JP4548818B2 - スパークプラグ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の着火装置として用いられるスパークプラグに関し、特に主体金具が小型であって狭い場所に装着できるスパークプラグに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のスパークプラグには、絶縁碍子の外周面と主体金具の内周面とにより囲まれた円筒形状の空間に滑石(タルク)の粉末からなる緩衝材を充填しスパークプラグの耐衝撃性を高めたものがあった。また、このような緩衝材(滑石)を持たず熱加締めにより絶縁碍子を主体金具で直接固定するものもあった。そして、これらのスパークプラグはねじ径が14mm(M14)または12mm(M12)のもので、プラグレンチと嵌合する六角形状をした締付部の平行する2面の対面距離(二面幅)は20.8mmまたは16mmのものが一般的であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年のエンジン制御技術の向上及び多バルブ化に伴いエンジン回りに装着される部品の点数が増加している。特に、直噴エンジンの拡大はシリンダヘッド上でスパークプラグに許容される容積を小さなものとしている。このため、主体金具の締付部の二面幅も、従来の16mmのものから14mm以下に小さくしたものが要求されるようになってきた。
【0004】
このように、二面幅を14mm以下に小さくしたものでは、必然的に主体金具の肉厚が薄くなり、主体金具のボリュームも減少して強度が落ちることから、緩衝材(滑石)を持たないタイプのスパークプラグでは耐衝撃性に弱く、衝撃を加えた後の気密性の低下が著しくなるという問題点があった。
また、締付部の肉厚も薄くなるので、加締め成形時に締付部に掛かる荷重により締付部が膨らみ、二面幅が公差内に入らずレンチとの嵌合不良をきたすことがあるという問題点があった。
【0005】
この点について実施例図面である図2及び図3を参照し説明する。絶縁碍子1を主体金具5に「加締め」により固定するには、主体金具5の座部5Fの下方と締付部5A及び加締め部5Cの上方に加締め金型を当てて挟み、上方の加締め金型を強く下方に加圧することにより湾曲部5Dを0.5mmから0.8mm程度座屈させ、絶縁碍子1をパッキン部材6を介して主体金具5の内周段部5Eに強く押しつけて加締め固定してきた。このとき、加締め金型による強い圧力により湾曲部5Dだけではなく、締付部5Aも塑性変形をし僅かに膨らむ。従来の二面幅Wが16mm以上のスパークプラグでは締付部5Aの肉厚Pが充分厚いため締付部5Aの強度が十分であり、この膨らみは問題にならなかった。
【0006】
しかしながら、二面幅Wが14mm以下のスパークプラグでは、締付部5Aの肉厚Pが薄いため締付部5Aの膨らみが著しくなり、二面幅Wを公差内に入れるのが困難になるという問題点が生じた。二面幅Wを公差内に入れないとレンチとの嵌合不良が発生する。一方、締付部5Aの膨らみを小さくするため湾曲部5Dの肉厚を薄くして座屈に要する圧力の低減を図ると、製品の湾曲部5Dの強度が不足し、スパークプラグをエンジンに取り付ける際の締め付けトルクに耐えられないという問題点を生ずる。また、緩衝材である滑石9の占める部分の厚さMを薄くして締付部5Aの肉厚Pを稼ごうとすると、滑石9の緩衝材としての効果が弱まり、耐衝撃性が弱くなるという問題点を生ずる。
【0007】
そこで、本発明のうち請求項1記載の発明は、主体金具の締付部の二面幅が小さいものであっても耐衝撃性に強く、強い衝撃が加えられた後も気密性を維持でき、さらに耐衝撃性をさらに強くすると共に、締付部の膨らみを抑えて二面幅を公差内に収めることが容易なるスパークプラグを提供することを目的とする。
