JP4548701B2 - 破骨細胞形成を抑制する化合物のスクリーニング方法 - Google Patents

破骨細胞形成を抑制する化合物のスクリーニング方法 Download PDF

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Description

本発明は破骨細胞形成シグナルを制御する方法に関する。より具体的には、破骨細胞形成を制御する方法に関する。
細胞の分化において、細胞表面受容体により誘導されるシグナル伝達は転写因子を活性化し、それらが下流のエフェクター分子または他の(1つまたは複数の)転写因子の転写を促進し、それらが共動して細胞系列の運命を決定する。複数の転写因子が関与する細胞型の特定化における一連の事象を同定することは、細胞の分化および骨格の形態形成の分子機構を理解するために重要である (Karsenty, G., and Wagner, E. F. (2002) Dev Cell 2, 389-406)。
破骨細胞は、生理的骨吸収および病的骨吸収の両方に専ら責任を持つ多核細胞である (Manolagas, S. C. (2000) Endocr Rev 21, 115-137; Teitelbaum, S. L. (2000) Science 289, 1504-1508)。破骨細胞による骨吸収は、骨芽細胞による骨形成と調和が維持されていなければならず、このバランスされた調節が破綻すると、骨粗鬆症、自己免疫性関節炎、パジェット (Paget) 病、および骨癌を含む様々な骨減少性 (osteopenic) の疾患状態に陥る (Rodan, G. A., and Martin, T. J. (2000) Science 289, 1508-1514; Takayanagi, H. et al. (2000a) Arthritis Rheum 43, 259-269; Takayanagi, H. et al., J. Clin. Invest. 104, 137-46 (1999); Kong, Y.Y. et al., Nature 402, 304-9 (1999); Pettit, A.R. et al., Am J Pathol 159, 1689-99 (2001))。従って、破骨細胞形成の調節機構に関する研究は骨細胞生物学の中心的な課題となってきた。
造血幹細胞に由来する単球/マクロファージ前駆細胞は、骨芽細胞を含む間葉系細胞との細胞間シグナル伝達を通して破骨細胞に発達する (Chambers, T. J. (2000) J Pathol 192, 4-13; Suda, T. et al. (1999) Endocrine Rev 20, 345-357)。この細胞間シグナル伝達にとって必須の分子がRANKLおよびM-CSF (macrophage-colony stimulating factor) である。RANKL (receptor activator of nuclear factor κB ligand) はtnfs11、TRANCE、OPGL、ODFなどとも呼ばれ、TNFファミリーのサイトカインの1つで、破骨細胞形成の強力かつ排他的なインデューサーである (Lacey, D. L. et al. (1998) Cell 93, 165-176; Theill, L. E. et al. (2002) Annu Rev Immunol 20, 795-823; Yasuda, H. et al. (1998) Proc Natl Acad Sci U S A 95, 3597-3602; Kong, Y. Y. et al., Nature 397, 315-323 (1999); Suda, T. et al., Endocrine Rev. 20, 345-357 (1999))。骨芽細胞で発現するRANKLは破骨細胞の分化に必須のシグナル伝達を起こす一方、骨芽細胞から分泌されるM-CSFは、主に抗アポトーシス因子であるBcl-2の活性化を介して前駆細胞の生存のためのシグナルをもたらす (Lagasse, E., and Weissman, I. L. (1997) Cell 89, 1021-1031)。
RANKLを欠失するマウス、または機能的なM-CSF遺伝子を持たないop/opマウスは、破骨細胞の活性化または分化のどちらかの障害により引き起こされる骨硬化性疾患の1つである骨大理石病 (osteopetrosis) を発症する (Kong, Y. Y. et al. (1999b) Nature 397, 315-323; Yoshida, H. et al. (1990) Nature 345, 442-444)。破骨細胞の発達の障害により破骨細胞を欠く骨大理石病マウスは、破骨細胞形成に必須の転写因子の同定に著しく貢献してきた。PU.1のターゲッティングによる破壊は、破骨細胞およびマクロファージを完全に失わせることから、PU.1は、破骨細胞前駆細胞を含む初期の骨髄系細胞の分化に重要であることが示された (Tondravi, M. M. et al. (1997) Nature 386, 81-84)。これとは対照的に、AP (activator protein)-1複合体の一成分であるc-Fosを欠失するマウスまたはNF (nuclear factor)-κBの成分であるp50/52の両方を欠失するマウスでは、重度の骨大理石病を発症するがマクロファージの発達は障害されないことから、これらの転写因子は単球/マクロファージ前駆細胞から成熟した破骨細胞への発達段階の中の特定の機能に役割を果たしていることが示唆される (Franzoso, G. et al. (1997) Genes Dev 11, 3482-3496; Grigoriadis, A. E. et al. (1994) Science 266, 443-448; Johnson, R. S. et al. (1992) Cell 71, 577-586; Wang, Z. Q. et al. (1992) Nature 360, 741-745)。小眼球症 (microphthalmia) 遺伝子をコードするMITFもまた、破骨細胞形成に必須であり (Moore, K. J. (1995) Trends Genet 11, 442-448)、最近の研究からMITFはM-CSFにより活性化され (Weilbaecher, K. N. et al. (2001) Mol Cell 8, 749-758)、Bcl-2の誘導およびこの細胞系列の生存に重要な遺伝子であることが示唆されている (McGill, G. G. et al. (2002) Cell 109, 707-718)。
これまでに、RANKLがどのようにシグナルを細胞内に伝達するかについて多くの研究がなされてきた。RANKLが受容体RANKに結合すると、TRAF6 (tumor necrosis factor receptor-associated factor 6) などのTRAFファミリー蛋白質が動員され、これらがNF-κB経路およびJNK経路を活性化する (Darnay, B. G. et al. (1998) J Biol Chem 273, 20551-20555; Galibert, L. et al. (1998) J Biol Chem 273, 34120-34127; Wong, B. R. et al. (1998) J Biol Chem 273, 28355-28359)。TRAF6経路が破骨細胞の分化に必須の役割を持つことが、遺伝子破壊研究と、それに続いて行なわれた、この過程におけるTRAF6各ドメインの機能解析により実証された (Kobayashi, N. et al. (2001) Embo J 20, 1271-1280; Lomaga, M. A. et al. (1999) Genes Dev 13, 1015-1024; Naito, A. et al. (1999) Genes Cells 4, 353-362)。しかしながら、NF-κB活性を排他的にレスキューするTRAF6変異体をTRAF6-/-細胞に導入しても、破骨細胞形成はレスキューされなかった (Kobayashi, N. et al. (2001) Embo J 20, 1271-1280)。これらの結果は、ジーンターゲッティングの研究によりNF-κBが必須の役割を持っていることは明らかになったものの、TRAF6の機能はNF-κB活性のみに媒介されるのではないことを示唆している。
RANKLはまた、c-Fosの発現を誘導するが、c-Fosは破骨細胞形成に必須の転写因子であることが遺伝学的に明らかになっている (Matsuo, K. et al. (2000) Nat Genet 24, 184-187; Wagner, E. F., and Karsenty, G. (2001) Curr Opin Genet Dev 11, 527-532)。c-Fosの標的遺伝子の中で、Fra-1がc-Fosを欠失するマウスの骨大理石病をレスキューすることが示されたが (Matsuo, K. et al. (2000) Nat Genet 24, 184-187)、この遺伝子のコンディショナルターゲッティングにより、Fra-1は破骨細胞形成に不可欠ではないことが示唆された (Karsenty, G., and Wagner, E. F. (2002) Dev Cell 2, 389-406; Wagner, E. F., and Karsenty, G. (2001) Curr Opin Genet Dev 11, 527-532)。RANKLはまた、ERK、p38、およびAktなどの他の分子も活性化するが、破骨細胞形成においてこれらの分子が重要な機能を持つかは遺伝学的に確立されていない (Matsumoto, M. et al. (2000) J Biol Chem 275, 31155-31161; Theill, L. E. et al. (2002) Annu Rev Immunol 20, 795-823; Wei, S. et al. (2002) J Biol Chem 277, 6622-6630; Wong, B. R. et al. (1999) Mol Cell 4, 1041-1049)。このように、RANKL、およびTRAF6経路およびc-Fos経路などの下流のシグナル伝達経路は破骨細胞形成に必須であることは十分に確立されているが、TRAF6経路およびc-Fos経路の下流で作用する重要な遺伝子は知られていない。
Karsenty, G., and Wagner, E. F. (2002) Dev Cell 2, 389-406 Manolagas, S. C. (2000) Endocr Rev 21, 115-137 Teitelbaum, S. L. (2000) Science 289, 1504-1508 Rodan, G. A., and Martin, T. J. (2000) Science 289, 1508-1514 Takayanagi, H. et al. (2000a) Arthritis Rheum 43, 259-269 Takayanagi, H. et al., J. Clin. Invest. 104, 137-46 (1999) Kong, Y.Y. et al., Nature 402, 304-9 (1999) Pettit, A.R. et al., Am J Pathol 159, 1689-99 (2001) Chambers, T. J. (2000) J Pathol 192, 4-13 Suda, T. et al. (1999) Endocrine Rev 20, 345-357 Lacey, D. L. et al. (1998) Cell 93, 165-176 Theill, L. E. et al. (2002) Annu Rev Immunol 20, 795-823 Yasuda, H. et al. (1998) Proc Natl Acad Sci U S A 95, 3597-3602 Kong, Y. Y. et al. (1999b) Nature 397, 315-323 Lagasse, E., and Weissman, I. L. (1997) Cell 89, 1021-1031 Yoshida, H. et al. (1990) Nature 345, 442-444 Tondravi, M. M. et al. (1997) Nature 386, 81-84 Franzoso, G. et al. (1997) Genes Dev 11, 3482-3496 Grigoriadis, A. E. et al. (1994) Science 266, 443-448 Johnson, R. S. et al. (1992) Cell 71, 577-586 Wang, Z. Q. et al. (1992) Nature 360, 741-745 Moore, K. J. (1995) Trends Genet 11, 442-448 Weilbaecher, K. N. et al. (2001) Mol Cell 8, 749-758 McGill, G. G. et al. (2002) Cell 109, 707-718 Darnay, B. G. et al. (1998) J Biol Chem 273, 20551-20555 Galibert, L. et al. (1998) J Biol Chem 273, 34120-34127 Wong, B. R. et al. (1998) J Biol Chem 273, 28355-28359 Kobayashi, N. et al. (2001) Embo J 20, 1271-1280 Lomaga, M. A. et al. (1999) Genes Dev 13, 1015-1024 Naito, A. et al. (1999) Genes Cells 4, 353-362 Matsuo, K. et al. (2000) Nat Genet 24, 184-187 Wagner, E. F., and Karsenty, G. (2001) Curr Opin Genet Dev 11, 527-532 Matsumoto, M. et al. (2000) J Biol Chem 275, 31155-31161 Wei, S. et al. (2002) J Biol Chem 277, 6622-6630 Wong, B. R. et al. (1999) Mol Cell 4, 1041-1049
本発明は、破骨細胞形成を制御する方法を提供することを課題とする。具体的には、本発明は破骨細胞形成に関与するCa2+シグナル伝達を促進または阻害することにより、破骨細胞形成を制御する方法を提供する。さらに本発明は、Ca2+シグナル伝達を指標にした、破骨細胞形成を制御する化合物のスクリーニング方法を提供する。さらに本発明は、ES細胞からin vitroで破骨細胞を形成させる系を提供する。本発明により、骨吸収および骨破壊を制御する新たな薬剤をスクリーニングすることが可能となる。
TRAF6経路およびc-Fos経路はRANKLが誘導する破骨細胞形成において活性化されるが、これらの経路はIL-1などの他の様々なサイトカインによっても活性化される (Cao, Z. et al. (1996) Nature 383, 443-446; Ninomiya-Tsuji, J. et al. (1999) Nature 398, 252-256)。このことから、RANKLシグナル伝達は、未知の(1つまたは複数の)経路を活性化することにより破骨細胞の分化を特異的に誘導しているという興味深い可能性が導かれる。RANKL依存的な破骨細胞分化に責任を持つ特異的な(1つまたは複数の)経路を同定するため、本発明者らはゲノムワイドのスクリーニングアプローチにより、RANKLにより特異的に誘導され、IL-1によっては誘導されない遺伝子の同定を行なった。その結果、本発明者らは、転写因子の中でもNFAT (nuclear factor of activated T cells) ファミリーのメンバーであるNFATc1が、RANKL刺激後に最も高い誘導を受ける転写因子であり、TRAF6経路およびFos経路の両経路の下流において破骨細胞分化を決定する分子スイッチであることを見いだした。
NFAT転写因子はリンパ球活性化に加え広範囲の細胞発生に関与しており、Ca2+で調節されるホスファターゼであるカルシニューリンの制御を受けることがよく知られている (Crabtree, G. R., and Olson, E. N. (2002) Cell 109 Suppl, S67-79; Rao, A. et al. (1997) Annu Rev Immunol 15, 707-747)。本発明においてRANKLは、NFATc1を強く誘導して活性化させ、NFATc1は核に移行し、c-Fosと共動してTRAPおよびカルシトニン受容体を含む破骨細胞遺伝子を直接調節することが判明した。カルシニューリン阻害剤であるFK506およびシクロスポリンAは、RANKLが誘導する破骨細胞形成を用量依存的に強く阻害した。Ca2+キレーターもまた、NFATc1の発現上昇を阻害すると共に破骨細胞形成を阻害した。このように本発明者らは、NFATc1のRANKLによる活性化もまた、Ca2+ - カルシニューリン経路を介しており、この経路はRANKLシグナル伝達の第三の経路であることを示した。レトロウイルスによりNFATc1を過剰発現させるとRANKLによる刺激なしに破骨細胞形成が誘導され、またNFATc1を欠損する胚性幹 (ES) 細胞は破骨細胞に分化できない。これらのことから、NFATc1は破骨細胞の発生に必須の転写因子であり、RANKLが誘導する細胞シグナル伝達のインテグレーターであることが同定された。本発明者らはさらに、NFATc1はc-Fosと共動して酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ (tartrate-resistant acid phosphatase; TRAP) およびカルシトニン受容体のプロモーターを含む、破骨細胞遺伝子のプロモーターに作用することを明らかにした。これらを合わせると、破骨細胞の最終分化において、NFATc1はRANKLが誘導する転写機構に統合的な役割を果たすことが示唆される。
