JP4541607B2 - 過給機付エンジンの制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの吸,排気系にプライマリターボ過給機とセカンダリターボ過給機とを備え、プライマリターボ過給機のみを過給動作させるシングルターボ状態と、両ターボ過給機を共に過給動作させるツインターボ状態とをエンジン運転領域に応じて切換える過給機付エンジンの制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、エンジンの吸,排気系にプライマリターボ過給機とセカンダリターボ過給機とを並列に配置し、セカンダリターボ過給機に接続される吸,排気系に吸気制御弁と排気制御弁をそれぞれ配設し、両制御弁を開閉することで、過給機の作動個数を運転領域に応じて適宜切換える過給機付きエンジン(いわゆるシーケンシャルターボエンジン)が提案されている。
【0003】
この過給機付エンジンでは、本出願人による先の特開平7−77050号公報に開示されているように、運転領域を低速域のシングルターボ領域と高速域のツインターボ領域とに区分し、運転領域がシングルターボ領域にあるとき、吸気制御弁を閉弁すると共に排気制御弁を閉弁或いは小開(セカンダリターボ過給機を予備回転させるため)してプライマリターボ過給機のみを過給動作させ、運転領域がツインターボ領域にあるときには、両制御弁を共に開弁して両ターボ過給機を過給動作させることで、低速域から高速域に亘り出力性能の向上を可能としている。
【0004】
この場合、セカンダリターボ過給機への排気の導入・遮断を制御する排気制御弁は、アクチュエータを介して開閉駆動されるようになっており、アクチュエータとしては、2つの圧力室の圧力差によって生じる開弁方向の力と機械的な付勢力による閉弁方向の力とに応じて開閉動作を行うアクチュエータ、具体的にはダイヤフラム式アクチュエータを用いている。
【0005】
このダイヤフラム式アクチュエータでは、切換弁を介してセカンダリターボ過給機の下流側からの正圧(過給圧)と大気圧とが選択的に導入される正圧室と、同様の切換弁を介してスロットル弁下流の吸気マニホールドに連通するサージタンクで蓄えられる負圧と大気圧とが選択的に導入される負圧室との2つの圧力室がダイヤフラムで仕切られ、負圧室内に排気制御弁を閉方向に付勢するスプリングが収納されると共に、ダイヤフラムと排気制御弁とを連設するロッドが延出される。
【0006】
そして、シングルターボ状態では、アクチュエータの正圧室と負圧室とを大気に開放してスプリングの付勢力により排気制御弁を閉弁させ、ツインターボ状態では、アクチュエータの正圧室に正圧を導入すると共に負圧室に負圧を導入することで、スプリングの付勢力による閉方向の力よりも大きい開方向の力を発生させ、排気制御弁を開弁させている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来、ツインターボ状態では、アクチュエータの正圧室に正圧を導入すると共に負圧室に負圧を導入して排気制御弁を開弁状態としているため、ツインターボ状態からシングルターボ状態に切換える際に、アクチュエータの正圧室及び負圧室を大気に開放しても、各室と切換弁との間の通路や切換弁の通路抵抗等による圧力応答遅れが生じる。
【0008】
このため、ツインターボ状態からシングルターボ状態に切換える際、アクチュエータの各室が大気圧状態に移行するまでの間、排気制御弁に対する開弁方向の力がスプリングによる閉弁方向の付勢力に抗して残存することになり、排気制御弁の閉弁遅れに伴う排気エネルギーの損失により、一時的に過給圧が低下してエンジンの発生トルクに谷が発生し、制御性が悪化する虞がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、ツインターボ状態からシングルターボ状態へ切換える際の排気制御弁の閉弁遅れを解消し、制御性を向上することのできる過給機付きエンジンの制御装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、エンジンの吸,排気系にプライマリターボ過給機とセカンダリターボ過給機と並列に配置すると共に、上記セカンダリターボ過給機へ排気を導入する通路を開閉する排気制御弁に、正圧が導入される正圧室と負圧が導入される負圧室との2つの圧力室の圧力差による開弁方向の力と、上記負圧室に収納されるスプリングの機械的な付勢力による閉弁方向の力とに応じて開閉動作を行うアクチュエータを連設し、上記排気制御弁を上記アクチュエータにより閉弁或いは小開させて上記プライマリターボ過給機のみを過給動作させるシングルターボ状態と、上記排気制御弁を上記アクチュエータにより開弁させて両ターボ過給機を共に過給動作させるツインターボ状態とをエンジン運転領域に応じて切換える過給機付エンジンの制御装置において、ツインターボ状態において上記アクチュエータの正圧室に大気を導入すると共に上記アクチュエータの負圧室に負圧を導入して上記排気制御弁を開弁状態に維持し、ツインターボ状態からシングルターボ状態に切換えるとき、上記アクチュエータの負圧室に大気を導入して上記排気制御弁を閉弁させる排気制御弁開閉制御手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記排気制御弁開閉制御手段は、ツインターボ状態では、大気に連通するポートと上記セカンダリターボ過給機のコンプレッサ下流側に連通するポートとを有する第1の切換弁により上記アクチュエータの正圧室を大気に連通させると共に、大気に連通するポートと負圧を貯留するサージタンクに連通するポートとを有する第2の切換弁により上記アクチュエータの負圧室を上記サージタンクに連通させ、ツインターボ状態からシングルターボ状態に切換えるとき、上記第2の切換弁を切換えて上記アクチュエータの負圧室を大気に連通させることを特徴とする。
【0012】
すなわち、請求項1記載の発明は、ツインターボ状態において排気制御弁を開弁状態に維持する際、排気制御弁に連設されるアクチュエータの正圧室に大気を導入すると共に負圧室に負圧を導入し、スプリングの付勢力による閉弁方向の力に抗して排気制御弁を開弁状態に維持する力を負圧室のみに作用させる。そして、ツインターボ状態からシングルターボ状態に切換えるとき、アクチュエータの正圧室に開弁方向の力が残存しない状態で負圧室に大気を導入して開弁方向の力を迅速に減衰させ、スプリングの付勢力による排気制御弁の閉弁応答性を向上させる。
【0013】
その際、請求項2記載の発明のように、アクチュエータの正圧室に導入する圧力を、大気に連通するポートとセカンダリターボ過給機のコンプレッサ下流側に連通するポートとを有する第1の切換弁により切換え、アクチュエータの負圧室に導入する圧力を、大気に連通するポートと負圧を貯留するサージタンクに連通するポートとを有する第2の切換弁により切換えることができる。そして、ツインターボ状態では、第1,第2の切換弁により、アクチュエータの正圧室を大気に連通させると共に負圧室をサージタンクに連通させて排気制御弁を開弁させ、ツインターボ状態からシングルターボ状態に切換えるとき、第2の切換弁のみを切換えてアクチュエータの負圧室を大気に連通させて迅速に排気制御弁を閉弁させる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1〜図15は本発明の実施の一形態に係わり、図1は過給機付エンジンの全体構成図、図2は電子制御系の回路構成図、図3〜図6はターボ切換制御ルーチンのフローチャート、図7はターボ切換判定値テーブルの説明図、図8はシングルターボ時とツインターボ時との出力特性を示す説明図、図9は排気制御弁小開制御領域の説明図、図10は排気制御弁開ディレイ時間設定テーブルの説明図、図11は吸気制御弁開ディレイ時間設定テーブルの説明図、図12は吸気制御弁開差圧設定テーブルの説明図、図13はシングルターボ領域継続時間判定値テーブルの説明図、図14はシングルターボ状態からツインターボ状態への切換えを示すタイムチャート、図15はツインターボ状態からシングルターボ状態への切換えを示すタイムチャートである。
【0015】
先ず、図1に基づき本発明が適用される過給機付エンジンの全体構成について説明する。同図において、符号1は過給機付エンジン(以下、単に「エンジン」と略記する)であり、本形態においては水平対向型4気筒エンジンである。このエンジン1は、シリンダブロック2の左右バンク3,4に、燃焼室5、吸気ポート6、排気ポート7、点火プラグ8、動弁機構9等が設けられ、左バンク3側に、#2,#4気筒を備えると共に、右バンク4側に、#1,#3気筒を備えている。
【0016】
また、このエンジン短縮形状により、左右バンク3,4の直後に、プライマリターボ過給機40とセカンダリターボ過給機50とがそれぞれ配設されている。そして、排気系として、左右両バンク3,4からの共通の排気管10が両ターボ過給機40,50のタービン40a,50aに連通され、タービン40a,50aからの排気管11が1つの排気管12に合流して触媒コンバータ13、マフラ14に連通されている。プライマリターボ過給機40は、低中速域で過給能力の大きい小容量の低速型であり、これに対してセカンダリターボ過給機50は、中高速域で過給能力の大きい大容量の高速型である。このためプライマリターボ過給機40の方が容量が小さいことで、排気抵抗が大きくなる。
【0017】