請求項2記載の発明は、上記のスパークプラグの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明のうち請求項1記載の発明は、中心貫通孔を有する絶縁碍子と、前記中心貫通孔に保持された中心電極と、前記絶縁碍子を加締めにより保持する主体金具と、その主体金具に電気的に導通されて前記中心電極との間に火花放電ギャップを形成する接地電極とを備え、前記中心電極の軸線方向に火花放電ギャップの形成される側を前方側これと反対方向を後方側として、前記主体金具の前端側外周面には取付ねじ部が形成されるとともに、その取付ねじ部よりも後方側において前記主体金具の外周面には、前記取付ねじ部を内燃機関側の取付ねじ孔にねじ込むための締付部が形成されたスパークプラグにおいて、
前記締付部の平行する2面の対面距離(二面幅W)が14mm以下であり(W≦14.0)、
前記主体金具によって加締められる部分であって絶縁碍子の外周面と主体金具の内周面とにより囲まれた円筒形状の空間に緩衝材が充填された緩衝材充填部分を備え、
前記緩衝材充填部分の軸方向長さ(L)と厚さ(M)とが、単位をmmとして、0.5≦L≦10.0、かつ、0.5≦M≦1.3、の関係を満たすとともに、
前記主体金具の締付部と、前記取付ねじ部と前記締付部との間に前記取付ねじ部よりも径大に形成された座部とを連絡する湾曲部を加熱した状態で、該湾曲部を軸方向の加締めにより座屈させる熱加締めにより主体金具と絶縁碍子とが一体とされたことを特徴とする。
ここで、緩衝材としては、たとえば、滑石(タルク)の粉末が用いられる。
【0009】
このように形成すると、円筒形状の緩衝材充填部分に充填された緩衝材が主体金具に加わる衝撃をやわらげ、二面幅が14mm以下であっても主体金具と絶縁碍子との「加締め」が緩むことを防止することができる。また、緩衝材充填部分が第2のパッキンとして作用し、たとえ主体金具と絶縁碍子との加締めが多少緩み主体金具と絶縁碍子とのパッキン部の圧力が低下して燃焼ガスが漏洩したとしても、燃焼ガスがスパークプラグを吹き抜けることがない。
【0010】
ここで、緩衝材充填部分の軸方向長さLが0.5mm未満であると緩衝材としての効果が余り期待できない。また、軸方向長さLが10mmを超えると加締め作業前に緩衝材充填部分に緩衝材を充分に詰め込むことができず、結果的に緩衝材の充填密度が小さくなって緩衝効果が薄くなる。一方、緩衝材充填部分の厚さMが0.5mm未満であると緩衝材としての効果が期待できない。また、緩衝材充填部分の厚さMが1.3mmを越すと主体金具の締付部の肉厚が薄くなり、主体金具の強度不足をもたらす。
【0011】
さらに、このように熱加締めにより形成すると、「加締め」つまり湾曲部の座屈のために要する荷重は冷間加締めに比べて小さくて良い。このため、加締め時に締付部に掛かる荷重も小さくなり、薄い肉厚の締付部であっても締付部の膨らみが抑制され二面幅を公差内に収めることが容易になる。また、加締め作業終了後に加熱された湾曲部が冷却する際に湾曲部が軸方向にも収縮するため、加締めによるパッキン部の圧力がさらに強くなりスパークプラグの気密性が高まる。
【0012】
なお、スパークプラグが熱加締めにより形成されたか冷間加締めにより形成されたかはスパークプラグを半割にして解析することにより容易に分かる。熱加締めにより形成されたスパークプラグでは、座屈した湾曲部が半径方向の外方と内方の両方に膨らんだように、つまり、湾曲部の厚さが厚くなるように変形している。これに対して、冷間加締めにより形成されたスパークプラグでは、座屈した湾曲部が半径方向の外方か内方のいずれか一方に変形している。あえて物の発明として記載した所以である。
【0013】
