JP4544120B2 - エンジンの過給装置 - Google Patents

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Description

本発明は、遠心式過給機をバイパスするバイパス吸気通路と、バイパス吸気通路を開閉制御する吸気制御弁(バイパスバルブ)とを有し、エンジンの運転状態が所定の過給領域にあるときに吸気制御弁を閉じるとともに遠心式過給機を作動させて過給を行うようなっているエンジンの過給装置に関するものである。
排気ターボ式、機械式、あるいは電動式の遠心式過給機を設けて吸気の充填効率を高めるようにした過給機付きエンジンは従来知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、一般に遠心式過給機では、空気流量が少なく、かつ圧力比が高いサージング領域(低回転・高負荷領域の一部)では過給機にサージングが発生し、かかるサージングは過給効率を低下させるとともに過給機(とくにインペラ)の材料を疲労させる。そこで、エンジンの運転状態がサージング領域に近づいたときに、加圧された吸気の一部を、例えば過給機より上流の吸気系、あるいは排気系に逃がすことによりサージングを回避ないしは抑制するようにしたエンジンが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2004−346910号公報(段落[0012]、図1) 特開2004−251240号公報(段落[0020]、図2)
そして、例えば特許文献2に記載されている従来の過給機付きエンジンでは、吸気流量と、過給機下流の吸気圧ひいては圧力比とに基づいてサージングが発生するか否かを予測し、サージングが発生すると予測されるときには、加圧された吸気の一部を逃がすようにしている。しかしながら、サージングが発生する条件は、吸気流量と圧力比とによって一義的に決まるわけではない。このため、従来のこの種のエンジンでは、サージングを確実かつ迅速に回避ないしは抑制することは困難であるといった問題がある。また、不必要に吸気を逃がして過給性能を低下させ、燃費性能の低下を招くといった問題もある。
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、過給性能ひいては燃費性能を低下させることなく、遠心式過給機のサージングを確実かつ迅速に回避、解消ないしは抑制することができるエンジンの過給装置を提供することを解決すべき課題とする。
上記課題を解決するためになされた本発明に係るエンジンの過給装置(以下、略して「過給装置」という。)は、遠心式過給機が配設された過給吸気通路(共通吸気通路)と、遠心式過給機をバイパスするバイパス吸気通路と、バイパス吸気通路を開閉制御する吸気制御弁(バイパスバルブ)とを有し、エンジンの運転状態が所定の過給領域にあるときに、吸気制御弁を閉じるとともに遠心式過給機を作動させて過給を行うようなっている。そして、この過給装置は、遠心式過給機のサージングを検出するサージング検出手段と、過給時にサージング検出手段によってサージングが検出されたときに吸気制御弁を開弁方向に制御する(動作させる)一方、サージングが検出されなくなったときに吸気制御弁を閉弁方向に制御する(動作させる)吸気制御弁制御手段とを備えている。吸気制御弁制御手段は、吸気制御弁を閉弁方向に制御するときの弁開度変化速度(閉弁速度)が開弁方向に制御するときの弁開度変化速度(開弁速度)よりも小さくなるよう、吸気制御弁を制御する。
ここで、遠心式過給機としては、例えばモータによって駆動される遠心式電動過給機などを用いることができる。この場合、サージング検出手段が、モータの回転数の振動に基づいて遠心式過給機のサージングを検出するようになっているのが好ましい。
本発明に係る過給装置においては、吸気制御弁制御手段が、エンジン回転数の変化率(変化量)が大きいときほど、吸気制御弁を閉弁方向に制御するときの弁開度変化速度(閉弁速度)が大きくなるよう、吸気制御弁を制御するようになっているのが好ましい。
また、本発明に係る過給装置においては、サージング検出手段が、遠心式過給機より下流側の吸気系統に配設された吸気圧力センサの検出値の振動周波数に基づいて遠心式過給機のサージングを検出するようになっているのが好ましい。この場合、サージング検出手段が、吸気圧力センサの検出値の振動周波数がサージングに対応(関連)するサージング関連周波数であるときに、遠心式過給機のサージングを検出するようになっているのが、より好ましい。
