以下、添付図面に従って本発明に係る塗布膜の硬化方法、装置及び光学フィルムの好ましい実施の形態(第1実施形態)について詳説する。
図1は、本発明に係る塗布膜の硬化方法、及び装置が適用される光学フィルムの製造ラインを説明する説明図である。図2(断面図)は、この製造ラインのうち、塗布膜の硬化装置の一例を示すものである。
光学フィルムの製造ライン10は、図1に示されるように、送り出し機66から予めポリマー層が形成された透明支持体であるウエブ16が送り出されるようになっている。ウエブ16はガイドローラ68によってガイドされて除塵機74に送りこまれるようになっている。除塵機74は、ウエブ16の表面に付着した塵を取り除くことができるようになっている。
除塵機74の下流には、グラビア塗布装置100が設けられており、塗布液がウエブ16に塗布できるようになっている。グラビア塗布装置100の詳細については後述する。
グラビア塗布装置100の下流には、乾燥ゾーン76、加熱ゾーン78が順次設けられており、ウエブ16上に液晶層が形成できるようになっている。更に、この下流には複数台の活性線照射手段を備える塗布膜の硬化装置である紫外線照射装置50が設けられており、紫外線照射により、液晶を架橋させ、所望のポリマーを形成できるようになっている。そして、この下流に設けられた巻取り機82により、ポリマーが形成されたウエブ16が巻き取られるようになっている。
なお、光学フィルムの製造ライン10の略全般に亘って、ウエブ16を巻き掛けて支持し、ウエブ16の搬送を可能ならしめるべくガイドローラ68、68…が設けられている。このガイドローラ68は、回動自由となっているローラ部材であり、ウエブ16の幅と略同一の長さ(本例では、ウエブ16の幅より若干長い)を有する。
グラビア塗布装置100は、上流ガイドローラ17及び下流ガイドローラ18でガイドされて走行するウエブ16に対して、回転駆動されるグラビアローラ12によりウエブ16に所期の膜厚の塗布液を塗布する装置である。
グラビアローラ12、上流ガイドローラ17及び下流ガイドローラ18は、ウエブ16の幅と略同一の長さを有する。グラビアローラ12は、図1の矢印に示される方向に回転駆動される。この回転方向は、ウエブ16の走行方向に対して逆転方向となる。なお、図1とは逆の順転の駆動による塗布も、塗布条件によっては採用できる。
グラビアローラ12の駆動方法は、インバータモータによるダイレクト駆動(軸直結)であるが、各種モータと減速機(ギアヘッド)との組み合わせ、各種モータよりタイミングベルト等の巻き掛け伝達手段による方法であってもよい。
グラビアローラ12表面のセル(cell)形状は、公知のピラミッド型、格子型及び斜線型等のいずれであってもよい。すなわち、塗布速度、塗布液の粘度、塗布層厚等により適宜のセルを選択すればよい。
グラビアローラ12の下方には、液受けパン14が設けられており、この液受けパン14には塗布液が満たされている。そして、グラビアローラ12の約下半分は塗布液に浸漬されている。この構成により、グラビアローラ12表面のセルに塗布液が供給されることとなる。
塗布前に塗布液の余剰分を掻き落とすべく、グラビアローラ12の約10時の位置にその先端が接するようにドクターブレード15が設置されている。このドクターブレード15は、基端部の回動中心15Aを中心として、図1の矢印方向に、図示しない付勢手段により付勢されている。
上流ガイドローラ17及び下流ガイドローラ18は、グラビアローラ12と平行な状態で支持されている。そして、上流ガイドローラ17及び下流ガイドローラ18は、両端部分を軸受部材(ボール軸受等)により回動自在に支持され、駆動機構を付されない構成のものが好ましい。
上述したグラビア塗布装置100は、特に薄層塗布に有効であるので、たとえば、ウエット塗布量が5ml/m2 以下(塗布時の膜厚が5μm以下)の超薄層塗布を行う光学フィルムの製造ラインに好適に適用できる。
本実施の形態において、グラビア塗布装置100は、クリーンルーム等の清浄な雰囲気に設置するとよい。その際、清浄度はクラス1000以下が好ましく、クラス100以下がより好ましく、クラス10以下が更に好ましい。
本発明において、同時に塗布される塗布液の塗布層の数は単層に限定されるものではなく、必要に応じて同時多層塗布方法にも適用できる。
なお、塗布液の塗布方法としては、上述したグラビアコータ100以外に、バーコータ、ロールコータ(トランスファロールコータ、リバースロールコータ等)、ダイコータ、エクストルージョンコータ、ファウンテンコータ、カーテンコータ、ディップコータ、スピンコータ、スプレーコータ又はスライドホッパ等が採用できる。
また、図1に示される光学機能フィルムの製造ラインにおいて、ウエブ16のテンションとしては、100〜500N/mにすることが好ましい。
次に、本発明の特徴部分である紫外線照射装置50について説明する。図2に示されるように、紫外線照射装置50は、ウェブ16の周囲に密閉空間を形成する密閉空間形成手段であるトンネル状のハウジング52と、ウェブ16の表面(上面)に形成された塗布膜に紫外線を照射してこの塗布膜を硬化させる2台の紫外線ランプハウス54、54と、ハウジング52内部の密閉空間内に窒素ガス(不活性ガス)を供給するノズル56、56、56とより構成される。
ハウジング52は、上カバー52Aと下カバー52Bとよりなり、両者によりトンネル状をなしている。すなわち、ハウジング52の入口側(左側)に形成される、ウェブ16の幅方向(紙面に垂直方向)に細長いスリット52Cよりウェブ16が搬入されるようになっており、ハウジング52の出口側(右側)に形成される、ウェブ16の幅方向(紙面に垂直方向)に細長いスリット52Dよりウェブ16が搬出されるようになっている。
このハウジング52内においては、紫外線ランプハウス54とウェブ16との間に密閉空間が形成されるのみならず、紫外線ランプハウス54、54同士の間にも密閉空間が形成される。
このハウジング52の上カバー52Aにおいて、紫外線ランプハウス54に相対する部分は、紫外線の透過率の高い透明板52E、52Eで形成されており、紫外線ランプハウス54から照射される紫外線がウェブ16上の塗布膜に効率的に照射できるようになっている。透明板52Eとしては、たとえば石英ガラスが好ましく採用できる。
また、上カバー52Aに透明板52Eが設けられ、上カバー52Aと紫外線ランプハウス54とが別体で構成されているので、紫外線ランプハウス54の影響(たとえば、熱変形)が上カバー52Aに及びにくくなっている。
この透明板52Eの下面とウェブ16上の塗布膜との距離Gは、50mm以下となっていることが好ましい。このような構成とすることにより、酸素濃度を所望の値に制御することが容易となる。また、窒素ガスの使用量を抑えるのに好適である。
ノズル56は、ハウジング52内部の密閉空間内に窒素ガスを供給する手段であり、図示しないガス配管より供給される窒素ガスを図の矢印の方向に噴出できるように配されている。
ハウジング52の内部には、図示しない酸素濃度計のプローブが配されている。このような構成とすることにより、ハウジング52内を密閉空間とでき、窒素ガス等の不活性ガスの供給により、酸素濃度を所望の値に制御できる。
次に、本発明に係る光学フィルムの例として、反射防止フィルムの構成例を説明する。反射防止フィルムは、目的に応じて層数を選択することができるが、広い波長領域で低反射を実現するためには、3層以上であることが好ましい。3層反射防止フィルムは、「反射防止膜の特性と最適設計・膜作成技術」(技術情報協会発行、2002年2月5日、p.15〜16)に記載されているように、基板側から、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の順で積層され、それぞれの層の光学膜厚、すなわち屈折率と膜厚の積が設計波長λに対してλ/4、λ/4、λ/4、又はλ/4、λ/2、λ/4という設計が公知である。
図3は、優れた反射防止性能を有する多層反射防止フィルムを表面保護フィルムの片側に用いた偏光板の層構成を模式的に示す断面図である。透明支持体1、ハードコート層2、中屈折率層3、高屈折率層4、低屈折率層(最外層)5の順序の層構成を有する。
以下、反射防止フィルムを構成する層について詳しく説明する。
透明支持体としては、プラスチックフイルムであることが好ましい。プラスチックフィルムとしてはセルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテンが含まれる。トリアセチルセルロース、及びポリオレフィンがレターデーションが小さく、光学的均一性も高いため、偏光板用途として好ましく、特に、液晶表示装置に用いる場合、トリアセチルセルロースであることが好ましい。
トリアセチルセルロースとしては、特開2001−1745号公報にて公開されたものが好ましく用いられる。
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設ける。