ここで、請求項2記載の発明のように、中心貫通孔を有する絶縁碍子と、前記中心貫通孔に保持された中心電極と、前記絶縁碍子を加締めにより保持する主体金具と、その主体金具に電気的に導通されて前記中心電極との間に火花放電ギャップを形成する接地電極とを備え、前記中心電極の軸線方向に火花放電ギャップの形成される側を前方側これと反対方向を後方側として、前記主体金具の前端側外周面には取付ねじ部が形成されるとともに、その取付ねじ部よりも後方側において前記主体金具の外周面には、前記取付ねじ部を内燃機関側の取付ねじ孔にねじ込むための締付部が形成されたスパークプラグの製造方法であって、前記主体金具の締付部の平行する2面の対面距離(二面幅W)が14mm以下であり(W≦14.0)、前記主体金具によって加締められる部分であって絶縁碍子の外周面と主体金具の内周面とにより囲まれた円筒形状の空間に緩衝材が充填された緩衝材充填部分を、前記緩衝材充填部分の軸方向長さ(L)と厚さ(M)とが、単位をmmとして、0.5≦L≦10.0、かつ、0.5≦M≦1.3、に形成する工程と、
前記締付部と、前記取付ねじ部と前記締付部との間に前記取付ねじ部よりも径大に形成された座部とを軸方向に狭圧して押圧しながら通電して前記締付部と前記座部とを連絡する湾曲部を加熱させながら座屈せしめる工程と、を備えることを特徴とすることができる。
【0014】
このような工程を備えると、加締めに要する荷重が小さくてすむ。このため、請求項2に記載の発明と同様な作用効果を奏する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面を参照し説明する。
図1は本発明に係るスパークプラグ20の部分断面図である。周知のように、アルミナ等からなる絶縁碍子1は、その上部に沿面距離を稼ぐためのコルゲーション部1Aを、下部に内燃機関の燃焼室に曝される脚長部1Bを備え、その軸中心には中心貫通孔1Cを備えている。中心貫通孔1Cの下端(先端)には、インコネル等のニッケル合金からなる中心電極2が保持され、中心電極2は絶縁碍子1の下端面から下方に突出している。中心電極2は実際にはインコネル単体で構成されるものではなく、その中心に芯材として銅(Cu)が封入され熱伝導度の改善を図っているが、図面が複雑になるので図示していない。中心電極2は中心貫通孔1Cの内部に設けられた導電性ガラスシール層12、13および抵抗体3を経由して上方の端子4に電気的に接続されている。端子4には図示しない高耐圧ケーブルが接続され高電圧が印加される。上記絶縁碍子1は主体金具5に囲まれ支持されている。
【0016】
主体金具5は低炭素鋼材で構成され、スパークプラグレンチと嵌合する本発明の締付部たる六角形部5Aと、シリンダヘッドに螺合するねじ部5Bと、座部5Fとを備えている。六角形部5Aの周面は、その形状を説明する図5(A)に示すように、六角ナットの周面形状(HEX.)に形成されている。主体金具5はその加締め部5Cにより絶縁碍子1に加締められ、主体金具5と絶縁碍子1が一体にされる。主体金具5の六角形部5Aと座部5Fとを連絡する湾曲部5Dは、加締めによる主体金具5の軸方向の変形を吸収する部分である。加締めによる密閉を完全なものとするため、主体金具5の内周段部5Eと絶縁碍子1との間に板状のパッキン部材6を介在して燃焼室に曝される脚長部1Bと絶縁碍子1の上部とのシールを完全にしている。また、加締め部5Cと絶縁碍子1との間にワイヤ状のシール部材7,8を介在し、シール部材7,8の間に緩衝材である滑石(タルク)9の粉末を充填して弾性的にシールをし主体金具5と絶縁碍子1との固定を完全にしている。また、ねじ部5Bの上端にはガスケット10が嵌挿されている。主体金具5の下端にニッケル合金からなる接地電極11が溶接により接合されている。接地電極11は直角に折り曲げられ、その先端部の平面が中心電極2の先端に対向するように形成されている。
【0017】
図2は主体金具5が加締めされる部分を拡大して示すスパークプラグ20の部分断面図、図3は図2のA−A線断面図である。絶縁碍子1の外周面と主体金具5の六角形部5Aの内周面とにより囲まれ上下をシール部材7,8で画された円筒状の空間に緩衝材である滑石(タルク)9の粉末が充填され、緩衝材充填部分9を構成している。そして、図4に示すように、主体金具5の座部5Fの下端面に加締め下金型42を当接させ、六角形部5Aの上端面及び加締め部5Cに加締め上金型41を当接させて、上下の金型41,42により主体金具5を挟圧して数トンの荷重で押圧する。
