JP4540947B2 - X線ct装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はX線CT装置に係わり、特に心臓領域のCT撮影を行うのに好適なX線CT装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線CT装置は、X線源とX線検出器とを対向配置したスキャナを被検体の周囲360度回転しながら(第3世代CT装置)被検体を透過したX線を取得し、逆投影法などの画像再構成法を用いて断層画像を得る医療機器であり、鮮明な断層像が得られるためその臨床的有用性は高く、例えば、通常のレントゲン検査では写らない程度の肺がんや石灰化などを明瞭に捉えることが可能である。しかし、心臓領域の撮影の場合、心臓は通常、健常者で1分間に60〜70回の拍動を繰り返しており、X線CT装置で同部を撮影すると、その再構成画像にアーチファクト(擬似画像)が発生する。このため拍動する心臓を撮影するには、スキャナが被検体の周囲を回転走査する第3世代CT装置では原理的に無理がある。
【0003】
この点、X線源とX線検出器が被検体の周囲を回転走査しない電子ビーム走査型CTと呼ばれる第4世代CT装置では、スキャンスピードを100msec程度まで高速化して心臓領域の撮影を可能にしているが、心臓が停止したような明瞭な心臓断層像が得られるものの装置が大規模化し高価格となってしまう。また第3世代CT装置を用いて心臓領域の撮影を実現するために、比較的心臓の動きの少ない拡張期前後のみに計測された投影データを再構成する方法等があり、これは心電同期再構成法またはECG再構成法などと呼ばれている。スキャンスピードが1秒程度の第3世代CT装置で実施されているECG再構成法では、十分な時間分解能の心臓断層像を得ることはできない。ところが、近年、第3世代CT装置のスキャンスピードは1秒を大きく下回る0.5秒以下が実現され、さらには体軸方向に多数配列された多列検出器が搭載されるようになると、ECG再構成法が見直されてきた。
【0004】
このような多列検出器を搭載したスキャンスピードが1秒以下のX線CT装置でECG再構成法を実施すると、心臓領域を実効的な時間分解能100〜250msec程度で再構成画像を得ることも可能となり、時間分解能ではウルトラファーストCT装置と同等とも成り得てきた。心臓領域をECG再構成法を用いて撮影すると、心臓が停止したかのような鮮明な心臓断層像が得られる以外に冠動脈の石灰化などの情報も画像から得ることが可能となる。この冠動脈の石灰化は虚血性心疾患と強い相関があると言われている。ウルトラファーストCT装置では、冠動脈石灰化の大きさやCT値などから石灰化の危険度指標であるカルシウムスコアを算出し、虚血性心疾患の予防に役立てている。
【0005】
しかしながら、冠動脈石灰化は冠動脈自体が数ミリ程度であるため、その石灰化の大きさも非常に小さい。それゆえ、石灰化のCT値が実際よりも低く計測されることがある。カルシウムスコアリングの基準は石灰化した領域のCT値を基準としているため、発見した冠動脈石灰化のCT値が低く計測されることはカルシウムスコア値が下がることになり、これは虚血性心疾患の危険度指標を下げていることになってしまう。このような問題を解決するため、カルシウム基準体を被検体と一緒にスキャンし、これを補正に用いるX線CT装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−186611号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のX線CT装置は、被検体と一緒に患者ベッドに埋め込まれたカルシウム基準体をスキャンしているため、X線高吸収体と一緒に人体などをスキャン処理することになり、再構成画像にはアーチファクトが多く発生することが予想され臨床上有効ではない。またカルシウム基準体はカルシウムの含有量が異なっているが、その大きさは一定であり、様々な大きさの石灰化に対して適切に補正することができなかった。
【0008】