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。たとえば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。また、ハードコート層の屈折率や強度を調整するために、無機微粒子を含んでもよい。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;2, 2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2−2−ビス{4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;等を挙げることができる。
更にはエポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類も、光重合性多官能モノマーとして、好ましく用いられる。
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。更に好ましくは、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイル」等の記載は、それぞれ「アクリレート又はメタクリレート」、「アクリロイル又はメタクリロイル」等の意味を表す。
多官能モノマーは、二種類以上を併用してもよい。
光重合性多官能モノマーの重合反応には、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤が好ましく、特に好ましいのは光ラジカル重合開始剤である。
光ラジカル重合開始剤としては、たとえば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド及びチオキサントン類等が挙げられる。
市販の光ラジカル重合開始剤としては、日本化薬(株)製のKAYACURE(DETX-S,BP-100,BDMK,CTX ,BMS ,2-EAQ ,ABQ ,CPTX,EPD ,ITX ,QTX ,BTC ,MCA など)、日本チバガイギー(株)製のイルガキュア(651,184,500,907,369,1173,2959,4265,4263など)、サートマー社製のEsacure (KIP100F ,KB1 ,EB3 ,BP,X33 ,KT046 ,KT37,KIP150,TZT )等が挙げられる。
特に、光開裂型の光ラジカル重合開始剤が好ましい。光開裂型の光ラジカル重合開始剤については、最新UV硬化技術(P .159 ,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)に記載されている。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、日本チバガイギー(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が挙げられる。
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトン及びチオキサントンを挙げることができる。
市販の光増感剤としては、日本化薬(株)製のKAYACURE(DMBI,EPA )などが挙げられる。
光重合反応は、層の塗布及び乾燥後、紫外線照射により行うことが好ましい。
ハードコート層は、脆性の付与のために重量平均分子量が500以上のオリゴマー及び/又はポリマーを添加してもよい。
オリゴマー、ポリマーとしては、(メタ)アクリレート系、セルロース系、スチレン系の重合体や、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。好ましくは、側鎖に官能基を有するポリ(グリシジル(メタ)アクリレート)やポリ(アリル(メタ)アクリレート)等が挙げられる。
ハードコート層におけるオリゴマー及び/又はポリマーの含有量は、ハードコート層の全質量に対し5〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは25〜70質量%、特に好ましくは35〜65質量%である。
ハードコート層は、防眩性を付与するために、マット粒子を含有していてもよい。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
ハードコート層の形成において、電離放射線硬化性の化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成される場合、架橋反応、又は、重合反応は酸素濃度が2体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。酸素濃度が2体積%以下の雰囲気で形成することにより、物理強度や耐薬品性に優れたハードコート層を形成することができる。
好ましくは酸素濃度が0.5体積%以下の雰囲気で電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成することであり、更に好ましくは酸素濃度が0.1体積%以下、最も好ましくは0.05体積%以下である。
酸素濃度を2体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
ハードコート層は、透明支持体の表面に、ハードコート層形成用の塗布組成物を塗布することで構築することが好ましい。
塗布溶媒としては、ケトン系溶剤であることが好ましい。ケトン系溶剤を用いることで、透明支持体(特に、トリアセチルセルロース支持体)の表面とハードコート層との接着性が更に改良する。
特に好ましい塗布溶媒としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンである。
塗布溶媒は、ケトン系溶媒以外の溶媒を含んでいてもよい。
塗布溶媒には、ケトン系溶媒の含有量が塗布組成物に含まれる全溶媒の10質量%以上であることが好ましい。好ましくは30質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。
本発明において、反射防止膜における高屈折率層の屈折率は、1.60乃至2.40であることが好ましく、1.70乃至2.20であることが更に好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.55乃至1.80であることが好ましい。高屈折率層及び中屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましい。
本発明において、高屈折率層及び中屈折率層には、屈折率の高い無機微粒子をモノマーと開始剤、有機置換されたケイ素化合物中に分散した組成物の硬化物が好ましく用いられる。無機微粒子としては、金属(例、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモン)の酸化物が好ましく、屈折率の観点から、ニ酸化チタンの微粒子が最も好ましい。モノマーと開始剤を用いる場合は、塗布後に電離放射線又は熱による重合反応によりモノマーを硬化させることで、耐傷性や密着性に優れる中屈折率層や高屈折率層が形成できる。無機微粒子の平均粒径は、10〜100nmであることが好ましい。
本発明における二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は、屈折率が1.90〜2.80であることが好ましく、2.10〜2.80であることが更に好ましく、2.20〜2.80であることが最も好ましい。
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の一次粒子の重量平均径は1〜200nmであることが好ましく、より好ましくは1〜150nm、更に好ましくは1〜100nm、特に好ましくは1〜80nmである。
無機微粒子の粒子径は、光散乱法や電子顕微鏡写真により測定できる。無機微粒子の比表面積は、10〜400m2 /gであることが好ましく、20〜200m2 /gであることが更に好ましく、30〜150m2 /gであることが最も好ましい。
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の結晶構造は、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造が主成分であることが好ましく、特にルチル構造が主成分であることが好ましい。
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子に、Co(コバルト)、Al(アルミニウム)及びZr(ジルコニウム)から選ばれる少なくとも1つの元素を含有することで、二酸化チタンが有する光触媒活性を抑えることができ、本発明の高屈折率層及び中屈折率層の耐候性を改良することができる。
特に、好ましい元素はCo(コバルト)である。また、2種類以上を併用することも好ましい。
本発明において高屈折率層及び中屈折率層に用いる二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の分散には、分散剤を用いることができる。
