JP4548872B2 - セメント混和材及びセメント組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に、土木・建築分野において使用されるセメント混和材及びセメント組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
セメントは、主にコンクリート構造物を建設するために使用される材料であり、セメントに各種の混和材を添加し、コンクリート構造物の強度や耐久性を向上させることが行われている。セメント混和材には、数多くのものが既に提案されているが、代表的なものとして、コンクリートに膨張性を付与するセメント混和材がある。ここで、コンクリートとは、セメント、モルタル及びコンクリ−ト等のセメント硬化体を総称するものである。
コンクリートに膨張性を付与するセメント混和材としては、これまでにCaO-Al2O3-SO3系化合物(特公昭42-21840号公報、特公昭42-19473号公報及び特開平7-232944号公報等)、CaO-SiO2系化合物(特公昭53-13650号公報)並びにCaO-SiO2-SO3系化合物(特公昭53-31170号公報)等を有効成分とするものがあった。 しかしながら、これらのセメント混和材は粉末状であり、使用する際には生コンプラントに荷揚げし開袋投入をしなければならず、作業性や環境の面で切実な問題となっている。このような問題を解消する手段として、液状(溶液若しくはスラリー)のセメント混和材の開発が強く望まれており、ポンプ圧送による輸送・投入が容易に行えるので、作業が簡素化されるだけでなく、粉塵発生等、人体に悪影響を及ぼす要因を排除できる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の粉末状のセメント混和材をそのまま水に分散させると、水和反応が進み、膨張率が低下したり、場合によってはスラリーが硬化してしまうため、スラリー状態で使用することは不可能であった。本発明者らは、このような状況を鑑み鋭意検討した結果、特定の水和物を使用することにより、前記課題を解消できるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、CaO-Al2O3-H2O系水和物と無機硫酸塩の合計100重量部中、無機硫酸塩30〜75重量部、及びCaO-Al 2 O 3 -H 2 O系水和物と無機硫酸塩と水の合計100重量部中、水20〜80重量部を含有してなるスラリー状のセメント混和材であり、更に減水剤を含有してなる該セメント混和材であり、セメントと該セメント混和材とを含有してなるセメント組成物である。
【0005】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0006】
本発明のCaO-Al2O3-H2O系水和物(以下、CAHという)とは、化学成分として、CaO、Al2O3を含有する水和物を総称するものであり、特に限定されるものではない。CAHには結晶質及び非晶質があり、何れも使用可能である。結晶質の具体例としては、CAH10、C2AH8、C3AH6及びC4AH13等が挙げられる。本発明では、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。非晶質としては、その組成は特に限定されるものではないが、通常、CaO/Al2O3のモル比が0.5〜6程度の範囲にある。
【0007】
結晶質のCAHは、例えば、カルシウムアルミネートを水和させることにより合成することができる。カルシウムアルミネ−トの具体例としては、例えば、CA、C12A7及びC3A等が挙げられ、本発明ではこれらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。又、CAHは、生石灰や水酸化カルシウムと可溶性アルミニウム塩とを加水分解することによっても合成することができ、更に、有機化合物を添加し加水分解すると、非晶質のCAHを合成することができる。ここで有機化合物とは、特に限定されるものではないが、例えば、しょ糖等の糖類が挙げられる。これらの原料の配合量を変えることにより、種々の組成のCAHを合成することが可能である。CAHを合成する際、副生物として水酸化アルミニウムが生成し、未反応物としてカルシウムアルミネートや水酸化カルシウムが残存する場合があるが、本発明の効果を実質的に阻害しない範囲、具体的にはこれらの総量が50重量%以下であれば特に問題とはならない。
【0008】
本発明の無機硫酸塩とは、特に限定されるものではないが、その具体例としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム及び硫酸リチウム等のアルカリ金属硫酸塩、硫酸アルミニウム、ミョウバン類並びにセッコウ類等の使用が可能であり、中でもセッコウ類が本発明の効果が顕著となることから好ましい。セッコウ類には、無水セッコウ、半水セッコウ及び二水セッコウがあるが、中でも発明の効果が顕著であることから、無水セッコウが好ましい。
【0009】
CAHと無機硫酸塩の配合量は、特に限定されるものではないが、CAHと無機硫酸塩の合計100重量部中、無機硫酸塩が30〜75重量部となるように配合することが好ましく、40〜60重量部がより好ましい。前記の範囲外では、本発明の効果が十分に得られない場合がある。
【0010】
本発明のセメント混和材において、水の配合量は、特に限定されるものではないが、CAH、無機硫酸塩及び水を含有してなるセメント混和材、又は、CAH、無機硫酸塩、水及び減水剤を含有してなるセメント混和材100重量部中、20〜80重量部が好ましく、30〜70重量部がより好ましい。20重量部未満では、セメント混和材の流動性が悪く、取り扱いが困難となる場合があり、80重量部を超えると、材料分離を起こす場合がある。但し、セメント混和材がCAH、無機硫酸塩、水及び減水剤を含有している場合、減水剤は水の一部として計算するものとする。