本発明の目的は、再構成画像におけるアーチファクトを軽減しながら石灰化のCT値を適切に補正することができるようにしたX線CT装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、被検体を介してX線源とX線検出器を対向配置し、スキャン処理時にX線源から照射して被検体を透過したX線を上記X線検出器で検出して計測投影データを取得し、この計測投影データを用いて再構成手段によって再構成画像を得るX線CT装置において、被検体のスキャン処理に先立ってカルシウム成分補正テーブルの作成を開始する補正テーブル作成手段と、被検体のスキャン処理による内部カルシウム成分のCT値を上記カルシウム成分補正テーブルに応じて補正するカルシウムキャリブレーション手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明によるX線CT装置は、従来のように被検体と一緒に患者ベッドに埋め込まれたカルシウム基準体をスキャンするのではなく、被検体のスキャン処理に先立って、カルシウムファントムスキャン処理手段によるカルシウムファントムスキャン処理を実施し、この結果に基づいてカルシウムキャリブレーション処理手段でカルシウムキャリブレーション処理を行ってCT値を補正しているため、X線高吸収体と一緒に人体などをスキャン処理することがないので再構成画像におけるアーチファクトを軽減しながら石灰化のCT値を適切に補正することができる。
【0011】
また請求項2に記載の本発明は、請求項1記載のものにおいて、上記カルシウム成分補正テーブルは、カルシウム成分の含有量および大きさとが異なる複数のカルシウム基準体を有するカルシウムファントムを用い、このカルシウムファントムのスキャン処理によるCT値と、理想的CT値との差から作成したことを特徴とする。このようなX線CT装置によれば、カルシウム成分の含有量および大きさとが異なる複数のカルシウム基準体を有するカルシウムファントムを用いているため、被検体のスキャン処理によるカルシウム成分の大きさに対応させたカルシウム基準体を選定して、より正確にCT値を補正することができる。
【0012】
例えば、カルシウム成分補正テーブルは、カルシウム成分の含有量および大きさとが異なる複数のカルシウム基準体を有するカルシウムファントムを用い、このカルシウムファントムのスキャン処理によるCT値を測定し、測定された直径別の上記カルシウム基準体のCT値を元に算出した補正基準線から両者の誤差量を得て作成し、カルシウムキャリブレーション手段は、被検体のスキャン処理による内部カルシウム成分のCT値を上記誤差量から補正することができる。
【0013】
また請求項3に記載の本発明は、請求項1記載のものにおいて、上記カルシウム成分補正テーブルは、カルシウム成分の含有量および大きさとが異なる複数のカルシウム基準体を有するカルシウムファントムを計算機シミュレーションで発生させ、このカルシウムファントムの計算機シミュレーションでのCTスキャン処理によるCT値と、理想的CT値との差から作成したことを特徴とする。このようなX線CT装置によれば、実際にX線を曝射することなくカルシウム成分補正テーブルを容易に得ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態によるX線CT装置の動作を示すフローチャートである。
先ず、ステップS1では、判定手段によってECG撮影モードか否かを判定する。つまり、ECG同期撮影した画像から冠動脈のカルシウムスコアの算出を行うか否かを判定する。判定手段がステップS1でECG撮影モードではないと判定した場合、例えば頭部検査の場合はステップS3の通常スキャン処理を行う。この通常スキャン処理では、X線源から照射して被検体を透過したX線をX線検出器で検出し、これに基づく投影データを画像再構成手段によってステップS8で再構成し、その再構成画像を画像表示手段によって表示装置に表示する。一方、CT検査領域が心臓でありECG撮影モードの場合、被検体のECG同期スキャン処理に先立って、ステップS2のカルシウムファントムスキャン処理手段によるカルシウムファントムスキャン処理へ移る。
【0015】