本発明では、二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の分散には、アニオン性基を有する分散剤を用いることが特に好ましい。
アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基(及びスルホ基)、リン酸基(及びホスホノ基)、スルホンアミド基等の酸性プロトンを有する基、又はその塩が有効であり、特にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基及びその塩が好ましく、カルボキシル基及びリン酸基が特に好ましい。1分子当たりの分散剤に含有されるアニオン性基の数は、1個以上含有されていればよい。
無機微粒子の分散性を更に改良する目的でアニオン性基は複数個が含有されていてもよい。平均で2個以上であることが好ましく、より好ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上である。また、分散剤に含有されるアニオン性基は、1分子中に複数種類が含有されていてもよい。
分散剤は、更に架橋又は重合性官能基を含有することが好ましい。架橋又は重合性官能基としては、ラジカル種による付加反応・重合反応が可能なエチレン性不飽和基(たとえば(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基等)、カチオン重合性基(エポキシ基、オキサタニル基、ビニルオキシ基等)、重縮合反応性基(加水分解性シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレン性不飽和基を有する官能基である。
本発明において高屈折率層に用いる二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の分散に用いる好ましい分散剤は、アニオン性基、及び架橋又は重合性官能基を有し、かつ該架橋又は重合性官能基を側鎖に有する分散剤である。
アニオン性基、及び架橋又は重合性官能基を有し、かつ該架橋又は重合性官能基を側鎖に有する分散剤の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが1000以上であることが好ましい。分散剤のより好ましい重量平均分子量(Mw)は2000〜1000000であり、更に好ましくは5000〜200000、特に好ましくは10000〜100000である。
分散剤の無機微粒子に対する使用量は、1〜50質量%の範囲であることが好ましく、5〜30質量%の範囲であることがより好ましく、5〜20質量%であることが最も好ましい。また、分散剤は2種類以上を併用してもよい。
高屈折率層及び中屈折率層に用いる二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は、分散物の状態で高屈折率層及び中屈折率層の形成に使用する。
無機微粒子の分散において、前記の分散剤の存在下で、分散媒体中に分散する。
分散媒体は、沸点が60〜170°Cの液体を用いることが好ましい。分散媒体の例には、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が含まれる。トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びブタノールが好ましい。
特に好ましい分散媒体は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンである。
無機微粒子は、分散機を用いて分散する。分散機の例には、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライター及びコロイドミルが含まれる。サンドグラインダーミル及び高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例には、ボールミル、三本ロールミル、ニーダー及びエクストルーダーが含まれる。
無機微粒子は、分散媒体中でなるべく微細化されていることが好ましく、重量平均径は1〜200nmである。好ましくは5〜150nmであり、更に好ましくは10〜100nm、特に好ましくは10〜80nmである。
無機微粒子を200nm以下に微細化することで透明性を損なわない高屈折率層及び中屈折率層を形成できる。
本発明に用いる高屈折率層及び中屈折率層は、上記のようにして分散媒体中に無機微粒子を分散した分散液に、好ましくは、更にマトリックス形成に必要なバインダー前駆体(たとえば、ハードコート層で述べた、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)、光重合開始剤等を加えて高屈折率層及び中屈折率層形成用の塗布組成物とし、透明支持体上に高屈折率層及び中屈折率層形成用の塗布組成物を塗布して、電離放射線硬化性化合物の架橋反応又は重合反応により硬化させて形成することが好ましい。
更に、高屈折率層及び中屈折率層のバインダーを層の塗布と同時又は塗布後に、分散剤と架橋反応又は重合反応させることが好ましい。
このようにして作製した高屈折率層及び中屈折率層のバインダーは、たとえば、上記の好ましい分散剤と電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーとが、架橋又は重合反応し、バインダーに分散剤のアニオン性基が取りこまれた形となる。更に高屈折率層及び中屈折率層のバインダーは、アニオン性基が無機微粒子の分散状態を維持する機能を有し、架橋又は重合構造がバインダーに皮膜形成能を付与して、無機微粒子を含有する高屈折率層及び中屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性を改良する。
高屈折率層及び中屈折率層には、前記の成分(無機微粒子、重合開始剤、光増感剤など)以外に、樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、導電性の金属微粒子、などを添加することもできる。
高屈折率層は、低屈折率層の直下であるため、低屈折率層と高屈折率層との間の密着性を付与するために、表面粗さと硬化条件を調節する必要がある。
表面粗さ(Ra)は原子間力顕微鏡によって測定することができる。層間密着を向上させるためには、表面粗さは1nm以上にすることが好ましく、2nm以上にすることがより好ましく、3nm以上にすることが最も好ましい。一方、20nm以上にすると、膜のヘイズが上昇したり、低屈折率層と高屈折率層の間に生じた屈折率勾配が無視できなくなったりするため好ましくない。表面粗さは、高屈折率層に添加する無機微粒子の添加量、粒径、膜厚により変化するため、これらを調整する必要がある。
低屈折率層との密着性を向上させるためには、低屈折率層塗布時に高屈折率層表面に未反応の結合性基を残存させておく必要がある。このため、高屈折率層はハーフキュアの状態であることが好ましい。
残存二重結合量は、硬化時の酸素濃度、放射照度、照射量、開始剤の種類、開始剤量に依存する。
硬化を緩めるほど、残存二重結合量を増やすことができるが、硬化を緩めすぎると、低屈折率層形成時に高屈折率層と界面混合を起こし、光学特性が制御できなくなったり、面状が悪くなったりするため好ましくない。
表面の残存二重結合量は、不飽和結合を臭素で修飾しておき、ESCAでピーク強度を測定することにより定量化することができる。下層表面の二重結合残存率は、硬化前の表面二重結合量Aと、硬化後の残存表面二重結合量Bの比で表すことができる。B/Aが0に近づくほど完全硬化に近い。上記観点から、残存率B/Aは0.2〜0.9であることが好ましく、0.3〜0.8であることがより好ましい。
低屈折率層は、含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位及び側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位を必須の構成成分とする共重合体の硬化皮膜によって形成されるのが好ましい。該共重合体由来の成分は皮膜樹脂成分の20質量%以上を占めることが好ましく、40質量%以上を占めることがより好ましく、80質量%以上を占めることが特に好ましい。低屈折率化と皮膜硬度の両立の観点から多官能(メタ)アクリレート等の硬化剤も相溶性を損なわない範囲の添加量で好ましく用いられる。
低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.50であることが好ましく、1.25〜1.48であることがより好ましく、1.30〜1.46であることが特に好ましい。
低屈折率層の厚さは、50〜200nmであることが好ましく、70〜130nmであることが更に好ましい。低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。具体的な低屈折率層の強度は、500g荷重の鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、反射防止フィルムの防汚性能を改良するために、表面の水に対する接触角が90゜以上であることが好ましい。更に好ましくは95゜以上であり、特に好ましくは100゜以上である。