ところでレフルノミドはイソキサゾール系の疾患修飾性抗リウマチ薬 (disease-modifying antirheumatic drug; DMARD) として知られ、ジヒドロオロテート・デヒドロゲナーゼに作用してde novoのピリミジン生合成を阻害する。レフルノミドは、動物モデルおよびヒトにおいて、骨破壊に対して保護効果を有しており (Prakash, A. & Jarvis, B., Drugs 58, 1137-64 (1999); Sharp, J.T., Arthritis Rheum 43, 495-505 (2000); Cohen, S. et al., Arthritis Rheum 44, 1984-92 (2001))、最近関節リウマチの治療に導入された (Kremer, J.M., Ann Intern Med 134, 695-706 (2001); Prakash, A. & Jarvis, B., Drugs 58, 1137-64 (1999))。レフルノミドの抗リウマチ効果は主にT細胞の増殖または活性化の抑制を通して発揮され (Breedveld, F.C. & Dayer, J.M., Ann Rheum Dis 59, 841-9 (2000))、同種移植 (allografts) における免疫抑制薬としても取り入れられている (Williams, J.W. et al., Transplantation 73, 358-66 (2002))。
レフルノミド (Prakash, A. & Jarvis, B., Drugs 58, 1137-64 (1999); Breedveld, F.C. & Dayer, J.M., Ann Rheum Dis 59, 841-9 (2000)) および他の抗リウマチ薬の臨床上の有益な効果にもかかわらず、これらの薬剤の骨破壊に対する保護効果の分子基盤についての情報は少ない。例えばこれらの薬剤の骨保護作用は、免疫抑制作用による間接的なものか、あるいは骨破壊のエフェクター細胞である骨吸収性破骨細胞を阻害することによる直接的なものかは明確ではなかった。しかし本発明者らが、破骨細胞分化系を用いてレフルノミドを効果を調べたことろ、レフルノミドはRANKLを介する破骨細胞分化を強力に直接阻害する効果を有することが判明した。レフルノミドは破骨細胞前駆細胞でRANKLが誘導するカルシウムシグナルをin vitroで遮断し、破骨細胞分化の転写プログラムの必須調節因子であるNFATc1の誘導を強く阻害した。この阻害はNFATc1の異所的な発現によりレスキューされることから、NFATc1は実際にレフルノミドの重要な標的であることが示された。本発明者らはまた、この作用が骨保護薬としてのレフルノミドにとって重要であることを示すin vivoの証拠を提示した。すなわち、レフルノミドはRag-2遺伝子欠損マウスのエンドトキシンで誘導される炎症性骨破壊に対して、T細胞の活性化がなくても抑制効果を示した。本明細書に示された知見は、この抗リウマチ薬の破骨細胞形成に対する直接的な阻害作用を実証し、RANKL刺激により誘導される破骨細胞形成に直接阻害作用を及ぼす抗リウマチ薬を骨関連疾患の改善のために効果的に使用するという新たな戦略を提供する。
本発明は、Ca2+シグナル伝達の調節により破骨細胞形成を制御する方法、破骨細胞形成を調節する化合物のスクリーニング方法、および破骨細胞形成を抑制する医薬組成物等に関し、より具体的には、
(1)破骨細胞形成を促進または抑制する方法であって、破骨細胞前駆細胞におけるCa2+シグナル伝達をそれぞれ促進または抑制する工程を含む方法、
(2)破骨細胞前駆細胞におけるCa2+シグナル伝達を促進または抑制する工程が、該破骨細胞前駆細胞におけるカルシニューリンの発現または活性を促進または抑制する工程である、(1)に記載の方法、
(3)破骨細胞前駆細胞におけるCa2+シグナル伝達を促進または抑制する工程が、該破骨細胞前駆細胞におけるNFATc1の発現または活性を促進または抑制する工程である、(1)に記載の方法、
(4)該破骨細胞前駆細胞におけるAP-1の1つまたはそれ以上の成分の発現または活性を促進または抑制する工程をさらに含む、(1)に記載の方法、
(5)NFATc1の活性が、NFATc1およびAP-1成分との相互作用である、(3)に記載の方法、
(6)NFATc1の活性が、NFATc1およびDNAとの相互作用である、(3)に記載の方法、
(7)破骨細胞形成を抑制する方法であって、破骨細胞前駆細胞に、カルシニューリン阻害剤および/またはレフルノミドを接触させる工程を含む方法、
(8)破骨細胞形成を抑制する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)被検化合物を含む試料の存在下、破骨細胞前駆細胞におけるCa2+シグナル伝達を検出する工程、および
(b)該Ca2+シグナル伝達を抑制する化合物を選択する工程、を含む方法、
(9)工程(a)が、被検化合物を含む試料の存在下、破骨細胞前駆細胞におけるカルシニューリンの発現または活性を検出する工程であり、工程(b)が、該カルシニューリンの発現レベルまたは活性を抑制する化合物を選択する工程である、(8)に記載の方法、
(10)工程(a)が、被検化合物を含む試料の存在下、破骨細胞前駆細胞におけるNFATc1の発現または活性を検出する工程であり、工程(b)が、該NFATc1の発現レベルまたは活性を抑制する化合物を選択する工程である、(8)に記載の方法、
(11)NFATc1の活性が、NFATc1およびAP-1成分との相互作用である、(10)に記載の方法、
(12)NFATc1の活性が、NFATc1およびDNAとの相互作用である、(10)に記載の方法、
(13)破骨細胞形成を抑制する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)被検化合物を含む試料の存在下、外来的にNFATc1を発現させた破骨細胞前駆細胞における破骨細胞形成を検出する工程、および
(b)該破骨細胞形成を抑制する化合物を選択する工程、を含む方法、
(14)骨減少性疾患の治療のための医薬組成物であって、Ca2+シグナル伝達を抑制する少なくとも1つの化合物、および1つまたはそれ以上の薬学的に許容される担体を含む組成物、
(15)該化合物が、カルシニューリンの発現または活性を抑制する化合物である、(14)に記載の組成物、
(16)該化合物が、NFATc1の発現または活性を抑制する化合物である、(14)に記載の組成物、
(17)該化合物が、NFATc1およびAP-1成分との相互作用を阻害する化合物である、(16)に記載の組成物、
(18)該化合物が、NFATc1およびDNAとの相互作用を阻害する化合物である、(16)に記載の組成物、
(19)骨減少性疾患が、骨粗鬆症、自己免疫性関節炎、パジェット病、および骨癌からなる群より選択される疾患である、(14)に記載の組成物、
(20)破骨細胞の製造方法であって、
(a)胚性幹細胞を培養して三次元的な細胞塊を形成させる工程、
(b)工程(a)で得られた細胞をM-CSF存在下で培養する工程、
(c)工程(b)で得られた細胞をM-CSFおよびRANKL存在下で培養する工程、
を含む方法、に関する。
RANKLシグナル伝達は破骨細胞分化に必須であるが、それがどのようにこの細胞系列の運命を特異的に決定するのかはこれまで知られていなかった。遺伝子破壊の研究により、TRAF6、NF-κB、およびc-Fosなどの破骨細胞形成に必須の分子が同定されたが、それらはいずれも、RANKLが破骨細胞特異的遺伝子を誘導する機能を説明することはできなかった。本発明は、もう一つの必須転写因子 NFATc1 がc-Fosと共動して破骨細胞遺伝子を調節することを証明し、細胞型特異的な転写作用が、転写因子の調和された共動を通してどのように達成されるのかを明らかにした。NFATc1欠損マウスは胚性致死であるため、本発明者らはNFATc1欠損ES細胞を用いて破骨細胞分化におけるNFATc1の本質的な役割を示した。NFATc1-/-細胞においてRANKLが誘導する破骨細胞分化は単球/マクロファージ前駆細胞の段階で遮断され、TRAPは発現しないがc-FmsおよびRANKは正常に発現することから、NFATc1は破骨細胞の成熟、すなわちTRAP+多核細胞の形成に重要であることが示された。破骨細胞形成ならびにNFATc1活性化および誘導におけるFK506およびCyAの阻害効果から、カルシニューリンの脱リン酸化活性が破骨細胞形成におけるNFATc1の活性化に重要であることが明らかとなった。Ca2+キレーターにより破骨細胞形成が阻害されたことは、Ca2+の可動化がRANKLが誘導する破骨細胞形成に重要であることを示唆する。さらに、RANKL刺激細胞においてNFATc1誘導およびCa2+振動が観察され、IL-1刺激細胞では観察されないことから、なぜRANKLが破骨細胞を誘導し、IL-1は誘導しないのかを、Ca2+シグナル伝達で活性化されるNFATc1経路が説明していることが示唆される。このように、カルシニューリンにより調節されるNFATc1経路は破骨細胞分化を誘導するRANKLシグナル伝達の第3の必須経路である。RANKLと同時にFK506を添加するとNFATc1誘導は失われることから、カルシニューリンは、破骨細胞分化の初期に観察されるNFATc1の自律増幅に重要であることが示唆される (図8)。さらに、FK506をRANKL刺激の48時間後にBMMに添加すると、NFATc1が存在するにも関わらず破骨細胞形成は完全に阻害される (非提示データ) ことから、カルシニューリン依存的なNFATc1活性化は、破骨細胞分化の後期でも必須であることが示唆される。
RANKLシグナルがNF-κBおよびAP-1などの転写因子を活性化することは数多く報告されている。また一方で、TRAP遺伝子のプロモーターが、PU.1、MITF、およびIRF-4などの転写因子により調節されることが報告された (Matsumono et al., J. Biol. Chem. (2001) 276, 33086-92; Luchin et al., J. Bone Miner. Res. (2000) 15, 451-60)。しかしながら、RANKLが、どのように破骨細胞遺伝子の転写に直接関与する転写因子に破骨細胞形成シグナルを伝達するかは知られておらず、RANKLシグナル伝達と、破骨細胞の最終分化を作動させる転写機構との間のつながりは、完全には理解されていなかった。本発明において、NFATc1はAP-1と共動してTRAPおよびカルシトニン受容体などの破骨細胞遺伝子の調節系列を活性化することが示され、NFATc1:AP-1複合体が成熟破骨細胞で発現する遺伝子を直接調節することが示された。どちらのプロモーターも、NFATc1単独で活性化され、この活性化はc-Fosを同時に加えることにより増幅した。さらに、AP-1と共動できないNFATc1変異体により、NFATc1とAP-1との共動がこれらのプロモーターを最大に活性化するのに重要であることが明らかとなった。FK506処理したBMMおよびc-Fos欠損BMMでは両者とも、NFATc1誘導がなくなることから、NFATc1とc-Fosとの共動がNFATc1の自律増幅にも重要であることが示された。これらの結果に一致して、NFATc1およびc-Fosを搭載するレトロウイルスベクターの破骨細胞形成における相乗的な効果が観察された (非提示データ) ことから、これらの因子の調和がプロモーター活性のみならず細胞分化にとっても重要であることが示唆された。NFATc1との共動は、ユビキタスな転写因子であるAP-1が細胞型特異的な転写を調節する機構に関する新たな洞察を提供するだろう。
TRAF6-/- BMMおよびc-Fos-/- BMMでは、両者とも、RANKLが誘導するNFATc1蛋白質の顕著な増加が失われることから、この誘導は両方の経路に依存することが示唆される (図15A)。これとは対照的に、RANKLで刺激したNFATc1-/- ES細胞におけるTRAF6およびc-Fosの発現は正常に観察された (非提示データ)。従って、NFATc1経路はこれらの両方の経路の下流で作用する。以上を合わせると、NFATc1を誘導し活性化するRANKLシグナル伝達のネットワークの現在の知見は次のようにまとめられる。RANKLがその受容体であるRANKに結合すると、TRAF6経路、c-Fos/AP-1経路、およびCa - カルシニューリン経路を含む3つの必須経路が活性化される。カルシニューリン依存的様式で、NFATc1はAP-1と共動しNFATc1 mRNAを増加させる。TRAF6もまた、おそらくNF-κBの活性化を介して、このNFATc1 mRNAの自律増幅に関与する。TRAF6はまた、蛋白質安定化の調節などの未知の機構を介して、NFATc1蛋白質レベルの調節に寄与する。このように、RANKLによるNFATc1蛋白質レベルの顕著なアップレギュレーションは、TRAF6経路およびc-Fos/AP-1経路の両方の下流において達成される。アップレギュレートされたNFATc1蛋白質はカルシニューリン依存的な様式で核に移行し、c-Fos/AP-1と共動して破骨細胞遺伝子の誘導に必須の転写機構を構成する。実施例に示されたように、NFATc1 mRNA誘導はc-Fos-/- 細胞では完全に失われるが、TRAF6-/- 細胞ではまだ部分的に観察されたことから、TRAF6経路およびc-Fos経路は下流の標的遺伝子を異なるように調節していることが示唆される。
破骨細胞分化または活性の抑制は骨疾患の治療にとって重要であり、その戦略の有効性を示す証拠は増しつつある (Kong, Y. Y. et al. (1999a) Nature 402, 304-309; Takayanagi, H. et al. (1999) J Clin Invest 104, 137-146)。免疫抑制薬 FK506およびCyAはヒト移植手術に広く用いられてきた。本研究で示されたように、これらのカルシニューリン阻害剤はin vitroで破骨細胞形成を強力に阻害する効果を持つことから、骨量への有益な効果が示唆される。期待に反して、骨粗鬆症はこれらの薬剤で処置した患者で観察される副作用の1つである (Cvetkovic, M. et al. (1994) Transplantation 57, 1231-1237; Leidig-Bruckner, G. et al. (2001) Lancet 357, 342-347)。これは、骨芽細胞などの他の細胞型に対するこれらの薬剤の効果により引き起こされる可能性がある。従って、これらのカルシニューリン阻害剤を骨疾患の治療のために用いる場合は、破骨細胞にできるだけ選択的に作用する投与方法(局所投与など)を用いることが好ましい。あるいは、生体内で破骨細胞の近傍に分布する傾向をもつビスホスホネート系化合物と結合させるなどの方法も考えられる。あるいは、本発明で示した破骨細胞分化の特異的分子機構を考慮すれば、NFATc1とAP-1との相互作用を抑制することによりNFATc1活性を標的化することが、破骨細胞特異的薬剤を開発するのに適した戦略である。
レフルノミドはアジュバント、コラーゲン、またはプロテオグリカンにより誘導される自己免疫性関節炎の動物モデルに対して効果的な治療作用を持つ (Prakash, A. & Jarvis, B., Drugs 58, 1137-64 (1999))。さらに、無作為に制御されたヒト関節リウマチの研究から、レフルノミドは骨破壊の進行を低下させる抗リウマチ薬の1つであることが明らかとなっている (Sharp, J.T., Arthritis Rheum 43, 495-505 (2000); Cohen, S. et al., Arthritis Rheum 44, 1984-92 (2001))。本発明において、レフルノミドの効果は、T細胞に対する抑制効果を超えて、破骨細胞形成も直接標的としていることが明らかとなった。また、レフルノミドは単球/マクロファージ系列の破骨細胞前駆細胞に直接作用し、Ca2+が活性化するNFATc1経路に干渉することによりRANKLシグナル伝達を阻害した。本発明者らはまた、動物モデルにおいて骨破壊部位に隣接する炎症組織でNFATc1発現が実際に増強していることを実証した (図24)。すなわち、レフルノミドはNFATc1の発現または活性が亢進する様々な骨破壊性疾患および骨代謝性疾患への適用が期待される。この点については、関節リウマチ患者の骨/滑膜境界の多核破骨細胞でNFATc1の選択的で非常に強い発現が観察されたことは興味深い (図26)。これらを合わせると、NFATc1経路の抑制は、破骨細胞形成亢進により特徴付けられる関節炎などの骨破壊に対して有益な戦略となりうる。NFATc1経路の抑制はさらに、RA患者にしばしば見られるステロイド誘導性骨粗鬆症を抑制するためにも有益である。また、NFATc1の発現の亢進は骨破壊疾患の重症度と相関すると考えられることから、NFATc1の発現レベルを基に、疾患の重症度を検査することも可能と考えられる。また、上記のように本発明者らは、FK506などのカルシニューリン阻害剤が破骨細胞形成に対する強い阻害効果を持つことを示したが、さらにレフルノミドおよびFK506は破骨細胞形成に対して相乗的な阻害効果を示すことが判明した。このことから、複数の抗破骨細胞形成薬を組み合わせることは、関節リウマチ等の骨破壊治療において、一方では治療の有効性を増大させ、他方では副作用の可能性を軽減する有望なアプローチとなるだろう。