このカルシウムファントムスキャン処理手段によるカルシウムファントムスキャン処理では、図2に示した円柱状のカルシウムファントムをスキャン処理する。このカルシウムファントムは、同図(A)に示すように複数本の円柱状カルシウム基準体1,2,3を有しており、それぞれの直径は例えば2mm、4mm、6mmであるが、その本数や径はこれらに限定されるものではない。またカルシウム基準体1〜3は、同図(B)に示したように体軸方向にカルシウム含有量が異なり、それぞれCT値レベルで100、200、300、400のように順次変化させている。カルシウムファントムスキャン処理手段によってこのカルシウムファントムをスキャン処理した後、再構成画像処理を実行し、この画像のCT値に基づいて後述するように被検体のスキャン処理におけるECG同期再構成画像の内部カルシウム成分のCT値を補正する。
【0016】
ステップS2でのカルシウムファントムのスキャン処理が終了すると、ステップS4のECG同期スキャン処理手段による被検体のECG同期スキャン処理に移る。ここでは、被検体の心拍数などのパラメータから最適な撮影条件が決定される。ECG同期スキャン処理としては様々なものが提案されており、いずれのものでも適用することができる。X線源から照射して被検体を透過したX線をX線検出器で検出すると共に、被検体の心拍に関連した計測投影データを収集する。
【0017】
ステップS4でのECG同期スキャン処理が終了すると、ステップS5ではECG再構成処理手段によるECG再構成処理が行われ、先の計測投影データに基づいて心臓領域の断層像が再構成される。冠動脈が石灰化を起こしていると仮定すると、この段階の心臓断層像に含まれる冠動脈の石灰化部分は、その石灰化領域が小さいこと、また螺旋スキャンの影響などからそのCT測定値が真のCT値より低下したり、または上昇しているため、このCT値をそのまま採用することができない。
【0018】
そこで、このCT値の正当性を高めるため、ステップS6でカルシウムキャリブレーション処理手段によるカルシウムキャリブレーション処理を行い、心臓断層像の石灰化領域のCT値を真値に補正処理する。次に、このカルシウムキャリブレーション処理手段によるカルシウムキャリブレーション処理について説明する。
【0019】
上述したステップS2のカルシウムファントムスキャン処理手段によるカルシウムファントムスキャン処理によって得られた再構成画像は図3(B)のようになる。同図(B)は、図3(A)に示したカルシウム基準体1〜3のCT値100に対応するA−A線に沿った断面を示しており、各カルシウム基準体1〜3内の各+位置は、CT値の各測定位置を表している。このカルシウム基準体1のCT値を5箇所の+位置で測定し、そのCT測定値の平均CT測定値を得る。またカルシウム基準体1〜3のCT値200およびCT値300に対応する断面位置においても同様にCT測定値の平均CT測定値を得る。さらに、図4(A)に示したカルシウム基準体1〜3のCT値400に対応するB−B線に沿った断面位置でも、各カルシウム基準体1〜3内の各5箇所の+位置でCT値の測定を行い、そのCT測定値の平均CT測定値を得る。このように5箇所の測定位置によるCT測定値の平均CT測定値が算出されるので、CT値の一様性が考慮されたことになる。
【0020】
この結果、各断面位置の平均CT測定値は理想的には100、200、300、400となり、図5の近似直線4のように比例関係を示すが、使用しているX線CT装置の特性およびカルシウム基準体の大きさなどの要因から必ずしも図5のようにはならない。実際には図6に示す近似直線5のようにカルシウム基準体1における平均CT測定値の低下が見込まれる。この近似直線5は、カルシウム基準体1のCT値が異なる各断面位置での平均CT測定値をもとに、例えばカルシウム基準体1のCT値100の断面位置における平均CT測定値が50、CT値200の断面位置における平均CT測定値が150、CT値300の断面位置における平均CT測定値が210、CT値400の断面位置における平均CT測定値が310であったとき、最小二乗法によって得られたもので、以下、補正基準線と称する。この補正基準線5は上述した4点から近似すると、数1によって表すことができる。
【数1】
【0021】
次に、このように実際に低下したカルシウム成分のCT値を補正するカルシウムキャリブレーション処理手段によるカルシウムキャリブレーション処理に説明する。