一方、吸気系としては、エアクリーナ15の下流から2つに分岐した吸気管16,17がそれぞれ両ターボ過給機40,50のコンプレッサ40b,50bに連通され、このコンプレッサ40b,50bからの吸気管18,19がインタークーラ20に連通される。そして、インタークーラ20からスロットル弁21を有するスロットルボディー27を介してチャンバ22に連通され、チャンバ22から吸気マニホールド23を介して左右バンク3,4の各気筒の吸気ポート6に連通されている。
【0018】
また、アイドル制御系として、スロットル弁21をバイパスしてエアクリーナ15の直下流の吸気管と吸気マニホールド23とを連通するバイパス通路24に、アイドル制御弁(ISC弁)25と負圧で開く逆止弁26とが設けられ、アイドル時や減速時に吸入空気量を制御する。
【0019】
また、燃料系として、吸気マニホールド23の各気筒毎の吸気ポート6直上流にインジェクタ30が配設され、燃料ポンプ31を内蔵する燃料タンク32からの燃料通路33がフィルタ34を介してインジェクタ30及び燃料圧レギュレータ35に連通されている。
【0020】
燃料圧レギュレータ35は、吸気マニホールド23内の吸気管圧力に応じて調整作用するものであり、これにより、インジェクタ30に供給する燃料圧力が吸気管圧力に対して常に一定の圧力に調整され、後述する電子制御装置100からの噴射信号によって駆動されるインジェクタ30からの燃料噴射量が噴射信号のパルス幅に応じて制御される。また、点火系として、各気筒の点火プラグ8毎に点火コイル8aが連設され、各点火コイル8aがイグナイタ36に接続されている。
【0021】
ここで、プライマリターボ過給機40の作動系について説明する。プライマリターボ過給機40は、タービン40aに導入する排気のエネルギによりコンプレッサ40bが回転駆動され、空気を吸入、加圧して常に過給するように作動するものであり、タービン40a側に、ダイヤフラム式アクチュエータからなるプライマリウェストゲート弁作動用アクチュエータ42を備えたプライマリウェストゲート弁41が設けられている。
【0022】
プライマリウェストゲート弁作動用アクチュエータ42は、制御圧通路44からオリフィス48を介してコンプレッサ40bの直下流に連通される圧力室、及び、この圧力室からダイヤフラムによって仕切られ、プライマリウェストゲート弁41を閉方向に付勢するスプリングを収納すると共に、ダイヤフラムとプライマリウェストゲート弁41とを連設するロッドが延出されるスプリング室を備え、スプリング室が大気に開放されている。そして、圧力室に導入される過給圧が設定値以上に上昇すると、スプリングの付勢力に抗して応答良くプライマリウェストゲート弁41を開く。
【0023】
更に、制御圧通路44は過給圧をコンプレッサ40bの上流側にリークするプライマリウェストゲート制御用デューティソレノイド弁D.SOL.1に連通されており、このプライマリウェストゲート制御用デューティソレノイド弁D.SOL.1が後述する電子制御装置100からのデューティ信号により作動して所定の制御圧を生じ、プライマリウェストゲート弁作動用アクチュエータ42の圧力室に作用する。
【0024】
すなわち、プライマリウェストゲート制御用デューティソレノイド弁D.SOL.1に出力されるデューティ信号のデューティ比が小さい場合には、制御圧が高められてプライマリウェストゲート弁41の開度を増して過給圧を低下させ、また、デューティ比が大きくなるほどリーク量の増大により制御圧を低下させ、プライマリウェストゲート弁41の開度を減じて過給圧を上昇させる。
【0025】
一方、スロットル弁急閉時に、コンプレッサ40b下流に加圧空気が封じ込められることによるコンプレッサ回転の低下や吸気騒音の発生を防止するため、コンプレッサ40bの下流としてスロットル弁21近くのインタークーラ20の出口側と、コンプレッサ40bの上流との間に、バイパス通路46が連通され、このバイパス通路46にエアバイパス弁45が介装されている。
【0026】
エアバイパス弁45は、バイパス通路46を開閉する弁体を有する弁室と、弁体を閉方向に付勢するスプリングを収納すると共に通路47を介して吸気マニホールド23に連通する圧力室とがダイヤフラムによって仕切られて構成されており、スロットル弁急閉時に通路47を介してマニホールド負圧が圧力室に導入されて開弁し、コンプレッサ40b下流に封じ込められる加圧空気をバイパス通路46を介して迅速にリークする。
【0027】
次に、セカンダリターボ過給機50の作動系について説明する。セカンダリターボ過給機50は、同様に、排気によりタービン50aとコンプレッサ50bが回転駆動して過給するものであり、タービン50a側に、ダイヤフラム式アクチュエータからなるセカンダリウェストゲート弁作動用アクチュエータ52を備えたセカンダリウェストゲート弁51が設けられている。
【0028】
セカンダリウェストゲート弁作動用アクチュエータ52は、制御圧通路70aに連通する圧力室、及び、この圧力室からダイヤフラムによって仕切られ、セカンダリウェストゲート弁51を閉方向に付勢するスプリングを収納すると共に、ダイヤフラムとセカンダリウェストゲート弁51とを連設するロッドが延出されるスプリング室を備えて構成されており、スプリング室が大気に開放され、制御圧通路70aから圧力室に導入される制御圧に応じてセカンダリウェストゲート弁51を開閉する。
【0029】
また、タービン50aの上流の排気管10には、ダイヤフラム式アクチュエータからなる排気制御弁作動用アクチュエータ54を備えた下流開き式の排気制御弁53が設けられ、コンプレッサ50bの下流には、ダイヤフラム式アクチュエータからなる吸気制御弁作動用アクチュエータ56を備えたバタフライ式の吸気制御弁55が設けられている。コンプレッサ50bの上,下流間を連通するリリーフ通路58には、過給圧リリーフ弁57が設けられている。
【0030】
排気制御弁作動用アクチュエータ54は、2つの圧力室、すなわち、制御圧通路73aに連通する正圧室54aと、この正圧室54aからダイヤフラムによって仕切られ、排気制御弁53を閉方向に付勢するスプリングを収納すると共に、ダイヤフラムと排気制御弁53とを連設するロッドが延出される負圧室54bとを備えて構成され、負圧室54bが制御圧通路74aに連通されている。そして、正圧室54aに導入される正圧と負圧室54bに導入される負圧との圧力差圧による開弁方向の力とスプリングの機械的な付勢力による閉弁方向の力とに応じて、排気制御弁53の開度を可変する。
【0031】
吸気制御弁作動用アクチュエータ56は、制御圧通路72aに連通し、吸気制御弁55を開方向に付勢するスプリングを収納する圧力室、及び、この圧力室からダイヤフラムによって仕切られ、ダイヤフラムと吸気制御弁55とを連設するロッドが延出される大気開放の大気室を備えて構成されており、圧力室に導入される制御圧に応じて吸気制御弁55を開閉する。
【0032】
過給圧リリーフ弁57は、リリーフ通路58を開閉する弁体を有する弁室と、弁体を閉方向に付勢するスプリングを収納すると共に制御圧通路71aに連通する圧力室とがダイヤフラムによって仕切られて構成され、吸気制御弁55の閉弁時、圧力室に導入される負圧によって弁体が開弁し、セカンダリターボ過給機50のコンプレッサ50b下流と吸気制御弁55との間に封じ込められる過給圧をリークさせる。
【0033】
以上の各弁に対する圧力作動系としては、吸気制御弁55の上流に連通する通路65とセカンダリウェストゲート制御弁作動用アクチュエータ52の圧力室に連通する制御圧通路70aとの接続を切換えるセカンダリウェストゲート弁用切換ソレノイド弁SOL.W、吸気制御弁55下流に連通する正圧通路64aと過給圧リリーフ弁57の圧力室に連通する制御圧通路71aと負圧源のサージタンク60に連通する負圧通路63との接続を切換える過給圧リリーフ弁用切換ソレノイド弁SOL.1、吸気制御弁作動用アクチュエータ56の圧力室に連通する制御圧通路72aとサージタンク60に連通する負圧通路63との接続を切換える吸気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.2、吸気制御弁55下流に連通する正圧通路64bと排気制御弁作動用アクチュエータ54の正圧室54aに連通する制御圧通路73aとサージタンク60に連通する負圧通路63との接続を切換える第1の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3、排気制御弁作動用アクチュエータ54の負圧室54bに連通する制御圧通路74aとサージタンク60に連通する負圧通路63との接続を切換える第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.4が備えられている。
【0034】
また、制御圧通路73aに介装されたオリフィス67の下流側と吸気管16とを連通するリーク通路66に、排気制御弁小開制御用デューティソレノイド弁D.SOL.2が介装されている。各切換ソレノイド弁SOL.1,2,4に対する負圧源としては、サージタンク60が設けられ、このサージタンク60がチェック弁62を有する通路61を介して吸気マニホールド23に連通され、スロットル弁21の全閉時に負圧を貯え且つ脈動圧を緩衝する。
【0035】
各切換ソレノイド弁SOL.W,SOL.1〜4は、後述する電子制御装置100からのON,OFF信号により、吸気制御弁55上流に連通する通路65からの正圧、サージタンク60からの負圧通路63を介しての負圧、吸気制御弁55下流に連通する正圧通路64a,64bからの正圧、或いは大気圧等を選択し、各制御圧通路70a〜74aにより各アクチュエータ側に導いて、セカンダリウエストゲート弁51、過給圧リリーフ弁57、各制御弁55,53を作動させる。また、排気制御弁小開制御用デューティソレノイド弁D.SOL.2は、電子制御装置100からのデューティ信号により、排気制御弁作動用アクチュエータ54の圧力室に作用する正圧を調圧し、排気制御弁53を小開制御する。
