、各々セルSの収容部Saの基準軸方向(測定光P1の光軸方向)におけるセルSの内寸法Dxが異なるものを表し、図2(d)は、測定光P1と励起光P3の交差部である測定部5aを拡大した断面図である。
この第1の実験では、図2に示すように、セルSに収容された液体試料5内で測定光P1と励起光P3とを斜めに交差させて液体試料5通過後の測定光P1の強度変化(光検出器20による検出信号の強度)を信号処理装置21により測定した。その際、前記基準軸方向におけるセルSの内寸法Dxを実験パラメータ(可変パラメータ)とした。なお、この第1の実験では、前記基準軸方向が、セルSの収容部を形成する壁面に対して直交するよう設定されている。また、この第1の実験での前記基準軸方向は、測定光P1の液体試料5に対する照射方向でもある。
図2(c)に示す斜線部分は、測定光P1の強度半値幅部分(強度半値幅の範囲内の部分)と励起光P3の強度半値幅部分とが交差する部分を表し、以下、この部分を光交差部5bと称する。
また、第1の実験における各種実験条件は以下の通りである。
即ち、液体試料5は純水に微量の色素(Sunset Yellow FCF)を溶かした水溶液(20mg/dL)、測定光P1はNe−Neレーザによるビーム光(出力1mW、波長633nm、ビーム光の直径(強度半値幅)80μm)、励起光P3はYAGレーザによるビーム光(出力100mW、波長532nm、ビーム光の直径(強度半値幅)50μm)、励起光P3のパルス周波数は100Hz、励起光P3のパルスのデューティー比は50%、測定光P1に対する励起光P3の交差角度は45°、測定光P1及び励起光P3各々の強度半値幅部分の液体試料5内での交差部(光交差部5b)の前記基準軸方向における寸法Dyは150μm(図2(c)参照)、セルSの収容部(内寸)の前記基準軸に直交する方向における断面は直径15mmの円形、セルSの材質は石英ガラスである。
ここで、液体試料5は、ごく微量の色素が溶解された水溶液であるため、その粘度は、水の粘度(25℃において8.90×10-4Pa・s)と同等である。
また、前記基準軸方向におけるセルSの内寸法Dxを、27.9μm、30.0μm、41.3μm、102μm、133.3μm、217μm、297μm、415μm、532μm、1.0mm、2.0mm、4.0mmの各寸法に設定して実験を行った。
また、この第1の実験では、液体試料5を通過する前記光交差部5b(後述する、有効交差部に相当)が、セルSの収容部を形成する壁面のうちの特定の一の壁面(図2では、右側の壁面)から、その特定の一の壁面に直交する方向における前記交差部5bの寸法の2倍の範囲内に形成されるように各構成要素が配置されている。具体的には、前記光交差部5bは、測定光P1の入射側の壁面(右側の壁面)に直交する方向の寸法Dyが150μmであり、その全体が同壁面から225μmの範囲内(壁面から75μm隔てた位置)に形成されている。
また、図3(a)は横軸(セルSの内寸法Dx)を均等スケールで、図3(b)は横軸を対数スケールで表したグラフである。
図3のグラフからわかるように、セルSの前記基準軸方向の内寸法Dxを、光交差部5bの前記基準軸方向における寸法Dyよりも小さい状態から徐々に大きくすると、測定感度(信号強度)が徐々に上昇してピークとなり、その後徐々に測定感度が低下して所定の測定感度に収束する。より具体的には、DxがDyのほぼ2倍となる条件で測定感度がピークとなっている。
ここで、内寸法Dxが光交差部5bの寸法Dyより小さい(Dx<Dy)という状態は、光交差部5bの一部が液体試料5内から外れている状態であるので、測定感度が低くなる。従って、高い測定感度を得るためには、前記基準軸方向におけるセルSの内寸法Dxは、測定光P1及び励起光P3各々の強度半値幅部分の交差部5bの前記基準軸方向における寸法Dy以上に設定することが必要となる。
即ち、セルSの内寸法Dxが一定範囲内である場合には、励起光P3により加熱された液体試料5は、セルSの壁面(内面)が近接しているためにその流動が妨げられ、液体試料5の流動による熱拡散が抑えられる。一方、セルSの内寸法Dxが一定以上に大きくなると液体試料5が流動しやすくなり、その流動による熱拡散が大きくなって測定感度が低下するものと考えられる。