ステップS4およびステップS5のECG同期スキャン処理およびECG再構成処理によって、図7に示したように2mm程度の直径を持つカルシウム成分6を含む断層像が得られたとする。このカルシウム成分6は2mm程度の大きさなので、そのCT値を補正するカルシウムキャリブレーション処理においては、径が2mmであるカルシウム基準体1を基準に考える。今、カルシウム成分6の中心付近のCT測定値が180と測定されたと仮定すると、図8に示すように縦軸で示すCT測定値が180である場合、カルシウム基準体1のCT値は253のカルシウム成分がそれに相当し、近似直線4に対してCT値7が低下したと判断される。
【0022】
図2(B)に示したようにカルシウム基準体1には、実際にCT値253のカルシウム含有部分は存在しないが、上述した補正基準線5から推測することができる。つまりCT値253のカルシウム成分であるが、上述したようにスキャン処理や様々な要因により180に低下したことになる。従って、真のCT値253は、CT測定値180にCT補正値73を加算した補正後に得られることになる。
【0023】
このようなカルシウム成分のCT値補正を一般式で説明すると、近似直線4を数2で、また補正基準線5を数3のように表すことができる。
【数2】
【数3】
ここで、数2は理想的CT値を示す直線であるため、本来は係数a1および係数b1はそれぞれ1および0と考えるべきであるが、X線CT装置によっては完全に成り立つとは言えず、装置固有の特性も考慮して係数を付加し説明している。
【0024】
またカルシウム成分の補正変換式は数4のように表すことができ、ここでY2は実際に補正対象のカルシウム成分のCT値を示し、a1、a2、b1、b2などは数2および数3に示した一般式の係数をそれぞれ表している。
【数4】
Y1=(Y2−b2)a1/a2+b1
実際に図8を用いて説明したCT値の補正について、数4を用いて求めてみると、Y2=180、a2=0.83、b2=−30、a1=1、b1=0であるから、補正後CT値Y1は253として求められる。このような数4を全てのCT値に対して予め計算しておくことにより、カルシウム成分補正テープルが作成される。その後、図7に示したカルシウム成分6のCT値は、このカルシウム成分補正テーブルを有するカルシウムキャリブレーション処理手段によって補正される。
【0025】
ここまでの説明では、カルシウム成分6の中心付近の画素を補正対象としたが、同じ処理をカルシウム成分6の画素全てについて実行すれば、カルシウム成分6の全体を補正することになる。各画素毎に補正を実行しなくても、カルシウム成分6の領域全体の平均値を計算し、全体値を数4で補正換算しても良い。この場合、演算の高速化が図れる反面、誤差成分も大きくなる。
【0026】
図7に示したカルシウム成分6の場合、その大きさが2mm程度と仮定して説明したが、実際には様々な大きさのカルシウム成分が存在する。例えば、6mm程度のカルシウム成分を補正するには、カルシウム基準体1を用いた補正ではその誤差が大きくなるので、それに近い他のカルシウム基準体2,3、望ましくは6mmのカルシウム基準体3を用いることによって誤差を抑えることができる。カルシウム基準体2,3を用いたCT値の補正処理では、図9に示すようにカルシウム基準体1の場合と同様にCT値を測定し、最小二乗法により求めた近似直線を補正基準線8,9として行うことができる。
【0027】
このようにカルシウムファントムとして径の異なる複数のカルシウム基準体1〜3を用いているため、実際に測定したカルシウム成分に応じて誤差を抑えることができる近似のカルシウム基準体1〜3を選定し、これを用いて補正基準線を算出することによって、様々な大きさのカルシウム成分に対して有効に補正を実行することができるようになる。また補正換算に関しては数4をそのまま適用することができ、単に補正基準線の係数a2、b2を変化させるだけである。また上述した説明では補正基準線を算出する際、最小二乗法による直線近似を用いたが、近似はこれに限らずスプライン補間等を用いて良く、さらに最小二乗法は一次の直線近似を用いて説明したが、二次の曲線近似を補正基準線としても良い。
【0028】
図10は、上述したカルシウムキャリブレーション処理の動作を示すフローチャートである。