以下に、低屈性率層に用いられる共重合体について説明する。
含フッ素ビニルモノマーとしてはフルオロオレフィン類(たとえばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(たとえばビスコート6FM(商品名、大阪有機化学製)やM−2020(商品名、ダイキン製)等)、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。これらの含フッ素ビニルモノマーの組成比を上げれば屈折率を下げることができるが、皮膜強度は低下する。本発明では共重合体のフッ素含率が20〜60質量%となるように含フッ素ビニルモノマーを導入することが好ましく、より好ましくは25〜55質量%の場合であり、特に好ましくは30〜50質量%の場合である。
共重合体は側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位を必須の構成成分として有するのが好ましい。これらの(メタ)アクリロイル基含有繰返し単位の組成比を高めれば皮膜強度は向上するが屈折率も高くなる。含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位の種類によっても異なるが、一般に(メタ)アクリロイル基含有繰返し単位は5〜90質量%を占めることが好ましく、30〜70質量%を占めることがより好ましく、40〜60質量%を占めることが特に好ましい。
有用な共重合体では上記含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位及び側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位以外に、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜他のビニルモノマーを共重合することもできる。これらのビニルモノマーは目的に応じて複数を組み合わせてもよく、合計で共重合体中の0〜65mol%の範囲で導入されていることが好ましく、0〜40mol%の範囲であることがより好ましく、0〜30mol%の範囲であることが特に好ましい。
併用可能なビニルモノマー単位には特に限定はなく、たとえばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2‐ヒドロキシエチル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等)、スチレン誘導体(スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−メトキシスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、不飽和カルボン酸類(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等)、アクリルアミド類(N,N-ジメチルアクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類(N,N ‐ジメチルメタクリルアミド)、アクリロニトリル等を挙げることができる。
本発明に用いられる共重合体の好ましい形態として下記一般式1のものが挙げられる。
一般式1中、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは2〜4の連結基であり、直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、環構造を有していてもよく、O、N、Sから選ばれるヘテロ原子を有していてもよい。
好ましい例としては、* ‐(CH2)2-O-**, *-(CH2)2-NH-**, *-(CH2)4-O-**, *-(CH2)6-O-**, *-(CH2)2-O-(CH2 )2-O-**, -CONH-(CH2)3-O-**, *-CH2CH(OH)CH2-O-*, *-CH2CH2OCONH(CH2)3-O-** (* はポリマー主鎖側の連結部位を表し、**は(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す。)等が挙げられる。mは0又は1を表わす。
一般式1中、Xは水素原子又はメチル基を表す。硬化反応性の観点から、より好ましくは水素原子である。
一般式1中、Aは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表わし、ヘキサフルオロプロピレンと共重合可能な単量体の構成成分であれば特に制限はなく、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜選択することができ、目的に応じて単一又は複数のビニルモノマーによって構成されていてもよい。
好ましい例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、アリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリレート類、スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン等のスチレン誘導体、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸及びその誘導体等を挙げることができるが、より好ましくはビニルエーテル誘導体、ビニルエステル誘導体であり、特に好ましくはビニルエーテル誘導体である。
x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表わし、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。好ましくは、35≦x≦55、30≦y≦60、0≦z≦20の場合であり、特に好ましくは40≦x≦55、40≦y≦55、0≦z≦10の場合である。
本発明に用いられる共重合体の特に好ましい形態として一般式2が挙げられる。
一般式2においてX、x、yは一般式1と同じ意味を表わし、好ましい範囲も同じである。
nは2≦n≦10の整数を表わし、2≦n≦6であることが好ましく、2≦n≦4であることが特に好ましい。
Bは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を単位を表わし、単一組成であっても複数の組成によって構成されていてもよい。例としては、前記一般式1におけるAの例として説明したものが当てはまる。
z1及びz2はそれぞれの繰返し単位のモル%を表わし、0≦z1≦65、0≦z2≦65を満たす値を表わす。それぞれ0≦z1≦30、0≦z2≦10であることが好ましく、0≦z1≦10、0≦z2≦5であることが特に好ましい。
一般式1又は2で表わされる共重合体は、たとえば、ヘキサフルオロプロピレン成分とヒドロキシアルキルビニルエーテル成分とを含んでなる共重合体に前記のいずれかの手法により(メタ)アクリロイル基を導入することにより合成できる。
本発明に用いられる低屈折率層形成組成物は、通常、液の形態をとり前記共重合体を必須の構成成分とし、必要に応じて各種添加剤及びラジカル重合開始剤を適当な溶剤に溶解して作製される。この際固形分の濃度は、用途に応じて適宜選択されるが一般的には0.01〜60質量%程度であり、好ましくは0.5〜50質量%、特に好ましくは1%〜20質量%程度である。
前記したとおり、低屈折率層の皮膜硬度の観点からは硬化剤等の添加剤を添加することは必ずしも有利ではないが、高屈折率層との界面密着性等の観点から、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、アミノプラスト、多塩基酸又はその無水物等の硬化剤、又はシリカ等の無機微粒子を少量添加することもできる。これらを添加する場合には低屈折率層皮膜の全固形分に対して0〜30質量% の範囲であることが好ましく、0〜20質量% の範囲であることがより好ましく、0〜10質量%の範囲であることが特に好ましい。
また、防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、公知のシリコーン系又はフッ素系の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することもできる。これらの添加剤を添加する場合には低屈折率層全固形分の0〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0〜10質量% の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0〜5質量%の場合である。