本発明に係る過給装置においては、過給時に遠心式過給機のサージングが検出されたときには、吸気制御弁が比較的大きい開弁速度で開弁されるので、サージングを迅速かつ確実に解消する(消滅させる)ことができる。他方、サージングが検出されなくなったときには、吸気制御弁が比較的小さい閉弁速度で閉弁されるので、吸気制御弁の開度を、サージングの回避と過給性能の維持とが両立する最適な開度に可及的に長くとどまらせることができる。したがって、サージングを回避しつつ過給性能ひいては燃費性を高く維持することができる。なお、遠心式過給機として遠心式電動過給機を用いる場合は、遠心式電動過給機の消費電力を低減することができ、ひいては燃費性能の低下を防止ないしは抑制することができる。
一般に、この種の過給機付きのエンジンでは、エンジン回転数の変化が大きいときほど、エンジンに吸入される単位時間当たりの吸入空気量が増加するので、サージングが発生しにくくなり、またサージングが解消されやすくなる。したがって、本発明に係る過給装置において、エンジン回転数の変化率が大きいときほど吸気制御弁の閉弁速度を大きくする場合は、サージングのこのような特性に応じて適切に吸気制御弁を閉弁制御することができ、サージングの解消ないしは抑制と過給性能ないしは燃費性能の向上とを、より有効に両立させることができる。
本発明に係る過給装置において、吸気圧力センサの検出値の振動周波数に基づいてサージングを検出するようになっている場合、あるいは吸気圧力センサの検出値の振動周波数が関連周波数であるときに遠心式過給機のサージングを検出するようになっている場合は、サージング以外の原因による振動、例えばアクセルペダル操作に伴って生じる振動とサージングに起因する振動とを識別ないしは区別することができる。したがって、サージング以外の原因による振動を、サージングに起因する振動と誤認するのを防止することができる。
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(本発明を実施するための最良の形態)を具体的に説明する。
図1に示すように、本発明に係るエンジン1には、第1〜第4気筒#1〜#4に燃料燃焼用の空気(以下「吸入空気」という。)を供給する吸気装置2が設けられている。吸気装置2には、先端が大気に開口する共通吸気通路3(過給吸気通路)が設けられ、この共通吸気通路3には、吸入空気の流れ方向にみて上流側から順に、吸入空気中のダストを除去するエアクリーナ4と、吸入空気の流量を検出するエアフローセンサ6と、遠心式電動過給機5(以下、略して「電動過給機」という。)と、共通吸気通路3の通路断面(ないしは吸入空気)を絞るスロットル弁7とが設けられている。なお、エアフローセンサ6は、順流方向及び逆流方向に吸入空気の流量を検出することができるようになっているのが好ましい。
そして、共通吸気通路3の下流端は、吸入空気の脈動を打ち消して吸入空気の流れを安定させるサージタンク8に接続されている。サージタンク8には、それぞれ互いに独立して、サージタンク8内の空気を第1〜第4気筒#1〜#4に供給する4つの独立吸気通路9が接続されている。
さらに、吸気装置2には、電動過給機6をバイパスして、共通吸気通路3の電動過給機6より上流側の部分と下流側の部分とを連通させるバイパス吸気通路10と、該バイパス吸気通路10を開閉するバイパスバルブ11(吸気制御弁)とが設けられている。バイパスバルブ11は、バイパスバルブアクチュエータ12によって駆動ないし制御され、バイパス通路10を閉止又は開放し、あるいはバイパス通路10の流路断面ひいては吸入空気の流量を制御するようになっている。
電動過給機6は、共通吸気通路3内において上流側から吸入空気を吸入して加圧し下流側に吐出するコンプレッサ6aと、該コンプレッサ6aを回転駆動するモータ6bとを有している。そして、モータ6bによってコンプレッサ6aが回転駆動されているときには、スロットル弁開度が同一であれば、自然吸気の場合に比べて第1〜第4気筒#1〜#4に供給される吸入空気の圧力が高くなり、吸気充填効率が高められてエンジン1の出力トルクが増加する。