【0036】
詳細には、セカンダリウェストゲート弁用切換ソレノイド弁SOL.Wは、電子制御装置100により点火進角量等に基づきハイオクガソリン使用と判断されたときのみOFFされ、レギュラーガソリン使用と判断されたときにはONされる。そして、セカンダリウェストゲート弁用切換ソレノイド弁SOL.WがOFFされると、吸気制御弁55の上流に連通する通路65を閉じて大気ポートを開き、大気圧を制御圧通路70aを介してセカンダリウェストゲート弁作動用アクチュエータ52の圧力室に導入することで、スプリングの付勢力によりセカンダリウェストゲート弁51を閉じる。
【0037】
また、セカンダリウェストゲート弁用切換ソレノイド弁SOL.Wは、ONされると大気ポートを閉じて通路65側を開き、両ターボ過給機40,50作動時のセカンダリターボ過給機50下流の過給圧がセカンダリウェストゲート弁作動用アクチュエータ52の圧力室に導かれ、この過給圧に応じてセカンダリウェストゲート弁51を開き、レギュラーガソリン使用時にはハイオクガソリン使用時に比べて相対的に過給圧が低下される。
【0038】
過給圧リリーフ弁用切換ソレノイド弁SOL.1は、OFFされると正圧通路64a側を閉じて負圧通路63側を開き、制御圧通路71aを介して過給圧リリーフ弁57のスプリングが収納された圧力室に負圧を導くことでスプリングの付勢力に抗して過給圧リリーフ弁57を開く。また、ONされると、逆に負圧通路63側を閉じて正圧通路64a側を開き、過給圧リリーフ弁57の圧力室に正圧を導くことで過給圧リリーフ弁57を閉じる。
【0039】
吸気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.2は、OFFされると大気ポートを閉じて負圧通路63側を開き、制御圧通路72aを介して吸気制御弁作動用アクチュエータ56のスプリングが収納された圧力室に負圧を導くことでスプリングの付勢力に抗して吸気制御弁55を閉じ、ONされると負圧通路63側を閉じて大気ポートを開き、吸気制御弁作動用アクチュエータ56の圧力室に大気圧を導くことで圧力室内のスプリングの付勢力により吸気制御弁55を開く。
【0040】
排気制御弁53を開閉するための第1の切換弁としての第1の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3、第2の切換弁としての第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.4は、共にOFFのとき、第1の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3が正圧通路64b側を閉じて大気ポートを開き、第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.4が負圧通路63側を閉じて大気ポートを開くことで、排気制御弁作動用アクチュエータ54の両室54a,54bが大気開放され、負圧室54bに収納されたスプリングの付勢力により排気制御弁53が全閉する。
【0041】
また、両切換ソレノイド弁SOL.3,4が共にONのとき、それぞれ大気ポートを閉じ、第1の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3が正圧通路64b側を開き、第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.4が負圧通路63側を開くことで、排気制御弁作動用アクチュエータ54の正圧室54aに正圧を、負圧室54bに負圧を導き、スプリングの付勢力に抗して排気制御弁53を全開する。このとき、排気制御弁作動用アクチュエータ54は、負圧室54b内の負圧のみで排気制御弁を53を全開に保持することが可能であり、第1の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3をOFFし、第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3,4をONした状態、すなわち、排気制御弁作動用アクチュエータ54の正圧室54aを大気開放し、負圧室54bに負圧を導入した状態で、排気制御弁53を全開に保持することができる。
【0042】
また、第1の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3のみがONで、正圧を排気制御弁作動用アクチュエータ54の正圧室54aに供給し、負圧室54bを大気開放する状態では、排気制御弁小開制御用デューティソレノイド弁D.SOL.2によりその正圧をリークして排気制御弁53を小開する。
【0043】
ここで、排気制御弁小開制御用デューティソレノイド弁D.SOL.2は、電子制御装置100からのデューティ信号におけるデューティ比が大きいと、リーク量の増大により正圧室54aに作用する正圧を低下して排気制御弁53の開度を減じ、デューティ比が小さくなるほど、リーク量を減じて正圧を高く保持し、排気制御弁53の開度を増す方向に動作する。そして、シングルターボ状態下でエンジン運転領域が所定の排気制御弁小開制御領域にあるとき、排気制御弁小開制御用デューティソレノイド弁D.SOL.2による排気制御弁53の開度で過給圧をフィードバック制御し、この過給圧制御に伴い排気制御弁53を小開する。
【0044】
次に、エンジン1に備えられる各種のセンサについて説明する。吸気制御弁55の上流側に連通する通路と下流側に連通する通路に差圧センサ80が接続され、この差圧センサ80により吸気制御弁55の上,下流の差圧が検出される。また、吸気マニホルド23に、吸気管圧力/大気圧切換ソレノイド弁76を介して絶対圧センサ81が接続され、吸気管圧力/大気圧切換ソレノイド弁76を切換えることにより吸気管圧力(吸気マニホールド23内の圧力)と大気圧とが選択的に検出される。
【0045】
また、シリンダブロック2にノックセンサ82が取付けられると共に、左右両バンク3,4を連通する冷却水通路に冷却水温センサ83が臨まされ、排気管10にO2センサ84が臨まされている。さらに、スロットル弁21に、スロットル開度を検出するスロットル開度センサ85aとスロットルバルブ全閉でONするアイドルスイッチ85bとを内蔵したスロットルセンサ85が連設され、エアクリーナ15の直流下に吸入空気量センサ86が配設されている。
【0046】
また、シリンダブロック2に支承されたクランクシャフト1aにクランクロータ90が軸着され、このクランクロータ90の外周に、電磁ピックアップ等からなるクランク角センサ87が対設されている。さらに、動弁機構9におけるカムシャフトに連設するカムロータ91に、電磁ピックアップ等からなる気筒判別センサ88が対設されている。
【0047】
クランク角センサ87、気筒判別センサ88は、それぞれクランクロータ90、カムロータ91に所定間隔毎に形成された突起をエンジン運転に伴い検出し、クランクパルス、気筒判別パルスを出力する。そして、電子制御装置100において、クランクパルスの間隔時間(突起の検出間隔)からエンジン回転数を算出すると共に、点火時期及び燃料噴射開始時期等を演算し、さらに、クランクパルス及び気筒判別パルスの入力パターンから気筒判別を行う。
【0048】
次に、図2に基づき、電子制御系の構成について説明する。エンジン1を制御する電子制御装置(ECU)100は、CPU101、ROM102、RAM103、バックアップRAM104、カウンタ・タイマ群105、及びI/Oインターフェース106をバスラインを介して接続したマイクロコンピュータを中心として構成され、各部に所定の安定化電源を供給する定電圧回路107、駆動回路108、A/D変換器109等の周辺回路を備えている。
【0049】
尚、カウンタ・タイマ群105は、フリーランカウンタ、気筒判別用信号(気筒判別パルス)の入力計数用カウンタなどの各種カウンタ、燃料噴射用タイマ、点火用タイマ、定期割込みを発生させるための定期割込み用タイマ、クランク角センサ信号(クランクパルス)の入力間隔計時用タイマ、及び、システム異常監視用のウオッチドッグタイマなどの各種タイマを便宜上総称するものであり、その他、各種のソフトウエアカウンタ・タイマを含む。
【0050】
定電圧回路107は、2回路のリレー接点を有する電源リレー110の第1のリレー接点を介してバッテリ111に接続されると共に、直接、バッテリ111に接続されており、イグニッションスイッチ112のONがI/Oインターフェース106の入力ポートで検出されて電源リレー110の接点が閉になると、ECU100内の各部へ電源を供給する一方、イグニッションスイッチ112のON,OFFに拘らず、常時、バックアップRAM104にバックアップ用の電源を供給する。更に、バッテリ111には、燃料ポンプリレー113のリレー接点を介して燃料ポンプ31が接続されている。尚、電源リレー110の第2のリレー接点には、バッテリ111から各アクチュエータに電源を供給するための電源線が接続されている。
【0051】
また、I/Oインターフェース106の入力ポートには、イグニッションスイッチ112、アイドルスイッチ85b、ノックセンサ82、クランク角センサ87、気筒判別センサ88、車速センサ114等が接続され、更に、A/D変換器109を介して、吸入空気量センサ86、スロットル開度センサ85a、冷却水温センサ83、O2センサ84、絶対圧センサ81、差圧センサ80等が接続されると共に、バッテリ電圧VBが入力されてモニタされる。