【0011】
本発明の減水剤とは、特に限定されるものではなく、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤及び流動化剤を総称するものである。減水剤は、大別して、ナフタレン系、メラミン系、ポリカルボン酸系及びアミノスルホン酸系等に分類される。代表例としては、ナフタレン系には、花王社製商品名「マイティ2000WH」等、或いは電気化学工業社製商品名「デンカFT-500」や「デンカFT-80」等が挙げられ、メラミン系には、昭和電工社製商品名「メルメントF-10」及び日本シーカ社製商品名「シーカメント1000H」等が挙げられ、ポリカルボン酸系には、グレースケミカルズ社製商品名「ダーレックススーパー200」、エヌエムビー社製商品名「レオビルドSP-8HS」及び竹本油脂社製商品名「チューポールHP-11」等が挙げられ、アミノスルホン酸系には、藤沢薬品工業社製商品名「パリックFP-100U」等が挙げられる。
【0012】
減水剤の配合量は、特に限定されるものではないが、CAH、無機硫酸塩、水及び減水剤を含有してなるセメント混和材100重量部中、固形分で30重量部以下が好ましく、5〜20重量部がより好ましい。30重量部を超えると、スラリーに材料分離を生じる場合がある。
【0013】
本発明のセメント混和材の配合量は、特に限定されるものではないが、セメント100重量部に対して、セメント混和材の固形分で、3〜30重量部が好ましく、5〜20重量部がより好ましい。3重量部未満では本発明の効果が十分に得られない場合があり、30重量部を超えて使用すると、強度発現が不十分になる場合がある。ここでセメント混和材の固形分とは、50℃で加熱し、水分を蒸発・乾固させた時に残存する固体の重量を意味するものである。
【0014】
本発明のセメントとしては、普通、早強、超早強、中庸熱及び低熱等の各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントに高炉スラグ、フライアッシュ及びシリカを混合した各種混合セメント、石灰石粉末等を混合したフィラーセメント、並びにアルミナセメント等が挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。
【0015】
本発明では、本発明のセメント混和材及びセメント組成物に、砂、砂利等の骨材の他に、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、高分子エマルジョン、凝結調整剤、セメント急硬材、ベントナイトやゼオライト等の粘土鉱物、及びハイドロタルサイト等のイオン交換体等のうちの一種又は二種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0016】
本発明において、各材料の混合方法は、特に限定されるものではなく、それぞれの材料を施工時に混合しても良いし、予めその一部、或いは全部を混合しておいても差し支えない。混合装置としては、既存の如何なる装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサー、オムニミキサー、ヘンシェルミキサー、V型ミキサー及びナウターミキサー等がある。
【0017】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0018】
実施例1
表1に示す各種のCAH50重量部と無機硫酸塩a50重量部を含有し、その固形分が50重量%となるように水を加えスラリー状のセメント混和材を調製し、スラリー調製後7日経過したものを試験に供した。セメント100重量部に対して、このセメント混和材を固形分で10重量部配合し、セメントとセメント混和材を含有してなるセメント組成物に対して、水/セメント組成物=50%、砂/セメント組成物比=1/3のモルタルを調製し、4×4×16cmの大きさの供試体を作製して膨張率の測定を行った。その結果を表1に示す。但し、セメント混和材中の水は、水/セメント組成物比の水に含むものとし、セメント組成物は、固形分の重量である。
<使用材料>
CAH−A:CAを水/固体比200%で5℃、3日間水和させて合成したもの(CAH10)
CAH−B:水酸化カルシウム1モルとアルミン酸ナトリウム1モルを水1リットル中で20℃、24時間加水分解して合成したもの(C2AH8)
CAH−C:C3Aを水/固体比200%で20℃、24時間水和させて合成したもの(C3AH6)
CAH−D:水酸化カルシウム1モルとC3A1モルを水/固体比150%で20℃、28日間水和させて合成したもの(C4AH13)
CAH−E:水酸化カルシウム1モルとアルミン酸ナトリウム2モルをしょ糖の5重量%水溶液1リットル中で10℃、7日間加水分解して合成したもの(非晶質CAH、CaO/Al2O3モル比=0.5)
CAH−F:水酸化カルシウム1モルとアルミン酸ナトリウム1モルをしょ糖の5重量%水溶液1リットル中で10℃、7日間加水分解して合成したもの(非晶質CAH、CaO/Al2O3モル比=1.0)
CAH−G:水酸化カルシウム2モルとアルミン酸ナトリウム1モルをしょ糖の5重量%水溶液1リットル中で10℃、7日間加水分解して合成したもの(非晶質CAH、CaO/Al2O3モル比=2.0)
CAH−H:水酸化カルシウム3モルとアルミン酸ナトリウム1モルをしょ糖の5重量%水溶液1リットル中で10℃、7日間加水分解して合成したもの(非晶質CAH、CaO/Al2O3モル比=3.0)