また、エンジン1には、クランク軸(図示せず)によって回転駆動されるオルタネータ13(発電機)が設けられ、このオルタネータ13によって生成された電力はバッテリ14に蓄えられるようになっている。そして、バッテリ14に蓄えられている電力は、該エンジン1を搭載している車両の各種電気製品に供給されるほか、ブーストドライバ15を介してモータ6bに供給される。なお、ブーストドライバ15は、コントロールユニット20からの制御信号に従って、モータ6bの回転数ひいては過給の度合いないしは強度を制御する。
スロットル弁7は、アクセルペダル17の踏み込み量に応じて、スロットル弁アクチュエータ16によって開閉制御され、共通吸気通路3の通路断面を絞って、第1〜第4気筒#1〜#4に供給される吸入空気の量ひいてはエンジン1の出力を制御するようになっている。なお、このエンジン1では、アクセルセンサ18によってアクセルペダル17の踏み込み量(以下「アクセル踏み込み量」という。)が検出され、このアクセル踏み込み量はコントロールユニット20に入力される。そして、コントロールユニット20は、アクセル踏み込み量に応じてスロットル弁開度を設定し、スロットル弁アクチュエータ16を駆動してスロットル弁開度をこの設定値に一致させるようになっている。
第1〜第4気筒#1〜#4では、それぞれ、吸入空気と燃料(例えば、ガソリン)の混合物である混合気が、点火プラグ19によって点火され、混合気の燃焼によって生じる熱エネルギが、図示していないピストン、コネクチングロッド、クランクピン、クランクアーム等により機械エネルギに変換され、クランク軸を回転させるようになっている。なお、点火プラグ19の点火時期(進角量)は、コントロールユニット20によって制御される。
コントロールユニット20は、コンピュータ及びメモリ等を備えたエンジン1の総合的ないしは全体的な制御装置であって、前記の「サージング検出手段」及び「吸気制御弁制御手段」を兼ねている。このコントロールユニット20には、エアフローセンサ5によって検出される吸入空気流量、モータ回転数センサ21によって検出されるモータ6aの回転数、吸気圧力センサ22によって検出されるサージタンク8内の吸入空気圧力、吸気温センサ23によって検出される電動過給機下流における吸入空気温度、エンジン回転数センサ24によって検出されるエンジン回転数、水温センサ25によって検出されるエンジン水温等が制御情報として入力される。
そしてコントロールユニット20は、これらの制御情報に基づいて、一般的な各種エンジン制御(例えば、燃料噴射制御、点火時期制御、過給圧制御、EGR制御、等)を行うほか、電動過給機6のサージングの検出を行うとともに、サージングが検出されたときにはバイパスバルブアクチュエータ12を介してバイパスバルブ11を制御し、電動過給機6のサージングを回避(解消)ないしは抑制するといった制御(以下「サージング検出回避制御」という。)を行うようになっている。
次に、図2及び図3(a)、(b)を参照しつつ電動過給機6の運転手法ないしは機能を説明する。コントロールユニット20のメモリには、図2に示すような、エンジン負荷及びエンジン回転数をパラメータとしてエンジン1の運転領域を設定したマップが記憶されている。図2に示すように、このマップでは、運転領域は、基本的には、曲線H1より低回転・低負荷側に設定された自然吸気領域と、曲線H1と曲線H2との間に設定された過給領域とに分けられている。ここで、過給領域は、おおむね、エンジン回転数がN1以下でありエンジン負荷がα1以上である低回転・高負荷領域に設定されている。また、過給領域内の破線H3より低回転・高負荷側の部分は、電動過給機6にサージングが発生すると予測されるサージング領域である。なお、このエンジン1では、電動過給機6は、主として低回転・高負荷領域における燃費性能を高めるために設けられている。
かくして、自然吸気領域では、バイパスバルブ11が完全に開弁される一方、電動過給機6の駆動は停止される。この場合、図1中の矢印Aで示すように、吸入空気は電動過給機6のコンプレッサ6aをバイパスして、全面的にバイパス吸気通路10を流れる。他方、過給領域では、バイパスバルブ11が完全に閉弁される一方、電動過給機6が駆動される。この場合、図1中の矢印Bで示すように、吸入空気は電動過給機6のコンプレッサ6aによって加圧され、第1〜第4気筒#1〜#4に供給される。