【0052】
また、I/Oインターフェイス106の出力ポートには、過給圧リリーフ弁用切換ソレノイド弁SOL.1、吸気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.2、第1の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3、第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.4、プライマリウェストゲート制御用デューティソレノイド弁D.SOL.1、排気制御弁小開制御用デューティソレノイド弁D.SOL.2、セカンダリウェストゲート弁用切換ソレノイド弁SOL.W、吸気管圧力/大気圧切換ソレノイド弁76、ISC弁25、インジェクタ30が駆動回路108を介して接続されると共に、イグナイタ36が接続されている。
【0053】
以上の電子制御系では、イグニッションスイッチ112がONされると、電源リレー110がONし、定電圧回路107を介して各部に定電圧が供給され、ECU100が各種制御を実行する。すなわち、ECU100において、CPU101が、ROM102に格納されている演算プログラムに基づき、I/Oインターフェース106を介して各種センサからの検出信号を入力処理し、RAM103及びバックアップRAM104に記憶されている各種データ、ROM102に格納されている固定データに基づき、各種制御量を演算する。
【0054】
そして、駆動回路108を介して各切換ソレノイド弁76、SOL.1〜4、SOL.WにON,OFF信号を、各デューティソレノイド弁D.SOL.1,D.SOL.2にデューティ信号を出力してターボ過給機の作動切換制御及び過給圧制御を実行し、演算した燃料噴射量を定める駆動パルス幅信号を所定のタイミングで該当気筒のインジェクタ30に出力して燃料噴射制御を実行する。また、所定のタイミングでイグナイタ36に点火信号を出力して点火時期制御を実行し、ISC弁25に制御信号を出力してアイドル回転数制御等を実行する。
【0055】
この場合、ECU100によるターボ過給機作動切換制御では、運転領域をプライマリターボ過給機40のみを過給動作させるシングルターボ領域とプライマリターボ過給機40及びセカンダリターボ過給機50を共に過給動作させるツインターボ領域とに区分し、運転領域がシングルターボ領域にある場合には、過給圧リリーフ弁用切換ソレノイド弁SOL.1をOFFして過給圧リリーフ弁57を開弁すると共に、吸気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.2をOFFして吸気制御弁55を閉弁し、第1,第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3,SOL.4を共にOFFして排気制御弁を閉弁、或いは、第1の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3のみをONして排気制御弁53を小開し、プライマリターボ過給機40のみを過給動作させるシングルターボ状態とする。
【0056】
また、運転領域がツインターボ領域にある場合には、第1の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3のみをOFFして、過給圧リリーフ弁用切換ソレノイド弁SOL.1、吸気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.2、第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.4をONし、過給圧リリーフ弁57を閉弁して吸気制御弁55及び排気制御弁53を共に開弁し、両ターボ過給機40,50を過給動作させるツインターボ状態とする。
【0057】
そして、ツインターボ状態での運転中に、運転領域が再びシングルターボ領域になると、所定のディレイ時間をもって、過給圧リリーフ弁用切換ソレノイド弁SOL.1、吸気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.2、第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.4をOFFさせてツインターボ状態からシングルターボ状態に切換える。
【0058】
このとき、予めツインターボ状態において第1の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3がOFFされて排気制御弁53を開閉する排気制御弁作動アクチュエータ54の正圧室54aが大気開放され、正圧室54aに開弁方向の力が残存しない状態であるため、ツインターボ状態からシングルターボ状態に切換えるときに、第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.4をOFFして排気制御弁作動アクチュエータ54の負圧室54bに大気圧を導入することで、開弁方向の力を迅速に減衰させることができ、スプリングの付勢力によって排気制御弁53を応答性良く閉弁させることができる。これにより、ツインターボ状態からシングルターボ状態へ切換える際に、排気制御弁53の閉弁遅れに伴う排気エネルギーの損失を抑制して過給圧低下を防止することができ、制御性を向上することができる。
【0059】
すなわち、ECU100は、本発明に係わる排気制御弁開閉制御手段の機能を有し、具体的には、図3〜図6に示すルーチンにおいて排気制御弁開閉制御手段の機能を実現する。
【0060】
以下、ECU100によるプライマリターボ過給機40及びセカンダリターボ過給機50の作動制御に係わる処理について、図3〜図6のフローチャートを用いて説明する。
【0061】
図3〜図6は、プライマリターボ過給機40のみを過給動作させるシングルターボ状態への制御モード(シングルターボモード)と両ターボ過給機40,50を過給動作させるツインターボ状態への制御モード(ツインターボモード)とを切換えるターボ切換制御ルーチンを示し、イグニッションスイッチ112がONされてシステムに電源が投入され、システムがイニシャライズ(各フラグ、各カウント値のクリア等)された後、設定時間(例えば、10msec)毎に実行される。
【0062】
このターボ切換制御ルーチンでは、先ず、ステップS101で、現制御状態がシングルターボモードかツインターボモードかを判別するためのツインターボモード判別フラグF1(初期値は0;シングルターボモード)を参照する。そして、ツインターボモード判別フラグF1がクリア(F1=0)されているときには、ステップS101からステップS102以降のシングルターボモードの処理へ進み、セット(F1=1)されているときには、ステップS101からステップS160以降のツインターボモードの処理へ進む。
【0063】
以下の説明では、まずシングルターボモードについて説明し、次いで、シングル→ツイン切換制御、ツインターボモード、最後にツイン→シングル切換制御について説明する。
【0064】
イグニッションスイッチ112をONした直後、及び現制御状態がシングルターボモードの場合には、F1=0であるため、ステップS101からステップS102へ進み、エンジン回転数Nに基づきターボ切換判定値テーブルを補間計算付で参照してシングル→ツイン切換判定値Tp2を設定する。
【0065】
図7に示すように、ターボ切換判定値テーブルには、エンジン回転数Nとエンジン負荷を表す基本燃料噴射パルス幅Tp(Tp=K×Q/N;Qは吸入空気量、Kは定数)との関係からシングルターボモードからツインターボモードへ切換えるに最適なシングル→ツイン切換判定ラインL2と、その逆にツインターボモードからシングルターボモードへ切換えるに最適なツイン→シングル切換判定ラインL1を予めシミュレーション或いは実験等から求め、シングルターボ領域とツインターボ領域とが設定されている。そして、各ラインL2,L1に対応してそれぞれシングル→ツイン切換判定値Tp2、及びツイン→シングル切換判定値Tp1がエンジン回転数Nをパラメータとしたテーブルとして予めROM102の一連のアドレスに格納されている。
【0066】
尚、シングル→ツイン切換判定ラインL2は、切換時のトルク変動を防止するため、図8の出力特性のシングルターボ時のトルク曲線とツインターボ時のトルク曲線とが一致する点に設定する必要があり、このため、図7に示すように、低,中回転数域での高負荷からエンジン回転数Nの上昇に応じて低負荷側に設定される。また、同図に示すようにターボ過給機の作動切換時における制御ハンチングを防止するため、ツイン→シングル切換判定ラインL1は、シングル→ツイン切換判定ラインL2に対して低回転数側に比較的広い幅のヒステリシスを有して設定される。
【0067】
次いで、ステップS103へ進み、シングル→ツイン切換判定値Tp2と現在の基本燃料噴射パルス幅(エンジン負荷)Tpとを比較し、Tp<Tp2の場合、ステップS104以降へ進んでシングルターボモードの制御を行い、また、Tp≧Tp2の場合には、ステップS130以降へ分岐してシングルターボ状態からツインターボ状態に切換える為のシングル→ツイン切換制御に移行する。
【0068】
