JP4546056B2 - 顕微鏡 - Google Patents
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例えば、特許文献1には、試料(標本)上に照明光を照射し、その透過光の光路上にレンズ、分光素子である直視プリズム、および光検出器を光検出器の入射開口と試料とが共役となるように配置するとともに、試料を光軸と直交する方向に走査可能とした分光型走査顕微鏡が記載されている。
また、例えば、特許文献2には、標本上を走査可能なレーザ光源を照明手段とし、標本からの光を集光する位置に共焦点絞りを設け、その後段に分光素子であるグレーティングを設け、分光された光の波長に応じた所定位置にスリットを配置して特定波長の光を検出する光検出器を設けた走査型光学顕微鏡が記載されている。
特許文献1に記載の技術では、標本と光検出器の入射開口が共役の位置関係にあるので、標本上の1点もしくは微小領域からの光が直視プリズムにより分光され、光検出器に入射する。そのため受光強度が小さくなり、それがさらに分光されるので、S/N比が大きくとれないという問題がある。特に、標本からの光が、もともと光強度が小さい蛍光観察などを行う場合には、きわめて微弱な受光強度となっていた。
一方、標本を劣化させないためには照明光強度には限界があるから、光検出器の受光量をより大きくしようとすれば、分光素子の入射開口を大きくする必要がある。その場合、波長分解能が低下してしまうので、精密な計測ができないという問題がある。
また標本上の全面の分光情報を取得するには、標本を走査しなければならないので、測定に時間がかかるという問題がある。
また特許文献2に記載の走査型顕微鏡は共焦点顕微鏡であるから、特許文献1と同様、標本上の1点もしくは微小領域の光を分光し、共役な位置にある光検出器に導くものであり、受光量が小さく、標本上を走査する必要がある点では特許文献1と同様の問題がある。
この発明によれば、結像光学系により、対物レンズの瞳、すなわち対物レンズの後側焦点面と分光光学系の入射開口とを共役とするので、標本での反射光および標本から発せられた蛍光のうち光軸に平行なものがすべて分光光学系の入射開口に到達する。したがって、標本からの光を、対物レンズの有効径範囲内で分光光学系にまとめて取り込むことができる。
この発明によれば、照明範囲を可変することにより、標本や光学系を走査することなく、照明された標本上の領域の光を分光光学系の入射開口に到達させて、分光情報を取得することができる。
系が前記対物レンズの瞳を縮小投影する光学系である。
この発明によれば、対物レンズの瞳が縮小投影されるので、対物レンズの瞳を通過する
光を効率よく集光することができるとともに、分光光学系の入射開口による光量損失を防
止することができるので、光利用効率の高い分光観察を行うことができる。
請求項4に記載の発明では、請求項1から3のいずれか1項に記載の顕微鏡において、前記照明光学系が標本上の照明範囲を可変できるよう開口の大きさを可変できる視野絞りを備えることを特徴とする。
請求項5に記載の発明では、請求項1から3のいずれか1項に記載の顕微鏡において、前記照明光学系が標本上の照明範囲を可変できるよう光軸に対して開口中心を偏心させて配置ができる視野絞りを備えることを特徴とする。
請求項6に記載の発明では、請求項1から5のいずれかに記載の顕微鏡において、前記入射開口がスリット状であり、前記結像光学系に前記入射開口に入射する光束がスリットに平行な扁平状となるよう光学素子を備えたことを特徴とする。
図1は、本発明の実施形態に係る顕微鏡の概略構成について説明するための構成ブロック図である。図2(a)、(b)は、それぞれ本発明の実施形態に係る顕微鏡に用いることができる分光光学系の構成例を説明するための概略説明図である。
なおこれらは概略図であり、例えば複数のレンズやレンズ群であっても、便宜上、図示では一つの部材として表している。
照明光学系5は、例えば水銀ランプなどの光源2と、視野調整を行うための視野絞り3と、視野絞り3を透過した光を対物レンズ6を通して、標本の配置された物体面8上に照明するレンズ4とを備える。レンズ4による照明法は、例えばケーラー照明など周知の照明法を採用することができる。ハーフミラー9は、集光レンズ4から出射された光束を対物レンズ6の光軸上に導くためのものである。
なお図示しないが、照明光学系5は、顕微鏡1の観察用途の必要に応じて、例えばフィルタ素子や偏光板素子など、適宜の光学素子を備えているものである。