しかしながら、過給運転中に、電動過給機6のサージングが検出されたときには、コントロールユニット20及びバイパスバルブアクチュエータ12によってバイパスバルブ11が開弁方向に制御される。このとき、バイパスバルブ11は比較的大きい開弁速度で適度に開弁され、電動過給機6(コンプレッサ6a)から下流側に吐出された吸入空気の一部は、図1中の矢印Cで示すように、バイパス吸気通路10を介して、電動過給機6より上流側の共通吸気通路3に還流させられる。この場合、各気筒#1〜#4に供給される吸入空気の流量は変わらないが、コンプレッサ6aを通過する吸入空気の流量が増加するとともに圧力比が低下するので、電動過給機6のサージングが迅速かつ確実に解消ないしは抑制される。
また、このようにサージングが検出されてバイパスバルブ11が開弁方向に制御された後、サージングが検出されなくなったときには、コントロールユニット20及びバイパスバルブアクチュエータ12によってバイパスバルブ11が閉弁方向に制御される。このとき、バイパスバルブ11は比較的小さい閉弁速度で閉弁される。すなわち、バイパスバルブ11の閉弁速度は開弁速度よりも小さい。なお、この閉弁速度は、エンジン回転数の変化率が大きいときほど大きくなるように設定されている。
図3(a)は、電動過給機6の過給特性を示すマップである。このマップにおいて、横軸は吸入空気の体積流量(以下「吸入空気量」という。)を示し、縦軸は電動過給機6の圧力比、すなわち電動過給機6より下流側(ただし、スロットル弁7より上流側)の吸入空気の圧力と上流側の吸入空気の圧力の比を示している。なお、吸入空気量はエンジン回転数に対応する。図3(a)に示すマップ中の領域Xは、サージングを起こすことなく過給を行うことができる領域(通常過給領域)である。
この領域Xには、電動過給機6の消費電力に応じた領域a〜pが設定されている。これらの領域a〜pは、吸入空気の流量の増加に対して圧力比が減少するような複数の曲線で分割されてなる略短冊状の領域であり、a〜pの順に消費電力は増加する。さらに、領域Xには、電動過給機6の回転数の特性が示されている。この特性は、領域Xの左下側に回転数40000rpmの曲線が設定され、右上方向に移るに従って回転数は増加し、領域Xの右上側に回転数80000rpmの曲線が設定されている。
図3(a)に示すマップ中の領域Yはサージング領域である。エンジン1の運転状態がこの領域Yに入っているときには、サージングを解消ないしは抑制するため、バイパスバルブ11が開弁方向に制御されて適度に開弁され、電動過給機6(コンプレッサ6a)から下流側に吐出された吸入空気の一部が電動過給機6より上流側の共通吸気通路3に還流させられる。この場合、バイパスバルブ11の開度ひいては吸入空気の還流量は、エンジン1の運転状態が図3(a)中の領域Xと領域Yの境界線H4上に保持されるよう、エンジン回転数(吸入空気の体積流量)に応じて制御される。
図3(b)は、アイドル状態から過給を開始する際の、吸入空気量と圧力比の関係を示すグラフ(曲線L)である。図3(b)において、直線P1(破線)はアイドル状態おける吸入空気量を示し、直線P2(実線)はサージング領域と通常過給領域との境界を示している。双方向矢印A1は、アイドル時にエンジン1に実際に吸入される空気量を示している。ここで、過給開始時におけるサージングを解消するには、少なくとも双方向矢印A2で示す量の空気を、バイパス吸気通路10を介して上流側の共通吸気通路3に還流させなければならない。つまり、双方向矢印A2は、過給開始時においてサージングを解消するための最適な空気還流量を示している。したがって、サージングを解消するために、空気還流量が双方向矢印A2で示す量となるようにバイパスバルブ11を開く必要がある。なお、エンジン回転数の上昇に伴って、エンジン1に吸入される空気が増えるので、最適な空気還流量ないしはバイパスバルブ11の開度は小さくなる。
以下、図4及び図5に示すフローチャートに従って、コントロールユニット20によって実行されるサージング検出回避制御(すなわち、電動過給機6のサージングの検出及び解消ないしは抑制)の具体的な制御手法を説明する。