ラジカル重合開始剤としては熱の作用によりラジカルを発生するもの、又は光の作用によりラジカルを発生するもののいずれの形態も可能である。
熱の作用によりラジカル重合を開始する化合物としては、有機又は無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2−アゾービスーイソブチロニトリル、2−アゾービスープロピオニトリル、2−アゾ−ビスーシクロヘキサンジニトリル等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等を挙げることができる。
光の作用によりラジカル重合を開始する化合物を使用する場合は、活性エネルギー線の照射によって皮膜の硬化が行われる。
このような光ラジカル重合開始剤の例としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類がある。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン及びp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。これらの光ラジカル重合開始剤と併用して増感色素も好ましく用いることができる。
熱又は光の作用によってラジカル重合を開始する化合物の添加量としては、炭素- 炭素二重結合の重合を開始できる量であればよいが、一般的には低屈折率層形成組成物中の全固形分に対して0.1〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%であり、特に好ましくは2〜5質量%の場合である。
低屈折率層塗布液組成物に含まれる溶剤としては、含フッ素共重合体を含む組成物が沈殿を生じることなく、均一に溶解又は分散されるものであれば特に制限はなく2種類以上の溶剤を併用することもできる。好ましい例としては、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、水などを挙げることができる。
低屈折率層は、含フッ素化合物以外に充填剤(たとえば、無機微粒子や有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤(ジメチルシリコーンなどのシリコーン化合物等)、界面活性剤等を含有することができる。特に、無機微粒子、シランカップリング剤、滑り剤を含有することが好ましい。
無機微粒子としては、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)などが好ましい。特に好ましいには二酸化珪素(シリカ)である。無機微粒子の一次粒子の重量平均径は、1〜150nmであることが好ましく、1〜100nmであることが更に好ましく、1〜80nmであることが最も好ましい。最外層において無機微粒子は、より微細に分散されていることが好ましい。無機微粒子の形状は米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、短繊維状、リング状、又は不定形状であることが好ましい。また、屈折率を下げるためには、中空シリカであることが好ましい。
中空のシリカ微粒子は屈折率が1.17〜1.40が好ましく、更に好ましくは1.17〜1.35、最もに好ましくは1.17〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体として屈折率を表し、中空シリカ粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。この時、粒子内の空腔の半径をa 、粒子外殻の半径をb とすると、下記数式(VIII)で表される空隙率x は
(数式VIII)
x=(4πa3 /3) /(4πb3 /3)×100
= (a/b)3 ×100
好ましくは10〜60% 、更に好ましくは20〜60% 、最も好ましくは30〜60% である。中空のシリカ粒子をより低屈折率に、より空隙率を大きくしようとすると、外殻の厚さが薄くなり、粒子の強度としては弱くなるため、耐擦傷性の観点から1.17未満の低屈折率の粒子は成り立たない。
中空シリカの製造方法は、たとえば特開2001−233611や特開2002−79616に記載されている。
シランカップリング剤としては、前記一般式Aで表される化合物、及び、又は、その誘導体化合物を用いることができる。好ましいのは、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アルコキシシリル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基を含有するシランカップリング剤であり、特に好ましいのはエポキシ基、重合性のアシルオキシ基((メタ)アクリロイル)、重合性のアシルアミノ基(アクリルアミノ、メタクリルアミノ)を含有するシランカップリング剤である。
一般式A
(R10)m−Si(X)4−m
(式中、R10は置換もしくは無置換のアルキル基又は置換もしくは無置換のアリール基を表す。Xは水酸基又は加水分解可能な基を表す。mは1〜3の整数を表す。)
一般式Aで表される化合物で特に好ましいのは、架橋又は重合性官能基として(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、たとえば、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
滑り剤としては、ジメチルシリコーン、及びポリシロキサンセグメントが導入された含フッ素化合物が好ましい。
低屈折率層は、含フッ素化合物、その他所望により含有される任意成分を溶解又は分散させた塗布組成物を塗布と同時、又は塗布後に光照射、電子線ビーム照射や加熱することによる架橋反応、又は、重合反応により形成することが好ましい。
特に、高屈折率層との密着を向上させるためには、低屈折率層と高屈折率層とをきちんと結合させる必要がある。そのため、低屈折率層硬化時の酸素濃度は、0.3%以下であることが好ましく、0.1%以下であることがより好ましく、0.05%以下であることが最も好ましい。また、照射量は250mJ/cm2 以上であることが好ましく、500mJ/cm2 以上であることがより好ましく、750mJ/cm2 以上であることが最も好ましい。
上述したように、より優れた反射防止性能を有する反射防止フィルムを作製するために、高屈折率層の屈折率と透明支持体の屈折率の間の屈折率を有する中屈折率層を設けることが好ましい。
中屈折率層は、本発明の高屈折率層において記載したのと同様に作製することが好ましく、屈折率の調整には皮膜中の無機微粒子の含有率を制御することで可能である。
反射防止フィルムには、以上に述べた以外の層を設けてもよい。たとえば、接着層、シールド層、滑り層や帯電防止層を設けてもよい。シールド層は電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
また、反射防止フィルムを液晶表示装置に適用する場合、視野角特性を改良する目的で、平均粒径が0.1〜10μmの粒子を添加したアンダーコート層を新たに構築するか、ハードコート層中に上記粒子を添加して光散乱性ハードコート層とすることができる。粒子の平均粒径は、好ましくは0.2〜5.0μm、更に好ましくは0.3〜4.0μm、特に好ましくは0.5〜3.5μmである。
粒子の屈折率は1.35〜1.80であることが好ましく、より好ましくは1.40〜1.75、更に好ましくは1.45〜1.75である。粒子の粒径分布は狭いほど好ましい。
また、粒子の屈折率とアンダーコート層又は光拡散性ハードコート層の粒子以外の部分(主として多官能モノマー等の樹脂からなるバインダー成分で、屈折率調節のための無機微粒子を含んでいてもよい)の屈折率との屈折率の差が0.02以上であることが好ましい。より好ましくは、屈折率の差が0.03〜0.5、更に好ましくは屈折率の差が0.05〜0.4、特に好ましくは屈折率の差が0.07〜0.3である。
アンダーコート層に添加する粒子としては、上記屈折率を満たす種々の無機粒子、又は有機粒子を使用することができる。
アンダーコート層は、ハードコート層と透明支持体の間に構築することが好ましい。また、ハードコート層を兼ねることもできる。
アンダーコート層に平均粒径が0.1〜10μmの粒子を添加する場合、アンダーコート層のヘイズは、3〜60%であることが好ましい。より好ましくは、5〜50%であり、更に好ましくは7〜45%、特に好ましくは10〜40%である。
反射防止フィルムの各層は、既述したように、ワイヤーバーコート法、リバースグラビアコート法、順転グラビアコート法やダイコート法等の塗布方式により形成することができる。ウエット塗布量を最小化することで乾燥ムラをなくす観点や、幅方向の膜厚均一性及び塗布経時での長手方向の膜厚均一性の観点で、リバースグラビアコート法やダイコート法が特に好ましい。