本発明により、Ca2+シグナル分子、特にNFATc1を含むカルシニューリンシグナル伝達分子を標的とする、破骨細胞形成を制御する方法が提供された。また、Ca2+シグナル分子、特にNFATc1を含むカルシニューリンシグナル伝達分子を標的とする、破骨細胞形成を抑制する化合物の新たなスクリーニング方法が提供される。本発明は、破骨細胞形成を選択的に阻害する薬剤の開発を可能とする。このような薬剤は、破骨細胞による骨破壊を効果的に抑制する副作用の少ない薬剤として有用である。破骨細胞形成の亢進は、関節リウマチを含む様々な骨減少性疾患の原因であることから、本発明により得られる薬剤は、これらの骨疾患の治療へ応用できる。
本発明は、破骨細胞前駆細胞におけるCa2+シグナル伝達を促進または抑制する工程を含む、それぞれ破骨細胞形成を促進または抑制する方法に関する。本発明者らは、Ca2+シグナル伝達が、TRAF6経路およびc-Fos経路と並んで破骨細胞形成に必須のシグナルであることを見出した。破骨細胞前駆細胞においてCa2+シグナル伝達を促進することにより、該細胞の破骨細胞への分化を促進することができ、逆にCa2+シグナル伝達を遮断することにより、該細胞の破骨細胞への分化を阻害することができる。
本明細書において破骨細胞 (osteoclast) とは、造血幹細胞を起源とするマクロファージ・単球系細胞(CFU-M)より分化した単核の破骨細胞前駆細胞が融合して形成される多核巨細胞である(Udagawa, N. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 7260, 1990)。一般に成熟した破骨細胞は、酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ(TRAP)、カルシトニン受容体、ヴィトロネクチン受容体、および M-CSF受容体(c-Fms)を発現し、骨吸収能を示す。破骨細胞形成は、これらの指標の少なくとも1つをもとに判断することができる。好ましくは、TRAP陽性かつ骨吸収活性を持つ細胞である。in vitro培養系において、骨髄単球・マクロファージ系前駆細胞(bone marrow monocyte/macrophage precursor cells; BMMs)は、M-CSF(macrophage-colony stimulating factor; マクロファージコロニー刺激因子)存在下で RANKLの刺激により破骨細胞に分化する。
また、本発明において「破骨細胞前駆細胞 (osteoclast precursor cell)」とは、破骨細胞に分化し得るマクロファージ単球系細胞を言い、より特定すれば、M-CSFに応答して増殖が促進される細胞を言う。破骨細胞前駆細胞は、骨髄または脾臓に含まれる細胞であってもよく、細胞株であってもよい。また、破骨細胞前駆細胞は造血幹細胞からin vitroで分化させることもできる(実施例8)。
破骨細胞の形成は、例えば文献(Yasuda, H. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 95, 3597-602 (1998))に従って観察することがでる。具体的には、例えば個体であれば、骨切片を作成して骨吸収を観察することができる。また、顕微鏡観察により多核巨細胞を同定したり、TRAP染色や、カルシトニン受容体またはヴィトロネクチン受容体の発現の検出などの公知の検出法により、in vivo および in vitro 両方で破骨細胞形成を検出することができる。骨吸収であれば、例えば象牙切片上での骨吸収活性を公知の方法により検出することができる。
Ca2+シグナル伝達とは、小胞体からのCa2+放出とそれに続く原形質膜を通した細胞内へのCa2+流入により活性化されるシグナル伝達を言う (Crabtree, G. R., and Olson, E. N. (2002) Cell 109 Suppl, S67-79)。カルシニューリンは、Ca2+シグナル伝達を媒介するホスファターゼであり、NFATファミリーに属する転写因子の誘導および活性化を調節している (Crabtree, G. R., and Olson, E. N. (2002) Cell 109 Suppl, S67-79; Rao, A. et al. (1997) Annu Rev Immunol 15, 707-747)。中でもNFATc1はCa2+ シグナル伝達に関与するシグナル分子の1つであり、カルシニューリン (calcineurin; Cn) により脱リン酸化を受けて活性化され、細胞質から核に移行し、染色体DNAのNFAT結合配列に結合して下流の遺伝子の転写を制御する(Graef IA, Chen F, Crabtree GR.: NFAT signaling in vertebrate development. Curr Opin Genet Dev 2001, 11:505-12)。またNFATc1はAP-1と相互作用し、NFATc1/AP-1/DNA複合体を形成する。NFATc1の結合により転写が制御される遺伝子としては、NFATc1遺伝子自身、並びにTRAP、カルシトニン受容体、カテプシンK、カルボニック アンヒドラーゼII (CAII)、およびマトリックス メタロプロテアーゼ (MMP)-9 などの遺伝子が挙げられる。
本発明においてCa2+シグナルを促進するとは、Ca2+シグナル伝達の活性化、すなわちシグナル分子の発現を上昇または活性化すること、あるいはCa2+シグナル伝達の標的遺伝子の発現を上昇させることであってよく、それを通して破骨細胞形成は促進される。またCa2+シグナル伝達を抑制するとは、Ca2+シグナル伝達のいずれかまたは複数の箇所を阻害することであってよい。具体的には、例えばCa2+シグナル伝達の抑制は、Ca2+可動化、カルシニューリン活性または発現、NFATc1発現または脱リン酸化などが挙げられる。本発明においてCa2+シグナル伝達の促進または抑制は、それぞれ、より特定すればカルシニューリンの発現または活性の促進または抑制が挙げられる。
カルシニューリンは、カルシウムおよびカルモジュリンによって制御されるセリン・スレオニン脱リン酸化酵素であり、神経、筋、免疫系の制御に重要な役割を果たしている (Shibasaki, F. et al., J. Biochem. 131, 1-15 (2002))。カルシニューリンの触媒サブユニットであるカルシニューリンAは調節機能を持つドメインを含んでおり (Klee, C.B. et al. (1979) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76, 6270-6273)、α、βおよびγの3つのアイソフォームが知られており、哺乳動物の間で高度の保存されている (Klee, C.B. et al. (1988) Adv. Enzymol. Relat. Areas Mol. Biol. 61:149-200; Cohen, P.T. et al. (1996) Adv. Pharmacol. 36:67-89; Goto, S. et al. (1986) Acta Neuropathol. (Berl) 72(2):150-6; Kuno, T. et al. (1992) J. Neurochem. 58(5):1643-51)。Ca2+結合サブユニットであるカルシニューリンBは、EF-handを持つ蛋白質で (Aitken, A. et al. (1984) Eur. J. Biochem. 139(3):663-71)、B1およびB2のアイソフォームが知られている。本発明においてカルシニューリンとは、カルシニューリンAのいずれかのサブユニットとBののいずれかのサブユニットが結合したヘテロダイマーである。
カルシニューリンの発現の促進には、内因性のカルシニューリン遺伝子の転写および/または翻訳の促進、カルシニューリン mRNAの安定化の促進、カルシニューリン蛋白質の分解の抑制、外来的なカルシニューリンの発現などが含まれる。逆にカルシニューリンの発現の抑制には、内因性のカルシニューリン遺伝子の転写および/または翻訳の抑制、カルシニューリン mRNAの不安定化の促進、カルシニューリン蛋白質の分解の促進、外来的にカルシニューリン mRNAに対するアンチセンス核酸またはカルシニューリン mRNAを切断するリボザイムなどを発現することによる発現阻害などが含まれる。カルシニューリンの活性の促進および抑制としては、カルシニューリンの脱リン酸化活性の促進および抑制が挙げられる。例えばカルシニューリン阻害剤としては、FK506、シクロスポリンA (cyclosporin A; CyA)、およびそれらの類似体などがよく知られている。これらのカルシニューリン阻害剤により、カルシニューリン活性を抑制することが可能である。
シクロスポリンAは、典型的には化学名 シクロ[3-ヒドロキシ-4-メチル-2-(メチルアミノ)-6-オクテノイル]-2-アミノブチリル-メチルグリシル-メチル-ロイシル-バリル-メチル-ロイシル-アラニル-アラニル-メチル-ロイシル-メチル-ロイシル-メチル-バリルで表され、例えばUS4,117,118号公報にS7481/F-1として記載される化合物およびその薬理上許容される塩、異性体、または水和物等が含まれる。シクロスポリンAには、複数の代謝物および誘導体が知られているが、これらのうちNFATc1の発現を有意の阻害する所望の化合物を本発明においてシクロスポリンAとして用いることができる。シクロスポリンAの一般的な化学構造を式(I)に示した。
Figure 0004548701
式(I)
FK506はタクロリムスとも呼ばれ、典型的には化学名 17-アリル-1,14-ジヒドロキシ-12-[2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシシクロヘキシル)-1-メチルビニル]-23,25-ジメトキシ-13,19,21,27-テトラメチル-11,28-ジオキサ-4-アザトリシクロ[22.3.1.0 4,9]オクタコス-18-エン-2,3,10,16-テトロンで表されるマクロライド化合物である。FK506には、例えばEP184,162号公報中の一般式(I)として記載される化合物およびその薬理上許容される塩、異性体、または水和物等が含まれる。FK506の一般的な化学構造を式(II)に示した。本明細書においてFK506には、Sreptomyces tsukulbensis No.9993 のようなストレプトミセス(Streptomyces)属の微生物から単離されたFR-900506、FR-900520、FR-900523、FR-900525、およびそれらの誘導体などが含まれる。また、FK506としては数多くの関連化合物が知られている(EP184162、EP315973、EP323042、EP423714、EP427680、EP465426、EP474126、WO91/13889、WO91/19495、EP484936、EP532088、EP532089、WO93/5059)が、これらのうちNFATc1の発現を有意の阻害する所望の化合物を本発明においてFK506として用いることができる。
Figure 0004548701
式(II)
本発明においてCa2+シグナルの促進または抑制をさらに特定すれば、NFATc1の発現または活性の促進または抑制が挙げられる。NFATc1は、Ca-カルシニューリン依存性に脱リン酸化されて核移行し、転写活性化する転写因子の1つであり、T細胞におけるサイトカイン産生を制御する因子として発見されたが多くの細胞の機能・分化で重要な役割を果たす (Crabtree, G.R. and Olson, E.N. (2002) Cell 109: S67-S79)。ヒトNFATc1 mRNAの塩基配列はAccession number NM_006162に、蛋白質のアミノ酸配列はNP_006153に示されている。またマウスNFATc1 mRNAの塩基配列はAccession number AF239169、AF087434 (アイソフォームa)、およびAF049606 (アイソフォームb) に、これらがコードするNFATc1蛋白質のアミノ酸配列はそれぞれAAC36725、AAC36725、およびAAC05505に示されている。
NFATc1の発現の促進には、内因性のNFATc1遺伝子の転写および/または翻訳の促進、NFATc1 mRNAの安定化の促進、NFATc1蛋白質の分解の抑制、外来的なNFATc1の発現などが含まれる。逆にNFATc1の発現の抑制には、内因性のNFATc1遺伝子の転写および/または翻訳の抑制、NFATc1 mRNAの不安定化の促進、NFATc1蛋白質の分解の促進、外来的にNFATc1 mRNAに対するアンチセンス核酸またはNFATc1 mRNAを切断するリボザイムなどを発現することによる発現阻害などが含まれる。
例えば、NFATc1を外来的に発現させるには、所望の発現ベクターにNFATc1を組み込み、これを破骨細胞前駆細胞に導入すればよい。用いることができるベクターは、NFATc1を発現する限り制限はなく、DNAおよびRNAを含むポリヌクレオチド自体、および該ポリヌクレオチドを含む複合体の形態であってよい。例えばウイルスベクターとしては、例えばレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターなどが挙げられる。アデノウイルスは高濃度に濃縮が可能であり、導入遺伝子がホストのゲノムに組み込まれないため安全性も高い。実際に、滑膜細胞に対してのアデノウイルスベクターの遺伝子導入効率は高いことが報告されており、関節に対する遺伝子導入に用いることが可能である。その他、naked DNAの投与や、センダイウイルスリポソームを用いた方法などにより、非ウイルスベクターを用いた細胞または生体への遺伝子導入を行うこともできる。In vivo投与においては、ベクターは、例えば骨軟骨部位へ局所投与することができる。
NFATc1の活性化の促進としては、NFATc1の脱リン酸化の促進が挙げられる。上記のようにNFATc1はカルシニューリンにより脱リン酸化され活性化するので、NFATc1の活性化の促進は、例えばカルシニューリンの発現の上昇またはカルシニューリンの活性の上昇により達成することができる。また、例えばCa2+ 可動化などのCa2+シグナルの活性化であってもよい。また、NAFTc1のリン酸化の抑制であってもよい。NFATc1のリン酸化酵素としては、例えばGSK3などが知られている。これらのリン酸化酵素を阻害することによって、NFATc1の活性化を促進することができる。逆に、NFATc1の活性化の抑制としては、NFATc1の脱リン酸化の抑制が挙げられ、例えばカルシニューリンの発現の抑制またはカルシニューリンの活性の阻害であってよい。また、Ca2+シグナルの抑制または遮断などであってもよい。また、NAFTc1のリン酸化の促進であってもよい。上記のようにカルシニューリンの阻害剤としては、FK506、cyclosporin A(CyA)、およびそれらの類似体などを用いることができる。これらのカルシニューリン阻害剤により、NFATc1の活性化を抑制することが可能である。本発明は、FK506、CyA、または他のカルシニューリン阻害剤により、破骨細胞の形成を阻害する方法に関する。例えばカルシニューリン阻害剤の破骨細胞前駆細胞へのドラッグデリバリーにより、骨吸収抑を抑制することが可能となる。
また、NFATc1の活性としては、AP-1との相互作用、およびDNAとの相互作用が挙げられる。NFATc1はAP-1と複合体を形成し、DNAに結合して標的遺伝子の転写を調節する。AP-1との相互作用が阻害された変異NFATc1は、NFATc1の標的遺伝子の発現を誘導できず、破骨細胞形成を誘導しない。従って、NFATc1とAP-1成分との相互作用、またはNFATc1:AP-1とDNAとの相互作用を促進または阻害することによって、破骨細胞形成をそれぞれ促進または抑制することができる。
AP-1成分とは、AP-1を構成するFosファミリーまたはJunファミリーのメンバーを言う (Jochum, W. et al. (2001) Oncogene 20(19):2401-12; Bio Science新用語ライブラリー「転写因子」, 実験医学 別冊, 羊土社, pp204-205)。Fosファミリーのメンバーとしては、c-Fos、FosB、Fra1、およびFra2が含まれる。Junファミリーのメンバーとしては、c-Jun、JunB、およびJunDが含まれる。中でもNFATc1と協調して破骨細胞の形成を強く促進するAP-1メンバーとしてはc-Junおよびc-Fosが挙げられる。特に重要なAP-1成分はc-Fosである (Abate, C. et al., Science 7, 1157-1161, 1990; Deng, T. and Karin, M, Nature 371, 171-175, 1994; Ofir, R. et al., Nature 348, 80-82, 1990; Bakin, A.V. et al., Science 283, 387-390, 1999)。c-fos、fosB、fra1、およびfra2 mRNAの塩基配列は、それぞれAccession numbers X06769、X14897、X16707、およびX16706に、それぞれの蛋白質のアミノ酸配列はCAA29937、CAA33026、CAA34679、およびCAA34678に示されている。