図4及び図5に示すように、このサージング検出回避制御においては、まずステップS1で、エンジン1の運転状態が過給領域(図2参照)に入っているか否かが判定される。運転状態が過給領域に入っていないと判定された場合(NO)、エンジン1が過給中であれば、ステップS5でモータ6bへの電力供給が停止され、電動過給機6(コンプレッサ6a)による過給が停止される。続いて、ステップS6でバイパスバルブ11が全開された後、再びステップS1が実行される。なお、エンジン1が過給中でなければ、非過給状態が維持されるだけである。
他方、ステップS1で運転状態が過給領域に入っていると判定された場合は(YES)、ステップS2でエンジン1が過給中であるか否かが判定される。エンジン1が過給中でないと判定された場合は(NO)、ステップS3でモータ6bへの電力供給が開始され、電動過給機6による過給が開始される。続いて、ステップS4でバイパスバルブ11が全閉された後、ステップS7が実行される。また、ステップS2でエンジン1が過給中であると判定された場合は(YES)、すでに電動過給機6による過給が開始され、かつバイパスバルブ11が全閉されているので、ステップS3、S4をスキップしてステップS7が実行される。
ステップS7では、エアフローセンサ5によって吸入空気流量が検出される(AFS検出)。続いて、ステップS8で、バンドパスフィルタ処理により吸入空気流量の振動の有無が検出される。ここで、吸入空気流量の振動が検出されれば、吸入空気流量の視点から電動過給機6にサージングが発生していると判定される(吸入空気流量によるサージング判定)。
さらに、ステップS9で、モータ回転数センサ21によって、モータ6bの回転数(以下「モータ回転数」という。)が検出される。続いて、ステップS10で、バンドパスフィルタ処理により、モータ回転数の振動の有無が検出される。ここで、モータ回転数の振動が検出されれば、モータ回転数の視点から電動過給機6にサージングが発生していると判定される(モータ回転数によるサージング判定)。サージングは、電動過給機6のコンプレッサ6aのインペラ翼の周りに空気の流れの剥離(渦)が発生することにより起こる。そして、このとき空気流の剥離によりモータ6bの駆動力に微小な増減が発生し、モータ回転数が振動する。このため、モータ回転数の振動を検出することにより、サージングの発生を検出することができる。
ところで、電動過給機6の下流の吸入空気圧力、例えばサージタンク8内の吸入空気圧力(以下「サージタンク圧」という。)の振動を検出することによっても、電動過給機6のサージングを検出することができる。しかし、この場合、コンプレッサ6aのインペラ翼の周りの空気流の剥離現象を、サージタンク圧変化といった間接的な方法で検出するため、どうしても検出に時間遅れが生じる。また、サージタンク圧の振動は、サージング以外の原因、例えばアクセルペダルの操作等によっても生じる。したがって、サージタンク圧の振動に基づいてサージングを検出する場合は、該振動がサージングによるものか否かを識別ないしは区別することが必要である。
そこで、サージタンク圧の振動を検出することによりサージングの発生を検知する場合は、サージタンク圧の振動周波数に基づいてサージングを検出することにより、例えば、特定の周波数(12〜20Hzのサージング関連周波数)の振動でもってサージングを検出することにより、サージング以外の原因による振動とサージングに起因振動とを識別ないしは区別すればよい。
なお、モータ回転数の振動は、空気流の剥離に起因するモータ6bのトルクの増減によって直接的に生じるので、時間遅れはほとんど生じない。また、モータ回転数の振動は、電動過給機6のサージング以外の原因によって生じることはまずありえない。したがって、該振動がサージングによるものか否かを識別ないしは区別する必要はない。
次に、一連のステップS11〜S13で、吸入空気流量によるサージング判定結果とモータ回転数によるサージング判定とに基づいて、電動過給機6におけるサージングの有無及び強度が判定される。電動過給機6にサージングが発生した場合、吸入空気流量の振動は、モータ回転数の振動に比べてかなり弱い。そこで、このサージング検出制御では、モータ回転数の視点からサージングが検出される一方、吸入空気流量の視点からはサージングが検出されていないときは、サージングは弱いものと判定するようにしている。他方、モータ回転数及び吸入空気流量の両方の視点からサージングが検出されているときは、サージングは強いものと判定するようにしている。