この第1の実験の結果より、前記基準軸方向におけるセルSの収容部の内寸法Dxが、測定光P1及び励起光P3各々の強度半値幅部分の交差部5bの前記基準軸方向における寸法Dyの15倍以下であれば、液体試料5の流動による熱拡散の影響が小さくなる。ここで、図3に示す結果から、DxがDyの5倍以下であればより好ましく、さらに、DxがDyの3.5倍以下であればより一層好ましいことが分かる。特に、DxをDyの2倍程度とすれば、測定感度がほぼ最大となり好適である。
このように、前記基準軸方向におけるセルSの収容部の内寸法Dxを、測定光P1及び励起光P3の交差部の前記基準軸方向における寸法を基準にして設定することにより、感度の高い測定を行うことが可能となる。
次に、セルS内における液体試料5の測定位置と測定感度との相関関係を評価した第2の実験について説明する。
図4は、光熱変換測定装置Xを用いた第2の実験においてセルSに収容された液体試料5に測定光P1及び励起光P3が入射されているときのセルSの側面斜視図(a)及び平面図(b)を表す。
この第2の実験では、図4に示すように、セルSに収容された液体試料5内で測定光P1と励起光P3とを直交させて液体試料5通過後の測定光P1の強度変化(光検出器20による検出信号の強度)を信号処理装置21により測定した。
その際、励起光P3の径を測定光P1(ビーム光)の径に対して十分に大きな径とし、測定光P1及び励起光P3各々の強度半値幅部分の交差部である光交差部5bのうち、液体試料5を通過する部分(以下、有効交差部という)が、セルSの収容部を形成する壁面のうちの励起光P3の入射面(図4(b)における下側の面)及び出射面(同上側の面)に沿って形成されるよう設定した。
ここで、それら壁面(入射面及び出射面)に直交する方向(前記基準軸に直交する方向)における前記有効交差部の位置を実験パラメータ(可変パラメータ)とした。なお、前記基準軸方向(測定光P1の液体試料5に対する照射方向)、及びこれに直交する励起光P3の液体試料5に対する照射方向は、各々セルSの収容部を形成する壁面に対して直交するよう設定されている。
即ち、液体試料5は純水に色素(Coomassie Brilliant Blue)を溶かした水溶液(2mg/dL)、測定光P1はHe−Neレーザによるビーム光(出力1mW、波長633nm、ビーム光の直径(強度半値幅)80μm)、励起光P3はキセノンランプ(消費電力250mW)による可視領域白色光(紫外カットフィルターにより390nm以下の紫外光をカットし、純水をフィルターとして水吸収領域の赤外光をカットしたもの)をレンズ等の光学系により直径(強度半値幅相当)2mmに集光したもの、励起光P3のパルス周波数は100Hz、励起光P3のパルスのデューティー比は50%、測定光P1に対する励起光P3の交差角度は90°、セルSの収容部(内寸)は断面が3mmの角柱状であってその長手方向は十分に長い寸法としたもの、セルSの材質は石英ガラスである。
この第2の実験における液体試料5の粘度も、水の粘度と同等である。
図5は、光熱変換測定装置Xを用いた第2の実験における有効交差部5bの断面(前記基準軸方向に直交する方向の断面)を表す図である。ここで、図5(a)は、励起光P3の入射側の壁面近傍における有効交差部5cの断面(斜線部)、図5(b)は、励起光P3の出射側の壁面近傍における有効交差部5cの断面(斜線部)を表す。
第2の実験では、図5に示すように、有効交差部5cの位置は、励起光P3の入射側の壁面Sif(内面)と測定光P1の光軸の中心P1oとの距離Di(mm)、及び励起光P3の出射側の壁面Sof(内面)と測定光P1の光軸の中心との距離Do(mm)により表すものとする。この距離Di、Doは、壁面Sif、Sofから励起光P2の進行方向(図5に向かって右側の方向)に向かう方向を正の方向として表す。従って、Di>0(mm)である場合、及びDo<0である場合に、測定光P1の光軸の中心P1oが、液体試料5内を通過している状態を表し、Di<0(mm)である場合、及びDo>0である場合に、測定光P1の光軸の中心P1oが、セルSの壁内を通過している状態を表す。
図6のグラフからわかるように、励起光P3の入射側及び出射側のいずれにおいても、測定光P1の光軸中心P1oがほぼ壁面(内面)に一致するときに測定感度がピークとなり、測定光P1の光軸中心P1oがセルSの壁面(内面)からセルSの内側(液体試料5側)へ離れるほど、前記有効交差部5cが大きくなるにもかかわらず測定感度が急激に低下する。