カルシウム−NFAT経路を活性化する上流の分子として、DAP12およびFcRgamma等のphospholipase C (PLC)gamma−カルシウム経路を活性化する分子およびその会合受容体が重要な役割を果たしている。DAP12(ヒト:Accession number NM_003332 (protein ID NP_003323)、マウス:NM_011662 (protein ID NP_035792))はtriggering receptor expressed on myeloid cells (TREM)-2 などと会合して、PLC−カルシウム経路を活性化する (Snyder,M.R. et al., J. Exp. Med. 197, 437-449 (2003); Colonna,M., J. Clin. Invest. 111, 313-314 (2003); Lucas,M. et al., Eur. J. Immunol. 32, 2653-2663 (2002); Paloneva,J. et al., Am. J. Hum. Genet. 71, 656-662 (2002); Paloneva,J. et al., Nat. Genet. 25, 357-361 (2000); Pekkarinen,P. et al., Genomics 54, 307-315 (1998); Lanier,L.L. et al., Nature 391, 703-707 (1998); Pekkarinen,P. et al., Am. J. Hum. Genet. 62 (2), 362-372 (1998); Kaifu,T. et al., J. Clin. Invest. 111, 323-332 (2003); Colonna,M., J. Clin. Invest. 111, 313-314 (2003); Diefenbach,A. et al., Nat. Immunol. 3, 1142-1149 (2002); McVicar,D.W. et al., J. Immunol. 169, 1721-1728 (2002); Sjolin,H. et al., J. Exp. Med. 195, 825-834 (2002); Tomasello,E. et al., J. Biol. Chem. 273, 34115-34119 (1998); Lanier,L.L. et al., Nature 391, 703-707 (1998))。また、FcRgamma (FcRのgammaサブユニット)(ヒト:Accession number NM_004106 (protein ID NP_004097)、マウス:NM_010185 (protein ID NP_034315))は、paired immunoglobulin-like receptor (PIR)、osteoclast-associated receptor (OSCAR) などと会合して、PLC−カルシウム経路を活性化する (Wu,J. et al., Lupus 11, 42-45 (2002); Kuster,H. et al., J. Biol. Chem. 267, 12782-12787 (1992); Le Coniat,M. et al., Immunogenetics 32, 183-186 (1990); Kuster,H. et al., J. Biol. Chem. 265, 6448-6452 (1990); Craig,A.W. and Greer,P.A., Mol. Cell. Biol. 22, 6363-6374 (2002); Nagaoka,Y. et al., J. Invest. Dermatol. 119, 130-136 (2002); Strzelecka-Kiliszek,A. and Sobota,A., Folia Histochem. Cytobiol. 40, 131-132 (2002); Gray,C.A. and Lawrence,R.A., Eur. J. Immunol. 32, 1114-1120 (2002); Ra,C. et al., J. Biol. Chem. 264, 15323-15327 (1989))。例えばDAP12またはFcRgammaと、その会合受容体との結合を阻害することなどにより、これらの分子を介するシグナル伝達の活性化を阻害すれば、Ca2+シグナル伝達を阻害できることが期待される。また、DAP12またはFcRgammaと会合する受容体に対する阻害抗体やリガンドとの結合を抑制する物質を用いてもこのシグナルを抑制することができる。本発明においてCa2+シグナルには、DAP12またはFcRgamma等のPLCgamma−カルシウム経路を活性化する分子またはその会合受容体を介して伝達されるシグナルが含まれる。DAP12およびFcRgammaは、immunoreceptor tyrosine-based activation motif (ITAM) とよばれるシグナル伝達ドメインを有しており、チロシンリン酸化活性を持つ。そして、ITAMシグナルがSykやZAP70を介してPLCgammaの活性化することが知られている。本発明において、Ca2+シグナルには、ITAMシグナルとその下流で活性化されるSykまたはZAP70などを介するシグナルが含まれる。ITAMモチーフに結合する蛋白質や低分子薬剤また、ITAMのチロシンキナーゼ活性を抑制する蛋白質や低分子薬剤、SykまたはZAP70などの活性を抑制する薬剤により、このシグナルを抑制することができる。また、これらのシグナル伝達を阻害する化合物をスクリーニングすることによって、破骨細胞形成を阻害する新たな薬剤を単離することが可能である。
本発明は、また、破骨細胞前駆細胞にレフルノミドを接触させる工程を含む、破骨細胞形成を抑制する方法に関する。本発明者らは、レフルノミドがNFATc1の発現の抑制を通して、効率よく破骨細胞形成を阻害することを見いだした。従って、レフルノミドは破骨細胞形成を選択的に阻害するために有用である。レフルノミドは破骨細胞形成を効果的に抑制することから、レフルノミドは、関節リウマチなどの自己免疫性関節炎の治療のみならず、それ以外の骨減少性疾患の治療のためにも有用である。本明細書においてレフルノミドには、レフルノミドの活性代謝物が含まれる。例えばレフルノミドは、典型的には下記式(III)に示した化合物HWA 486が挙げられ、化学名は 5-メチル-N-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-4-イソオキサゾールカルボキサミドである(HWA 486:R. R. Bartlett et al. in:A. L.Lewis and D. E. Furst (Eds.), Nonsteroidal Anti-inflammatory Drugs, Mechanisms and Clinical Uses;C. C. A. Kuechle et al., Transplant Proc.1991, 23:1083-6;T. Zielinski et al., Agents Action 1993, 38:C80-2)。またレフルノミドには、HWA 486の活性代謝物 A77 1726(式(IV))、並びにHWA 486およびA77 1726の薬理上許容される塩、異性体、または水和物等が含まれる。またレフルノミドとしては、例えば EP13,376号公報(特開昭62-72614号公報またはUS 4,284,786号公報)中の式(I)で表される化合物およびその薬理上許容される塩などが挙げられる。
Figure 0004548701
式(III)
Figure 0004548701
式(IV)
さらに本発明者らは、FK506およびCyAなどのカルシニューリン阻害剤とレフルノミドとの併用が、破骨細胞形成に対して相乗的な抑制効果を発揮することを見いだした。この結果は、カルシニューリン阻害剤とレフルノミドの両方を投与することによって、破骨細胞形成をより効果的に抑制することが可能であることを示している。カルシニューリン阻害剤とレフルノミドの併用は、自己免疫性関節炎および他の骨減少性疾患に対する治療に極めて有効である。
本発明における破骨細胞の形成を抑制する化合物のスクリーニングにおいては、Ca2+シグナル伝達を抑制する化合物を選択する。このような化合物によりCa2+シグナル伝達が抑制されると、NFATc1の発現誘導または活性レベルが抑制され、破骨細胞の形成を抑制することができる。本発明における破骨細胞の形成を抑制する化合物のスクリーニングにおいては、NFATc1に至るCa2+シグナル経路の任意の段階を指標にすることができる。特に、NFATc1の発現または活性の抑制に直接作用する化合物は、破骨細胞形成の抑制に対して高い特異性を示すと考えられることから好ましい。NFATc1の発現の抑制、および活性の抑制の詳細は、上記に記載した通りである。例えば本発明のスクリーニングは、以下のようなスクリーニングが含まれる。
(1)被検化合物存在下でCa2+ influxまたはCa2+ mobilizationを検出し、これを阻害するような化合物を選択する。例えばCa2+ chelatorなどは候補化合物となる。
(2)被検化合物存在下でカルシニューリンの活性を検出し、これを阻害する化合物を選択する。
(3)被検化合物存在下でNFATc1の発現を検出し、これを抑制する化合物を選択する。ここでNFATc1の発現を抑制する化合物は、(a)NAFTc1のmRNAの誘導の阻害、(b)NFATc1蛋白質の合成の阻害、(c)NFATc1蛋白質の安定性の阻害(分解の促進)を指標としてスクリーニングすることができる。
(4)被検化合物存在下でNFATc1の活性を検出し、これを抑制する化合物を選択する。NFATc1の活性を阻害する化合物は、(a)NFATc1の脱リン酸化の阻害、(b)NFATc1のリン酸化の促進、(c)NFATc1の核移行の阻害、(d)NFATc1のDNAとの結合の阻害、(e)NFATc1とAP-1成分との結合(好ましくはc-Fosおよび/またはc-Junとの結合)の阻害などを指標としてスクリーニングすることができる。例えばNFATc1とc-Fosとの結合は、NFATc1抗体およびc-Fos抗体を用いた免疫沈降-ウェスタンブロッティングにより検出することができる。また、例えばNFATc1とDNAとの結合は、NFATc1結合配列を含むオリゴヌクレオチドを用いたelectrophoretic mobility shift assay (EMSA) により測定することができる。NFAT/AP-1/DNA複合体における各成分の相互作用部位の情報を基に、この部位に結合する低分子化合物を設計することにより、効果的にNFATc1とAP-1成分、またはNFATc1とDNAとの相互作用を阻害する化合物をスクリーニングすることが可能と考えられる。NFATc1とAP-1成分との相互作用の必須のアミノ酸は、本明細書に例示されている。
また、NFATc1の活性として、NFATc1に依存的な転写誘導を指標とすることもできる。このためには、TRAP、calcitonin receptor、cathepsin K、carbonic anhydrase II (CAII)、またはmatrix metalloprotease (MMP)-9 などの遺伝子のプロモーター領域における、MFATc1結合部位を含む配列を好適に用いることができる。これらの遺伝子は破骨細胞の最終分化において誘導され、複数のNFATc1およびAP-1結合部位を含む (Anusaksathien, O. et al. (2001) J Biol Chem 276, 22663-22674; David, J. P. et al. (2001) J Cell Physiol 188, 89-97; Motyckova, G. et al. (2001) Proc Natl Acad Sci U S A 98, 5798-5803; Reddy, S. V. et al. (1995) J Bone Miner Res 10, 601-606)。またNFATc1遺伝子のプロモーター領域を用いることもできる。これらの遺伝子のプロモーター中のNFATc1結合配列 (GGAAAAおよびその類似配列 (例えばGGAAANなど, NはA, T, C, またはG), Macian, F. et al. (2001) Oncogene 20, 2476-2489) 含むDNA、好ましくはさらにAP-1結合配列 (TGA[G/C]TCAおよびその類似配列 (例えばTGNNTCAなど, NはA, T, C, またはG), Bio Science新用語ライブラリー「転写因子」, 実験医学 別冊, 羊土社, pp204-205) を含むDNAの下流に所望のレポーター遺伝子を結合し、NFATc1および被検化合物存在下でレポーター活性等を介してレポーター遺伝子の発現を検出して、これを低下させる化合物を選択する。NFATc1は内因的または外因的にスクリーニング系に供給してよい。具体的なプロモーター配列としては、実施例で用いたようなTRAPプロモーター、またはカルシトニンプロモーター(P3プロモーター)が挙げられる。例えば、外来的にNFATc1を発現させた破骨細胞前駆細胞を用いて、被検化合物を含む試料の存在下、該細胞におけるNFATc1、TRAP、またはカルシトニン受容体遺伝子などのプロモーター活性を検出し、該プロモーター活性を抑制する化合物を選択することにより、NFATc1による転写活性を阻害する候補化合物を単離することができる。
上記のスクリーニングは、当業者であれば標準的な技術を利用して実施することが可能である(例えば Edited by J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2001, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory 参照)。
また本発明は、被検化合物を含む試料の存在下、外来的にNFATc1を発現させた破骨細胞前駆細胞における破骨細胞形成を検出する工程、および該破骨細胞形成を抑制する化合物を選択する工程、を含む、破骨細胞形成を抑制する化合物をスクリーニングする方法に関する。NFATc1を過剰発現させた破骨細胞前駆細胞は、RANKL非存在下でも破骨細胞を形成する。この破骨細胞形成を阻害する化合物をスクリーニングすることにより、NFATc1が誘導する破骨細胞形成を阻害する化合物を単離することができる。
本発明のスクリーニングは、例えば破骨細胞分化誘導系を用いて行うことができる。すなわち、破骨細胞前駆細胞をRANKLで刺激して破骨細胞を形成させる系において、被検化合物の存在下でCa2+シグナル伝達を測定する。破骨細胞前駆細胞としては、破骨細胞に分化し得る細胞であれば制限はなく、例えば骨髄マクロファージ系細胞等が利用される。具体的には、骨髄由来のBMMを用いることができるし、あるいはRAW 264.7細胞およびES細胞 (後述) などを用いることができる。M-CSF非依存的にRANKLに応答して破骨細胞に分化するRAW 264.7細胞などは、破骨細胞形成においてM-CSFは必要ないが、BMMおよびES細胞等から破骨細胞を形成させるには、M-CSF存在下でRANKL刺激を行う。M-CSFおよびRANKLの濃度は適宜調節することができるが、例えばM-CSFは約10 ng/ml、RANKLは約100 ng/mlにするのがよい。被検化合物を含む試料としては特に制限はなく、例えば、合成低分子化合物のライブラリー、精製タンパク質、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成ペプチドのライブラリー、細胞抽出液、細胞培養上清などが挙げられる。
被検化合物を含む試料の存在下、Ca2+シグナル伝達を測定し、対照に比べ該シグナル伝達を促進または抑制する化合物を選択する。対照の条件としては、該被検化合物を含まないか、あるいはより低用量で含む場合であり、典型的には、被検化合物の非存在下 (例えば被検化合物の添加に用いた担体のみの添加) における場合が挙げられる。被検化合物を含む試料の非存在下における場合と比べ、該シグナル伝達を促進または抑制させる化合物を選択することにより、破骨細胞形成を調節する化合物を得ることができる。また、対照の条件として、被検化合物をより低い用量で含む場合を用いれば、化合物の用量依存性が明らかとなる。また、対照の条件としては、破骨細胞形成を調節し得る他の化合物の存在下における場合を挙げることもできる。この場合、対照で用いた化合物の存在下における場合と比べ、該Ca2+シグナル伝達を促進または抑制させる化合物を選択する。このようなスクリーニングにおいては、ある化合物に比べより高い効果を有する化合物を得ることができる。Ca2+シグナル伝達の検出は、上記の通りに行なえばよい。