具体的には、ステップS11で、モータ回転数及び吸入空気流量の両方の視点からサージングが検出されているか(MS=サージ、かつ、AS=サージ)否かが判定される。この判定がYESであれば、ステップS14で電動過給機6に発生しているサージングは強いものと判定される(強サージ検知)。この場合、ステップS15で、バイパスバルブ11の開弁速度(開速度)が、サージングが弱い場合に比べて、比較的大きい値に設定される。なお、サージングの強弱にかかわらず、バイパスバルブ11の開弁速度は、後で説明するバイパスバルブ11の閉弁速度(閉じ速度)よりは大きい。
ステップS11における判定がNOである場合は、ステップS12で、モータ回転数の視点からはサージングは検出されず、かつ、吸入空気流量の視点からはサージングが検出されているか(MS=否サージ、かつ、AS=サージ)否かが判定される。この判定がYESであれば、ステップS17で、モータ回転数の視点からのサージング判定は異常であると判定される。なぜなら、感度が低い吸入空気流量によるサージング判定がYESで、感度が高いモータ回転数によるサージング判定がNOであるという事態は通常はありえず、このような場合はモータ回転数の視点からのサージング判定は異常であると考えられるからである。続いて、ステップS18で、少なくとも吸入空気流量の視点からはサージングが検出されているので、電動過給機6に発生しているサージングは強いものと判定される(強サージ検知)。この場合も、ステップS15で、バイパスバルブ11の開弁速度(開速度)が比較的大きい値に設定される。
ステップS12における判定がNOである場合は、ステップS13で、モータ回転数の視点からはサージングが検出され、かつ、吸入空気流量の視点からはサージングが検出されていないか(MS=サージ、かつ、AS=否サージ)否かが判定される。この判定がYESであれば、ステップS19で電動過給機6に発生しているサージングは弱いものと判定される(弱サージ検知)。この場合、ステップS20で、バイパスバルブ11の開弁速度(開速度)が、サージングが強い場合に比べて、比較的小さい値(ただし、閉弁速度よりは大きい)に設定される。
ステップS13における判定がNOである場合、すなわちモータ回転数及び吸入空気流量の両方の視点からサージングが検出されていない場合は(MS=否サージ、かつ、AS=否サージ)、ステップS21で電動過給機6にサージングは発生していないものと判定される。この場合、ステップS22で、エンジン回転数変化率(変化量)に応じてバイパスバルブ11の閉弁速度(閉じ速度)が決定される。具体的には、エンジン回転数変化率が大きいときほど、閉弁速度を大きくするようにしている。これは、エンジン回転数の上昇により、吸入空気流量が増えるので、サージングが回避される傾向が強くなるからである。
かくして、電動過給機6のサージングが検出されたときには、ステップS16でバイパスバルブ11が、サージングの強度に応じて、ステップS15又はステップS20で設定された開弁速度で、所定の最大開度まで開弁される。この最大開度は、過給状態にかかわらずサージングを迅速かつ確実に解消させることができる開度(例えば、6%)に設定される。ここで、バイパスバルブ11の開弁速度(バルブ回転角の変化速度)は、例えば、サージングが弱い場合は22.5度/秒に設定され、サージングが強い場合は30.0度/秒に設定される。
また、サージングの発生が検出された後、バイパスバルブ11が開かれてサージングが検出されなくなったときには、ステップS23で、バイパスバルブ11が、ステップS22で設定された閉弁速度で、開度0まで閉弁される。この場合、バイパスバルブ11の閉弁速度は、例えば、エンジン回転数変化率が0のときには0.9度/秒に設定され、エンジン回転数変化率が大きくなるほど閉弁速度が大きくなる。
図6に、このようなサージング検出回避制御が行われた場合の、サージングの発生状況(グラフG1)、サージングの検出態様(グラフG2)及びバイパスバルブ11の開度(グラフG3)の時間に対する変化特性を示す。図6に示す例では、時刻tに電動過給機6のサージングが発生し、時刻tでバイパスバルブ11の開弁が開始され、tでサージングが解消され、時刻tでバイパスバルブの閉弁が開始され、時刻tでバイパスバルブ11が完全に閉弁されている。