ステップS6のカルシウムキャリブレーション処理が開始されると、先ず、ステップS6aではECG再構成画像からカルシウム成分6の画像のみを取り出しが行われ、この抽出処理は閾値処理やマスク処理で行うことができる。続くステップS6bでは、得られたカルシウム成分のみの画像の大きさを計算し、この大きさに最も近いカルシウム基準体1〜3の補正基準線を選択する。例えば、カルシウム成分6の大きさが5.6mmであれば、もっとも補正に相応しいのは直径6mmのカルシウム基準体3の補正基準線である。またカルシウム成分6の大きさが直径3mmの場合は、カルシウム基準体1とカルシウム基準体2の中間の径であるから、直径2mmのカルシウム基準体1の補正基準線と直径4mmのカルシウム基準体2の補正基準線から新たに補正基準線を作るか、またはそれら二つの補正基準線の係数の平均を用いて補正換算式に適用するなどで対応することができる。
【0029】
次のステップS6cでは、上述した補正基準線の係数を元にカルシウム成分6のCT値を数4を用いてカルシウム成分補正テーブルを作成し、これを参照して補正換算する。このカルシウムキャリブレーション処理を行うカルシウムキャリブレーション処理手段は、X線CT装置の演算装置を用いてソフトウエアー上で構成することができる。このカルシウムキャリブレーション処理の後、ステップS7でカルシウムスコアリング処理手段に画像が渡され、カルシウムスコアリング処理が実施され、適正なカルシウムスコアリング評価が実施される。
【0030】
その後に行われるECG同期スキャン処理においては、図1に示したステップS2のカルシウムファントムスキャン処理を行うことなくステップS4のECG同期スキャン処理を実施し、ステップS5のECG再構成処理を行った後、ステップS6でカルシウムキャリブレーション処理を行う。このときのカルシウムキャリブレーション処理は、既に作成しているカルシウム成分補正テーブルを用いて補正換算する。しかし、X線CT装置のシステムを変更した場合、このカルシウム成分補正テーブルは図1に示したフローチャートに従って作成して更新するのが望ましい。
【0031】
上述した実施の形態のX線CT装置によれば、従来のように被検体と一緒に患者ベッドに埋め込まれたカルシウム基準体をスキャンするのではなく、ステップS4で示した被検体のスキャン処理に先立って、ステップS2で示したカルシウムファントムスキャン処理手段によるカルシウムファントムスキャン処理を実施し、この結果に基づいてカルシウムキャリブレーション処理手段でカルシウムキャリブレーション処理を行ってCT値を補正しているため、X線高吸収体と一緒に人体などをスキャン処理することがないので再構成画像にアーチファクトが発生しない。しかも、カルシウムファントムは径の異なる複数のカルシウム基準体1〜3から構成しているため、様々な大きさの石灰化に対して適切にCT値を補正することができる。
【0032】
図11は、本発明の他の実施の形態によるX線CT装置の動作を示すフローチャートであり、図1に示した手順と同等の手順には同一符号を付けて詳細な説明を省略する。
上述した実施の形態では、カルシウムファントムを用いた場合のカルシウムキャリブレーション処理について説明したが、この実施の形態では、ステップS2Aでカルシウムファントムスキャンを計算機シミュレーションデータで得て、この計算機シミュレーションで得られた模擬的カルシウムスキャンファントム断層像のCT値と理想的CT値との差から算出したカルシウム補正テーブルを作成する。ステップS6のカルシウムキャリブレーション処理では、先の実施の形態の場合と同様のカルシウムキャリブレーション処理手段により、このカルシウム補正テーブルを用いてCT値を補正するようにする。つまり、図2(A)で示したカルシウムファントムを計算機上で、直径、長さ等をもとに発生させ、このファントムを計算機上でCTスキャンと同等の演算を実行することで、模擬的なカルシウムスキャンファントム断層像を得ることができる。
【0033】
この実施の形態によっても、先の実施の形態と同様にカルシウム補正テーブルを用いてカルシウムキャリブレーション処理手段でカルシウムキャリブレーション処理を行ってCT値を補正しているため、X線高吸収体と一緒に人体などをスキャン処理することがないので再構成画像にアーチファクトが発生しない。しかも、図1に示したステップS2のカルシウムファントムスキャン処理を行わないため、実際にX線を曝射することなくカルシウム補正テーブルを得ることができる。
【0034】