本発明のスクリーニング方法は、例えば本明細書実施例に記載したような破骨細胞形成の in vitro アッセイ系を用いて行うことができる。具体的には、例えば、非接触性骨髄細胞(24穴プレートの1ウェル当たり5×105 細胞)を10ng/mlのM-CSFを含むα最小必須培地(α-MEM)で2日間培養し、100ng/mlの可溶性RANKL、10ng/mlのM-CSFの存在下でさらに3日間培養して破骨細胞を形成させる系を利用できる。ここに被検化合物を含む試料を添加して培養する。また、in vivo の系であれば、例えば実施例で用いたようなエンドトキシン誘導性骨吸収動物モデルを用いた系が挙げられる。さらには、後述するES細胞からの破骨細胞形成系を利用することができる。ES細胞を用いたスクリーニング系においては、破骨細胞形成に関わる所望の遺伝子を欠損する細胞を用いることができる。遺伝子欠損ES細胞からの破骨細胞形成系を用いれば、被検化合物が破骨細胞形成シグナルのどのシグナル経路に関与するのかについて、有益な情報を得ることができる。
この検出の結果、被検化合物を含む試料の添加により、対照の条件下と比較してCa2+シグナル伝達が有意に促進または抑制されれば、用いた被検試料は破骨細胞形成を調節する化合物の候補となる。このスクリーニング方法により単離される化合物は、破骨細胞形成を制御するために有用であり、骨代謝疾患の予防薬や治療薬の開発の上でも有用である。
また本発明は、破骨細胞形成に及ぼす化合物の効果を検査する方法であって、(a)被検化合物を含む試料の存在下、破骨細胞前駆細胞におけるCa2+シグナル伝達を検出する工程、および(b)該Ca2+シグナル伝達の抑制を破骨細胞形成の抑制に、該Ca2+シグナル伝達の促進を破骨細胞形成の促進に関連付ける工程、を含む方法に関する。Ca2+シグナル伝達は、好ましくはカルシニューリンの発現または活性、あるいはNFATc1の発現または活性を検出することにより実施する。このような検査方法により、破骨細胞形成を抑制する化合物を同定することができる。
本発明のスクリーニングにより得られた化合物は、破骨細胞形成の阻害剤として用いることができる。臨床適用のための化合物の投与条件は、本明細書に記載した破骨細胞形成系を用いて決定することができる。すなわち、上記検査方法を用いて投与量、投与間隔、投与ルートを含む投与条件を検討し、適切な予防または治療効果を得られる条件を決定することができる。このような化合物は、骨減少性疾患に対する予防または治療のための医薬となる。化合物は、薬学的に許容できる所望の担体と組み合わせて組成物とすることができる。担体としては、例えば滅菌水、生理食塩水、緩衝剤、植物油、乳化剤、懸濁剤、塩、安定剤、保存剤、界面活性剤、徐放剤、他の蛋白質(BSAなど)、トランスフェクション試薬(リポフェクション試薬、リポソーム等を含む)等が挙げられる。さらに、使用可能な担体としては、グルコース、ラクトース、アラビアゴム、ゼラチン、マンニトール、デンプンのり、マグネシウムトリシリケート、タルク、コーンスターチ、ケラチン、コロイドシリカ、ばれいしょデンプン、尿素などが挙げられる。製剤化する場合の剤型は制限されず、たとえば溶液(注射剤)、粉体、マイクロカプセル、錠剤などであってよい。骨減少性疾患としては、例えば骨粗鬆症、自己免疫性関節炎、パジェット (Paget) 病、および骨癌などが含まれる。投与は全身または局所的に行い得るが、全身投与による副作用や効果の低下がある場合には、局所投与することが好ましい。例えば本化合物を徐放剤と組み合わせ、骨減少を呈する疾患部位を標的とするドラッグデリバリーにより効果的に治療を行うことが可能と考えられる。
患者への投与は、有効成分の性質に応じて、例えば経皮的、鼻腔内的、経気管支的、筋内的、腹腔内、静脈内、関節内、皮下、脊髄腔内、脳室内、または経口的に行われうるがそれらに限定されない。投与は全身的または局所的にされ得るが、全身投与による副作用が問題となる場合には病変部位への局所投与が好ましい。投与量、投与方法は、医薬組成物の有効成分の組織移行性、治療目的、患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。実施例に示すように、in vitro系において 0.1μg/ml の FK506またはCyAは破骨細胞形成を劇的に阻害し、10μg/mlまでの濃度において用量依存的に阻害効果が増大した。また、10μg/mlのレフルノミドは破骨細胞形成を劇的に阻害し、100μg/mlまでの濃度において用量依存的に阻害効果が増大した。例えば in vivo においても、標的とする破骨細胞前駆細胞周辺で、このような有効濃度を維持できるように薬剤の投与量を決定することができる。
本発明の医薬組成物は一般的に、総組成物の重量で0.1〜90%の治療薬物を含む。非経口投与では、一日当たり体重1 kg当たり 0.0001 mg〜1000 mg、好ましくは 0.001 mg〜300 mg、より好ましくは 0.01〜100 mgである。しかし、疾患状態、体重、及び治療に対する患者の個々反応、治療薬物が投与される組成物の種類、および投与形態、病気の経過の段階または投与の間隔に依存して、これら投与速度は適宜調整する。従って、上気した最小投与量より少なく使うことがときには適量であり、一方、他の場合には治療効果を得るために上限を越える必要がある。投与は1回から数回に分けて行うことができ、一日1から5回投与することができる。対象となる個体は、例えばヒト、およびマウス、ラット、ウサギ、サルなどの非ヒト哺乳動物、およびその他の脊椎動物が挙げられる。非ヒト哺乳動物への適用は、ヒト骨破壊性疾患に対する予防法または治療法を開発するためのモデルとする上でも有用である。これにより、例えば自己免疫性関節炎における骨破壊を予防する新たな治療プロトコルを開発することができる。
また本発明は骨減少性疾患の治療のためのキットであって、カルシニューリン阻害剤、およびレフルノミドを含むキットに関する。カルシニューリン阻害剤とレフルノミドとを併用することによって、破骨細胞形成に関して相乗的な抑制効果を得ることができる。カルシニューリン阻害剤としては、特にシクロスポリンAおよびFK506が挙げられる。
本発明の医薬組成物は、破骨細胞による骨吸収が関与する所望の骨減少性疾患の治療および予防に有用である。主要な治療対象となる疾患としては、特に関節リウマチ(rheumatoid arthritis; RA)を含む自己免疫性関節炎が挙げられる。関節リウマチは、自己免疫性の慢性炎症性疾患であり、増殖した滑膜が活発に骨軟骨へと侵入し、多発性の関節破壊をもたらす。本発明の医薬組成物は、この関節骨破壊を防止するために好適に用いられる。
また、本発明の医薬組成物が適用され得る他の骨減少性疾患としては、歯周病が挙げられる。また、本発明の医薬組成物は、巨細胞腫、癌骨転移、および色素性絨毛結節滑膜炎(pigmented villonodular synovitis; PVS)を含む、破骨細胞による骨吸収亢進を病態とする様々な疾患に対しても適用され得る。また、骨粗鬆症および癌の高カルシウム血症の治療への適用も期待される。さらに、パジェット病、肝炎やエイズに伴う骨量減少、白血病や多発性骨髄腫に伴う骨吸収・骨破壊、人工関節周囲の骨吸収(ルースニング)に対する予防および治療にも適用され得る(Rodan, G. A. & Martin, T. J., Science 289, 1508-1514 (2000); Kong, Y. Y. et al., Nature 402, 304-309 (1999); Takayanagi, H. et al., Arthritis Rheum. 43, 259-269 (2000); Honore, P. et al., Nat. Med. 6, 521-528 (2000))。本発明により、破骨細胞の形成および機能の制御による新たな治療介入が可能となる。
また本発明は、ES (embryonic stem) 細胞から破骨細胞を形成させる方法を提供する。この方法は、
(a)ES細胞を培養して三次元的な細胞塊を形成させる工程、
(b)工程(a)で得られた細胞をM-CSF存在下で培養する工程、
(c)工程(b)で得られた細胞をM-CSFおよびRANKL存在下で培養する工程、
を含む方法である。
上記の三次元的な細胞塊は、より特定すればembryonic bodyであってよい。ES細胞からのembryonic bodyの形成方法は知られており、例えばES細胞を固体支持体に直接接触させないように、hanging drops中でES細胞を培養することにより調製することができる。培養期間は、例えば2日間である。工程(b)においては、M-CSFの濃度は例えば約100ng/mlである。培養はペトリディッシュ中で行えばよい。培養条件は、例えば37℃、5% CO2、培養期間は例えば2日間である。また工程(c)においては、例えば工程(b)で得られた細胞をトリプシン処理等により分散させて培養する。RANKLおよびM-CSFの濃度は、それぞれ例えば約100ng/mlおよび約10ng/mlである。培養4日程度で、TRAP陽性の破骨細胞が形成される。
上記のES細胞から破骨細胞を形成させる方法は、フィーダー細胞を必要としない点で従来の方法よりも優れている。上記の方法で得られる破骨細胞培養物はフィーダー細胞などの異種細胞のコンタミネーションがないことから、細胞移植などの臨床適用に適している。このようにして形成させた破骨細胞は、本発明のスクリーニングにおいて用いることができるだけでなく、変形性関節症および靭帯骨化症などの異常骨化を伴う疾患の治療のために、局所的に移植することができる。
本明細書に記載した発明は、当業者であれば様々な改変を容易に思いつくことが可能であろうが、それらの態様は本発明の範囲に含まれる。なお本明細書に引用された文献は、本明細書の一部として組み込まれる。以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
[実施例1] in vitro破骨細胞形成
実施例2〜11で用いたin vitro破骨細胞形成は以下のように行なった。C57BL/6マウス由来の非接着性骨髄細胞を撒種し (24ウェルプレート1ウェルあたり 5 x 104, 10 cmディッシュあたり 1.5 x 107)、10 ng/ml M-CSF (Genzyme) を含む 10% FBS (Sigma) 含有α-MEM (Gibco BRL) で2日間培養し、リンパ球を含む非接着細胞を洗い流した後、接着細胞をBMMとして使用した。Fos-/-マウスおよび TRAF6-/-マウスの単球/マクロファージ前駆細胞は脾臓から採取し、同様に10 ng/ml M-CSFと共に2日間培養した。これらの破骨細胞前駆細胞はさらに 100 ng/mlの可溶性RANKL (Peprotech) および 10 ng/ml M-CSF存在下で培養して破骨細胞を生成させた。特に記載しない限り、これらの試薬はこれらの濃度で使用した。カルシニューリン阻害剤 FK506 (Calbiochem) またはシクロスポリンA (Sigma) はRANKLと同時に加えた。3日後に、TRAP+ の多核 (>3核) 細胞を計数した。全てのデータは平均±s.e. (n=6) として表した。TRAP+ MNCは、以前記載 (Takayanagi, H. et al. (2000b) Nature 408, 600-605) したように、象牙質切片上での骨吸収活性と、カルシトニン受容体の発現を試験した。
[実施例2] ノーザンブロット解析および免疫蛍光染色
M-CSFの存在下、RANKLで示した時間BMMを刺激した。Sapasolで単離した全RNA 5 mgを各レーンにロードした。ブロットには、マウスNFATc1 cDNA (Sherman, M. A. et al. (1999) J Immunol 162, 2820-2828) の230 bpのEcoRIおよびSmaI断片を[α-32P]dCTPでラベルしてハイブリダイズさせた。免疫染色には、細胞を4%パラホルムアルデヒドで20分固定し、0.2% triton Xで5分処理した。細胞を、順に 5% BSA/PBSで30分、PBST中の2μg/ml マウス抗NFATc1モノクローナル抗体 (7A6, Santa Cruz) で60分、その後、4μg/ml Alexa 488ラベルした抗マウスIgG抗体 (Molecular Probe) で60分インキュベートした。
[実施例3] RANKLによるNFATc1の誘導
RANKLにより選択的に活性化される未知の(1つまたは複数の)経路を同定するため、本発明者らはオリゴヌクレオチドアレイ (Affymetrix GeneChip) を用いて、RANKLにより誘導されるmRNAのゲノムワイドスクリーニングを行なった。骨髄細胞をM-CSF存在下で48時間培養して得られた、骨髄由来単球/マクロファージ前駆細胞 (Bone marrow-derived monocyte/macrophage precursor cells; BMMs) を、さらにM-CSF存在下で組み換えRANKLにより72時間刺激して破骨細胞に分化させた (Takayanagi, H. et al. (2000b) Nature 408, 600-605)。この過程において、RANKL添加の2、24、および72時間後に全RNAを抽出し、mRNAの発現プロフィールを未刺激のBMMの全RNAと比較した。RANKLに特異的でない経路を排除するため、M-CSF単独、またはIL-1およびM-CSFで刺激したBMMをネガティブコントロールとして用いた。これらのBMMでは破骨細胞は形成されなかった。
ジーンチップ解析の具体的手順を以下に示す。BMMをM-CSF単独、RANKLとM-CSF、またはIL-1 (10 ng/ml) とM-CSFで2、24、および72時間刺激した。Sepasol RNA extraction kit (Nakarai) を用いてBMMから全RNAを抽出した。全RNA (15μg) を用いて、逆転写によるcDNA合成と、それに続くin vitro転写によるビオチン化cRNA合成を行なった。cRNAを断片化した後、11,000のマウス遺伝子/ESTのプローブがディスプレイされているマウスU74A GeneChip (Affiymetirix) に製造元のプロトコールに従ってハイブリダイゼーションを行なった。チップを洗浄後、SA-PEで染色し、Affymetrix Genechip scannerおよび付属の遺伝子発現ソフトウェアを用いて読み取りを行なった。
期待されたように、TRAP、カルシトニン受容体、カテプシンK、カルボニックアンヒドラーゼII (CAII)、およびマトリックスメタロプロテアーゼ (MMP)-9などの破骨細胞で大量に発現することが知られている遺伝子が、RANKLにより高レベルで特異的に誘導された (図1A)。本発明者らは、RANKLシグナル伝達の鍵となる調節因子が含まれる可能性が高い転写因子の誘導に注目した。図1Bには、高度に誘導された転写因子に加え、RANKLシグナル伝達の下流で作用することが知られているもののGeneChipデータが示されている。注目すべきことに、NFATc1はmRNAの発現レベルおよび発現のfold increaseの両方において、他の転写因子を凌駕していた。この結果に一致して、RANKLは、破骨細胞形成においてBMMのNFATc1 mRNAを12倍より高く誘導することがノーザンブロット解析において示された (図2)。
[実施例4] 破骨細胞におけるNFATc1の発現
RANKLで刺激し、多核の破骨細胞への発達下にあるBMMにおけるNFATc1蛋白質の発現および細胞局在を調べた。免疫蛍光染色により、NFATc1蛋白質の発現はRANKLが媒介する破骨細胞形成の間、一定して増加し、蛋白質は次第に核に移行することが示された (図3)。この蛋白質は最初は主に細胞質で誘導され、24時間後に核に移行し始める (図3)。NFATc1の発現は、48時間後に観察されるTRAP+細胞の出現よりも早い。RANKL添加の72時間後では、ほぼ全てのTRAP+多核細胞 (MNCs) の核はNFATc1陽性であった (図3)。またこの蛋白質は細胞質にも発現していた。NF-κBなどの転写因子はRANKL刺激の直後に活性化され、破骨細胞形成の間、発現レベルは有意に変化しなかった (図1Bおよび (Takayanagi, H. et al. (2002) Nature 416, 744-749; Takayanagi, H. et al. (2000b) Nature 408, 600-605)) ことから、これらの転写因子機能は発現レベルが徐々に上昇することによってではなく、RANKLが誘導する破骨細胞分化の初期段階の活性化により誘導される核移行により調節されていることが示唆された。この文脈では、RANKLが誘導するNFATc1の上昇と付随する核移行は、破骨細胞分化における細胞事象を最も特徴づけるものでありうる。さらに、骨組織の組織学的試験によれば、NFATc1の発現は、破骨細胞マーカーであるTRAP陽性の巨細胞 (giant cell) (図4)、およびカテプシンKまたはMMP-9発現細胞 (非提示データ) と共在しており、in vivoでも破骨細胞においてNFATc1が発現することが確認された。
[実施例5] NFATc1の過剰発現
NFATc1の異所発現の効果を調べるため、NFATc1 cDNAおよびインターナルリボソーマルエントリーサイト (internal ribosomal entry site) - 増強緑色蛍光蛋白質 (EGFP) を保持するレトロウイルスベクター (pMX-NFATc1-IRES-EGFP) を構築した。レトロウイルスベクター pMX-NFATc1-IRES-EGFP は、マウス全長NFATc1 cDNAの2.7 kb EcoRI断片をpMX-IRES-EGFP (Nosaka, T. et al., EMBO J. 18, 4754-65 (1999)) の同じ部位に挿入して構築した。他のレトロウイルスベクター (pMX-c-Fos-IRES-EGFP, pMX-c-Jun-IRES-EGFP) は以前記載されている (Takayanagi, H. et al. (2002) Nature 416, 744-749)。レトロウイルスのパッケージングはこれらのpMXベクターとpPAMpsi2 (Sato, M. et al., FEBS Lett. 441: 106-110 (1998)) とを293T細胞にコリポフェクションして行なった。接種の2日後、BMMの感染効率をアッセイし、さらに破骨細胞形成アッセイのために、M-CSFと共にRANKLの存在下または非存在下で培養した。3日後、破骨細胞形成をTRAP染色および骨吸収アッセイにより評価した。