図6において、直線G4は、サージングの回避と過給性能の維持とが最適な状態で両立するバイパスバルブ11の開度(最適開度)を示している。なお、このバイパスバルブ11の最適開度は、エンジン回転数、コンプレッサ6aの回転数に応じて変化する。バイパスバルブ11を閉じて過給運転を行うとサージングが発生する運転状態で、バイパスバルブ11を最大開度まで開弁しておけばサージングは確実に回避されるが、過給効率が低下して燃費性能が低下する。したがって、この運転状態で過給効率ないしは燃費性能を最大限に高めるには、バイパスバルブ11の開度を、サージングが発生しない限度で最小の開度に維持する必要がある。この最小の開度が最適開度である。
また、図6において、最適開度(直線G4)を中心とする領域Rは、サージングの回避と過給性能の維持とが両立するバイパスバルブ11の開度の許容範囲を示している。サージング検出回避制御を行っているときには、バイパスバルブ11の開度を、できるだけ長時間この許容範囲内にとどまらせるのが好ましい。なお、実験により、バイパスバルブ11の開度を6%にすれば電動過給機6のサージングを完全に回避ないし解消することができることがわかっているので、図6に示す例では、バイパスバルブ11の最大開度を6%に設定している。
このように、このエンジン1では、サージングを検出してこれを回避ないしは解消するためのサージング検出回避制御を行うようにしているが、そのときサージングの検出と実際の現象との間には時間遅れが生じる。このため、この時間遅れを考慮して、最適な開閉速度でバイパスバルブ11を開閉することにより、サージング検出回避制御を行う際に、電動過給機6の消費電力の低減とサージング回避性能の向上とを両立させるようにしている。
図6から明らかなとおり、このサージング検出回避制御では、バイパスバルブ11の閉弁速度は開弁速度よりも小さい値に設定されている。つまり、このサージング検出回避制御においては、バイパスバルブ11の開閉速度を、バイパスバルブ1の開弁側と閉弁側とで変えているが、その技術的な理由は以下のとおりである。
すなわち、バイパスバルブ11の開度は、前記のとおり、サージングを回避するための最適開度(サージングを回避できる最小開度)で安定させるのが望ましい。しかし、次の理由により、サージングを検知したときには、完全にサージング現象が発生している。
(1)普通のサージングの検出手法では、サージングの有無しか検知できない。
(2)サージングの検出タイミングが実際のサージング現象よりも遅れる。
そこで、サージングをなるべく早期に回避ないしは解消するため、バイパスバルブ11を最大開度まで迅速に開弁するようにしている。このように、サージング回避の観点からは、バイパスバルブ1をなるべく迅速に開くのが有利であるが、迅速に開くと過給圧の無駄が発生し、消費電力が無駄になる。しかし、サージングを回避する際には、消費電力よりもサージング回避性を重視し、バイパスバルブ11を迅速に開弁するようにしている。ただし、バイパスバルブ11の開度を、最適開度付近にできる限り長時間とどまらせるため、従来のこの種のエンジンと同様の開弁速度で開弁するようにしている。
他方、バイパスバルブ11を閉じる場合、サージングの解消(通常状態)を検知したときには、100%確実にサージング現象は回避ないしは解消できている。しかし、ここでバイパスバルブ11を大きい閉弁速度で迅速に閉じると、バイパスバルブ11の開度が最適開度付近の許容範囲(領域R)にとどまっている時間が短くなる。そこで、バイパスバルブ11をゆっくり閉じて、バイパスバルブ11の開度ができるだけ長く許容範囲(領域R)にとどまるようにしている。ただし、バイパスバルブ11をゆっくり閉じると、バイパスバルブ11が開いている間に過給圧が逃げ、電動過給機6の消費電力が無駄になるので、バイパスバルブ11を迅速に閉じるといったことも考えられる。しかし、バイパスバルブ11を開度0まで迅速に閉弁すると、再び電動過給機6のサージングサージングが発生し、このようなサージングの発生・解消のサイクリング現象が生じるおそれがある。したがって、バイパスバルブ11を迅速に閉じるのは好ましくない。
このように、このサージング検出回避制御によれば、過給中は、サージングの発生の有無によってバイパスバルブ11の開閉が繰り返される。そして、前記のとおり、バイパスバルブ11の開弁速度が閉弁速度より大きいので、バイパスバルブ11の平均開度はサージングを回避ないしは解消することができる開度に収束する。