また、励起光P3の入射側及び出射側のいずれの壁面からも一定以上離れた中間領域では、励起光P3照射方向下流側となるに従って、励起光P3が減衰する分だけ測定感度が緩やかに低下している。
ここで、図6のグラフでは、測定光P1の光軸中心P1oがセルSの壁面(内面)からセルSの収容部外側(壁内)へ離れるほど、測定感度が低下しているように見える。しかしこの場合、光軸中心P1oがセルSの収容部外側(壁内)へ離れるほど前記有効交差部5cの大きさが小さくなっているので、前記有効交差部5cの大きさを基準に換算すれば、壁面に沿う前記有効交差部5cがその壁面に近いほど測定感度が高まるといえる。
ここで、測定光P1の直径(強度半値幅)が80μmであるので、測定光P1の光軸中心P1oが壁面の内側120μmにある状況は、前記有効交差部5cにおける最も壁面に近い端部が壁面から80μm、前記有効交差部5cにおける最も壁面から遠い端部が壁面から160μmの位置にある状況である。
このことから、前記有効交差部5cの大きさを基準とした場合に、より高い測定感度が得られる条件は、測定光P1及び励起光P3各々の強度半値幅部分の交差部(壁面に沿った前記光交差部5b)のうち液体試料5を通過する部分である有効交差部5cが、セルSの収容部を形成する壁面のうちの特定の壁面(ここでは、励起光入射側の壁面Sif又は励起光出射側の壁面Sof)からその壁面に直交する方向(Di、Doの方向)における前記有効交差部5cの寸法の約2倍の範囲内において、それら壁面Sif若しくはSofに沿って形成されるよう設定した状態で測定することである。もちろん、壁面に沿う前記有効交差部5cが、その壁面に直交する方向における寸法の範囲内に設定されている(即ち、壁面から前記有効交差部5cが離れていない)ことがより望ましい。
このように、前記有効交差部5c(液体試料5中における測定光P1及び励起光の交差部)が、セルSの収容部内における壁面近傍に位置するよう設定した状態で測定を行うことにより、高い測定感度が得られる。
特に、前記有効交差部5cが、セルSの収容部を形成する壁面のうち、励起光P3が液体試料5に入射する側の壁面の近傍に位置するよう設定すれば、同出射側の壁面近傍に位置させるよりも、励起光P3の減衰が少ない分だけより高感度での測定が可能とある。
即ち、励起光P3により加熱された液体試料5は、セルSの壁面(内面)の近傍においてはその流動が妨げられ、液体試料5の流動による熱拡散が抑えられると考えられる。このため、前記有効交差部5cを、液体試料5の流動による熱拡散が大きい壁面から離れた領域ではなく、セルSの壁面(内面)の近傍に設定することにより、より高い測定感度が得られるものと考えられる。
また、以上に示した第1の実験と第2の実験とは、相互に相反するものではない。従って、両実験により認められた高い測定感度が得られる条件を組み合わせた測定条件を採用して測定を行えば、より高感度での測定が可能となる。
以上、第1の実験及び第2の実験からわかるように、測定光P1と励起光P3との交差部の寸法とセルSの試料収容部の寸法との関係、或いは試料収容部内における測定光P1と励起光P3との交差部(前記有効交差部5c)の位置を適切に設定するだけで、他の測定条件が同じであってもより高感度での測定が可能となる。
また、第1の実験及び第2の実験から得られた光熱変換測定の特性(作用効果)は、必ずしも前記測定光P1の照射方向が前記基準軸方向に沿う方向であることを前提とするものでなく、前記測定光P1の照射方向が、前記基準軸方向に対して交差する方向であっても同様であると考えられる。
また、第1の実験及び第2の実験では、前記基準軸方向を、収容部の形状が直方体であるセルSにおいて、前記測定光P1の入射面(壁面)に直交する方向としたが、前記基準軸方向は、セルSの形状等に応じて適宜設定され得る。
また、第1の実験及び第2の実験から得られた光熱変換測定の特性は、前記測定光P1の照射方向を、必ずしもセルSの収容部の壁面に直交する方向に設定することを前提とするものでなく、前記測定光P1の照射方向が、セルSの収容部の壁面に対して斜めの方向に設定されても同様であると考えられる。
2…チョッパ
3、4…レンズ
5…試料(液体試料)
5a…励起光と測定光の交差部(測定部)
6…反射ミラー
7…レーザ光源