【0018】
この荷重により、図2に示すように、加締め部5Cが上金型41に沿って変形し、板厚の薄い湾曲部5Dが軸方向に0.8mm程度塑性変形により座屈する。この軸方向の座屈により、絶縁碍子1の外周段部1Dがシール部材8、滑石(タルク)9、シール部材7を介して加締め部5Cにより強く図面下方向に押し付けられる。この結果、絶縁碍子1が主体金具5の内周段部5Eにパッキン部材6を介して強く押し付けられて、燃焼室に曝される脚長部1Bと絶縁碍子1の上部との気密を完全にしている。ここで、滑石(タルク)9の粉末に掛かる強い圧力により主体金具5の六角形部5Aが僅かに弾性的に半径方向外方に膨らむ。この六角形部5Aの弾性的な膨らみによる半径方向内方へのバネのような圧力が滑石(タルク)9を経由して絶縁碍子1の外周段部1Dを下に押し付ける力になる。この力が絶縁碍子1を主体金具1の内周段部5Eにパッキン部材6を介して弾性的に押し付けることになり、パッキン部材6のシールがより弾性的になり、耐衝撃性に優れたスパークプラグになる。
【0019】
図4は緩衝材充填部分9を持たないスパークプラグの加締め工程を示す部分断面図である。滑石(タルク)9を持たないスパークプラグではその絶縁碍子1の外周段部1Dが軸方向に長く形成され、外周段部1Dの上端に直接あるいはシール材を介して主体金具5の加締め部5Cが当接するようになっている。そして、主体金具5の座部5Fの下端面に加締め下金型42を当接させ、六角形部5Aの上端面及び加締め部5Cに加締め上金型41を当接させて、上下の金型41,42により主体金具5を挟圧して数トンの荷重で押圧する。この状態で、上下の金型41、42間に100A近い電流を0.5秒から1秒間流す。電流は上金型41から主体金具5の六角形部5A、湾曲部5D、座部5Fを経由して下金型42に流れる。このとき、湾曲部5Dの肉厚が最も薄く抵抗値が高いため、湾曲部5Dのみが強く加熱され赤熱する。このため湾曲部5Dが軟化し湾曲部5Dの座屈に要する荷重が減少する。それ故、加締めに要する荷重が小さくてすむ。そして、加締め作業終了後に加熱された湾曲部5Dが冷却に伴い軸方向にも収縮するため、加締めによるパッキン部材6への圧力がさらに強くなり、スパークプラグの気密性が高まる。
【0020】
図4では緩衝材充填部分9を持たないスパークプラグの熱加締めについて説明したが、図2に示すような緩衝材充填部分9を有するスパークプラグにおいても加締め金型41、42から通電し、熱加締めを行うことができる。熱加締めを行うことにより湾曲部5Dの座屈に要する荷重が30%以上減少するため、加締め作業に伴う六角形部5Aの膨らみを抑制することが期待できる。また、熱加締め後の冷却に伴う湾曲部5Dの収縮によりスパークプラグの気密性が高まることが期待できる。そこで、緩衝材充填部分9を有するスパークプラグで冷間で加締めを行ったもの(以下プラグAと称する)、緩衝材充填部分9を有するスパークプラグで熱加締めを行ったもの(以下プラグBと称する)、それに、緩衝材充填部分9を持たないスパークプラグで熱加締めを行ったもの(以下プラグCと称する)、を多数本用意し種々のテストを行った。
【0021】
テストを行ったスパークプラグの寸法の詳細は次のようである。主体金具5のねじ部5Bの径は12mmつまりM12のものを用いた。六角形部5Aの二面幅Wは公称14mm公差+0.0mm、−0.27mmである。六角形部5Aの肉厚Pは1.0mmである。緩衝材充填部分9の軸方向長さLは7.0mm、厚さMは1.0mmとした。
【0022】