ステップS104以降のシングルターボモードの処理では、先ず、ステップS104で過給圧制御モード判別フラグF2の値を参照する。過給圧制御モード判別フラグF2は、現運転領域が排気制御弁53の小開により過給圧制御を行うと共にセカンダリターボ過給機50を予備回転させる排気制御弁小開制御領域内のときセット(F2=1)され、領域外のときクリア(F2=0)される。
【0069】
従って、イグニッションスイッチ112をONした直後はイニシャルセットにより、また前回ルーチン実行時に運転領域が排気制御弁小開制御領域外のときは、F2=0であるため、ステップS105へ進み、ステップS105ないしステップS107の条件判断により現在の運転領域が排気制御弁小開制御領域内に移行したかを判断する。
【0070】
この排気制御弁小開制御領域への移行判定は、図9に示すようにエンジン回転数Nと吸気管圧力(過給圧)Pとの関係で、シングル→ツイン切換判定ラインL2よりも低回転低負荷側、すなわちシングルターボ状態下において、設定値N2(例えば,2650rpm)、P2(例えば、1120mmHg)で囲まれた領域で、且つスロットル開度THが設定値TH2(例えば、30deg)以上のとき、領域内に移行したと判定する。
【0071】
具体的には、ステップS105でエンジン回転数Nと設定値N2とを比較し、ステップS106で吸気管圧力Pと設定値P2とを比較し、ステップS107でスロットル開度THと設定値TH2とを比較する。そして、N<N2、或いはP<P2、或いはTH<TH2の場合、ステップS108へ進み、現運転領域が排気制御弁小開制御領域外にあると判断して過給圧制御モード判別フラグF2をクリアし(F2←0)、また、N≧N2且つP≧P2且つTH≧TH2の場合にはステップS112へ進み、現運転領域が排気制御弁小開制御領域に移行したと判断して過給圧制御モード判別フラグF2をセットする(F2←1)。
【0072】
そして、ステップS108或いはステップS112からステップS113へ進んで、過給圧リリーフ弁用切換ソレノイド弁SOL.1をOFFし、ステップS114で吸気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.2をOFFする。次いでステップS115へ進むと、過給圧制御モード判別フラグF2の値を参照し、F2=0の場合、ステップS116へ進み、第1の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3をOFFし、ステップS118で第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.4をOFFする。
【0073】
その後、ステップS118からステップS119へ進み、ステップS119〜S121で、ツインターボモード判別フラグF1、後述するシングル→ツイン切換制御において用いられる差圧検索フラグF3、後述するシングル→ツイン切換制御によってツインターボ領域に移行した後のツインターボ領域継続時間を計時し、制御弁を切換えるタイミングを判断するためのツインターボ領域継続時間カウント値C1をそれぞれクリアし、ルーチンを抜ける。
【0074】
従って、シングルターボ状態下で、且つ排気制御弁小開制御領域外の低回転、低負荷の運転領域では、各切換ソレノイド弁SOL.1〜4がいずれもOFFとなる。そこで、過給圧リリーフ弁57は、過給圧リリーフ弁用切換ソレノイド弁SOL.1のOFFにより、サージタンク60からの負圧が圧力室に導入されることでスプリングの付勢力に抗して開弁する。吸気制御弁55は、吸気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.2のOFFにより吸気制御弁作動用アクチュエータ56の圧力室に負圧が導入されることで、スプリングの付勢力に抗して逆に閉弁する。また、排気制御弁53は、第1,第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3,4のOFFにより、排気制御弁作動用アクチュエータ54の両室54a,54bに大気圧が導入されることでスプリングの付勢力により閉弁する。
【0075】
そして、排気制御弁53の閉弁によりセカンダリターボ過給機50への排気の導入が遮断され、セカンダリターボ過給機50が不作動となり、プライマリターボ過給機40のみ作動のシングルターボ状態となる。また、吸気制御弁55の閉弁により、プライマリターボ過給機40からの過給圧の吸気制御弁55を介してのセカンダリターボ過給機50側へのリークが防止され、過給圧の低下が防止される。
【0076】
尚、シングルターボ状態で且つ排気制御弁小開制御領域外の場合、或いはツインターボ状態の場合には、過給圧フィードバック制御はプライマリウェストゲート弁41のみを用いて行われる。すなわち、エンジン運転状態に基づき設定される目標過給圧と絶対圧センサ81により検出される吸気管圧力すなわち実過給圧Pとを比較し、その比較結果に応じて例えばPI制御によりプライマリウェストゲート制御デューティソレノイド弁D.SOL.1に対するONデューティ(デューティ比)を演算し、このONデューティのデューティ信号をプライマリウェストゲート制御デューティソレノイド弁D.SOL.1に出力してプライマリウエストゲート弁41を制御することにより過給圧制御を行う。
【0077】
一方、現運転領域が排気制御弁小開制御領域内と判断され、ステップS112で過給圧制御モード判別フラグF2がセットされた場合には、ステップS113〜S115を経てステップS117へ進み、第1の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3をONした後、前述のステップS118〜S121を経てルーチンを抜ける。そこで、第1の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3のみがONされ、排気制御弁作動用アクチュエータ54の正圧室54aに正圧が導入され、排気制御弁53が開かれる。
【0078】
尚、この排気制御弁小開制御モード下では、排気制御弁53を用いて過給圧フィードバック制御が行われ、これに伴い排気制御弁53が小開される。すなわち、目標過給圧と絶対圧センサ81により検出される実過給圧とを比較し、その比較結果に応じて、例えばPI制御により排気制御弁小開制御用デューティソレノイド弁D.SOL.2に対するONデューティ(デューティ比)を演算し、このONデューティのデューティ信号を排気制御弁小開制御用デューティソレノイド弁D.SOL.2に出力し、過給圧フィードバック制御を実行する。
【0079】
このため、排気制御弁小開制御用デューティソレノイド弁D.SOL.2により排気制御弁作動用アクチュエータ54の正圧室54aに作用する正圧が調圧され、図14に示すように、排気制御弁53が小開して排気制御弁53のみを用いて過給圧フィードバック制御が行われる。そして、排気制御弁53の小開により排気の一部がセカンダリターボ過給機50のタービン50aに供給され、ツインターボ状態への移行に備えてセカンダリターボ過給機50が予備回転される。
【0080】
この状態下では、吸気制御弁55が閉弁されているため、セカンダリターボ過給機50のコンプレッサ50b下流と吸気制御弁55との間に過給圧(セカンダリターボ過給機50によるコンプレッサ圧)が封じ込められるが、このとき過給圧リリーフ弁57の開弁により、この過給圧をリークさせ、予備回転の円滑化を図っている。
【0081】
また、シングルターボ状態下でエンジン運転領域が排気制御弁小開制御領域内にあり、過給圧制御モード判別フラグF2がセット(F2=1)されている場合には、ステップS104からステップS109へ進み、ステップS109ないしステップS111の条件判断により現在の運転領域が排気制御弁小開制御領域外に移行したかの判断がなされる。
【0082】
この領域外への移行判定は、過給圧制御モード切換時の制御ハンチングを防止するため、エンジン回転数N、吸気管圧力P、及びスロットル開度THに対する各判定値にヒステリシスを設けており、図9に示すように、前述の設定値N2,P2,TH2よりも低い値の設定値N1(例えば、2600rpm)、P1(例えば、1070mmHg)、TH1(例えば、25deg)により判定する。
【0083】
すなわち、ステップS109でエンジン回転数Nと設定値N1とを比較し、ステップS110で吸気管圧力(過給圧)Pと設定値P1とを比較し、ステップS111でスロットル開度THと設定値TH1とを比較し、N<N1、或いはP<P1、或いはTH<TH1の場合、現運転領域が排気制御弁小開制御領域外に移行したと判断して前述のステップS108へ戻り、過給圧制御モード判別フラグF2をクリアする。これにより、排気制御弁小開制御が解除される。また、N≧N1且つP≧P1且つTH≧TH1の場合には、現運転領域が領域内のままであると判断して前述のステップS112へ進み、過給圧制御モード判別フラグF2をF2=1の状態に保持し、排気制御弁小開制御を継続する。
【0084】
以上のように、シングルターボ状態下では、エンジン1からの排気の殆どが、プライマリターボ過給機40に導入されてタービン40aによりコンプレッサ40bを回転駆動する。そこでコンプレッサ40bにより空気を吸入圧縮し、この圧縮空気がインタークーラ20で冷却され、スロットル弁21の開度で流量調整され、チャンバ22、吸気マニホールド23を介して各気筒に高い充填効率で供給されて過給作用する。そして、このプライマリターボ過給機40のみ作動のシングルターボ状態では、図8の出力特性に示すように、低,中回転数域で高い軸トルクのシングルターボ時のトルク曲線が得られる。
【0085】