本発明の反射防止フィルムの複数の光学薄膜のうちの少なくとも2層を、1回の支持体フィルムの送り出し、各々の該光学薄膜の形成、フィルムの巻取り、の工程にて形成するのが、生産コストの観点で好ましく、反射防止層が3層構成の場合には、3層を1回の工程にて形成するのがより好ましい。このような製造方法は、塗布機の支持体フィルムの送り出しから巻取りまでの間に、塗布ステーションと乾燥、硬化ゾーンのセットを複数個、好ましくは光学薄膜の数と同じ数以上、縦列して設けることによって達成される。
なお、既述の図1に示される光学フィルムの製造ライン10は、これを単純化した構成例である。
本発明の偏光板を作成するにあたり、反射防止フィルムを偏光膜の表面保護フイルム(偏光板用保護フイルム)として用いるために、高屈折率層を有する側とは反対側の透明支持体の表面、すなわち偏光膜と貼り合わせる側の表面を親水化することで、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良することが必須である。
透明支持体としては、トリアセチルセルロースフィルムを用いることが特に好ましい。
偏光板用保護フィルムを作製する手法としては、(1)予め鹸化処理した透明支持体の一方の面に上記の各層(例、高屈折率層、ハードコート層、最外層など)を塗設する手法、(2)透明支持体の一方の面に上記の各層(例、高屈折率層、ハードコート層、低屈折率層、最外層など)を塗設した後、偏光膜と貼り合わせる側を鹸化処理する手法、の2つが考えられるが、(1)はハードコートを塗設するべき面まで親水化されるため、支持体とハードコート層との密着性の確保が困難となるため、(2)の手法が好ましい。
以下、鹸化処理について説明する。
(1)浸漬法
アルカリ液の中に反射防止フィルムを適切な条件で浸漬して、フイルム全表面のアルカリと反応性を有する全ての面を鹸化処理する手法であり、特別な設備を必要としないため、コストの観点で好ましい。アルカリ液は、水酸化ナトリウム水溶液であることが好ましい。好ましい濃度は0.5〜3mol/lであり、特に好ましくは1〜2mol/lである。好ましいアルカリ液の液温は30〜70°C、特に好ましくは40〜60°Cである。
上記の鹸化条件の組合せは比較的穏和な条件同士の組合せであることが好ましいが、反射防止フィルムの素材や構成、目標とする接触角によって設定することができる。
アルカリ液に浸漬した後は、フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
鹸化処理することにより、透明支持体の反射防止層を有する表面と反対の表面が親水化される。偏光板用保護フィルムは、透明支持体の親水化された表面を偏光膜と接着させて使用する。
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする接着層との接着性を改良するのに有効である。
鹸化処理は、高屈折率層を有する側とは反対側の透明支持体の表面の水に対する接触角が低いほど、偏光膜との接着性の観点では好ましいが、一方、浸漬法では同時に高屈折率層を有する表面までアルカリによるダメージを受ける為、必要最小限の反応条件とすることが重要となる。アルカリによる反射防止層の受けるダメージの指標として、反射防止構造層を有する側とは反対側の透明支持体の表面、すなわち反射防止フィルムの貼り合わせ面の、水に対する接触角を用いた場合、特に支持体がトリアセチルセルロースであれば、20度〜50度、好ましくは30度〜50度、より好ましくは40度〜50度を上記接触角とするのが好ましい。50度以上では、偏光膜との接着性に問題が生じる為、好ましくない。一方、20度未満では、反射防止膜の受けるダメージが大きすぎる為、物理強度、耐光性を損ない、好ましくない。
(2)アルカリ液塗布法
上述の浸漬法における反射防止膜へのダメージを回避する手段として、適切な条件でアルカリ液を反射防止膜を有する表面と反対側の表面のみに塗布、加熱、水洗、乾燥するアルカリ液塗布法が好ましく用いられる。なお、この場合の塗布とは、鹸化を行う面に対してのみアルカリ液などを接触させることを意味し、この時、反射防止フィルムの貼り合わせ面の水に対する接触角が、10〜50度となるように鹸化処理を行なうことが好ましい。また、塗布以外にも噴霧、液を含んだベルト等に接触させる、などによって行われることも含む。これらの方法を採ることにより、別途、アルカリ液を塗布する設備、工程が必要となるため、コストの観点では(1)の浸漬法に劣る。一方で、鹸化処理を施す面にのみアルカリ液が接触するため、反対側の面にはアルカリ液に弱い素材を用いた層を有することができる。たとえば、蒸着膜やゾルーゲル膜では、アルカリ液によって、腐食、溶解、剥離など様々な影響が起こるため、浸漬法では設けることが望ましくないが、この塗布法では液と接触しないため問題なく使用することが可能である。
上記(1)、(2)のどちらの鹸化方法においても、ロール状の支持体から巻き出して各層を形成後に行うことができるため、前述の反射防止フィルム製造工程の後に加えて一連の操作で行ってもよい。更に、同様に巻き出した支持体からなる偏光板との張り合わせ工程もあわせて連続で行うことにより、枚葉で同様の操作をするよりもより効率良く偏光板を作成することができる。
好ましい偏光板は、図3に示されるように、偏光膜の保護フイルム(偏光板用保護フイルム)の少なくとも一方に、本発明の反射防止フイルムを有する。図3では、反射防止フィルムの透明支持体(1)がポリビニルアルコールからなる接着剤層(6)を介して偏光膜(7)に接着しており、もう一方の偏光膜の保護フィルム(8)が接着剤層(6)を介して偏光膜(7)の反射防止フィルムが接着している主面と反対側の主面と接着している。もう一方の保護フィルム(8)の偏光膜と接着している主面と反対側の面主面には粘着剤層(9)を有している。
本発明の反射防止フイルムを偏光板用保護フイルムとして用いることにより、物理強度、耐光性に優れた反射防止機能を有する偏光板が作製でき、大幅なコスト削減、表示装置の薄手化が可能となる。
また、本発明の反射防止フイルムを偏光板用保護フイルムの一方に、後述する光学異方性のある光学補償フィルムを偏光膜の保護フィルムのもう一方に用いた偏光板を作製することにより、更に、液晶表示装置の明室でのコントラストを改良し、上下左右の視野角が非常に広げることができる偏光板を作製できる。
光学補償フィルム(位相差フィルム)は、液晶表示画面の視野角特性を改良することができる。
光学補償フィルムとしては、公知のものを用いることができるが、視野角を広げるという点では、特開2001−100042号に記載されているディスコティック構造単位を有する化合物からなる光学異方性を有する層を有し、該ディスコティック化合物と支持体とのなす角度が透明支持体からの距離に伴って変化していることを特徴とする光学補償フィルムが好ましい。
この角度は光学異方性層の支持体面側からの距離の増加とともに増加していることが好ましい。
光学補償フィルムを偏光膜の保護フィルムとして用いる場合、偏光膜と貼り合わせる側の表面が鹸化処理されていることが好ましく、前記の鹸化処理に従って実施することが好ましい。
また、光学異方性層が更にセルロースエステルを含んでいる態様、光学異方性層と透明支持体との間に配向層が形成されている態様、該光学異方性層を有する光学補償フィルムの透明支持体が、光学的に負の一軸性を有し、且つ該透明支持体面の法線方向に光軸を有し、更に下記の条件を満足する態様も好ましい。
20≦{(nx+ny)/2−nz}×d≦400
上記の条件式において、nxは、フイルム面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率、nyは、フイルム面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率、nzは、フイルムの厚さ方向の屈折率であり、またdは光学補償層の厚さを表す。
反射防止フィルムを有する偏光板は、液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)のような画像表示装置に適用することができ。
図3に示されるような本発明の反射防止フィルムを有する偏光板を、液晶表示装置の液晶セルのガラスに直接又は他の層を介して接着して用いる。
反射防止フィルムを用いた偏光板は、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
また、透過型又は半透過型の液晶表示装置に用いる場合には、市販の輝度向上フィルム(偏光選択層を有する偏光分離フィルム、たとえば住友3M(株)製のD−BEFなど)と併せて用いることにより、更に視認性の高い表示装置を得ることができる。
また、λ/4板と組み合わせることで、反射型液晶用の偏光板や、有機ELディスプレイ用表面保護板として表面及び内部からの反射光を低減するのに用いることができる。
次に、図1に示される光学フィルムの製造ラインを使用した光学フィルムの製造方法について説明する。先ず、送り出し機66から、予めポリマー層が形成された、厚さが40〜300μmのウェブ16が送り出される。ウェブ16はガイドローラ68によってガイドされて除塵機74に送りこまれ、これにより、ウェブ16の表面に付着した塵が取り除かれる。そして、グラビア塗布装置100により塗布液がウェブ16に塗布される。