図7に、バイパスバルブ11の閉速度と開速度の比(以下「速度比」という。)と、サージングの発生頻度との関係を示す。図7に示すように、速度比が小さいときほど、サージングの発生頻度が低くなっている。なお、バイパスバルブ11の閉速度が開速度よりも小さい(速度比が1未満)ときには、サージングの発生頻度は50%以下である。したがって、このサージング検出回避制御では、バイパスバルブ11の閉弁速度が開弁速度よりも小さいので、サージングの発生頻度は小さくなる。
以上、本発明の実施の形態によれば、電動過給機6のサージングの発生を確実かつ迅速に検出することができ、かつサージングを確実かつ迅速に解消ないしは抑制することができる。
本発明に係る過給装置を備えたエンジンの構成を示す模式図である。 図1に示すエンジンの過給領域及び自然吸気領域を示すマップである。 (a)は、図1に示すエンジンの電動過給機の過給特性を示すマップであり、(b)は、アイドル状態から過給を開始する際の吸入空気量と圧力比の関係を示すグラフである。 本発明に係るサージング検出抑制制御の手順を示すフローチャートである。 本発明に係るサージング検出抑制制御の手順を示すフローチャートである。 サージング検出制御を行うときの、サージングの発生状況、サージングの検出態様及びバイパスバルブの開度の時間に対する変化特性を示すグラフである。 バイパスバルブの閉速度と開速度の比と、サージングの発生頻度との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 エンジン、2 吸気装置、3 共通吸気通路、4 エアクリーナ、5 エアフローセンサ、6 遠心式電動過給機、6a コンプレッサ、6b モータ、7 スロットル弁、8 サージタンク、9 独立吸気通路、10 バイパス吸気通路、11 バイパスバルブ(吸気制御弁)、12 バイパスバルブアクチュエータ、13 オルタネータ、14 バッテリ、15 ブーストドライバ、16 スロットル弁アクチュエータ、17 アクセルペダル、18 アクセルセンサ、19 点火プラグ、20 コントロールユニット、21 モータ回転数センサ、22 吸気圧力センサ、23 吸気温センサ、24 エンジン回転数センサ、25 エンジン水温センサ、#1〜#4 第1〜第4気筒。

Claims (6)

  1. 遠心式過給機が配設された過給吸気通路と、遠心式過給機をバイパスするバイパス吸気通路と、バイパス吸気通路を開閉制御する吸気制御弁とを有し、エンジンの運転状態が所定の過給領域にあるときに、吸気制御弁を閉じるとともに遠心式過給機を作動させて過給を行うようなっているエンジンの過給装置において、
    遠心式過給機のサージングを検出するサージング検出手段と、
    過給時にサージング検出手段によってサージングが検出されたときに吸気制御弁を開弁方向に制御する一方、サージングが検出されなくなったときに吸気制御弁を閉弁方向に制御する吸気制御弁制御手段とを備えていて、
    吸気制御弁制御手段が、吸気制御弁を閉弁方向に制御するときの弁開度変化速度が開弁方向に制御するときの弁開度変化速度よりも小さくなるよう吸気制御弁を制御することを特徴とするエンジンの過給装置。
  2. 遠心式過給機が、モータによって駆動される遠心式電動過給機であることを特徴とする、請求項1に記載のエンジンの過給装置。
  3. サージング検出手段が、モータの回転数の振動に基づいて遠心式過給機のサージングを検出するようになっていることを特徴とする、請求項2に記載のエンジンの過給装置。
  4. 吸気制御弁制御手段が、エンジン回転数の変化率が大きいときほど、吸気制御弁を閉弁方向に制御するときの弁開度変化速度が大きくなるよう吸気制御弁を制御することを特徴とする、請求項1に記載のエンジンの過給装置。
  5. サージング検出手段が、遠心式過給機より下流側の吸気系統に配設された吸気圧力センサの検出値の振動周波数に基づいて遠心式過給機のサージングを検出するようになっていることを特徴とする、請求項1に記載のエンジンの過給装置。
  6. サージング検出手段が、吸気圧力センサの検出値の振動周波数がサージングに対応するサージング関連周波数であるときに、遠心式過給機のサージングを検出するようになっていることを特徴とする、請求項5に記載のエンジンの過給装置。
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