次に、シングル→ツイン切換制御について説明する。前述のステップS103で、Tp≧Tp2すなわち現在の運転領域がシングルターボ領域からツインターボ領域(図7参照)に移行したと判断されると、ステップS103からステップS130へ分岐し、プライマリターボ過給機40のみ作動のシングルターボ状態から両ターボ過給機40,50作動のツインターボ状態へ切換えるためのシングル→ツイン切換制御を実行する。
【0086】
このシングル→ツイン切換制御では、先ず、ステップS130で過給圧リリーフ弁用切換ソレノイド弁SOL.1に対する通電状態を判断し、また、ステップS132で第1の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3に対する通電状態を判断する。そして、両切換ソレノイド弁SOL.1,3が共にONの場合は、そのままステップS134へ進み、各切換ソレノイド弁SOL.1,3がOFFの場合、ステップS131,S133でそれぞれONにした後、ステップS134へ進む。
【0087】
そこで、過給圧リリーフ弁用切換ソレノイド弁SOL.1のONにより正圧通路64aからの正圧が過給圧リリーフ弁57の圧力室に導入され、この正圧及びスプリングの付勢力により過給圧リリーフ弁57が直ちに閉弁する。また、第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.4がOFFで第1の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3のみがONすることにより、排気制御弁作動用アクチュエータ54の負圧室54bが大気に開放された状態で正圧室54aに正圧が導入され、スプリングの付勢力に抗して排気制御弁53が開弁する。
【0088】
この場合、シングルターボ状態下の排気制御弁小開制御モードからシングル→ツイン切換制御に移行した場合には、排気制御弁53による過給圧フィードバック制御が中止され、排気制御弁小開制御用デューティソレノイド弁D.SOL.2が全閉され、正圧通路64bを介しての正圧が排気制御弁小開制御用デューティソレノイド弁D.DOL.2によりリークされることなく直接排気制御弁作動用アクチュエータ54の正圧室54aに導入されるので、排気制御弁53の開度が増大される。
【0089】
そして、過給圧リリーフ弁57の閉弁によりリリーフ通路58が遮断され、且つ排気制御弁53の開弁、及びその開度増大によりセカンダリターボ過給機50の回転数が上昇されると共に、セカンダリターボ過給機50のコンプレッサ50b下流と吸気制御弁55との間の過給圧が次第に上昇され、ツインターボ状態への移行に備えられる。
【0090】
次に、ステップS134では、差圧検索フラグF3の値を参照し、F3=0の場合、ステップS135へ進み、F3=1の場合、ステップS139へジャンプする。シングル→ツイン切換制御に移行後、初回のルーチン実行時にはF3=0であるためステップS135へ進み、先ず、車速VSPに基づき排気制御弁開ディレイ時間設定テーブルを補間計算付で参照して、シングル→ツイン切換制御移行後の排気制御弁53の全開制御(第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.4をOFFからONにする)時期を定める排気制御弁開ディレイ時間T1を設定する。
【0091】
そして、ステップS136で、車速VSPに基づき吸気制御弁開ディレイ時間設定値テーブルを補間計算付で参照して、排気制御弁53の全開制御後に吸気制御弁55の開弁制御(吸気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.2をOFFからONにする)開始時期の条件を定めるための吸気制御弁開ディレイ時間T2を設定し、さらに、ステップS137で、吸気制御弁55の上流圧Puと下流圧Pdとの差圧(差圧センサ80の読込み値)DPS(=Pu−Pd)に基づき、吸気制御弁55の開弁制御開始時期を定めるための吸気制御弁開差圧DPSSTを設定する。
【0092】
図10に排気制御弁開ディレイ時間設定テーブルの特性を、図11に吸気制御弁開ディレイ時間設定テーブルの特性をそれぞれ示す。図10,11に示すように、車速VSPが高い程、排気制御弁開ディレイ時間T1及び吸気制御弁開ディレイ時間T2を短くして、排気制御弁53を全開させるタイミング及び吸気制御弁55を開けるタイミング、すなわち、シングルターボ状態からツインターボ状態に切換わるタイミングを早め、車速に拘らず加速応答性を均一化させ、ドライバビリティの向上を図る。
【0093】
また、図12に吸気制御弁開差圧設定テーブルの特性を示す。同図に示すようにエンジン運転状態がシングルターボ領域からシングル→ツイン切換判定ラインL2(シングル→ツイン切換判定値Tp2)を境としてツインターボ領域(図7参照)に移行した直後の差圧DPSがマイナス側にある程、すなわち、吸気制御弁55の上流圧Puに対し下流圧Pdが高く、高過給状態である程、吸気制御弁55を開とする判断条件としての吸気制御弁開差圧DPSSTをマイナス側とし、吸気制御弁55を開けるタイミング、すなわちセカンダリターボ過給機50による過給開始時期を早め、早期にツインターボ状態として加速性能を向上させる。
【0094】
以上のディレイ時間T1,T2、及び吸気制御弁開差圧DPSSTを設定した後、ステップS138へ進んで差圧検索フラグF3をセットし(F3←1)、ステップS139で第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.4に対する通電状態を調べることにより、既に排気制御弁53に対する全開制御が開始されているか否かを判断する。
【0095】
その結果、ステップS139において、SOL.4=ONであり、既に排気制御弁全開制御が開始されている場合には、ステップS143へジャンプして第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.4をONに保持し、SOL.4=OFFの場合には、排気制御弁全開制御実行前であるため、ステップS140へ進み、ツインターボ領域継続時間カウント値C1と排気制御弁開ディレイ時間T1とを比較する。
【0096】
そして、C1≧T1の場合には、ステップS141へ進んで第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.4をONさせ、排気制御弁53を全開させる。また、C1<T1のディレイ時間経過前のときには、ステップS148へ進んでツインターボ領域継続時間カウント値C1をカウントアップし(C1←C1+1)、ルーチンを抜ける。
【0097】
その後、ツインターボ領域継続時間カウント値C1が排気制御弁開ディレイ時間T1に達すると(C1≧T1)、ステップS140からステップS141へ進んで第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.4をONする。これにより、第1,第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3,SOL.4が共にONとなって排気制御弁53が全開され、セカンダリターボ過給機50の回転数がより上昇されてコンプレッサ50bと吸気制御弁55との間のセカンダリターボ過給機50によるコンプレッサ圧(過給圧)が上昇し、図14に示すように、吸気制御弁55の上流と下流との差圧DPSが上昇する。
【0098】
次に、ステップS142へ進み、以下、ツインターボ領域継続時間カウント値C1によって排気制御弁全開制御後の時間を計時するために、ツインターボ領域継続時間カウント値C1を一旦クリアする(C1←0)。そして、ステップS143で、排気制御弁全開制御(SOL.4がOFF→ON)後の経過時間を表すツインターボ領域継続時間カウント値C1と吸気制御弁開ディレイ時間T2とを比較し、C1<T2の場合には、吸気制御弁55の開弁条件が成立していないと判断してステップS148でツインターボ領域継続時間カウント値C1をカウントアップしてルーチンを抜け、また、C1≧T2の場合には、開弁条件成立と判断してステップS144へ進み、現在の差圧DPSと吸気制御弁開差圧DPSSTとを比較し、吸気制御弁55の開弁開始時期に達したかを判断する。
【0099】
その結果、DPS<DPSSTのときには開弁開始時期に達していないと判断してステップS145へ進み、DPS≧DPSSTのときには、吸気制御弁55の上流圧Puと下流圧Pdとが略等しくなり、すなわち、セカンダリターボ過給機50のコンプレッサ50bと吸気制御弁55との間のセカンダリターボ過給機50による過給圧が上昇してプライマリターボ過給機40による過給圧と略等しくなり、吸気制御弁開弁開始時期に達したと判断してステップS146へ進み、吸気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.2をONさせて吸気制御弁55を開弁させる。
【0100】
その結果、セカンダリターボ過給機50からの過給が開始され、ツインターボ状態となる。そして、ステップS147へ進み、シングル→ツイン切換制御の終了により、次回、ツインターボモードへ移行させるべくツインターボモード判別フラグF1をセットしてルーチンを抜ける。
【0101】