尚、上述した実施の形態では、二次元画像についてのカルシウムキャリブレーション処理手段について説明したが、三次元画像を用いたカルシウムキャリブレーション処理手段とし、この場合も二次元画像の場合と同様の補正処理を行い、カルシウムファントムの形状等については、球形のカルシウムファントムをスキャン処理して三次元再構成画像を得てから、その三次元画像のボクセル値を理想系のボクセル値と比較して補正を実施する。補正換算方法などは、上述した数4で行うことができる。ただし基準となるのは二次元画像のCT値に対してボクセル値で実施することになる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のX線CT装置によれば、従来のように被検体と一緒に患者ベッドに埋め込まれたカルシウム基準体をスキャンするのではなく、被検体のスキャン処理に先立って作成を開始したカルシウム成分補正テーブルを有しており、このカルシウム成分補正テーブルに基づいてカルシウムキャリブレーション処理を行ってCT値を補正することができ、X線高吸収体と一緒に人体などをスキャン処理することがないので再構成画像におけるアーチファクトを軽減しながら石灰化のCT値を適切に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態によるX線CT装置の動作を示すフローチャートである。
【図2】図1に示したカルシウムファントムスキャン処理で用いるカルシウムファントムを示す斜視図および断面図である。
【図3】図2に示したカルシウムファントムのA−A線に沿った断面図である。
【図4】図2に示したカルシウムファントムのB−B線に沿った断面図である。
【図5】カルシウムファントムを用いた理想的なCT値特性図である。
【図6】カルシウムファントムを用いた実際のCT値特性図である。
【図7】カルシウム成分を有する画像の説明図である。
【図8】図1に示したカルシウムキャリブレーション処理を示すCT値特性図である。
【図9】図1に示したカルシウムキャリブレーション処理を示す他のCT値特性図である。
【図10】図1に示したカルシウムキャリブレーション処理の動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の他の実施の形態によるX線CT装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1〜3 カルシウム基準体
4 近似直線
5 補正基準線
Claims (2)
- 被検体を介してX線源とX線検出器を対向配置し、スキャン処理時にX線源から照射して被検体を透過したX線を上記X線検出器で検出して計測投影データを取得し、この計測投影データを用いて再構成手段によって再構成画像を得るX線CT装置において、被検体のスキャン処理に先立って、被検体に代る、カルシウム含有量及び径サイズの異なる複数のカルシウム基準体のファントムに対してスキャン処理を行い、カルシウム含有量及び径サイズで定まる理想CT値とこのスキャン処理で得た計測CT値との関係を示すカルシウム成分補正テーブルを作成する補正テーブル作成手段と、被検体のスキャン処理による再構成画像中のカルシウム成分部位の内部カルシウム成分のCT値を上記カルシウム成分補正テーブルに応じて補正するカルシウムキャリブレーション手段とを備えると共に、
上記カルシウムキャリブレーション手段は、被検体の再構成画像中のカルシウム成分部位の画像の大きさと、同一又は近い大きさのカルシウム基準体のファントムに対応する、上記カルシウム成分補正テーブルから、この被検体の再構成画像中のカルシウム成分部位の画像内の被検体測定CT値に対応する理想CT値を求め、被検体の測定CT値をこの理想CT値に補正する、
ものとしたことを特徴とするX線CT装置。 - 請求項1記載のものにおいて、上記カルシウム成分補正テーブルは、カルシウム成分の含有量および大きさとが異なる複数のカルシウム基準体を有するカルシウムファントムを計算機シミュレーションで発生させ、このカルシウムファントムの計算機シミュレーションでのCTスキャン処理によるCT値と、理想CT値とから作成したことを特徴とするX線CT装置。
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