pMX-NFATc1-IRES-EGFP、またはc-Fos (pMX-c-fos-IRES-EGFP)、c-Jun (pMX-c-jun-IRES-EGFP)、またはEGFPのみ (pMX-EGFP) を保持する他の対照ウイルスをBMMに感染させた。驚くべきことに、BMMでNFATc1を過剰発現させるとRANKLを外来的に添加しなくても破骨細胞の分化が効率良く誘導された (図5A およびB)。c-Fosを保持するレトロウイルスもRANKLなしに破骨細胞形成を誘導したが、その誘導活性はNFATc1ウイルスのそれに比べればはるかに低かった。実際、ウイルスを介したNFATc1の破骨細胞形成活性はRANKL自体と同じくらい強いこと (図5A) から、NFATc1の発現の上昇は破骨細胞形成の誘導に十分であることが示唆される。期待されるように、NFATc1ウイルスおよびRANKLの添加は破骨細胞形成に対して相乗的な効果を示した (図5A)。
[実施例6] カルシニューリン阻害剤の効果
リンパ球では、NFATの核への移行はカルシニューリン依存的脱リン酸化により調節されていることがよく知られている (Crabtree, G. R., and Olson, E. N. (2002) Cell 109 Suppl, S67-79; Rao, A. et al. (1997) Annu Rev Immunol 15, 707-747)。免疫抑制剤 FK506またはシクロスポリンA (CyA) はカルシニューリンの脱リン酸化活性を特異的に阻害し、それによりNFATを不活性化させる (Liu, J. et al. (1991) Cell 66, 807-815)。NFATのカルシニューリン依存的活性化が破骨細胞形成に寄与するのかを調べるため、RANKLおよびM-CSFにより刺激される破骨細胞形成系にこれらのカルシニューリン阻害剤を添加した。FK506およびCyAは両者とも、BMMからのRANKL誘導破骨細胞形成を用量依存的に強く阻害した (図6)。破骨細胞形成に対する両薬剤の同じ阻害効果が、RANKLのみでも応答して破骨細胞に分化するマクロファージ細胞株であるRAW 264.7細胞でも観察されたことから (非提示データ)、カルシニューリン - NFAT経路は破骨細胞形成のためにRANKL誘導シグナル伝達に重要であることが示唆された。興味深いことに、FK506はNFATc1の核移行を阻害するのみならず、破骨細胞形成におけるNFATc1蛋白質レベルの特徴的な増加も抑制した (図7)。
ノーザンブロット解析により、NFATc1誘導はFK506によりmRNAレベルで抑制されることが示された (図8)。NFATには、自身のプロモーターへの結合を通してカルシニューリン依存的ポジティブフィードバック調節ループがあることが報告されている (Zhou, B. et al. (2002) J Biol Chem 277, 10704-10711)。本発明者らの結果は、NFATc1遺伝子のカルシニューリン依存的な自律増幅が、RANKLシグナル伝達の下流を作動させていることを示唆する。
[実施例7] RANKLにより誘導されるCa2+シグナル伝達
カルシニューリンはIP3が媒介する小胞体からのCa2+放出とそれに続く原形質膜を通した細胞内へのCa2+流入により活性化されることが知られている (Crabtree, G. R., and Olson, E. N. (2002) Cell 109 Suppl, S67-79)。RANKLが誘導するカルシニューリンの活性化機構の手がかりを得るため、Ca2+の選択的キレーターであるBAPTA-AMで細胞を処理することによりCa2+の可動化を遮断した。
BAPTA処理は以下にように行なった。細胞内Ca2+をキレートするため、15μM BAPTA AMおよび0.04% pluronic F127 存在下、血清を含まないα-MEM中で細胞を60分インキュベートした。その後細胞をα-MEMで2回洗浄し、RANKL/M-CSFを含むα-MEM/FBSでインキュベートした。この処理は、RANKLが誘導する破骨細胞形成の間中、1日1回行なった。
またCa2+測定は以下のように行なった。まず細胞を5μM fluo-4 AM、5μM Fura Red AM、および 0.05% pluronic F127 の存在下、血清を含まないDMEMで30分インキュベートした。その後DMEMで細胞を2回洗浄し、10% FBSおよび10 ng/ml M-CSFを含むDMEMで後インキュベートを20分間行った。これらの色素をロードした細胞をHank's balanced salt solutionで3回洗浄し、共焦点顕微鏡 (Leica) の倒立台にマウントした。細胞は488 nmで励起し、fluo-4は505-530 nm、FuraRedは600-680 nmの放出を5秒間隔で同時に測定した。単一細胞の細胞内Ca2+濃度を測定するため、FuraRedに対するfluo-4の蛍光強度の比を算出した。基底レベルからの比率の値の上昇を、10μM ionomycinを添加して得た最大比率上昇で割り、%最大比率上昇 (%max ratio increase) として表した。
期待したように、BAPTA-AMによるCa2+シグナル伝達の阻害はRANKLが誘導する破骨細胞形成を強く阻害すると共に、NFATc1の発現上昇も阻害した (図9) ことから、Ca2+依存的シグナル伝達は、NFATc1誘導および活性化を導くRANKLが誘導するカルシニューリンの活性化にとって重要であることが示唆された。これらの結果に一致して、RANKLで刺激したBMMでは、刺激の24時間後より後でも持続的なCa2+振動が観察され (図10)、これはIL-1で刺激した細胞では観察されなかった。ただしRANKLまたはIL-1のいずれで刺激しても、その直後の急速なCa2+濃度の上昇は観察されなかった。PMAおよびionomycineなどのCa2+イオノフォアの添加はRANKL誘導破骨細胞形成を有意にアップレギュレートしなかったこと (非提示データ) から、破骨細胞形成においてNFATc1の活性化のために重要なCa2+シグナル伝達は、Ca2+スパイクではなく持続的なCa2+の振動である可能性がある。RANKLが直接Ca2+可動化を活性化するのか、あるいは他のリガンド - 受容体系の誘導を通してそれを活性化するのかは明らかではない。
[実施例8] ES細胞からの破骨細胞形成
マウスのジーンターゲッティング戦略は、欠失が胚性致死の表現型となるような多機能遺伝子を解明するには限界がある。例えばNFATc1欠損マウスは正常な心臓弁および中隔を発達できずに発生のday 14.5より前に循環障害により死亡するため、骨細胞の発生におけるNFATc1の関与の詳細を評価することはできない (de la Pompa, J. L. et al. (1998) Nature 392, 182-186; Ranger, A. M. et al. (1998) Nature 392, 186-190)。さらに、NFATc1を欠失するマウスの胎生肝から造血細胞を得ることはほとんど不可能である。そこで本発明者らは、ES細胞由来の単球/マクロファージ前駆細胞が破骨細胞に効率良く分化することができる、ES細胞の新しい培養系を構築した。造血細胞の発生に適した微環境を維持するため、ES細胞塊 (embryoid body; EB) 形成による三次元培養を実現させた。
ES細胞からの破骨細胞形成は以下のように行なった。フィーダー細胞非依存的ES細胞株をゼラチンコートしたディッシュ上で15% FBS、1x10-4 M 2-mercaptoethanol、および 1000 U/ml leukemia inhibitory factor (LIF)、50 U/ml streptomycin および 50 mg/ml penicillin を含むDMEM (Gibco) で維持した。野生型ES細胞株 E14K [NFATc1+/+]、ヘテロ接合型変異体株 NFDK34 [NFATc1+/-]、およびホモ接合型変異体株 [NFATc1-/-], NFDK10 または NFDK17 を用いた。ES細胞を破骨細胞に分化させるため、ES細胞をトリプシン処理し、逆さにしたバクテリア用ペトリディッシュに25μlドロップ中に3x103 ES細胞となるようハンギングドロップでプレーティングした。Day 2でハンギングドロップ中のembryoid bodyを回収し、培養ディッシュに移した。これらのEBは、高濃度のM-CSF (100 ng/ml) を含むα-MEM/10% FBS中、ペトリディッシュで2日間培養した。その後、EBを0.25%のトリプシン - EDTA - PBSで処理して単一細胞を回収し、フローサイトメトリーでCD11b、c-Fms、およびRANKの発現を調べた (day 4)。回収した単一細胞は、RANKL (100 ng/ml) およびM-CSF (10 ng/ml) を含むα-MEM/10% FBS中に再度撒きなおして培養した。4日後、培養中に効率良くTRAP+ MNCが形成した (day 8)。これらのTRAP+ MNCが、象牙質切片上の骨吸収活性を含む破骨細胞の基準を満たすことが確認された。
上記のように、EBをM-CSFで2日間刺激すると単球/マクロファージ前駆細胞の発生が誘導され、これらを酵素的に分散させ新しいディッシュに撒きなおして、M-CSF存在下RANKLで4日間刺激すると、象牙質切片に対し骨吸収活性を持つTRAP+多核細胞が分化した (図11)。従って、この培養系は、欠失によりマウスで胚性致死を誘導するような遺伝子の破骨細胞形成における機能を調べることを可能にする。
[実施例9] NFATc1遺伝子の不活化
本発明者らは、G418濃度を増加させた選択により、NFATc1+/- ES細胞からNFATc1-/- ES細胞株を生成させた (Yoshida, H. et al. (1998) Immunity 8, 115-124)。NFATc1-/- ES細胞では、RANKLおよびM-CSF存在下での成熟破骨細胞の形成が完全に欠損していた (図12A)。さらに、RANKL刺激したNFATc1-/- ES細胞ではTRAP+ 細胞は全く見られなかった。しかしながら、NFATc1-/- ES細胞からのCD11b (Mac-1) または非特異的エステラーゼ (nonspecific esterase; NSE) 陽性の単球/マクロファージ前駆細胞の生成は、親細胞であるNFATc1+/- ES細胞からの生成と同レベルであった (図12B)。それに加え、NFATc1-/-前駆細胞のc-Fms (M-CSF受容体) およびRANKの発現は、NFATc1+/-前駆細胞のそれらに匹敵した (非提示データ)。これらの結果を合わせると、NFATc1はTRAP遺伝子の誘導および単球/マクロファージ前駆細胞から成熟した多核破骨細胞への分化に重要な役割を果たしていることが証明された。
[実施例10] NFATc1の転写標的およびパートナー
本発明者らは、TRAP、カルシトニン受容体、カテプシンK、CAII、およびMMP-9を含む破骨細胞の最終分化において特異的にアップレギュレートされる遺伝子のプロモーター配列 (Anusaksathien, O. et al. (2001) J Biol Chem 276, 22663-22674; David, J. P. et al. (2001) J Cell Physiol 188, 89-97; Motyckova, G. et al. (2001) Proc Natl Acad Sci U S A 98, 5798-5803; Reddy, S. V. et al. (1995) J Bone Miner Res 10, 601-606) をスクリーニングした。すると、これらのプロモーターは全て複数のNFATc1部位を含んでおり、NFATc1はこれらの破骨細胞遺伝子を直接調節することが示唆された。この可能性を調べるため、RANKL刺激に応答することが知られているTRAPプロモーターまたはカルシトニン受容体プロモーター (P3プロモーター) (Anusaksathien, O. et al. (2001) J Biol Chem 276, 22663-22674; Matsumoto, M. et al. (2001) J Biol Chem 276, 33086-33092; Reddy, S. V. et al. (1995) J Bone Miner Res 10, 601-606) により駆動されるルシフェラーゼレポータープラスミドを構築した。
ルシフェラーゼアッセイのためのレポータープラスミドの構築は以下にように行なった。マウスTRAPプロモーター (Reddy, S. V. et al. (1995) J Bone Miner Res 10, 601-606) の約1.8 kb KpnI - BglII断片を、PicaGeneルシフェラーゼレポータープラスミド, basic vector 2 (TOYO INK) の同じ部位に挿入して、レポータープラスミド pTRAP-lucを構築した。破骨細胞に特異的なマウスカルシトニン受容体プロモーター領域 (P3プロモーター) を、センス 5'-AAGATCTCAACACAACTCTTAACTGGACC-3' (配列番号:1) およびアンチセンス 5'-AAGCTTAATGTAAATGTAGATATAGC-3' (配列番号:2) プライマーを用いてPCRにより増幅した。もう一つのレポータープラスミド pCTR-lucは、461 bpのPCR断片をbasic vector 2のBglII - HindIII部位に挿入して構築した。NFATc1変異体 T552GおよびR485A/L486Aは、部位特異的変異導入法 (Sawano, A., and Miyawaki, A. (2000) Nucleic Acids Res 28, E78) により生成した。T552GおよびR485A/L486Aのためのプライマーは、それぞれ5'-TGAGGAAAGGGGAGGGAGATATCGGGAGGAAGAACACCAGGG-3' (配列番号:3) および 5'-TTGGGACGGCTGACGACGCCGCGCTGAGGCCTCACGCCTTCTACCAGG-3' (配列番号:4) である。FuGene 6 (Roche) を用いて293T細胞にトランスフェクトし、トランスフェクションの24時間後にルシフェラーゼ活性をアッセイした。全てのデータは平均±s.e. (n=6) で表した。
TRAPは破骨細胞に対して厳密な特異性はないが、破骨細胞マーカーとして最も広く用いられており、RANKLにより最も高いアップレギュレートを受ける遺伝子の1つである (図1A)。一方カルシトニン受容体はむしろ破骨細胞に特異的で、その前駆細胞では発現しない。図13に示したように、NFATc1の過剰発現のみで両者のプロモーターは活性化されたが、この活性化は期待したほど強くなかった。T細胞活性化においては、IL-2プロモーター上で、NFATはAP-1と共動することがよく知られている (Chen, L. et al. (1998) Nature 392, 42-48; Macian, F. et al. (2000) Embo J 19, 4783-4795; Macian, F. et al. (2001) Oncogene 20, 2476-2489)。c-Fosは破骨細胞形成に必須のAP-1複合体成分であるので、このc-FosをNFATc1と共にコトランスフェクションした。興味深いことに、NFATc1とc-FosとのコトランスフェクションはTRAPプロモーターおよびカルシトニン受容体プロモーターの両者の顕著な活性化を誘導したが、c-Fosのみではこれらのプロモーターを僅かに活性化しただけであった (図13)。これらの結果は、これらの破骨細胞遺伝子において、NFATc1は、c-Fosを含むAP-1複合体と共動することを強く示唆している。NFAT:AP-1:DNA複合体の結晶構造に基づいて、AP-1との分子相互作用が障害されたNFAT変異体が報告されている (Chen, L. et al. (1998) Nature 392, 42-48; Macian, F. et al. (2000) Embo J 19, 4783-4795)。これと同様に、本発明者らは、それぞれc-Junおよびc-Fosとの結合部位に変異を導入することによって、AP-1と共動できないNFATc1変異体 NFATc1T552G および NFATc1R485A/L486A を構築した (図14)。期待したように、これらの変異NFATc1はc-Fosとの相乗的な共動によりこれら2つのプロモーターを活性化することができなかった (図13) ことから、AP-1は破骨細胞遺伝子を作動させる転写機構におけるNFATc1の必須のパートナーであることが示唆された。
[実施例11] TRAF6、c-Fos、およびNFATc1の関係