さらに、物体面8に配置された標本上の照明範囲を可変できるように、光軸に対して開口中心を偏心させて配置することができる構成とされている。また、視野絞り3の開口形状も、円形以外の適宜形状に可変できるようにしておいてもよい。
接眼レンズ15は、対物レンズ6により形成された標本の像を拡大するためのものである。図1において、符号50は瞳を示す。
分光器14の光学系は、分光観察の目的に応じて周知の種々の分光光学系を採用することができる。ここで、それらの例について簡単に説明する。
図2(a)に示したのは、分光器14が、いわゆるツェルニー・ターナー(Czerny-Turner)型分光器からなる例である。
本例では、光路に沿って、入射開口14a、凹面鏡16、回折格子17、凹面鏡18およびラインセンサ19が配置されている。
入射開口14aを透過した発散光は、凹面鏡16で集光されて略平行光とされ、回折格子17により、入射光の波長に応じた方向に回折される。そして、凹面鏡18によりそれらの光束を結像する。結像面には、各波長光の結像位置における光強度を検出するためのラインセンサ19を配置し、分光強度分布を測定できるようにする。
本例では、検出波長帯の回折効率を落とさない程度に、回折格子17の格子本数を増やしておくことが好ましい。そうすれば分散が大きくなるので、入射開口14aのスリット幅が広くても結像面上の分光成分が混ざりにくくなり、効率よく分光できるという利点がある。
本例では、光路に沿って、入射開口14a、レンズ20、プリズム21、レンズ22およびラインセンサ19が配置されている。
入射開口14aを透過した発散光は、レンズ20で集光されて略平行光とされ、プリズム21により、入射光の波長に応じた方向に屈折される。そして、レンズ22それらの光束を結像する。結像面には、ラインセンサ19が配置される。
なお、以上の2例では、分光分布測定手段として、ラインセンサ19を用いた例で説明したが、エリアセンサでもよいし、光検出器上をスリットがスキャンするセンサなどを用いてもよい。
照明光学系5により、物体面8上の標本が照明される。その際、視野絞り3を光軸中心の略円形開口とすることにより、対物レンズ6の開口数に応じた範囲内で、標本を全体的に照明することができる。そして、光軸に略平行に射出する標本からの反射光もしくは蛍光が対物レンズ6により、対物レンズの瞳面7の中心付近に集光する。
対物レンズの瞳面7の中心付近を透過した光束は発散しつつハーフミラー9を透過し、結像レンズ10により集光され、ハーフミラー13で一部が光軸外に反射される。そして、レンズ11により入射開口14aの位置に集光する。
ここで、対物レンズの瞳面7と入射開口14aとが共役とされているので、標本の照明範囲の全体にわたる情報が入射開口14aに集光する。また、結像光学系12の倍率は、対物レンズの瞳面7を縮小投影する光学系とされているので、縮小倍率を適宜の値とすることにより、瞳径の範囲の像を入射開口14aの開口幅よりも小さな径に縮小することができる。それにより、対物レンズの瞳全体が入射開口14aに光量損失なく入射される。
入射開口14aに入射した光束は、分光器14により分光分布が計測され、標本の分光情報が取得できる。
また、視野絞り3を縮径したり、開口形状を可変したりして、照明範囲を狭めることができ、さらに光軸中心に対して偏心させることにより、標本上の照明範囲の大きさ、位置を可変することができる。例えば、図1における領域Wの範囲に照明範囲を制限することができ、図示したような光路をたどって、標本上の領域Wの反射光のみが入射開口14aに到達する。このようにすれば、標本上の所望の領域の分光情報を取得することができるという利点がある。
例えば、蛍光観察時において、標本の特定領域に蛍光波長が近接する蛍光タンパク質が分布していて肉眼観察では正確な識別ができない場合などに、その特定領域を照明し、精密な分光分布を計測するといったことが可能となる。その際、ノイズとなる他の領域の波長光をあらかじめ排除することができるから、ダイナミックレンジの大きな測定を行うことが可能となるという利点がある。
また、入射開口14aはスリット状とされるので、分光分解能を確保しつつ光利用効率を向上するには、入射開口14aに入射する光束がスリットに平行な偏平状とすることが好ましい。そのために、結像光学系12において、例えばシリンドリカルレンズなどの光学素子を備えるようにしてもよい。
図3は、本発明の実施形態の第1変形例の顕微鏡の概略構成について説明するための構成ブロック図である。図4は、本発明の実施形態の第2変形例の顕微鏡の概略構成について説明するための構成ブロック図である。