上記のスパークプラグを用い、まず、衝撃及び加熱試験後の加熱気密性について調べた。衝撃試験は、JIS B 8031、の6.4、耐衝撃試験の規定に基づいて行った。この衝撃試験は質量2.3kgのブロックにスパークプラグを取り付け、ブロックをばねで付勢した状態で毎分400回の割合で金床に打ち付けてスパークプラグに衝撃を与えるテストである。JISの規定では10分間衝撃を加えることになっているが、本テストではさらに加重して30分間衝撃を加えることとした。加熱試験は衝撃試験と同時にバーナーでスパークプラグの発火部を約800℃に、座温を約300℃に加熱することにより行った。
上記の耐衝撃及び加熱試験後のスパークプラグについて、加熱気密試験を行った。加熱気密試験は、プラグを所定温度の雰囲気中に30分間保った後、その発火部に15kgf/cm2の空気圧を加えて、各温度におけるプラグ内部からの空気の漏れ量を測定した。
その結果を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
表1において、○印は毎分の漏洩量が0ccのものを、△印は毎分の漏洩量が0〜10ccのものを、ラ印は毎分の漏洩量が10cc以上のものを示している。プラグA、B、C各5本の試料について試験した。表1から明らかなように、雰囲気温度が高いほど漏洩量が多くなっている。これは雰囲気温度が高くなると主体金具5が熱膨張し軸方向にも伸びるため、パッキン部材6に掛かる圧力が減少するためであると考えられる。
【0025】
表1において、プラグAとプラグCのテスト結果を比較すると明らかなように、プラグAはプラグCに比べて顕著に耐衝撃性に優れている。緩衝材充填部分9を有さないプラグCでは、激しい衝撃性試験の後の気密試験では気密性の減少が著しく、常温においても半数以上がラ印であった。これに対して緩衝材充填部分9を備えるプラグAでは、50℃まではすべて○印であり、100℃でも半数以上が○印であり充分実用に耐える。このテスト結果は請求項1の発明の効果を支持するものである。
【0026】
表1において、プラグAとプラグBのテスト結果を比較すると、熱加締めを行ったプラグBは冷間加締めを行ったプラグAに比べて、さらに耐衝撃性に優れている。プラグAではすべて○印になるのは50℃までであるのに対して、プラグBでは150℃まですべて○印である。さらに、200℃まで△印で収まり優れた耐衝撃性を示している。このテスト結果は請求項2及び3の発明の効果を支持するものである。
【0027】
次に、加締め作業による六角形部5Aの膨らみについて検証する。加締めによる湾曲部5Dの座屈量が0.8mmとなる加締め金型41、42を用いて製作された2種類のスパークプラグの二面幅Wについて精密測定した。一方の種類のスパークプラグは緩衝材充填部分9を有し冷間加締めされたプラグAであり、他方は緩衝材充填部分9を有し熱加締めされたプラグBである。二面幅Wは公称14mmであり、加締め作業前の素材の二面幅Wは13.70mmである。プラグAとプラグBとの各10本での二面幅Wの測定値を表2に示す。単位はmmである。
【0028】
【表2】
【0029】
表2から明らかなように、冷間加締めをしたプラグAでは二面幅Wの膨らみは平均で0.262mmであり、二面幅Wのばらつきも大きい。No8の試料のように0.001mmであるが公差を外れるものも出ている。これに対して熱加締めをしたプラグBでは二面幅Wの膨らみは平均で0.089mmと小さく、二面幅Wのばらつきも小さい。このため、加締め前の素材の二面幅Wをあと0.1mm大きくしても公差内に十分入りそうである。このように、湾曲部5Dに通電加熱し軟化させて座屈することにより、六角形部5Aの膨らみを大きく抑制することができる。この結果は請求項2及び3の発明の効果を支持するものである。
【0030】
次に、スパークプラグを過トルクで締め付けたときの加熱気密性について上記プラグA、プラグB、プラグCについて調べた。スパークプラグを過トルクで締め付けると主体金具5のねじ部5Bが軸方向に伸ばされ、内周段部5Eと絶縁碍子1とに挟まれたパッキン部材6に掛かるパッキン圧が減少して気密性が低下すると考えられている。ねじ部5Bの規格がM12、二面幅Wが14mmのスパークプラグの定格トルクは25N−m(ニュートン−メートル)である。