カルシニューリン - NFATc1経路、およびTRAF6経路およびc-Fos経路などの他の既知の必須のシグナル伝達経路の間の関係についてさらに手がかりを得るため、TRAF6またはc-Fos欠失マウス由来のBMMにおけるRANKLが誘導するNFATc1の発現を評価した。NFATc1蛋白質の誘導はc-Fos欠失細胞では完全に阻害され、TRAF6細胞では完全ではなかったものの非常に減少していた。さらにノーザンブロット解析により、TRAF6およびc-Fosの両者が、NFATc1 mRNAの正常な誘導に必須であることが実証された (図15A)。期待したように、NFATc1 mRNAの誘導は全面的にc-Fosに依存していたことから、NFATc1はAP-1の転写標的であることが示唆された。しかしながら、NFATc1の蛋白質発現とは違い、NFATc1 mRNAの誘導はTRAF6欠損BMMでも部分的に観察されたことから、TRAF6によるNFATc1発現の調節は転写レベルおよび転写後レベルの両方で行なわれていることが示唆された (図15B)。このように、調節機構に違いはあるものの、NFATc1はTRAF6経路およびc-Fos経路の両者の下流で誘導されることから、NFATc1は、破骨細胞形成に必須のこれら2つの経路を統合する役割を果たすことが示された。
[実施例12] in vitro破骨細胞形成
実施例13〜18で用いたin vitro破骨細胞形成は以下のように行なった。C57BL/6マウス由来の非接着性骨髄細胞 (24ウェルプレート1ウェルあたり 5 x 104 細胞, 10-cmプレートあたり 1.5-2.0 107 細胞) を撒き、10 ng/ml M-CSF (Genzyme) を含む10 % FBS (Sigma) 含有α-MEM (Gibco BRL) 中で培養した。2日後、リンパ球を含む非接着細胞を洗い流した後、接着細胞をBMMとして用いた。BMMはさらに100 ng/ml可溶性RANKL (Peprotech) および10 ng/ml M-CSF存在下で培養し破骨細胞を形成させた。レフルノミドの効果を評価するため、レフルノミドの活性代謝物であるA77 1726 (Aventis Pharma) を、特に別記しない限りRANKLと同時に加えた。3日後、TRAP+の多核 (>3核) 細胞を計数した。全てのデータは平均±s.e. (n=6) で表した。TRAP+ MNCは、以前記載 (Takayanagi, H. et al., Nature 408, 600-5 (2000)) したように、象牙質切片上での骨吸収活性と、カルシトニン受容体の発現を試験した。
[実施例13] 破骨細胞分化に対するレフルノミドの効果
レフルノミドが破骨細胞分化に直接作用するのか、そしてもしそうならどのように作用するのかを調べるため、まずM-CSF存在下でRANKL刺激したマウス骨髄単球/マクロファージ (BMM) からのin vitro破骨細胞形成に対するレフルノミドの効果を調べた。図16Aに示したように、レフルノミドは酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ陽性の多核細胞 (TRAP+ MNC) の形成を、用量依存的 (1-100μM) に強く阻害した。これらの濃度では、レフルノミドはBMMの生存および増殖に有意な影響を与えなかった (図16A、17参照; 非提示データ)。また、やはりRANKLに応答して破骨細胞に分化するマクロファージである RAW 264.7のRANKLが誘導する破骨細胞形成においても、同様の阻害効果が観察された (非提示データ)。破骨細胞分化に対するレフルノミドの阻害効果はウリジンの過剰量の添加により回復したことから、この阻害はde novo (新規) のピリミジン生合成の遮断が原因であることが示唆された (図16A、17)。RANKL刺激において、レフルノミドの存在により破骨細胞形成の過程が阻害されるステージを調べた。図16Bに示したように、レフルノミドを初期ステージ、すなわちRANKL刺激の0〜24時間後の間に添加すると、TRAP+ MNCの形成はほぼ完全に阻害されたが、この薬剤をRANKL刺激の48時間後に添加してもそのような阻害は観察されなかった (図16B)。
[実施例14] RANKLが活性化する下流シグナル経路に対するレフルノミドの効果
上記の結果を基に、RANKLにより活性化される細胞内シグナル伝達経路にレフルノミドが干渉する機構を調べた。具体的には、RANKLはその受容体であるRANKへの結合を通して細胞にシグナルを伝達し、TRAF6などのTNF受容体関連因子 (TRAF) ファミリー蛋白質を活性化し、これがNF-κB経路、mitogen-activated protein kinase (MAPK) 経路、およびAkt経路を活性化する (Theill, L.E., Annu Rev Immunol 20, 795-823 (2002); Takayanagi, H. et al., Nature 408, 600-5 (2000); Wong, B.R. et al., Mol Cell 4, 1041-9 (1999); Takayanagi, H. et al., Nature 416, 744-49 (2002))。RANKLはまた、AP-1転写因子複合体において機能しうるc-Fosを誘導する (Takayanagi, H. et al., Nature 416, 744-49 (2002); Matsuo, K. et al., Nat Genet 24, 184-7. (2000); Karsenty, G. & Wagner, E.F., Dev Cell 2, 389-406. (2002))。RANKLは、TRAF6およびc-Fosに依存的な様式で、nuclear factor of activated T cells (NFAT) ファミリーのメンバーであるNFATc1遺伝子を選択的に誘導する。RANKLはまた、Ca2+シグナル伝達を生じさせ、カルシニューリンを介したNFATc1の活性化を起こす。この活性化は破骨細胞分化に必要かつ十分である (実施例1〜11参照)。
レフルノミドの破骨細胞形成阻害の分子基盤を解明するため、RANKLが誘導するこれらの下流シグナル分子の活性化に対するレフルノミドの効果を調べた。具体的には、レフルノミド (30μM) の存在下または非存在下で24時間プレインキュベートしたBMMをRANKLで刺激し、抗リン酸化MAPK抗体、抗MAPK抗体、抗リン酸化Akt抗体、または抗Akt抗体 (New England Biomeds) を用いて、以前の記載 (Takayanagi, H. et al., Nature 408, 600-5 (2000); Takayanagi, H. et al., Nature 416, 744-49 (2002)) の通りにイムノブロッティングにより解析した。electrophoretic mobility shift assay (EMSA) のため、BMMをレフルノミド (30μM) の存在下または非存在下で24時間プレインキュベートした。RANKL刺激を行なった後、細胞抽出液を調製しIFN-βプロモーターのNF-κB結合部位を含むオリゴヌクレオチドプローブを用いて以前の記載 (Takayanagi, H. et al., Nature 408, 600-5 (2000); Takayanagi, H. et al., Nature 416, 744-49 (2002)) の通りに解析した。スーパーシフトには抗Rel-A抗体 (Santa Cruz) を用いた。
図18Aに示したように、レフルノミド処理したBMMにおいて、ERK、p38、およびJNKを含むMAPKのRANKLが誘導する活性化に対しては、阻害効果は観察されなかった。さらに、NF-κB (図18B) およびAkt (図18C) のRANKLが誘導する活性化に対しても、影響はないか、あったとしても極僅かであったことから、これらの分子はRANKLシグナル伝達におけるレフルノミドの作用の標的ではない可能性が示唆された。
[実施例15] レフルノミドの作用の標的遺伝子のゲノムワイドスクリーニング
レフルノミドの分子標的を同定するため、レフルノミドの存在下または非存在下、BMMにおいてRANKLが誘導する遺伝子のゲノムワイドスクリーニングを行なった。まずレフルノミド (100μM) の存在下または非存在下、BMMをRANKL (100 ng/ml) およびM-CSF (10 ng/ml) で刺激し、24時間後にSepasol RNA extraction kit (Nakarai) を用いてBMMから全RNAを抽出した。全RNA (15μg) を用いて、逆転写によるcDNA合成と、それに続くin vitro転写によるビオチン化cRNA合成を行なった。cRNAを断片化した後、12,000のマウス遺伝子/ESTのプローブがディスプレイされているマウスU74Av2 GeneChip (Affiymetirix) に製造元のプロトコールに従ってハイブリダイゼーションを行なった。チップを洗浄後、SA-PEで染色し、Affymetrix Genechip scannerおよび付属の遺伝子発現ソフトウェアを用いて解析を行なった。
RANKLシグナル伝達に関与する転写因子およびエフェクター分子のmRNA発現を解析したところ、レフルノミドはNFATc1の転写に対して最も強い抑制効果を示した。図19に示したのように、NFATc1のmRNA発現はRANKLにより20倍より強く誘導されたが、レフルノミドはこの発現を1/8に低下させた。図19に示した他の遺伝子のmRNA誘導はNFATc1のような劇的影響はなかったことから、レフルノミドは転写を非特異的に阻害するのではなく、NFATc1のmRNAレベルを選択的に低下させたことは明確である。これらの結果から、レフルノミドの標的には、RANKLが誘導するNFATc1誘導の経路が含まれていることが示唆された。
[実施例16] NFATc1はRANKLシグナル伝達に対するレフルノミド作用の重要な標的である
NFATc1、TRAF6、およびc-Fosを含む破骨細胞形成における必須分子の蛋白質発現をさらに解析した。レフルノミドはNFATc1の発現を強く阻害した (図20)。TRAF6およびc-Fosの誘導レベルも、特に後期ステージ (RANKL刺激の3日後) において低下したが、誘導はまだ観察できた。免疫染色でもやはり、レフルノミドの存在下RANKLで刺激したBMMにおけるNFATc1の発現はほとんど検出されないが、同じ条件でc-FosまたはTRAF6の発現は、低いレベルではあったが依然として観察された (図21)。
NFATc1の発現がレフルノミドによりダウンレギュレートされる機構をさらに調べた。RANKLが誘導するCa2+振動はNFATc1遺伝子発現の自律増幅に必須であり、この自律増幅が持続的なNFATc1依存的な転写プログラムにとって重要であることが示されている (実施例1〜11参照)。そこで、RANKLで刺激したBMMにおけるCa2+シグナル伝達に対するレフルノミドの効果を調べた。興味深いことに、図22に示したように、RANKLにより誘導されるCa2+振動はレフルノミドにより阻害されたことから、RANKLが誘導するCa2+シグナルの阻害はレフルノミドによるNFATc1発現の阻害により、少なくとも部分的に説明されることが示唆された。さらに、RANKLによるNFATc1誘導に重要な転写因子であるTRAF6およびc-Fosのダウンレギュレーションが、レフルノミドによるNFATc1の強力な阻害に付加的に寄与している可能性がある。機能的にRANKLに関連するTNFおよびIL-1などのサイトカインが振動を誘導しない (実施例1〜11参照) 中で、RANKLがどのように振動を誘導するのかは未だ不明であるため、RANKLが誘導するCa2+振動に対するレフルノミドの詳細な機構についてさらに研究する必要がある。
なお、イムノブロット解析および免疫蛍光染色は以下のように行なった。破骨細胞形成におけるRANKLシグナル伝達の下流分子の発現を評価するため、BMMをレフルノミド (30μM) の存在下または非存在下でRANKL/M-CSFで刺激した。RANKL添加後、24時間毎にBMMの全細胞抽出液を特異抗体 NFATc1 (7A6)、TRAF6 (H-274)、および c-Fos (H-125) (Santa Cruz) を用いたイムノブロッティングによりアッセイした。免疫染色では、細胞をレフルノミド (30μM) の存在下または非存在下、RANKL/M-CSFと共に3日間培養し、4% パラホルムアルデヒドで20分固定した後、0.2% Triton Xで5分処理した。細胞を、順に 5% BSA/PBSで30分、2μg/ml 抗NFATc1抗体および4μg/ml 抗c-Fos抗体または抗TRAF6抗体を含むPBSTで60分、その後、4μg/ml Alexa 488または8μg/ml Alexa 546でラベルした2次抗体 (Molecular Probe) で60分インキュベートした。
また、Ca2+測定は以下のようにして行なった。レフルノミド (30μM) の存在下または非存在下、BMMをRANKL/M-CSFと共に48時間インキュベートした。上記に記載したように、細胞にカルシウムインジケーター (fluo-4 AMおよびFura Red) をロードし、共焦点顕微鏡 (C1, Nikon) で観察した。基底レベルからの蛍光強度の比の上昇を、10μM ionomycinを添加して得た比の最大上昇値で割り、%最大比率上昇 (%max ratio increase) として表した。
[実施例17] レフルノミドによる破骨細胞形成阻害に対するTRAF6、c-Fos、またはNFATc1の異所発現の効果
このように、レフルノミドによるde novoのピリミジン生合成の遮断は、RANKLシグナル伝達に複数のレベルで干渉し、破骨細胞形成に重要な蛋白質であるNFATc1の著しいダウンレギュレーションを引き起こした。そこで、RANKL誘導破骨細胞形成のレフルノミドによる抑制に対する、TRAF6、c-Fos、またはNFATc1の異所発現の効果を、実施例5と同様のレトロウイルスによる遺伝子導入により調べた。
レトロウイルスベクター pMX-NFATc1-IRES-EGFP (pMX-NFATc1)、pMX-c-fos-IRES-EGFP (pMX-c-fos), およびpMX-TRAF6-IRES-EGFP (pMX-TRAF6) は上記および文献 (Takayanagi, H. et al., Nature 408, 600-5 (2000); Takayanagi, H. et al., Nature 416, 744-49 (2002)) に記載されている。レトロウイルスのパッケージングはこれらのpMXベクターとpPAMpsi2とを293T細胞にコリポフェクションして行なった。接種の2日後、RANKL/M-CSFおよびレフルノミド (30μM) でBMMを刺激した。RANKL添加の3日後、以前記載 (Takayanagi, H. et al., Nature 408, 600-5 (2000)) したようにTRAP染色および骨吸収アッセイにより破骨細胞形成を評価した。
興味深いことに、NFATc1の異所発現ではレフルノミドの存在下でも効率的に破骨細胞が形成されたが、c-FosまたはTRAF6では形成されなかったことから、RANKLに関連するNFATc1誘導経路がレフルノミドの作用に重要な標的であることがさらに明確になった (図23)。
[実施例18] 炎症性骨破壊に対するレフルノミドのT細胞非依存的効果
関節炎において、T細胞は骨破壊を引き起こす幾つかの経路に関与している (Choy, E.H. & Panayi, G.S., N Engl J Med 344, 907-16 (2001))。関節炎滑膜では免疫系の異常な活性化によりTNF-αおよびIL-1などのマクロファージ由来の炎症性サイトカインが誘導され、それらは滑膜線維芽細胞でRANKLを強く誘導する (Takayanagi, H. et al., Arthritis Rheum. 43, 259-69 (2000); Takayanagi, H. et al., Nature 408, 600-5 (2000); Takayanagi, H. et al., Biochem Biophys Res Commun 240, 279-86. (1997))。骨関連疾患状態の誘導において、T細胞はこの滑膜炎の開始および増悪に関与している。この経路が重要であることは、これらのサイトカインの中和で関節炎性骨破壊に対して顕著な治療効果が観察されることから明確である (Feldmann, M. & Maini, R.N., Annu Rev Immunol 19, 163-96 (2001); Choy, E.H. & Panayi, G.S., N Engl J Med 344, 907-16 (2001))。さらに、RANKLを発現する活性化T細胞が破骨細胞形成に直接寄与する可能性がある (Kong, Y.Y. et al., Nature 402, 304-9 (1999))。その結果、滑膜線維芽細胞およびT細胞の両方により誘導されるRANKLレベルが、IFN-γまたはオステオプロテジェリン (osteoprotegerin; OPG) などの阻害因子によりカウンターバランスされるにはあまりにも上昇してしまう (Kong, Y.Y. et al., Nature 402, 304-9 (1999); Takayanagi, H. et al., Nature 408, 600-5 (2000))。幾つかの抗リウマチ薬は骨保護効果を持つが (Kremer, J.M., Ann Intern Med 134, 695-706 (2001); Jones, G. et al., Rheumatology (Oxford) 42, 6-13 (2003))、この骨破壊の複雑な機構のためT細胞依存的効果とT細胞非依存的効果とを切り分けることは困難である。そこで本発明者らは、T細胞なしで炎症性骨破壊を誘導するモデルの開発を行なった。