塗布が終了した後には、乾燥ゾーン76、加熱ゾーン78を経て、塗布膜が形成される。更に紫外線照射装置50により塗布膜を照射し、液晶を架橋させることにより、所望のポリマーが形成される。この際、ハウジング52により形成される密閉空間内部の酸素濃度が低くなるように制御するので、塗布膜の硬化条件を最適範囲に制御でき、塗布層の品質、特に耐擦傷性、密着性、 等を向上させることができる。
ハウジング52の酸素濃度としては、2%以下に制御することが好ましく、0.5%以下に制御することがより好ましく、0.05%以下に制御することが更に好ましい。
そして、このポリマーが形成されたウェブ16は巻取り機82により巻き取られる。
本実施形態の構成によれば、2台の紫外線ランプハウス54、54を設け、紫外線ランプハウス54と相対するウェブ16との間のハウジング52内部に窒素ガスを供給するとともに、紫外線ランプハウス54、54同士の間のウェブ16の表面にも窒素ガスを供給する。
このように、ランプハウス54と相対する部分のウェブ16のみならず、これ以外の紫外線ランプハウス54、54同士の間のウェブ16の周囲をも密閉空間内に囲うことにより、塗布膜の硬化条件を最適範囲に制御できる。
以下に、本実施形態の構成と、単に2台の紫外線ランプハウスを設け、紫外線ランプハウスと相対するウェブ16との間のみに窒素ガスを供給する構成(以下、「従来構成」という)との比較を行う。この従来構成は、図9により後述する。
従来構成においては、紫外線ランプハウスの第1灯目で紫外線を照射した後に、すぐに酸素を約20%含む大気に晒される。これにより、反応が進行中(反応が終了していない)樹脂の重合が阻害されると考えられる。また、空気層により、塗布膜(樹脂)のごく表面に酸素が付着され、硬膜時の重合阻害が発生すると考えられる。この塗布膜のごく表面の酸素濃度は、その境界層により不活性ガスでは置換されにくく、ケーシング内の平均酸素濃度より若干高くなっていると考えられる。
これに対し、本実施形態の構成によれば、ランプハウス54と相対する部分のウェブ16のみならず、これ以外の紫外線ランプハウス54、54同士の間のウェブ16の周囲をも密閉空間とし、この密閉空間の酸素濃度が所定値(低く)保たれるので、硬膜時の重合阻害が発生することはない。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図4は、第2実施形態に使用される紫外線照射装置150の構成を示す断面図であり、第1実施形態の図2に対応する。本実施形態が図2に示される第1の実施形態と相違する点は、紫外線照射装置50の台数が3台であること、ウェブ16がバックアップローラ(ローラ部材)58に巻き掛けられて支持されていること、ハウジング152の構成、及び、紫外線照射装置150の前段に塗布膜のプレヒートゾーン154が設けられることである。
プレヒートゾーン154は、紫外線照射による塗布膜の硬化前にウェブ16が40°C以上になるように制御するために設けられた予備加熱手段である。このようにウェブ16の温度を制御することにより、塗布膜の硬化の進行速度を上昇させることができ、また、境界層の酸素の除去が容易になる。
このプレヒートゾーン154は、ウェブ16の表面(上面)側に設けられる薄い枡型のハウジング154Aと、ハウジング154A内に設けられるヒータランプ154Bとより構成される。なお、プレヒートゾーン154の構成は、ウェブ16が40°C以上になるように制御できるものであれば、公知の各種の態様が採用できる。
バックアップローラ58は、周面にウェブ16を巻き掛けて支持するローラ部材であり、図示しない駆動手段により、ウェブ16の搬送速度と同一の周速度に回転駆動されるようになっている。図4の構成においては、ウェブ16は、バックアップローラ58上流側のガイドローラ68によってガイドされてバックアップローラ58に巻き掛けられ、バックアップローラ58の周囲の約330度接した後、バックアップローラ58下流側のガイドローラ68によってガイドされて次工程へ搬送されるようになっている。
バックアップローラ58の直径Dとして、特に制限はないが、図4の構成においては、300〜700mmが採用できる。ただし、1m以上とすることも可能である。
バックアップローラ58には表面温度が30°C以上になるように制御する温度制御手段が内部に設けられている。このようにバックアップローラ58の表面温度を制御することにより、塗布膜の硬化の進行速度を上昇させることができ、また、境界層の酸素の除去が容易になる。
温度制御手段の具体的構成としては、バックアップローラ58の内部に温度制御された流体(水、オイル等)を循環させる形式が一般的に採用できる。また、バックアップローラ58誘電加熱ローラとする構成も採用できる。
ハウジング152は、断面が略上向きコ字状の覆いであり、バックアップローラ58の外周部を覆って、内部に密閉空間を形成するためのものである。また、ハウジング152の上向きコ字状の両上端部より、それぞれ内側に、水平な張り出し部152A、152Bが延設されており、これにより内部の密閉性が良好になっている。すなわち、この張り出し部152A、152Bとバックアップローラ58の表面との間には、ウェブ16の幅方向(紙面に垂直方向)に細長いスリット152C及び152Dがそれぞれ形成されている。
ハウジング152の周囲3面には、ランプハウス54、54、54が相対配置されており、バックアップローラ58に巻き掛けられたウェブ16表面の塗布膜に紫外線を照射できるようになっている。このため、ハウジング152において、紫外線ランプハウス54に相対する部分は、紫外線の透過率の高い透明板152Eで形成されており、紫外線ランプハウス54から照射される紫外線がウェブ16上の塗布膜に効率的に照射できるようになっている。透明板152Eとしては、たとえば石英ガラスが好ましく採用できる。
このように、ハウジング152と紫外線ランプハウス54とが別体で構成されているので、紫外線ランプハウス54の影響(たとえば、熱変形)がハウジング152に及びにくくなっている。
ハウジング152内部の4隅には、ノズル56、56…が配されている。このノズル56は、ハウジング152内部の密閉空間内に窒素ガスを供給する手段であり、図示しないガス配管より供給される窒素ガスを図の矢印の方向に噴出できるように配されている。
また、ハウジング152の内部には、図示しない酸素濃度計のプローブが配されている。このような構成とすることにより、ハウジング152内を密閉空間とでき、窒素ガス等の不活性ガスの供給により、酸素濃度を所望の値に制御できる。
次に、図4に示される紫外線照射装置150を使用した光学フィルムの製造方法について説明する。ただし、図1に示される送り出し機66から加熱ゾーン78までの工程は、第1実施形態と同一であることより、説明を省略する。
図4に示される紫外線照射装置150により紫外線を塗布膜に照射し、液晶を架橋させることにより、所望のポリマーが形成する。この際に、ハウジング152により形成される密閉空間内部の酸素濃度が低くなるように、ハウジング152の4隅のノズル56、56…よりハウジング152内部に窒素ガスが噴出される。噴出された窒素ガスは、スリット152C及び152Dより外部に流出する。
このように、ハウジング152内部の酸素濃度を所望の値の制御するので、塗布膜の硬化条件を最適範囲に制御でき、塗布層の品質、特に耐擦傷性、密着性、 等を向上させることができる。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図5は、第3実施形態に使用される紫外線照射装置160の構成を示す断面図であり、第1実施形態の図2及び第2実施形態の図4に対応する。なお、図5において、(A)は、紫外線照射装置160の全体図であり、(B)は、(A)の円B内の拡大図である。また、図1、図2及び図4と同一、類似の部材については、同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施形態が図4に示される第2の実施形態と相違する点は、紫外線照射装置50の台数が2台であること、ウェブ16のバックアップローラ58への巻き掛け角が約180度であること、ハウジング162の構成、及び、紫外線照射装置160の前段に塗布膜のプレヒートゾーン設けられていないことである。
ハウジング162は、断面が略半円状の覆いであり、バックアップローラ58の外周部を覆って、内部に密閉空間を形成するためのものである。また、ハウジング162の両上端部より、それぞれ内側に、水平な張り出し部162A、162Bが延設されており、これにより内部の密閉性が良好になっている。すなわち、この張り出し部162A、162Bとバックアップローラ58の表面との間には、ウェブ16の幅方向(紙面に垂直方向)に細長いスリット162C及び162Dがそれぞれ形成されている。