CAH−I:水酸化カルシウム3モルとアルミン酸ナトリウム0.5モルをしょ糖の5重量%水溶液1リットル中で10℃、7日間加水分解して合成したもの(非晶質CAH、CaO/Al2O3モル比=6.0)
無機硫酸塩a:ブレーン値3000cm2/gの天然無水セッコウ
水:水道水
セメント:市販普通ポルトランドセメント
砂:標準砂(ISO679準拠)
<測定方法>
膨張率:JIS A 6202 Bに準じて測定
【0019】
【表1】
【0020】
本発明のセメント混和材を含有したセメント組成物は、モルタルに顕著な膨張性を付与していることを示している。又、本発明のセメント混和材を使用していない比較例(実験No.1-1)では、モルタルは全く膨張しないことを示している。
【0021】
実施例2
実施例1の実験No.1-4のセメント混和材において、セメント100重量部に対して、その配合量を固形分で表2に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様に行った。その結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】
本発明のセメント混和材の配合量が増加するに従い、モルタルの膨張率が増加する傾向を示している。又、本発明のセメント混和材を使用していない比較例(実験No.1-1)では、モルタルは全く膨張しないことを示している。
【0024】
実施例3
CAH−Cと無機硫酸塩aを等重量部配合し、セメント混和材100重量部中の水を表3に示すような割合で配合したこと以外は、実施例1と同様に行った。
その結果を表3に示す。
【0025】
【表3】
【0026】
本発明のセメント混和材を含有したセメント組成物は、何れもモルタルに顕著な膨張性を付与していることを示している。
【0027】
実施例4
表4に示すように、CAH−Cの配合量と無機硫酸塩の種類と配合量を変えたこと以外は、実施例1と同様に行った。その結果を表4に示す。
<使用材料>
無機硫酸塩a:ブレーン値3000cm2/gの天然無水セッコウ
無機硫酸塩b:ブレーン値3000cm2/gの天然二水セッコウ
無機硫酸塩c:ブレーン値3000cm2/gの試薬1級半水セッコウ
無機硫酸塩d:ブレーン値3000cm2/gの試薬1級硫酸アルミニウム18水塩
【0028】
【表4】
【0029】
本発明のセメント混和材を含有したセメント組成物は、モルタルに顕著な膨張性を付与していることを示している。又、本発明の無機硫酸塩を配合していないセメント混和材を使用した比較例(実験No.4-1)のモルタルは、全く膨張しないことを示している。
【0030】
実施例5
セメント混和材100重量部中、CAH−C25重量部と無機硫酸塩a25重量部の合計50重量部一定とし、水と各種減水剤を表5に示すような割合で配合したこと以外は、実施例1と同様に行った。その結果を表5に示す。但し、セメント混和材中の水と減水剤は、水/セメント組成物比の水に含まれるものとし、減水剤とセメント組成物は、固形分の重量である。
<使用材料>
減水剤−イ:市販ナフタレン系
減水剤−ロ:市販メラミン系
減水剤−ハ:市販ポリカルボン酸系
減水剤−ニ:市販アミノスルホン酸系
【0031】
【表5】
【0032】
本発明のセメント混和材を含有したセメント組成物は、何れもモルタルに顕著な膨張性を付与していることを示している。
【0033】
実施例6
実施例5の実験No.5-5のセメント混和材を使用し、ポンプ圧送性を確認した。
セメント混和材1m3を油圧式ポンプにより、地上12mの生コンプラント上に圧送し、その時間を測定した。更に、実験No.5-5のセメント混和材の固形分と等重量の粉末状のCAHと無機硫酸塩を含有したセメント混和材を、ホイストにより荷揚げした時の時間を測定した。その結果、スラリー化したセメント混和材は、粉末状のセメント混和材の約1/4の時間で圧送を完了した。
【0034】
又、従来の粉末状混和材50重量部、減水剤ハ5重量部及び水45重量部を含有してなるスラリー状混和材を調製し、表6に示すスラリー調製後の各経過時間において、実施例5と同様の試験を実施した。その結果を表6に示す。
<使用材料>
粉末状混和材:市販アウイン系膨張材
【0035】
【表6】
【0036】
本発明のセメント混和材を含有したセメント組成物は、スラリー調製後7日の経過時間においても、モルタルに顕著な膨張性を付与している。又、従来の粉末状混和材をスラリー状にした比較例(実験No.5-1,5-2,5-3)では、モルタルの膨張率が著しく低下し、スラリー調製後の経過時間が長くなるとその傾向が激しくなることを示している。
【0037】
【発明の効果】
本発明のセメント混和材を使用することにより、セメント、モルタル及びコンクリート等に、膨張性を付与するセメント組成物を提供することができる。更に、本発明のセメント混和材は、スラリー化することが可能であることから、ポンプ圧送により、生コンプラントでの荷揚げや開袋投入の作業が簡素化するだけでなく、粉塵の発生を防止できる等の効果を奏する。
Claims (3)
- CaO-Al2O3-H2O系水和物と無機硫酸塩の合計100重量部中、無機硫酸塩30〜75重量部、及びCaO-Al 2 O 3 -H 2 O系水和物と無機硫酸塩と水の合計100重量部中、水20〜80重量部を含有してなるスラリー状のセメント混和材。
- 更に減水剤を含有してなる請求項1記載のセメント混和材。
- セメントと請求項1又は2記載のセメント混和材とを含有してなるセメント組成物。
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