T細胞およびB細胞の両者を欠くRag-2遺伝子欠損マウス (Rag-2-/-マウス) (Shinkai, Y. et al., Cell 68, 855-67 (1992)) の頭蓋冠にリポ多糖 (LPS) を注入した。この、エンドトキシン誘導骨吸収は以下のようにして行なった。Rag-2-/-マウス (Taconic) は以前記載されている (Shinkai, Y. et al., Cell 68, 855-67 (1992))。7週齢マウス (n=10) に記載 (Takayanagi, H. et al., Nature 416, 744-49 (2002); Chiang, C.Y., Infect. Immun. 67, 4231-6 (1999)) したようにリポ多糖 (LPS) (Sigma) を25 mg/kg体重で頭蓋冠に局所注入して投与した。マウスは、LPS注入部位にレフルノミド (10 mg/kg体重) または生理食塩水の単回注入処理を行った。5日後、頭蓋冠組織を5% carboxymethyl cellulose sodium salt (CMC) で包埋、凍結し、連続切片をTRAP (およびヘマトキシリン) およびNFATc1について記載 (Takayanagi, H. et al., Nature 416, 744-49 (2002)) の通りに染色した。骨梁表面ミリメーター当たりの破骨細胞数およびNFATc1+細胞数などのパラメーターを決定した。Student's t-testにより統計解析を行った。これらの実験は研究所の動物実験に関する委員会に承認されている。
低用量のLPS注入はT細胞欠損ヌードマウスの骨破壊を誘導しなかった (Ukai, T., J. Periodontal. Res. 31, 414-22 (1996)) が、本発明者らは高用量のLPSを用いてRag-2-/-マウスで骨破壊を誘導することに成功した。このことから、リンパ球はこのモデル系において必須ではないことが示された (図24)。興味深いことに、これらのマウスに局所的にレフルノミドを投与すると、骨破壊および過剰な破骨細胞形成が著しく改善した (図24、25A)。炎症病変のTRAP+ MNCの多数がNFATc1について陽性に染色され (図24)、レフルノミド処理により顕著に減少した (図25A) ことは注目に値する。これに対して、NFATc2などの他のNFATファミリーのメンバーの発現はほとんど検出されなかった (非提示データ)。このように、レフルノミドはin vivoで抗破骨細胞形成効果があり、これはT細胞を標的としていない。レフルノミドが他の細胞型にも作用する可能性は厳密には排除できないが、ここで得られた結果は、レフルノミドがNFATc1発現に干渉することにより破骨細胞前駆細胞に直接的な阻害効果を示すという上記のin vitroの結果と合致する。これに一致して、Rag-2-/-マウスの炎症反応に対してレフルノミドは最低限の効果を持つに過ぎなかった (図25B、および非提示データ)。
本発明により、Ca2+シグナル分子、特にNFATc1を含むカルシニューリンシグナル伝達分子を標的とする、破骨細胞形成を制御する方法が提供された。また、Ca2+シグナル分子、特にNFATc1を含むカルシニューリンシグナル伝達分子を標的とする、破骨細胞形成を抑制する化合物の新たなスクリーニング方法が提供された。本発明は、破骨細胞形成を選択的に阻害する薬剤の開発を可能とする。このような薬剤は、破骨細胞による骨破壊を効果的に抑制する副作用の少ない薬剤として有用である。破骨細胞形成の亢進は、関節リウマチを含む様々な骨減少性疾患の原因であることから、本発明により得られる薬剤は、これらの骨疾患の治療への適用が期待される。
RANKLが誘導する遺伝子のGeneChipによるゲノムワイドスクリーニングの結果を示す図である。左に示したmRNA発現の測定結果において各遺伝子の4つのカラムは、RANKL添加後の時間が上から順に 0 h、2 h、24 h、および 72 h のデータを示す。右に示したFold increaseの測定結果において各遺伝子の3つのカラムは、RANKL添加後の時間が上から順に 2 h、24 h、および 72 h のデータ (対 0 h) を示す。(A) 破骨細胞において高発現することが既知の破骨細胞遺伝子。予想通り、これらの遺伝子はRANKLにより特異的かつ高度に誘導された。左パネルはmRNA発現レベル (average difference (差平均) として表した) を、右パネルは未刺激細胞との比較におけるmRNA発現のfold increase (増加倍数) を示す。GeneChip解析は数回繰り返し、同様の結果を得た。代表的なデータセットを示した。(B) RANKLにより高度に誘導される転写因子またはRANKLシグナル伝達の下流で作用することが既に示唆されている転写因子のリスト。NFATc1の発現レベルおよびfold induction (誘導倍数) が最も顕著であった。他の転写因子の大半の発現レベルは安定であり、これらの因子は量的にではなく活性化状態により調節されていることが示唆される。 in vitroにおける破骨細胞でのNFATc1の発現を示す図である。NFATc1 mRNAのノーザンブロット解析を示す。RANKL/M-CSFで図示した時間刺激したBMMから全RNAを抽出した。各レーンに5μgの全RNAをアプライした。 in vitroにおける破骨細胞でのNFATc1の発現を示す図である。RANKL/M-CSFで刺激したBMMにおけるNFATc1蛋白質の免疫染色を示す。NFATc1はまず細胞質で誘導され、次第に核に移行する。多核の破骨細胞で顕著に発現していることに注意。下パネルではDAPIで核を染色した。 in vivoにおける破骨細胞でのNFATc1の発現を示す図である。破骨細胞におけるin vivoでのNFATc1の発現を示す。8週齢のC57/BL6マウスから脛骨近位部 (roximal tibia) の連続切片をTRAPおよびヘマトキシリンで染色、あるいは抗NFATc1抗体とそれに続くAlexa 488結合2次抗体で免疫染色した。 レトロウイルスによるNFATc1発現による破骨細胞形成の効果的誘導を示す図である。(A) NFATc1レトロウイルスはRANKLなしにTRAP+ MNC形成を誘導する。この破骨細胞形成活性はc-Fosウイルスよりもはるかに強かった。両ウイルスはRANKLとの相乗的な効果を示した。(B) NFATc1ウイルス感染細胞におけるGFPおよびTRAPの共局在。GFPにより検出したウイルス感染細胞のほとんどはTRAP染色に陽性であった。各ウイルスにおいてトランスフェクション効率は約35%と見積もられた。 カルシニューリンおよびCa2+シグナル伝達によるNFATc1の調節を示す図である。BMMにおいてRANKLが誘導する破骨細胞形成に対するカルシニューリン阻害剤 FK506およびシクロスポリンAの抑制効果を示す。 カルシニューリンおよびCa2+シグナル伝達によるNFATc1の調節を示す図である。FK506はRANKLが誘導するNFATc1の核移行および発現上昇を用量依存的に阻害した。 カルシニューリンおよびCa2+シグナル伝達によるNFATc1の調節を示す図である。カルシウムキレーター BAPTA-AMは、RANKLが誘導するBMMにおける破骨細胞形成を抑制した。NFATc1誘導も大幅に抑制された。 カルシニューリンおよびCa2+シグナル伝達によるNFATc1の調節を示す図である。FK506はRANKLによるNFATc1 mRNA誘導を阻害した。 カルシニューリンおよびCa2+シグナル伝達によるNFATc1の調節を示す図である。RANKL処理したBMMで観察されるCa2+振動を示す。IL-1処理したBMMでは観察されない。FuraRedに対するfluo-4の蛍光強度の比によりCa2+濃度を算出した。基底レベルからの比率の値の上昇を、10μM ionomycinを添加して得た最大比率上昇で割った。Ionomycinの添加は矢印で示した。 破骨細胞を生成する新規なES細胞培養系の模式図である。LIF欠乏条件下、ハンギングドロップ法でembryoid bodyを形成させた。これらのEBをM-CSF (100 ng/ml) で2日間刺激した。その後、EBをトリプシン処理して単一細胞を得、それを撒きなおしてRANKL (100 ng/ml) およびM-CSF (10 ng/ml) 存在下で4日間培養した。 NFATc1欠損ES細胞は破骨細胞に分化できないことを示す図である。(A) NFATc1-/- ES細胞では破骨細胞形成が障害される。NFATc1+/- ES細胞培養では効率よくTRAP+ MNCが形成されるが (day 8)、NFATc1-/- ES細胞培養ではTRAP+ MNCが見られない。(B) 単球/マクロファージ前駆細胞は、NFATc1-/- ES細胞から正常に分化する。EBをM-CSF刺激すると、前駆細胞でCD11bが等しく発現する (左, day 4)。非特異的エステラーゼ (NSE)+ コロニーも、両培養で正常に形成される (右, day 8)。 NFATc1:AP-1はTRAPプロモーターおよびカルシトニン受容体プロモーターを活性化することを示す図である。NFATc1はc-Fosと共動してTRAPプロモーターおよびカルシトニン受容体プロモーターを活性化する。これらのプロモーターに対して、NFATc1はc-Fosとの強い相乗効果を持つが、AP-1と共動できないNFATc1変異体はc-Fosとの相乗効果を持たない。 前図で用いたNFATc1変異体のアミノ酸配列を示す図である。AP-1との共動作用がほとんどないNFATc2変異体との配列の相同性を基に、NFATc1変異体を設計した。図中の配列は上から順に配列番号:5 (NFATc2)、6 (NFATc1)、7 (NFATc1T552G)、および8 (NFATc1R485A/L486A) とした。 NFATc1はRANKLシグナル伝達においてTRAF6経路およびc-Fos経路の下流で作用することを示す図である。RANKLシグナル伝達は階層的に調節される。RANKLがRANKに結合すると、TRAF6経路、c-Fos経路、およびCa経路が活性化する。c-Fos - AP-1経路はNFATc1 mRNA誘導に必須であり、カルシニューリン依存的なNFATc1自体の活性化と共動して自律複製機構を構成する。TRAF6経路はNFATc1 mRNAの誘導のみならず、蛋白質安定性などのNFATc1の転写後調節にも重要である。増幅したNFATc1蛋白質は、カルシニューリン依存的様式で核に移行し、AP-1複合体と共動して破骨細胞遺伝子を誘導する。(A) RANKLおよびM-CSFで刺激したc-Fos-/-細胞およびTRAF6-/-細胞におけるNFATc1蛋白質の発現。M-CSFで処理した脾細胞をRANKL/M-CSFと共にさらに3日間培養し、抗NFATc1抗体で免疫染色した。NFATc1蛋白質の発現は、c-Fos-/-細胞またはTRAF6-/-細胞ではそれぞれ欠失しているかまたは非常に低下していた。(B) RANKLおよびM-CSFで刺激したc-Fos-/-細胞およびTRAF6-/-細胞におけるNFATc1 mRNAの発現。NFATc1 mRNA誘導はc-Fos-/-細胞では見られないが、TRAF6-/-細胞では弱い誘導が観察された。 RANKL誘導破骨細胞形成におけるレフルノミドの効果を示す図である。(A) レフルノミドはM-CSF存在下でRANKLにより刺激されたBMMからのTRAP+ MNCの形成を阻害する。この阻害は、ウリジン (50μM) の添加でレスキューされた。(B) レフルノミドの効果は分化ステージに依存する。初期ステージ (0-24 h) のレフルノミド添加 (30μM) は破骨細胞形成を完全に阻害するが、後期ステージ (48-72 h) の添加は効果がない。 RANKL誘導破骨細胞形成におけるレフルノミドの効果を示す図である。in vitro破骨細胞分化系の顕微鏡像 (TRAP染色) を示す。レフルノミドの阻害効果はウリジンによりレスキューされる。レフルノミドは破骨細胞前駆細胞の増殖には効果を持たないことに注意。 RANKLが活性化するシグナル伝達経路におけるレフルノミドの効果を示す図である。(A) レフルノミドはBMMにおいてRANKLが誘導するp38、ERK、またはJNKの活性化には有意な効果がない。(B) BMMでRANKLが誘導するNF-κBの活性化に対するレフルノミドの効果。(C) RANKLによるAktの活性化はレフルノミドにより影響を受けない。 RANKLが誘導する遺伝子におけるレフルノミドの標的のゲノムワイドスクリーニングの結果を示す図である。白いカラムはRANKL添加 0 h、黒いカラムは 24 h 後のmRNA発現 (average difference) を示す。 NFATc1経路の下流を介したレフルノミドによるRANKLシグナル伝達の阻害を示す図である。RANKLシグナルの必須メディエーターの発現に対するレフルノミドの効果を示す。NFATc1はRANKLにより顕著に誘導され、分化の過程で脱リン酸化 (アスタリスクで示す) される。レフルノミドはNFATc1発現に対して強い阻害効果を持つ。 NFATc1経路の下流を介したレフルノミドによるRANKLシグナル伝達の阻害を示す図である。レフルノミドの存在下または非存在下でRANKLで刺激したBMMにおけるc-Fos、TRAF6、およびNFATc1の発現を示す。 NFATc1経路の下流を介したレフルノミドによるRANKLシグナル伝達の阻害を示す図である。RANKLにより誘導されるBMMのCa2+シグナル伝達に対するレフルノミドの効果を示す。Ca2+インジケーターをロードして単一細胞の[Ca2+]iの変化を検出した。それぞれの線は同じ視野の異なる細胞を示す (詳細は本文を参照)。 NFATc1経路の下流を介したレフルノミドによるRANKLシグナル伝達の阻害を示す図である。レフルノミドの阻害効果に対するc-Fos、TRAF6、およびNFATc1のレトロウイルスによる過剰発現の効果を示す。 Rag-2-/-マウスの炎症性骨破壊のT細胞非依存的モデルにおけるレフルノミドの効果を示す図である。Rag-2-/-マウスでLPSは、破骨細胞形成の亢進と炎症関連骨吸収を誘導する。骨破壊はTRAP+およびNFATc1+細胞の細胞数の増加を伴っていることに注意。レフルノミドはこの骨吸収を有意に改善する。 Rag-2-/-マウスの炎症性骨破壊のT細胞非依存的モデルにおけるレフルノミドの効果を示す図である。(A) 破骨細胞数、NFATc1+細胞数、および骨髄腔領域の増加などの骨吸収パラメーターに対するレフルノミドの効果。LEFはレフルノミドを表す。(*p<0.05 対生理食塩水)。(B) 炎症性細胞層の形成に対するレフルノミドの効果。 関節リウマチ患者の骨/滑膜境界におけるNFATc1の発現を示す図である。関節リウマチ患者の骨/滑膜境界のTRAP+ MNCはNFATc1陽性である。全ての試料で同様の結果が得られた。右パネルは関節炎関節で高レベルでNFATc1を発現する骨吸収破骨細胞の拡大像である。関節リウマチ組織は、インフォームドコンセントの下、重度骨破壊により膝関節置換術を受ける関節リウマチ患者 (n=4) の骨/滑膜境界から組織を得た。試料はCMCに包埋、凍結し、NFATc1発現を本明細書に記載したように解析した。

Claims (13)

  1. インビトロまたは非ヒトの破骨細胞形成を促進または抑制する方法であって、破骨細胞前駆細胞におけるNFATc1の発現をそれぞれ促進または抑制する工程を含む方法。
  2. インビトロまたは非ヒトの破骨細胞形成を促進する方法であって、破骨細胞前駆細胞にNFATc1発現ベクターを導入する工程を含む方法。
  3. インビトロまたは非ヒトの破骨細胞形成を抑制する方法であって、破骨細胞前駆細胞におけるNFATc1の発現を抑制する工程を含む方法。
  4. インビトロまたは非ヒトの破骨細胞形成を抑制する方法であって、破骨細胞前駆細胞にレフルノミドを接触させる工程を含む方法。
  5. レフルノミドを含むNFATc1発現抑制剤。
  6. レフルノミドを含む破骨細胞形成抑制剤。
  7. NFATc1発現ベクターからなる破骨細胞形成促進剤。
  8. 破骨細胞形成を抑制する化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a)被検化合物を含む試料の存在下、破骨細胞前駆細胞におけるNFATc1の発現または活性を検出する工程、および
    (b)該NFATc1の発現レベルまたは活性を抑制する化合物を選択する工程、を含む方法。
  9. NFATc1の活性が、NFATc1およびAP-1成分との相互作用である、請求項8に記載の方法。
  10. NFATc1の活性が、NFATc1およびDNAとの相互作用である、請求項8に記載の方法。
  11. 破骨細胞形成を抑制する化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a)被検化合物を含む試料の存在下、外来的にNFATc1を発現させた破骨細胞前駆細胞における破骨細胞形成を検出する工程、および
    (b)該破骨細胞形成を抑制する化合物を選択する工程、を含む方法。
  12. 骨減少性疾患の治療のための医薬組成物であって、レフルノミド、および1つまたはそれ以上の薬学的に許容される担体を含む組成物。
  13. 骨減少性疾患が、骨粗鬆症、自己免疫性関節炎、パジェット病、および骨癌からなる群より選択される疾患である、請求項12に記載の組成物。
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