ハウジング162の周囲には、ランプハウス54、54が相対配置されており、バックアップローラ58に巻き掛けられたウェブ16表面の塗布膜に紫外線を照射できるようになっている。このため、ハウジング162において、紫外線ランプハウス54に相対する部分は、紫外線の透過率の高い透明板162Eで形成されており、紫外線ランプハウス54から照射される紫外線がウェブ16上の塗布膜に効率的に照射できるようになっている。透明板162Eとしては、たとえば石英ガラスが好ましく採用できる。
ハウジング162内部の3箇所には、ノズル56、56、56が配されている。このノズル56は、ハウジング162内部の密閉空間内に窒素ガスを供給する手段であり、図示しないガス配管より供給される窒素ガスを図の矢印の方向に噴出できるように配されている。
このうち、中央のノズル56の窒素ガス噴出方向は、ウェブ16の進行方向に対して0〜90度の角度をなすように配されている。図5においては、この角度は30度(図示の60度の補角)となっている。
また、ハウジング162の内部には、図示しない酸素濃度計のプローブが配されている。このような構成とすることにより、ハウジング162内を密閉空間とでき、窒素ガス等の不活性ガスの供給により、酸素濃度を所望の値に制御できる。
更に、ハウジング162の入り口側(スリット162C)の上流には、張り出し部162Aと平行に所定間隔をもって3枚の遮風板164、164、164が設けられている。この遮風板164は、ウェブ16の幅方向(紙面に垂直方向)に細長い板状部材であり、スリット162Cに近接する遮風板164と張り出し部162Aとの距離は、10mm以内にすることが好ましい。また、遮風板164はウェブ16に対向して配置し、ウェブ16との間隔は、5mm以内にすることが好ましい。
このように、遮風板164を設けることにより、大気(空気)の密閉空間への流入を一層防止でき、酸素濃度を所望の値に制御することが容易となる。また、不活性ガスの使用量を抑えるのに好適である。
次に、図5に示される紫外線照射装置160を使用した光学フィルムの製造方法について説明する。ただし、図1に示される送り出し機66から加熱ゾーン78までの工程は、第1実施形態と同一であることより、説明を省略する。
図5に示される紫外線照射装置160により紫外線を塗布膜に照射し、液晶を架橋させることにより、所望のポリマーが形成する。この際に、ハウジング162により形成される密閉空間内部の酸素濃度が低くなるように、ハウジング162のノズル56、56…よりハウジング162内部に窒素ガスが噴出される。噴出された窒素ガスは、スリット162C及び162Dより外部に流出する。
特に、中央のノズル56よりの下流側に向けた窒素ガス噴出、及び、遮風板164の構成により、ハウジング162内部の酸素濃度を所望の値の制御するので、塗布膜の硬化条件を最適範囲に制御でき、塗布層の品質、特に耐擦傷性、密着性、 等を向上させることができる。
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図6は、第4実施形態に使用される紫外線照射装置170の構成を示す断面図であり、第1実施形態の図2、第2実施形態の図4、及び第3実施形態の図5に対応する。なお、図1、図2、図4及び図5と同一、類似の部材については、同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施形態が図5に示される第3の実施形態と相違する点は、主にハウジング172の構成である。このハウジング172は、図5に示される第3の実施形態のハウジング162を2台連結した構成となっている。そして、各台に配されるバックアップローラ58に相対するようにそれぞれ2台のランプハウス54が(合計4台)配されている。
このハウジング172は、断面が略上向きΣ字形状をなし、2個のバックアップローラ58を囲むように形成されているハウジング本体174と、ガイドローラ68、68の間に形成される搬送路をハウジング本体174の反対側より覆うカバー176より構成される。
その他の詳細な構成は、図5に示される第3の実施形態の紫外線照射装置160と大差がないことより、その詳細な説明を省略する。また、図5に示される紫外線照射装置170を使用した光学フィルムの製造方法についても紫外線照射装置160と大差がないことより、その詳細な説明を省略する。
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。図7は、第5実施形態に使用される紫外線照射装置180の構成を示す断面図であり、第1実施形態の図2、第2実施形態の図4、第3実施形態の図5、及び第4実施形態の図6に対応する。なお、図1、図2、図4、図5、及び図6と同一、類似の部材については、同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施形態が図4に示される第2の実施形態と相違する点は、紫外線照射装置50の台数が4台であること、ハウジング182の構成、ノズル56の配置、及び、紫外線照射装置150の前段に塗布膜のプレヒートゾーン154が設けられていないことである。
ハウジング182は、バックアップローラ58に倣った形状で、バックアップローラ58との間に密閉空間を形成する覆いである。すなわち、ハウジング182は断面が一部切り欠いた円状であり、バックアップローラ58の周囲約270度を覆う。
ハウジング182内部におけるノズル56の位置は、最上流側、すなわち、張り出し部182Aの背面であり、図7の矢印の方向に窒素ガスを噴出できるように配されている。したがって、この構成により、上流側より下流側へ向った一貫した窒素ガスの流れを形成できる。そして、窒素ガスはスリット182Dより外部に排出される。
その他の詳細な構成は、図4に示される第2の実施形態の紫外線照射装置150や、図6に示される第4の実施形態の紫外線照射装置170と大差がないことより、その詳細な説明を省略する。また、図7に示される紫外線照射装置180を使用した光学フィルムの製造方法についても他の紫外線照射装置150、160、170と大差がないことより、その詳細な説明を省略する。
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。図8は、第6実施形態に使用される紫外線照射装置190の構成を示す断面図であり、第1実施形態の図2、第2実施形態の図4、第3実施形態の図5、第4実施形態の図6、及び第5実施形態の図7に対応する。なお、図1、図2、図4、図5、図6、及び図7と同一、類似の部材については、同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施形態が図5に示される第3の実施形態と相違する点は、ノズル56の配置、及び、遮風板164、164、164に代えて前室194が設けられていることである。このように、ハウジング192の入り口側(スリット192C)の上流に前室194を設けられ、前室194の内部にノズル56が設けられており、この前室194の内部のノズル56よりスリット192Cに向けて窒素ガスを噴出できるように配されている。
また、ハウジング192内部のノズル56の配置は、図7に示される第5実施形態と同一であり、上流側より下流側へ向った一貫した窒素ガスの流れを形成でき、窒素ガスがスリット192Dより外部に排出されるようになっている。
前室194内のノズル56より窒素ガスを供給することが好ましい。このような構成の前室194より噴出される窒素ガスにより、酸素濃度を所望の値に制御することが容易となる。また、窒素ガスの使用量を抑えるのに好適である。
更に、図2に示される第1実施形態と同様に、透明板192Eの上面とウェブ16上の塗布膜との距離Gは、50mm以下となっている。このような構成とすることにより、ケース内の酸素を迅速に置換することができ、酸素濃度を所望の値に制御することが容易となる。また、窒素ガスの使用量を抑えるのに好適である。
その他の詳細な構成は、各図に示される各実施形態の紫外線照射装置と大差がないことより、その詳細な説明を省略する。また、図8に示される紫外線照射装置190を使用した光学フィルムの製造方法についても他の紫外線照射装置150、160、170、180と大差がないことより、その詳細な説明を省略する。
以上、本発明に係る塗布膜の硬化方法、装置及び光学フィルムの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
たとえば、本発明の各実施形態において、主にコスト面の理由より、不活性ガスとして窒素ガスが使用されているが、他の不活性ガス(二酸化炭素や希ガス)を使用してもよい。
また、本発明の各実施形態において、主に光学フィルムの製造について述べられているが、本発明は、これに限られず、硬度を要求される活性線硬化樹脂を持ちいる全てのものに適用可能である。
10…光学フィルムの製造ライン、12…グラビアローラ、14…液受けパン、15…ドクターブレード、16…ウェブ、17、18…ガイドローラ、50…紫外線照射装置、52…ハウジング、54…紫外線ランプハウス、56…ノズル、66…送り出し機、68…ガイドローラ、76…乾燥ゾーン、78…加熱ゾーン、82…巻取り機