照明光学系24は、レーザ25(光源)、スキャナ26、およびレンズ27、28からなる。
レーザ25は、マルチフォトン励起を行うための光源である。
スキャナ26は、レーザ25のスポットを標本上で走査するための機構で、例えばガルバノミラーなどの光走査素子により構成される。
レンズ27、28は、レーザ25から出射された光束を物体面8上で微小スポット径に結像するとともに、適宜速度で走査するための走査光学系である。
しかしながら、1フォトン励起では光束の透過域内で多数の光励起が発生するのに対して、nフォトン励起では特定の蛍光分子にn個のフォトンが同時に(極めて短い時間に)吸収される確率がきわめて小さいため、実質的にはエネルギー密度の高い焦点位置のみで光励起が発生する。したがって1フォトン励起に比べて光量が小さく、分光観察する際にS/N比が小さくなってしまうという問題があった。
照明光学系29は、カバーガラス8a上に配置された標本8bにカバーガラス8aの側から全反射する照明光を照射し、標本8b側にしみ出すエバネッセント光によりカバーガラス8a面の近傍の標本8bを照明するものである。このような照明光学系は、透過型、落射型のいずれの顕微鏡でも設けることができるが、図4では落射型の構成を示した。
照明光学系29の構成は、周知のエバネッセント照明光学系と同様であり、レーザ25(光源)、レンズ30、視野絞り31、レンズ32および油浸対物レンズ33からなる。
視野絞り31を透過した光束は、レンズ32により集光され、ハーフミラー9で反射されて、油浸対物レンズ33に偏心して入射する。ここで、レンズ30、32により、レーザ25の発光点と油浸対物レンズ33の後側焦点面である対物レンズの瞳面7とが共役とされた光学系が構成される。
油浸対物レンズ33は、対物レンズの瞳面7から拡散しながら偏心して入射した光束を平行光束としつつ、光軸中心に斜行させ、カバーガラス8aの内面側で全反射させる光学素子である。符号33aはオイルである。
エバネッセント照明は全反射面から数百nm程度の範囲にしみ出すエバネッセント光を用いるので、標本8bからの光はきわめて微弱な光である。そのため、例えば標本の一点もしくは微小領域部分の光量を分光器に導く場合には一層微弱な光となるが、本変形例では、標本全体からの光を分光器14に入射させることができるので、S/N比の高い分光計測を行うことができるという利点がある。
このように構成すれば、従来の分光観察の機能を併せ持つ顕微鏡とすることができるという利点がある。
2 光源
3 視野絞り
5、24、29 照明光学系
6 対物レンズ
7 対物レンズの瞳面
8 物体面
8b 標本
12 結像光学系
14 分光器(分光光学系)
14a 入射開口
15 接眼レンズ
17 回折格子
19 ラインセンサ
21 プリズム
25 レーザ(光源)
26 スキャナ
33 油浸対物レンズ(対物レンズ)
Claims (6)
- 光源と、該光源から出射される光により標本を照明する照明光学系と、前記照明された標本からの光を結像する対物レンズと、前記標本からの光を分光する分光光学系とを備えた顕微鏡であって、
前記分光光学系の入射開口と前記対物レンズの瞳とを共役とする結像光学系を備えることを特徴とする顕微鏡。 - 前記照明光学系が標本上の照明範囲を可変できるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡。
- 前記結像光学系が前記対物レンズの瞳を縮小投影する光学系であることを特徴とする請求項1または2に記載の顕微鏡。
- 前記照明光学系が標本上の照明範囲を可変できるよう開口の大きさを可変できる視野絞りを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の顕微鏡。
- 前記照明光学系が標本上の照明範囲を可変できるよう光軸に対して開口中心を偏心させて配置ができる視野絞りを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の顕微鏡。
- 前記入射開口がスリット状であり、前記結像光学系に前記入射開口に入射する光束がスリットに平行な扁平状となるよう光学素子を備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の顕微鏡。
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