定格トルクはねじ部5Bに何も塗布しないものとして規定されているが、本テストでは条件をさらに過酷にするため、ねじ部5Bに潤滑剤であるモリブデン(Mo)を含有する焼き付き防止剤を塗布して各トルクで締め付けた。締め付けトルクは25N−mから65N−mとした。そして、加熱気密試験については、座温を200℃に加熱し、発火部に15kgf/cm2の空気圧を加えてプラグ内部からの空気の漏れ量を測定した。空気の漏れ量は、内周段差5Eと絶縁碍子1との密着面であるパッキン部材6からの漏洩と、主体金具5と絶縁碍子1の間からの漏洩との2種類について調べた。その結果を表3及び表4に示す。表3はパッキン部材6からの漏洩を、表4は主体金具5と絶縁碍子1の間からの漏洩を示している。
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
表3及び表4において横軸は締め付けトルクを示し単位はN−m(ニュートン−メートル)である。縦軸はプラグA、B、Cであり各プラグについて3本の試料について測定した。記号○△×の意味は表1と同じであり、○印は毎分の漏洩量が0ccのものを、△印は毎分の漏洩量が0〜10ccのものを、ラ印は毎分の漏洩量が10cc以上のものを示している。
【0034】
表3から明らかなように、緩衝材充填部分9を持たないプラグCに比べて、緩衝材充填部分9を有するプラグAは、過トルク締め付け時の加熱気密性に顕著に優れている。これは前にも述べたように、主体金具5の六角形部5Aの半径方向外方への弾性的変形によるバネ力が滑石(タルク)9の粉末の圧力に変換されて絶縁碍子1の外周段部1Dを図2で下方向に弾性的に押しており、ねじ部5Bが過トルクにより多少伸びたとしてもこれに追随して絶縁碍子1が下がり、パッキン部材6での気密性が保たれるためであると考えている。このテスト結果は請求項1の発明の効果を支持するものである。
【0035】
また、表3のプラグAとプラグBのテスト結果を比較すると、熱加締めしたプラグBの方が、過トルク締め付け時の加熱気密性に優れている。これは熱加締めに要する荷重は冷間加締めに比べて30%以上低いため、表2でも述べたように、熱加締めしたプラグBの方が六角形部5Aの塑性変形量が小さい。このためプラグBの方が六角形部5Aの弾性変形量が大きくなるためではないかと考えている。この実験結果は請求項2及び3の発明の効果を支持するものである。
【0036】
次に、表3と表4とを比較すると、緩衝材充填部分9を持たないプラグCでは加熱気密性にほとんど変化が見られないのに対して、緩衝材充填部分9を有するプラグA、Bでは加熱気密性の明らかな向上が見られる。これは緩衝材充填部分9を持たない図4に示すようなプラグCでは、パッキン部材6を漏洩した空気はそのまま主体金具5と絶縁碍子1との間を通り抜けてしまう。これに対して緩衝材充填部分9を有する図2に示すようなプラグA、Bでは緩衝材充填部分9が第2のパッキンとして作用し、パッキン部材6を漏洩した空気は緩衝材充填部分9に固く充填された滑石(タルク)に阻止されて主体金具5と絶縁碍子1との間を通り抜けることができないからである。この実験結果は請求項1の発明の効果を支持するものである。
ところで、上記実施例では、本発明の締付部として、図5(A)に示したように、六角ナットの周面形状(HEX.)に形成された六角形部5Aを例に挙げて説明したが、締付部として図5(B)に示すように、周面が12ポイントナットの周面形状(Bi−HEX.)に形成されたものを用いることもできる。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のうち請求項1記載の発明は、緩衝材充填部分を備えるものであるから、二面幅が14mm以下の小さな主体金具を持つスパークプラグであっても、高温での使用に耐え、耐衝撃性に優れるという優れた効果がある。