10、11…音響光学変調機(AOM)
20…光検出器
21…信号処理装置
S…セル(試料容器)
P1…偏波(測定光)
P2…偏波(参照光)
P3…励起光
P1o…測定光の光軸の中心
5b…光交差部
5c…有効交差部
Sif…励起光入射側のセルの壁面
Sof…励起光出射側のセルの壁面
Di…励起光入射側のセルの壁面から測定光の光軸中心までの距離
Do…励起光入射側のセルの壁面から測定光の光軸中心までの距離
Claims (7)
- 液体試料に励起光を照射し、該液体試料の光熱効果によって生じる特性変化を測定する光熱変換測定装置であって、
前記液体試料が充填される収容部を内包する試料容器と、
前記収容部内の前記液体試料に対し測定光を照射する測定光照射手段と、
前記液体試料に対し前記収容部内で前記測定光と交差するように励起光を照射する励起光照射手段と、
前記励起光との交差部を通過後の前記測定光を測定する測定光測定手段と、を具備し、
前記測定光照射手段が、前記測定光を所定の基準軸方向に沿って照射してなり、
前記基準軸方向における前記試料容器の収容部の内寸法が、前記測定光及び前記励起光各々の強度半値幅部分の交差部の前記基準軸方向における寸法の略2倍に設定されたものであることを特徴とする光熱変換測定装置。 - 前記測定光と前記励起光が直交する場合に、前記測定光及び前記励起光の交差部が、前記収容部内における該収容部を形成する壁面のうち前記励起光入射側の壁面又は前記励起光出射側の壁面から、該励起光入射側又は出射側の壁面と直交する方向において、前記前記測定光及び前記励起光各々の強度半値幅部分の交差部のうち前記液体試料を通過する部分である有効交差部の略2倍の範囲内に該励起光入射側又は出射側の壁面に沿って形成されるよう設定されてなる請求項1に記載の光熱変換測定装置。
- 前記測定光と前記励起光が直交する場合に、前記基準軸方向が、前記試料容器の前記収容部を形成する壁面のうちの前記測定光の入射面に対して略直交する方向である請求項1又は2のいずれかに記載の光熱変換測定装置。
- 液体試料に励起光を照射し、該液体試料の光熱効果によって生じる特性変化を測定する光熱変換測定装置であって、
前記液体試料が充填される収容部を内包する試料容器と、
前記収容部内の前記液体試料に対し測定光を照射する測定光照射手段と、
前記液体試料に対し前記収容部内で前記測定光と交差するように励起光を照射する励起光照射手段と、
前記励起光との交差部を通過後の前記測定光を測定する測定光測定手段と、を具備し、
前記測定光と前記励起光が直交する場合に、前記測定光及び前記励起光各々の強度半値幅部分の交差部のうち前記液体試料を通過する部分である有効交差部が、前記収容部を形成する壁面のうちの前記励起光入射側の壁面又は前記励起光出射側の壁面から、該励起光入射側又は出射側の壁面に直交する方向における前記有効交差部の寸法の略2倍の範囲内に該励起光入射側又は出射側の壁面に沿って形成されるよう設定されてなることを特徴とする光熱変換測定装置。 - 前記測定光及び前記励起光の有効交差部が、前記収容部を形成する壁面のうち前記励起光が前記液体試料に入射する壁面から、該励起光入射側の壁面に直交する方向における前記有効交差部の寸法の略2倍の範囲内に位置するよう設定されてなる請求項4に記載の光熱変換測定装置。
- 前記測定光の照射方向である基準軸方向における前記試料容器の収容部の内寸法が、前記測定光及び前記励起光各々の強度半値幅部分の交差部の前記基準軸方向における寸法の15倍以下に設定されてなる請求項4又は5のいずれかに記載の光熱変換測定装置。
- 液体試料に対し所定の測定光と励起光とをこれらが前記液体試料内で交差するよう照射し、該交差による前記測定光の変化を測定する光熱変換測定方法であって、
前記測定光と前記励起光が直交する場合に、前記測定光及び前記励起光各々の強度半値幅部分の交差部のうち前記液体試料を通過する部分である有効交差部が、前記収容部を形成する壁面のうちの前記励起光入射側の壁面又は前記励起光出射側の壁面から、該励起光入射側又は出射側の壁面に直交する方向における前記有効交差部の寸法の略2倍の範囲内に該励起光入射側又は出射側の壁面に沿って形成されるよう設定した状態で測定してなることを特徴とする光熱変換測定方法。
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