また、ステップS144でDPS<DPSSTと判断されてステップS145へ進んだ場合は、さらにカウント値C1を、吸気制御弁開ディレイ時間T2に設定値TDPを加算した値と比較する。そして、C1<T2+TDPのときにはステップS148へ進み、カウント値C1をカウントアップしてルーチンを抜け、C1≧T2+TDPのときには、ステップS146へ進み、差圧DPSが吸気制御弁開差圧DPSSTに達してなくても吸気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.2をONし、吸気制御弁55を開弁させてツインターボモードに移行させる。
【0102】
すなわち、差圧センサ80系の故障により、差圧センサ80による差圧DPSが上昇しない場合は、排気制御弁開ディレイ時間T1が経過して排気制御弁53を全開後、さらに吸気制御弁開ディレイ時間T2が経過した後も、何時迄たっても吸気制御弁55が開弁されず、この間、セカンダリターボ過給機50のコンプレッサ50bと吸気制御弁55との間にセカンダリターボ過給機50による過給圧(コンプレッサ圧)が封じ込められ、セカンダリターボ過給機50と吸気制御弁55との間の過給圧が異常上昇し、セカンダリターボ過給機50がサージングを生じて損傷してしまう。このため、排気制御弁53を全開制御後、さらに吸気制御弁開ディレイ時間T2に設定値TDPを加算した時間(T2+TDP)経過後は、差圧DPSが吸気制御弁開差圧DPSSTに達していなくても、吸気制御弁55を開弁させることで、セカンダリターボ過給機50と吸気制御弁55との間の過給圧の異常上昇を防止し、差圧センサ80系の故障に伴うセカンダリターボ過給機50の損傷を未然に防止する。
【0103】
尚、以上のシングル→ツイン切換制御によるシングルターボ状態からツインターボ状態への切換わり状態を図14のタイムチャートに示す。上述のように、シングル→ツイン切換制御においては、先ず、過給圧リリーフ弁57を閉弁すると共に、排気制御弁53を開弁し、セカンダリターボ過給機50の予備回転数を上昇させると共に、その後、セカンダリターボ過給機50の予備回転数を上昇させるに必要な時間を排気制御弁開ディレイ時間T1により与え、このディレイ時間T1経過後に排気制御弁53を全開にする。
【0104】
そして、セカンダリターボ過給機50のコンプレッサ50bと吸気制御弁55間のセカンダリターボ過給機50による過給圧が上昇して差圧DPSが上昇し、排気制御弁55を全開制御後、吸気制御弁開ディレイ時間T2により排気制御弁53が全開されるまでの作動遅れ時間を補償し、ディレイ時間T2の経過後、吸気制御弁55の上流と下流との差圧DPSが吸気制御弁開差圧DPSSTに達した時点で吸気制御弁55を開弁する。
【0105】
これによって、プライマリターボ過給機40のみ作動のシングルターボ状態から両ターボ過給機40,50作動によるツインターボ状態への切換わりがスムーズに行われ、さらに、吸気制御弁の上流圧Puと下流圧Pdとが略等しくなった時点で吸気制御弁55を開弁してセカンダリターボ過給機50からの過給を開始させるので、ツインターボ状態への切換え時に発生する過給圧の一時的な低下によるトルクショックの発生が有効かつ確実に防止される。
【0106】
次に、ツインターボモードについて説明する。シングル→ツイン切換制御の終了によりツインターボモード判別フラグF1がセットされると、或いは前回ルーチン実行時にツインターボモードであった場合、今回ルーチン実行時、F1=1によりステップS101からステップS160に分岐する。
【0107】
ステップS160では、エンジン回転数Nに基づきターボ切換判定値テーブルを補間計算付で参照してツイン→シングル切換判定値Tp1を設定し(図7参照)、ステップS161で、エンジン負荷を表す基本燃料噴射パルス幅Tpとツイン→シングル切換判定値Tp1とを比較する。そして、Tp>Tp1であり、現在の運転状態がツインターボ領域にある場合は、ステップS161からステップS162へ進んで判定値検索フラグF4をクリアする(F4←0)。
【0108】
判定値検索フラグF4は、後述するシングルターボ領域継続時間判定値T4の設定によってセットされるフラグであり、エンジン運転状態がツインターボ状態にあり、且つエンジン負荷を表す基本燃料噴射パルス幅Tpがツイン→シングル切換判定ラインL1(Tp1)を境にツインターボ領域内にあるとき、クリアされる。
【0109】
次いで、ステップS163へ進み、シングルターボ領域に移行後のシングルターボ領域継続時間をカウントする為のシングルターボ領域継続時間カウント値C2をクリアした後、ステップS169へジャンプする。そして、ステップS169,S170で、過給圧リリーフ弁用切換ソレノイド弁SOL.1、吸気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.2をそれぞれONとし、過給圧リリーフ弁57を閉弁に、吸気制御弁55を全開に保持する。
【0110】
次に、ステップS171へ進み、第1の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3をONからOFFにし、吸気制御弁55下流側に連通する正圧通路64b側を閉じて大気ポートを開き、制御圧通路73aを介して排気制御弁作動用アクチュエータ54の正圧室54aに大気を導入し、ステップS172で、第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.4をONに維持する。すなわち、排気制御弁作動用アクチュエータ54の正圧室54aを大気開放し、負圧室54bの負圧のみで排気制御弁53を全開に保持する。そして、ステップS173でツインターボモード判別フラグF1をセットしてステップS121へ戻り、ツインターボ領域継続時間カウント値C1をクリアした後、ルーチンを抜ける。
【0111】
このツインターボモード下では、過給圧リリーフ弁57の閉弁、吸気制御弁55の開弁、排気制御弁53の全開により、プライマリターボ過給機40に加えてセカンダリターボ過給機50が本格作動し、両ターボ過給機40,50の過給動作によるツインターボ状態となり、両ターボ過給機40,50の過給による圧縮空気が吸気系に供給され、図8の出力特性に示すように、高回転数域で高い軸トルクのツインターボ時のトルク曲線が得られる。
【0112】
一方、ステップS161でTp≦Tp1、すなわち、現在の運転状態がシングルターボ領域(図7参照)に移行したと判断されると、ステップS164以降でツイン→シングル切換制御を行う。このツイン→シングル切換制御では、ステップS164で判定値検索フラグF4の値を参照し、F4=0の場合にはステップS165へ進み、また、F4=1の場合にはステップS167へ進む。
【0113】
従って、Tp≦Tp1後、初回のルーチン実行に際してはF4=0によりステップS164からステップS165へ進み、エンジン負荷を表す基本燃料噴射パルスTpに基づきシングルターボ領域継続時間判定値テーブルを補間計算付で参照してシングルターボ領域継続時間判定値T4を設定し、ステップS166で判定値検索フラグF4をセット(F4←1)した後、ステップS167へ進む。
【0114】
シングルターボ領域継続時間判定値T4は、エンジン運転状態がツインターボ領域からシングルターボ領域へ移行した後、所定時間経過後にプライマリターボ過給機40のみ作動のシングルターボ状態に切換えるための基準値であり、図13にシングルターボ領域継続時間判定値テーブルの特性を示す。
【0115】
シングルターボモード領域継続時間判定値T4は、エンジン負荷を表す基本燃料噴射パルス幅Tpに応じて設定され、例えば、最大2.5sec、最小0.6secとして、基本燃料噴射パルス幅Tpの値が大きく高負荷である程、小さい値に設定される。これにより、エンジン運転状態がツインターボ領域からシングルターボ領域に移行後、両ターボ過給機40,50作動のツインターボ状態からプライマリターボ過給機40のみ作動のシングルターボ状態に切換えるタイミングがエンジン負荷が高いほど早められ、ツインターボ状態でのトルクの低い部分での運転が防止され、再加速性が向上する。
【0116】
次に、ステップS167では、シングルターボ領域継続時間カウント値C2をカウントアップし、ステップS168でシングルターボ領域継続時間判定値T4とシングルターボ領域継続時間カウント値C2とを比較する。そして、C2<T4の場合は、前述のステップS169へ進んでツインターボ状態を維持し、C2≧T4の場合、ステップS168からステップS174へ進んでカウント値C2をクリアした後、ステップS108へ戻ってツインターボ状態からシングルターボ状態に切換える。
【0117】
ツインターボ状態からシングルターボ状態への切換えでは、ステップS108で過給圧制御モード判別フラグF2をクリアし、ステップS113で、過給圧リリーフ弁57を開弁させるべく過給圧リリーフ弁用切換ソレノイド弁SOL.1をOFFし、ステップS114で、吸気制御弁55を閉弁させるべく吸気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.2をOFFする。
【0118】
次いで、F2=0により、ステップS115からステップS116へ進んで第1の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3をOFFに維持したまま、ステップS118で第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.4をOFFし、排気制御弁53を全閉させる。そして、ステップS119でツインターボモード判別フラグF1をクリアし、ステップS120,S121で、差圧検索フラグF3、ツインターボ領域継続時間カウント値C1をそれぞれクリアしてルーチンを抜ける。
【0119】