請求項2及び3記載の発明は、上記効果をさらに高めると共に、締付部の膨らみを抑制することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るスパークプラグの部分断面図である。
【図2】主体金具が加締めされる部分を拡大して示す部分断面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】緩衝材充填部分を持たないスパークプラグの加締め工程を示す部分断面図である。
【図5】図5(A)は、六角形部5Aの外周形状を示す平面説明図であり、図5(B)は、六角形部5Aの周面を12ポイントナットの周面形状に形成した場合の平面説明図である。
【符号の説明】
1 絶縁碍子
1D 外周段部
2 中心電極
5 主体金具
5A 六角形部
5B ねじ部
5D 湾曲部
5E 内周段部
5F 座部
6 パッキン部材
9 緩衝材充填部分(滑石)
Claims (2)
- 中心貫通孔を有する絶縁碍子と、前記中心貫通孔に保持された中心電極と、前記絶縁碍子を加締めにより保持する主体金具と、その主体金具に電気的に導通されて前記中心電極との間に火花放電ギャップを形成する接地電極とを備え、前記中心電極の軸線方向に火花放電ギャップの形成される側を前方側これと反対方向を後方側として、前記主体金具の前端側外周面には取付ねじ部が形成されるとともに、その取付ねじ部よりも後方側において前記主体金具の外周面には、前記取付ねじ部を内燃機関側の取付ねじ孔にねじ込むための締付部が形成されたスパークプラグにおいて、
前記締付部の平行する2面の対面距離(二面幅W)が14mm以下であり(W≦14.0)、
前記主体金具によって加締められる部分であって絶縁碍子の外周面と主体金具の内周面とにより囲まれた円筒形状の空間に緩衝材が充填された緩衝材充填部分を備え、
前記緩衝材充填部分の軸方向長さ(L)と厚さ(M)とが、単位をmmとして、0.5≦L≦10.0、かつ、0.5≦M≦1.3、の関係を満たすと共に、前記主体金具の締付部と、前記取付ねじ部と前記締付部との間に前記取付ねじ部よりも径大に形成された座部とを連絡する湾曲部を加熱した状態で、該湾曲部を軸方向の加締めにより座屈させる熱加締めにより主体金具と絶縁碍子とが一体とされたこと
を特徴とするスパークプラグ。 - 中心貫通孔を有する絶縁碍子と、前記中心貫通孔に保持された中心電極と、前記絶縁碍子を加締めにより保持する主体金具と、その主体金具に電気的に導通されて前記中心電極との間に火花放電ギャップを形成する接地電極とを備え、前記中心電極の軸線方向に火花放電ギャップの形成される側を前方側これと反対方向を後方側として、前記主体金具の前端側外周面には取付ねじ部が形成されるとともに、その取付ねじ部よりも後方側において前記主体金具の外周面には、前記取付ねじ部を内燃機関側の取付ねじ孔にねじ込むための締付部が形成されたスパークプラグの製造方法であって、前記主体金具の締付部の平行する2面の対面距離(二面幅W)が14mm以下であり(W≦14.0)、前記主体金具によって加締められる部分であって絶縁碍子の外周面と主体金具の内周面とにより囲まれた円筒形状の空間に緩衝材が充填された緩衝材充填部分を、前記緩衝材充填部分の軸方向長さ(L)と厚さ(M)とが、単位をmmとして、0.5≦L≦10.0、かつ、0.5≦M≦1.3、に形成する工程と、
前記締付部と、前記取付ねじ部と前記締付部との間に前記取付ねじ部よりも径大に形成された座部とを軸方向に狭圧して押圧しながら通電して前記締付部と前記座部とを連絡する湾曲部を加熱させながら座屈せしめる工程と、
を備えることを特徴とするスパークプラグの製造方法。
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