このときの切換わり状態を図15のタイムチャートに示す。ツインターボ状態からシングルターボ状態への切換わりは、エンジン運転領域がツインターボ領域からシングルターボ領域に移行後(Tp≦Tp1)、その状態が設定時間継続したとき(C2≧T4)、行われることになり、変速機の変速時等に伴い、エンジン回転数Nやエンジン負荷が一時的に低下することによる不要な過給機の切換わりが未然に防止される。
【0120】
ここで、設定時間を与えるシングルターボ領域継続時間判定値T4が、エンジン負荷を表す基本燃料噴射パルス幅Tpの値が高く高負荷である程、短い時間に設定されてシングルターボ状態への切換わりが早められる。すなわち、エンジン高負荷運転時には高トルクを要するが、図7,図8に示すように、ツイン→シングル切換判定ラインL1を境としたシングルターボ領域側は、ツインターボ時の軸トルク曲線で与えられるトルクよりも、シングルターボ時の軸トルク曲線で与えられるトルクの方が高く、この領域でツインターボ状態を維持すると軸トルクが充分得られず、出力性能が悪化し、再加速性能も悪化する。
【0121】
このため、エンジン高負荷時には、シングルターボ領域継続時間判定値T4が短い値に設定されることでツインターボ状態からシングルターボ状態への切換が早められ、ツインターボ状態でのトルクの低い領域での運転を必要最低限としてトルクの高いシングルターボ状態に迅速に切換えることで、出力性能が向上すると共に再加速性能も向上する。
【0122】
また、低負荷運転時は、低トルク状態であり、ツインターボ時とシングルターボ時とのトルクの段差が小さく、設定時間を充分与えてツインターボ状態からシングルターボ状態へ切換わってもトルク変動を殆ど生じない。このため、低負荷時には、エンジン運転領域がツイン→シングル切換判定ラインL1を境にツインターボ領域側からシングルターボ領域へ移行後、その状態をシングルターボ領域継続時間判定値T4で与えられる比較的長い時間継続した後、ツインターボ状態からシングルターボ状態に切換えることで、エンジン回転数Nが一時的に低下することによる過給機の不要な切換わりを有効且つ確実に回避する。
【0123】
そして、ツインターボ領域下において、シングルターボ領域継続時間判定値T4により与えられる設定時間を経過した後、第1の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3をOFFに維持したまま、過給圧リリーフ弁用切換ソレノイド弁SOL.1、吸気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.2、第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.4を全てOFFし、過給圧リリーフ弁57を開弁すべく過給圧リリーフ弁57の圧力室にサージタンク60からの負圧を導入すると共に、吸気制御弁55を閉弁すべく吸気制御弁作動用アクチュエータ56の圧力室にサージタンク60からの負圧を導入し、また、排気制御弁53を閉弁すべく排気制御弁作動用アクチュエータ54の負圧室54bを大気に開放する。
【0124】
このとき、図15のタイムチャートに示すように、過給圧リリーフ弁57が全開するまでのディレイ時間、吸気制御弁55が全閉するまでのディレイ時間、排気制御弁53が全閉するまでのディレイ時間は、それぞれ異なり、過給圧を直接リークするのみの過給圧リリーフ弁57が最も早く全開となる。
【0125】
この場合、従来のように、ツインターボ状態で、第1,第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3,4を共にONし、排気制御弁作動用アクチュエータ54の正圧室54aに正圧を導入すると共に負圧室54bに負圧を導入して排気制御弁53を全開に保持し、シングルターボ状態に切換える時点で、第1,第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3,4を同時にOFFして排気制御弁53を閉弁させる場合には、排気制御弁作動用アクチュエータ54の正圧室54aが大気圧状態に移行するまでの圧力応答遅れにより、スプリングによる閉弁方向の付勢力に抗して開方向の力が残存することになり、図15に破線で示すように、排気制御弁53の閉弁応答遅れが発生する。従って、この排気制御弁53の閉弁遅れにより排気エネルギー損失に起因する一時的な過給圧の低下を招き、トルクの谷が発生してトルクショックが発生する虞がある。
【0126】
このため、ツインターボ状態では、予め第1の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.3をOFFして排気制御弁作動用アクチュエータ54の正圧室54aを大気開放して正圧室54aに開弁方向の力が残存しない状態とし、排気制御弁作動用アクチュエータ54の負圧室54bに導入される負圧のみで排気制御弁53を全開に保持する。そして、ツインターボ状態からシングルターボ状態に切換えるときに、第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁SOL.4をOFFして排気制御弁作動用アクチュエータ54の負圧室54bを大気開放することで迅速に開弁方向の力を減衰させ、スプリングの付勢力による排気制御弁53の閉弁応答性を向上させる。
【0127】
これにより、ツインターボ状態からシングルターボ状態に切換える際、過給圧リリーフ弁57の全開に対して排気制御弁53を迅速に全閉として排気エネルギーの損失を抑制し、ツインターボ状態からシングルターボ状態に切換わる際のトルク低下を最小限に抑えて制御性を向上し、運転フィーリングの悪化を防止することができる。
【0128】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ツインターボ状態からシングルターボ状態に切換えるとき、排気制御弁を開閉するアクチュエータの正圧室に開弁方向の力が残存しない状態で負圧室に大気を導入して開弁方向の力を迅速に減衰させるので、スプリングの付勢力による排気制御弁の閉弁応答性を向上させ、制御性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】過給機付エンジンの全体構成図
【図2】電子制御系の回路構成図
【図3】ターボ切換制御ルーチンのフローチャート(その1)
【図4】ターボ切換制御ルーチンのフローチャート(その2)
【図5】ターボ切換制御ルーチンのフローチャート(その3)
【図6】ターボ切換制御ルーチンのフローチャート(その4)
【図7】ターボ切換判定値テーブルの説明図
【図8】シングルターボ時とツインターボ時との出力特性を示す説明図
【図9】排気制御弁小開制御領域の説明図
【図10】排気制御弁開ディレイ時間設定テーブルの説明図
【図11】吸気制御弁開ディレイ時間設定テーブルの説明図
【図12】吸気制御弁開差圧設定テーブルの説明図
【図13】シングルターボ領域継続時間判定値テーブルの説明図
【図14】シングルターボ状態からツインターボ状態への切換えを示すタイムチャート
【図15】ツインターボ状態からシングルターボ状態への切換えを示すタイムチャート
【符号の説明】
1 過給機付エンジン
40 プライマリターボ過給機
50 セカンダリターボ過給機
53 排気制御弁
54 排気制御弁作動用アクチュエータ
54a 正圧室
54b 負圧室
SOL.3 第1の排気制御弁用切換ソレノイド弁(第1の切換弁)
SOL.4 第2の排気制御弁用切換ソレノイド弁(第2の切換弁)
100 電子制御装置(排気制御弁開閉制御手段)

Claims (2)

  1. エンジンの吸,排気系にプライマリターボ過給機とセカンダリターボ過給機と並列に配置すると共に、上記セカンダリターボ過給機へ排気を導入する通路を開閉する排気制御弁に、正圧が導入される正圧室と負圧が導入される負圧室との2つの圧力室の圧力差による開弁方向の力と、上記負圧室に収納されるスプリングの機械的な付勢力による閉弁方向の力とに応じて開閉動作を行うアクチュエータを連設し、上記排気制御弁を上記アクチュエータにより閉弁或いは小開させて上記プライマリターボ過給機のみを過給動作させるシングルターボ状態と、上記排気制御弁を上記アクチュエータにより開弁させて両ターボ過給機を共に過給動作させるツインターボ状態とをエンジン運転領域に応じて切換える過給機付エンジンの制御装置において、
    ツインターボ状態において上記アクチュエータの正圧室に大気を導入すると共に上記アクチュエータの負圧室に負圧を導入して上記排気制御弁を開弁状態に維持し、ツインターボ状態からシングルターボ状態に切換えるとき、上記アクチュエータの負圧室に大気を導入して上記排気制御弁を閉弁させる排気制御弁開閉制御手段を備えたことを特徴とする過給機付きエンジンの制御装置。
  2. 上記排気制御弁開閉制御手段は、
    ツインターボ状態では、大気に連通するポートと上記セカンダリターボ過給機のコンプレッサ下流側に連通するポートとを有する第1の切換弁により上記アクチュエータの正圧室を大気に連通させると共に、大気に連通するポートと負圧を貯留するサージタンクに連通するポートとを有する第2の切換弁により上記アクチュエータの負圧室を上記サージタンクに連通させ、
    ツインターボ状態からシングルターボ状態に切換えるとき、上記第2の切換弁を切換えて上記アクチュエータの負圧室を大気に連通させることを特徴とする請求項1記載の過給機付エンジンの制御装置。
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